本発明は、車輪装置及びこの車輪装置を取り付けてなる移動足場に関し、特に、凹凸のあるデッキプレート上を移動する場合であってもスムーズに水平移動可能な車輪装置及び移動足場に関する。
内装及び外装工事等に使用される足場は、車軸周りに回転可能であるとともに支軸周りに回転可能な一輪車を有する自在キャスターを取り付けることで、車輪を車軸周りに回転させて所定の場所まで足場を移動可能にすることができるとともに、移動途中で車輪を支軸の周りに回転させて進行方向を自由に変更することもできるので、どの水平方向にも足場を移動可能にすることができる。
ところが、このような一輪車を有する自在キャスターを取り付けてなる移動足場は、平坦な作業面の上であればいかなる水平方向にもスムーズに移動しかつ所定場所で固定できるものであるが、凸部と凹部が交互に連なるデッキプレートのような凹凸のある床の上を移動させようとする場合には、自在キャスターの車輪が凹部の溝に落ち込むことがあり、スムーズに移動させることができない。
自在キャスターの車輪が凹部の溝へ落ち込むことを回避するために、足場が移動する通路部に予め板を敷設したり、あるいは、自在キャスターに代えて橇状の板を足場に取り付けて凹凸面を滑走させたりすることがなされていた。しかし、これでは、移動に手間が掛かる、あるいは大きな力を必要とするという問題点があった。
このため、デッキプレートのような凹凸のある床の上であっても、足場を水平方向に自在に移動させることができる他の手段として、自在キャスターの複数個をブラケットの下方に取り付けて一つの車輪装置を構成することが、次のとおり提案されている。これは、自在キャスターをブラケットの下方に複数個取り付けてなる車輪装置を用いれば、そのうちの少なくとも1個の自在キャスターの車輪は凸部の面の上に乗るだろうから、足場をスムーズに移動可能にすることができるだろうという考え方に基づいている。
特許文献1に記載された車輪装置は、平面ブラケットの下方に自在キャスターの3〜7個を規則的に配置して取り付けた構成となっている。このような構成を採用することによって、3〜7個の自在キャスターのうち少なくとも1個の自在キャスターの車輪が常に凸部の面上に位置させることを図ったものである。
特許文献2に記載された車輪装置は、平面ブラケットの下方に自在キャスターの3個を略正三角形の頂点に位置するようにに取り付けるとともに、歯車又はチェーンを用いて3個の自在キャスターの各車輪を同一方向に揃える構成となっている。このような構成を採用することによって、3個の自在キャスターのうち少なくとも1個の自在キャスターの車輪を常に凸部の面上に位置させることを図るとともに、3個の自在キャスターの車輪が不用意に支軸周りに回転することを阻止することを図ったものである。
特許文献3に記載された車輪装置は、平面ブラケットの下方に自在キャスターの4個を、仮想円上にあって各々円周方向に等間隔に配置するように取り付けるとともに、前記仮想円の中心部にボールによって接地面に対し点接触状態で接地するボール支持体を配置した構成となっている。すなわち、4個の周辺部自在キャスターと1個の中心部自在キャスターが配置された構成を採用することによって、4個の周辺部自在キャスターと1個の中心部自在キャスターのうち少なくとも1個の自在キャスターの車輪が常に凸部の面上に位置させることを図るとともに、製作が容易でコストを安くすることを図ったものである。
実開昭59−165265号公報
実開昭62−182804号公報
特開2003−129666号公報
特許文献1で開示された車輪装置は、平面ブラケットの下方に自在キャスターの3〜7個を規則的に配置して取り付けた構成となっているため、3〜7個の自在キャスターのうち少なくとも1個の自在キャスターの車輪を凸部の面上に位置させ易くなる。
しかしながら、3〜7個の自在キャスターのうち少なくとも1個の自在キャスターの車輪を凸部の面上に位置させても、車輪装置は凹凸のあるデッキプレート上をスムーズに水平移動することには困難を伴う。2個以上の自在キャスターの車輪が同時に凹部の溝の上に位置すると、1個の自在キャスターの車輪が凸部の面上に位置していても、車輪装置の走行安定性が不十分な場合があるからである。また、3〜7個の自在キャスターはそれぞれが、車軸周りに回転可能であるとともに支軸周りに回転可能な一輪車を有するものであるから、各車輪が別々の動きをすることになり、各自在キャスターの車輪が不用意に支軸周りに回転するなど、予期しない複雑な動きが生じる。
特許文献2で開示された車輪装置は、平面ブラケットの下方に自在キャスターの3個を略正三角形の頂点に位置するように取り付けた構成となっているため、3個の自在キャスターのうち少なくとも1個の自在キャスターの車輪を凸部の面上に位置させ易くなる。また、3個の自在キャスターのそれぞれの車輪は、歯車又はチェーンを用いてそれらの車輪の車軸を同一方向に揃えることができるため、各自在キャスターの車輪が不用意に支軸の周りに回転することを阻止することができる。
しかしながら、3個の自在キャスターは車輪の車軸方向が歯車又はチェーンによって同一に揃えられているため、足場の移動方向を変えるのに手間が掛かる。また、3個の自在キャスターのうち少なくとも1個の自在キャスターの車輪が凸部の面上に位置するようにできたとしても、車輪装置は凹凸のあるデッキプレート上をスムーズに水平移動することには困難を伴う。2個以上の自在キャスターの車輪が同時に凹部の溝の上に位置すると、1個の自在キャスターの車輪が凸部の面上に位置していても、車輪装置の走行安定性が不十分な場合があるからである。
特許文献3で開示された車輪装置は、平面ブラケットの下方に4個の周辺部自在キャスターと1個の中心部自在キャスターが取り付けられているので、4個の周辺部自在キャスターと1個の中心部自在キャスターのうち少なくとも1個の自在キャスターの車輪を凸部の面上に位置させ易くなるとともに、自在キャスターのみが複数個設置された車輪装置よりは移動性は向上する。
しかしながら、各自在キャスターの車輪が不用意に支軸の周りに回転することを阻止することはできない。また、4個の周辺部自在キャスターと1個の中心部自在キャスターのうち少なくとも1個の自在キャスターの車輪を凸部の面上に位置させることができたとしても、車輪装置は凹凸のあるデッキプレート上をスムーズに水平移動することには困難を伴う。2個以上の自在キャスターの車輪が同時に凹部の溝の上に位置すると、1個の自在キャスターの車輪が凸部の面上に位置していても、車輪装置の走行安定性が不十分な場合があるからである。
本発明は、これらの問題点を解決するためのものであり、凹凸のあるデッキプレート上を移動する場合であってもスムーズに水平移動可能であるとともに、進行方向を自由に変更することもできる車輪装置及びその車輪装置を取り付けてなる移動足場を提供することを目的とする。
本発明者らは、凹凸のあるデッキプレート上を移動する場合であってもスムーズに水平移動可能であるとともに、進行方向を自由に変更することもできる車輪装置及びその車輪装置を取り付けてなる移動足場を開発するため、種々検討と実験を重ねた。その結果、次の(a)〜(n)の知見を得た。
(a) 車輪装置が凹部の溝へ落ち込んでしまうことを確実に回避する他の手段としては、自在キャスターの車輪を幅広にして車輪がデッキプレートの凹部の溝に落ち込まないようにすることが考えられる。すなわち、デッキプレートの凹部の溝の上面幅よりも広幅の車輪を採用すればよいことになる。しかしながら、デッキプレートは多種多様のものがあり、その凹部の溝の上面幅は50mmから200mmまで幅広い範囲に渡っている。したがって、広幅の車輪を採用することによってどの種のデッキプレートの凹部の溝にも車輪が落ち込まないようにするためには、200mmを超える広幅の車輪が必要となる。しかしながら、このような広幅の車輪では進行方向を自由に変更することは困難であるし、このような広幅の車輪を有する自在キャスターをブラケットの下方に取り付けようとすると車輪装置が大がかりになりすぎてしまうことになるから、自在キャスターの車輪を幅広にするだけでは解決しない。
(b) 自在キャスターの3個以上をブラケットの下方に取り付けてなる車輪装置では、そのうちの少なくとも1個の自在キャスターの車輪を常に凸部の面の上に乗せることができたとしても、2個以上の自在キャスターの車輪が同時に凹部の溝の上に位置すると、1個の自在キャスターの車輪が凸部の面上に位置していても、車輪装置の走行安定性が不十分な場合があることは前述の通りである。
しかしながら、この点についてさらに検討を重ねたところ、3個以上の自在キャスターの車輪をブラケットの下方に取り付けてなる車輪装置の走行安定性を向上させるためには、そのうちの少なくとも1個の自在キャスターの車輪を常に凸部の面の上に乗せることではなく、少なくとも2個の自在キャスターの車輪を同時に凸部の面の上に常に位置させることであることが判明した。したがって、車輪装置が水平方向に移動する際に各車輪をこのように制御できれば、凹凸のあるデッキプレート上を移動する場合であってもスムーズに水平移動可能となる。
(c) しかしながら、自在キャスターの車輪は車軸周りに回転可能であるとともに支軸周りにも回転可能であるため、3個以上の自在キャスターをブラケットの下方に取り付けてなる車輪装置においては、少なくとも2個の自在キャスターの車輪を同時に凸部の面の上に常に位置させるように各車輪の動きを制御するのは難しい。自在キャスターの車輪を支軸方向に回転できないように固定することができれば各車輪の動きを制御し易くなるが、車輪を支軸方向に回転できないようにすると、今度は車輪の進行方向を自由に変更し難くなるという問題が生じるからである。特許文献2に記載の車輪装置は、その各車輪の方向を同一に揃えることができることが開示されているが、歯車又はチェーンを用いて各車輪の方向を同一に固定しているため、車輪の進行方向を自由に変更し難い上に、複雑な装置構成とならざるを得ない。
(d) このため、3個以上の車輪をブラケットの下方に取り付けることができ、かつその各車輪の方向を同一に揃えることができるとともに、車輪の進行方向を自由に変更し得る車輪装置を種々に検討した結果、次の着想を得た。
すなわち、自在キャスターを介して車輪をブラケットの下方に取り付けるのではなく、すべての車輪を直接ブラケットの下方に車輪方向を同一にして取り付けて車輪装置を構成すれば、すべての車輪を同一方向に揃えた状態でブラケットに固定することができるので、少なくとも2個の車輪を同時に凸部の面の上に常に位置させるように容易に制御することができる。このような車輪装置において、車輪装置の進行方向を自由に変更するためには、たとえば、回転自在のヒンジ構造と回動可能のヒンジ構造をブラケットに設けて、車輪装置全体を水平方向に回動可能にすればよい。そして、車輪の進行方向に対して、斜め方向の荷重を与えることにより、回転自在のヒンジ構造を基点として車輪装置を回動可能にすることができる。
回転自在のヒンジ構造は、たとえば、正円形のボルト挿入孔を有する正方形の板を2枚、摺動自在に重ねて設置し、そして、2つのボルト挿入孔の間にボルトを通し、ボルトがボルト挿入孔内で回転自在となるようにナットを固定すればよい。
また、回動可能のヒンジ構造は、たとえば、正円形のボルト挿入孔を有する下向きの溝形部材と、長円形のボルト挿入孔を有する上向きの溝形部材とを背中同士を貼り合わせた形で上下に重ねて設置し、そして、2つのボルト挿入孔の間にボルトを通し、ボルトがボルト挿入孔内を水平方向に移動可能となるようにナットを固定すればよい。
(e) このような車輪装置においては、すべての車輪を2本の平行な直線上に配列することが好ましい。なぜならば、車輪装置の走行時に車輪の軌跡の数が少ないほど、少なくとも2個の車輪を同時に凸部の面の上に常に位置させるように制御することが容易になるからである。ただし、車輪装置の車輪の軌跡が1本となる場合には、この直線の方向と凹部の溝の長さ方向が一致したときに、すべての車輪が同時に凹部の溝の上に位置することになり、車輪装置は凹部の溝へ落ち込んでしまうため、すべての車輪を1本の直線上に配列することはできない。
(f) そして、3個以上の車輪を2本の平行な直線上に配列しかつすべての車輪を同一方向に揃えた状態でブラケットの下方に固定して取り付けてなる車輪装置は、水平方向に回動可能にすると、凹凸のあるデッキプレート上をいかなる水平方向に移動しても、少なくとも2個の車輪を同時に凸部の面の上に常に位置させるようにすることが容易になるし、車輪装置の進行方向を自由に変更することもできるようになる。なお、車輪装置を所定場所まで移動させた後に車輪装置をその場所に停止させるために、ブレーキロック付き車輪を用いるのが好ましい。
(g) ここで、ブラケットの下方に取り付ける車輪の幅は、格別に限定するものではないが、広幅の車輪を用いるのが好ましい。ただし、広幅といっても、車輪装置が大がかりにならない程度のものが好ましく、また、進行方向を自由に変更することができる程度の車輪幅が好ましい。
(h) 車輪装置の進行方向を自由に変更するためには、車輪装置全体を水平方向に回動可能にする必要があるが、車輪の個数を多くしたり、車輪の幅を広くしたりすると、車輪装置全体を水平方向に回動可能にすることが難しくなるという問題が生じる。この問題を解決するためには、車輪装置全体を水平方向に回動可能にする際に、車輪を床面上で容易に滑らせることができるようにすればよく、そのためには、摩擦係数の小さいエンジニアリングプラスチックを車輪の表面に使用すればよい。摩擦係数の小さいエンジニアリングプラスチックとしては、MCナイロン(モノマーキャスティングナイロン)や、このMCナイロンとウレタンエラストマーの複層材料等を挙げることができる。耐久性と自己潤滑性を有するエンジニアリングプラスチックを用いるのが好ましい。
(i) 水平方向に回動可能なブラケットの下方に取り付ける車輪は、その個数を3個以上とした上で、すべての車輪の方向を同一に揃えるとともにすべての車輪を左右2本の平行な直線上に位置するように配列させる必要がある。車輪装置の車輪の個数は3個以上であればよく、格別に限定するものではない。少なくとも2個の車輪を同時に凸部の面の上に常に位置させるためには、車輪装置の車輪の個数は多い方がよいが、車輪の個数が多くなりすぎると装置が複雑になるので、10個以内の車輪を用いるのが好ましい。4〜6個の車輪を用いるのがさらに好ましい。
車輪装置に用いる車輪の径は、格別限定されるものではないが、径が小さすぎるとデッキプレートの凸部と凹部の段差を超えるのが困難であるという問題点があり、そして、径が大きすぎると装置が大がかりになりすぎる。したがって、車輪の大きさとしては、直径50〜200mmのものが好ましい。また、必ずしもすべての車輪が同一の径である必要はなく、異径の車輪を組み合わせて用いてもよい。特に、車輪の個数が5個以上の車輪装置では、中間部に配置される車輪を小径又は大径としてもよい。この場合、少なくとも最前部と最後部に配列される車輪は同一径とするのが好ましい。
車輪装置に用いる車輪は、少なくとも2個の車輪を同時に凸部の面の上に常に位置させる必要があるが、このためには、前述のとおり、3個以上の車輪を2本の左右の平行な直線上に配列しかつすべての車輪を同一方向に揃えた状態でブラケットの下方に固定して取り付けることになる。その上で、これらの車輪の配列を工夫することによってはじめて、少なくとも2個の車輪を同時に凸部の面の上に常に位置させることができる。これらの車輪の配列については、車輪の幅を考慮した左右の車輪の間隔、すなわち、外側間隔と内側間隔に加えて、車輪の前後の間隔、すなわち、最前列と最後列の間隔及び中間列との間隔を考慮する必要がある。車輪の最前列と最後列の間隔は50〜600mmが好ましく、そして、左右の間隔は、外側が50〜350mmであり、内側が10〜120mmであるのが好ましい。そして、中間列を含む車輪装置の場合には車輪の前後の間隔は等間隔にするのが好ましい。ただし、デッキプレートの凹凸間隔を考慮することが必要となる。
(j) 車輪装置に取り付けられる車輪の個数が奇数の場合には、左右2本の平行な直線のうち、一方の直線上に偶数個の車輪を、そして、他方の直線上に奇数個の車輪を配列することになる。このとき、各車輪の配列は、1個の車輪を除いて左右対称位置に配列してもよいし、すべての車輪が互いに千鳥形に配列してもよい。
たとえば、3個の車輪を用いる場合は、一方の直線上に2個の車輪を、そして、他方の直線上に1個の車輪を配列することになるが、このとき、3個の車輪のうち2個の車輪は左右2本の直線と直交する1本の直線上に位置してもよいし、3個の車輪が互いに千鳥形に位置してもよい。なお、車輪装置の走行安定性の面からは、3個の車輪が互いに千鳥形に配列するのが好ましい。2個の車輪を左右2本の直線と直交する1本の直線上に位置させる場合には、2つの車輪の間を輪軸で結んでもよい。
また、5個の車輪を用いる場合は、一方の直線上に1個の車輪を、そして、他方の直線上に残りの4個の車輪を配列してもよいが、一方の直線上に3個の車輪を、そして、他方の直線上に2個の車輪を配列するのが好ましい。そして、そのうちの4個の車輪が、左右2本の直線上に、それぞれ2個の車輪を左右対称となるように配列してもよいし、5個の車輪が互いに千鳥形に配列してもよい。車輪装置の走行安定性の面からは、5個の車輪が互いに千鳥形に配列するのが好ましい。なお、左右2本の直線上に左右対称となるように車輪が配列されている場合、対称位置にある左右2つの車輪の間を輪軸で結んでもよい。
(k) 車輪装置に取り付けられる車輪の個数が偶数の場合には、左右2本の平行な直線上に、それぞれ同数の車輪を配列してもよいし、左右で車輪の個数を異ならせてもよい。各車輪の配列は、左右対称位置に配列してもよいし、すべての車輪が互いに千鳥形に配列してもよい。
たとえば、4個の車輪を用いる場合は、一方の直線上に1個の車輪を、そして、他方の直線上に残りの3個の車輪を配列してもよいが、車輪装置の走行安定性の面からは、左右2本の直線上に、それぞれ2個の車輪を左右対称となるように配列するのが好ましい。この場合、対称位置にある左右2つの車輪の間を輪軸で結んでもよい。
また、6個の車輪を用いる場合は、一方の直線上に1個又は2個の車輪を、そして、他方の直線上に残りの5個又は4個の車輪を配列してもよいが、車輪装置の走行安定性の面からは、左右2本の直線上に、それぞれ3個の車輪を左右対称となるように配列するのが好ましい。この場合、対称位置にある左右2つの車輪の間を輪軸で結んでもよい。
(l) このような車輪装置を、足場の下部に取り付けることによって、車輪装置の進行方向を自由に変更することができる。足場に取り付ける車輪装置の個数は、特に限定されるものではなく、足場の最下部構造に応じて適宜の個数を用いることができる。たとえば、足場の最下部構造として矩形のフレームが用いられるときは、矩形のフレームの角部にそれぞれ車輪装置を設置するのがよく、この場合の車輪装置の個数は4個となる。また、隣接する車輪装置のブラケットの間に連結部材を設けて、隣接する車輪装置の間隔を一定距離に固定してもよい。
このようにして、所定の場所まで足場を自由に移動することができるとともに、足場を移動した後に所定の場所で固定することができる。足場を移動した後に所定の場所で固定するには、ブレーキロック付き車輪を用いるのに加えて、たとえばネジジャッキ等を備えたアウトリガーを設けるのが好ましい。
(m) さらに、昇降可能かつ所定の高さで固定可能な水平フレームと作業床を用いて足場を構成すれば、所望の高さにおいて作業を行うことができる。昇降可能かつ所定の高さで固定可能にするためには、たとえば、複数段の矩形状の水平フレームをX字形のスライダークランクを介して順に積み重ねた上に作業床を設置し、各段のスライダークランクを伸縮することによって足場全体の高さを調節し固定すればよい。
(n) 車輪装置を走行させる凹凸のあるデッキプレートの凸部の幅W1や凹部の上面の幅W2は特に限定するものではない。好ましくは、凸部の幅W1は50〜200mm、そして、凹部の上面の幅W2は50〜200mmの範囲である。
本発明に係る車輪装置及びこの車輪装置を取り付けてなる移動足場は、これらの知見に基づいて完成したものであり、本発明は次の(1)〜(9)の車輪装置及び(10)〜(12)の移動足場を要旨とする。
(1) 3個以上の車輪を2本の平行な直線上に配列し、かつすべての車輪を同一方向に揃えた状態でブラケットの下方に固定して取り付けてなる、水平方向に回動可能な車輪装置であって、凹凸のあるデッキプレート上をいかなる水平方向に移動しても少なくとも2個の車輪を同時に凸部の面の上に常に位置させることができることを特徴とする車輪装置。
(2) 車輪の表面に摩擦係数の小さいエンジニアリングプラスチックを用いることを特徴とする、上記(1)の車輪装置。
(3) 2本の平行な直線のうち、一方の直線上に偶数個の車輪が、そして、他方の直線上に奇数個の車輪が、それぞれ配列されていることを特徴とする、上記(1)又は(2)の車輪装置。
(4) 2本の平行な直線のうち、一方の直線上に配列される車輪と他方の直線上に配列される奇数個の車輪が、互いに千鳥形に配列されていることを特徴とする、上記(3)の車輪装置。
(5) 2本の平行な直線上に偶数個の車輪が配列されていることを特徴とする、上記(1)又は(2)の車輪装置。
(6) 2本の平行な直線上のそれぞれに同数個の車輪が配列されていることを特徴とする、上記(5)の車輪装置。
(7) 2本の平行な直線のうちの一方に配列される車輪と他方に配列される車輪とが左右対称位置にあることを特徴とする、上記(5)又は(6)の車輪装置。
(8) 2本の平行な直線のうちの一方に配列される車輪と他方に配列される車輪とが、互いに千鳥形に配列されていることを特徴とする、上記(5)の車輪装置。
(9) 上記(1)〜(8)のいずれかの車輪装置が足場の下部に取り付けられていることを特徴とする移動足場。
(10) 車輪装置がヒンジ構造を介して足場の下部に取り付けられていることを特徴とする、上記(9)の移動足場。
(11) 所定高さに昇降可能かつ固定可能な水平フレームと作業床を有することを特徴とする、上記(9)又は(10)の移動足場。
本発明の車輪装置は、凹凸のあるデッキプレート上を移動する場合であってもスムーズに水平移動可能であるとともに、進行方向を自由に変更することもできる。
また、この車輪装置を取り付けてなる移動足場は、凹凸のあるデッキプレート上であってもスムーズに水平移動可能であるとともに、進行方向を自由に変更することもできるので、作業性と安全性に優れている。また、たとえば、ネジジャッキ等を備えたアウトリガーを設けておけば、所定の場所まで足場を移動した後に所定の場所で固定することができる。さらに昇降可能かつ所定の高さで固定可能な水平フレームと作業床を取り付けることができるので、水平移動後に所望の高さにおいて作業を行う足場とすることもできる。
以下、図面を用いて、本発明に係る車輪装置及びこの車輪装置を取り付けてなる移動足場を説明する。なお、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
図1は、本発明に係る車輪装置の一例であり、4個の車輪を有するものである。それぞれ、(a)が正面図、(b)が平面図、(c)が右側面図である。
この車輪装置1は、下向きの溝形形状を有するブラケット5と、このブラケットの下方に取り付けられた4個のブレーキロック付きの車輪6からなり、4個の車輪6は左右2本の平行な直線P、Qの上に、それぞれ2個の車輪6が左右対称となるように、同一方向に揃えた状態で配列されている。ここでは、車輪の前後の間隔Lは100mmであり、そして、車輪の左右の間隔は、外側間隔B1が95mmであり、内側間隔B2が63mmである。 この車輪装置1は、ブラケット5のほぼ中央部の上に設けられた回転自在のヒンジ構造10を介して、足場等の移動装置の最下部を構成する垂直な円管部材20に取り付けられている。ここでは、回転自在のヒンジ構造10は、正円形のボルト挿入孔を有する正方形の板を2枚、摺動自在に重ねて設置し、そして、2つのボルト挿入孔の間にボルトを通し、ボルトがボルト挿入孔内で回転自在となるようにナットを固定することによって、ブラケット全体を足場等の移動装置に対して、回転自在にしている。
さらに、この車輪装置1は、ブラケット5の端部の上に設けられた回動可能のヒンジ構造11を介して、足場等の進行方向を自由に変更できるようにしている。ここでは、回動可能のヒンジ構造11は、正円形のボルト挿入孔を有する下向きの溝形部材と、長円形のボルト挿入孔を有する上向きの溝形部材とを背中同士を貼り合わせた形で上下に重ねて、ブラケット5の端部と足場等の移動装置の最下部を構成する水平な円管部材21との間に設置し、そして、2つのボルト挿入孔の間にボルトを通し、ボルトがボルト挿入孔内を水平方向に移動可能となるようにナットを固定することによって、ブラケット全体を足場等の移動装置に対して回動可能にしている。
なお、この車輪装置1は、隣接する車輪装置との間に、車輪装置間の連結部材22が設けられており、隣接する車輪装置との間の間隔を一定距離に固定している。
図2及び図3は、この車輪装置が凹凸のあるデッキプレート上を走行する様子を表す例であり、それぞれ、(a)が正面図、(b)が平面図、(c)が右側面図である。図2はこの車輪装置がデッキプレートの凹部の溝の長さ方向に対して平行に走行する状態を示し、そして、図3はこの車輪装置がデッキプレートの凹部の溝の長さ方向に対して直角に走行する状態を示している。 凹凸のあるデッキプレート30は、幅W1の凸部と上面の幅W2の凹部を交互に有するものである。ここでは、デッキプレートの凸部の幅W1は105mmであり、そして、デッキプレートの凹部の上面の幅W2は90mmである。 この車輪装置は、4個の車輪が、左右2本の平行な直線P、Qの上に、それぞれ2個の車輪が左右対称となるように、同一方向に揃えた状態で配列されている。すなわち、前列に2個の車輪、そして、後列に2個の車輪が、左右対称に配置されていることになる。したがって、これらの4個の車輪のうち、少なくとも2個の車輪が凹凸のあるデッキプレート上で同時に凸部の面の上に常に位置させるためには、次の(i)〜(iii)のうちのいずれかの配列が実現されていればよい。
(i) 左列又は右列の2個の車輪が両方とも凸部の面の上に位置する配列、
(ii) 前列又は後列の2個の車輪が両方とも凸部の面の上に位置する配列、
(iii) 前列の1個の車輪と後列の1個の車輪が両方とも凸部の面の上に位置する配列。 換言すれば、4個の車輪を前後かつ左右対称に有する車輪装置を凹凸のあるデッキプレート上でいかなる水平方向にも移動させても、常に上記(i)〜(iii)のうちのいずれかの配列が実現すれば、少なくとも2個の車輪を同時に凸部の面の上に常に位置させることができるため、車輪装置の走行安定性を十分に確保することができる。
以下に、この車輪装置は、少なくとも2個の車輪を凹凸のあるデッキプレート上で同時に凸部の面の上に常に位置させるように制御できることを、検証する。
まず、上記(i)の左列又は右列の2個の車輪が両方とも凸部の面の上に位置する配列は、図2にみるごとく、車輪装置がデッキプレートの凹部の溝の長さ方向に対して平行に走行するときを想定すればよい。この車輪装置は、4個の車輪が前後かつ左右対称に配列されていることを考慮すると、図2(a)に図示される左右の車輪のいずれか一方が凸部の面の上に位置すれば、左列又は右列の2個の車輪が両方とも凸部の面の上に位置する配列が実現することになる。
したがって、車輪の左右の外側間隔B1がデッキプレート上面の溝の幅W2よりも大きく、かつ、車輪の左右の内側間隔B2がデッキプレート上面の凸部の幅W1よりも小さいことが条件となる。正確には、車輪の左右の外側間隔B1が[W2+(n−1)(W1+W2)](nは正の整数)よりも大きく、かつ、車輪の左右の内側間隔B2が[W1+(n−1)(W1+W2)](nは正の整数)よりも小さいことが条件となる。
すなわち、車輪の左右の外側間隔B1と内側間隔B2が、デッキプレート上面の凸部の幅W1と溝の幅W2に対して、次の(1)式と(2)式の両方を満足する関係であればよいことが分かる。
W2+(n−1)(W1+W2)<B1・・・・・・(1)式
B2<W1+(n−1)(W1+W2)・・・・・・(2)式
ここで、nは正の整数を表す。
次に、上記(ii)の前列又は後列の2個の車輪が両方とも凸部の面の上に位置する配列は、図3にみるごとく、車輪装置がデッキプレートの凹部の溝の長さ方向に対して直角に走行するときを想定すればよい。この車輪装置は、4個の車輪が前後かつ左右対称に配列されていることを考慮すると、図3(c)に図示される前後の車輪のいずれか一方が凸部の面の上に位置すれば、前列又は後列の2個の車輪が両方とも凸部の面の上に位置する配列が実現することになる。
したがって、車輪の前後の間隔Lがデッキプレート上面の溝の幅W2よりも大きく、かつ、デッキプレート上面の凸部の幅W1よりも小さいことが条件となる。正確には、車輪の前後の間隔Lが[W2+(n−1)(W1+W2)](nは正の整数)よりも大きく、かつ、[W1+(n−1)(W1+W2)](nは正の整数)よりも小さいことが条件となる。
すなわち、車輪の前後の間隔Lが、デッキプレート上面の凸部の幅W1と溝の幅W2に対して、次の(3)式を満足する関係であればよいことが分かる。なお、この(3)式を満足すると、上記(iii)の前列の1個の車輪と後列の1個の車輪が両方とも凸部の面の上に位置する配列も実現する。
W2+(n−1)(W1+W2)≦L≦W1+(n−1)(W1+W2)・・・・・(3)式
ここで、nは正の整数を表す。
したがって、車輪装置が凹凸のあるデッキプレート上をいかなる方向に進行しようとも、上記(i)〜(iii)のうちのいずれかの配列を必ず実現させるためには、上記(1)式〜(3)式のすべてを満足させる必要がある。なお、(3)式を満足させるためには、W2≦W1であることが必要であることが分かる。したがって、この4個の車輪を有する車輪装置が、デッキプレートの凹部の溝に落ち込むことなくスムーズに走行するためには、上記(1)式〜(3)式のすべてを満足させることに加えて、デッキプレート上面の凸部の幅W1が溝の幅W2以上であることが最低条件となる。
本実施例1では、前述のとおり、W1=105mm、W2=90mm、L=100mm、B1=95mm、B2=63mmである。これらの数値は、上記(1)式〜(3)式のすべてを満足する。
図4及び図5は、この車輪装置を取り付けてなる足場の一例であり、足場を伸張したまま、凹凸のあるデッキプレート30の上を移動中の状態を示す。(a)が正面図、(b)が側面図である。図4は車輪装置の車輪が凹部の溝の長さ方向に対して平行に走行する場合を、図5は車輪装置の車輪が凹部の溝の長さ方向に対して直角に走行する場合を、それぞれ表している。
この足場は、矩形状の枠体からなる水平フレーム40の複数段をX字形のスライダークランク50を介して順に積み重ね、そして、最上段の水平フレーム40の上に作業床60を設置し、さらに、作業床60への昇降用梯子を備えたものである。作業床60の四隅には、手摺り柱62が設置され、そして、手摺り柱62の間には手摺りバー63が取り付けられて、手摺りを構成する。作業床60の四辺には巾木64が取り付けられる。X字形のスライダークランク50は、2本の斜材を交叉させ交叉部で軸着したものであり、上下の水平フレーム40の間に2列立設されている。この2本の斜材を水平方向にスライドさせることによって、その上下の水平フレーム40が昇降し、もって足場全体が上下に伸縮する。そして、水平フレーム40の両側面には、長材70と横材71からなる昇降用梯子が取り付けられ、この昇降用梯子で水平フレームを支持することによって水平フレームの高さが固定される。
そして、この足場の最下部を構成する垂直な円管部材20と水平な円管部材21に、上記車輪装置1が取り付けられている。また、垂直な円管部材20の側面には、先端にジャッキベース75を備えたアウトリガー76が取り付けられ、垂直な円管部材20を軸として水平方向に回動しうるように設置されている。
したがって、この車輪装置を取り付けてなる移動足場は、凹凸のあるデッキプレート上で、どの方向にもスムーズに水平移動可能であるとともに、進行方向を自由に変更することができる。また、所定の場所まで足場を移動した後に所定の場所で固定することができ、水平移動後に作業床の高さを所望の高さに変更して作業を行うこともできる。なお、この例では、足場を伸張したまま凹凸のあるデッキプレート上を移動中の状態を示したが、足場を折り畳んだまま凹凸のあるデッキプレート上を移動することもできることはいうまでもない。
図6は、本発明に係る車輪装置の一例であり、6個の車輪を有するものである。それぞれ、(a)が正面図、(b)が平面図、(c)が右側面図である。
この車輪装置1は、下向きの溝形形状を有するブラケット5と、このブラケットの下方に取り付けられた6個のブレーキロック付きの車輪6からなり、6個の車輪6は左右2本の平行な直線P、Qの上に、それぞれ3個の車輪6が左右対称となるように、同一方向に揃えた状態で配列されている。また、6個の車輪は、最前列、中間列及び最後列に、それぞれ、2個配列されている。ここでは、中間列は、最前列と最後列から等距離に設けられており、車輪の最前列と最後列の間隔Lは200mmであり、中間列とその前後の列の間隔はL/2の100mmである。そして、車輪の左右の間隔は、外側間隔B1が162mmであり、内側間隔B2が55mmである。
この車輪装置1も、実施例1に示す4個の車輪を有する車輪装置と同様に、ブラケット5のほぼ中央部の上に設けられた回転自在のヒンジ構造10を介して、足場等の移動装置の最下部を構成する垂直な円管部材20に取り付けられ、そして、ブラケット5の端部の上に設けられた回動可能のヒンジ構造11を介して、足場等の進行方向を自由に変更できるようにしている。なお、この車輪装置1も、隣接する車輪装置との間に、車輪装置間の連結部材22が設けられており、隣接する車輪装置との間の間隔を一定距離に固定している。
図7及び図8は、この車輪装置が凹凸のあるデッキプレート上を走行する様子を表す例であり、それぞれ、(a)が正面図、(b)が平面図、(c)が右側面図である。図7はこの車輪装置がデッキプレートの凹部の溝の長さ方向に対して平行に走行する状態を示し、そして、図8はこの車輪装置がデッキプレートの凹部の溝の長さ方向に対して直角に走行する状態を示している。ここでは、凹凸のあるデッキプレート30の凸部の幅W1は89mmであり、そして、デッキプレートの凹部の上面の幅W2は153mmである。
この車輪装置は、6個の車輪が、左右2本の平行な直線P、Qの上に、それぞれ3個の車輪が左右対称となるように、同一方向に揃えた状態で配列されている。すなわち、最前列に2個の車輪、中間列に2個の車輪、そして、最後列に2個の車輪が、左右対称に配置されていることになる。したがって、これらの6個の車輪のうち、凹凸のあるデッキプレート上で同時に凸部の面の上に常に位置させるためには、次の(i)〜(iv)のうちのいずれかの配列が実現されていればよい。
(i) 左列又は右列の少なくとも2個の車輪が両方とも凸部の面の上に位置する配列、
(ii) 最前列の2個の車輪が両方とも凸部の面の上に位置する配列、
(iii) 中間列の2個の車輪が両方とも凸部の面の上に位置する配列、
(iv) 最後列の2個の車輪が両方とも凸部の面の上に位置する配列、
(v) 左列の少なくとも1個の車輪と右列の少なくとも1個の車輪が両方とも凸部の面の上に位置する配列。
換言すれば、6個の車輪を前後かつ左右対称に有する車輪装置を凹凸のあるデッキプレート上でいかなる水平方向にも移動させても、常に上記(i)〜(v)のうちのいずれかの配列が実現すれば、少なくとも2個の車輪を同時に凸部の面の上に常に位置させることができるため、この車輪装置の走行安定性を十分に確保することができる。
以下に、この車輪装置は、少なくとも2個の車輪を凹凸のあるデッキプレート上で同時に凸部の面の上に常に位置させるように制御できることを、検証する。
まず、上記(i)の左列又は右列の少なくとも2個の車輪が両方とも凸部の面の上に位置する配列は、図7にみるごとく、車輪装置がデッキプレートの凹部の溝の長さ方向に対して平行に走行するときを想定すればよい。この車輪装置は、最前列に2個の車輪、中間列に2個の車輪、そして、最後列に2個の車輪が、それぞれ、前後かつ左右対称に配列されていることを考慮すると、図7(a)に図示される左右の車輪のいずれか一方が凸部の面の上に位置すれば、左列又は右列の少なくとも2個の車輪が両方とも凸部の面の上に位置する配列が実現することになる。
したがって、車輪の左右の外側間隔B1がデッキプレート上面の溝の幅W2よりも大きく、かつ、車輪の左右の内側間隔B2がデッキプレート上面の凸部の幅W1よりも小さいことが条件となる。正確には、車輪の左右の外側間隔B1が[W2+(n−1)(W1+W2)](nは正の整数)よりも大きく、かつ、車輪の左右の内側間隔B2が[W1+(n−1)(W1+W2)](nは正の整数)よりも小さいことが条件となる。
すなわち、実施例1に示す4個の車輪を有する車輪装置と同様に、この配列が実現するためには、車輪の左右の外側間隔B1と内側間隔B2が、デッキプレート上面の凸部の幅W1と溝の幅W2に対して、次の(1)式と(2)式の両方を満足する関係であればよいことが分かる。
W2+(n−1)(W1+W2)<B1・・・・・・(1)式
B2<W1+(n−1)(W1+W2)・・・・・・(2)式
ここで、nは正の整数を表す。
次に、上記(ii)〜(iv)のうちのいずれかの配列、すなわち、最前列、中間列又は最後列のうちのいずれかの列の2個の車輪が両方とも凸部の面の上に位置する配列は、図8にみるごとく、車輪装置がデッキプレートの凹部の溝の長さ方向に対して直角に走行するときを想定すればよい。この車輪装置は、この車輪装置は、最前列に2個の車輪、中間列に2個の車輪、そして、最後列に2個の車輪が、それぞれ、前後かつ左右対称に配列されていることを考慮すると、図8(c)に図示される最前列、中間列又は最後列のうちのいずれかの列の車輪のいずれかが凸部の面の上に位置すれば、最前列、中間列又は最後列のうちのいずれかの列の2個の車輪が両方とも凸部の面の上に位置する配列が実現することになる。
したがって、車輪の最前列と最後列の間隔Lがデッキプレート上面の溝の幅W2よりも大きく、かつ、中間列とその前後の列の間隔L/2がデッキプレート上面の凸部の幅W1よりも小さいことが条件となる。正確には、車輪の最前列と最後列の間隔Lが[W2+(n−1)(W1+W2)](nは正の整数)よりも大きく、かつ、中間列とその前後の列の間隔L/2が[W1+(n−1)(W1+W2)](nは正の整数)よりも小さいことが条件となる。
すなわち、この配列が実現するためには、車輪の最前列と最後列の間隔Lが、デッキプレート上面の凸部の幅W1と溝の幅W2に対して、次の(4)式を満足する関係であればよいことが分かる。なお、この(4)式を満足すると、上記(v)の左列の少なくとも1個の車輪と右列の少なくとも1個の車輪が両方とも凸部の面の上に位置する配列も実現する。
W2+(n−1)(W1+W2)≦L≦2W1+2(n−1)(W1+W2)・・・・(4)式
ここで、nは正の整数を表す。
したがって、車輪装置が凹凸のあるデッキプレート上をいかなる方向に進行しようとも、上記(i)〜(v)のうちのいずれかの配列を必ず実現させるためには、上記(4)式に加えて、上記(1)式及び(2)式の両方を満足させる必要がある。なお、この6個の車輪を有する車輪装置の場合は、車輪装置がデッキプレートの凹部の溝の長さ方向に対して直角に走行するときを想定する際に、上記(4)式を満足すればよいから、W2≦W1であることは必ずしも必要ではないことが分かる。したがって、デッキプレート上面の凸部の幅W1が溝の幅W2以上でなくても、車輪装置の走行安定性を十分に確保することができるので、デッキプレート上をスムーズに走行させる条件を見出すことができる。
本実施例2では、前述のとおり、W1=189mm、W2=153mm、L=200mm、B1=162mm、B2=55mmである。これらの数値は、上記(1)式及び(2)式の両方を満足する上に、上記(4)式を満足する。
図9及び図10は、この車輪装置を取り付けてなる足場の一例であり、足場を折り畳んだまま、凹凸のあるデッキプレート30の上を移動中の状態を示す。(a)が正面図、(b)が側面図である。図9は車輪装置の車輪が凹部の溝の長さ方向に対して平行に走行する場合を、図10は車輪装置の車輪が凹部の溝の長さ方向に対して直角に走行する場合を、それぞれ表している。
この足場は、実施例1に示す足場と同じ構造を有するが、実施例1に示す伸張状態とは異なり、折り畳んだ状態にある。足場は、矩形状の枠体からなる水平フレーム40の複数段をX字形のスライダークランク50を介して順に積み重ね、そして、最上段の水平フレーム40の上に作業床60を設置し、さらに、作業床60への昇降用梯子を備えたものである。作業床60の四隅には、手摺り柱62が設置され、そして、手摺り柱62の間には手摺りバー63が取り付けられて、手摺りを構成する。作業床60の四辺には巾木64が取り付けられる。X字形のスライダークランク50は、2本の斜材を交叉させ交叉部で軸着したものであり、上下の水平フレーム40の間に2列立設されている。この2本の斜材を水平方向にスライドさせることによって、その上下の水平フレーム40が昇降し、もって足場全体が上下に伸縮する。そして、水平フレーム40の両側面には、長材70と横材71からなる昇降用梯子が取り付けられ、この昇降用梯子で水平フレームを支持することによって水平フレームの高さが固定される。
そして、この足場の最下部を構成する垂直な円管部材20と水平な円管部材21に、上記車輪装置1が取り付けられており、また、垂直な円管部材20の側面には、先端にジャッキベース75を備えたアウトリガー76が取り付けられ、垂直な円管部材20を軸として水平方向に回動しうるように設置されている点も、実施例1に示す足場と同じである。
この車輪装置を取り付けてなる移動足場は、凹凸のあるデッキプレート上で、どの方向にもスムーズに水平移動可能であるとともに、進行方向を自由に変更することができる。また、所定の場所まで足場を移動した後に所定の場所で固定することができ、水平移動後に所望の高さまで作業床を上昇させて、所望の高さにおいて作業を行うこともできる。なお、この例では、足場を折り畳んだまま凹凸のあるデッキプレート上を移動中の状態を示したが、足場を伸張したまま凹凸のあるデッキプレート上を移動することもできることはいうまでもない。
図11は、本発明に係る車輪装置の一例であり、3個の車輪を有するものである。それぞれ、(a)が正面図、(b)が平面図、(c)が右側面図である。
この車輪装置1は、下向きの溝形形状を有するブラケット5と、このブラケットの下方に取り付けられた3個のブレーキロック付きの車輪6からなり、3個の車輪6は左右2本の平行な直線P、Qの上に、3個の車輪が互いに千鳥形に位置するように、同一方向に揃えた状態で配列されている。ここでは、左側の直線P上に位置する2個の車輪の前後の間隔Lは200mmであり、右列の車輪は、左列の前列及び後列の車輪から等距離に設けられており、右列の車輪と左列の前列又は後列の車輪との前後間隔はL/2の100mmである。そして、車輪の左右の間隔は、外側間隔B1が180mmであり、内側間隔B2が80mmである。
この車輪装置1も、実施例1に示す4個の車輪を有する車輪装置と同様に、ブラケット5のほぼ中央部の上に設けられた回転自在のヒンジ構造10を介して、足場等の移動装置の最下部を構成する垂直な円管部材20に取り付けられ、そして、ブラケット5の端部の上に設けられた回動可能のヒンジ構造11を介して、足場等の進行方向を自由に変更できるようにしている。なお、この車輪装置1も、隣接する車輪装置との間に、車輪装置間の連結部材22が設けられており、隣接する車輪装置との間の間隔を一定距離に固定している。
図12及び図13は、この車輪装置が凹凸のあるデッキプレート上を走行する様子を表す例であり、それぞれ、(a)が正面図、(b)が平面図、(c)が右側面図である。図12はこの車輪装置がデッキプレートの凹部の溝の長さ方向に対して平行に走行する状態を示し、そして、図13はこの車輪装置がデッキプレートの凹部の溝の長さ方向に対して直角に走行する状態を示している。ここで、デッキプレート30の凸部の幅W1は112mmであり、そして、デッキプレートの凹部の上面の幅W2は88mmである。
この車輪装置は、3個の車輪が、左右2本の平行な直線P、Qの上に、3個の車輪が互いに千鳥形に位置するように、すなわち、左側の直線P上に前後に2個、右側の直線Q上に1個の車輪が、それぞれ、配置されていることになる。したがって、これらの3個の車輪のうち、少なくとも2個の車輪を凹凸のあるデッキプレート上で同時に凸部の面の上に常に位置させるためには、次の(a)〜(c)のうちのいずれかの配列が実現されていればよい。
(a) 左列の2個の車輪が両方とも凸部の面の上に位置する配列、
(b) 左列の前列の車輪1個と右列の車輪1個がともに凸部の面の上に位置する配列、
(c) 左列の後列の車輪1個と右列の車輪1個がともに凸部の面の上に位置する配列。
換言すれば、この3個の車輪を車輪装置を凹凸のあるデッキプレート上でいかなる水平方向にも移動させても、常に上記(a)〜(c)のうちのいずれかの配列が実現すれば、少なくとも2個の車輪を同時に凸部の面の上に常に位置させることができるため、この車輪装置の走行安定性を十分に確保することができる。
以下に、この車輪装置は、少なくとも2個の車輪を凹凸のあるデッキプレート上で同時に凸部の面の上に常に位置させるように制御できることを、検証する。
まず、上記(a)の左列の2個の車輪が両方とも凸部の面の上に位置する配列は、図12にみるごとく、車輪装置がデッキプレートの凹部の溝の長さ方向に対して平行に走行するときを想定すればよい。この車輪装置は、3個の車輪が2本の平行な直線上で互いに千鳥形に位置するように配置されていることを考慮すると、図12(a)に図示される左列の前後いずれかの車輪が凸部の面の上に位置すれば、左列の2個の車輪が両方とも凸部の面の上に位置する配列が実現することになる。
したがって、車輪の左右の外側間隔B1がデッキプレート上面の溝の幅W2よりも大きく、かつ、車輪の左右の内側間隔B2がデッキプレート上面の凸部の幅W1よりも小さいことが条件となる。正確には、車輪の左右の外側間隔B1が[W2+(n−1)(W1+W2)](nは正の整数)よりも大きく、かつ、車輪の左右の内側間隔B2が[W1+(n−1)(W1+W2)](nは正の整数)よりも小さいことが条件となる。
すなわち、この配列が実現するためには、車輪の左右の外側間隔B1と内側間隔B2が、デッキプレート上面の凸部の幅W1と溝の幅W2に対して、次の(1)式と(2)式の両方を満足する関係であればよいことが分かる。
W2+(n−1)(W1+W2)<B1・・・・・・(1)式
B2<W1+(n−1)(W1+W2)・・・・・・(2)式
ここで、nは正の整数を表す。
次に、上記(b)又は(c)の配列、すなわち、左列の前列又は後列の1個の車輪1個と右列の車輪1個がともに凸部の面の上に位置する配列は、図13にみるごとく、車輪装置がデッキプレートの凹部の溝の長さ方向に対して直角に走行するときを想定すればよい。この車輪装置は、3個の車輪が互いに千鳥形に位置するように配置されていることを考慮すると、図13(c)に図示される3個の車輪のうち、車輪の最前列と中間列の2個又は車輪の中間列と最後列の2個の車輪が凸部の面の上に位置すれば、少なくとも2個の車輪が凸部の面の上に位置する配列が実現することになる。
したがって、車輪の最前列と中間列の間隔L/2及び車輪の中間列と最後列の間隔L/2が、デッキプレート上面の溝の幅W2よりも大きく、かつ、デッキプレート上面の凸部の幅W1よりも小さいことが条件となる。正確には、間隔L/2が[W2+(n−1)(W1+W2)](nは正の整数)よりも大きく、かつ、[W1+(n−1)(W1+W2)](nは正の整数)よりも小さいことが条件となる。
すなわち、この配列が実現するためには、車輪の前後の間隔Lが、デッキプレート上面の凸部の幅W1と溝の幅W2に対して、次の(5)式を満足する関係であればよいことが分かる。
W2+(n−1)(W1+W2)≦L/2≦W1+(n−1)(W1+W2)・・・・(5)式
ここで、nは正の整数を表す。
したがって、車輪装置が凹凸のあるデッキプレート上をいかなる方向に進行しようとも、上記(a)〜(c)のうちのいずれかの配列を必ず実現させるためには、上記(1)式、(2)式及び(5)式のすべてを満足させる必要がある。なお、上記(5)式を満足させるためには、W2≦W1であることが必要であることが分かる。したがって、この3個の車輪を有する車輪装置の走行安定性を十分に確保して、デッキプレート上をスムーズに走行させるためには、上記(1)式、(2)式及び(5)式のすべてを満足させることに加えて、デッキプレート上面の凸部の幅W1が溝の幅W2以上であることが最低条件となる。
本実施例3では、前述のとおり、W1=112mm、W2=88mm、L=200mm、B1=180mm、B2=80mmである。これらの数値は、上記(1)式及び(2)式の両方を満足する上に、上記(5)式を満足する。
図14及び図15は、この車輪装置を取り付けてなる足場の一例であり、足場を伸張したまま、凹凸のあるデッキプレート30の上を移動中の状態を示す。(a)が正面図、(b)が側面図である。図14は車輪装置の車輪が凹部の溝の長さ方向に対して平行に走行する場合を、15は車輪装置の車輪が凹部の溝の長さ方向に対して直角に走行する場合を、それぞれ表している。
この足場は、実施例1に示す足場と同じである。すなわち、矩形状の枠体からなる水平フレーム40の複数段をX字形のスライダークランク50を介して順に積み重ね、そして、最上段の水平フレーム40の上に作業床60を設置し、さらに、作業床60への昇降用梯子を備えたものである。作業床60の四隅には、手摺り柱62が設置され、そして、手摺り柱62の間には手摺りバー63が取り付けられて、手摺りを構成する。作業床60の四辺には巾木64が取り付けられる。X字形のスライダークランク50は、2本の斜材を交叉させ交叉部で軸着したものであり、上下の水平フレーム40の間に2列立設されている。この2本の斜材を水平方向にスライドさせることによって、その上下の水平フレーム40が昇降し、もって足場全体が上下に伸縮する。そして、水平フレーム40の両側面には、長材70と横材71からなる昇降用梯子が取り付けられ、この昇降用梯子で水平フレームを支持することによって水平フレームの高さが固定される。
そして、この足場の最下部を構成する垂直な円管部材20と水平な円管部材21に、上記車輪装置1が取り付けられており、また、垂直な円管部材20の側面には、先端にジャッキベース75を備えたアウトリガー76が取り付けられ、垂直な円管部材20を軸として水平方向に回動しうるように設置されている点も、実施例1に示す足場と同じである。
この車輪装置を取り付けてなる移動足場は、凹凸のあるデッキプレート上で、どの方向にもスムーズに水平移動可能であるとともに、進行方向を自由に変更することができる。また、所定の場所まで足場を移動した後に所定の場所で固定することができ、水平移動後に作業床の高さを所望の高さに変更して作業を行うこともできる。
なお、この例では、足場を伸張したまま凹凸のあるデッキプレート上を移動中の状態を示したが、足場を折り畳んだまま凹凸のあるデッキプレート上を移動することもできることはいうまでもない。
図16は、本発明に係る車輪装置の一例であり、5個の車輪を有するものである。それぞれ、(a)が正面図、(b)が平面図、(c)が右側面図である。
この車輪装置1は、下向きの溝形形状を有するブラケット5と、このブラケットの下方に取り付けられた5個のブレーキロック付きの車輪6からなり、5個の車輪6は左右2本の平行な直線P、Qの上に、5個の車輪が互いに千鳥形に位置するように、同一方向に揃えた状態で配列されている。ここでは、左側の直線P上に位置する3個の車輪の最前列と最後列の間隔Lは240mmであり、左側の直線P上の中間列とその前後の列の間隔はL/2の120mmである。また、右側の直線Q上に位置する2個の車輪の前後の間隔はL/2の120mmである。右側の直線Q上の前列の車輪は左側の直線P上の前列及び中間列の車輪から等距離(L/4の60mm)に設けられており、そして、右側の直線Q上の後列の車輪は左側の直線P上の中間列及び後列の車輪から等距離(L/4の60mm)に設けられている。そして、車輪の左右の間隔は、外側間隔B1が196mmであり、内側間隔B2が67mmである。
この車輪装置1も、実施例1に示す4個の車輪を有する車輪装置と同様に、ブラケット5のほぼ中央部の上に設けられた回転自在のヒンジ構造10を介して、足場等の移動装置の最下部を構成する垂直な円管部材20に取り付けられ、そして、ブラケット5の端部の上に設けられた回動可能のヒンジ構造11を介して、足場等の進行方向を自由に変更できるようにしている。なお、この車輪装置1も、隣接する車輪装置との間に、車輪装置間の連結部材22が設けられており、隣接する車輪装置との間の間隔を一定距離に固定している。
図17及び図18は、この車輪装置が凹凸のあるデッキプレート上を走行する様子を表す例であり、それぞれ、(a)が正面図、(b)が平面図、(c)が右側面図である。図17はこの車輪装置がデッキプレートの凹部の溝の長さ方向に対して平行に走行する状態を示し、そして、図18はこの車輪装置がデッキプレートの凹部の溝の長さ方向に対して直角に走行する状態を示している。ここで、凹凸のあるデッキプレート30の凸部の幅W1は186mmであり、そして、デッキプレートの凹部の上面の幅W2は113mmである。
この車輪装置は、5個の車輪が、左右2本の平行な直線P、Qの上に、5個の車輪が互いに千鳥形に位置するように、すなわち、左側の直線P上に前後に3個(最前列、中間列及び最後列)の車輪が、そして、右側の直線Q上に2個(前列及び後列)の車輪が、それぞれ、配置されていることになる。したがって、これらの5個の車輪のうち、凹凸のあるデッキプレート上で同時に凸部の面の上に常に位置させるためには、次の(a)〜(g)のうちのいずれかの配列が実現されていればよい。
(a) 左列又は右列のうちの少なくとも2個の車輪が両方とも凸部の面の上に位置する配列、
(b) 左列の最前列の車輪1個と右列の前列の車輪1個がともに凸部の面の上に位置する配列、
(c) 左列の中間列の車輪1個と右列の前列の車輪1個がともに凸部の面の上に位置する配列、
(d) 左列の中間列の車輪1個と右列の後列の車輪1個がともに凸部の面の上に位置する配列、
(e) 左列の後列の車輪1個と右列の後列の車輪1個がともに凸部の面の上に位置する配列、
(f) 左列の最前列の車輪1個と右列の後列の車輪1個がともに凸部の面の上に位置する配列、
(g) 左列の最後列の車輪1個と右列の前列の車輪1個がともに凸部の面の上に位置する配列。
換言すれば、この5個の車輪を有する車輪装置を凹凸のあるデッキプレート上でいかなる水平方向にも移動させても、常に上記(a)〜(g)のうちのいずれかの配列が実現すれば、少なくとも2個の車輪を同時に凸部の面の上に常に位置させることができるため、この車輪装置の走行安定性を十分に確保することができる。この点に関して、以下に詳述する。
以下に、この車輪装置は、少なくとも2個の車輪を凹凸のあるデッキプレート上で同時に凸部の面の上に常に位置させるように制御できることを、検証する。
まず、上記(a)の左列又は右列のうちの少なくとも2個の車輪が両方とも凸部の面の上に位置する配列は、図17にみるごとく、車輪装置がデッキプレートの凹部の溝の長さ方向に対して平行に走行するときを想定すればよい。この車輪装置は、5個の車輪が2本の平行な直線上で互いに千鳥形に位置するように配置されていることを考慮すると、図17(a)に図示される左列の前中後輪のいずれかの車輪又は右列の前後輪のいずれかの車輪が凸部の面の上に位置すれば、左列の少なくとも2個の車輪又は右列の2個の車輪が凸部の面の上に位置する配列が実現することになる。
したがって、車輪の左右の外側間隔B1がデッキプレート上面の溝の幅W2よりも大きく、かつ、車輪の左右の内側間隔B2がデッキプレート上面の凸部の幅W1よりも小さいことが条件となる。正確には、車輪の左右の外側間隔B1が[W2+(n−1)(W1+W2)](nは正の整数)よりも大きく、かつ、車輪の左右の内側間隔B2が[W1+(n−1)(W1+W2)](nは正の整数)よりも小さいことが条件となる。
すなわち、この配列が実現するためには、車輪の左右の外側間隔B1と内側間隔B2が、デッキプレート上面の凸部の幅W1と溝の幅W2に対して、次の(1)式と(2)式の両方を満足する関係であればよいことが分かる。
W2+(n−1)(W1+W2)<B1・・・・・・(1)式
B2<W1+(n−1)(W1+W2)・・・・・・(2)式
ここで、nは正の整数を表す。
次に、上記(b)〜(g)のうちのいずれかの配列、すなわち、左列の車輪1個と右列の車輪1個がともに凸部の面の上に位置する配列は、図18にみるごとく、車輪装置がデッキプレートの凹部の溝の長さ方向に対して直角に走行するときを想定すればよい。この車輪装置は、5個の車輪が互いに千鳥形に位置するように配置されていることを考慮すると、図18(c)に図示される5個の車輪のうち、車輪の最前列と2番目の列の2個(前後の間隔:L/4)、車輪の最前列と4番目の列の2個(前後の間隔:3L/4)、車輪の2番目の列と3番目の列の2個(前後の間隔:L/4)、車輪の2番目の列と最後列の2個(前後の間隔:3L/4)、又は車輪の4番目の列と最後列の2個の車輪(前後の間隔:L/4)が、凸部の面の上に位置すれば、少なくとも2個の車輪が凸部の面の上に位置する配列が実現することになる。
したがって、前後の間隔3L/4がデッキプレート上面の溝の幅W2よりも大きく、かつ、前後の間隔L/4がデッキプレート上面の凸部の幅W1よりも小さいことが条件となる。正確には、前後の間隔3L/4が[W2+(n−1)(W1+W2)](nは正の整数)よりも大きく、かつ、前後の間隔L/4が[W1+(n−1)(W1+W2)](nは正の整数)よりも小さいことが条件となる。
すなわち、この配列が実現するためには、車輪の最前列と最後列の間隔Lが、デッキプレート上面の凸部の幅W1と溝の幅W2に対して、次の(6)式を満足する関係であればよいことが分かる。
W2+(n-1)(W1+W2)≦3L/4≦3W1+3(n-1)(W1+W2)・・・・・(6)式
ここで、nは正の整数を表す。
したがって、車輪装置が凹凸のあるデッキプレート上をいかなる方向に進行しようとも、上記(a)〜(g)のうちのいずれかの配列を必ず実現させるためには、上記(6)式に加えて、(1)式及び(2)式の両方を満足させる必要がある。このことから、この5個の車輪を有する車輪装置の場合は、車輪装置がデッキプレートの凹部の溝の長さ方向に対して直角に走行するときを想定する際に、上記(6)式を満足すればよいから、W2≦W1であることは必ずしも必要ではないことが分かる。したがって、デッキプレート上面の凸部の幅W1が溝の幅W2以上でなくても、デッキプレートの凹部の溝に落ち込むことなくスムーズに走行する条件を見出すことができる。
本実施例4では、前述のとおり、W1=186mm、W2=113mm、L=240mm、B1=196mm、B2=67mmである。これらの数値は、上記(1)式及び(2)式の両方を満足する上に、上記(6)式を満足する。
図19及び図20は、この車輪装置を取り付けてなる足場の一例であり、足場を折り畳んだまま、凹凸のあるデッキプレート30の上を移動中の状態を示す。(a)が正面図、(b)が側面図である。図19は車輪装置の車輪が凹部の溝の長さ方向に対して平行に走行する場合を、図20は車輪装置の車輪が凹部の溝の長さ方向に対して直角に走行する場合を、それぞれ表している。
この足場は、実施例1に示す足場と同じ構造を有するが、実施例1に示す伸張状態とは異なり、折り畳んだ状態にある。すなわち、矩形状の枠体からなる水平フレーム40の複数段をX字形のスライダークランク50を介して順に積み重ね、そして、最上段の水平フレーム40の上に作業床60を設置し、さらに、作業床60への昇降用梯子を備えたものである。作業床60の四隅には、手摺り柱62が設置され、そして、手摺り柱62の間には手摺りバー63が取り付けられて、手摺りを構成する。作業床60の四辺には巾木64が取り付けられる。X字形のスライダークランク50は、2本の斜材を交叉させ交叉部で軸着したものであり、上下の水平フレーム40の間に2列立設されている。この2本の斜材を水平方向にスライドさせることによって、その上下の水平フレーム40が昇降し、もって足場全体が上下に伸縮する。そして、水平フレーム40の両側面には、長材70と横材71からなる昇降用梯子が取り付けられ、この昇降用梯子で水平フレームを支持することによって水平フレームの高さが固定される。
そして、この足場の最下部を構成する垂直な円管部材20と水平な円管部材21に、上記車輪装置1が取り付けられており、また、垂直な円管部材20の側面には、先端にジャッキベース75を備えたアウトリガー76が取り付けられ、垂直な円管部材20を軸として水平方向に回動しうるように設置されている点も、実施例1に示す足場と同じである。
この車輪装置を取り付けてなる移動足場は、凹凸のあるデッキプレート上で、どの方向にもスムーズに水平移動可能であるとともに、進行方向を自由に変更することができる。また、所定の場所まで足場を移動した後に所定の場所で固定することができ、水平移動後に所望の高さまで作業床を上昇させて、所望の高さにおいて作業を行うこともできる。なお、この例では、足場を折り畳んだまま凹凸のあるデッキプレート上を移動中の状態を示したが、足場を伸張したまま凹凸のあるデッキプレート上を移動することもできることはいうまでもない。
本発明によれば、凹凸のあるデッキプレート上を移動する場合であってもスムーズに水平移動可能であるとともに、進行方向を自由に変更することもできる車輪装置を提供することができる。
また、この車輪装置を取り付けてなる移動足場は、凹凸のあるデッキプレート上であってもスムーズに水平移動可能であるとともに、進行方向を自由に変更することもできるので、作業性と安全性に優れている。また、水平移動後に所望の高さにおいて作業を行う足場とすることもできる。
本発明に係る車輪装置の一例であり、4個の車輪を有するものである。それぞれ、(a)が正面図、(b)が平面図、(c)が右側面図である。
図1に示す車輪装置が凹凸のあるデッキプレート上を、凹部の溝の長さ方向に対して平行に走行する様子を表す例であり、それぞれ、(a)が正面図、(b)が平面図、(c)が右側面図である。
図1に示す車輪装置が凹凸のあるデッキプレート上を、凹部の溝の長さ方向に対して直角に走行する様子を表す例であり、それぞれ、(a)が正面図、(b)が平面図、(c)が右側面図である。
図1に示す車輪装置を取り付けてなる足場の一例であり、足場を伸張したまま、凹凸のあるデッキプレート上を凹部の溝の長さ方向に対して平行に走行する様子を表す例であり、それぞれ、(a)が正面図、(b)が右側面図である。
図1に示す車輪装置を取り付けてなる足場の一例であり、足場を伸張したまま、凹凸のあるデッキプレート上を凹部の溝の長さ方向に対して直角に走行する様子を表す例であり、それぞれ、(a)が正面図、(b)が右側面図である。
本発明に係る車輪装置の一例であり、6個の車輪を有するものである。それぞれ、(a)が正面図、(b)が平面図、(c)が右側面図である。
図6に示す車輪装置が凹凸のあるデッキプレート上を、凹部の溝の長さ方向に対して平行に走行する様子を表す例であり、それぞれ、(a)が正面図、(b)が平面図、(c)が右側面図である。
図6に示す車輪装置が凹凸のあるデッキプレート上を、凹部の溝の長さ方向に対して直角に走行する様子を表す例であり、それぞれ、(a)が正面図、(b)が平面図、(c)が右側面図である。
図6に示す車輪装置を取り付けてなる足場の一例であり、足場を折り畳んだまま、凹凸のあるデッキプレート上を凹部の溝の長さ方向に対して平行に走行する様子を表す例であり、それぞれ、(a)が正面図、(b)が右側面図である。
図6に示す車輪装置を取り付けてなる足場の一例であり、足場を折り畳んだまま、凹凸のあるデッキプレート上を凹部の溝の長さ方向に対して直角に走行する様子を表す例であり、それぞれ、(a)が正面図、(b)が右側面図である。
本発明に係る車輪装置の一例であり、3個の車輪を有するものである。それぞれ、(a)が正面図、(b)が平面図、(c)が右側面図である。
図11に示す車輪装置が凹凸のあるデッキプレート上を、凹部の溝の長さ方向に対して平行に走行する様子を表す例であり、それぞれ、(a)が正面図、(b)が平面図、(c)が右側面図である。
図11に示す車輪装置が凹凸のあるデッキプレート上を、凹部の溝の長さ方向に対して直角に走行する様子を表す例であり、それぞれ、(a)が正面図、(b)が平面図、(c)が右側面図である。
図11に示す車輪装置を取り付けてなる足場の一例であり、足場を伸張したまま、凹凸のあるデッキプレート上を凹部の溝の長さ方向に対して平行に走行する様子を表す例であり、それぞれ、(a)が正面図、(b)が右側面図である。
図11に示す車輪装置を取り付けてなる足場の一例であり、足場を伸張したまま、凹凸のあるデッキプレート上を凹部の溝の長さ方向に対して直角に走行する様子を表す例であり、それぞれ、(a)が正面図、(b)が右側面図である。
本発明に係る車輪装置の一例であり、5個の車輪を有するものである。それぞれ、(a)が正面図、(b)が平面図、(c)が右側面図である。
図16に示す車輪装置が凹凸のあるデッキプレート上を、凹部の溝の長さ方向に対して平行に走行する様子を表す例であり、それぞれ、(a)が正面図、(b)が平面図、(c)が右側面図である。
図16に示す車輪装置が凹凸のあるデッキプレート上を、凹部の溝の長さ方向に対して直角に走行する様子を表す例であり、それぞれ、(a)が正面図、(b)が平面図、(c)が右側面図である。
図16に示す車輪装置を取り付けてなる足場の一例であり、足場を折り畳んだまま、凹凸のあるデッキプレート上を凹部の溝の長さ方向に対して平行に走行する様子を表す例であり、それぞれ、(a)が正面図、(b)が右側面図である。
図16に示す車輪装置を取り付けてなる足場の一例であり、足場を折り畳んだまま、凹凸のあるデッキプレート上を凹部の溝の長さ方向に対して直角に走行する様子を表す例であり、それぞれ、(a)が正面図、(b)が右側面図である。
符号の説明
1 車輪装置
5 ブラケット
6 車輪
10 回転自在のヒンジ構造
11 回動可能のヒンジ構造
20 垂直な円管部材
21 水平な円管部材
22 車輪装置間の連結部材
30 デッキプレート
40 水平フレーム
50 X字形のスライダークランク
60 作業床
62 手摺り柱
63 手摺りバー
64 巾木
70 梯子の長材
71 梯子の横材
75 ジャッキベース
76 アウトリガー
B1 車輪の左右の外側間隔
B2 車輪の左右の内側間隔
L 車輪の前後の間隔
W1 デッキプレートの凸部の幅
W2 デッキプレートの凹部の上面の幅