JP2007194536A - 発光ダイオード及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】光取り出し面に2つの電極を有する発光ダイオードにおいて、光の取り出し効率が高く、高輝度の発光ダイオードを提供することを目的とする。
【解決手段】組成式(AlXGa1-XYIn1-YP;0≦X≦1,0<Y≦1)から成る発光層を含む発光部を有し、該発光部を含む化合物半導体層が透明基板と接合され、発光ダイオードの主たる光取り出し面第1の電極と、第1の電極とは極性の異なる第2の電極とを有する発光ダイオードである。この透明基板の側面は、発光層に近い側では発光層の発光面に対して略垂直である第1の側面と、発光層に遠い側では発光面に対して傾斜している第2の側面を有する。そして第2の側面は粗面化され、その表面が0.05μm〜3μmの範囲内の凸凹を有することからなる発光ダイオードである。
【選択図】図2

Description

本発明は、燐化アルミニウム・ガリウム・インジウム(組成式(AlXGa1-XYIn1-YP;0≦X≦1,0<Y≦1)から成る発光層を含む半導体層を透明基板に接合させた発光ダイオードおよびその製造方法に関する。
従来から、赤色、橙色、黄色或いは黄緑色の可視光を発する発光ダイオード(英略称:LED)として、燐化アルミニウム・ガリウム・インジウム(組成式(AlXGa1-XYIn1-YP;0≦X≦1,0<Y≦1)から成る発光層を備えた化合物半導体LEDが知られている。この様なLEDにあって、(AlXGa1-XYIn1-YP(0≦X≦1,0<Y≦1)から成る発光層を備えた発光部は、一般に発光層から出射される発光に対し光学的に不透明であり、また機械的にもそれ程強度のない砒化ガリウム(GaAs)等の基板材料上に形成されている。
このため、最近では、より高輝度の可視LEDを得るために、また、更なる素子の機械的強度の向上を目的として、GaAsの如くの不透明な基板材料を除去して、然る後、発光を透過でき、尚且つ従来に増してより機械強度的に優れる透明な材料からなる支持体層を改めて接合させて、接合型LEDを構成する技術が開示されている(例えば、特許文献1〜5参照。)。
また、高輝度の可視LEDを得るために、素子形状による光取り出し効率向上の方法が用いられている。その例として半導体発光ダイオードの表面と裏面に電極を形成する素子構造において、側面形状による高輝度化の技術が開示されている(例えば、特許文献6〜7参照。)。
特許第3230638号公報 特開平6−302857号公報 特開2002−246640号公報 特許第2588849号公報 特開2001−57441号公報 特開昭58−34985号公報 米国特許第6229160号公報
接合型LEDにより、高輝度のLEDを提供することが可能となったが、さらに高い輝度のLEDを求めるニーズがあった。また、発光ダイオードの表面と裏面に電極を形成する構造の素子においては多くの形状が提案されているが、光取り出し面に2つの電極を形成する素子の構造は、形状が複雑であり、側面状態と電極の配置について最適化がなされていなかった。本発明は光取り出し面に2つの電極を有する発光ダイオードにおいて、光の取り出し効率が高く、高輝度の発光ダイオードを提供することを目的とする。
本発明は上記の課題を解決する為に為されたもので、以下の発明からなる。
(1)組成式(AlXGa1-XYIn1-YP;0≦X≦1,0<Y≦1)から成る発光層を含む発光部を有し、該発光部を含む化合物半導体層が透明基板と接合され、発光ダイオードの主たる光取り出し面に第1の電極と、第1の電極とは極性の異なる第2の電極とを有する発光ダイオードにおいて、透明基板の側面は、発光層に近い側では発光層の発光面に対して略垂直である第1の側面と、発光層に遠い側では発光面に対して傾斜している第2の側面を有し、第2の側面は粗面化され、その表面が0.05μm〜3μmの範囲内の凹凸を有することを特徴とする発光ダイオード。
(2)透明基板が、n型のGaP単結晶であることを特徴とする上記(1)に記載の発光ダイオード。
(3)透明基板の面方位が、(100)または(111)であることを特徴とする上記(1)または(2)に記載の発光ダイオード。
(4)透明基板の厚さが50μm〜300μmの範囲であることを特徴とする上記(1)〜(3)の何れか1項に記載の発光ダイオード。
(5)第2の側面と発光面に平行な面とのなす角度が、55度〜80度の範囲内であることを特徴とする上記(1)〜(4)の何れか1項に記載の発光ダイオード。
(6)第1の側面の幅が、30μm〜100μmの範囲内であることを特徴とする上記(1)〜(5)の何れか1項に記載の発光ダイオード
(7)発光部が、GaP層を含み、第2の電極が、該GaP層上に形成されていることを特徴とする上記(1)〜(6)の何れか1項に記載の発光ダイオード。
(8)第1の電極の極性が、n型であり、第2の電極の極性がp型であることを特徴とする上記(1)〜(7)の何れか1項に記載の発光ダイオード。
(9)組成式(AlXGa1-XYIn1-YP(0≦X≦1,0<Y≦1)から成る発光層を含む発光部を形成後、該発光部を含む化合物半導体層を透明基板と接合し、化合物半導体層の透明基板と反対側の主たる光取り出し面に第1の電極と、第1の電極とは極性の異なる第2の電極とを形成し、透明基板の側面で、発光層に近い側では発光層の発光面に対して略垂直である第1の側面を形成し、発光層に遠い側では発光面に対して傾斜している第2の側面をダイシング法で形成し、その後、第2の側面が0.05μm〜3μmの範囲内の凹凸を有するように粗面化する発光ダイオードの製造方法。
(10)粗面化を湿式エッチングで行うことを特徴とする上記(9)に記載の発光ダイオードの製造方法。
(11)第1の側面をスクライブ・ブレーク法で形成することを特徴とする上記(9)または(10)に記載の発光ダイオードの製造方法。
(12)第1の側面をダイシング法で形成することを特徴とする上記(9)または(10)に記載の発光ダイオードの製造方法。
本発明によれば、LEDの発光部からの光取り出し効率を高め、高輝度で、作動電圧の低い高信頼性の発光ダイオードを提供することができる。
本発明に係る発光部は、(AlXGa1-XYIn1-YP(0≦X≦1,0<Y≦1)から成る発光層を含む化合物半導体積層構造体である。発光層はn型またはp型の何れの伝導形の(AlXGa1-XYIn1-YP(0≦X≦1,0<Y≦1)からも構成できる。発光層は、単一(single)量子井戸(英略称:SQW)または多重(multi)量子井戸(英略称:MQW)の何れの構造であっても良いが、単色性に優れる発光を得るためにはMQW構造とするのが好適である。量子井戸(英略称:QW)構造をなす障壁(barrier)層及び井戸(well)層を構成する(AlXGa1-XYIn1-YP(0≦X≦1,0<Y≦1)の組成は、所望の発光波長を帰結する量子準位が井戸層内に形成される様に決定する。
発光部は、上記の発光層と、放射再結合をもたらすキャリア(担体;carrier)及び発光を発光層に「閉じ込める」ために、発光層の両側に対峙して配置したクラッド(clad)層を含む、所謂、ダブルヘテロ(英略称:DH)構造とするのが高強度の発光を得る上で最も好ましい。クラッド層は、発光層を構成する(AlXGa1-XYIn1-YP(0≦X≦1,0<Y≦1)よりも禁止帯幅が広く、且つ、屈折率の高い半導体材料から構成するが好ましい。例えば、波長が約570nmの黄緑色を発する(Al0.4Ga0.60.5In0.5Pから構成される発光層について、クラッド層を(Al0.7Ga0.30.5In0.5Pから構成する(Y. Hosakawa et.al., J. Crystal Growth、221(2000),652-656.)。発光層とクラッド層との間に、両層間におけるバンド(band)不連続性を緩やかに変化させるための中間層を設けても構わない、この場合、中間層は、発光層とクラッド層の中間の禁止帯幅を有する半導体材料から構成するのが望ましい。
本願発明では、発光層を含む半導体層に、透明基板(透明な支持体層)を接合させる。透明な支持体層は、発光部を機械的に支持するのに充分な強度を有し、且つ、発光部から出射される発光を透過できる禁止帯幅が広く、光学的に透明な材料から構成する。例えば、燐化ガリウム(GaP)、砒化アルミニウム・ガリウム(AlGaAs)、窒化ガリウム(GaN)等のIII−V族化合物半導体結晶体、硫化亜鉛(ZnS)やセレン化亜鉛(ZnSe)等のII−VI族化合物半導体結晶体、或いは六方晶或いは立方晶の炭化珪素(SiC)等のIV族半導体結晶体などから構成できる。
透明な支持体層は、発光部を機械的に充分な強度で支持できる様に凡そ、50μm以上の厚みであるのが望ましい。また、接合後に透明な支持体層への機械的な加工を施し易くするため、約300μmの厚さを超えないものとするのが望ましい。(AlXGa1-XYIn1-YP(0≦X≦1,0<Y≦1)から成る発光層を備えた化合物半導体LEDにあって、透明な支持体層を、厚さを約50μm以上で約300μm以下とするn型GaP単結晶体から構成するのが最適である。
例えば、燐化ガリウム(GaP)からなる透明な支持体層を発光部の最表層に接合させて設ける場合、その発光部の最表層を、発光部を構成するその他のIII−V族化合物半導体層とは格子定数を異にするIII−V族化合物半導体材料から構成すると、透明な支持体層を接合させるのに際して発光部へ印加される応力を緩和する作用を発揮できる。これにより、接合時における発光層の損傷を防止でき、例えば、所望の波長の光を出射できる化合物半導体LEDを安定して提供するのに貢献できる。発光部の最表層の層厚は、透明な支持体層の接合時に、発光部へ印加される応力を充分に緩和するために0.5μm以上とするのが好適である。一方で、その最表層の層厚を極端に厚くすると、他の発光部構成層とは格子定数を相違する関係から、最表層を設ける段階で発光層に応力が印加されてしまう。これを避けるために最表層の層厚は20μm以下とするのが好適である。
特に、(AlXGa1-XYIn1-YP(0≦X≦1,0<Y≦1)から成る発光層から出射される発光を外部へ透過させるのに好都合な透明な支持体層として、燐化ガリウム(GaP)を選択した場合、発光部の最表層をガリウム(Ga)と燐(P)とを構成元素として含み、且つ、GaをPより多く含む半導体材料から構成すると強固な接合を形成することができる。特に、最表層を非化学量論的な組成のGaX1-X(0.5<X<0.7)から構成するのが好適である。
接合させようとする透明な支持体層の表面、及び発光部の最表層の表面は、単結晶からなる表面であり、且つ、それらの面方位は同一とするのが好ましい。例えば、表面は、双方共に(100)面、または、(111)面とするのが望ましい。表面を(100)面、または、(111)面とする発光部の最表層を得るのには、発光部の最表層を基板上に形成するのに際し、表面を(100)面、または、(111)面とする基板を用いれば事足りる。例えば、表面を(100)面とする砒化ガリウム(GaAs)単結晶を基板として用いれば、表面を(100)面とする発光部の最表層を形成できる。
発光部は、砒化ガリウム(GaAs)や、燐化インジウム(InP)、燐化ガリウム(GaP)などのIII−V族化合物半導体単結晶基板や、シリコン(Si)基板などの表面上に形成できる。発光部は、上記したように、放射再結合を担うキャリア(担体)と発光を「閉じ込め」られるダブルヘテロ(英略称:DH)構造とするのが好適である。また、発光層は単色性に優れる発光を得るため、単一(single)量子井戸構造(英略称:SQW)や多重(multi)量子井戸(英略称:MQW)構造とするのが好適である。発光部の構成層の形成手段としては、有機金属化学的気相成長(英略称:MOCVD)手段、分子線エピタキシャル(英略称:MBE)手段や液相エピタキシャル(英略称:LPE)手段を例示できる。
基板と発光部との中間には、基板材料と発光部の構成層との格子ミスマッチの緩和等の作用を担う緩衝(buffer)層、発光層からの発光を素子外部へ反射させるためのブラッグ(Bragg)反射層、選択エッチングに利用するエッチングストップ層等が設けられる。また、発光部の構成層の上方には、オーミック(Ohmic)電極の接触抵抗を下げるためのコンタクト層、素子駆動電流を発光部の全般に平面的に拡散させるための電流拡散層、逆に素子駆動電流の通流する領域を制限するための電流阻止層や電流狭窄層などを設けることができる。
透明な支持体層或いはそれを接合させる発光部の最表層の表面が、2乗平均平方根(英略称:rms)値にして0.3nm以下と平滑である場合、特に強度な接合が果たせる。この様な平滑な表面は、例えば、炭化珪素(SiC)系微粉やセリウム(元素記号:Ce)微粉を含む研磨剤を用いる化学的機械研磨(英略称:CMP)手段により得ることができる。化学的機械研磨した後、研磨した表面を更に、酸溶液或いはアリカリ溶液で処理すれば、尚一層、表面の平滑度を向上させられると共に、研磨工程での表面への異物や汚染物を除去して、清浄な表面を得るのに貢献できる。
透明な支持体層または発光部の最表層は、圧力にして1×10-2パスカル(圧力単位:Pa)以下、望ましくは、1×10-3Pa以下の真空中で接合させる。特に、上記の如く、研磨された平滑な表面を相互に接合させることとすると強固な接合を形成できる。双方を接合させるのに際し、50エレクトロンボルト(単位:eV)以上のエネルギーを有する原子のビーム(beam)またはイオンビームを接合させようとする表面の各々に照射し、接合させる表面を活性化させるのが肝要である。活性化とは、接合させる表面に存在する酸化膜、炭素等を含む不純物層や汚染層などが除去された清浄な状態の表面を創出することを云う。この照射を、透明な支持体層または発光部の構成層の何れかの表面に行えば、双方を強固に確実に接合させられる。また、双方の表面に行うと、より強固な強度で双方を結合させることができる。
強固な接合をもたらすに有効となる照射種としては、水素(元素記号:H)原子、水素分子(分子式:H2)、または水素イオン(プロトン;H+)ビームを例示できる。また、接合させようとする表面領域に存在する元素を含むビームを照射すると、強度的に優れる接合を形成できる。例えば、透明な支持体層として亜鉛(元素記号:Zn)が添加された燐化ガリウム(GaP)を用いるのに際し、ガリウム(Ga)、燐(P)、または亜鉛(Zn)を含む原子やイオンビームを接合させる表面に照射すると、強固な接合を形成できる。しかし、透明な支持体層や発光層の最表層の表面の電気抵抗が高いと、イオンを主体的に含むビームを表面に照射すると、表面が帯電する場合がある。この表面の帯電に因る電気的な反発が起こると強固な接合を形成できないため、イオンビームの照射による表面の活性化は導電性に優れる表面の活性化のために利用するのが好ましい。
また、透明な支持体層または発光部の構成層の表面領域において、それらの組成等に顕著な変化を及ぼさないヘリウム(元素記号:He)、ネオン(元素記号:Ne)、アルゴン(元素記号:Ar)、及びクリプトン(元素記号:Kr)等の不活性ガスのビームを用いると表面の活性化を安定して果たせる。中でも、アルゴン(Ar)原子(一原子分子)ビームを用いると、表面を短時間に簡便に活性化できる。ヘリウム(He)は、アルゴン(Ar)よりも原子量が小さく、このため、Heビームでは接合させようとする表面の活性化に時間が浪費される欠点がある。一方、アルゴンよりは原子量が大きいクリプトン(Kr)のビームを用いると、表面に衝撃損傷を与えかねず不都合である。
透明な支持体層と発光部の最表層との表面を対向させて重ね合わせて接合させるのに際し、接合面の全般に機械的圧力が及ぶ様にすると、双方を強固に接合させるのに好都合となる。具体的には、接合面に対して垂直方向に(鉛直に)、5グラム(g)・cm-2以上で100g・cm-2以下の範囲の圧力を加える。この手法によれば、透明な支持体層または発光部の最表層、或いはその双方が例えば、反っていても、その反りを解消して、均一な強度で接合させるのに効果を上げられる。
透明な支持体層と発光部とは、上記の望ましい真空度の真空中において、支持体層または発光部の最表層、或いは、それらの双方の接合させる表面の温度を、100℃以下、望ましくは50℃以下、更に、望ましくは室温として接合させる。約500℃を超える高温環境下で接合させると、発光部に備えられている(AlXGa1-XYIn1-YP(0≦X≦1,0<Y≦1)から成る発光層が熱的に変性して、このため、所望の波長の発光を出射する化合物半導体LEDを安定して得るのに不都合となる。
本発明では、発光部の最表層に支持体層を接合させ、発光部を機械的に支持できる状態とした後、その発光部を形成するために利用した基板を除去し、発光の外部への取り出し効率を向上させ、従って、高輝度の化合物半導体LEDを構成できる。特に、(AlXGa1-XYIn1-YP(0≦X≦1,0<Y≦1)発光層からの発光を吸収してしまう光学的に不透明な材料を基板として利用している場合、この様に基板を除去する手段は、高輝度のLEDを安定して製造するのに貢献できる。基板と発光部との中間の位置に、発光層から出射される光を吸収する材料から成る層、例えば、バッファ層が存在する場合、基板と併せてそれを除去するとLEDの高輝度化にとって有利となる。基板は、機械的切削加工、研磨、物理的乾式または化学的湿式エッチング等、及びそれらを併用して除去できる。特に、材質によるエッチング速度の差を利用した選択エッチング手段によれば、基板のみを選択的に除去することが可能とあり、再現性良く、且つ、均一に基板を除去できる。
本願発明では、発光ダイオードの主たる光取り出し面に、第1の電極と、第1の電極と極性の異なる第2の電極とを形成することを特徴とする。本願発明における主たる光取り出し面とは、発光部において、透明基板を貼り付けた面の反対側の面である。本願発明において、電極をこのような構成とした理由は高輝度化のためである。このような構造にすることにより、貼り付ける透明基板に電流を流す必要がなくなる。そのため、透過率の高い基板を貼り付けることができ、高輝度化が得られる。
また本発明では、透明基板の側面を、発光層に近い側の箇所では発光層の発光面に対して略垂直とし、発光層に遠い側の箇所では発光面に対して傾斜させる。本願発明において、このような構成とした理由は、発光層から透明基板側に放出された光を効率よく外部に取り出すためである。すなわち、発光層から透明基板側に放出された光のうち一部は第1の側面で反射され、第2の側面で取り出すことができる。また、第2の側面で反射された光は第1の側面で取り出すことができる。第1の側面と第2の側面の相乗効果により、光の取り出し確率を高めることが可能となる。
本願発明では、第2の側面と発光面に平行な面とのなす角度(図2のα)を、55度〜80度の範囲内とするのが好ましい。なお、図2のαは角部の角度ではなく側面の辺部の角度とする。αをこのような範囲とすることにより、透明基板の底部で反射された光を効率よく外部に取り出すことが可能となる。
また、本願発明では、第1の側面の幅(厚さ方向)を、30μm〜100μmの範囲内とするのが好ましい。第1の側面の幅をこの範囲内にすることにより、透明基板の底部で反射された光を、第1の側面の箇所で、効率よく発光面に戻し、さらには、主たる光取り出し面から放出させることが可能となるため、発光ダイオードの発光効率を高めることが可能となる。
本願発明では、第2の電極の周囲を、半導体層で囲んだ構成にするのが好ましい。このような構成とすることにより、作動電圧を下げる効果が得られる。第2の電極の四方を第1の電極で囲むことにより、電流が四方に流れやすくなり、その結果作動電圧が低下する。
本発明では、第1の電極を、格子状とするのが好ましい。
このような構成とすることにより、信頼性を向上させる効果が得られる。格子状にすることにより、発光層に均一に電流を注入することができ、その結果信頼性の向上が得られる。
本発明では、第1の電極を、パッド電極と幅10μm以下の線状電極で構成するのが好ましい。このような構成とすることにより、高輝度化の効果が得られる。電極の幅を狭くすることにより、光取り出し面の開口面積を上げることができ、高輝度化が得られる。
本発明では、発光部がGaP層を含む構成とし、第2の電極を、GaP層上に形成するのが好ましい。このような構成とすることにより、作動電圧を下げる効果が得られる。第2の電極をGaP層上に形成することにより、良好なオーミックコンタクトが得られ、作動電圧を下げることができる。
本発明では、第1の電極の極性をn型とし、第2の電極の極性をp型とするのが好ましい。このような構成とすることにより、高輝度化の効果が得られる。第1の電極をp型とすると、電流拡散が悪くなり、輝度の低下を招く。第1の電極をn型とすることにより、電流拡散が良くなり、高輝度化が得られる。
本発明では、透明基板の傾斜面を粗面化し、その表面に0.05μm〜3μmの範囲内、好ましくは、0.1μm〜1μmの範囲内の凹凸を形成する。このような構成とすることにより、傾斜面での光取り出し効率を上げる効果が得られる。これは、傾斜面を粗面化することにより、傾斜面での全反射を抑制して、光取り出し効率を上げることができるからである。なお、本願発明の傾斜面の凸凹は、走査型電子顕微鏡の撮影写真から計算して、測定できる。凹凸が0.05μm未満では上記の効果が不十分であり、3μmを越えると結晶欠陥が入り、信頼性が悪くなる。
本願発明の傾斜面の粗面化は、ドライエッチング、湿式エッチング等を用いて行うことができるが、特に、透明基板側面の結晶方位を利用した湿式エッチングにより行うのが好ましい。湿式エッチングにより粗面化を行う場合は、例えば、燐酸過水(燐酸と過酸化水素と水の混合物)+塩酸の化学エッチングにより行うのが好ましい。
本発明では、第2の側面をダイシング法で形成するのが好ましい。このような製造方法を採用することにより、製造歩留まりを向上させる効果が得られる。第2の側面は、ウェットエッチング、ドライエッチング、スクライブ法、レーザー加工などの方法を組み合わせて、作製できるが、形状の制御性、生産性の高いダイシング法が最適な製造方法である。
本願発明では、第1の側面をスクライブ・ブレーク法、または、ダイシング法で形成するのが好ましい。前者の製造方法を採用することにより、製造コストを低下させることができる。すなわち、この製造方法ではチップ分離の際、切りしろが必要ないため、数多くの発光ダイオードが製造でき、製造コストを下げることができる。後者では、高輝度化の効果が得られる。この製造方法を採用することにより、第1の側面からの光取り出し効率が上がり、高輝度化が得られる。
本実施例では、本発明に係わる発光ダイオードを作製した例を具体的に説明する。
図1および図2は、本実施例で作製した半導体発光ダイオードを示した図で、図1はその平面図、図2は図1のI−I線に沿った断面図である。図3は、半導体発光ダイオードに用いられる半導体エピタキシャルウェーハの層構造の断面図である。
本実施例で作製した半導体発光ダイオード10は、AlGaInP発光部を有する赤色発光ダイオード(LED)である。
本実施例1では、GaAs基板上に設けたエピタキシャル積層構造体(エピウェーハ)とGaP基板とを接合させて発光ダイオードを作製する場合を例にして、本発明を具体的に説明する。
LED10は、Siをドープしたn型の(100)面から15°傾けた面を有するGaAs単結晶からなる半導体基板11上に順次、積層した半導体層13を備えたエピタキシャルウェーハを使用して作製した。積層した半導体層とは、Siをドープしたn型のGaAsからなる緩衝層130、Siをドープしたn型の(Al0.5Ga0.50.5In0.5Pからなるコンタクト層131、Siをドープしたn型の(Al0.7Ga0.30.5In0.5Pからなる下部クラッド層132、アンドープの(Al0.2Ga0.80.5In0.5P/Al0.7Ga0.30.5In0.5Pの20対からなる発光層133、およびMgをドープしたp型の(Al0.7Ga0.30.5In0.5Pからなる上部クラッド層および薄膜(Al0.5Ga0.50.5In0.5Pからなる中間層134、Mgドープしたp型GaP層135である。
本実施例では、上記の半導体層130〜135各層は、トリメチルアルミニウム((CH33Al)、トリメチルガリウム((CH33Ga)およびトリメチルインジウム((CH33In)をIII族構成元素の原料に用いた減圧有機金属化学気相堆積法(MOCVD法)によりGaAs基板11上に積層して、エピタキシャルウェーハを形成した。Mgのドーピング原料にはビスシクロペンタジエチルマグネシウム(bis−(C552Mg)を使用した。Siのドーピング原料にはジシラン(Si26)を使用した。また、V族構成元素の原料としては、ホスフィン(PH3)またはアルシン(AsH3)を用いた。GaP層135は750℃で成長させ、半導体層13をなすその他の半導体層130〜134は730℃で成長させた。
GaAs緩衝層130のキャリア濃度は約2×1018cm-3、また、層厚は約0.2μmとした。コンタクト層131は、(Al0.5Ga0.50.5In0.5Pから構成し、キャリア濃度は約2×1018cm-3、層厚は、約1.5μmとした。n−クラッド層132のキャリア濃度は約8×1017cm-3、また、層厚は約1μmとした。発光層133は、アンドープの0.8μmとした。p−クラッド層134のキャリア濃度は約2×1017cm-3とし、また、層厚は1μmとした。GaP層135のキャリア濃度は約3×1018cm-3とし、層厚は9μmとした。
p型GaP層135は、表面から約1μmの深さに至る領域を研磨し、鏡面加工した。鏡面加工に依り、p型GaP層135の表面の粗さを0.18nmとした。 一方、上記のp型GaP層135の鏡面研磨した表面に貼付するn型GaP基板14を用意した。この貼付用GaP基板14には、キャリア濃度が約2×1017 cm-3となる様にSiおよびTeを添加した、面方位を(111)とする単結晶を用いた。貼付用GaP基板14の直径は50ミリメートル(mm)で、厚さは250μmであった。このGaP基板14の表面は、p型GaP層135に接合させる以前に鏡面に研磨し、平方平均平方根値(rms)にして0.12nmに仕上げておいた。
一般の半導体材料貼付装置に、上記のGaP基板14及びエピタキシャルウェーハを搬入し、3×10-5Paまで装置内を真空に排気した。その後、炭素等の汚染を回避するために炭素(カーボン)材料からなる部材を排除した装置内に載置したGaP基板14の温度を真空中で約800℃の温度に加熱しつつ、800eVのエネルギーに加速されたArイオンを、GaP基板14の表面に照射した。これより、GaP基板14の表面に、非化学量論的な組成からなる接合層141を形成した。接合層141を形成した後、上記のArイオンの照射を停止し、GaP基板14の温度を室温迄、降下させた。
次に、表面領域に非化学量論的な組成からなる接合層141を有するGaP基板14、及びGaP層135の双方の表面に、電子を衝突させて中性(ニュートラル)化した中性のArビームを3分間に亘り照射した。然る後、真空に維持した貼付装置内で、双方135,14の表面を重ね合わせ、各々の表面での圧力が20g/cm2となる様に荷重を掛け、双方を室温で接合した(図4)。接合したウェーハを貼付装置の真空チャンバーから取り出し、接合界面を分析した。その結果接合部には、非化学量論的な組成を有するGa0.60.4からなる接合層141が存在していた。接合層141の厚さは約3nmで、接合層141の酸素原子の濃度は、一般的なSIMS分析法に依れば7×1018cm-3であり、炭素の原子濃度は、9×1018cm-3であった。
次に、接合したウェーハから、GaAs基板11およびGaAs緩衝層130をアンモニア系エッチャントにより選択的に除去した。
コンタクト層131の表面に第1のオーミック電極15として、AuGe、Ni合金を厚さが0.5μm、Ptを0.2μm、Auを1μmとなるように真空蒸着法によりn型オーミック電極を形成した。一般的なフォトリソグラフィー手段を利用してパターニングを施し、電極15を形成した。
次に、p電極を形成する領域のエピ層131〜134を選択的に除去し、GaP層135を露出させた。GaP層の表面にAuBeを0.2μm、Auを1μmとなるように真空蒸着法でp形オーミック電極16を形成した。
450℃で10分間熱処理を行い、合金化し低抵抗のp型およびn型オーミック電極を形成した(図1、図2)。
次に、ダイシングソーを用いて、GaP基板14の裏面から、図2に示す傾斜面の角度α(ここでは角部ではなく辺部とする)が70°となるように、第一の側面Dが80μmとなるようにV字状の溝入れを行った。
発光ダイオードの表面をレジストで保護して、傾斜面を燐酸:過水:水エッチャント、塩酸によりエッチングして、粗面化した。傾斜面の凹凸は約500nm(0.5μm)であった。粗面化した表面の電子顕微鏡写真を図9に示す。
次に、表面側からダイシングソーを用い350μm間隔で切断し、チップ化した。ダイシングによる破砕層および汚れを硫酸・過酸化水素混合液でエッチング除去し、半導体発光ダイオード(チップ)10を作製した。
上記の様にして作製したLEDチップ10を、図5及び図6に模式的に示す如く発光ダイオードランプ42に組み立てた。このLEDランプ42は、マウント用基板45に銀(Ag)ペーストで固定、支持(マウント)し、LEDチップ10のn型オーミック電極15とマウント基板45の表面に設けたn電極端子43とを、また、p型オーミック電極16とp電極端子44とを金線46で、ワイヤボンディングした後、一般的なエポキシ樹脂41で封止して作製した。
マウント用基板45の表面に設けられたn電極端子43とp電極端子44とを介してn型及びp型オーミック電極15,16間に電流を流したところ、主波長を620nmとする赤色光が出射された。順方向に20ミリアンペア(mA)の電流を通流した際の順方向電圧(Vf)は、適切な電極配置、及び各オーミック電極15、16の良好なオーミック特性を反映し、約1.95ボルト(V)となった。また、順方向電流を20mAとした際の発光強度は、発光効率の高い発光部の構成及びチップへの裁断時に発生する破砕層を除去するなど外部への取り出し効率も向上させている事を反映して1000mcdの高輝度となった。
(比較例)
実施例と同様に、図7,8のごとく、P型およびn型オーミック電極を形成した。
次に、表面側からダイシングソーを用い350μm間隔で切断し、チップ化した。ダイシングによる破砕層および汚れを硫酸・過酸化水素混合液でエッチング除去し、半導体発光ダイオード(チップ)10を作製した。
上記の様にして作製したLEDチップ10を、図5及び図6に模式的に示す如く発光ダイオードランプ42に組み立てた。このLEDランプ42は、マウント用基板45に銀(Ag)ペーストで固定、支持(マウント)し、LEDチップ10のn型オーミック電極15とマウント基板45の表面に設けたn電極端子43とを、また、p型オーミック電極16とp電極端子44とを金線46で、ワイヤボンディングした後、一般的なエポキシ樹脂41で封止して作製した。
マウント用基板45の表面に設けられたn電極端子43とp電極端子44とを介してn型及びp型オーミック電極15,16間に電流を流したところ、主波長を620nmとする赤色光が出射された。順方向に20ミリアンペア(mA)の電流を通流した際の順方向電圧(Vf)は、約2.30ボルト(V)となった。また、順方向電流を20mAとした際の発光強度は、200mcdであった。
本発明の発光ダイオードは赤色、橙色、黄色或いは黄緑色の可視光を発し、発光部からの光取り出し効率が高く、高輝度で、作動電圧の低い高信頼性の発光ダイオーとして各種の表示ランプ等に好ましいく利用できる。
本発明の実施例に係わる半導体発光ダイオードの平面図である。 本発明の実施例に係わる半導体発光ダイオードの、図1のI−I線に沿った断面を示す図である。 本発明の実施例、比較例に係わるエピウェーハの断面を示す図である。 本発明の実施例、比較例に係わる透明基板を接合したウェーハの断面を示す図である。 本発明の実施例、比較例に係る発光ダイオードの平面図を示す図である。 本発明の実施例、比較例に係る発光ダイオードの断面図を示す図である。 比較例に係る半導体発光ダイオードの平面図である。 比較例に係る半導体発光ダイオードの、図7のI−I線に沿った断面を示す図である。 本願発明の実施例における、粗面化した表面の電子顕微鏡写真である。
符号の説明
10 半導体発光ダイオード
11 半導体基板
12 発光部
13 エピタキシャル成長層
130 緩衝層
131 コンタクト層
132 下部クラッド層
133 発光層
134 上部クラッド層および中間層
135 GaP層
141 接合層
142 第1側面
143 第2側面
14 GaP基板
15 第1の電極(n型オーミック)
16 第2の電極(p型オーミック)
41 エポキシ樹脂
42 発光ダイオード
43 第1の電極端子
44 第2の電極端子
45 絶縁性基板
46 金ワイヤー

Claims (12)

  1. 組成式(AlXGa1-XYIn1-YP;0≦X≦1,0<Y≦1)から成る発光層を含む発光部を有し、該発光部を含む化合物半導体層が透明基板と接合され、発光ダイオードの主たる光取り出し面に第1の電極と、第1の電極とは極性の異なる第2の電極とを有する発光ダイオードにおいて、透明基板の側面は、発光層に近い側では発光層の発光面に対して略垂直である第1の側面と、発光層に遠い側では発光面に対して傾斜している第2の側面を有し、第2の側面は粗面化され、その表面が0.05μm〜3μmの範囲内の凹凸を有することを特徴とする発光ダイオード。
  2. 透明基板が、n型のGaP単結晶であることを特徴とする請求項1に記載の発光ダイオード。
  3. 透明基板の面方位が、(100)または(111)であることを特徴とする請求項1または2に記載の発光ダイオード。
  4. 透明基板の厚さが50μm〜300μmの範囲であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の発光ダイオード。
  5. 第2の側面と発光面に平行な面とのなす角度が、55度〜80度の範囲内であることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の発光ダイオード。
  6. 第1の側面の幅が、30μm〜100μmの範囲内であることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の発光ダイオード
  7. 発光部が、GaP層を含み、第2の電極が、該GaP層上に形成されていることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の発光ダイオード。
  8. 第1の電極の極性が、n型であり、第2の電極の極性がp型であることを特徴とする請求項1〜7の何れか1項に記載の発光ダイオード。
  9. 組成式(AlXGa1-XYIn1-YP(0≦X≦1,0<Y≦1)から成る発光層を含む発光部を形成後、該発光部を含む化合物半導体層を透明基板と接合し、化合物半導体層の透明基板と反対側の主たる光取り出し面に第1の電極と、第1の電極とは極性の異なる第2の電極とを形成し、透明基板の側面で、発光層に近い側では発光層の発光面に対して略垂直である第1の側面を形成し、発光層に遠い側では発光面に対して傾斜している第2の側面をダイシング法で形成し、その後、第2の側面が0.05μm〜3μmの範囲内の凹凸を有するように粗面化する発光ダイオードの製造方法。
  10. 粗面化を湿式エッチングで行うことを特徴とする請求項9に記載の発光ダイオードの製造方法。
  11. 第1の側面をスクライブ・ブレーク法で形成することを特徴とする請求項9または10に記載の発光ダイオードの製造方法。
  12. 第1の側面をダイシング法で形成することを特徴とする請求項9または10に記載の発光ダイオードの製造方法。
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