JP2007191155A - 空気入りタイヤ - Google Patents
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Abstract
【課題】通常走行時の乗り心地を損なうことなく、ランフラット走行時の耐久性を向上させた空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】一枚以上のカーカスプライからなるカーカス4と、該カーカス4の内側に配置した一対の断面三日月状サイド補強ゴム層5とを備えた空気入りタイヤにおいて、前記カーカスプライを、平行に配列された複数の補強コードをコーティングゴムで被覆して構成し、該補強コードに、ポリケトンからなるフィラメント束を複数本撚り合わせてなり、下記式(I)及び式(II):
σ ≧ −0.01×E + 1.2 ・・・ (I)
σ ≧ 0.02 ・・・ (II)
[式中、σは、177℃における熱収縮応力(cN/dtex)であり;Eは、25℃における49N荷重時の弾性率(cN/dtex)である]の条件を満たすポリケトン繊維コードを適用する。
【選択図】図1
【解決手段】一枚以上のカーカスプライからなるカーカス4と、該カーカス4の内側に配置した一対の断面三日月状サイド補強ゴム層5とを備えた空気入りタイヤにおいて、前記カーカスプライを、平行に配列された複数の補強コードをコーティングゴムで被覆して構成し、該補強コードに、ポリケトンからなるフィラメント束を複数本撚り合わせてなり、下記式(I)及び式(II):
σ ≧ −0.01×E + 1.2 ・・・ (I)
σ ≧ 0.02 ・・・ (II)
[式中、σは、177℃における熱収縮応力(cN/dtex)であり;Eは、25℃における49N荷重時の弾性率(cN/dtex)である]の条件を満たすポリケトン繊維コードを適用する。
【選択図】図1
Description
本発明は、空気入りタイヤ、特に通常走行時の乗り心地を損なうことなく、ランフラット走行時の耐久性を大幅に向上させたサイド補強タイプのランフラットタイヤに関するものである。
パンク等によりタイヤの内圧が低下した状態でも、タイヤが荷重支持能力を失うことなくある程度の距離を安全に走行することが可能なタイヤ、所謂ランフラットタイヤとして、タイヤのサイドウォール部のカーカスの内面に、比較的モジュラが高い断面三日月状のサイド補強ゴム層を配置してサイドウォール部の剛性を向上させ、内圧低下時にサイドウォール部の撓み変形を極端に増加させることなく荷重を負担できるようにしたタイヤや、サイドウォール部を各種補強部材で補強したタイヤ等のサイド補強タイプのランフラットタイヤが各種提案されている(特許文献1〜4参照)。
一方、レーヨン等のセルロース系繊維は、室温において高弾性で且つゴムとの接着性が高いことから、タイヤ用補強コードをはじめ、各種ゴム物品の補強材として使用されてきた。また、該セルロース系繊維は、室温及び高温時のヤング率がPET等のポリエステルに比べて高く、177℃での熱収縮が0.65〜1.0%と高い熱寸法安定性を有している。そのため、該セルロース系繊維は、上記サイド補強タイプのランフラットタイヤのカーカスの補強コードとしても用いられてきた。
しかしながら、カーカスの補強コードとしてレーヨン等のセルロース系繊維コードを用いた従来のサイド補強タイプのランフラットタイヤは、セルロース系繊維の弾性率が十分に高くないため、ランフラット走行時のタイヤの撓みが大きく、また、ランフラット走行によりタイヤが高温になるとカーカスプライの剛性が低下して、タイヤの撓みが更に大きくなる。そのため、ランフラット走行末期のタイヤの故障の主因は、上記断面三日月状のサイド補強ゴム層の割れによるものであり、従来のサイド補強タイプのランフラットタイヤには、ランフラット走行での耐久距離が短いという問題があった。
これに対し、タイヤのランフラット走行での耐久距離を延ばすために、サイド補強ゴム層のゲージを厚くする等してサイドウォール部を補強すると、タイヤ重量が増加したり、通常走行時のタイヤの縦バネが上昇してしまい、通常走行時の乗り心地が悪化するという問題がある。
そこで、本発明の目的は、上記従来技術の問題を解決し、通常走行時の乗り心地を損なうことなく、ランフラット走行時の耐久性を向上させた空気入りタイヤを提供することにある。
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、サイド補強タイプのランフラットタイヤのカーカスの補強コードとして特定の熱収縮応力及び弾性率を有するポリケトン繊維コードを用いることで、タイヤ重量を増加させることなく、ランフラット走行時のタイヤの撓みを抑制でき、その結果として、通常走行時の乗り心地を悪化させること無く、タイヤのランフラット耐久性を大幅に改善できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明の空気入りタイヤは、一対のビード部及び一対のサイドウォール部と、両サイドウォール部に連なるトレッド部とを有し、前記一対のビード部間にトロイド状に延在してこれら各部を補強する一枚以上のカーカスプライからなるカーカスと、前記サイドウォール部の前記カーカスの内側に配置した一対の断面三日月状サイド補強ゴム層とを備えた空気入りタイヤにおいて、
前記カーカスプライが平行に配列された複数の補強コードをコーティングゴムで被覆してなり、該補強コードがポリケトンからなるフィラメント束を複数本撚り合わせたポリケトン繊維コードであって、該ポリケトン繊維コードが下記式(I)及び式(II):
σ ≧ −0.01×E + 1.2 ・・・ (I)
σ ≧ 0.02 ・・・ (II)
[式中、σは、177℃における熱収縮応力(cN/dtex)であり;Eは、25℃における49N荷重時の弾性率(cN/dtex)である]の条件を満たすことを特徴とする。
前記カーカスプライが平行に配列された複数の補強コードをコーティングゴムで被覆してなり、該補強コードがポリケトンからなるフィラメント束を複数本撚り合わせたポリケトン繊維コードであって、該ポリケトン繊維コードが下記式(I)及び式(II):
σ ≧ −0.01×E + 1.2 ・・・ (I)
σ ≧ 0.02 ・・・ (II)
[式中、σは、177℃における熱収縮応力(cN/dtex)であり;Eは、25℃における49N荷重時の弾性率(cN/dtex)である]の条件を満たすことを特徴とする。
ここで、上記ポリケトン繊維コードの177℃における熱収縮応力σは、一般的なディップ処理を施した加硫前のポリケトン繊維コードの25cmの長さ固定サンプルを5℃/分の昇温スピードで加熱して、177℃時にコードに発生する応力であり、また、上記ポリケトン繊維コードの25℃における49N荷重時の弾性率Eは、JISのコード引張り試験によるSSカーブの49N時の接線から算出した単位cN/dtexでの弾性率である。
本発明の空気入りタイヤにおいて、前記ポリケトン繊維コードは、下記式(III):
Nt = tanθ = 0.001×N×(0.125×D/ρ)1/2 ・・・ (III)
[式中、Nは撚り数(回/10cm)で、ρはコードの比重(g/cm3)で、Dはコードの総デシテックス数(dtex)である]で定義される撚り係数(Nt)が0.34以上であることが好ましい。ここで、撚り数Nは、上記フィラメント束を複数本撚り合わせる際の撚り数である。
Nt = tanθ = 0.001×N×(0.125×D/ρ)1/2 ・・・ (III)
[式中、Nは撚り数(回/10cm)で、ρはコードの比重(g/cm3)で、Dはコードの総デシテックス数(dtex)である]で定義される撚り係数(Nt)が0.34以上であることが好ましい。ここで、撚り数Nは、上記フィラメント束を複数本撚り合わせる際の撚り数である。
本発明の空気入りタイヤの好適例においては、前記カーカスプライにおける前記ポリケトン繊維コードの打ち込み数が35〜60(本/50mm)である。
また、本発明の空気入りタイヤにおいて、前記ポリケトン繊維コードは、繊度が500〜2000dtexのポリケトンからなるフィラメント束を2本又は3本撚り合わせてなることが好ましい。
本発明の空気入りタイヤの他の好適例においては、前記ポリケトン繊維コードが、高温下で収縮し、室温に戻すと伸長する可逆性を有する。
本発明によれば、特定の熱収縮応力及び弾性率を有するポリケトン繊維コードを補強コードとするカーカスを備えた、通常走行時の乗り心地を損なうことなく、ランフラット走行時の耐久性を大幅に向上させた空気入りタイヤを提供することができる。
以下に、図を参照しながら本発明を詳細に説明する。図1は、本発明の空気入りタイヤの一例の部分断面図である。図1に示すタイヤは、左右一対のビード部1及び一対のサイドウォール部2と、両サイドウォール部2に連なるトレッド部3とを有し、前記一対のビード部1間にトロイド状に延在して、これら各部1,2,3を補強する一枚以上のカーカスプライからなるラジアルカーカス4と、前記サイドウォール部2の前記カーカス4の内側に配置した一対の断面三日月状サイド補強ゴム層5とを備える。
また、図示例のタイヤにおいては、上記ビード部1内に夫々埋設したリング状のビードコア6のタイヤ半径方向外側にビードフィラー7が配置されており、更に、上記ラジアルカーカス4のクラウン部のタイヤ半径方向外側には二枚のベルト層からなるベルト8が配置されていることに加え、該ベルト8のタイヤ半径方向外側でベルト8の全体を覆うようにベルト補強層9Aが配置され、更に、該ベルト補強層9Aの両端部のみを覆うように一対のベルト補強層9Bが配置されている。ここで、ベルト層は、通常、タイヤ赤道面に対して傾斜して延びるコードのゴム引き層、好ましくは、スチールコードのゴム引き層からなり、2枚のベルト層は、該ベルト層を構成するコードが互いに赤道面を挟んで交差するように積層されてベルト8を構成する。また、ベルト補強層9A,9Bは、通常、タイヤ周方向に対し実質的に平行に配列したコードのゴム引き層からなる。
なお、図示例のラジアルカーカス4は、平行に配列された複数の補強コードをコーティングゴムで被覆してなるカーカスプライ1枚から構成され、また、該ラジアルカーカス4は、上記ビード部1内に夫々埋設した一対のビードコア6間にトロイド状に延在する本体部と、各ビードコア6の周りでタイヤ幅方向の内側から外側に向けて半径方向外方に巻上げた折り返し部とからなるが、本発明の空気入りタイヤにおいて、ラジアルカーカス4のプライ数及び構造は、これに限られるものではない。更に、図示例のベルト8は、二枚のベルト層からなるが、本発明の空気入りタイヤにおいては、ベルト8を構成するベルト層の枚数はこれに限られるものではない。また更に、本発明の空気入りタイヤにおいては、ベルト補強層9A,9Bの配設も必須ではなく、別の構造のベルト補強層を配設することもできる。
本発明の空気入りタイヤにおいては、上記カーカスプライの補強コードが、ポリケトンからなるフィラメント束を複数本撚り合わせたポリケトン繊維コードであって、該ポリケトン繊維コードが下記式(I)及び式(II):
σ ≧ −0.01×E + 1.2 ・・・ (I)
σ ≧ 0.02 ・・・ (II)
[式中、σは、177℃における熱収縮応力(cN/dtex)であり;Eは、25℃における49N荷重時の弾性率(cN/dtex)である]の条件を満たすことを要する。
σ ≧ −0.01×E + 1.2 ・・・ (I)
σ ≧ 0.02 ・・・ (II)
[式中、σは、177℃における熱収縮応力(cN/dtex)であり;Eは、25℃における49N荷重時の弾性率(cN/dtex)である]の条件を満たすことを要する。
上記ポリケトン繊維コードは、高温における熱収縮応力が大きいため、タイヤが高温になるランフラット走行時において、初期の比較的タイヤの歪が小さい時から高い剛性を発揮し、タイヤのサイドウォール部の径方向の曲げ剛性を上昇させて、タイヤの撓みを抑制し、その結果として、タイヤのランフラット耐久性を向上させることができる。一方、上記ポリケトン繊維コードは、通常走行時のコード伸張方向のタイヤの歪が小さい時には、低剛性であるため、通常走行時のタイヤの縦バネを上昇させることが無く、また、該ポリケトン繊維コードは、従来のカーカスに用いられていたレーヨン等のセルロース系の繊維コードと重量が同等で、タイヤ重量を増加させることも無いため、タイヤの乗り心地の悪化を抑制することもできる。
なお、使用するコードが、上記式(I)の関係を満たさない場合、熱収縮応力σが大きいものの弾性率Eが低いコードを使用すると、ランフラット走行時のタイヤの撓みを十分に抑制することができず、タイヤのランフラット耐久性が低下し、一方、弾性率Eが高いものの熱収縮応力σが小さいコードを使用すると、通常走行時のタイヤの縦バネが大きくなり、通常走行時のタイヤの乗り心地が悪化する。また、使用するコードの177℃における熱収縮応力σが0.02cN/dtex未満では、ランフラット走行時のたわみ量が大きくなってしまい、ランフラット耐久距離が短くなってしまう。
ここで、上記ポリケトン繊維コードは、177℃における熱収縮応力σが1.5cN/dtex以下であることが好ましい。ポリケトン繊維コードの177℃における熱収縮応力σが1.5cN/dtexを超えると、加硫時の収縮力が大きくなり過ぎ、結果的に、タイヤ内部のコード乱れやゴムの配置乱れを引き起こし、耐久性の悪化やユニフォミティーの悪化を招いてしまう。また、上記ポリケトン繊維コードは、ランフラット走行時のタイヤの変形を十分に抑制する観点から、177℃における熱収縮応力σが0.20cN/dtex以上であることが好ましく、ランフラット走行時のタイヤの変形を確実に抑制する観点から、177℃における熱収縮応力σが0.30cN/dtex以上であることが更に好ましく、0.4cN/dtex超であることがより一層好ましい。なお、熱収縮応力σが高い程、ランフラット走行時のタイヤの変形を抑制する効果が高い。更に、上記ポリケトン繊維コードは、ランフラット走行時のタイヤの変形を十分に抑制する観点から、25℃における49N荷重時の弾性率Eが30cN/dtex以上であることが好ましく、ランフラット走行時のタイヤの変形を確実に抑制する観点から、49N荷重時の弾性率Eが80cN/dtex以上であることが更に好ましい。また更に、上記ポリケトン繊維コードは、耐疲労性を十分に確保する観点から、25℃における49N荷重時の弾性率Eが170cN/dtex以下であることが好ましく、耐疲労性を良好にする観点から、49N荷重時の弾性率Eが150cN/dtex以下であることが更に好ましい。
上記カーカスプライに用いるポリケトン繊維コードは、下記式(III):
Nt = tanθ = 0.001×N×(0.125×D/ρ)1/2 ・・・ (III)
[式中、Nは撚り数(回/10cm)で、ρはコードの比重(g/cm3)で、Dはコードの総デシテックス数(dtex)である]で定義される撚り係数(Nt)が0.34以上であることが好ましい。ポリケトン繊維コードの撚り係数(Nt)が0.34未満では、疲労性が著しく低下し、耐久性が不足する。
Nt = tanθ = 0.001×N×(0.125×D/ρ)1/2 ・・・ (III)
[式中、Nは撚り数(回/10cm)で、ρはコードの比重(g/cm3)で、Dはコードの総デシテックス数(dtex)である]で定義される撚り係数(Nt)が0.34以上であることが好ましい。ポリケトン繊維コードの撚り係数(Nt)が0.34未満では、疲労性が著しく低下し、耐久性が不足する。
本発明の空気入りタイヤのカーカスプライにおいては、上記ポリケトン繊維コードの打ち込み数が35〜60(本/50mm)の範囲であることが好ましい。カーカスプライにおけるポリケトン繊維コードの打ち込み数が35(本/50mm)未満では、カーカス強度が不足して、耐久性が不足する。なお、打ち込み数が60(本/50mm)を超えても、打ち込み可能であれば、特に制限されない。
また、上記カーカスプライに用いるポリケトン繊維コードは、繊度が500〜2000dtexのポリケトンからなるフィラメント束を2本又は3本撚り合わせてなることが好ましい。ポリケトン繊維コードに用いるフィラメント束の繊度が500dtex未満では、弾性率・熱収縮応力共に不十分であり、2000dtexを超えると、コード径が太くなり、打ち込みを密にできない。なお、ポリケトンからなるフィラメント束の本数が4本以上であっても、上記式(I)及び式(II)の関係を満足できれば、特に制限されない。
上記カーカスプライに用いるポリケトン繊維コードは、高温下で収縮し、室温に戻すと伸長する可逆性を有することが好ましい。この場合、高温下、即ち、ランフラット走行時時にカーカスプライ中のポリケトン繊維コードが収縮しようとして剛性が高まり、タイヤのサイドウォール部の撓みを抑制することができる上、低温下、即ち、通常走行時にカーカスプライ中のポリケトン繊維コードが伸張しようとして剛性が低下し、タイヤの縦バネが低下して、タイヤの通常走行時の乗り心地の悪化を抑制することができる。また、20℃と177℃での熱収縮応力の差が0.20cN/dtex以上、好ましくは0.25cN/dtex以上の可逆的なポリケトン繊維コードを用いることで、通常走行時とランフラット走行時での効果を両立することができる。
本発明の空気入りタイヤのカーカスプライを構成する補強コードは、ポリケトンからなるフィラメント束を複数本撚り合わせたポリケトン繊維コードからなることを要し、該ポリケトン繊維コードの原料のポリケトンとしては、上記式(IV)で表される繰り返し単位から実質的になるポリケトンが好ましい。また、該ポリケトンの中でも、繰り返し単位の97モル%以上が1−オキソトリメチレン[−CH2−CH2−CO−]であるポリケトンが好ましく、99モル%以上が1−オキソトリメチレンであるポリケトンが更に好ましく、100モル%が1−オキソトリメチレンであるポリケトンが最も好ましい。
上記ポリケトン繊維コードの原料のポリケトンは、部分的にケトン基同士、不飽和化合物由来の部分同士が結合していてもよいが、不飽和化合物由来の部分とケトン基が交互に配列している部分の割合が90質量%以上であることが好ましく、97質量%以上であることが更に好ましく、100質量%であることが最も好ましい。
また、上記式(IV)において、Aを形成する不飽和化合物としては、エチレンが最も好ましいが、プロピレン,ブテン,ペンテン,シクロペンテン,ヘキセン,シクロヘキセン,ヘプテン,オクテン,ノネン,デセン,ドデセン,スチレン,アセチレン,アレン等のエチレン以外の不飽和炭化水素や、メチルアクリレート,メチルメタクリレート,ビニルアセテート,アクリルアミド,ヒドロキシエチルメタクリレート,ウンデセン酸,ウンデセノール,6−クロロヘキセン,N−ビニルピロリドン,スルニルホスホン酸のジエチルエステル,スチレンスルホン酸ナトリウム,アリルスルホン酸ナトリウム,ビニルピロリドン及び塩化ビニル等の不飽和結合を含む化合物等であってもよい。
更に、上記ポリケトンの重合度としては、下記式:
[式中、t及びTは、純度98%以上のヘキサフルオロイソプロパノール及び該ヘキサフルオロイソプロパノールに溶解したポリケトンの希釈溶液の25℃での粘度管の流過時間であり;Cは、上記希釈溶液100mL中の溶質の質量(g)である]で定義される極限粘度[η]が1〜20dL/gの範囲にあることが好ましく、2〜10dL/gの範囲にあることが更に好ましく、3〜8の範囲にあることがより一層好ましい。極限粘度が1dL/g未満では、分子量が小さ過ぎて、高強度のポリケトン繊維コードを得ることが難しくなる上、紡糸時、乾燥時及び延伸時に毛羽や糸切れ等の工程上のトラブルが多発することがあり、一方、極限粘度が20dL/gを超えると、ポリマーの合成に時間及びコストがかかる上、ポリマーを均一に溶解させることが難しくなり、紡糸性及び物性に悪影響が出ることがある。
上記ポリケトンの繊維化方法としては、(1)未延伸糸の紡糸を行った後、多段熱延伸を行い、該多段熱延伸の最終延伸工程で特定の温度及び倍率で延伸する方法や、(2)未延伸糸の紡糸を行った後、熱延伸を行い、該熱延伸終了後の繊維に高い張力をかけたまま急冷却する方法が好ましい。上記(1)又は(2)の方法でポリケトンの繊維化を行うことで、上記ポリケトン繊維コードの作製に好適な所望のフィラメントを得ることができる。
ここで、上記ポリケトンの未延伸糸の紡糸方法としては、特に制限はなく、従来公知の方法を採用することができ、具体的には、特開平2−112413号、特開平4−228613号、特表平4−505344号に記載のようなヘキサフルオロイソプロパノールやm−クレゾール等の有機溶剤を用いる湿式紡糸法、国際公開第99/18143号、国際公開第00/09611号、特開2001−164422号、特開2004−218189号、特開2004−285221号に記載のような亜鉛塩、カルシウム塩、チオシアン酸塩、鉄塩等の水溶液を用いる湿式紡糸法が挙げられ、これらの中でも、上記塩の水溶液を用いる湿式紡糸法が好ましい。
例えば、有機溶剤を用いる湿式紡糸法では、ポリケトンポリマーをヘキサフルオロイソプロパノールやm−クレゾール等に0.25〜20質量%の濃度で溶解させ、紡糸ノズルより押し出して繊維化し、次いでトルエン,エタノール,イソプロパノール,n−ヘキサン,イソオクタン,アセトン,メチルエチルケトン等の非溶剤浴中で溶剤を除去、洗浄してポリケトンの未延伸糸を得ることができる。
一方、水溶液を用いる湿式紡糸法では、例えば、亜鉛塩、カルシウム塩、チオシアン酸塩、鉄塩等の水溶液に、ポリケトンポリマーを2〜30質量%の濃度で溶解させ、50〜130℃で紡糸ノズルから凝固浴に押し出してゲル紡糸を行い、更に脱塩、乾燥等してポリケトンの未延伸糸を得ることができる。ここで、ポリケトンポリマーを溶解させる水溶液には、ハロゲン化亜鉛と、ハロゲン化アルカリ金属塩又はハロゲン化アルカリ土類金属塩とを混合して用いることが好ましく、凝固浴には、水、金属塩の水溶液、アセトン、メタノール等の有機溶媒等を用いることができる。
また、得られた未延伸糸の延伸法としては、未延伸糸を該未延伸糸のガラス転移温度よりも高い温度に加熱して引き伸ばす熱延伸法が好ましく、更に、該未延伸糸の延伸は、上記(2)の方法では一段で行ってもよいが、多段で行うことが好ましい。該熱延伸の方法としては、特に制限はなく、例えば、加熱ロール上や加熱プレート上に糸を走行させる方法等を採用することができる。ここで、熱延伸温度は、110℃〜(ポリケトンの融点)の範囲が好ましく、総延伸倍率は、10倍以上であることが好ましい。
上記(1)の方法でポリケトンの繊維化を行う場合、上記多段熱延伸の最終延伸工程における温度は、110℃〜(最終延伸工程の一段前の延伸工程の延伸温度−3℃)の範囲が好ましく、また、多段熱延伸の最終延伸工程における延伸倍率は、1.01〜1.5倍の範囲が好ましい。一方、上記(2)の方法でポリケトンの繊維化を行う場合、熱延伸終了後の繊維にかける張力は、0.5〜4cN/dtexの範囲が好ましく、また、急冷却における冷却速度は、30℃/秒以上であることが好ましく、更に、急冷却における冷却終了温度は、50℃以下であることが好ましい。ここで、熱延伸されたポリケトン繊維の急冷却方法としては、特に制限はなく、従来公知の方法を採用することができ、具体的には、ロールを用いた冷却方法が好ましい。なお、こうして得られるポリケトン繊維は、弾性歪みの残留が大きいため、通常、緩和熱処理を施し、熱延伸後の繊維長よりも繊維長を短くすることが好ましい。ここで、緩和熱処理の温度は、50〜100℃の範囲が好ましく、また、緩和倍率は、0.980〜0.999倍の範囲が好ましい。
上記ポリケトン繊維コードは、上記ポリケトンからなるフィラメント束を複数本、好ましくは、2本又は3本撚り合わせてなり、例えば、上記ポリケトンからなるフィラメント束に下撚りをかけ、次いでこれを複数本合わせて、逆方向に上撚りをかけることで、双撚り構造の撚糸コードとして得ることができる。
上記のようにして得られたポリケトン繊維コードをコーティングゴムで被覆することで、上記カーカスプライに用いるコード/ゴム複合体を得ることができる。ここで、ポリケトン繊維コードのコーティングゴムとしては、特に制限は無く、従来のカーカスプライに用いていたコーティングゴムを用いることができる。なお、ポリケトン繊維コードのコーティングゴムによる被覆に先立って、ポリケトン繊維コードに接着剤処理を施し、コーティングゴムとの接着性を向上させてもよい。
本発明の空気入りタイヤは、カーカス4のカーカスプライに上述のポリケトン繊維コードをコーティングゴムで被覆してなるコード/ゴム複合体を適用し、常法により製造することができる。なお、本発明の空気入りタイヤにおいて、タイヤ内に充填する気体としては、通常の或いは酸素分圧を変えた空気、又は窒素等の不活性ガスを用いることができる。
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
表1に示す材質、構造、撚り係数、弾性率及び熱収縮応力の繊維コードを、表1に示す打ち込み数で平行に配列しコーティングゴムで被覆してコード/ゴム複合体を作製し、該コード/ゴム複合体をカーカスプライに用いて、図1に示す構造のサイズ215/45ZR17のサイド補強タイプのランフラットタイヤを試作した。また、得られたタイヤの縦バネ及びランフラット耐久性を下記の方法で評価し、表1に示す結果を得た。
(1)縦バネ
230kPaの内圧を充填した供試タイヤの荷重−撓み曲線を測定し、得られた荷重−撓み曲線上のある荷重における接線の傾きを該荷重に対する縦バネ定数とし、比較例1のタイヤの縦バネ定数の値を100として指数表示した。指数値が大きい程、縦バネ定数が大きいことを示す。
230kPaの内圧を充填した供試タイヤの荷重−撓み曲線を測定し、得られた荷重−撓み曲線上のある荷重における接線の傾きを該荷重に対する縦バネ定数とし、比較例1のタイヤの縦バネ定数の値を100として指数表示した。指数値が大きい程、縦バネ定数が大きいことを示す。
(2)ランフラット耐久性
供試タイヤに内圧を充填することなく、荷重4.17kN、速度89km/h、温度38℃の環境下でドラム試験を行い、タイヤが故障に至るまでの走行距離を測定し、比較例1のタイヤの故障に至るまでの走行距離を100として指数表示した。指数値が大きい程、故障に至るまでの走行距離が長く、ランフラット耐久性に優れることを示す。
供試タイヤに内圧を充填することなく、荷重4.17kN、速度89km/h、温度38℃の環境下でドラム試験を行い、タイヤが故障に至るまでの走行距離を測定し、比較例1のタイヤの故障に至るまでの走行距離を100として指数表示した。指数値が大きい程、故障に至るまでの走行距離が長く、ランフラット耐久性に優れることを示す。
表1から明らかなように、上記式(I)及び式(II)を満たすポリケトン繊維コードをカーカスプライの補強コードとする実施例のタイヤは、レーヨンコードをカーカスプライの補強コードとする比較例1のタイヤに比べて、通常走行時のタイヤの縦バネの上昇を抑制しつつ、即ち、通常走行時の乗り心地を維持しつつ、ランフラット走行時のタイヤ耐久性が大幅に向上していた。
1 ビード部
2 サイドウォール部
3 トレッド部
4 ラジアルカーカス
5 サイド補強ゴム層
6 ビードコア
7 ビードフィラー
8 ベルト
9A,9B ベルト補強層
2 サイドウォール部
3 トレッド部
4 ラジアルカーカス
5 サイド補強ゴム層
6 ビードコア
7 ビードフィラー
8 ベルト
9A,9B ベルト補強層
Claims (7)
- 一対のビード部及び一対のサイドウォール部と、両サイドウォール部に連なるトレッド部とを有し、前記一対のビード部間にトロイド状に延在してこれら各部を補強する一枚以上のカーカスプライからなるカーカスと、前記サイドウォール部の前記カーカスの内側に配置した一対の断面三日月状サイド補強ゴム層とを備えた空気入りタイヤにおいて、
前記カーカスプライが平行に配列された複数の補強コードをコーティングゴムで被覆してなり、該補強コードがポリケトンからなるフィラメント束を複数本撚り合わせたポリケトン繊維コードであって、該ポリケトン繊維コードが下記式(I)及び式(II):
σ ≧ −0.01×E + 1.2 ・・・ (I)
σ ≧ 0.02 ・・・ (II)
[式中、σは、177℃における熱収縮応力(cN/dtex)であり;Eは、25℃における49N荷重時の弾性率(cN/dtex)である]の条件を満たすことを特徴とする空気入りタイヤ。 - 前記ポリケトン繊維コードは、下記式(III):
Nt = tanθ = 0.001×N×(0.125×D/ρ)1/2 ・・・ (III)
[式中、Nは撚り数(回/10cm)で、ρはコードの比重(g/cm3)で、Dはコードの総デシテックス数(dtex)である]で定義される撚り係数(Nt)が0.34以上であることを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。 - 前記カーカスプライにおける前記ポリケトン繊維コードの打ち込み数が35〜60(本/50mm)であることを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
- 前記ポリケトン繊維コードは、繊度が500〜2000dtexのポリケトンからなるフィラメント束を2本又は3本撚り合わせてなることを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
- 前記ポリケトン繊維コードが、高温下で収縮し、室温に戻すと伸長する可逆性を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
- 前記式(IV)中のAがエチレン基であることを特徴とする請求項6に記載の空気入りタイヤ。
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