JP2007194258A - 超伝導磁石装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】超伝導磁石装置において、冷凍機を容易に着脱できる構造であって、冷凍機が停止しても、液体ヘリウムの消費量を少なく、被冷却物の冷却を長時間にわたって可能とすること。
【解決手段】超伝導磁石装置50は、超伝導コイル3及びヘリウム2を収納した低温容器1、熱シールド12、真空容器14、冷凍機ポート40、冷凍機ポート内に着脱可能に装着され、冷却部である第1ステージ5及び第2ステージ6を有する多段式冷凍機を備える。冷凍機ポート40の一部を構成する高熱伝導体の第1伝熱部材10を熱シールド12に熱的に接続する。第1ステージ5に熱的に接続して装着た高熱伝導体の第2伝熱部材9を第1伝熱部材6に熱的に接続して着脱可能に接合する。冷凍機4が停止した際に蒸発するヘリウムガス2bを冷凍機ポート40内を通して第1伝熱部材10または第2伝熱部材9と熱交換させてから真空容器14外に吐出する。
【選択図】図1

Description

本発明は、超伝導磁石装置に係り、特に冷凍機を備えたMRI用超伝導磁石装置に好適なものである。
従来の超電導マグネット装置として、特開2005−55003号公報(特許文献1)に示されたものがある。この超電導マグネット装置は、超電導コイル及びこの超電導コイルを冷却する液体ヘリウムを収納した熱シールドと、この熱シールドを収納した真空容器と、この真空容器から熱シールドに至るスリーブと、このスリーブ内に着脱可能に装着され、熱シールドを冷却する1段目冷却シリンダと熱シールドを冷却する2段目冷却シリンダとを有する多段式冷凍機と、を備えて構成されている。
また、従来の冷却手段付きクライオスタットとして、特許第2961619号公報(特許文献2)に示されたものがある。この冷却手段付きクライオスタットは、超電導マグネット及びこの超電導マグネットを冷却する液体ヘリウムを収納した低温容器と、この低温容器を収納した第2の熱シールド筒と、この第2の熱シールド筒を収納した第1の熱シールド筒と、この第1の熱シールド筒を収納した真空容器と、この真空容器内の第1真空室と第1の熱シールド筒内の第2真空室とに連通する空間にまたがって設けられた気密隔壁と、この気密隔壁内に着脱可能に装着され、第1熱シールド筒を冷却する第1低温部と第2熱シールド筒を冷却する第2低温部とを有する多段式冷凍機と、を備えて構成されている。
特開2005−55003号公報(図5) 特許第2961619号公報
特許文献1及び特許文献2には、冷凍機を装置から着脱することができることが開示されているものの、冷凍機の運転が停止した場合における被冷却物(超電導コイルまたは超電導マグネット)の冷却を長時間にわたって維持することについては開示されていない。特許文献1の超電導マグネット装置または特許文献2の冷却手段付きクライオスタットにおいて、冷凍機の運転が停止すると、外部からの熱侵入により熱シールド内の液体ヘリウムまたは低温容器内の液体ヘリウムが蒸発するので、この蒸発したヘリウムガスを外部に放出して熱シールド内の圧力または低温容器内の圧力の上昇を防ぐことが必要である。このヘリウムガスを単に放出すると高価な寒剤であるヘリウムの消費が著しく多くなってしまうと共に、外部からの熱侵入によって液体ヘリウムの温度が急激に上昇して被冷却物の冷却が短時間で行えなくなってしまう、という問題が生ずる。特に、病院で臨床用に使用されるMRI用超伝導磁石装置の場合には、冷凍機が一定の期間停止した場合でも超伝導磁石装置がクエンチしないことが切望されている。
本発明の目的は、冷凍機を容易に着脱できる構造であって、冷凍機が停止しても、液体ヘリウムの消費量を少なくできると共に、被冷却物の冷却を長時間にわたって可能とする超伝導磁石装置を提供することにある。
前述の目的を達成するために、本発明は、超伝導コイル及びこの超伝導コイルを冷却するヘリウムを収納した低温容器と、前記低温容器を収納した熱シールドと、前記熱シールドを収納した真空容器と、前記真空容器から前記熱シールドを貫通して前記低温容器に至る冷凍機ポートと、前記冷凍機ポート内に着脱可能に装着され、前記熱シールドを冷却する第1ステージと前記ヘリウムを冷却する第2ステージとを有する多段式冷凍機と、を備えた超伝導磁石装置であって、前記冷凍機ポートに高熱伝導体で形成された第1伝熱部材を有すると共に、この第1伝熱部材を前記熱シールドに熱的に接続し、前記多段式冷凍機の第1ステージに高熱伝導体で形成された第2伝熱部材を熱的に接続して装着すると共に、この第2伝熱部材を前記第1伝熱部材に着脱可能に接合し、前記多段式冷凍機が停止した際に当該低温容器内で蒸発するヘリウムガスを前記冷凍機ポート内を通して前記第1伝熱部材または前記第2伝熱部材と熱交換させてから前記真空容器外に吐出するようにしたことにある。
係る本発明のより好ましい具体的な構成例は次の通りである。
(1)前記第1伝熱部材の内周面に凹テーパ面を形成し、前記第2伝熱部材の外周面に凸テーパ面を形成し、前記第2伝熱部材の凸テーパ面を前記第1伝熱部材の凹テーパ面に嵌合して前記第2伝熱部材を前記第1伝熱部材に着脱可能としたこと。
(2)前記真空容器を低熱伝導率のステンレス鋼で構成し、前記冷凍機ポートを異材継手と伸縮自在のベローズとから構成し、前記異材継手の一方を高熱伝導率の銅またはアルミニウムなどの前記第1伝熱部材で構成すると共に、前記異材継手の他方を低熱伝導率のステンレス鋼の低熱伝導部材で構成し、前記ベローズをステンレス鋼製として前記低熱伝導部材と前記真空容器とを繋ぐように設けたこと。
(3)前記多段式冷凍機が停止した際に前記低温容器内で蒸発するヘリウムガスを前記冷凍機ポート内の一側から導いて前記第2伝熱部材及び前記第1ステージを冷却するガス流路を前記第1ステージに対する前記第2伝熱部材の装着面に形成したこと。
(4)前記ガス流路を前記第1ステージの外周面に巻回するように螺旋状の溝で形成したこと。
(5)前記多段式冷凍機が停止した際に前記低温容器内で蒸発するヘリウムガスを前記冷凍機ポート内の一側から導いて前記第1伝熱部材または前記第2伝熱部材を冷却するガス流路を前記第1伝熱部材または前記第2伝熱部材の内部を貫通するように形成したこと。
(6)前記多段式冷凍機が停止した際に前記低温容器内で蒸発するヘリウムガスを前記冷凍機ポート内の一側から導いて前記第2伝熱部材を冷却するガス流路を前記第2伝熱部材の外周面に巻回するように螺旋状に形成したこと。
(7)前記ガス流路を通ったヘリウムガスを前記熱シールドと熱交換させてから前記真空容器を貫通させて大気中で逆止弁と接続したこと。
(8)前記多段式冷凍機と前記冷凍機ポートとの間に形成される空間に多孔質ポリマーを設置したこと。
(9)前記超伝導コイルはMRI用超伝導コイルであり、前記低温容器内に格納されたヘリウムは気液2相の気体ヘリウムと液体ヘリウムとからなり、前記MRI用超伝導コイルを前記液体ヘリウムに浸漬したこと。
本発明によれば、冷凍機を容易に着脱できる構造であって、冷凍機が停止しても、液体ヘリウム2aの消費量を少なくできると共に、被冷却物の冷却を長時間にわたって可能とする超伝導磁石装置を提供することができる。
以下、本発明の複数の実施形態について図を用いて説明する。各実施形態の図における同一符号は同一物または相当物を示す。なお、本発明は、それぞれの実施形態を適宜に組み合わせることにより、さらに効果的なものとすることができる。
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態の超伝導磁石装置を図1から図3を用いて説明する。図1は本発明の第1実施形態の超伝導磁石装置の要部断面図、図2は図1の第1ステージ及び第2伝熱部材を示す図、図3は図1の超伝導磁石装置の全体斜視図である。本実施形態では、病院で臨床用に使用されるMRI用超伝導磁石装置の例である。
超伝導磁石装置50は、低温容器1、熱シールド12、真空容器14、冷凍機ポート40、冷凍機4、熱交換器7、冷却ガス管16、逆止弁17を主な構成要素として備えて構成されている。
低温容器1は、MRIにおける超伝導コイル3と、この超伝導コイル3を冷却する寒剤であるヘリウム2とを収納するものであり、ステンレス鋼で形成されている。ヘリウム2は、超伝導コイル3を浸漬して冷却する液体寒剤である液体ヘリウム2aと、寒剤ガスであるヘリウムガス2bとの気液2相で構成されている。ヘリウムガス2bは、安全上の観点(低温容器1内圧力の過剰な上昇の抑制)から、その低温容器1の自由空間の一部に形成されるものであり、液体ヘリウム2aが蒸発することなどによって形成される。
熱シールド12は、外部の熱が低温容器1に侵入することを抑制するためのものであり、低温容器1を収納するように設置されている。この熱シールド12は、低温容器1の温度と真空容器14の温度との中間の温度に冷却されると共に、低温容器1との間の空間を真空に保持している。この熱シールド12の外周には積層断熱材13が設置されている。この積層断熱材13は室温の真空容器14からの輻射熱を遮蔽するものである。
真空容器14は、外部の熱が熱シールド12、低温容器1に侵入することを抑制するためのものであり、低熱伝導率のステンレス鋼で構成して熱シールド12を収納するように設置されている。この真空容器14は、大気に接して配置されると共に、熱シールド12との間の空間を真空に保持している。
冷凍機ポート40は、冷凍機4の冷却部を真空容器14内に挿入するためのものであり、真空容器14から熱シールド12を貫通して低温容器1に至る筒状の部材で構成されている。この冷凍機ポート40は、その一側が低温容器1の開口を通して低温容器1内に連通されていると共に、その他側が真空容器1の開口を通して大気側に開放されている。この真空容器1の開口は冷凍機4により閉鎖されている。冷凍機ポート40内の一側の空間はヘリウムガス2bで満たされている。冷凍機ポート40の一側端部は低温容器1に接続され、冷凍機ポート40の他側端部は真空容器14に接続されている。
冷凍機4は、多段式冷凍機で構成されており、冷凍機ポート40内に冷凍機冷却部が挿入され、真空容器14に着脱可能に装着されている。冷凍機4は、熱シールド12を冷却する冷却部である第1ステージ5と、ヘリウム2を冷却する冷却部である第2ステージ6とを有しており、本実施形態では2段式冷凍機である。冷凍機4の冷凍性能は、第1ステージ5の温度が60Kのとき60W、第2ステージ6の温度が4Kのとき1W程度以上の性能が望ましい。
熱交換器7は、低温容器1内に配置され、冷凍機4の第2ステージ6に、高熱伝導率で柔軟性に富んだインジューム箔8を介して熱的に接続されている。これによって、熱交換器7は第2ステージ6で4Kに冷却される。熱交換器7は、図示状態ではヘリウムガス2b中に位置されており、低温容器1内で蒸発したヘリウムガス2bを凝縮させて液化し、液体ヘリウム2aを冷却する。なお、熱交換器7の端部が液体ヘリウム2a中にあるときは自然対流によって液体ヘリウム2aを冷却することが可能である。
冷却ガス管16は、冷凍機ポート40内のヘリウムガス2bを真空容器14の外部に導くための配管である。冷却ガス管16の一側端部は冷凍機ポート40の穴15aに連通され、他側端部は真空容器14の外部に開放されている。この冷却ガス管16の途中部分は熱シールド12に熱的に接続され、冷却ガス管16を通って外部に導かれるヘリウムガス2bにより熱シールド12を冷却可能としている。
逆止弁17は、真空容器14の外部に位置する冷却ガス管16の出口部に設置され、低温容器1内の圧力が所定圧力以上に上昇すると開路されるように構成されている。即ち、低温容器1内の圧力が上昇して冷凍機ポート40及び冷却ガス管16内の圧力が上昇し、逆止弁17の冷凍機ポート40側が大気側よりも所定圧力以上に上昇すると、逆止弁17は自動的に開路されて低温容器1内のヘリウムガス2bは冷凍機ポート40及び冷却ガス管16内を通って大気中に放出される。逆止弁17の冷凍機ポート40側が大気側よりも所定圧力以下に低下すると、逆止弁17は自動的に閉路されてヘリウムガス2bの放出が停止される。
換言すれば、低温容器1の内部の圧力は冷凍機4の性能が侵入熱をはるかに上回る場合に負圧となり、大気が低温容器1内に逆流してくる。これを防止する逆止弁17がヘリウムガス2bの吐出部に接続されている。低温容器1の内圧が負圧になると逆止弁17が閉じ、大気は流れなくなるが、低温容器1の内圧が正圧の場合、逆止弁17が開き低温容器1内のヘリウムガス2bが大気中に流れる。
上述した冷凍機ポート40は、材質の異なる異材継手41と、伸縮自在のベローズ15とから構成されている。ベローズ15は異材継手41の軸方向両側から延びるように設けられている。
異材継手41は、高熱伝導率の銅またはアルミニウムなどで形成された第1伝熱部材10と、低熱伝導率のステンレス鋼などで形成された低熱伝導部材11とを一体に接続して構成されている。第1伝熱部材10は、第2伝熱部材9から熱シールド12への熱伝達する機能を備えており、そのために高熱伝導体で形成されている。
ベローズ15は、低熱伝導率のステンレス鋼などで形成され、第1伝熱部材10と、低温容器1及び真空容器14との間を低熱伝導部材11と共に繋ぐように設けられている。ベローズ15及び低熱伝導部材11は第1伝熱部材10と低温容器1及び真空容器14との間における熱伝導が少ないことが求められており、そのために低熱伝導体で形成されている。
異材継手41の両端はステンレス鋼であるため、異材継手41と真空容器14との接合、及び、異材継手41と低温容器1との接合はいずれもTIG溶接ができる。なお、本実施形態では、第1ステージ5と真空容器14および低温容器1との位置が離れているため、異材継手41と真空容器14、及び、異材継手41と低温容器1の間にステンレス鋼のベローズ15を接続している。ベローズ15の代わりにステンレス製の管を接続してもよい。
第1伝熱部材10は熱シールド側の端部から外側に突出するフランジ部10aを有している。このフランジ部10aは熱シールド12に熱的に接続されている。また、第1伝熱部材10は第1ステージ側の端部から内側に突出するフランジ部10bを有している。フランジ部10bの内周面は凹テーパ面10cに形成されている。低熱伝導部材11は第1伝熱部材10の両側とベローズ15とを繋ぐためのものである。ベローズ15は、冷凍機4が冷えて熱収縮が起きたときでも凹テーパ面10cと凸テーパ面9bとの密着を保持するために収縮自在となっている。なお、異材継手41と真空容器14間に復元力を持たせるためのバネを設けるようにしても良い。
冷凍機1の第1ステージ5には、図1及び図2に示すように、高熱伝導体で形成された第2伝熱部材9が熱的に接続して装着されている。この第2伝熱部材9は第1伝熱部材10に熱的に接続して着脱可能に接合される。これによって、冷凍機4が故障した場合などに、冷凍機4を取外して修理することができる。
この接合は、具体的には、第2伝熱部材9の外周面に凹テーパ面10cの傾斜面と合致する傾斜面である凸テーパ面9bが形成され、この第2伝熱部材9の凸テーパ面9bが第1伝熱部材9の凹テーパ面10cに嵌合することにより行われる。これによって、冷凍機4の着脱を容易にしつつ、凹テーパ面10cと凸テーパ面9bとの伝熱面積の増大及び良好な熱的接触が図れる。凹テーパ面10cと凸テーパ面9bとの接触部の隙間には高熱伝導率のヘリウムガス2bが介在していること、その隙間が微少であることから、凹テーパ面10cと凸テーパ面9bとが接触さえしていれば接触面圧によらず一定の熱抵抗値が得られ、第2伝熱部材9と第1伝熱部材10との間の熱抵抗を0.1K/W以下に小さくすることができる。従って、何回、着脱しても安定した冷却性能が得られる効果がある。
なお、嵌合された第2伝熱部材9と第1伝熱部材10とにより、冷凍機ポート40内が2つの空間に区画されることとなり、後述するガス流路18により一側の空間から他側の空間へのヘリウムガス2bの流れを作り出せるようになっている。
第1ステージ5に対する第2伝熱部材9の装着面には、冷凍機4が停止した際に、低温容器1内で蒸発するヘリウムガス2bを冷凍機ポート40内の一側(図1の下側)から導いて第2伝熱部材9及び第1ステージ5を冷却して冷凍機ポート40内の他側(図1の上側)へ流出するガス流路18が形成されている。このガス流路18は第1ステージ5の外周面に巻回するように螺旋状の溝で形成されている。
冷凍機ポート4の第1伝熱部材10、低熱伝導部材11、ベローズ15、第2伝熱部材9、第1ステージ5、第2ステージ6は、何れも円筒状に形成され、同心に配置されている。
超伝導磁石装置50は、図5に示すように、真空容器14が上部真空容器26と下部真空容器27に分離された構成となっている。患者はこの上下真空容器26、27の間に入るようにできている。このような構成により、患者がこの中に入ったとき、閉塞感が少ないので患者の負担が軽減できる特長がある。なお、28は液体ヘリウム2a及び超伝導コイル3に電流を供給するサービスポートである。
通常の冷凍機4が動作中においては、冷凍機4の第1ステージ5及び第2ステージ6の冷熱によって熱シールド12及び熱交換器7が冷却され、熱シールド12の温度が60K以下に冷却されると共に、熱交換器7が4K程度に冷却されて熱交換器7の表面ではヘリウムガス2bが凝縮され液化される。このため、冷凍機運転中はヘリウム液が消費することなく安定して超伝導磁石装置を運転することができる。
そして、停電等によって冷凍機4の運転が停止すると、冷凍機4の第1ステージ5および第2ステージ6の冷却能力がなくなり、また、熱シールド12の温度も上昇する。このため、低温容器1からの輻射熱や、熱シールド12と低温容器1とを連結する荷重支持体等からの伝導熱が増加する。また、真空容器14から冷凍機4の第1ステージ5及び第1ステージ5から第2ステージ6への伝導熱よって低温容器1への侵入熱が増大する。これらによって、低温容器1内の圧力が上昇し、逆止弁17が開くので、低温容器1内の上部の蒸発した4Kの冷たいヘリウムガス2bは図1及び図2の矢印の方向に流れ、大気に放出される。
即ち、低温容器1内の上部の蒸発したヘリウムガス2bは、冷凍機ポート40の一側空間内に入り、矢印61のように流れて第2ステージ6を顕熱で冷却した後、ガス流路18内に流入する。ガス流路18内に流入したヘリウムガス2bは、矢印62に示すように、螺旋状に形成される溝内を通って高熱伝導体の第2伝熱部材9と広い接触面積で熱交換して第2伝熱部材9を顕熱で冷却する。第2伝熱部材9と接触している高熱伝導体の第1伝熱部材10も熱伝導及び固体間の接触によって冷却される。冷却された第1伝熱部材10は熱シールド12に熱的に接続されているので、熱シールド12が冷却されることとなり、熱シールド12の機能(即ち、外部の熱が低温容器1に侵入することを抑制する機能)が保持される。
ガス流路18を通ったヘリウムガス2bは、冷凍機ポート40の他側空間内に入り、矢印63のように流れ、冷凍機ポート40の穴15aを通って冷却ガス管16に流入する。この冷却ガス管16は熱シールド12に熱的に接続されているので、ヘリウムガス2bが矢印64のように冷却ガス管16を通る際に、熱シールド12もヘリウムガス2bの顕熱で冷却される。ちなみに、ヘリウム2の液界面のガス温度は4.5Kである。また、熱シールド12の温度は40Kから60Kとガス温度より高いため、顕熱による冷却熱量は大きい。そして、冷却ガス管16を通ったヘリウムガス2bは、逆止弁17を経て矢印65のように大気中に放出される。
このように、冷凍機1が停止したとき、冷凍機1の冷却部である第1ステージ5及び第2ステージ6と熱シールド12とが冷却されるので、液体ヘリウム2aへの侵入熱量が増加するのを低減でき、これによって液体ヘリウム2aの消費量を少なくできると共に、被冷却物である超伝導コイル3の冷却を長時間にわたって可能とする。従って、冷凍機1の停止時に長時間にわたってクエンチなしでMRI用超伝導磁石装置を運転することができる。
なお、ヘリウムガス2bの粘性は低温になるほど小さく、密度は低温になるほど大きくなり、動粘性係数は温度が低いほど小さい。このため、圧損は、同じ形状では、低温の方が小さくなる。伝熱面積を稼ぐため、流路断面積を小さくし、流路長さを長くしても10K以下の低温ではあまり問題にならない。従って、細い流路を持つガス流路18は冷却性能を高くできるので、冷凍機の第1ステージ温度5を下げる効果がある。また、第2ステージ6への侵入熱量は、第1ステージ5の温度に依存している。液体ヘリウム2aの液面に近い第2ステージ6の温度を低温に維持するためには、第1ステージ5の温度を下げることが有効な手段である。また、第2ステージ6から液体ヘリウム2aへの侵入熱量も少なくできる効果がある。
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態の超伝導磁石装置について図4を用いて説明する。図4は本発明の第2実施形態の超伝導磁石装置の要部断面図である。この第2実施形態は、次に述べる点で第1実施形態と相違するものであり、その他の点については第1実施形態と基本的には同一であるので、重複する説明を省略する。
この第2実施形態では、第1伝熱部材10にガス流路19が設けられ、第1実施形態のガス流路18が第2伝熱部材9に設けられていることと相違している。また、このガス流路19は、ストレートで細い円形の穴で形成されており、その本数が多数で構成されている点でも第1実施形態と相違している。
この第2実施形態によれば、ガス流路19によって熱シールド12及び第1ステージ5を冷却する機能を備えていると共に、ヘリウムガス2bで第1伝熱部材10を直接冷却する構成であるため、熱シールド12の冷却を優先的に冷却する場合に有効である。
また、この第2実施形態では、輻射熱を遮蔽するための遮蔽板20とその遮蔽板20を支持固定する支持棒21とを冷凍機ポート40のそれぞれの空間内に設置している。これによって、冷凍機40内を通しての輻射熱の進入を低減することができ、特に冷凍機4の運転停止時に有効である。なお、冷凍機ポート40の一側の支持棒21は第2伝熱部材9を利用して固定されている。
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態の超伝導磁石装置について図5を用いて説明する。図5は本発明の第3実施形態の超伝導磁石装置の要部断面図である。この第3実施形態は、次に述べる点で第1実施形態と相違するものであり、その他の点については第1実施形態と基本的には同一であるので、重複する説明を省略する。
この第3実施形態では、第1伝熱部材10の外周に高熱伝導のパイプによるガス流路24を設けたものである。このガス流路24の一側は第1伝熱部材10を貫通する穴10dに連通され、他側は冷却ガス管16に直接連通するように接続されている。穴10dは冷凍機ポート40の一側空間に開口されている。
この第3実施形態によれば、ガス流路24によって熱シールド12及び第1ステージ5を冷却する機能を備えていると共に、ヘリウムガス2bで第1伝熱部材10を直接冷却して第1伝熱部材10を通して熱シールド12冷却し、しかもガス流路24からヘリウムガス2bを冷却ガス管16に直接導いて熱シールド12を冷却する構成であるため、熱シールド12の冷却を特に優先的に冷却する場合に有効である。
また、この第3実施形態では、室温と第1ステージの間で且つ冷凍機4の外周のヘリウムガス2bの空間に多孔質ポリマー25が設置されていると共に、第1ステージ5と第2ステージ6との間に多孔質ポリマー25が設置されている。この多孔質ポリマー25は高分子材料であり、熱伝導率が通常のポリマーより小さい。このような多孔質ポリマー25はヘリウムガス2bの対流抑制効果があり、対流による侵入熱量が軽減できる。また、第1ステージ5と第2ステージ6間に設置された多孔質ポリマー25は冷凍機ポート40内における流路断面積が小さくするので、冷凍機4の運転停止時におけるヘリウムガス2bの流速を速くすることができ、第2ステージ6と第1ステージ5との間のベローズ15及び多孔質ポリマー25との熱伝導率を向上することができ、これらのベローズ15及び多孔質ポリマー25の温度を下げることができるので侵入熱をさらに小さくできる。
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態の超伝導磁石装置について図6を用いて説明する。図6は本発明の第4実施形態の超伝導磁石装置の全体斜視図である。この第4実施形態は、次に述べる点で第1実施形態と相違するものであり、その他の点については第1実施形態と基本的には同一であるので、重複する説明を省略する。
この第4実施形態の超伝導磁石装置50は、円筒形の超電導コイルを水平にしたMRI用超伝導磁石装置である。患者が水平中空円筒29内に入るようにできている。この場合、これまでと超伝導コイルの向きは変わっているが、これまで述べてきた冷凍機4の第1ステージ周りの冷却構造は同じにできる、従って、本冷却構造は、円筒型超伝導コイルを2個上下に並べたMRI用超伝導磁石装置および円筒型超電導コイルを水平にしたMRI用超伝導コイルの両方とも使用可能である。
本発明の第1実施形態の超伝導磁石装置の要部断面図である。 第1ステージ及び第2伝熱部材を示す図である。 図1の超伝導磁石装置の全体斜視図である。 本発明の第2実施形態の超伝導磁石装置の要部断面図である。 本発明の第3実施形態の超伝導磁石装置の要部断面図である。 本発明の第4実施形態の超伝導磁石装置の全体斜視図である。
符号の説明
1…低温容器、2…ヘリウム、2a…液体ヘリウム、2b…ヘリウムガス、3…超伝導コイル(被冷却物)、4…冷凍機、5…第1ステージ、6…第2ステージ、7…熱交換器、9…第2伝熱部材、10…第1伝熱部材、10a…フランジ部、10b…フランジ部、10c…凹テーパ面、11…低熱伝導部材、12…熱シールド、14…真空容器、15…ベローズ、16…冷却ガス管、17…逆止弁、18、19、23、24…ガス流路、25…多孔質ポリマー、40…冷凍機ポート、50…超伝導磁石装置、61〜65…ヘリウムガスの流れ方向。

Claims (10)

  1. 超伝導コイル及びこの超伝導コイルを冷却するヘリウムを収納した低温容器と、
    前記低温容器を収納した熱シールドと、
    前記熱シールドを収納した真空容器と、
    前記真空容器から前記熱シールドを貫通して前記低温容器に至る冷凍機ポートと、
    前記冷凍機ポート内に着脱可能に装着され、前記熱シールドを冷却する第1ステージと前記ヘリウムを冷却する第2ステージとを有する多段式冷凍機と、を備えた超伝導磁石装置であって、
    前記冷凍機ポートに高熱伝導体で形成された第1伝熱部材を有すると共に、この第1伝熱部材を前記熱シールドに熱的に接続し、
    前記多段式冷凍機の第1ステージに高熱伝導体で形成された第2伝熱部材を熱的に接続して装着すると共に、この第2伝熱部材を前記第1伝熱部材に着脱可能に接合し、
    前記多段式冷凍機が停止した際に当該低温容器内で蒸発するヘリウムガスを前記冷凍機ポート内を通して前記第1伝熱部材または前記第2伝熱部材と熱交換させてから前記真空容器外に吐出するようにしたこと、
    を特徴とする超伝導磁石装置。
  2. 請求項1に記載の超伝導磁石装置において、前記第1伝熱部材の内周面に凹テーパ面を形成し、前記第2伝熱部材の外周面に凸テーパ面を形成し、前記第2伝熱部材の凸テーパ面を前記第1伝熱部材の凹テーパ面に嵌合して前記第2伝熱部材を前記第1伝熱部材に着脱可能としたこと、を特徴とする超伝導磁石装置。
  3. 請求項2に記載の超伝導磁石装置において、前記真空容器を低熱伝導率のステンレス鋼で構成し、前記冷凍機ポートを異材継手と伸縮自在のベローズとから構成し、前記異材継手の一方を高熱伝導率の銅またはアルミニウムなどの前記第1伝熱部材で構成すると共に、前記異材継手の他方を低熱伝導率のステンレス鋼の低熱伝導部材で構成し、前記ベローズをステンレス鋼製として前記低熱伝導部材と前記真空容器とを繋ぐように設けたこと、を特徴とする超伝導磁石装置。
  4. 請求項1または2に記載の超伝導磁石装置において、前記多段式冷凍機が停止した際に前記低温容器内で蒸発するヘリウムガスを前記冷凍機ポート内の一側から導いて前記第2伝熱部材及び前記第1ステージを冷却するガス流路を前記第1ステージに対する前記第2伝熱部材の装着面に形成したこと、を特徴とする超伝導磁石装置。
  5. 請求項4に記載の超伝導磁石装置において、前記ガス流路を前記第1ステージの外周面に巻回するように螺旋状の溝で形成したこと、を特徴とする超伝導磁石装置。
  6. 請求項1または2に記載の超伝導磁石装置において、前記多段式冷凍機が停止した際に前記低温容器内で蒸発するヘリウムガスを前記冷凍機ポート内の一側から導いて前記第1伝熱部材または前記第2伝熱部材を冷却するガス流路を前記第1伝熱部材または前記第2伝熱部材の内部を貫通するように形成したこと、を特徴とする超伝導磁石装置。
  7. 請求項1または2に記載の超伝導磁石装置において、前記多段式冷凍機が停止した際に前記低温容器内で蒸発するヘリウムガスを前記冷凍機ポート内の一側から導いて前記第2伝熱部材を冷却するガス流路を前記第2伝熱部材の外周面に巻回するように螺旋状に形成したこと、を特徴とする超伝導磁石装置。
  8. 請求項4から7の何れかに記載の超伝導磁石装置において、前記ガス流路を通ったヘリウムガスを前記熱シールドと熱交換させてから前記真空容器を貫通させて大気中で逆止弁と接続したこと、を特徴とする超伝導磁石装置。
  9. 請求項1から8の何れかに記載の超伝導磁石装置において、前記多段式冷凍機と前記冷凍機ポートとの間に形成される空間に多孔質ポリマーを設置したこと、を特徴とする超伝導磁石装置。
  10. 請求項1から9の何れかに記載の超伝導磁石装置において、前記超伝導コイルはMRI用超伝導コイルであり、前記低温容器内に格納されたヘリウムは気液2相の気体ヘリウムと液体ヘリウムとからなり、前記MRI用超伝導コイルを前記液体ヘリウムに浸漬したこと、を特徴とする超伝導磁石装置。
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