JP2007207764A - 走査形荷電粒子顕微鏡 - Google Patents
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Abstract
【課題】分解能の向上と焦点深度の向上の両立を可能とする走査形荷電粒子顕微鏡の提供する。
【解決手段】荷電粒子線の通過を制限する通過開口を、荷電粒子源と走査偏向器の間に配置し、当該通過開口は、その開口中心に荷電粒子線の通過を制限する部材を備えてなることを特徴とする走査形荷電粒子顕微鏡を提供する。
【選択図】図1
【解決手段】荷電粒子線の通過を制限する通過開口を、荷電粒子源と走査偏向器の間に配置し、当該通過開口は、その開口中心に荷電粒子線の通過を制限する部材を備えてなることを特徴とする走査形荷電粒子顕微鏡を提供する。
【選択図】図1
Description
本発明は、試料表面を走査する荷電粒子顕微鏡に係り、特に焦点深度の向上と分解能の向上の両立を可能ならしめる走査形荷電粒子顕微鏡に関するものである。
電子顕微鏡の一つである走査形電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:以下SEMとする)は、例えば特開平5−94798号公報に開示されているように、電子銃から取出した電子ビームを電磁レンズ等で集束すると共に、試料上で二次元的に走査することで、試料から放出される二次荷電粒子を検出し、試料表面形状を画像表示部(例えばCRT)に表示して観察する装置である。
SEMの観察対象試料は、表面に凹凸が形成されていることが多い。例えば半導体デバイスの場合、配線等の凸部やコンタクトホール等の凹部がデバイス上に混在している。このような試料において像ぼけのない試料像を得るためには、電子ビームの径dpが目的とする像分解能以下であると共に、このような状態が観察領域全体に亘って維持されていることが必要である。即ち、観察領域内に形成されている凸部と凹部の高低差がSEMの焦点深度DF内に収まっている必要がある。
なお、この焦点深度DFは、近似的に次式で表すことができる。
DF=dp/α (1)
αはビームの半開角である。
DF=dp/α (1)
αはビームの半開角である。
しかしながら、SEMでは、特に高倍率観察時に焦点深度を拡大化することが困難である。何故ならSEMでは空間分解能を向上させるために電子ビームをプローブ状に集束する必要があるため、ビーム径dpを大きくすることができず、またビーム半開角αを小さくすると回折収差への影響が懸念されるからである。
更に昨今の半導体デバイスは、高集積化の目的のため、二次元的な回路素子の高密度化に加えて、高さ方向への積層化が求められるようになってきた。高密度の半導体デバイスを観察するSEMでは、高倍率時における電子プローブの空間分解能を高めるためにビーム径dpを小さく設定する必要があるが、反面、計算式(1)の関係により焦点深度が浅くなるため、積層化によって深く形成されるコンタクトホールではその上面に焦点合わせしたビームでは、その底部等への焦点が合わなくなり、部分的に像ぼけした試料像となってしまう。
即ち、SEMの電子プローブの空間分解能と焦点深度は相反する関係にあり、特に高集積化された半導体デバイスに対応できなくなるという問題がある。
本発明は、上記問題を解決し、分解能の向上と焦点深度の向上の両立を可能とする走査形荷電粒子顕微鏡の提供を目的とするものである。
上記目的を達成するために本発明では、荷電粒子源と、当該荷電粒子源から放出される荷電粒子線を集束するレンズと、前記荷電粒子線を試料上で二次元的に走査する走査偏向器を備えた走査形荷電粒子顕微鏡において、前記荷電粒子線の通過を制限する通過開口を、前記荷電粒子源と前記走査偏向器の間に配置し、当該通過開口は、少なくともその開口中心に前記荷電粒子線の通過を制限する部材を備えてなることを特徴とする走査形荷電粒子顕微鏡を提供する。
上記本発明によれば、試料表面を走査する荷電粒子顕微鏡において、焦点深度の向上と分解能の向上の両立を実現することが可能になる。
本発明実施例装置は、走査形荷電粒子顕微鏡の一つである走査形電子顕微鏡(SEM)において、電子ビームの空間分解能の向上と、焦点深度の拡大の両立を実現するためのものであり、その原理は以下の通りである。なお、以下の説明はSEMに関するものであるが、電子と同じ重さで逆の正極性を持つポジトロンのビームを試料上で走査する装置にも適用可能である。
焦点深度は(1)式で説明したように、DF=dp/αで表されるものであるが、一方ビーム径dpは、電子光学系で決まるガウス像サイズdg,回折収差,色収差、および球面収差によるビームのぼけ量(それぞれ、dd,dc,ds)の2乗和の平方根として次式で近似的に表される。
dp 2=dg 2+dd 2+dc 2+ds 2 (2)
dg=Mo・ρ (3)
dd=0.6λ/α (4)
dc=Cc・(ΔE/E)α (5)
ds=(1/2)Cs・α3 (6)
ここで、Moは電子光学系の倍率、ρは電子銃の仮想光源の大きさ、λは照射電子の波長、Cc及びCsはそれぞれ色収差係数と球面収差係数、Eは電子の照射エネルギー、ΔEは電子の照射エネルギーのばらつき幅である。代表的なdpのα依存性カーブを図4に示す。
dg=Mo・ρ (3)
dd=0.6λ/α (4)
dc=Cc・(ΔE/E)α (5)
ds=(1/2)Cs・α3 (6)
ここで、Moは電子光学系の倍率、ρは電子銃の仮想光源の大きさ、λは照射電子の波長、Cc及びCsはそれぞれ色収差係数と球面収差係数、Eは電子の照射エネルギー、ΔEは電子の照射エネルギーのばらつき幅である。代表的なdpのα依存性カーブを図4に示す。
dpのカーブはα=αoptで極小値を持ち、最高の像分解能(空間分解能)が得られる。α《αoptの領域ではdp=ddに、一方、α》αoptの領域ではdp=dsの関係がある。
以上のような条件によって決定される電子ビームを用いて、例えば高集積化された半導体デバイスを観察しようとした場合、ビーム径dpと焦点深度DFは、相反する関係にあるので、微細化された半導体素子を観察する目的で一定αの条件下でビーム径を小さくすると、焦点深度が不足する。即ち高積層化された半導体デバイス表面に焦点が合っても、当該表面に対し相当の高低差を持つ部分(例えばコンタクトホール底部等)で焦点が合わない場合がある。
また、式(1)から、DFを大きくするにはαをαoptから小さくすれば良いように思われるが、式(4)から判るように、dd∝1/αの関係があるため、ddが大きくなり、像分解能は劣化する。
本発明実施例装置は、電子ビームの空間分解能の向上と焦点深度の拡大化の両立を可能ならしめるものであり、特に高集積化され、かつ高低差が相当ある半導体デバイスをSEMで観察するに当たり、観察領域全体(電子ビームの走査領域)に亘って像ボケのない試料像を得ることのできる走査形電子顕微鏡に関するものである。
本実施例では、このような目的を達成するために、SEMの電子源と走査偏向器との間に、開口が輪帯状に形成された輪帯開口アパチャ(少なくともその開口中心に電子線の通過を制限する部材が配置されている開口)を配置し、当該アパチャを通過した電子ビームをプローブ状に集束すると共に、当該電子プローブを上記走査偏向器で二次元走査するようにした。
なお、電子線装置に輪帯開口アパチャを備えた例として特開平11−297610号公報,特開2000−12454号公報,特開昭48−85069号公報に開示の技術がある。これら文献に開示の技術は、試料或いはマスクに電子ビームを照射し、透過した電子ビームを蛍光板や試料に投影するためのものである。即ち以下に示すような輪帯開口アパチャを通過した電子ビームを対物レンズでプローブ状に集束し、当該電子プローブを試料上で走査するものではない。
試料やマスクに電子線を投影する電子線露光装置や透過型電子顕微鏡と異なり、電子線を走査するSEMにおいて高倍率設定時の分解能を決定するのはビーム径であり、高分解能を実現するためにはビーム径を細くする必要がある。一方、凹凸を持つ試料面上で常に高分解能を実現するためには、ビーム径を細くすると共に、当該ビーム径が細い状態で焦点深度を深くする必要がある。
しかしながら、先の説明にあるようにビーム径と焦点深度は相反する関係にあり、ビーム径を細くしつつ、焦点深度を深くすることは困難であった。本発明実施例装置はこのように、本来相反する条件を満たすことで、例えば三次元的に高集積化された半導体デバイス等の試料像を高分解能に観察することが可能になる。以下、本発明実施例装置の原理について、図面を用いて説明する。
図1に示すのは輪帯開口アパーチャを備えたSEMの概略図である。電子銃1から電子ビーム2を加速レンズ3で取り出して加速し、集束レンズ4および対物レンズ6で試料8に集束する。集束ビームは偏向器7により試料上で走査され、試料から放出される二次電子9は二次電子検出器10で検出される。偏向器7と電子銃1との間には、集束ビームを制限するアパチャ11が配置されている。アパチャ11には、通過開口の1つである輪帯開口12を設けてあり、試料上に集束する電子ビームの開き半開角αは図2に幾何光学的に示すように特定値αaと特定値αb(<αa)との帯域内にあり、開き半開角が0°(光軸)からαbの範囲は電子の通過が制限される。
今、輪帯度を表すパラメータβをβ=αb/αaで定義すると、β=0の開口は円形開口に相当する。図5に輪帯開口12と円形開口13を持つアパチャ11を示す。当該アパチャ11は板状体であり、タンタル(Ta)やモリブデン(Mo)材で形成される。またアパーチャにはクリーニング(汚れ除去)のための加熱手段を設けても良い。輪帯開口12において、内側の遮蔽板12bは開口外周12aと同心であり、梁12cおよび12dにより開口外周12aに固定されている。輪帯開口12の外側と内側の円の半径をそれぞれraおよびrbとすると、β=rb/raの関係がある。
アパチャ開口の輪帯効果をみるためにβ=0および0.6のSEM光学系の評価方法として使われる伝達関数(レスポンス関数とも呼ばれる)τ(υD)の計算カーブの比較例を図6に示す。ここで、縦軸のτ(υD)は像コントラストであり、横軸のυDのυは波数(空間周波数)、Dはλ/αであり、υDでυを無次元パラメータ化している。ここでのαはαaである。図6(b)は6(a)のυD=1.2〜2の領域の拡大図である。計算パラメータB/D,C/Dおよびb/Dにおいて、B,Cおよびbはそれぞれ球面収差,色収差および電子銃仮想光源の大きさを表すパラメータであり、次式で定義した。
B=(1/4)Cs・αa 3 (4)
C=(1/2)Cc(ΔE/E)αa (5)
b=ρ/2 (6)
B=(1/4)Cs・αa 3 (4)
C=(1/2)Cc(ΔE/E)αa (5)
b=ρ/2 (6)
図6ではB/D=0で、かつβ=0および0.6それぞれに対し(C/D,b/D)が(0,0),(0.4,0)および(0.4,0.1)の場合を代表的に計算した。特に、B/D=0で(C/D,b/D)=(0,0)の場合は、ポイント光源の無収差光学系に対応している。ここでは、τ(υD)カーブにおいて、τ(υD)=0.1を満足するυ値(=υ0.1)の逆数を像分解能R0.1として定義し、簡便な評価パラメータとして用いる。β=0→0.6でのD/R0.1(=υ0.1D)値を表1にまとめる。β=0→0.6で像分解能R0.1は約6〜7%の改善効果が得られる。さらに球面収差がある場合(B≠0)でも、B/D<1の場合はその影響が少なく、ほぼ同等のR0.1改善率が得られる。
次に、焦点深度Δzについての計算結果を示す。図7に光軸(z軸)上の規格化ビーム強度分布i(z)を示す。計算条件は図6と同じく、β=0および0.6それぞれに対し(C/D,b/D)が(0,0)および(0.4,0)である。焦点深度Δzは、i(z)>0.8を満足するz領域で近似でき、Δzα/D値も表1にまとめた。Δzにはβ=0→0.6で約50〜60%増と大きな改善効果がある。これらの像分解能や焦点深度の改善効果は、実験においても確認できた。
上記実施例では、電子銃にショットキー型電子銃を用いたが、電子顕微鏡に適している電子銃には、その他に加熱型(タングステン[W]ヘヤピン)や電界放出型(冷型と熱型の2つのタイプが有り)の電子銃がある。表2にこれらの電子銃特性(輝度,仮想光源の大きさρ,エネルギー幅ΔE、およびビーム電流の雑音)を示す。上記の輪帯による改善効果は、ρやΔEが小さい電子銃、つまり電界放出型とショットキー型の電子銃が特に優れており、実験的にもこれを確認した。
図6のτ(υD)カーブをもう少し詳しく検討する。輪帯により円形開口(β=0)の回折限界(υD=1.6)近くの高周波成分のτ値が高くなって像分解能R0.1は改善される一方、低周波成分(ただし、υD=0近傍は除く)のτ値が低下しており、その周波数成分のコントラストが劣化する。βが1に近づくほど、焦点深度は増大するが、コントラストがより劣化するので、焦点深度とコントラストは相反関係にある。輪帯度がβの輪帯開口に対する電子波強度の透過率は、その開口面積比から(1−β2)となり、円形開口(β=1)の場合と同じ透過電子波強度を得ようとすると、輪帯開口を照射する電子波強度を1/(1−β2)倍に増大する必要がある。これは、全周波数成分に対して1/(1−β2)倍のコントラスト増大になり、像質の改善につながる。この改善効果も実験的に確かめられた。
電子顕微鏡像は像分解能,像質,焦点深度などの特性で評価されるが、観察目的により、それぞれの特性にかける重みが異なる。これら種々の観察目的に応えるためには、円形開口と輪帯開口の両者を持つアパチャの採用することが望ましい。これらの開口が電子線に位置づけられるよう図示しない移動機構が設けられている。本実施例装置では図5に示す輪帯開口12に隣接して円形開口13を持つアパチャ11を形成し、この2つを切り替えられるようにした。輪帯開口12と円形開口13との選択は、以下の順序で行った。
先ず前もって、(1)輪帯開口12と円形開口13に対して、それぞれの開口中心が光軸にほぼ一致するようにアパチャをその開口面と平行な面内で移動調整する。次に、(2)前記のそれぞれの移動調整量と共に、両開口間での集束ビームの試料上での位置ずれおよび走査像回転を補正するために偏向器に印加するそれぞれのビーム位置補正量および走査像回転補正量を登録しておく。実際の観察時においては、(3)必要に応じてこれらの開口が選択できるように登録データから呼び出して、アパチャの開口の位置設定、およびビーム位置補正と走査像回転補正を行う。
また、輪帯開口は、円形開口に対して電子線通過量が少ないので、例えば像コントラストや明るさを優先したい場合は、円形開口を用い、一方、像分解能を優先して試料像形成を行う場合は、輪帯開口を用いると良い。像分解能は高倍率で像観察を行うときに特に求められるので、低倍率モードと高倍率モードの切り換えに連動して円形開口アパチャと輪帯開口の切り換えを自動的に行うようなシーケンスを装置に持たせておけば、使い勝手の良い走査形電子顕微鏡の提供が可能になる。
更に、半導体ウェハ上の多点観察を行うような装置の場合、観察点の状況に応じて、輪帯開口と円形開口を設定するレシピを組めるような構成とすれば、適正なビーム条件による自動多点観察を実現することが可能になる。
本実施例装置は、図示されない制御装置と表示装置を備えており、制御装置は上記の開口の切り換えや他の光学装置を自動的に切り変えるに必要なデータを記憶する記憶媒体を備えており、当該記憶媒体に記憶されたデータに従って、上記切り換え等が行われる。
上記実施例ではアパチャ11は1枚構成であったが、次に、2枚構成のアパチャの実施例について図8と図9を用いて説明する。アパチャ11は電子源側に配置され円形開口部Aを持つ円形開口アパチャ11A(第1の板状体)と、試料側に配置され遮蔽円板12bおよびそれに隣接した大円形開口部Cを持つ遮蔽円板・大円形開口アパチャ11B(第2の板状体)との2枚で構成され、かつ互いに平行な面内(光軸に対して垂直)で独立に移動ができ、電子線の軌道に円板や開口を位置づけられるような移動機構が付いている。図8および図9は該円形開口アパチャ11Aと該遮蔽円板・大円形開口アパチャ11Bとを組み合わせて、それぞれ輪帯開口および円形開口を形成する実施例を示している。輪帯開口は、該円形開口部Aと該遮蔽円板Bとの両者の中心が対物レンズ6の光軸上で重なるように移動することにより実効的に作れる。また、該円形開口部Aと該大円形開口部Cとの両者の中心を対物レンズ6の光軸上で重なるように移動することにより、該円形開口部Aに相当する円形開口が実質的に作れる。
輪帯開口の作成に当たっては、以下の3ステップで行った。まず、該円形開口部Aの中心を対物レンズの光軸上に配置する(ステップ1)。該円形開口アパチャ11Aが持つ該円形開口部Aの上で電子ビーム2をアライナー5で二次元走査し(図1参照)、その時の試料8からの二次電子量あるいは該円形開口アパチャ11Aに吸収される吸収電流量を輝度信号とした走査像Gを形成する(ステップ2)。この走査像Gに写っている該円形開口部Aの像をモニタしながら、その像の中心に該遮蔽円板12bを配置する(ステップ3)。ステップ2の該円形開口部Aの上で走査する該電子ビーム2は、その集束点を該円形開口部Aのz位置に必ずしも合わせる必要はないが、合わせた方がステップ3での該円形開口部Aの像がシャープになり、該円形開口部Aと該遮蔽円板12bとの軸合わせ精度が向上する。
この円形開口アパチャ11Aと該遮蔽円板・大円形開口アパチャ11Bとの間の距離が短く、この間のビームの発散、あるいは集束によるビーム径の変化が無視できる場合は、輪帯度βの計算に用いる該円形開口A、該遮蔽円板12b、および該大円形開口Cの大きさ(半径)比に補正は不要である。例えば、輪帯開口の形成の場合、該円形開口Aおよび該遮蔽円板12bの半径をそれぞれraおよびrbとすると、輪帯度βは、β=rb/raとなる。ただし、該遮蔽円板12bを形成する開口外周の半径r11aは、raに比べて十分大きい。
次に、輪帯度βの計算において、開口の大きさ(半径)比に補正が必要なアパチャ11の実施例を図10に示す。該アパチャ11は、図8および9の場合と同様、円形開口アパチャ11Aと遮蔽円板・大円形開口アパチャ11Bとの2枚で構成されているが、両者の間にはレンズ14が存在する。輪帯開口の形成の場合、該円形開口Aが制限するビームの該遮蔽円板・大円形開口アパチャ11Bのz位置でのビーム径をra,11B、該遮蔽円板12bの半径をrbとすると、輪帯度βは、次式で表される。ただし、該遮蔽円板12bを保持する開口外周12aの半径r12aは、ra,11Bに比べて十分大きい。
β=rb/ra,11B=Krb/ra
ここで、Kは大きさ補正係数で、K=ra/ra,11Bであり、必ずしも1にならない。
ここで、Kは大きさ補正係数で、K=ra/ra,11Bであり、必ずしも1にならない。
また、図8−図10のアパチャ11の構成において、円形開口部Aを持つ円形開口アパチャ11Aは電子源側に、一方、遮蔽円板12bおよびそれに隣接した大円形開口部Cを持つ遮蔽円板・大円形開口アパチャ11Bは試料側に配置されたが、その配置は逆であっても同様な効果が得られる。
図1のSEMは、電子顕微鏡像の輝度信号情報として、電子ビーム照射により試料の表面から放出される二次電子9を利用した例である。電子の加速電圧を100kV程度以上にし、また試料を厚さ数10〜数100nmの薄膜にすれば、前記の輝度信号情報として、該試料から透過した電子ビームも利用できる。二次電子の顕微鏡像が主に試料の表面情報をもたらすのに対し、透過電子ビームの顕微鏡像は試料の内部情報をもたらすのが特徴である。
また、本実施例装置では二次電子を用いて試料像を形成しているが、これに限らず反射電子を用いて試料像を形成する装置に適用しても良い。次に、本発明の上記アパチャの開口を円形開口および輪帯開口とした時のそれぞれの電子顕微鏡像DおよびEを撮影し、この両像を用いて新たな顕微鏡像Fを作成して表示することを特徴とした電子顕微鏡を用いた像形成方法の実施例を図11および図12を用いて説明する。本実施例でのアパチャは図5,図7、あるいは図9に示したアパチャ11であり、輪帯開口の輪帯度をβ=1/21/2=0.71とした。該電子顕微鏡像DおよびEを撮影し、この両像を用いて新たな顕微鏡像Fを作成して表示する処理フローを図11に示す。初めに、開口を円形開口および輪帯開口とした時のそれぞれの電子顕微鏡像DおよびEを撮影し、デジタル情報として記録する(S1)。ただし、輪帯開口での電子顕微鏡像Eの撮影には、開口通過後のビーム強度を円形開口の場合と同じにするため、電子銃から取り出す電子ビーム強度(正確には、放射角電流密度)を2倍にした。次に、該顕微鏡像DおよびEのそれぞれのフーリエ変換画像をDFおよびEFを作成する(S2)。該画像DFおよびEFにおいて、υ=υcで両者のコントラストレベルτ(υD)を合わせたそれぞれの画像DFBおよびEFBを作成する(S3)。ここで、υcはカットオフ周波数で試料上での電子ビームエネルギー,光学系の収差係数,ビーム半開角αで決まる値である(図12参照)。該フーリエ変換画像DFBには空間周波数υにおいて領域υ<υcを通すローパスフィルターをかけた画像DFBLを、一方、フーリエ変換画像EFにはυ>υcを通すハイパスフィルターをかけた画像EFBHを作成する(S4)。次に、該フーリエ変換画像DFBLおよびEFBHのそれぞれの逆フーリエ変換画像、つまり実空間画像DBLおよびEBHを作成する(S5)。最後に該実空間画像DBLおよびEBHにおいて、両画像の位置を合わせた和画像Fを新たに作成する(S6)。該和画像Fを画像表示部(CRTなど)に出力する(S7)。
この該和画像Fの特長は、画像Cよりυ>υcの高周波成分のコントラストが1〜2倍改善されていること、および焦点深度が数10%改善されていることにある。さらに、像分解能については数%改善されている。これらの改善効果についてレスポンス関数τ(υD)の観点から説明する。円形開口および輪帯開口をそれぞれ用いた時の電子顕微鏡のτC(υD)およびτA(υD)カーブ、上記のローパスおよびハイパスのフィルター処理して作成する該和画像Fに対応した仮想の電子顕微鏡のτC+A(υD)カーブを図12に比較して示す。τC+A(υD)は、υ<υcの領域ではτC(υD)に、一方、υ>υcの領域ではτA(υD)に一致する。後者の領域でτC+A(υD)/τC(υD)=1〜2であることから、この領域でのコントラストが円形開口の像と比べ1〜2倍に改善されることがわかる。
なお、結像光学系の瞳に輪帯形状を用いた例として、河田 聡偏「超解像の光学」(学会出版センター、1999年)の第2章の開示がある。
1…電子銃、2…電子ビーム、3…加速レンズ、4…集束レンズ、5…アライナー、6…対物レンズ、7…偏向器、8…試料、9…二次電子、10…二次電子検出器、11…アパチャ、11A…円形開口アパチャ、11B…遮蔽円板・大円形開口アパチャ、12…輪帯開口、12a…輪帯開口の外周、12b…遮蔽円板、12c,12d…遮蔽円板を支える梁、13…円形開口、14…レンズ。
Claims (11)
- 荷電粒子源と、当該荷電粒子源から放出される荷電粒子線を集束する対物レンズと、前記荷電粒子線を試料上で二次元的に走査する走査偏向器を備えた走査形荷電粒子顕微鏡において、
前記荷電粒子線の通過を制限する通過開口を、前記荷電粒子源と前記走査偏向器の間に配置し、当該通過開口は、円形開口であって、少なくともその円形開口中心に前記荷電粒子線の通過を制限する遮蔽円板を備え、当該遮蔽円板と前記円形開口との間に前記荷電粒子線を選択的に通過させてなり、前記対物レンズは、前記通過開口を通過した前記荷電粒子線を試料上に集束することを特徴とする走査形荷電粒子顕微鏡。 - 請求項1において、
前記対物レンズによって試料上に集束される荷電粒子線は、その開き半開角が特定値αaとαbとの間の帯域を持つことを特徴とする走査形荷電粒子線装置。 - 請求項1において、
前記通過開口は板状体内に形成され、当該板状体は前記荷電粒子線に対して、移動可能に形成されていることを特徴とする走査形荷電粒子顕微鏡。 - 請求項3において、
前記板状体には、前記通過開口の他に円形開口が設けられていることを特徴とする走査形荷電粒子顕微鏡。 - 荷電粒子源と、当該荷電粒子源から放出される荷電粒子線を集束する対物レンズと、前記荷電粒子線を試料上で二次元的に走査する走査偏向器を備えた走査形荷電粒子顕微鏡において、
前記試料に集束する荷電粒子線の開き半開角が、特定値αaとαbとの間の帯域を持つように、前記半開角が0°から前記αb(<αa)の前記荷電粒子線の通過を制限する遮蔽円板を備え、前記対物レンズは、前記開き半開角が前記αaとαbとの間の帯域の前記荷電粒子線を試料上に集束することを特徴とする走査形荷電粒子顕微鏡。 - 請求項5において、
前記荷電粒子源と、前記走査偏向器の間には前記遮蔽円板が形成されたアパチャが備えられることを特徴とする走査形荷電粒子顕微鏡。 - 請求項6において、
前記アパチャには前記遮蔽円板の他に、円形開口が設けられると共に、前記遮蔽円板、および円形開口を前記荷電粒子線の軌道上に位置づけるための移動機構が設けられていることを特徴とする走査形荷電粒子顕微鏡。 - 荷電粒子源と、当該荷電粒子源から放出される荷電粒子線を集束する対物レンズと、前記荷電粒子線を試料上で二次元的に走査する走査偏向器を備えた走査形荷電粒子顕微鏡において、
前記荷電粒子源と前記走査偏向器の間には、前記荷電粒子線の通過を制限する開口が、前記荷電粒子線の軌道上の異なる2個所に設置され、前記開口の一方は、円形開口であって、少なくともその円形開口中心に前記荷電粒子線の通過を制限する遮蔽円板を備え、当該遮蔽円板と前記円形開口との間に前記荷電粒子線を選択的に通過させるものであって、前記開口の他方は円形開口であり、前記対物レンズは、前記荷電粒子線の通過を制限する開口を通過した前記荷電粒子線を試料上に集束することを特徴とする走査形荷電粒子顕微鏡。 - 請求項8において、
前記遮蔽円板を有する開口は板状体に形成され、当該板状体には、他に円形開口が設けられると共に、当該円形開口と前記遮蔽円板を有する開口を前記荷電粒子線軌道に位置づける移動機構が設けられていることを特徴とする走査形荷電粒子顕微鏡。 - 請求項8において、
前記円形開口は板状体に形成され、当該板状体には、他に荷電粒子線遮断部が設けられると共に、当該荷電粒子線遮断部と前記円形開口を前記荷電粒子線軌道に位置づける移動機構が設けられていることを特徴とする走査形荷電粒子顕微鏡。 - 請求項8において、
前記円形開口と前記遮蔽円板を有する開口はそれぞれ第1の板状体,第2の板状体に形成され、前記第1の板状体には前記円形開口の他に荷電粒子線遮断部が設けられ、前記第2の板状体には前記遮蔽円板を有する開口他に円形開口が設けられ、前記第1の板状体、及び第2の板状体にはそれぞれ移動機構が設けられていることを特徴とする走査形荷電粒子顕微鏡。
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