JP2007203495A - 塗膜構造 - Google Patents

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Abstract

【課題】優れた遮熱効果を長く持続することのできる塗膜構造を提供する。
【解決手段】基材を覆って形成されるとともに太陽熱を反射して温度上昇を抑制しうる遮熱性塗膜と、その上に積層されて表面層を形成し、防汚性及び親水性を有する光触媒塗膜とを含み、前記光触媒塗膜は、光触媒塗料を塗工して膜厚が0.1〜10μm程度に形成され、この光触媒塗料は、光触媒粒子、及びバインダーとして有機無機ハイブリッドポリマーを含むことを特徴とする。
【選択図】 図1

Description

本発明は、建築部材を始めとする各種基材に使用され、安定した遮熱性能を維持することにより基材の温度上昇を確実に抑制しうる塗膜構造に関する。
太陽光線の約半分を占める赤外線を選択的・効果的に反射させる遮熱塗料は、屋根、外壁などに塗ることで屋内の温度の上昇を抑制でき、冷房の熱負荷を減じて省エネルギーに大きく寄与するため、ランニングコスト、及びCO2 排出削減に大きな効果があり、加えて塗膜自体の耐久性を向上させるメリットもある。そこで、工場、倉庫、学校、体育館を始めとして畜舎、鉄道車両など空調を必要とする構築物の屋根、壁などで広く使用され、一般住宅へも採用の巾を拡大している。更には、日射吸収率が高く蓄熱しやすいアスファルト舗装路面に遮熱塗料を塗布することにより、都市型災害として顕在化しているヒ一トアイランド現象を緩和する工法へも用途を広げている。
しかしこのような遮熱塗料は、屋根、外壁など屋外に露呈して用いられるため、塗膜表面に雨水或いは空気中のゴミ、埃が付着して汚れ易く、表面が汚れると反射率が落ちることから遮熱効果が低下する。特に都会地域では、自動車、工場から排出される硫黄酸化物、窒素酸化物などの浮遊微粒子によって、空気汚染が進んでいることから、遮熱塗膜表面の汚れが著しいため、時間経過とともに遮熱効果が低下するという問題がある。
そこで、酸化ケイ素に、水滴を水膜状に広げる機能(親水効果)があることに着目して、固形成分換算で酸化ケイ素化合物を8〜20重量%、アクリル樹脂エマルジョンなどのバインダー樹脂を4〜8重量%含む塗料を塗工した防汚層を熱反射塗料層の上に積層して、前記汚れを低減する提案がされている(例えば、特許文献1参照)。
特開2004−155026号公報
前記酸化ケイ素は塗装後の初期段階では親水効果が有効に作用することから、防汚層によって汚れ付着を抑制する効果が認められる。しかしながら酸化ケイ素は時間経過とともにその親水効果が低下する傾向があり、またそのために汚れが付着すると親水効果が一層低減するという負のスパイラル効果が生じる結果、熱反射塗料層の断熱効果が漸減するという問題がある。
本発明は、基材表面に、太陽熱を反射して温度上昇を抑制しうる遮熱性塗膜と、防汚性及び親水性を有する光触媒塗膜とを積層することを基本とし、優れた遮熱効果を長く持続することのできる塗膜構造の提供を課題としている。
前記目的を達成するために、請求項1に係る発明では、基材を覆って形成されるとともに太陽熱を反射して温度上昇を抑制しうる遮熱性塗膜と、その上に積層されて表面層を形成し、防汚性及び親水性を有する光触媒塗膜とを含み、前記光触媒塗膜は、光触媒塗料を塗工して形成され、この光触媒塗料は、光触媒粒子、及びバインダーとして有機無機ハイブリッドポリマーを含むことを特徴とする。
請求項2に係る発明では、前記光触媒塗膜は、暴露1ケ月経過時における静的水接触角が20°以下であり、また請求項3に係る発明において、前記光触媒塗膜は、膜厚が0.1〜10μmであることを特徴とする。
請求項4に係る発明においては、前記有機無機ハイブリッドポリマーは、一般式(1)RSi(OR1)3 (式中、Rは炭素数1〜8の有機基、R1は炭素数1〜5のアルキル基または炭素数1〜4のアシル基を示す)で表されるオルガノアルコキシシランの加水分解物またはその部分縮合物であるオルガノポリシロキサンを固形分換算で100重量部、有機溶媒を200〜4500重量部、シリル基含有ビニル系樹脂を20〜300重量部含むことを特徴とする。
請求項5に係る発明では、前記遮熱性塗膜は、750〜2200nmの波長における光反射率が50%以上であり、請求項6に係る発明においては、前記遮熱性塗膜は、有機系バインダーを用いた遮熱性塗料を塗工して形成されるともに、遮熱性塗膜と光触媒塗膜との間に、無機系バリア塗膜が更に形成され、また請求項7に係る発明では、前記無機系バリア塗膜は、バインダーとして有機無機ハイブリッドポリマーを用いたバリア塗料を塗工して形成されることを特徴とする。
請求項1に係る発明においては、遮熱性塗膜により赤外線が反射され、加えて防汚性に優れた光触媒塗膜がその上を覆うため、遮熱性塗膜の有する赤外線反射効果がいつまでも低下することがなく、優れた遮熱効果を長く持続することができる。また表面を覆う光触媒塗膜は、高い親水性を有することから、降雨時或いは霜などが降ると、表面に薄い水膜が形成されるため、これが遮熱効果を一層高める上、この水膜が蒸発する際に塗膜全面から蒸発潜熱を奪って冷却効果を生じることから、温度上昇を有効に抑制できる。しかも、光触媒塗膜は、有機無機ハイブリッドポリマーをバインダーとする光触媒塗料を塗工して形成されるため、無機ポリマーを使用する場合に比べ、光触媒塗膜に柔軟性が付加されて塗膜の耐久性が向上するとともに、柔らかい物性の有機基材に対しても適用が可能となる。
請求項2に係る発明のように、光触媒塗膜の暴露1ケ月経過時における静的水接触角が20°以下であると、非常に優れた親水性を発揮して均一な水膜形成が得られることから、高い遮熱効果を持続でき、また請求項3に係る発明のように、膜厚が0.1〜10μmの光触媒塗膜を設けると、光触媒の酸化還元作用に基づく付着油分など汚染物質を分解するセルフクリーニング効果、或いは藻類の発生防止などの効果が安定して得られる。そしてこの効果によって、遮熱性塗膜が遮熱性能をフルに発揮するために必要充分な透光度が維持される。
請求項4に係る発明のように、オルガノポリシロキサンが固形分換算で100重量部に対して、有機溶媒を200〜4500重量部、シリル基含有ビニル系樹脂を20〜300重量部含む有機無機ハイブリッドポリマーをバインダーとして用いると、光触媒塗料が光触媒の酸化還元作用に侵されない安定性を維持しつつ、しかも柔らかい有機基板に対しても良好に追従しうる柔軟性を有するため、長期間に亘って変質のない優れた耐久性が得られる。
請求項5に係る発明のように、750〜2200nmの波長における光反射率が50%以上遮熱性塗膜を用いると、高い熱反射率によって優れた断熱性能を発揮でき、請求項6に係る発明のように、有機系バインダーを用いた遮熱性塗膜と光触媒塗膜との間に、無機系バリア塗膜を形成すると、光触媒の酸化還元作用によって遮熱性塗膜が分解されることにより遮熱効果が低下するという不具合を防止でき、高い耐久性を得ることができる。
請求項7に係る発明のように、有機無機ハイブリッドポリマーを用いたバリア塗料を塗工して無機系バリア塗膜を形成すると、光触媒による遮熱性塗膜の分解を防止できるとともに、無機系バリア塗膜が柔軟性を有することから太陽光によって高温化する塗膜内部の熱応力が緩和され、耐久性を更に向上することができる。
以下、本発明の実施の一形態を、図示例とともに説明する。図1に示すように、塗膜構造1は、基材2を覆う遮熱性塗膜3と、その上に積層されて表面層を形成する光触媒塗膜4とを具える。
前記基材2は、屋根、壁その他の建築構築物の外装部分を遮熱する場合には、これらを構成する金属、ガラス、コンクリート、プラスチック、木材などが含まれ、このほか自動車、車両、船舶、コンテナなどのシェルター、更にはヒートアイランド現象抑制の用途においてはアスファルト舗装路面が含まれる。
前記遮熱性塗膜3は、これら基材2の表面に積層され、太陽熱を反射することにより基材2の温度上昇を抑えることができる。本形態の遮熱性塗膜3は、図1に示すように、反射性に優れた白色顔料を含む白色塗材を塗工して形成する白色下塗膜3Aと、光透過率の高い上塗膜3Bとからなる二層構成をなしている。
前記白色塗料は、バインダー、白色顔料、及び溶媒を必須の構成成分とし、必要に応じて、体質顔料、各種添加剤を加配して得られる。
バインダーとしては、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、ポリビニル樹脂、フッ素樹脂及びそれらのシリコン変性樹脂の1種以上を主成分とし、必要に応じヘキサメチレンジイソシアネート又はそのアダクト物、イソホロンジイソシアネート又はそのアダクト物、水添キシリレンジイソシアネート又はそのアダクト物、水添ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート又はそのアダクト物及びテトラメチルキシリレンジイソシアネート又はそのアダクト物の1種以上の組み合わせや、カルボキシル基及びアミノ基を有するアクリル樹脂を主成分とし、必要に応じグリシジル基を有する化合物との組み合わせることが好ましい。
溶媒は、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールを含むアルコール類、キシレン、トルエンを含む炭化水素類、メチルエチルケトン、アセトンを含むケトン類等が用いられる。また必要に応じて、塩酸、硝酸、酢酸等の酸化合物が併用され、10〜50質量%濃度溶液として使用する。
白色顔料としては、アルミナ、シリカを好適に採用でき、その配合量は、得られる白色下塗膜3A自体の750nm〜2200nmの波長領域における光反射率が、70%以上となるように決定される。なお太陽光の波長750〜2200nmの領域は、そこに含まれる赤外線が、紫外線、可視光線と異なり、熱エネルギーに変換される領域である。
添加剤としては、チタニウムキレート化合物、アルミニウムキレート化合物、ジルコニウムキレート化合物などの硬化促進剤、分散剤、酸化防止剤、防かび剤等が必要に応じて加配される。このようにして配合される白色塗料は、塗装作業性、厚膜化等の観点から、その塗料固形分が例えば40〜90質量%程度、好ましくは50〜85質量%含まれるように配合される。
前記上塗膜3Bは、白色下塗膜3Aに重ねて上塗料を塗工することにより形成される。この上塗料は、バインダー、着色顔料、及び溶媒を必須の構成成分とし、必要に応じて、体質顔料、各種添加剤が加配される。ここでバインダー、溶媒、及び添加剤は、前記白色塗料と同様のものが使用される。
着色顔料は、意匠デザインに合わせて適宜選択されるが、反射断熱効果を高めるために、白色、または明度8以上の淡彩色を選択することが好ましい。その配合量は、750nm〜2200nmの波長における光透過率が60%以上となるように決定されることが重要である。具体的配合量としては、使用される顔料に応じて適切に選定されるが、一般には、固形成分換算で上塗料中に例えば0.1〜20質量%程度、好ましくは0.5〜15質量%配合される。
しかして、750nm〜2200nmの波長領域における光反射率が70%以上の白色下塗膜3Aの上に、同波長領域においておける光透過率が60%以上の上塗膜3Bを積層して形成された遮熱性塗膜3においては、熱エネルギーを含む同波長領域の太陽光を50%以上反射する性能を発揮できる。そのため日射時において基材2の温度上昇が抑制されて、高い断熱効果が得られることから、冷房効率、即ちエネルギー効率を大幅に改善することができ、ランニングコストを抑制するとともに地球環境を保全しうる。
前記光触媒塗膜4は、前記遮熱性塗膜3の上に光触媒塗料を塗工して形成される。またこの光触媒塗料は、バインダーとして有機無機ハイブリッドポリマーを用い、これに光触媒粒子6を配合している。
有機無機ハイブリッドポリマーは、シロキサン無機ポリマーと有機ポリマーとがナノオーダーサイズで均一に分散したものであり、長期の耐久性を維持しつつ柔軟な塗膜を形成しうるポリマーである。具体的には一般式(1)RSi(OR1)3 (式中、Rは炭素数1〜8の有機基、R1は炭素数1〜5のアルキル基または炭素数1〜4のアシル基を示す)で表されるオルガノアルコキシシランの加水分解物またはその部分縮合物であるオルガノポリシロキサンを固形分換算で100重量部、有機溶媒を200〜4500重量部、シリル基含有ビニル系樹脂を20〜300重量部含む。
前記一般式(1)中のRは、炭素数1〜8の有機基であり、例えば、メチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基などの鎖状、分岐状および環状アルキル基、そのほか、γ−クロロプロピル基、ビニル基、トリフルオロプロピル基、γ−グリシドキしプロピル基、γ−メルカプトプロピル基、γ−メタクリオキシプロピル基、フェニル基、キシリル基、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル基などの官能性アルキル基、アリ−ル基などが挙げられる。
また一般式(1)中のR1は、炭素数1〜5のアルキル基または炭素数1〜4のアシル基であり、例えば、メチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、イソプロピル基、ブチル基、アセチル基などが挙げられる。R1の炭素数が5を越える場合、加水分解性、塗膜の硬度が低下する場合があり好ましくない。
一般式(1)で表されるオルガノアルコキシシランの具体例としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリアセトキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ペンチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシランなどを挙げることができる。メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシランを用いるのが好ましい。
オルガノアルコキシシランの加水分解物および/または部分縮合物であるオルガノポリシロキサンの製法については、各種の方法が提案されている。例えば特公昭52−39691に開示された、オルガノアルコキシシランに所定量の水を加えるとともに加熱して、加水分解、縮合を行わせる方法を採用できる。
溶媒は、塗膜形成要素が溶解・分散するものであれば特に制限されない。例えば、アルコール類、エーテル類、ケトン類、エステル類、その他ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロホルム、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン等の脂肪族、芳香族、脂環式の炭化水素、石油類等の一般的な有機溶媒、あるいは水が挙げられ、これらを単独、もしくは混合して用いることができる。
前記シリル基含有ビニル系樹脂は、主鎖が炭素骨格のビニル系重合体からなり、末端あるいは、側鎖にシラノ−ル基もしくは加水分解性基と結合したケイ素原子を有するシリル基を重合体1分子中に少なくとも1個以上有するものであり、シラン系化合物とビニル系化合物とを共重合することにより製造することができる。
光触媒粒子6は、例えば、TiO2 を始めとし、TiO3 、SrTiO3 、FeTiO3 、WO3 、SnO2 、BiO2 、In2 3 、ZnO、Fe2 3 、RuO2 、CdO、CdS、CdSe、GaP、GaAs、CdFeO3 、MoS2 、LaRhO3 などの無機粒子が用いられる。
この光触媒粒子6は、大きさが例えば粒径1〜300μm 程度、好ましくは3〜200μm に形成されたものが用いられる。また光触媒塗料において、光触媒粒子6は、バインダー100重量部に対して、例えば10〜60重量部程度、好ましくは15〜45重量部含まれ、しかも光触媒塗膜4は膜厚は0.1〜10μm の厚さに形成され、その中に光触媒粒子6が均一に分散して含有される。その結果光触媒の酸化還元作用に基づく付着油分など汚染物質を分解するセルフクリーニング効果、及び藻類の発生防止などの効果が作用することから、光触媒塗膜4に防汚染性、超親水性、防菌性、防カビ性、空気中の酸化物の分解機能が付与されるため、遮熱性塗膜3の遮熱性能をフルに発揮するために必要充分な透光度が維持される。なお前記膜厚は、0.1μm 未満では、光触媒粒子6の分布密度が不足するため、表面の汚染を招く恐れがあるとともに親水性能が不足し、逆に10μm を超えると、光触媒粒子6が分布過剰となり遮熱性塗膜3の熱反射機能を低下させる可能性がある。
またこのように構成された光触媒塗膜4は、暴露1ケ月経過時における静的水接触角が20°以下の性能を持ち、高い親水性が発揮される。従って、降雨時或いは霜などが降る際、塗膜表面に薄い水膜が形成されるため、均一に広がる水膜によって遮熱効果が一層高まられる。更にはこの水膜自体が蒸発する際に塗膜全面から蒸発潜熱を奪って冷却効果を生じ、その結果基材2の温度上昇を有効に抑制できる。
しかも、光触媒塗膜4は、有機無機ハイブリッドポリマーをバインダーとする光触媒塗料を塗工して形成されることから、無機ポリマーを用いた塗膜に比べて、光触媒塗膜4に柔軟性があるため、塗膜耐久性に優れるとともに、基材2が柔らかい物性の有機基材であっても、良好な追従性を有するため問題なく使用できる。しかも本形態で用いる有機無機ハイブリッドポリマーは、オルガノポリシロキサンが固形分換算で100重量部に対して、有機溶媒を200〜4500重量部、シリル基含有ビニル系樹脂を20〜300重量部含む組成であるため、取扱い性に優れ長期耐候性に富んだ塗膜が得られる。
従って、赤外線波長域の太陽光の50%以上を反射する遮熱性塗膜3の上を防汚性に優れた光触媒塗膜4が覆って塗膜表面の汚れを除去するため、遮熱性塗膜3の赤外線反射効果がいつまでも低下することがなく、その結果優れた遮熱効果を持続することができる。
本形態の遮熱性塗膜3は、前記の如く有機系バインダーを用いた遮熱性塗料を塗工して形成しいていることから、この上に直接光触媒塗膜4を形成すると光触媒粒子6の酸化還元作用が遮熱性塗膜3の有機系バインダーに作用してこれを分解し、その結果チョーキング(白化)と呼ばれる塗膜欠陥を引き起こす可能性がある。そこで本形態では、図1に示すように、遮熱性塗膜3と光触媒塗膜4との間に無機系バリア塗膜5を形成して、前記光触媒粒子6による侵食作用を防止している。
また本形態の無機系バリア塗膜5は、前記光触媒塗膜4用のバインダーと同様の有機無機ハイブリッドポリマーを用いたバリア塗料を塗工して形成している。従って無機系バリア塗膜5の有する柔軟性が作用することにより、太陽光によって高温化する塗膜内部の熱応力が緩和され、塗膜耐久性を更に向上することができる点で好ましい。
なお、セラミック塗料などを塗工して形成される無機系の遮熱性塗膜3においては、光触媒粒子6に侵食されることがないため、無機系バリア塗膜5を設けることなく遮熱性塗膜3に直接光触媒塗膜4を積層することができる。
尚、叙上の説明は本発明の実施の形態を例示したものである。従って本発明の技術的範囲はこれに何ら限定されるものではなく、前記した実施の形態の他にも、各種の変形例が含まれる。
本発明の一実施の形態を例示する断面図である。
符号の説明
1 塗膜構造
2 基材
3 遮熱性塗膜
4 光触媒塗膜
5 無機系バリア塗膜
6 光触媒粒子

Claims (7)

  1. 基材を覆って形成されるとともに太陽熱を反射して温度上昇を抑制しうる遮熱性塗膜と、その上に積層されて表面層を形成し、防汚性及び親水性を有する光触媒塗膜とを含み、 前記光触媒塗膜は、光触媒塗料を塗工して形成され、この光触媒塗料は、光触媒粒子、及びバインダーとして有機無機ハイブリッドポリマーを含むことを特徴とする塗膜構造。
  2. 前記光触媒塗膜は、暴露1ケ月経過時における静的水接触角が20°以下であることを特徴とする請求項1記載の塗膜構造。
  3. 前記光触媒塗膜は、膜厚が0.1〜10μmであることを特徴とする請求項1又は2記載の塗膜構造。
  4. 前記有機無機ハイブリッドポリマーは、一般式(1)RSi(OR1)3 (式中、Rは炭素数1〜8の有機基、R1は炭素数1〜5のアルキル基または炭素数1〜4のアシル基を示す)で表されるオルガノアルコキシシランの加水分解物またはその部分縮合物であるオルガノポリシロキサンを固形分換算で100重量部、有機溶媒を200〜4500重量部、シリル基含有ビニル系樹脂を20〜300重量部含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の塗膜構造。
  5. 前記遮熱性塗膜は、750〜2200nmの波長における光反射率が50%以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の塗膜構造。
  6. 前記遮熱性塗膜は、有機系バインダーを用いた遮熱性塗料を塗工して形成され、
    遮熱性塗膜と光触媒塗膜との間に、無機系バリア塗膜が更に形成されることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の塗膜構造。
  7. 前記無機系バリア塗膜は、バインダーとして有機無機ハイブリッドポリマーを用いたバリア塗料を塗工して形成されることを特徴とする請求項6記載の塗膜構造。
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