JP2007208018A - 単結晶シリコン用エッチング液及びシリコン蒸着マスクの製造方法 - Google Patents

単結晶シリコン用エッチング液及びシリコン蒸着マスクの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】エッチング特性を改善する単結晶シリコン用エッチング液を提供するとともに、この単結晶シリコン用エッチング液を用いることにより、高精細な蒸着マスクを安定して大量に製造することができるようにした、シリコン蒸着マスクの製造方法を提供する。
【解決手段】水酸化カリウム水溶液からなるエッチング液に、エッチング調整イオンが添加されてなる単結晶シリコン用エッチング液である。エッチング調整イオンは金属イオンであり、金属イオンは例えばカルシウムイオン、鉛イオン、アルミニウムイオンである。
【選択図】なし

Description

本発明は、単結晶シリコンを結晶異方性エッチングするのに用いられる単結晶シリコン用エッチング液と、このエッチング液を用いるシリコン蒸着マスクの製造方法に関する。
近年、有機エレクトロルミネッセンスを用いた発光パネルの開発が盛んに行われている。このような発光パネル、すなわち有機エレクトロルミネッセンス装置においては、例えば低分子系材料をRGB毎に分けて蒸着する際に、高精細な蒸着マスクが必要とされている(例えば、特許文献1参照)。
このような蒸着マスクとしては、従来、メタルマスクが主に用いられている。しかし、被蒸着体となる基板として一般にガラスを用いていることから、メタルマスクとガラスとの間で熱膨張係数の差が大きくなってしまい、高精細な蒸着が難しくなってしまうといった問題がある。また、メタルマスクは変形が起こりやすく、したがってこのマスクを高精細に製造するのが困難であるといった問題もある。そして、このような問題から従来では、マスク蒸着法により、例えば対角20インチ以上の大型ガラス基板に蒸着を行うのは、不可能であるとされていた。
そこで、熱膨張係数がガラスに近い単結晶シリコンを用い、マスクを作製する技術が提案されている(例えば、特許文献2参照)。この単結晶シリコンを用いたマスク作製技術によれば、例えば特許文献3にあるように、{110}面ミラー基板を用い、これを結晶異方性エッチングすることにより、高精細なマスクの作製が可能となる。また、特許文献4にあるように、予め単位マスク(第2の基板)を作製しておき、これを他の支持体(第1の基板)に接合することで、大面積かつ高強度のマスクを作製することが可能になる。
特開平8−227276号公報 特開平4−236758号公報 特開2003−100452号公報 特開2003−100460号公報
ところで、単結晶シリコンを用いて例えば大型マスクを作製する場合には、単位マスクを大量に作製しておく必要がある。この単位マスクの製造プロセスでは、通常はKOH水溶液を用い、SiOをマスクにしてウエットエッチングにより結晶異方性エッチングを行っている。
しかしながら、SiOをマスクにして単結晶シリコンをエッチングした場合、Si/SiOのレート選択比が比較的小さいことから、特にエッチングマスクとしてのSiOの膜厚を十分厚く形成できない場合などでは、所望のパターンを高精細に形成することができず、したがって高精細なマスクを安定して大量に製造するのが困難であった。また、単結晶シリコン基板についてのエッチング面粗さも比較的大きくなり、さらに、エッチング深さについても比較的大きなばらつきが生じてしまうことから、やはり高精細なマスクを安定して大量に製造するのが困難であった。
本発明は前記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、例えばSi/SiOのレート選択比を大きくし、またはエッチング面粗さを小さくし、またはエッチング深さについてのばらつきを小さくすることのできる単結晶シリコン用エッチング液を提供するとともに、この単結晶シリコン用エッチング液を用いることにより、高精細な蒸着マスクを安定して大量に製造することができるようにした、シリコン蒸着マスクの製造方法を提供することにある。
前記目的を達成するため本発明の単結晶シリコン用エッチング液は、水酸化カリウム水溶液からなるエッチング液にエッチング調整イオンが添加されてなることを特徴としている。
この単結晶シリコン用エッチング液によれば、エッチング調整イオンが添加されているので、これを用いて単結晶シリコンをウエットエッチングにより結晶異方性エッチングすることにより、単に水酸化カリウム水溶液からなるエッチング液を用いた場合に比べ、エッチング特性を改善することができる。
また、前記単結晶シリコン用エッチング液においては、前記エッチング調整イオンが金属イオンであるのが好ましい。
このようにすれば、金属イオンの種類に応じて、単結晶シリコンに対するエッチング特性を改善することができる。
また、前記単結晶シリコン用エッチング液においては、前記金属イオンの少なくとも一種がカルシウムイオンであり、該カルシウムイオンの前記水酸化カリウム水溶液に対する添加割合が、重量比で、100ppb以上1%以下であるのが好ましい。
このようにすれば、後述する実験結果によって示すように、Si/SiOのレート選択比を大きくすることができ、したがって例えばこれを用いて蒸着マスクを作製した場合に、高精細な蒸着マスクを安定して大量に製造することが可能になる。
また、前記単結晶シリコン用エッチング液においては、前記金属イオンの少なくとも一種が鉛イオンであり、該鉛イオンの前記水酸化カリウム水溶液に対する添加割合が、重量比で、100ppb以上500ppm以下であるのが好ましい。
このようにすれば、後述する実験結果によって示すように、単結晶シリコン基板についてのエッチング面粗さを小さくすることができ、また、エッチング深さについてもそのばらつきを十分小さくすることができる。したがって、例えばこれを用いて蒸着マスクを作製した場合に、高精細な蒸着マスクを安定して大量に製造することが可能になる。
また、前記単結晶シリコン用エッチング液においては、前記金属イオンの少なくとも一種がアルミニウムイオンであり、該アルミニウムイオンの前記水酸化カリウム水溶液に対する添加割合が、重量比で、100ppb以上1%以下であるのが好ましい。
このようにすれば、後述する実験結果によって示すように、単結晶シリコン基板についてのエッチング深さについてそのばらつきを十分小さくすることができ、したがって例えばこれを用いて蒸着マスクを作製した場合に、高精細な蒸着マスクを安定して大量に製造することが可能になる。
また、前記単結晶シリコン用エッチング液においては、前記水酸化カリウム水溶液の水酸化カリウム濃度が10重量%以上40重量%以下であるのが好ましい。
このような濃度範囲の水酸化カリウム水溶液を用いることにより、単結晶シリコンを良好に結晶異方性エッチングすることができる。
本発明のシリコン蒸着マスクの製造方法は、前記の単結晶シリコン用エッチング液を用い、単結晶シリコン基板をパターニングしてシリコン蒸着マスクを製造することを特徴としている。
このシリコン蒸着マスクの製造方法によれば、前述したようにエッチング特性を改善することができる単結晶シリコン用エッチング液を用いて、単結晶シリコン基板をパターニングするので、例えばSi/SiOのレート選択比を大きくし、またはエッチング面粗さを小さくし、またはエッチング深さについてのばらつきを小さくすることなどにより、高精細な蒸着マスクを安定して大量に製造することが可能になる。
また、前記シリコン蒸着マスクの製造方法においては、単結晶シリコン基板を熱酸化法によってその表層部にSiO膜を形成する工程と、前記SiO膜をパターニングしてマスクパターンを形成する工程と、前記マスクパターンをマスクとし、前記単結晶シリコン用エッチング液を用いて前記単結晶シリコン基板をエッチングし、パターニングする工程と、前記単結晶シリコン基板のパターニング後、前記SiO膜を除去する工程と、を備えているのが好ましい。
このようにすれば、特に単結晶シリコン基板における、ミラー指数の{110}面で表わされる表面にSiO膜からなるマスクパターンを形成し、これをマスクにして前記単結晶シリコン用エッチング液により前記{110}面をエッチングすることにより、結晶異方性エッチングを良好に行うことができる。すなわち、単結晶シリコン基板における{111}面に対するエッチング速度が、{110}面及び{100}面に対するエッチング速度よりも遅いという結晶の面方位依存性により、結晶異方性エッチングが良好になされるのである。そして、このようにして結晶異方性エッチングを行うことにより、前述したように、高精細な蒸着マスクを安定して大量に製造することが可能になる。
以下、本発明を詳しく説明する。
本発明の単結晶シリコン用エッチング液は、特に単結晶シリコンからなる蒸着マスクの製造に好適に用いられるもので、水酸化カリウム水溶液からなるエッチング液にエッチング調整イオンが添加されてなるものである。
水酸化カリウム水溶液は、単結晶シリコンのエッチングに一般的に用いられるもので、エッチング条件によっても異なるものの、水酸化カリウム濃度が10重量%以上40重量%以下のものが好適に用いられる。このような濃度範囲であれば、単結晶シリコンを容易にかつ比較的精細にエッチングすることができるからである。なお、後述するようにミラー指数の{110}面で表わされる表面をエッチングする場合には、一般に濃度が35重量%の水酸化カリウム水溶液が用いられることから、後述する例においても、濃度が35重量%の水酸化カリウム水溶液を用いるものとする。
エッチング調整イオンは、主に金属イオンからなるもので、具体的にはカルシウムイオン(Ca2+イオン)や鉛イオン(Pb2+イオン)、アルミニウムイオン(Al3+イオン)などが好適に用いられる。このようなエッチング調整イオンが添加されたことにより、本発明のエッチング液は、これによって単結晶シリコンをウエットエッチングした際、単に水酸化カリウム水溶液からなるエッチング液を用いた場合に比べ、エッチング特性を改善することができるようになっている。
具体的には、カルシウムイオンを添加することにより、Si/SiOのレート選択比を大きくすることができる。ここで、カルシウムイオンの前記水酸化カリウム水溶液に対する添加割合については、重量比で、100ppb(parts per billion;10−9)以上1%以下とするのが好ましい。一般にエッチング液としての高純度な水酸化カリウム水溶液には、その濃度にかかわらず、不純物が極めて僅かしか含有されておらず、もちろん不純物としてのカルシウム(カルシウムイオン)についても、その量が100ppb未満となっている。しかし、本発明者は、このカルシウムイオンを、後述する実験結果に示すように、不純物としてでなく有効成分として所定量以上添加することにより、前記したようにSi/SiOのレート選択比を大きくすることができることを見いだしたのである。
[実験例1]
35重量%の高純度の水酸化カリウム水溶液に対し、カルシウムイオンを添加して本発明のエッチング液を作製した。作製したエッチング液における、水酸化カリウム水溶液に対するカルシウムイオンの添加割合については、重量比で、100ppb、200ppb、300ppb、400ppb、500ppb、600ppbとなるようにした。ここで、カルシウムイオンの添加については、カルシウム塩としてCaCOを添加することで行った。また、その添加量については、カルシウム塩中のCa分、すなわちカルシウムイオン分が、前記した重量比となるように、換算して添加した。
また、比較のため、カルシウムイオンを添加しない水酸化カリウムからなるエッチング液も用意した。
そして、これらエッチング液を用い、SiO膜と単結晶シリコンの(110)面との間のエッチングレートの差(選択比)を求めた。なお、{110}面は、(110)面と等価な複数の面を含むものである。得られた結果を図1に示す。
図1に示すように、カルシウムイオンを100ppb以上添加することにより、添加しない場合に比べて選択比が格段に高くなった。また、添加量を100ppbより増やすことにより、選択比が除々に高くなった。したがって、カルシウムイオンを100ppb以上添加することにより、添加しない場合に比べ、Si/SiOのレート選択比を大きくすることができ、また、100ppb以上添加した状態で、Si/SiOのレート選択比が安定することが分かった。
なお、カルシウムイオンの添加量を、600ppbを越えてさらに増やしても、選択比の顕著な向上は認められず、ほぼ安定した値であった。また、カルシウムイオンの添加量が1%を越えると、相対的に水酸化カリウムの量が少なくなるため、エッチング機能が低下するおそれが生じる。したがって、カルシウムイオンの添加については、前述したように、100ppb以上1%以下とするのが好ましい。
また、このようにSi/SiOのレート選択比を大きくする目的で添加するエッチング調整イオンについては、周期律表においてカルシウムと同じアルカリ土類金属である、マグネシウム(Mg)やストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)を、カルシウムの場合と同じ添加量で用いることもできる。
ここで、前記実験例1では、カルシウムイオンの添加を、カルシウム塩であるCaCOを添加することで行ったが、カルシウムイオンの添加に用いるカルシウム塩又はカルシウム化合物としては、水酸化カリウム溶液に溶解するものであれば、塩化カルシウムや水酸化カルシウム、さらには有機酸塩(有機酸カルシウム)など種々のものが使用可能である。
また、本発明の単結晶シリコン用エッチング液においては、エッチング調整イオンとして、前述したように鉛イオン(Pb2+イオン)を添加するようにしてもよい。
鉛イオンを添加することにより、単結晶シリコン基板についてのエッチング面粗さを小さくすることができ、また、エッチング深さについてもそのばらつきを十分小さくすることができる。ここで、鉛イオンの前記水酸化カリウム水溶液に対する添加割合については、重量比で、100ppb以上500ppm(parts per million;10−6)以下とするのが好ましい。前述したように、エッチング液としての高純度な水酸化カリウム水溶液には、その濃度にかかわらず、不純物が極めて僅かしか含有されておらず、もちろん不純物としての鉛(鉛イオン)についても、その量が100ppb未満となっている。しかし、本発明者は、この鉛イオンを、後述する実験結果に示すように、不純物としてでなく有効成分として所定量以上添加することにより、前記したように単結晶シリコン基板についてのエッチング面粗さを小さくすることができ、また、エッチング深さについてもそのばらつきを十分小さくすることができることを見いだしたのである。
[実験例2]
35重量%の高純度の水酸化カリウム水溶液に対し、鉛イオンを添加して本発明のエッチング液を作製した。作製したエッチング液における、水酸化カリウム水溶液に対する鉛イオンの添加割合については、重量比で、100ppb、200ppb、300ppb、400ppb、500ppb、600ppbとなるようにした。ここで、鉛イオンの添加については、鉛塩としてPbCOを添加することで行った。また、その添加量については、鉛塩中のPb分、すなわち鉛イオン分が、前記した重量比となるように、換算して添加した。
また、比較のため、鉛イオンを添加しない水酸化カリウムからなるエッチング液も用意した。
そして、これらエッチング液を用い、単結晶シリコンの(110)面を100μmエッチングしたときの、エッチング面の平均粗さRa[μm]を求めた。得られた結果を図2に示す。
図2に示すように、鉛イオンを100ppb以上添加することにより、添加しない場合に比べ、面粗さが格段に小さくなり、面荒れが1/3程度に低減した。また、添加量を100ppbより増やすことにより、面粗さが除々に小さくなった。したがって、鉛イオンを100ppb以上添加することにより、添加しない場合に比べ、エッチング面粗さ、すなわち面荒れを小さくすることができ、また、100ppb以上添加した状態で、面粗さ(面荒れ)が小さい状態で安定することが分かった。
なお、鉛イオンの添加量を、600ppbを越えてさらに増やしても、面粗さ(面荒れ)の顕著な向上は認められず、ほぼ安定した値であった。また、鉛イオンの添加量が500ppmを越えると、相対的に水酸化カリウムの量が少なくなるため、エッチング機能が低下するおそれが生じる。したがって、鉛イオンの添加については、前述したように、100ppb以上500ppm以下とするのが好ましい。
ここで、前記実験例2では、鉛イオンの添加を、鉛塩であるPbCOを添加することで行ったが、鉛イオンの添加に用いる鉛塩又は鉛化合物としては、水酸化カリウム溶液に溶解するものであれば、塩化鉛や硫酸鉛、さらには有機酸塩(有機酸鉛)など種々のものが使用可能である。
また、このように鉛イオン(Pb2+イオン)を100ppb以上500ppm以下添加した単結晶シリコン用エッチング液は、エッチング深さについても、後述する実験結果で示すようにそのばらつきを十分小さくすることができる。そして、このエッチング深さについてのばらつき低減については、鉛イオンに代えて、アルミニウムイオンを添加することでもその効果を得ることができる。
すなわち、本発明の単結晶シリコン用エッチング液においては、エッチング調整イオンとして、アルミニウムイオン(Al3+イオン)を添加するようにしてもよい。アルミニウムイオンを添加しても、鉛イオンを添加した場合と同様に、単結晶シリコン基板に対するエッチング深さについて、そのばらつきを十分小さくすることができる。
ここで、アルミニウムイオンの前記水酸化カリウム水溶液に対する添加割合については、重量比で、100ppb以上1%以下とするのが好ましい。前述したように、エッチング液としての高純度な水酸化カリウム水溶液には、その濃度にかかわらず、不純物が極めて僅かしか含有されておらず、もちろん不純物としてのアルミニウム(アルミニウムイオン)についても、その量が100ppb未満となっている。しかし、本発明者は、このアルミニウムイオンを、後述する実験結果に示すように、不純物としてでなく有効成分として所定量以上添加することにより、前記したように単結晶シリコン基板に対するエッチング深さについて、そのばらつきを十分小さくすることができることを見いだしたのである。
[実験例3]
35重量%の高純度の水酸化カリウム水溶液に対し、アルミニウムイオンを添加して本発明のエッチング液を作製した。作製したエッチング液における、水酸化カリウム水溶液に対するアルミニウムイオンの添加割合については、重量比で、100ppb、200ppb、300ppb、400ppb、500ppb、600ppbとなるようにした。ここで、アルミニウムイオンの添加については、アルミニウム塩としてAl(COを添加することで行った。また、その添加量については、塩中のAl分、すなわちアルミニウムイオン分が、前記した重量比となるように、換算して添加した。
また、これとは別に、実験例2と同様にして、鉛イオンを添加してなる本発明のエッチング液(重量比で、100ppb、200ppb、300ppb、400ppb、500ppb、600ppbとなるように添加したもの)も用意した。
さらに、比較のため、アルミニウムイオン、鉛イオンのいずれも添加しない水酸化カリウムからなるエッチング液も、アルミニウムイオン添加による効果確認用のものと、鉛イオン添加による効果確認用のものとの二種類用意した。
そして、これらエッチング液を用い、単結晶シリコンの(110)面を100μmエッチングしたときの、深さのばらつきを求めた。エッチング深さについての測定は、エッチング面の30箇所について行った。そして、エッチング深さの平均を便宜上100μmとしてその標準偏差(σ)を算出し、さらにその3倍(3σ)を、深さばらつきとした。得られた結果を図3に示す。
図3に示すように、鉛イオン、アルミニウムイオンをそれぞれ100ppb以上添加することにより、添加しない場合に比べ、深さばらつきが1/2程度にまで小さくなった。また、添加量を100ppbより増やしても、深さばらつきはほぼ一定になった。したがって、鉛イオン又はアルミニウムイオンを100ppb以上添加することにより、添加しない場合に比べ、エッチング深さについて、そのばらつきを十分小さくするができ、また、100ppb以上添加した状態で、深さばらつきが小さい状態で安定することが分かった。
なお、鉛イオン、アルミニウムイオンの添加量を、600ppbを越えてさらに増やしても、深さばらつきの顕著な向上は認められず、ほぼ安定した値であった。また、鉛イオンの添加量が500ppmを越え、あるいはアルミニウムイオンの添加量が1%を越えると、相対的に水酸化カリウムの量が少なくなるため、エッチング機能が低下するおそれが生じる。したがって、鉛イオンの添加については、前述したように、100ppb以上500ppm以下とするのが好ましく、アルミニウムイオンの添加については、前述したように、100ppb以上1%以下とするのが好ましい。
ここで、前記実験例3では、鉛イオンの添加を、鉛塩であるPbCOを添加することで行ったが、鉛イオンの添加に用いる鉛塩又は鉛化合物としては、水酸化カリウム溶液に溶解するものであれば、塩化鉛や硫酸鉛、さらには有機酸塩(有機酸鉛)など種々のものが使用可能である。同様に、アルミニウムイオンの添加についても、塩化アルミニウムなど種々のものが使用可能である。
以上述べたように、本発明の単結晶シリコン用エッチング液にあっては、エッチング調整イオンが添加されているので、これを用いて単結晶シリコンをウエットエッチングにより結晶異方性エッチングすることにより、単に水酸化カリウム水溶液からなるエッチング液を用いた場合に比べ、エッチング特性を改善することができる。
具体的には、エッチング調整イオンとしてカルシウムイオンを、前記水酸化カリウム水溶液に対する添加割合が、重量比で、100ppb以上1%以下となるように添加することにより、Si/SiOのレート選択比を大きくすることができる。
また、エッチング調整イオンとして鉛イオンを、前記水酸化カリウム水溶液に対する添加割合が、重量比で、100ppb以上500ppm以下となるように添加することにより、単結晶シリコン基板についてのエッチング面粗さを小さくすることができ、また、エッチング深さについてもそのばらつきを十分小さくすることができる。
また、エッチング調整イオンとしてアルミニウムイオンを、前記水酸化カリウム水溶液に対する添加割合が、重量比で、100ppb以上1%以下となるように添加することにより、単結晶シリコン基板についてのエッチング深さについてそのばらつきを十分小さくすることができる。
したがって、このようなエッチング調整イオンが添加された本発明の単結晶シリコン用エッチング液によれば、これを用いて単結晶シリコンをエッチングし、パターニングすることで蒸着マスクを作製した場合に、高精細な蒸着マスクを安定して大量に製造することができる。
なお、前記の実験例では、本発明の単結晶シリコン用エッチング液として、エッチング調整イオンを一種類のみ添加した例を示したが、後述するように、複数種を添加することにより、添加したイオンによる効果をそれぞれ発揮させることができる。
次に、前記の単結晶シリコン用エッチング液を用いてなる、本発明のシリコン蒸着マスクの製造方法について説明する。
本発明のシリコン蒸着マスクの製造方法は、前記本発明の単結晶シリコン用エッチング液を用い、単結晶シリコン基板をパターニングしてシリコン蒸着マスクを製造する方法である。
まず、本発明の製造方法で得られるシリコン蒸着マスクについて説明する。図4(a)、(b)は、このシリコン蒸着マスクの一例を示す図であり、図4(a)、(b)中符号1はシリコン蒸着マスクである。このシリコン蒸着マスク1(以下、マスク1と記す)は、単結晶シリコン基板2の表面2a側から裏面2b側にかけて貫通孔3を形成したもので、単結晶シリコン基板2の表面2aを{110}面としたものである。
貫通孔3の開口の各辺は、図4(a)に示したように、{111}で表されるグループの面のうち、いずれかの面に平行に位置したものである。なお、立方格子においては、{111}面に垂直な方向が<111>方位である。ここで、図5を参照して、ミラー指数を使用した結晶面を説明する。図5から分かるように、{110}面と{111}面とは垂直に交差する。貫通孔3の壁面は、{111}で表されるグループの面(具体例は図4(a)に示す)のうちいずれかの面である。したがって、貫通孔3は、単結晶シリコン基板2の表面({110}面)2aに対して垂直に形成されており、これにより、マスク1はそのマスクパターンが高精細になっている。
このようなマスク1を製造するには、まず、図6(a)に示すようにSiウエハからなる単結晶シリコン基板2を熱酸化し、その表層部に厚さ1.5μmのSiO膜4を形成する。
次に、前記SiO膜4を、公知のレジスト技術及びホトリソ技術によってパターニングし、単結晶シリコン基板2の表面2a側にマスクパターン5aを、また、単結晶シリコン基板2の裏面2b側にマスクパターン5bをそれぞれ形成する。具体的には、スピンコート法によってレジストを単結晶シリコン基板2の表面上に塗布し、続いて20分間プレベークすることにより、レジストを乾燥する。次に、別に用意したフォトマスクをレジスト上に配置し、これを用いて露光する。次いで、前記レジストを現像し、さらに20分間ポストベークを行うことにより、単結晶シリコン基板2の表面2a側に第1のレジストパターン(図示せず)を形成する。同様にして、単結晶シリコン基板2の裏面2b側に、第2のレジストパターン(図示せず)を形成する。
その後、単結晶シリコン基板2の表面2a及び裏面2bにそれぞれ紫外線を3分間照射し、続いて緩衝フッ酸溶液(BHF)で13分間エッチングを行うことにより、図6(b)に示すようにSiO膜4をパターニングし、SiO膜4からなるマスクパターン5a、マスクパターン5bを形成する。
次いで、得られたSiO膜4からなるマスクパターン5a、5bをエッチングマスクとして用い、前記した本発明の単結晶シリコン用エッチング液を用いて結晶異方性エッチングを行うことにより、図6(c)に示すように単結晶シリコン基板2をパターニングし、微細な貫通孔3を形成する。
その後、不要なSiO膜4からなるマスクパターン5a、5bを、図6(d)に示すように緩衝フッ酸溶液(BHF)を用いてエッチングすることで除去し、シリコン蒸着マスク1を完成する。
このようなシリコン蒸着マスク1の製造方法によれば、ミラー指数の{110}面で表わされる表面にSiO膜4からなるマスクパターン5a、5bを形成し、これをマスクにして前記単結晶シリコン用エッチング液により前記{110}面をエッチングすることにより、結晶異方性エッチングを良好に行うことができる。すなわち、単結晶シリコン基板2における{111}面に対するエッチング速度が、{110}面及び{100}面に対するエッチング速度よりも遅いという結晶の面方位依存性により、結晶異方性エッチングを良好に行うことができる。そして、このようにして結晶異方性エッチングを行うことにより、前述したように、高精細な蒸着マスクを安定して大量に製造することができる。
また、前述したようにエッチング特性を改善することができる単結晶シリコン用エッチング液を用いて、単結晶シリコン基板2をパターニングするので、例えばSi/SiOのレート選択比を大きくし、またはエッチング面粗さを小さくし、またはエッチング深さについてのばらつきを小さくすることなどにより、前述したように、高精細な蒸着マスクを安定して大量に製造することができる。
ここで、従来のエッチング液としての水酸化カリウム水溶液中には、カルシウムイオンや鉛イオン、アルミニウムイオンなどの不純物が極めて僅か、すなわち100ppb未満しか含まれていない。その結果、従来では、極微量とはいえこれらエッチング調整イオンが存在している場合といない場合とで、Si/SiOのレート選択比やエッチング面粗さ、さらにはエッチング深さについて、ばらつきを生じさせていたと考えられる。
例えば、表面がミラー指数{110}面、厚さが400μmの単結晶シリコン基板をマスクに形成する場合に、その表層部に形成したSiO膜の厚さが1.5μm、Si(110)面のエッチングレートが2.5μm/minであったとすると、単結晶シリコン基板の一部をエッチングし、20μmの厚さにエッチングするためには、選択比が260以上である必要がある。
しかし、現状では、水酸化カリウム水溶液中の不純物濃度は0〜100ppb未満にまでばらつくため、選択比等が水溶液(エッチング液)ごとに変動し、結果として単結晶シリコンを希望する膜厚までエッチングできる選択比が安定して得られなかった。そして、これにより、従来ではシリコンマスクを安定して製造することができなかったのである。
これに対し、本発明のシリコン蒸着マスクの製造方法によれば、前述したように、高精細なシリコン蒸着マスクを安定して大量に製造することができる。
以下に、この効果を確認した実験例を示す。
[実験例4]
エッチング液として、以下の4種類(本発明品1〜4)を用意した。各エッチング液の、エッチング調整イオンの添加量は以下の通りである。また、比較のため、エッチング調整イオンを添加しない、水酸化カリウムからなるエッチング液(比較品)も用意した。
・本発明品1;エッチング調整イオンとして、Ca2+を300ppb、Pb2+を200ppb、Al3+を100ppb添加した。
・本発明品2;エッチング調整イオンとして、Ca2+を200ppb、Pb2+を100ppb添加した。また、Al3+については無添加とした。
・本発明品3;エッチング調整イオンとして、Ca2+を200ppb、Al3+を100ppb添加した。また、Pb2+については無添加とした。
本発明品4;エッチング調整イオンとして、Ca2+を100ppb添加した。また、Pb2+、Al3+については無添加とした。
なお、各エッチング調整イオンの添加形態としては、いずれも炭酸塩として水酸化カリウム水溶液中に添加し、溶解させた。
このようにして用意したエッチング液を用い、図4(a)、(b)に示したシリコン蒸着マスク1を、図6(a)〜(d)に示した方法で作製した。
まず、エッチング調整イオンを添加しない比較品を用い、Siエッチング装置を用いて図6(c)に示したエッチング工程を行ったが、SiO膜4の膜厚不足により、単結晶シリコン基板2を所望する膜厚までエッチングすることができず、マスクを完成させることができなかった。
次に、Ca2+、Pb2+、Al3+を全て添加した本発明品1を用い、Siエッチング装置を用いて前記エッチング工程を行った。その結果、エッチングレートが安定してマスクを完成させることができ、また、前記の実験例2で測定した平均面粗さRaも、0.13μmと小さくなり、さらに、実験例3で測定した深さばらつき3σも、1.2μmと小さくなった。したがって、シリコン蒸着マスク1を精度良く製造することができた。
次に、Ca2+、Pb2+を添加し、Al3+を添加しない本発明品2を用い、Siエッチング装置を用いて前記エッチング工程を行った。その結果、エッチングレートが安定してマスクを完成させることができ、また、前記の実験例2で測定した平均面粗さRaも、0.12μmと小さくなった。しかし、実験例3で測定した深さばらつき3σについては、1.5μmとなり、本発明品1の場合よりわずかに大きくなった。したがって、Al3+を添加することにより、エッチング深さについてのばらつきを抑えることができることが確認された。
次に、Ca2+、Al3+を添加し、Pb2+を添加しない本発明品3を用い、Siエッチング装置を用いて前記エッチング工程を行った。その結果、エッチングレートが安定してマスクを完成させることができた。しかし、実験例2で測定した平均面粗さRaは、0.35μmと大きくなり、また、実験例3で測定した深さばらつき3σについては、1.7μmとなり、本発明品2の場合よりさらに大きくなった。したがって、Pb2+を添加することにより、平均面粗さRa、エッチング深さについてのばらつきを、共に抑えることができることが確認された。
最後に、Ca2+のみを添加し、Pb2+、Al3+を添加しない本発明品4を用い、Siエッチング装置を用いて前記エッチング工程を行った。その結果、エッチングレートが安定してマスクを完成させることができた。しかし、実験例2で測定した平均面粗さRaは、0.34μmと大きくなり、また、実験例3で測定した深さばらつき3σについては、3.2μmとなり、本発明品1の場合より格段に大きくなった。
なお、Ca2+を添加せず、Pb2+を200ppb、Al3+を100ppb添加したエッチング液を作製し、これを用いて前記の例と同様にしてシリコン蒸着マスクの製造を行ったが、前記の比較品と同様に、SiO膜4の膜厚不足によって単結晶シリコン基板2を所望する膜厚までエッチングすることができず、蒸着マスクを完成させることができなかった。
しかし、SiO膜を十分に厚く形成し、これをマスクパターンにしてシリコン蒸着マスクの製造を行ったところ、蒸着マスクを完成させることができた。そして、得られた蒸着マスクにあっては、前記の平均面粗さRa、深さばらつき3σのいずれについても、良好であることが確認された。
なお、本発明の単結晶シリコン用エッチング液は、シリコン蒸着マスク以外のエッチングにも用いることができる。例えば、インクジェットヘッドにおける駆動基板のパターンニングにおいても、駆動基板として単結晶シリコン基板を用いる場合に、本発明の単結晶シリコン用エッチング液を用いることができる。
Caイオンの添加量と選択比(Si/SiO)との関係を示すグラフ。 Pbイオンの添加量と平均面粗さRaとの関係を示すグラフ。 Pb、Alの各イオンの添加量と深さばらつき3σとの関係を示すグラフ。 (a)、(b)は本発明に係るシリコン蒸着マスクの一例を示す図である。 ミラー指数を使用した結晶面の説明図である。 (a)〜(d)は本発明のシリコン蒸着マスクの製造工程説明図である。
符号の説明
1…シリコン蒸着マスク、2…単結晶シリコン基板、4…SiO膜、5a、5b…マスクパターン

Claims (8)

  1. 水酸化カリウム水溶液からなるエッチング液にエッチング調整イオンが添加されてなることを特徴とする単結晶シリコン用エッチング液。
  2. 前記エッチング調整イオンは金属イオンであることを特徴とする請求項1記載の単結晶シリコン用エッチング液。
  3. 前記金属イオンの少なくとも一種がカルシウムイオンであり、該カルシウムイオンの前記水酸化カリウム水溶液に対する添加割合が、重量比で、100ppb以上1%以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の単結晶シリコン用エッチング液。
  4. 前記金属イオンの少なくとも一種が鉛イオンであり、該鉛イオンの前記水酸化カリウム水溶液に対する添加割合が、重量比で、100ppb以上500ppm以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の単結晶シリコン用エッチング液。
  5. 前記金属イオンの少なくとも一種がアルミニウムイオンであり、該アルミニウムイオンの前記水酸化カリウム水溶液に対する添加割合が、重量比で、100ppb以上1%以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の単結晶シリコン用エッチング液。
  6. 前記水酸化カリウム水溶液の水酸化カリウム濃度が10重量%以上40重量%以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の単結晶シリコン用エッチング液。
  7. 請求項1〜6のいずれか一項に記載の単結晶シリコン用エッチング液を用い、単結晶シリコン基板をパターニングしてシリコン蒸着マスクを製造することを特徴とするシリコン蒸着マスクの製造方法。
  8. 単結晶シリコン基板を熱酸化法によってその表層部にSiO膜を形成する工程と、
    前記SiO膜をパターニングしてマスクパターンを形成する工程と、
    前記マスクパターンをマスクとし、前記単結晶シリコン用エッチング液を用いて前記単結晶シリコン基板をエッチングし、パターニングする工程と、
    前記単結晶シリコン基板のパターニング後、前記SiO膜を除去する工程と、を備えたことを特徴とする請求項7記載のシリコン蒸着マスクの製造方法。

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