JP2007199473A - 感光性平版印刷版原版及びその製造方法 - Google Patents

感光性平版印刷版原版及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】合紙を用いなくても、輸送、保管時等において記録層に傷が付きにくく、かつ耐熱性に優れ、プレートクリーナー等の各種印刷用薬品、特にUVインキ用洗浄剤に対する耐性に優れた平版印刷版原版を提供することを目的とする。
【解決手段】支持体の片面に、ジアゾニウム塩またはo−キノンジアジド化合物を感光性化合物として紫外線感光性の記録層を有し、前記支持体の記録層を有する面とは反対側の面に、エポキシ樹脂およびレゾール樹脂から選ばれる少なくとも一種の有機ポリマーと、架橋剤と、を含む溶液を塗布、乾燥することにより架橋反応を生じさせて形成された有機ポリマー層を有することを特徴とする紫外線感光性平版印刷版原版により上記課題が解決される。

Description

本発明は感光性平版印刷版原版及びその製造方法に関する。特に支持体裏面に有機ポリマーを含む被覆層を設けた感光性平版印刷版原版及びその製造方法に関する。
感光性組成物からなる記録層を支持体に有する感光性平版印刷版原版(以下、PS版ともいう)は、多数枚重ね合わせて輸送、保管等が行われるが、支持体裏面との接触により記録層に傷が付くのを防ぐため、感光性平版印刷版原版一枚ごとに合紙と称される挟み紙を挿入することが一般的に行われている。しかし、使用時に合紙を抜き取る手間や、多量の合紙が産業廃棄物として廃棄されるという問題がある。この問題を解決するために、支持体裏面に飽和共重合ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂および塩化ビニリデン共重合樹脂からなる群より選択される一定の樹脂からなる被覆層を設けることが提案されている(特許文献1参照)。
一方、カード印刷やパッケージ印刷に適するUVで硬化するUVインキによる印刷が、近年増加して来ている。このUVインキの印刷工程では、ローラーや印刷版を洗浄するために、各種ポリマーに対して高い溶解性を有する有機溶剤を多量に含有する洗浄剤が用いられている。このような洗浄剤を用いると、印刷版支持体の記録層塗布面と反対側の面(裏面)に回りこんだり、飛び散ったりした洗浄剤が、上述した樹脂を溶解するため、べたついて作業性が悪化するという問題がある。また、ポリエステル樹脂であってもポリエチレンテレフタレート樹脂のように特殊な有機溶剤にしか溶解しない樹脂では、洗浄剤に溶解しにくいものの、製造に汎用の有機溶剤を用いることができず工業的な製造に不向きである。
また、より高い耐刷性やUVインキ適性を持たせるために、画像露光し、現像した後に印刷版を高温で処理するいわゆる「バーニング処理」を行うことがあるが、特許文献1に記載されるような従来の樹脂は、このバーニング処理により溶融してしまい、バーニングプロセッサーのロールを汚すなどの問題がある。
特開平5−210235号公報
本発明は、合紙を用いなくても、輸送、保管時等において記録層に傷が付きにくい平版印刷版原版を提供することを目的とする。
本発明はまた、合紙を用いなくても、輸送、保管時等において記録層に傷が付きにくく、かつ耐熱性に優れ、プレートクリーナー等の各種印刷用薬品、特にUVインキ用洗浄剤に対する耐性に優れた平版印刷版原版を提供することを目的とする。
本発明はまた、汎用の有機溶剤で塗布することができる、製造適正に優れた平版印刷版原版を提供することを目的とする。
本発明は、支持体の片面に、ジアゾニウム塩またはo−キノンジアジド化合物を感光性化合物として紫外線感光性の記録層を有し、前記支持体の記録層を有する面とは反対側の面に、エポキシ樹脂およびレゾール樹脂から選ばれる少なくとも一種の有機ポリマーと、架橋剤と、を含む溶液を塗布、乾燥することにより架橋反応を生じさせて形成された有機ポリマー層を有することを特徴とする紫外線感光性平版印刷版原版、を提供する。
本発明はまた、 支持体の片面に、ジアゾニウム塩またはo−キノンジアジド化合物を感光性化合物として紫外線感光性組成物を塗布、乾燥して記録層を形成し、前記支持体の記録層を有する面とは反対側の面に、エポキシ樹脂およびレゾール樹脂から選ばれる少なくとも一種の有機ポリマーと、架橋剤と、を含む溶液を塗布、乾燥することにより架橋反応を生じさせて有機ポリマー層を形成することを特徴とする紫外線感光性平版印刷版原版の製造方法、を提供する。
本発明においては、エポキシ樹脂およびレゾール樹脂から選ばれる少なくとも一種の有機ポリマー(前駆体)と架橋剤とを含む塗布液を塗布、乾燥することにより膜構造の有機ポリマー層が形成されるが、この製膜工程において、塗布後の乾燥による加熱と塗布後の自然経時により架橋が進行し、3次元の架橋構造を有するポリマー層が形成される。この高密度架橋構造により、耐薬品性、とりわけ耐有機溶剤性に優れた有機ポリマー層が形成されると考えられる。また、本発明に使用される前記ポリマーは、熱硬化性樹脂のため、得られた有機ポリマー層は耐熱性にも優れ、バーニングに対する適性がある。
このように、本発明の平版印刷版の支持体裏面には、熱硬化性樹脂からなる耐薬品性、耐有機溶剤性及び耐熱性に優れた、有機ポリマー層が存在することから、有機溶剤による処理や画像形成時のバーニング処理を経た後も、記録層と直接接する面に所望されない変性が生じにくく、合紙を介することなく積層した場合にも、記録層の傷つき防止効果を、環境に左右されず、安定して長期間にわたり維持することができるものと考えられる。
本発明の平版印刷版原版により、合紙を用いずに輸送、保管時等を行うことができる。また、バーニング工程を行っても溶融せず、プロセッサーロールを汚さない。更に、プレートクリーナー等の各種印刷用薬品、特にUVインキ用洗浄剤を用いてもべたつかず、作業性が良好な平版印刷版を得ることができる。
本発明の平版印刷版原版はまた、汎用の有機溶剤で塗布することができ、製造適正に優れる。
本発明の平版印刷版原版を以下に説明する。
(1)有機ポリマー層
本発明の一つの特徴は、支持体の記録層を有する面とは反対側の面に有機ポリマー層を有し、前記有機ポリマー層がエポキシ樹脂およびレゾール樹脂から選ばれる少なくとも一種の有機ポリマーと架橋剤とを含む塗布液を塗布、乾燥することにより形成された架橋構造を有するポリマー層であることである。
有機ポリマー層の形成に用いられるエポキシ樹脂、レゾール樹脂及びその架橋剤としては、下記のような一般的に知られた素材を用いることができる。
<エポキシ樹脂及びその架橋剤>
エポキシ樹脂としては、ビスフェノールAとエピクロルヒドリンの縮合物で、種々のエポキシ当量のものが使用できる。このようなエポキシ樹脂は市販品としても入手可能であり、例えば、ジャパン エポキシレジン(株)製のエピコート828、エピコート1001、エピコート1003、エピコート1004、エピコート1007、エピコート1009、エピコート1005F(いずれも商品名)などが挙げられる。
また、ビスフェノールFとエピクロルヒドリンの縮合物で、種々のエポキシ当量のものもまた好適に使用することができ、具体的には、例えば、ジャパン エポキシレジン(株)製のエピコート4004P,エピコート4007P(商品名)などが挙げられる。
ビスフェノールAとビスフェノールFの混合物とエピクロルヒドリンの縮合物、例えばジャパン エポキシレジン(株)製のエピコート4110、エピコート4210(商品名)など、フェノール樹脂とエピクロルヒドリンの縮合物、例えば、ジャパン エポキシレジン(株)製の エピコート152、エピコート154(商品名)なども、好ましいものとして挙げられる。
エポキシ樹脂は、単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
有機ポリマー層中のエポキシ樹脂の含有量は、固形分換算で好ましくは30〜99.7質量%、より好ましくは60〜98質量%の範囲である。
前記エポキシ樹脂とともに用いられる架橋剤としては、一般に、エポキシ樹脂の架橋、硬化に用いられる種々の化合物が用いられる。
架橋剤としては、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、メタキシレンジアミン、イソホロンジアミン、トリスジメチルアミノメチルフェノールなどのアミン類、1−イソブチル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジルベンジル−2−メチルイミダゾール、2−ヘプタイミダゾールなどのイミダゾール類、無水フタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水ピロメリット酸、などの酸無水物、ビスフェノールAなどのフェノール類などが挙げられる。
架橋剤の有機ポリマー層中の含有量は、固形分換算で好ましくは0.3〜30質量%、より好ましくは1〜20質量%の範囲である。
<レゾール樹脂及びその架橋剤>
本発明に用いうるレゾール樹脂としては、フェノール類とホルマリンとをアルカリ存在下で、縮合した汎用の樹脂をいずれも用いることができる。
レゾール樹脂の調製に用いられるフェノール類としては、石炭酸、m−クレゾール、p−クレゾール、o−クレゾールなどが好適に用いられ、それらの混合物も用いることが出来る。レゾール樹脂は、フェノール類のホルマリンとの縮合の程度、分子量、残存モノマーの残留率などは目的に応じて選択して使用すればよく、また、これらの物性が異なる種々のグレードのものが市販されており、それらも本発明に用いることができる。
なお、ここでいうレゾール樹脂とは、3次元架橋して硬化型フェノール樹脂となる前のいわゆるレゾール樹脂前駆体を指している。
本発明に使用しうるレゾール樹脂の市販品としては、具体的には、例えば、住友ベークライト株式会社製のスミライトレジンPR−9480、同PR−14170、同PR−51107、PR−51904、同EM−1、同PR−EPN、同PR−UFC−504(いずれも商品名)などを用いる事が出来る。
レゾール樹脂は、単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
有機ポリマー層中のレゾール樹脂の含有量は、固形分換算で好ましくは30〜99.7質量%、より好ましくは60〜98質量%の範囲である。
本発明でいう架橋剤には、自身が架橋に関与する物質だけでなく、架橋反応を促進する物質も包含される。なお、レゾール樹脂に使用しうる好ましい架橋剤としては、例えば、パラトルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、シュウ酸、フェニルホスホン酸、酸性リン酸フェニルエステルなどの有機酸、リン酸、硝酸、塩酸などの無機酸などを用いる事が出来る。
また、架橋剤として水酸化カルシウムなどのアルカリ土類金属の水酸化物、酸化カルシウムなどのアルカリ土類金属の酸化物なども使用することができる。
架橋剤の有機ポリマー層中の含有量は、固形分換算で好ましくは0.3〜30質量%、より好ましくは1〜20質量%の範囲である。
〔有機ポリマー層の添加物〕
(充填剤)
エポキシ樹脂、レゾール樹脂には、一般に、種々の充填剤を添加する事が行われているが、本発明の有機ポリマー層にもそれらのものを混合して用いることができる。
充填剤としては、たとえば、炭酸カルシウム粉末、シリカ粉末、木紛、パルプなどが挙げられる。
充填剤の含有量は、固形分換算で好ましくは1〜50質量%、より好ましくは5〜30質量%の範囲である。
(他の有機ポリマー)
本発明における有機ポリマー層は、ポリマー成分として前記特定熱硬化性樹脂のみを含むものであってもよいが、本発明の効果を損なわない限りにおいて、特定熱硬化性樹脂以外の有機ポリマー、例えば、ポリスチレン、ポリアミド、ポリウレタン、ポリウレア、アクリル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、などを併用することもできる。併用しうる有機ポリマーは、効果の観点から疎水性樹脂であることが好ましい。
併用しうる他の有機ポリマーの含有量は、特定熱硬化性樹脂に対して40質量%以下であることが好ましい。
(他の成分)
有機ポリマー層には、可とう性の付与、すべり性の調整や塗布面状を改良する目的で、可塑剤、界面活性剤、その他の添加物を、本発明の効果を損ねない範囲で必要により添加できる。
(可塑剤)
可塑剤としては、例えば、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ジイソブチルフタレート、ジオクチルフタレート、オクチルカプリルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート、ジトリデシルフタレート、ブチルベンジルフタレート、ジイソデシルフタレート、ジアリルフタレートなどのフタル酸エステル類、ジメチルグリコールフタレート、エチルフタリールエチルグリコレート、メチルフタリールエチルグリコレート、ブチルフタリールブチルグリコレート、トリエチレングリコールジカプリル酸エステルなどのグリコールエステル類、トリクレジールホスフェート、トリフェニルホスフェートなどのリン酸エステル類、ジイソブチルアジペート、ジオクチルアジペート、ジメチルセバケート、ジブチルセバケート、ジオクチルアゼレート、ジブチルマレエートなどの脂肪族二塩基酸エステル類、ポリグリシジルメタクリレート、クエン酸トリエチル、グリセリントリアセチルエステル、ラウリン酸ブチルなどが有効である。
可塑剤の有機ポリマー層の添加量は、有機ポリマー層に用いられる有機ポリマーの種類によって異なるが、ガラス転移温度が60℃以下にならない範囲で加えられることが好ましい。
(界面活性剤)
界面活性剤としては、アニオン系、カチオン系、ノニオン系および両性界面活性剤が挙げられる。具体例としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンポリスチリルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル類、グリセリン脂肪酸部分エステル類、ソルビタン脂肪酸部分エステル類、ペンタエリスリトール脂肪酸部分エステル類、プロピレングリコールモノ脂肪酸エステル類、しょ糖脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸部分エステル類、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、ポリグリセリン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレン化ひまし油類、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸部分エステル類、脂肪酸ジエタノールアミド類、N,N−ビス−2−ヒドロキシアルキルアミン類、ポリオキシエチレンアルキルアミン、トリエタノールアミン脂肪酸エステル、トリアルキルアミンオキシドなどの非イオン性界面活性剤、脂肪酸塩類、アビエチン酸塩類、ヒドロキシアルカンスルホン酸塩類、アルカンスルホン酸塩類、ジアルキルスルホ琥珀酸エステル塩類、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、分岐鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキルフェノキシポリオキシエチレンプロピルスルホン酸塩類、
ポリオキシエチレンアルキルスルホフェニルエーテル塩類、N−メチル−N−オレイルタウリンナトリウム塩、N−アルキルスルホ琥珀酸モノアミド二ナトリウム塩、石油スルホン酸塩類、硫酸化牛脂油、脂肪酸アルキルエステルの硫酸エステル塩類、アルキル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩類、脂肪酸モノグリセリド硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、アルキルリン酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸エステル塩類、スチレン/無水マレイン酸共重合物の部分鹸化物類、オレフィン/無水マレイン酸共重合物の部分鹸化物類、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物類などのアニオン界面活性剤、アルキルアミン塩類、第四級アンモニウム塩類、ポリオキシエチレンアルキルアミン塩類、ポリエチレンポリアミン誘導体などのカチオン性界面活性剤、カルボキシベタイン類、アミノカルボン酸類、スルホベタイン類、アミノ硫酸エステル類、イミタゾリン類などの両性界面活性剤が挙げられる。以上挙げた界面活性剤の中でポリオキシエチレンとあるものは、ポリオキシメチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシブチレンなどのポリオキシアルキレンに読み替えることもでき、それらの界面活性剤もまた包含される。
更に好ましい界面活性剤は、分子内にパーフルオロアルキル基を含有するフッ素系界面活性剤である。フッ素系界面活性剤の例としては、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキルリン酸エステルなどのアニオン型、パーフルオロアルキルベタインなどの両性型、パーフルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩などのカチオン型およびパーフルオロアルキルアミンオキサイド、パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物、パーフルオロアルキル基および親水性基含有オリゴマー、パーフルオロアルキル基および親油性基含有オリゴマー、パーフルオロアルキル基、親水性基および親油性基含有オリゴマー、パーフルオロアルキル基および親油性基含有ウレタンなどの非イオン型が挙げられる。
界面活性剤は、単独又は2種以上を組み合わせて使用することができ、有機ポリマー層中に好ましくは0.001〜10質量%、より好ましくは0.01〜5質量%の範囲で添加できる。
有機ポリマー層には更に、着色のための染料、アルミニウム支持体との密着向上のためのシランカップリング剤、ジアゾニウム塩からなるジアゾ樹脂、有機ホスホン酸、有機リン酸およびカチオン性ポリマー等、更には滑り剤として通常用いられるワックス、高級脂肪酸、高級脂肪酸アミド、ジメチルシロキサンよりなるシリコーン化合物、変性ジメチルシロキサン、ポリエチレン粉末等を適宜加えることができる。
有機ポリマー層の厚さは、合紙がなくとも記録層を傷付け難い厚さであればよく、通常0.3〜25μmの範囲が好ましく、より好ましくは0.5〜15μmの範囲であり、更に好ましくは1.0〜20μmの範囲である。上記範囲内であれば、平版印刷版原版を重ねて取り扱った場合に、記録層の擦れ傷等の発生を効果的に防止することができる。
(有機ポリマー層の形成)
本発明における有機ポリマー層は、エポキシ樹脂およびレゾール樹脂から選ばれる少なくとも一種の有機ポリマーと、架橋剤と、所望により含まれるその他の化合物とを含む塗布液を調製し、この塗布液を支持体上の記録層を形成する面とは反対側の面(裏面)に塗布し、乾燥することにより形成できる。
塗布液には、取り扱い性向上のため、溶剤を添加することが好ましい。
使用される溶媒としては、特開昭62−251739号公報に記載されているような有機溶剤を単独あるいは混合して用いることができる。また、溶剤としては、エチレンジクロライド、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、2−メトキシエチルアセテート、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、ジメトキシエタン、乳酸メチル、乳酸エチル、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラメチルウレア、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、γ−ブチロラクトン、トルエン等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。これらの溶剤は単独あるいは混合して使用される。
有機ポリマー層の形成にあたって、上記塗布液を支持体上の記録層を形成する面とは反対側の面(裏面)に塗布し、乾燥することにより、乾燥時に架橋剤の働きで、有機ポリマー層内に高密度の架橋構造が形成されるとともに、熱硬化性のこれら樹脂が硬化し、高い硬度と強度とを有し、耐傷性のみならず、耐薬品性、耐溶剤性に優れた被膜が形成される。
乾燥条件は、熱硬化性樹脂の硬化と、架橋剤に起因する架橋構造の形成を促進するといった観点から、以下のようなものが好ましい。
例えば、100℃〜180℃の乾燥風で、30秒〜5分間熱することが好ましく、乾燥後、100〜180℃の加熱された金属ロールに接する方法なども好ましい。また、赤外線を照射して加熱する方法も好ましい。
(有機ポリマー層の特性)
有機ポリマー層の好ましい特性としては、本発明の効果を充分に発揮する観点から、有機ポリマー層表面の動摩擦係数が0.38〜0.70の範囲にあることが好ましい。有機ポリマー層の形成に際しては、かかる点を考慮して含有する樹脂量や架橋剤の添加量、或いは硬化条件を決定すればよい。
なお、ここで言う動摩擦係数とは、有機ポリマー層表面と有機ポリマー層とは反対側の記録層表面とを接触させて配置し、標準ASTM D1894に従って測定された値を指す。
本発明の平版印刷版原版は、以上説明した有機ポリマー層を有することにより、合紙を用いずに積層した場合であっても、製造加工工程及び製版工程等において、或いは、包装時における搬送や製品として出荷後の輸送の際においても、記録層に擦れ傷及び接着故障が生じないという優れた効果を発揮することができる。
即ち、例えば、平版印刷版原版を積層して包装・梱包して輸送する場合であっても、記録層側の面と当該面に接触するバック面(有機ポリマー層を有する面)とが輸送時の振動により擦れることに起因して記録層に擦れ傷が発生することがない。また、積層した版材を高湿環境下に長期間保存した場合であっても、記録層に接着故障が生じることがない。さらに、オートローダーを備えた露光装置に用いる場合のように、版材の記録層側の面とバック面の一部分が強く押さえ付けながら移動させるような使用状況であっても、記録層に擦れ傷が発生することがない。
(2)記録層
親水性表面を有する支持体上に、紫外線感光性組成物からなる記録層を設けて、感光性平版印刷版を得る。ここで紫外線感光性組成物とは、300nm〜450nmの範囲の波長を有する光線に感応して現像液に対する溶解度が変化する化合物であり、そのような感光性組成物としては、o−キノンジアジド化合物を主成分とするポジ型、ジアゾ化合物を含むネガ型のものが用いられる。
ポジ型記録層の感光性化合物として用いられるo−ナフトキノンジアジド化合物としては、特公昭43−28403号公報に記載されている1,2−ジアゾナフトキノンスルホン酸とピロガロール・アセトン樹脂とのエステルが好ましい。その他の好適なオルトキノンジアジド化合物としては例えば、米国特許第 3,046,120号および同第 3,188,210号明細書に記載されている1,2−ジアゾナフトキノン−5−スルホン酸とフェノール−ホルムアルデヒド樹脂とのエステルがあり、特開平2−96163号公報、特開平2−96165号公報および特開平2−96761号公報に記載されている1,2−ジアゾナフトキノン−4−スルホン酸とフェノール−ホルムアルデヒド樹脂とのエステルがある。その他の有用なo−ナフトキノンジアジド化合物としては、数多くの特許等で公知のものが挙げられる。例えば、特開昭47−5303号、同48−63802号、同48−63803号、同48−96575号、同49−38701号、同48−13854号、特公昭37−18015号、同41−11222号、同45−9610号、同49−17481号公報、米国特許第 2,797,213号、同第 3,454,400号、同第 3,544,323号、同第 3,573,917号、同第 3,674,495号、同第 3,785,825号、英国特許第 1,227,602号、同第 1,251,345号、同第 1,267,005号、同第 1,329,888号、同第 1,330,932号、ドイツ特許第 854,890号などの各明細書中に記載されているものを挙げることができる。
本発明において特に好ましい、o−ナフトキノンジアジド化合物は、分子量1,000以下のポリヒドロキシ化合物と1,2−ジアゾナフトキノンスルホン酸との反応により得られる化合物である。このような化合物の具体例は、特開昭51−139402号、同58−150948号、同58−203434号、同59−165053号、同60−121445号、同60−134235号、同60−163043号、同61−118744号、同62−10645号、同62−10646号、同62−153950号、同62−178562号、同64−76047号、米国特許第 3,102,809号、同第 3,126,281号、同第 3,130,047号、同第 3,148,983号、同第 3,184,310号、同第 3,188,210号、同第 4,639,406号などの各公報または明細書に記載されているものを挙げることができる。
これらのo−ナフトキノンジアジド化合物を合成する際は、ポリヒドロキシ化合物のヒドロキシル基に対して1,2−ジアゾナフトキノンスルホン酸クロリドを0.2〜1.2当量反応させることが好ましく、0.3〜1.0当量反応させることが更に好ましい。1,2−ジアゾナフトキノンスルホン酸クロリドとしては、1,2−ジアゾナフトキノン−5−スルホン酸クロリドまたは、1,2−ジアゾナフトキノン−4−スルホン酸クロリドを用いることができる。また、得られるo−ナフトキノンジアジド化合物は、1,2−ジアゾナフトキノンスルホン酸エステル基の位置および導入量の種々異なるものの混合物となるが、ヒドロキシル基の全てが1,2−ジアゾナフトキノンスルホン酸エステル化された化合物が、この混合物中に占める割合(完全にエステル化された化合物の含有率)は5モル%以上であることが好ましく、更に好ましくは20〜99モル%である。
本発明の感光性組成物中に占めるこれらのポジ型に作用する感光性化合物(上記のような組合せを含む)の量は10〜50質量%が適当であり、より好ましくは15〜40質量%である。o−キノンジアジド化合物は単独でも記録層を構成することができるが、アルカリ水に可溶な樹脂を結合剤(バインダー)として併用することが好ましい。この様なアルカリ水に可溶な樹脂としては、ノボラック型の樹脂があり、例えばフェノールホルムアルデヒド樹脂、o−、m−およびp−クレゾールホルムアルデヒド樹脂、m/p−混合クレゾールホルムアルデヒド樹脂、フェノール/クレゾール(o−、m−、p−、m/p−およびo/m−混合のいずれでもよい)混合ホルムアルデヒド樹脂などが挙げられる。また、フェノール変性キシレン樹脂、ポリヒドロキシスチレン、ポリハロゲン化ヒドロキシスチレン、特開昭51−34711号公報に開示されているようなフェノール性水酸基を含有するアクリル系樹脂も用いることができる。その他の好適なバインダーとして以下(1)〜(13)に示すモノマーをその構成単位とする通常1万〜20万の分子量を持つ共重合体を挙げることができる。
(1)芳香族水酸基を有するアクリルアミド類、メタクリルアミド類、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類およびヒドロキシスチレン類、例えばN−(4−ヒドロキシフェニル)アクリルアミドまたはN−(4−ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド、o−、m−およびp−ヒドロキシスチレン、o−、m−およびp−ヒドロキシフェニルアクリレートまたはメタクリレート、(2)脂肪族水酸基を有するアクリル酸エステル類およびメタクリル酸エステル類、例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレートまたは2−ヒドロキシエチルメタクリレート、(3)アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、メタコン酸などの不飽和カルボン酸、
(4)アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸フェニル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸−2−クロロエチル、アクリル酸4−ヒドロキシブチル、グリシジルアクリレート、N−ジメチルアミノエチルアクリレートなどの(置換)アクリル酸エステル、(5)メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸アミル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸−2−クロロエチル、メタクリル酸4−ヒドロキシブチル、グリシジルメタクリレート、N−ジメチルアミノエチルメタクリレートなどの(置換)メタクリル酸エステル、
(6)アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、N−ヘキシルアクリルアミド、N−ヘキシルメタクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド、N−シクロヘキシルメタクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、N−フェニルメタクリルアミド、N−ベンジルアクリルアミド、N−ベンジルメタクリルアミド、N−ニトロフェニルアクリルアミド、N−ニトロフェニルメタクリルアミド、N−エチル−N−フェニルアクリルアミドおよびN−エチル−N−フェニルメタクリルアミドなどのアクリルアミドもしくはメタクリルアミド、
(7)エチルビニルエーテル、2−クロロエチルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、フェニルビニルエーテルなどのビニルエーテル類、(8)ビニルアセテート、ビニルクロロアセテート、ビニルブチレート、安息香酸ビニルなどのビニルエステル類、(9)スチレン、メチルスチレン、クロロメチルスチレンなどのスチレン類、(10)メチルビニルケトン、エチルビニルケトン、プロピルビニルケトン、フェニルビニルケトンなどのビニルケトン類、(11)エチレン、プロピレン、イソブチレン、ブタジエン、イソプレンなどのオレフィン類、(12)N−ビニルピロリドン、N−ビニルカルバゾール、4−ビニルピリジン、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなど、
(13)N−(o−アミノスルホニルフェニル)アクリルアミド、N−(m−アミノスルホニルフェニル)アクリルアミド、N−(p−アミノスルホニルフェニル)アクリルアミド、N−〔1−(3−アミノスルホニル)ナフチル〕アクリルアミド、N−(2−アミノスルホニルエチル)アクリルアミドなどのアクリルアミド類、N−(o−アミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド、N−(m−アミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド、N−(p−アミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド、N−〔1−(3−アミノスルホニル)ナフチル〕メタクリルアミド、N−(2−アミノスルホニルエチル)メタクリルアミドなどのメタクリルアミド類、また、o−アミノスルホニルフェニルアクリレート、m−アミノスルホニルフェニルアクリレート、p−アミノスルホニルフェニルアクリレート、1−(3−アミノスルホニルフェニルナフチル)アクリレートなどのアクリル酸エステル類などの不飽和スルホンアミド、o−アミノスルホニルフェニルメタクリレート、m−アミノスルホニルフェニルメタクリレート、p−アミノスルホニルフェニルメタクリレート、1−(3−アミノスルホニルフェニルナフチル)メタクリレートなどのメタクリル酸エステル類などの不飽和スルホンアミド。
更に、上記モノマーと共重合し得るモノマーを共重合させてもよい。また、上記モノマーの共重合によって得られる共重合体を例えば、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレートなどによって修飾したものも含まれるがこれらに限られるものではない。上記共重合体には(3)に掲げた不飽和カルボン酸を含有することが好ましく、その共重合体の好ましい酸価は0〜10meq/g、より好ましくは0.2〜5.0meq/gである。上記共重合体の好ましい分子量は1万〜10万である。また、上記共重合体には必要に応じて、ポリビニルブチラール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂およびエポキシ樹脂を添加してもよい。このようなアルカリ可溶性の高分子化合物は1種類あるいは2種類以上組み合わせることができ、全感光性組成物の80質量%以下の添加量で用いられる。
更に、米国特許第 4,123,279号明細書に記載されているように、t−ブチルフェノールホルムアルデヒド樹脂、オクチルフェノールホルムアルデヒド樹脂のような炭素数3〜8のアルキル基を置換基として有するフェノールとホルムアルデヒドとの縮合物を併用することは画像の感脂性を向上させる上で好ましい。本発明における感光性組成物中には、感度を高めるために環状酸無水物類、フェノール類、有機酸類を添加することが好ましい。環状酸無水物としては米国特許第 4,115,128号明細書に記載されている無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、3,6−エントオキシ−Δ4−テトラヒドロ無水フタル酸、テトラクロル無水フタル酸、無水マレイン酸、クロル無水マレイン酸、α−フェニル無水マレイン酸、無水コハク酸、無水ピロメリット酸などが使用できる。
フェノール類としては、ビスフェノールA、p−ニトロフェノール、p−エトキシフェノール、2,4,4'−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、4−ヒドロキシベンゾフェノン、4,4',4”−トリヒドロキシ−トリフェニルメタン、4,4',3”,4”−テトラヒドロキシ−3,5,3',5'−テトラメチルトリフェニルメタンなどが挙げられる。更に、有機酸類としては、特開昭60−88942号、特開平2−96755号公報などに記載されている、スルホン酸類、スルフィン酸類、アルキル硫酸類、ホスホン酸類、リン酸エステル類およびカルボン酸類などがあり、具体的には、p−トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルフィン酸、エチル硫酸、フェニルホスホン酸、フェニルホスフィン酸、リン酸フェニル、リン酸ジフェニル、安息香酸、イソフタル酸、アジピン酸、p−トルイル酸、3,4−ジメトキシ安息香酸、フタル酸、テレフタル酸、1,4−シクロヘキセン−2,2−ジカルボン酸、エルカ酸、ラウリン酸、n−ウンデカン酸、アスコルビン酸などが挙げられる。
上記の環状酸無水物類、フェノール類および有機酸類の感光性組成物中に占める割合は、0.05〜15質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜5質量%である。また、本発明における感光性組成物中には、現像条件に対する処理の安定性(いわゆる現像ラチチュード)を広げるため、特開昭62−251740号公報や特願平2−188号明細書に記載されているような非イオン界面活性剤、特開昭59−121044号公報、特願平2−115992号明細書に記載されているような両性界面活性剤を添加することができる。
非イオン界面活性剤の具体例としては、ソルビタントリステアレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタントリオレート、ステアリン酸モノグリセリド、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルなどが挙げられる。両性界面活性剤の具体例としては、アルキルジ(アミノエチル)グリシン、アルキルポリアミノエチルグリシン塩酸塩、2−アルキル−N−カルボキシエチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインやN−テトラデシル−N,N−ベタイン型(例えば、商品名アモーゲンK、第一工業(株)製)およびアルキルイミダゾリン系(例えば、商品名レボン15、三洋化成(株)製)などが挙げられる。
上記非イオン界面活性剤および両性界面活性剤の感光性組成物中に占める割合は、0.05〜15質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜5質量%である。本発明における感光性組成物中には、露光後直ちに可視像を得るための焼き出し剤や、画像着色剤としての染料や顔料を加えることができる。焼き出し剤としては、露光によって酸を放出する化合物(光酸放出剤)と塩を形成し得る有機染料の組合せを代表として挙げることができる。具体的には、特開昭50−36209号、同53−8128号の各公報に記載されているo−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸ハロゲニドと塩形成性有機染料の組合せや、特開昭53−36223号、同54−74728号、同60−3626号、同61−143748号、同61−151644号および同63−58440号の各公報に記載されているトリハロメチル化合物と塩形成性有機染料の組合せを挙げることができる。かかるトリハロメチル化合物としては、オキサゾール系化合物とトリアジン系化合物とがあり、どちらも経時安定性に優れ、明瞭な焼き出し画像を与える。
画像の着色剤としては、前述の塩形成性有機染料以外に他の染料を用いることができる。塩形成性有機染料も含めて、好適な染料として油溶性染料と塩基性染料を挙げることができる。具体的には、オイルイエロー#101、オイルイエロー#103、オイルピンク#312、オイルグリーンBG、オイルブルーBOS、オイルブルー#603、オイルブラックBY、オイルブラックBS、オイルブラックT−505(以上、オリエント化学工業(株)製)、ビクトリアピュアブルー、クリスタルバイオレット(CI42555)、メチルバイオレット(CI42535)、エチルバイオレット、ローダミンB(CI145170B)、マラカイトグリーン(CI42000)、メチレンブルー(CI52015)などを挙げることができる。また、特開昭62−293247号公報に記載されている染料は特に好ましい。
本発明における感光性組成物は、上記各成分を溶解する溶媒に溶かして支持体のアルミニウム板上に塗布される。ここで使用される溶媒としては、特開昭62−251739号公報に記載されているような有機溶剤が単独あるいは混合して用いられる。本発明の感光性組成物は、2〜50質量%の固形分濃度で溶解、分散され、支持体上に塗布・乾燥される。支持体上に塗設される感光性組成物の層(記録層)の塗布量は用途により異なるが、一般的には、乾燥後の重量にして0.3〜4.0g/m2が好ましい。塗布量が小さくなるにつれて画像を得るための露光量は小さくて済むが、膜強度は低下する。塗布量が大きくなるにつれ、露光量を必要とするが感光膜は強くなり、例えば、印刷版として用いた場合、印刷可能枚数の高い(高耐刷の)印刷版が得られる。本発明における感光性組成物中には、塗布面質を向上するための界面活性剤、例えば、特開昭62−170950号公報に記載されているようなフッ素系界面活性剤を添加することができる。好ましい添加量は、全感光性組成物の0.001〜1.0質量%であり、更に好ましくは0.005〜0.5質量%である。
次にネガ型記録層について説明する。ネガ型記録層の感光性化合物として用いられるジアゾ化合物としては、芳香族ジアゾニウム塩と反応性カルボニル基含有有機縮合剤、特にホルムアルデヒド、アセトアルデヒドなどのアルデヒド類またはアセタール類とを酸性媒体中で縮合したジアゾ樹脂が好適に用いられる。その最も代表的なものにP−ジアゾフェニルアミンとホルムアルデヒドとの縮合物がある。これらのジアゾ樹脂の合成法は、例えば、米国特許第 2,679,498号、同第 3,050,502号、同第 3,311,605号および同第 3,277,074号の明細書に記載されている。
更に、感光性ジアゾ化合物としては、特公昭49−48,001号公報記載の芳香族ジアゾニウム塩とジアゾニウム基を含まない置換芳香族化合物との共縮合ジアゾ化合物が好適に用いられ、中でもカルボキシル基や水酸基のようなアルカリ可溶基で置換された芳香族化合物との共縮合ジアゾ化合物が好ましい。更には、特開平4−18559号公報、特願平2−321823号および同2−299551号明細書記載のアルカリ可溶性基を持つ反応性カルボニル化合物で芳香族ジアゾニウム塩を縮合した感光性ジアゾ化合物も好適に用いられる。これらのジアゾニウム塩の対アニオンとして塩酸、臭化水素酸、硫酸およびリン酸などの鉱酸または塩化亜鉛との複塩などの無機アニオンを用いたジアゾ樹脂があるが、実質的に水不溶性で有機溶剤可溶性のジアゾ樹脂の方が特に好ましい。かかる好ましいジアゾ樹脂は特公昭47−1167号、米国特許第 3,300,309号公報に詳しく記載されている。
更には特開昭54−98613号、同56−121031号公報に記載されているようなテトラフルオロホウ酸、ヘキサフルオロリン酸などのハロゲン化ルイス酸および過塩素酸、過ヨウ素酸などの過ハロゲン酸を対アニオンとしたジアゾ樹脂が好適に用いられる。また、特開昭58−209733号、同62−175731号、同63−262643号公報に記載されている長鎖のアルキル基を有するスルホン酸を対アニオンとしたジアゾ樹脂も好適に用いられる。
感光性ジアゾ化合物は感光層中に5〜50質量%、好ましくは8〜20質量%の範囲で含有させられる。本発明で用いられる感光性ジアゾ化合物は、アルカリ水に可溶性もしくは膨潤性の親油性高分子化合物を結合剤(バインダー)として併用することが好ましい。この様な親油性高分子化合物としては、先に述べたポジ型感光性組成物で用いたのと同様の前記(1)〜(13)に示すモノマーをその構成単位とする通常1万〜20万の分子量を持つ共重合体を挙げることができるが、更に以下(14)、(15)に示したモノマーを構成単位として共重合した高分子化合物も使用できる。(14)マレイミド、N−アクリロイルアクリルアミド、N−アセチルアクリルアミド、N−プロピオニルアクリルアミド、N−(p−クロロベンゾイル)アクリルアミド、N−アセチルアクリルアミド、N−アクリロイルメタクリルアミド、N−アセチルメタクリルアミド、N−プロピオニルメタクリルアミド、N−(p−クロロベンゾイル)メタクリルアミドなどの不飽和イミド、(15)N−〔2−(アクリロイルオキシ)−エチル〕−2,3−ジメチルマレイミド、N−〔6−(メタクリロイルオキシ)−ヘキシル〕−2,3−ジメチルマレイミド、ビニルシンナメートなどの側鎖に架橋性基を有する不飽和モノマー。
更に、上記モノマーと共重合し得るモノマーを共重合させてもよい。また、上記モノマーの共重合によって得られる共重合体を例えば、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレートなどによって修飾したものも含まれるがこれらに限られるものではない。上記共重合体には(3)に掲げた不飽和カルボン酸を含有することが好ましく、その共重合体の好ましい酸価は0〜10meq/g、より好ましくは0.2〜5.0meq /gである。上記共重合体の好ましい分子量は1万〜10万である。また、上記共重合体には必要に応じて、ポリビニルブチラール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂およびエポキシ樹脂を添加してもよい。また、ノボラック型の樹脂、フェノール変性キシレン樹脂、ポリヒドロキシスチレン、ポリハロゲン化ヒドロキシスチレン、特開昭51−34711号公報に開示されているようなフェノール性水酸基を含有するアルカリ可溶性樹脂も用いることができる。このようなアルカリ可溶性の高分子化合物は1種類あるいは2種類以上組み合わせることができ、全感光性組成物の固形分中に通常40〜95質量%の範囲で含有させられる。
本発明における感光性組成物中には、画像の感脂性を向上させるための感脂化剤(例えば、特開昭55−527号公報記載のスチレン−無水マレイン酸共重合体のアルコールによるハーフエステル化物、ノボラック樹脂、p−ヒドロキシスチレンの50%脂肪酸エステルなど)が加えられる。更には、塗膜の柔軟性、耐摩耗性を付与するための可塑剤が加えられる、例えば、ブチルフタリル、ポリエチレングリコール、クエン酸トリブチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジオクチル、リン酸トリクレジル、リン酸トリブチル、リン酸トリオクチル、オレイン酸テトラヒドロフルフリル、アクリル酸またはメタアクリル酸のオリゴマーおよびポリマーが挙げられ、この中で特にリン酸トリクレジルが好ましい。また、本発明における感光性組成物中には、経時の安定性を広げるため、例えば、リン酸、亜リン酸、クエン酸、蓚酸、ジピコリン酸、ベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、スルホサリチル酸、4−メトキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン−5−スルホン酸、酒石酸などが加えられる。また、本発明における感光性組成物中には、露光後直ちに可視像を得るための焼き出し剤や、画像着色剤としての染料や顔料などの色素を加えることができる。
該色素としては、フリーラジカルまたは酸と反応して色調を変えるものが好ましく用いられる。例えば、ビクトリアピュアブルーBOH(保土谷化学製)、オイルイエロー#101、オイルイエロー#103、オイルピンク#312、オイルレッド、オイルグリーンBG、オイルブルーBOS、オイルブルー#603、オイルブラックBY、オイルブラックBS、オイルブラックT−505(以上、オリエント化学工業(株)製)、パテントピュアブルー(住友三国化学社製)、クリスタルバイオレット(CI42555)、メチルバイオレット(CI42535)、エチルバイオレット、ローダミンB(CI145170B)、マラカイトグリーン(CI42000)、メチレンブルー(CI52015)、ブリリアントブルー、メチルグリーン、エリスリシンB、ベーシックフクシン、m−クレゾールパープル、オーラミン、4−p−ジエチルアミノフェニルイミナフトキノン、シアノ−p−ジエチルアミノフェニルアセトアニリドなどに代表されるトリフェニルメタン系、ジフェニルメタン系、オキサジン系、キサンテン系、イミノナフトキノン系、アゾメチン系またはアントラキノン系の色素が有色から無色あるいは異なる有色の色調へ変化する例として挙げられる。
一方、無色から有色に変化する変色剤としては、ロイコ色素および、例えば、トリフェニルアミン、ジフェニルアミン、o−クロロアニリン、1,2,3−トリフェニルグアニジン、ナフチルアミン、ジアミノジフェニルメタン、p,p'−ビス−ジメチルアミノジフェニルアミン、1,2−ジアニリノエチレン、p、p',p”−トリス−ジメチルアミノトリフェニルメタン、p,p'−ビス−ジメチルアミノジフェニルメチルイミン、p、p',p”−トリアミノ−o−メチルトリフェニルメタン、p、p'−ビス−ジメチルアミノジフェニル−4−アニリノナフチルメタン、p、p',p”−トリアミノトリフェニルメタンに代表される第1級または第2級アリールアミン系色素が挙げられる。特に好ましくはトリフェニルメタン系、ジフェニルメタン系色素であり、更に好ましくはトリフェニルメタン系色素であり、特にビクトリアピュアブルーBOHである。上記色素は、感光性組成物中に通常約0.5〜10質量%、より好ましくは約1〜5質量%含有される。
本発明における感光性組成物中には、現像性を高めるために環状酸無水物類、フェノール類、有機酸類および高級アルコールを添加することができる。本発明における感光性組成物は、上記各成分を溶解する溶媒に溶かして支持体のアルミニウム板上に塗布される。ここで使用される溶媒としては、特開昭62−251739号公報に記載されているような有機溶剤が単独あるいは混合して用いられる。
本発明の感光性組成物は、2〜50質量%の固形分濃度で溶解、分散され、支持体上に塗布・乾燥される。支持体上に塗設される感光性組成物の層(感光層)の塗布量は用途により異なるが、一般的には、乾燥後の重量にして0.3〜4.0g/m2が好ましい。塗布量が小さくなるにつれて画像を得るための露光量は小さくて済むが、膜強度は低下する。塗布量が大きくなるにつれ、露光量を必要とするが感光膜は強くなり、例えば、印刷版として用いた場合、印刷可能枚数の高い(高耐刷の)印刷版が得られる。本発明における感光性組成物中には、先に示したポジ型感光性組成物と同様に、塗布面質を向上するための界面活性剤を添加することができる。本発明の感光性印刷版の製造に当たっては裏面のバックコート層と表面の感光性組成物層のどちらが先に支持体上に塗布されても良く、また両者が同時に塗布されても良い。
上記のようにして設けられた記録層の表面には、真空焼き枠を用いた密着露光の際の真空引きの時間を短縮し、且つ焼きボケを防ぐため、マット層が設けられてもよい。具体的には、特開昭50−125805号、特公昭57−6582号、同61−28986号の各公報に記載されているようなマット層を設ける方法、特公昭62−62337号公報に記載されているような固体粉末を熱融着させる方法などが挙げられる。本発明に用いられるマット層の平均径は100μm以下が好ましく、これよりも平均径が大きくなるとPS版を重ねて保存する場合、記録層とバックコート層との接触面積が増大し、滑り性が低下、記録層およびバックコート層双方の表面に擦れ傷を生じ易い。マット層の平均高さは10μm以下が好ましく、より好ましくは2〜8μmである。この範囲より平均高さが高いと細線が付き難く、ハイライトドットも点減りし、調子再現上好ましくない。平均高さが2μm以下では真空密着性が不十分で焼きボケを生じる。マット層の塗布量は5〜200mg/m2が好ましく、更に好ましくは20〜150mg/m2である。塗布量がこの範囲よりも大きいと記録層とバックコート層との接触面積が増大し擦れ傷の原因となり、これよりも小さいと真空密着性が不十分となる。
(3)支持体
本発明において使用される支持体は、寸度的に安定な板状物である。かかる支持体としては、紙、プラスチックス(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンなど)がラミネートされた紙、例えば、アルミニウム(アルミニウム合金も含む)、亜鉛、鉄、銅などの金属板などが用いられるが、特にアルミニウム板などの金属板において本発明の効果が著しく発揮される。好適なアルミニウム板は、純アルミニウム板およびアルミニウムを主成分とし、微量の異元素を含む合金板であり、更にアルミニウムがラミネートもしくは蒸着されたプラスチックフィルムでもよい。アルミニウム合金に含まれる異元素には、ケイ素、鉄、マンガン、銅、マグネシウム、クロム、亜鉛、ビスマス、ニッケル、チタンなどがある。合金中の異元素の含有量は高々10質量%以下である。本発明に好適なアルミニウムは、純アルミニウムであるが、完全に純粋なアルミニウムは精錬技術上製造が困難であるので、僅かに異元素を含有するものでもよい。このように本発明に適用されるアルミニウム板は、その組成が特定されるものではなく、従来より公知公用の素材のものを適宜利用することが出来る。本発明に用いられるアルミニウム板の厚みは、およそ0.1mm〜0.6mm程度である。
アルミニウム板を粗面化するに先立ち、所望により、表面の圧延油を除去するための例えば界面活性剤、有機溶剤またはアルカリ性水溶液などによる脱脂処理が行われる。まず、アルミニウム板の表面は粗面化処理されるが、その方法としては、機械的に粗面化する方法、電気化学的に表面を溶解粗面化する方法および化学的に表面を選択溶解させる方法がある。機械的方法としては、ボール研磨法、ブラシ研磨法、ブラスト研磨法、バフ研磨法などと称せられる公知の方法を用いることが出来る。また、電気化学的な粗面化法としては塩酸または硝酸電解液中で交流または直流により行う方法がある。また、特開昭54−63902号公報に開示されているように両者を組み合わせた方法も利用することが出来る。
このように粗面化されたアルミニウム板は、必要に応じてアルカリエッチング処理及び中和処理された後、所望により表面の保水性や耐摩耗性を高めるために陽極酸化処理が施される。アルミニウム板の陽極酸化処理に用いられる電解質としては多孔質酸化皮膜を形成するものならばいかなるものでも使用することができ、一般には硫酸、リン酸、蓚酸、クロム酸あるいはそれらの混酸が用いられる。それらの電解質の濃度は電解質の種類によって適宜決められる。陽極酸化の処理条件は用いる電解質により種々変わるので一概に特定し得ないが、一般的には電解質の濃度が1〜80質量%溶液、液温は5〜70℃、電流密度5〜60A/dm2 、電圧1〜100V、電解時間10秒〜5分の範囲にあれば適当である。陽極酸化皮膜の量は1.0g/m2以上が好適であるが、より好ましくは2.0〜6.0g/m2の範囲である。陽極酸化皮膜が1.0g/m2より少ないと耐刷性が不十分であったり、平版印刷版の非画像部に傷が付き易くなって、印刷時に傷の部分にインキが付着するいわゆる「傷汚れ」が生じ易くなる。
陽極酸化処理を施された後、アルミニウム表面は必要により親水化処理が施される。本発明に使用される親水化処理としては、米国特許第 2,714,066号、第 3,181,461号、第 3,280,734号および第 3,902,734号に開示されているようなアルカリ金属シリケート(例えばケイ酸ナトリウム水溶液)法がある。この方法に於いては、支持体がケイ酸ナトリウム水溶液中で浸漬処理されるかまたは電解処理される。他に、特公昭36−22063号公報に開示されている弗化ジルコン酸カリウムおよび米国特許第 3,276,868号、第 4,153,461号および第 4,689,272号に開示されているようなポリビニルホスホン酸で処理する方法などが用いられる。
(4)有機下塗層
アルミニウム板は、記録層を塗設する前に必要に応じて有機下塗層が設けられる。この有機下塗層に用いられる有機化合物としては例えば、カルボキシメチルセルロース、デキストリン、アラビアガム、2−アミノエチルホスホン酸などのアミノ基を有するホスホン酸類、置換基を有してもよいフェニルホスホン酸、ナフチルホスホン酸、アルキルホスホン酸グリセロホスホン酸、メチレンジホスホン酸およびエチレンジホスホン酸などの有機ホスホン酸、置換基を有してもよいフェニルリン酸、ナフチルリン酸、アルキルリン酸およびグリセロリン酸などの有機リン酸、置換基を有してもよいフェニルホスフィン酸、ナフチルホスフィン酸、アルキルホスフィン酸およびグリセロホスフィン酸などの有機ホスフィン酸、グリシンやβ−アラニンなどのアミノ酸類、およびトリエタノールアミンの塩酸塩などのヒドロキシル基を有するアミンの塩酸塩などから選ばれるが、二種以上混合して用いてもよい。
この有機下塗層は次のような方法で設けることが出来る。即ち、水またはメタノール、エタノール、メチルエチルケトンなどの有機溶剤もしくはそれらの混合溶剤に上記の有機化合物を溶解させた溶液をアルミニウム板上に塗布、乾燥して設ける方法と、水またはメタノール、エタノール、メチルエチルケトンなどの有機溶剤もしくはそれらの混合溶剤に上記の有機化合物を溶解させた溶液に、アルミニウム板を浸漬して上記有機化合物を吸着させ、しかる後、水などによって洗浄、乾燥して有機下塗層を設ける方法である。前者の方法では、上記の有機化合物の0.005〜10質量%の濃度の溶液を種々の方法で塗布できる。例えば、バーコーター塗布、回転塗布、スプレー塗布、カーテン塗布などいずれの方法を用いてもよい。また、後者の方法では、溶液の濃度は0.01〜20質量%、好ましくは0.05〜5質量%であり、浸漬温度は20〜90℃、好ましくは25〜50℃であり、浸漬時間は0.1秒〜20分、好ましくは2秒〜1分である。これに用いる溶液は、アンモニア、トリエチルアミン、水酸化カリウムなどの塩基性物質や、塩酸、リン酸などの酸性物質によりpHを調節し、pH1〜12の範囲で使用することもできる。また、感光性平版印刷版の調子再現性改良のために黄色染料を添加することもできる。有機下塗層の乾燥後の被覆量は、2〜200mg/m2が適当であり、好ましくは5〜100mg/m2である。上記の被覆量が2mg/m2より少ないと十分な耐刷性能が得られない。また、200mg/m2より大きくても同様である。
(5)現像処理
本発明の感光性平版印刷版原版は透明原画を通してカーボンアーク灯、水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、タングステンランプなどを光源とする活性光線により露光された後、現像処理される。かかる印刷版の現像液および補充液としては従来より知られているアルカリ水溶液が使用できる。例えば、ケイ酸ナトリウム、同カリウム、第3リン酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、第二リン酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、重炭酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、炭酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、ほう酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、水酸化ナトリウム、同アンモニウム、同カリウムおよび同リチウムなどの無機アルカリ剤が挙げられる。また、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、n−ブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアン、ジイソプロパノールアミン、エチレンイミン、エチレンジアミン、ピリジンなどの有機アルカリ剤も用いられる。
これらのアルカリ剤は単独もしくは二種以上を組み合わせて用いられる。これらのアルカリ剤の中で特にポジ型PS版用現像液として好ましいのはケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム等のケイ酸塩水溶液である。その理由はケイ酸塩の成分である酸化ケイ素SiO2とアルカリ金属酸化物M2Oの比率(一般に〔SiO2〕/〔M2O〕のモル比で表す)と濃度によって現像性の調節が可能とされるためであり、例えば、特開昭54−62004号公報に開示されているような、SiO2/Na2Oのモル比が1.0〜1.5(即ち〔SiO2〕/〔Na2O〕が1.0〜1.5)であって、SiO2の含有量が1〜4質量%のケイ酸ナトリウムの水溶液や、特公昭57−7427号公報に記載されているような、〔SiO2〕/〔M〕が0.5〜0.75(即ち〔SiO2〕/〔M2O〕が1.0〜1.5)であって、SiO2の濃度が1〜4質量%であり、かつ該現像液がその中に存在する全アルカリ金属のグラム原子を基準にして少なくとも20%のカリウムを含有していることとからなるアルカリ金属ケイ酸塩が好適に用いられる。
更に、自動現像機を用いて、該印刷版を現像する場合に、現像液よりもアルカリ強度の高い水溶液(補充液)を現像液に加えることによって、長時間現像タンク中の現像液を交換する事なく、多量のPS版を処理することができることが知られている。本発明においてもこの補充方式が好ましく適用される。例えば、特開昭54−62004号公報に開示されているような現像液のSiO2/Na2Oのモル比が1.0〜1.5(即ち〔SiO2〕/〔Na2O〕が1.0〜1.5)であって、SiO2の含有量が1〜4質量%のケイ酸ナトリウムの水溶液を使用し、しかもポジ型感光性平版印刷版の処理量に応じて連続的または断続的にSiO2/Na2Oのモル比が0.5〜1.5(即ち〔SiO2〕/〔Na2O〕が0.5〜1.5)のケイ酸ナトリウム水溶液(補充液)を現像液に加える方法、更には、特公昭57−7427号公報に開示されている、〔SiO2〕/〔M〕が0.5〜0.75(即ち、〔SiO2〕/〔M2O〕が1.0〜1.5)であって、SiO2の濃度が1〜4質量%であるアルカリ金属ケイ酸塩の現像液を用い、補充液として用いるアルカリ金属ケイ酸塩の〔SiO2〕/〔M〕が0.25〜0.75(即ち〔SiO2〕/〔M2O〕が0.5〜1.5)であり、かつ該現像液および該補充液のいずれもがその中に存在する全アルカリ金属のグラム原子を基準にして少なくとも20%のカリウムを含有していることとからなる現像方法が好適に用いられる。
このような補充液としてアルカリ金属ケイ酸塩を用いる場合、そのモル比〔SiO2〕/〔M2O〕を小さくすることにより、補充液は高活性となり、補充量は削減できるので、ランニングコストや廃液量が低減し好ましい。しかしながら、高活性化にともないPS版の支持体アルミニウムが溶解し、現像液中に不溶物を生じることが知られている。本発明のPS版はそのバックコート層が支持体裏面からのアルミニウムの溶出を抑えることもできるので、高活性現像補充系でも好ましく処理できる。このような、活性度の高い現像液としては、SiO2/M2Oのモル比が0.7〜1.5であって、SiO2の濃度が1.0〜4.0質量%のアルカリ金属ケイ酸塩の水溶液からなり、また、補充液がSiO2/M2Oのモル比が0.3〜1.0であって、SiO2の濃度が0.5〜4.0質量%のアルカリ金属ケイ酸塩の水溶液であるような系が好適に用いられる。
本発明の印刷版の現像に用いられる現像液および補充液には、現像性の促進や抑制、現像カスの分散および印刷版画像部の親インキ性を高める目的で必要に応じて種々界面活性剤や有機溶剤を添加できる。好ましい界面活性剤としては、アニオン系、カチオン系、ノニオン系および両性界面活性剤が挙げられる。界面活性剤の好ましい例としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンポリスチリルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル類、グリセリン脂肪酸部分エステル類、ソルビタン脂肪酸部分エステル類、ペンタエリスリトール脂肪酸部分エステル類、プロピレングリコールモノ脂肪酸エステル類、しょ糖脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸部分エステル類、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、ポリグリセリン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレン化ひまし油類、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸部分エステル類、脂肪酸ジエタノールアミド類、N,N−ビス−2−ヒドロキシアルキルアミン類、ポリオキシエチレンアルキルアミン、トリエタノールアミン脂肪酸エステル、トリアルキルアミンオキシドなどの非イオン性界面活性剤、脂肪酸塩類、アビエチン酸塩類、ヒドロキシアルカンスルホン酸塩類、アルカンスルホン酸塩類、ジアルキルスルホ琥珀酸エステル塩類、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、分岐鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキルフェノキシポリオキシエチレンプロピルスルホン酸塩類、ポリオキシエチレンアルキルスルホフェニルエーテル塩類、N−メチル−N−オレイルタウリンナトリウム塩、N−アルキルスルホ琥珀酸モノアミド二ナトリウム塩、石油スルホン酸塩類、硫酸化牛脂油、脂肪酸アルキルエステルの硫酸エステル塩類、アルキル硫酸エステル塩類、
ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩類、脂肪酸モノグリセリド硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、アルキルリン酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸エステル塩類、スチレン/無水マレイン酸共重合物の部分鹸化物類、オレフィン/無水マレイン酸共重合物の部分鹸化物類、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物類などのアニオン界面活性剤、アルキルアミン塩類、第四級アンモニウム塩類、ポリオキシエチレンアルキルアミン塩類、ポリエチレンポリアミン誘導体などのカチオン性界面活性剤、カルボキシベタイン類、アミノカルボン酸類、スルホベタイン類、アミノ硫酸エステル類、イミダゾリン類などの両性界面活性剤が挙げられる。以上挙げた界面活性剤の中でポリオキシエチレンとあるものは、ポリオキシメチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシブチレンなどのポリオキシアルキレンに読み替えることもでき、それらの界面活性剤もまた包含される。
更に好ましい界面活性剤は分子内にパーフルオロアルキル基を含有するフッ素系の界面活性剤である。かかるフッ素系界面活性剤としては、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキルリン酸エステルなどのアニオン型、パーフルオロアルキルベタインなどの両性型、パーフルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩などのカチオン型およびパーフルオロアルキルアミンオキサイド、パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物、パーフルオロアルキル基および親水性基含有オリゴマー、パーフルオロアルキル基および親油性基含有オリゴマー、パーフルオロアルキル基、親水性基および親油性基含有オリゴマー、パーフルオロアルキル基および親油性基含有ウレタンなどの非イオン型が挙げられる。
上記の界面活性剤は、単独もしくは2種以上を組み合わせて使用することができ、現像液中に0.001〜10質量%、より好ましくは0.01〜5質量%の範囲で添加される。好ましい有機溶剤としては、水に対する溶解度が約10質量%以下のものが適しており、好ましくは5質量%以下のものから選ばれる。例えば、1−フェニルエタノール、2−フェニルエタノール、3−フェニル−1−プロパノール、4−フェニル−1−ブタノール、4−フェニル−2−ブタノール、2−フェニル−1−ブタノール、2−フェノキシエタノール、2−ベンジルオキシエタノール、o−メトキシベンジルアルコール、m−メトキシベンジルアルコール、p−メトキシベンジルアルコール、ベンジルアルコール、シクロヘキサノール、2−メチルシクロヘキサノール、3−メチルシクロヘキサノールおよび4−メチルシクロヘキサノール、N−フェニルエタノールアミンおよびN−フェニルジエタノールアミンなどを挙げることができる。有機溶剤の含有量は使用液の総重量に対して0.1〜5質量%である。その使用量は界面活性剤の使用量と密接な関係があり、有機溶剤の量が増すにつれ、界面活性剤の量は増加させることが好ましい。これは界面活性剤の量が少なく、有機溶剤の量を多く用いると有機溶剤が完全に溶解せず、従って、良好な現像性の確保が期待できなくなるからである。
本発明の印刷版の現像に用いられる現像液および補充液には更に還元剤が加えられる。これは印刷版の汚れを防止するものであり、特に感光性ジアゾニウム塩化合物を含むネガ型PS版を現像する際に有効である。好ましい有機還元剤としては、チオサリチル酸、ハイドロキノン、メトール、メトキシキノン、レゾルシン、2−メチルレゾルシンなどのフェノール化合物、フェニレンジアミン、フェニルヒドラジンなどのアミン化合物が挙げられる。更に好ましい無機の還元剤としては、亜硫酸、亜硫酸水素酸、亜リン酸、亜リン酸水素酸、亜リン酸二水素酸、チオ硫酸および亜ジチオン酸などの無機酸のナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩などを挙げることができる。こられの還元剤のうち汚れ防止効果が特に優れているのは亜硫酸塩である。これらの還元剤は使用時の現像液に対して好ましくは、0.05〜5質量%の範囲で含有される。
現像液および補充液には更に有機カルボン酸を加えることもできる。好ましい有機カルボン酸は炭素原子数6〜20の脂肪族カルボン酸および芳香族カルボン酸である。脂肪族カルボン酸の具体的な例としては、カプロン酸、エナンチル酸、カプリル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸およびステアリン酸などがあり、特に好ましいのは炭素数8〜12のアルカン酸である。また炭素鎖中に二重結合を有する不飽和脂肪酸でも、枝分かれした炭素鎖のものでもよい。芳香族カルボン酸としてはベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環などにカルボキシル基が置換された化合物で、具体的には、o−クロロ安息香酸、p−クロロ安息香酸、o−ヒドロキシ安息香酸、p−ヒドロキシ安息香酸、o−アミノ安息香酸、p−アミノ安息香酸、2,4−ジヒドロキシ安息香酸、2,5−ジヒドロキシ安息香酸、2,6−ジヒドロキシ安息香酸、2,3−ジヒドロキシ安息香酸、3,5−ジヒドロキシ安息香酸、没食子酸、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、2−ヒドロキシ−1−ナフトエ酸、1−ナトフエ酸、2−ナフトエ酸などがあるがヒドロキシナフトエ酸は特に有効である。上記脂肪族および芳香族カルボン酸は水溶性を高めるためにナトリウム塩やカリウム塩またはアンモニウム塩として用いるのが好ましい。本発明で用いる現像液の有機カルボン酸の含有量は格別な制限はないが、0.1質量%より低いと効果が十分でなく、また10質量%以上ではそれ以上の効果の改善が計れないばかりか、別の添加剤を併用する時に溶解を妨げることがある。従って、好ましい添加量は使用時の現像液に対して0.1〜10質量%であり、より好ましくは0.5〜4質量%である。
現像液および補充液には、更に必要に応じて、消泡剤、硬水軟化剤および特公平1−57895号公報記載の有機ホウ素化合物等の従来より知られている化合物も含有させることもできる。硬水軟化剤としては例えは、ポリリン酸およびそのナトリウム塩、カリウム塩およびアンモニウム塩、エチレンジアミンテトラ酢酸、ジエチレントリアミンペンタ酢酸、トリエチレンテトラミンヘキサ酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミントリ酢酸、ニトリロトリ酢酸、1,2−ジアミノシクロヘキサンテトラ酢酸および1,3−ジアミノ−2−プロパノールテトラ酢酸などのアミノポリカルボン酸およびそれらのナトリウム塩、カリウム塩およびアンモニウム塩、アミノトリ(メチレンホスホン酸)、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、トリエチレンテトラミンヘキサ(メチレンホスホン酸)、ヒドロキシエチルエチレンジアミントリ(メチレンホスホン酸)および1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸やそれらのナトリウム塩、カリウム塩およびアンモニウム塩を挙げることができる。
このような硬水軟化剤はそのキレート化力と使用される硬水の硬度および硬水の量によって最適値が変化するが、一般的な使用量を示せば、使用時の現像液に対して0.01〜5質量%、より好ましくは0.01〜0.5質量%の範囲である。この範囲より少ない添加量では所期の目的が十分に達成されず、添加量がこの範囲より多い場合は、色抜けなど、画像部への悪影響がでてくる。現像液および補充液の残余の成分は水であるが、更に必要に応じて当業界で知られた種々の添加剤を含有させることができる。現像液および補充液は使用時よりも水の含有量を少なくした濃縮液としておき、使用時に水で希釈するようにしておくことが運搬上有利である。この場合の濃縮度は各成分が分離や析出を起こさない程度が適当である。
このようにして現像処理された印刷版は水洗水、界面活性剤等を含有するリンス液、アラビアガムや澱粉誘導体等を含む不感脂化液で後処理される。本発明において印刷版の後処理にはこれらの処理を種々組み合わせて用いることができる。近年、製版・印刷業界では製版作業の合理化および標準化のため、PS版用の自動現像機が広く用いられている。この自動現像機は、一般に現像部と後処理部からなり、印刷版を搬送する装置と、各処理液槽およびスプレー装置からなり、露光済みの印刷版を水平に搬送しながら、ポンプで汲み上げた各処理液をスプレーノズルから吹き付けて現像処理するものである。また、最近は処理液が満たされた処理液槽中に液中ガイドロールなどによって印刷版を浸漬搬送させて処理する方法も知られている。このような自動処理においては、各処理液に処理量や稼働時間等に応じて補充液を補充しながら処理することができる。また、実質的に未使用の処理液で処理するいわゆる使い捨て処理方式も適用できる。このような処理によって得られた平版印刷版はオフセット印刷機に掛けられ、多数枚の印刷に用いられる。
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
[実施例1〜9、比較例1〜4]
〔支持体の作製〕
<アルミニウム板>
Si:0.06質量%、Fe:0.30質量%、Cu:0.026質量%、Mn:0.001質量%、Mg:0.001質量%、Zn:0.001質量%、Ti:0.02質量%を含有し、残部はAlと不可避不純物のアルミニウム合金を用いて溶湯を調製し、溶湯処理およびろ過を行った上で、厚さ500mm、幅1200mmの鋳塊をDC鋳造法で作製した。表面を平均10mmの厚さで面削機により削り取った後、550℃で、約5時間均熱保持し、温度400℃に下がったところで、熱間圧延機を用いて厚さ2.7mmの圧延板とした。更に、連続焼鈍機を用いて熱処理を500℃で行った後、冷間圧延で、厚さ0.24mmに仕上げ、JIS 1050材のアルミニウム板を得た。なお、得られたアルミニウムの平均結晶粒径の短径は50μm、長径は300μmであった。このアルミニウム板を幅1030mmにした後、以下に示す表面処理に供した。
<表面処理>
以下の(a)〜(k)の各種処理を連続的に行った。なお、各処理および水洗の後にはニップローラで液切りを行った。
(a)機械的粗面化処理
比重1.12の研磨剤(パミス)と水との懸濁液を研磨スラリー液としてアルミニウム板の表面に供給しながら、回転するローラ状ナイロンブラシにより機械的粗面化処理を行った。研磨剤の平均粒径は30μm、最大粒径は100μmであった。ナイロンブラシの材質は6・10ナイロン、毛長は45mm、毛の直径は0.3mmであった。ナイロンブラシはφ300mmのステンレス製の筒に穴をあけて密になるように植毛した。回転ブラシは3本使用した。ブラシ下部の2本の支持ローラ(φ200mm)の距離は300mmであった。ブラシローラはブラシを回転させる駆動モータの負荷が、ブラシローラをアルミニウム板に押さえつける前の負荷に対して7kWプラスになるまで押さえつけた。ブラシの回転方向はアルミニウム板の移動方向と同じであった。ブラシの回転数は200rpmであった。
(b)アルカリエッチング処理
上記で得られたアルミニウム板をカセイソーダ濃度2.6質量%、アルミニウムイオン濃度6.5質量%、温度70℃の水溶液を用いてスプレーによるエッチング処理を行い、アルミニウム板を10g/m2溶解した。その後、スプレーによる水洗を行った。
(c)デスマット処理
温度30℃の硝酸濃度1質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む。)で、スプレーによるデスマット処理を行い、その後、スプレーで水洗した。デスマット処理に用いた硝酸水溶液は、硝酸水溶液中で交流を用いて電気化学的粗面化処理を行う工程の廃液を用いた。
(d)電気化学的粗面化処理
60Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面化処理を行った。このときの電解液は、硝酸10.5g/L水溶液(アルミニウムイオンを5g/L、アンモニウムイオンを0.007質量%含む。)、液温50℃であった。電流値がゼロからピークに達するまでの時間TPが0.8msec、duty比1:1、台形の矩形波交流を用いて、カーボン電極を対極として電気化学的な粗面化処理を行った。補助アノードにはフェライトを用いた。電解槽はラジアルセルタイプのものを使用した。
電流密度は電流のピーク値で30A/dm2、電気量はアルミニウム板が陽極時の電気
量の総和で220C/dm2であった。補助陽極には電源から流れる電流の5%を分流さ
せた。その後、スプレーによる水洗を行った。
(e)アルカリエッチング処理
アルミニウム板をカセイソーダ濃度26質量%、アルミニウムイオン濃度6.5質量%の水溶液を用いてスプレーによるエッチング処理を32℃で行い、アルミニウム板を0.50g/m2溶解し、前段の交流を用いて電気化学的粗面化処理を行ったときに生成した
水酸化アルミニウムを主体とするスマット成分を除去し、また、生成したピットのエッジ部分を溶解してエッジ部分を滑らかにした。その後、スプレーによる水洗を行った。
(f)デスマット処理
温度30℃の硝酸濃度15質量%水溶液(アルミニウムイオンを4.5質量%含む。)で、スプレーによるデスマット処理を行い、その後、スプレーで水洗した。デスマット処理に用いた硝酸水溶液は、硝酸水溶液中で交流を用いて電気化学的粗面化処理を行う工程の廃液を用いた。
(g)電気化学的粗面化処理
60Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面化処理を行った。このときの電解液は、塩酸5.0g/L水溶液(アルミニウムイオンを5g/L含む。)、温度35℃であった。電流値がゼロからピークに達するまでの時間TPが0.8msec、duty比1:1、台形の矩形波交流を用いて、カーボン電極を対極として電気化学的粗面化処理を行った。補助アノードにはフェライトを用いた。電解槽はラジアルセルタイプのものを使用した。
電流密度は電流のピーク値で25A/dm2、電気量はアルミニウム板が陽極時の電気
量の総和で50C/dm2であった。その後、スプレーによる水洗を行った。
(h)アルカリエッチング処理
アルミニウム板をカセイソーダ濃度26質量%、アルミニウムイオン濃度6.5質量%の水溶液を用いてスプレーによるエッチング処理を32℃で行い、アルミニウム板を0.10g/m2溶解し、前段の交流を用いて電気化学的粗面化処理を行ったときに生成した
水酸化アルミニウムを主体とするスマット成分を除去し、また、生成したピットのエッジ部分を溶解してエッジ部分を滑らかにした。その後、スプレーによる水洗を行った。
(i)デスマット処理
温度60℃の硫酸濃度25質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む。)で、スプレーによるデスマット処理を行い、その後、スプレーによる水洗を行った。
(j)陽極酸化処理
二段給電電解処理法の陽極酸化装置(第一及び第二電解部長各6m、第一及び第二給電部長各3m、第一及び第二給電極部長各2.4m)を用いて陽極酸化処理を行った。第一および第二電解部に供給した電解液としては、硫酸を用いた。電解液は、いずれも、硫酸濃度50g/L(アルミニウムイオンを0.5質量%含む。)、温度20℃であった。その後、スプレーによる水洗を行った。最終的な酸化皮膜量は2.7g/m2であった。
(k)アルカリ金属ケイ酸塩処理
陽極酸化処理により得られたアルミニウム支持体を温度30℃の3号ケイ酸ソーダ1質量%水溶液の処理槽中へ、10秒間浸漬することでアルカリ金属ケイ酸塩処理(シリケート処理)を行った。その後、井水を用いたスプレーによる水洗を行い、表面シリケート親水化処理された感光性平版印刷版用支持体を得た。
〔バックコート層(有機ポリマー層)の形成〕
実施例1〜9については、エポキシ樹脂、レゾール樹脂、架橋剤、界面活性剤(フッ素系界面活性剤B)及び溶剤を含有する有機ポリマー層塗布液を調製し、上記のようにして得られた支持体の記録層を塗布する反対側の面(裏面)に、乾燥後の厚さが2μmとなるようにバーコーターでWet量を調整し塗布し、140℃で3分間加熱、乾燥させて製膜、架橋構造を形成させ、有機ポリマー層を形成した。
−バックコート液−
・特定熱硬化性樹脂(表1に記載の種類) 10g
・架橋剤(表1に記載の種類) (表1に記載の量)
・界面活性剤(フッ素系界面活性剤B、下記構造) 0.05g
・溶剤メチルエチルケトン 100g
Figure 2007199473
比較例1〜3についても、バックコート液を表1に記載の組成として、バックコート層の形成を行った。
比較例4については、バックコート層の形成を行わなかった。
なお、下記表1で用いたエポキシ樹脂、レゾール樹脂、架橋剤(市販品)の製造、販売元は以下の通りである。
*1)ジャパンエポキシレジン(株)製、エポキシ樹脂
*2)住友ベークライト(株)製、レゾール樹脂
*3)ジャパンエポキシレジン(株)製、エポキシ樹脂架橋剤


























表1
Figure 2007199473
〔有機下塗り層の形成〕
上記有機ポリマー層を形成した面とは反対側の、支持体の表面処理した面に、下記の有機下塗り液をバーコーターで塗布し、80℃15秒間乾燥し、乾燥後の塗布量は10mg/m2となるように有機下塗り層を設けた。
−有機下塗り液−
・βアラニン 0.05 g
・メタノール 95 g
・水 5 g
〔記録層の形成〕
このように処理された基板の表面に下記感光液を塗布し、乾燥後の塗布重量が1.7g/m2となるように記録層を設けた。
表2:感光液組成
Figure 2007199473
更に真空密着時間を短縮するため、特公昭61−28986号公報記載のようにしてマット層を形成し、感光性平版印刷版原版を得た。
<評価>
得られた実施例及び比較例の各感光性平版印刷版原版について、「1.輸送による擦れ傷の発生」、「2.耐薬品性」、「3.耐熱性(バーニング耐性)」の各項目について評価をした。その結果は前記表1に併記した。
1.輸送による擦れ傷発生の評価
得られた感光性平版印刷版原版を、1030mm×800mmに裁断し各々30枚準備した。この30枚を合紙を入れずに重ねて、上下に厚さ0.5mmのボール紙を各1枚置いて、4隅をテープ止めした後、アルミクラフト紙で包装した。これを更に段ボールケースで外装しテープ止めし、合紙レス包装形態とした。これをパレットに載せ、トラックで2000kmの輸送を行った後、開封した。開封後の、感光性平版印刷版原版を、富士写真フイルム(株)製自動現像機スタブロン1300Vに、富士写真フイルム(株)製現像液DP−4を8倍の水で希釈して仕込み、現像温度30℃、現像時間12秒で現像処理した。現像後の平版印刷版について、輸送に起因して生じた画像部の抜けの有無を目視により観察し、以下の基準で評価した。結果を表2に示す。
○:画像部の抜けが無い。
×:画像部の抜けが有る。
2.耐薬品性の評価
水平な台上に置いた各感光性平版印刷版原版の裏面(バックコート層の塗布された面)に、UVインキ用のプレートクリーナー;ダイキュアP(大日本インキ(株)製)をスポイトにて約0.5ml滴下し、2分間静置した。その後、水でダイキュアを洗い流し、バックコート層の侵された程度を目視で観察し、以下の基準で評価した。結果を表2に示す。
○:ダイキュアPを滴下した跡が認められなかった。
×:ダイキュアPに侵されて摘果した跡が認められた。
3.耐熱性(バーニング耐性)の評価
各感光性平版印刷版原版を1030mm×800mmに裁断し、バーニングプロセッサー(Wisconsin Oven SPC-34-HTS/109(Wisconsin(株)製))にて、裏面を上側にして270℃、3分間加熱した。加熱による変化を目視にて観察し、以下の基準で評価した。結果を表2に示す。
○:加熱前と加熱後で膜面の均一性の変化が観察されなかった。
×:加熱により、バックコート層が溶融し膜面が凹凸状に不均一となった。
表1に示されるように、実施例の感光性平版印刷版は、合紙を入れずに重ねて包装等した場合であっても、輸送適性に優れると共に、耐薬品性、耐熱性にも優れた平版印刷版原版であることが分かる。
[実施例10〜18、比較例5〜8]
表3の感光液を用いた他は、実施例1〜9、比較例1〜4と同様にして、ネガ型の感光性平版印刷版原版を作製した。
得られた感光性平版印刷版原版について、実施例1〜9、比較例1〜4と同様に、1.輸送による擦れ傷の発生、2.耐薬品性、の2項目について評価を行った。ただし、1.の輸送による擦れ傷の発生については、現像前に、2kwのメタルハライドランプで1mの距離から2分間露光し、富士写真フイルム(株)製現像液DN−3C(水で2倍に希釈)を用いて、30℃、15秒間現像処理した。
実施例1〜9、比較例1〜4と同様な結果が得られた。











表3:感光液
Figure 2007199473

Claims (2)

  1. 支持体の片面に、ジアゾニウム塩またはo−キノンジアジド化合物を感光性化合物として紫外線感光性の記録層を有し、前記支持体の記録層を有する面とは反対側の面に、エポキシ樹脂およびレゾール樹脂から選ばれる少なくとも一種の有機ポリマーと、架橋剤と、を含む溶液を塗布、乾燥することにより架橋反応を生じさせて形成された有機ポリマー層を有することを特徴とする紫外線感光性平版印刷版原版。
  2. 支持体の片面に、ジアゾニウム塩またはo−キノンジアジド化合物を感光性化合物として紫外線感光性組成物を塗布、乾燥して記録層を形成し、前記支持体の記録層を有する面とは反対側の面に、エポキシ樹脂およびレゾール樹脂から選ばれる少なくとも一種の有機ポリマーと、架橋剤と、を含む溶液を塗布、乾燥することにより架橋反応を生じさせて有機ポリマー層を形成することを特徴とする紫外線感光性平版印刷版原版の製造方法。
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