JP2007190511A - 基板の表面状態保持方法及び基板 - Google Patents

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Abstract

【課題】化学反応、生化学反応、生物反応などに用いる基板において、コロナ処理、プラズマ処理などの表面処理の効果を持続させる方法を提供するものである。
【解決手段】紫外線処理、コロナ処理又はプラズマ処理により親水処理を施した基板の表面状態保持方法であって、7℃以下の環境下で保持することを特徴とする基板の表面状態保持方法とする。また、前記基板を密封された空間で保持することにより外部からの汚染物質などから汚染されずに保持することを特徴とする。
【選択図】 なし

Description

本発明は、試薬を収容、抗原抗体反応による抗原の検出及びDNAの検出、その他化学、生化学、生物反応等に用いられる基板の表面状態保持方法及び基板に関するものである。
近年、化学反応やDNA反応、たんぱく質反応などの生化学反応をチップ上にて行うμ−Total Analysis System技術やLab−on−Chip技術が研究され実現して
きており、今まで大型の実験装置や大量の試薬が必要であった反応実験が数ミリ角以下の
チップで少量の試薬で行えるようになってきている。
生化学反応の例としては、酵素反応によるDNA増幅反応や、既知の配列を有するプローブDNAを用い、ハイブリダイゼーション法により検体DNAの配列を検出する方法、DNAの配列決定の中でもSNP(一塩基多型)の検出法などがある。
SNPの検出法としては、インベーダー法、タックマンPCR法をタイピング工程に用いる方法が知られている(特許文献1参照)。
一般的にDNAを用いた検出反応には血液等を採取し抽出したものを用いるが、採取する血液等の試料を少量で済ませるため、検体DNAの調製法として、酵素反応によるDNA増幅反応を用いることが多い。
試料中に含まれる微量のDNAを増加させる方法には種々の方法が知られているが、その代表的な方法として、PCR増幅反応が知られている。この方法は、試料中の二本鎖DNAの変性工程(一本鎖に解離)、アニーリング工程(一本鎖DNAとプライマーを結合)、伸長工程(プライマーからDNAを合成)から構成される3工程を1サイクルとし、このサイクルを繰り返して試料中のDNAを増加させる方法である。変性工程は約95℃、アニーリング工程は50〜60℃、伸長工程は60〜80℃で行われる。PCR増幅反応はこの熱サイクルを繰り返すことにより行われる。1サイクルに要する時間はせいぜい数分程度であり、このサイクルを繰り返して必要量のDNAを得る。
なお、PCR反応の前には前処理として95℃で数分〜5、6分加熱することもある。
SNPの検出法の一つであるインベーダー法は、二種類の非蛍光標識オリゴヌクレオチド(アレルプローブ、インベーダープローブ)、一種類の蛍光標識オリゴヌクレオチド(FRETプローブ)及びDNA構造に特異的なエンドヌクレアーゼ(クリベース)を使用する。アレルプローブは、鋳型DNAの配列とは無関係な配列(フラップ)を5’側に有し、3’側に鋳型DNAに特異的な相補配列を有するオリゴヌクレオチドで、その相補配列の5’側末端はSNP部位となっている。他方、インベーダープローブは、前記SNP部位から鋳型DNAの3’側に相補的に結合するように設計されている。また、FRETプローブは蛍光標識を有するオリゴヌクレオチドで、その5’末端に蛍光標識(レポーター)を有し、その上流にはクエンチャーが結合している。そして、このレポーターから3’側の部位が自己ハイブリゼーションして二本鎖を構成しており、この二本鎖から3’末端側に、アレルプルーブのフラップと相補的な配列である一本鎖の部位を有するものである。また、クリベースは、ヌクレオチドが三重に重なった部位を認識し、三重に重なったヌクレオチドの3’側を切断して遊離させる酵素である。
このインベーダー法においては、まず検査対象の鋳型DNAとアレルプローブをハイブリゼーションしたときに、SNP部位にインベーダープローブの3’末端が侵入する。このため、このSNP部位で、鋳型DNA、アレルプローブ及びインベーダープローブを重ね合わせて三重になる。このSNP部位の構造をクリベースが認識して、アレルプローブのフラップを切断・遊離させる。次に、アレルプローブ起源の前記遊離フラップはFRETプローブとハイブリゼーションする。このハイブリゼーションによって、自己ハイブリゼーションの二本鎖とアレルプローブ起源の前記遊離フラップとの交点で三重となり、クリベースは再びこの構造を認識してFRETプローブのレポーターを切断し、クエンチャーから開放される。そして、励起光を照射することにより、切断遊離されたレポーターの蛍光標識が蛍光発色する。仮にSNP部位の塩基がアレルプローブとマッチしないものであった場合、アレルプローブ起源のフラップは切断・遊離せず、したがって、蛍光発光率が著しく低いから、この蛍光強度の差を検出することによってSNPを検査することができる。なお、励起光としては一般に紫外光又は可視光が利用されている。
また、これらの反応は約63℃で数十分〜4時間程度インキュベートすることにより行われる。
チップを用いて、これらの反応を行う場合、DNAの配列を決定する場合などは、スライドガラス上にプローブDNAを固定し、その上でハイブリダイゼーション反応を行う方法が知られている。
また、チップ上に設けたウェルと呼ばれる微小な穴やくぼみが形成され反応場として用いることも知られている。ウェルは、半導体やガラスにエッチングで設けたり、穴のあいた板を積層することで形成されていた。
ウェルを用いる場合、試薬を基板上に固定する必要がなく、またPCR反応などにも適用できる。
ウェルタイプのものとしては、例えば、基板表面に多数のウェルが設けられている検出用基板が開示されている(特許文献2、3、4参照)。
また、内部に流路を設け、両端に開口部を有する、PCR反応用の装置も知られている(特許文献5参照)。
これらはいずれも中の空洞部に試薬を供給するものであるが、開口部が数mm以下と小さく、試薬、溶液を微小なウェルまたは流路両端に設けた開口部に供給する際、試薬、溶液とウェルまたは流路両端に設けた開口部壁面との表面エネルギーの関係で、試薬、溶液が入りにくい、気泡が混入するなどの問題がある。
これは、反応用のチップだけでなく、試薬保存用のチップにおいても同様である。
そのため、通常これらのチップには、試薬の注入性、回収性向上のため、プラズマ処理、コロナ処理などにより、表面を親水化することが知られている。
しかし、このような表面処理というのは経時的に処理効果が落ちてくる。通常、前述のような反応チップは、試薬に冷蔵保存する必要がない限り、常温下で保存される。
表面処理した後、常温下で保存すると、時間とともに処理効果が著しく落ちてくる。
このようなチップは、チップを作成してから使用するまでに数日〜数ヶ月かかる。そのため、製品化して販売するときは、少なくとも数ヶ月単位で品質を保証できなければならない。
特開2002−300894号公報 WO2003/031972号公報 特開平09−99932号公報 特開2003−70456号公報 特許第2759071号公報
本発明は、このような事情を考慮してなされたもので、化学反応、生化学反応、生物反応などに用いる基板において、紫外線照射処理、コロナ処理、プラズマ処理などの表面処理の効果を持続させる方法を提供するものである。
請求項1の発明は、紫外線処理、コロナ処理又はプラズマ処理により親水処理を施してなる基板の表面状態保持方法であって、該基板を7℃以下の環境下で保持することを特徴とする基板の表面状態保持方法である。
請求項2の発明は、前記保持が、密封された空間でなされることを特徴とする請求項1記載の表面状態保持方法である。
請求項3の発明は、コロナ処理又はプラズマ処理をしてから24時間後における基板の純水との接触角と168時間後における基板の純水との接触角の差が、5°以内であることを特徴とする請求項1または2に記載の基板の表面状態保持方法である。
請求項4の発明は、前記基板が、凹状反応部及び/又は凹状試薬収容部を備えてなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の基板の表面状態保持方法である。
請求項5の発明は、さらに第二反応部を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の基板の表面状態保持方法である。
請求項6の発明は、紫外線処理、コロナ処理又はプラズマ処理により親水処理を施してなる基板であって、コロナ処理又はプラズマ処理をしてから24時間後における基板の純水との接触角と168時間後における基板の純水との接触角の差が、5°以内であることを特徴とする基板である。
請求項7の発明は、前記基板が、凹状反応部及び/又は凹状試薬収容部を備えてなることを特徴とする請求項6に記載の基板である。
請求項8の発明は、さらに第二反応部を有することを特徴とする請求項6または7に記載の基板である。
本発明によれば、紫外線処理、コロナ処理又はプラズマ処理により親水処理を施した基板の表面状態を長時間保持することができる。特に1ヶ月単位の長期間保持することができる。
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
図1に、本発明の基板の一実施形態を示す図を示す。図1は、略長方形の板状の基板に、試料及び試薬を反応させるため、または試薬を保存するための凹部が複数形成されているチップである。
本発明に用いる基板は、試薬に悪影響を与えないものであればよい。また、ウェル内で反応を行う場合、反応系に悪影響を与えないことが必要である。さらに、ウェルを設け、ウェル内の反応を検出する際、基板下方より光学検出する場合は透明性が高い方が好ましい。
このようなものとして、例えば、PC(ポリカーボネート)、PP(ポリプロピレン)、シクロオレフィン系ポリマー、メチルペンテン系樹脂、フッ素ポリマー、シリコーン樹脂などを用いることができる。
透明性、耐熱性、耐薬品性や反応系に対する影響などの点からPPを用いることが好ましい。
このような合成樹脂を用いて基板を作成すれば、耐熱性、耐薬品性、成形加工性などに優れているため好ましい。さらに、2種類以上の樹脂を接合して用いてもよい。この場合、それぞれの樹脂の特徴を活かして基板を作成することにより、試薬及び試料等の特性に応じた多様な基板とすることが可能となり、用途ごとに使い分けることができる。例えば、基板の上半分と下半分とで材料を分けたりすることも可能となる。また、後述の試薬収容部やPCR反応部など部分ごとに材料を分けることもできる。
なお、基板の素材としてガラスを用いてもよい。
基板には、表面処理が施される。
基板上に試薬収容または反応場のための凹部を設ける場合、凹部に試薬、検体などの溶液を充填する際、凹部内部に表面処理を施しておくと気泡の混入なく溶液を注入できる。また、凹部から溶液を回収する際にも高回収率が期待できる。
また、予め試薬を入れある凹部に後から別の試薬を入れ、混合する場合にも試薬が適切に広がるために混合がしやすい。さらに、凹部内で加熱により反応を行う際、液在籍位置が安定し、また蒸発しにくいものとなる。
また、平坦な基板を用いる場合、基板上に化学的、生物学的、生化学的な試薬を保持又は固定する際、試薬と基板表面との親和性を向上させるために表面処理を行う。具体的には、DNAの配列決定における基板へのプローブDNAの固定などである。
なお、表面処理としては、溶液が水系の場合、親水処理を施すことが好ましい。具体的には水との接触角が70°以下、好ましくは40°以下がよい。
また、接触角の測定は、公知の接触角計を用いて測定する。また、ウェル内の接触角の測定は困難であるため、同様の表面状態である基板の表面を用いて測定しても良い。
表面処理の方法としては、紫外線照射処理、プラズマ処理、コロナ処理などを用いることができる。
また、処理は大気中で行っても良いが、基板と上部電極の間に処理ガスを流しても良い。処理ガスとしては、窒素、アルゴン、ヘリウムなどの不活性ガスが挙げられる。
中でもアルゴンガスを用いたプラズマ処理が好ましい。
前記紫外線照射処理、コロナ処理、プラズマ処理は、公知の手法を用いることができる。
本発明では、表面処理を施した基板を7℃以下で保持することを特徴とする。前記表面処理では、紫外線照射、プラズマ照射、コロナ照射などにより基材表面の有機物などの付着物を除去することにより親水処理を施すことができる。。また、紫外線照射、プラズマ照射、コロナ照射などにより基板表面に−COOH、−OH、−CO−などの官能基を導入することにより、水との親和性が向上し、親水処理を施すことができる。
しかし、−COOH、−CO−における−Cや−OHにおける−Oは回転して表面から基板内部にもぐってしまうことがある。この分子の回転運動は、温度上昇とともに活発になる。すなわち高い温度環境下にあればあるほど、分子の回転運動による、親水性官能基のもぐりこみが増加する。
基板を7℃以下で保持することにより親水性官能基の回転運動を抑えることができ、処理を施した表面状態を保持できるものである。また、好ましくは5℃以下、さらに好ましくは2℃以下であることが好ましい。
なお、表面処理を施した基板は、常温で保持しても7℃以下で保持しても処理直後しばらくは大気中の浮遊成分などが付着するなど表面状態が不安定である。後述のように密封系で保存したとしても、完全にクリーンで大気の揺らぎのない状態または真空などでない限り多少の影響は出てしまう。しかし、7℃以下で保持することにより24時間以降は表面状態にあまり変化がなく、表面状態を保持できるものである。
おそらく、処理直後は、別の要因で処理の効果が低下していくからであると思われる。
また、基板を7℃以下で保持することにより、処理してから24時間後の基板と純水の接触角と、処理してから168時間後の基板と純水の接触角の差が5°以下、条件次第で2°以下になり、安定したものとなる。また、処理してから24時間後の基板と純水の接触角と処理してから2ヵ月後の基板と純水の接触角の差も10°以下、条件次第で5°以下になり、長時間品質の安定した基板とすることができる。
また保持は密封系で行うことが好ましい。密封系で行うことによりホコリやごみ、またはその他の汚染の混入を防ぐことができる。表面処理した基材に再び有機物が付着すると親水性が低下してしまうため、密封系で保持することが好ましい。
具体的には、プラスチックの容器、又は包装体の中にいれ、ふたをする方法などを用いることができる。
基板には、凹状の反応部または試薬収容部を備えていてもよい。
試薬収容部は、基板がプラスチック、合成樹脂系であれば切削加工、成型加工により形成することができる。ガラスであれば切削加工により形成することができる。また、試薬収容部は複数有することができる。試薬収容部を複数設ける場合、大きさが異なっていても良い。試薬収容部の数は、目的に応じて適宜設定できる。
また、試薬収容部は、予め一つの試薬を入れておき、後から別の試薬を入れ、混合させる混合場として用いることもできる。
試薬収容部の形状は、特に限定はしないが、凹形状(ウェル状)であればよい。中でも半球状または円筒状で底部が半球状なものが好ましい。半球状であれば試薬を充填する際、試薬の飛び散り、気泡の混入を防げるものとなる。また収容した試薬を取り出す際の取り出し性に優れるものとなる。
なお、それ以外にも、開口部が円形または多角形で、断面が三角形状、四角形状、台形形状になっているものでもかまわない。
試薬収容部の容量は、10〜300μlの範囲内であることが好ましい。化学反応、特にDNAを扱う生化学反応、生物反応などライフサイエンス分野では、微量試薬を用いることが多い。
生化学反応では、反応量が微量であり、用いる試薬は高価であることが多い。また、血液から採取されるDNAは通常0.1ng〜50ng程度であり、DNAを含む試薬は数百nl〜数μl程度である。そのため、反応に用いる試薬なども多くても数百μl程度になり、前述の範囲内であることが好ましい。また、数百μl以上の試薬を用いる場合は試薬収容部を2つ以上用いてもよい。
前記試薬収容部の開口径が1〜50mmの範囲内であることが好ましい。
試薬の量は、数百nl程度の極微量〜数百μl程度であり、また一般的な分注針の径は数十μm〜数mm程度である、そのため、分注適性、目的容量を考慮すると、試薬収容部の開口径が1〜50mmの範囲内であることが好ましい。
また、深さは1〜50mmの範囲内であることが好ましい。
また、前記試薬収容部は、図8(b)に示すような基板をくりぬいた形状にしてもよいし、図8(a)に示すように基板裏面が反応部の形状に沿って基板下方向に凸形状になっていても良い。
また、試薬収容部上に蓋材を設けても良い。蓋材を設けることにより、ごみ、汚染物質などによる汚染を防ぐことができる。
蓋材としてはフィルム状のものを用いることができる。このようなものとしては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィンフィルム、ポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリアセタールフィルム、ポリアミドフィルム、ポリアクリロニトリルフィルム、ポリカーボネートフィルム、シクロオレフィン系フィルム、シリコン樹脂系フィルム、フッ素系樹脂フィルムなどが挙げられる。
また、アルミニウムなどの金属箔や、金属箔と前述の樹脂フィルムの積層フィルムを用いても良い。
これらのフィルム状蓋材は、接着剤を用いて貼り合わせることができる。接着剤としては、耐熱性の硬化性接着剤を用いることができる。
また、ヒートシールにより貼り合わせてもかまわない。ヒートシールであれば、試薬への接着剤の影響を考慮しなくても良いので好ましい。
ヒートシールの条件は、温度140℃〜220℃、圧力1kg〜3kg、時間0.3秒〜2.0の範囲内で、加圧しながら貼り合わせることが好ましい。温度、圧力、時間がこれ以上であると基材が変形を起こしやすくなる。また、これ以下の温度、圧力、時間であるると貼り合わせが困難である。また、温度を上げる場合は、内容物の熱劣化を考慮して時間を短くするとよい。
また、蓋材を設けた場合、試薬の回収は、蓋材の上から注射器のような針状の回収具を用いて、突き刺し、回収しても良い。
なお、蓋材を剥がさずに試薬を回収する場合は、蓋材は剥離する必要がない。
また、図7に示すように開口部周囲に凸部を設けても良い。凸部を設けることにより、蓋材を貼り合わせやすくできる。
特にヒートシールにより貼り合わせる場合、加熱する部分が、基材全体ではなく、凸部のところだけでよいので、試薬収容部内の試薬への熱的な影響を低減することができる。
このような凸部としては、幅は0.1〜2mm、好ましくは0.3〜0.7mmの範囲内であることが好ましい。この範囲より小さいと、凸部でヒートシールすることができず、この範囲より大きいと、基材、内容物への影響(ダメージ)が大きくなってしまう。
また、凸部を設けることにより収容部の容量を増やしてもよい。その場合、収容部の強度とヒートシール適性を考慮して、凸部を例えば図7(b)に示すように2段階に形成してもよい。すなわち、強度を出すためにある程度の厚みを持たせた凸部を設け、その上に幅の小さい凸部を設ける2段階構造にすることにより強度とヒートシール適性を両立させてもよい。
凹状の反応部は、基板がプラスチック、合成樹脂系であれば切削加工、成型加工により形成することができる。ガラスであれば切削加工により形成することができる。また、反応部は複数有することができ、目的に応じて適宜設定できる。
凹状(ウェル状)の反応部の開口径は0.1〜5mmの範囲内、深さが0.1〜5mm範囲内であることが好ましい。前述のようにライフサイエンス分野では、微量試薬を用いて厳密な温度制御を行うことが多く、効率的に反応を行うためには、前記範囲内であることが好ましい。
また、反応部内には予め、反応に必要な試薬を収容していても良い。
また、ウェル状反応部の形状は、凹形状であれば特に限定するものではないが、底部が平坦でありウェル開口部から底部まで壁面が傾斜している円錐台形状であることが好ましい。底部が平坦でありウェル開口部から底部まで壁面が傾斜している円錐台形状であれば、下方からの光学的な検出に有利である。例えば反応部内に蛍光物質を下方から紫外線を照射し、同じく下方から蛍光を検出する場合、球状やその他複雑な形状であると、蛍光物質の励起源である紫外線が屈折、散乱して蛍光物質に照射される量が減少してしまう。また生じた蛍光も屈折、散乱し、検出する蛍光強度の低下、誤検出などの原因となってしまう。
なお、それ以外にも、開口部が円形または多角形で、断面が半球形状、U字形状、三角形状、四角形状になっているものでもかまわない。また、開口部が多角形で断面が台形形状でもかまわない。
また、前記反応部は、図8(b)に示すような基板をくりぬいた形状にしてもよいし、図8(a)に示すように基板裏面が反応部の形状に沿って基板下方向に凸形状になっていても良い。
また、反応部上に保護フィルムを設けても良い。保護フィルムを設けることにより、ごみ、汚染物質などによる汚染を防ぐことができる。
保護フィルムとしてはフィルム状のものを用いることができる。このようなものとしては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィンフィルム、ポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリアセタールフィルム、ポリアミドフィルム、ポリアクリロニトリルフィルム、ポリカーボネートフィルム、シクロオレフィン系フィルム、シリコン樹脂系フィルム、フッ素系樹脂フィルムなどが挙げられる。
また、アルミニウムなどの金属箔や、金属箔と前述の樹脂フィルムの積層フィルムを用いても良い。
これらの保護フィルムは、接着剤を用いて貼り合わせることができる。接着剤としては、耐熱性の硬化性接着剤を用いることができる。
また、ヒートシールにより貼り合わせてもかまわない。反応部内に予め試薬を収容しておく場合、ヒートシールであれば、試薬への接着剤の影響を考慮しなくても良いので好ましい。
ヒートシールの条件は、温度140℃〜220℃、圧力1kg〜3kg、時間0.3秒〜2.0秒の範囲内で、加圧しながら貼り合わせることが好ましい。温度、圧力、時間がこれ以上であると基材が変形を起こしやすくなる。また、これ以下の温度、圧力、時間であるると貼り合わせが困難である。また、温度を上げる場合は、内容物の熱劣化を考慮して時間を短くするとよい。
保護フィルムは使用する前に剥がす必要があるため、易剥離性であることが好ましい。
また、例えば図7にしめすように開口部周囲に凸部を設けても良い。凸部を設けることにより、蓋材を貼り合わせやすくできる。特にヒートシールにより貼り合わせる場合、加熱する部分が、基材全体ではなく、凸部のところだけでよいので、反応部内に予め試薬を収容しておく場合、試薬への熱的な影響を低減することができる。
また、剥離する際も、接点が開口部を除いた基材全体ではなく、凸部上だけであるので剥離が容易にできる。
このような凸部としては、幅は0.1〜2mm、好ましくは0.3〜0.7mmの範囲内であることが好ましい。この範囲より小さいと、凸部でヒートシールすることができず、この範囲より大きいと、基材、内容物への影響(ダメージ)が大きくなってしまう。
また、凸部を設けることにより反応部の容量を増やしてもよい。その場合、反応部の強度とヒートシール適性を考慮して、凸部を例えば図7(b)に示すように2段階に形成してもよい。すなわち、強度を出すためにある程度の厚みを持たせた凸部を設け、その上に幅の小さい凸部を設ける2段階構造にすることにより強度とヒートシール適性を両立させてもよい。
また、凸部同士を凸部と同じ高さで連結させても良い。そのようにすることで、剥離する際に、引っ掛かりがなくスムーズに剥離ができる。
本発明の容器は、例えば図2に示すように、同一基板上に、凹状試薬収容部及び凹状反応部を設けても良い。
試薬収容部に反応に必要な試薬を入れておき、試薬をウェル状試薬収容部に分注し、ウェル状反応部で反応させることができる。なお、この場合、ウェル状反応部に試薬の一部を予め配置しておいても良い。
ウェル状試薬収容部は用いる試薬の種類などに応じて複数設けることができる。例えば、試薬収容部には検出物質を含む溶液や、検出するための試薬が複数あり、多段階反応を行う場合は、検出するための試薬の一つを含む溶液、またはその他バッファー、希釈液などを入れておくことができる。
また、試薬収容部では、複数の試薬を混合させてもよい。試薬収容部で試薬を混合した後に別に設けた反応部で反応させることができる。
ウェル状反応部は複数も受けても良い。複数も受けることにより、同時に複数の反応を行うことができる。
また、反応を2種類以上行う場合、第二反応部を設けても良い。
例えば、反応がDNAの検出反応に用いる場合、第二反応部はPCR反応部にすることができる。
PCR反応部を設けることにより、同一チップ上で検体の調製、DNAの検出を行うことができる。
PCR反応部としては、ウェル状の反応部を設けても良いし、例えば図3に示すように、流路を設け流路内で反応を行っても良い。流路を設ける場合、例えば、両端に開口部を有し、内部に流路を設ける構造が例としてあげられる。開口部直径は5cm以下程度、開口部深さは1mm〜5cm程度である。開口部に表面処理をする場合、前述のウェル内の処理と同様、本発明の処理法が効果を発揮するものである。
第二反応部が流路状である場合、具体的には例えば図5に示すような形状であってもよい。
流路状第二反応部は、両端に基材を貫通する貫通孔を設け、基材の裏面に両貫通孔を接続する溝部を設ける。この溝部上に底部形成用フィルムを貼り合わせることにより、流路状反応部を形成する。
この時、溝部の幅、高さはそれぞれ1mm〜5mmの範囲内であることが好ましい。
前記溝部は両貫通孔を直線で結んでいても良いし、試薬や検査対象の蒸発を防ぐために屈曲した形状であっても良い。
底部形成用フィルムとしてはフィルム状のものを用いることができる。このようなものとしては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィンフィルム、ポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリアセタールフィルム、ポリアミドフィルム、ポリアクリロニトリルフィルム、ポリカーボネートフィルム、シクロオレフィン系フィルム、シリコン樹脂系フィルム、フッ素系樹脂フィルムなどが挙げられる。
また、アルミニウムなどの金属箔や、金属箔と前述の樹脂フィルムの積層フィルムを用いても良い。
底部形成用フィルムは接着剤を用いて貼り合わせることができる。また、ヒートシールにより貼り合わせても良い。ヒートシールであれば、反応部内への接着剤の影響を考慮しなくても良いので好ましい。
また、底部形成用フィルムは、一部溝部へ食い込む形状であれば好ましい。基材と底部形成用フィルムの間に隙間が生じず、試薬や検査対象の漏れがないものとなるからである。
また、貫通孔開口部は容量を増やすために基材から上部に突出した形状にしてもよい。
また、開口部にはフタ材を設けてもよい。
また、その他の反応部を設けても良い。
また、例えば図4に示すように、ウェル状反応部同士を接続する流路を設けてもよい。またウェル状反応部と試薬収容穴部、PCR反応部、その他の反応部を接続する流路を設けてもよい。これら流路を形成することにより、連続した反応を行わせることが可能となる。
また、基板には、変形などを軽減するためにサイドリブを設けてもよい。リブとしては、基板端部の下部及び/又は上部に幅0.1〜3mm、高さ0.1〜3mm程度のものを設ければよい。また、置いたときに安定するよう、支持用脚部を設けてもよい。
なお、ウェル状の反応部または試薬収容部を有する基板を例に説明したが、ウェルを有さず、平な基板にも適用できる。
本発明では、様々な生化学系の反応用として用いることができ、例えば抗原抗体反応及びDNA反応の検出などに用いることができる。
抗原抗体反応による抗原検出の場合、例えば、予め各ウェル状反応部内に抗原を含む試料を入れておき、後から検体として抗体を含む試薬を添加し、抗原または抗体のいずれかに標識物質を付けておくことで、反応の有無を検出できる。標識物質としては、蛍光などの発光物質が一般的に用いられる。なおこの場合、基板上に試薬収容部を設けて置き、検体を収容しておいてもよい。
DNAの検出の場合、例えば、予めウェル状反応部内に核酸プローブを用意しておく。その後、検体DNAをウェル状反応部に供給し、核酸プローブと検体DNAのハイブリダイゼーションさ反応により、DNAの検出を行うことができる。その際、検体DNAに標識物質を付けておけば、その標識物質の有無を検出することにより検出が可能となる。また、検体DNAは、血液等から抽出したDNAをPCR法、LAMP法などにより調製しておいたものを用いることができる。また、核酸プローブとして配列の異なる核酸を複数用意することで検出物質としての検体DNAがどのような配列であるかを検出することができる。なおこの場合、基板上に試薬収容部を設けて置き、検出物質を収容しておいてもよい。
また、基板上に遺伝子増幅反応部を設けておき、チップ上で連続して、血液などから抽出したDNAを遺伝子増幅反応により増幅させ、それを検体とし、反応部で核酸プローブとの反応の有無を検出してもよい。具体的には、例えばウェル状試薬収容部に検体として血液などから抽出したDNAを収容しておき、分注動作により、遺伝子増幅反応部へ分注し、遺伝子増幅反応により調製した検体をウェル状の反応部へ分注すればよい。ウェル状試薬収容部から遺伝子増幅反応部、ウェル状反応部へは流路を用いて送液しても良い。
なお、ここでいう遺伝子とはDNA、RNAなどのことをいう。また遺伝子増幅反応方法としては前記PCR法、LAMP法などがある。
また、一塩基遺伝子多型(SNP)の解析にも用いることができる。なお、検体を検出するための試薬は複数あってもよく、検体が蛍光標識されていない場合には、試薬のひとつが標識されていればよい。
また、標識物質は、反応物に特有に作用するものを、反応後に加えることもできる。このようなものとしては、DNAの検出におけるインターカレーターなどがある。また、ここでいう標識物質とは間接的なものも含む。すなわち、蛍光物質などに結合する物質を標識物質として検体またはプローブ核酸などの検体を検出するための試薬に結合させておき、後から蛍光物質を加えても良い。
また、多段階反応を行ってSNPまたはDNAを検出してもよい。
例えば、インベーダー・アッセイ法(サードウェイブテクノロジーズ,Inc(米国ウィスコンシン州マディソン市)を用いても良い。これによりSNP解析の具現化を図ることが可能となる。
この場合、検体を検出するための試薬が複数種でもよく、予めウェル状反応部内に少なくとも1種の試薬を入れておき、その後、検体と試薬を同時または順次注入し、反応をおこなっても良い。
また、ウェル状反応部、PCR反応部には、反応用液の乾燥を防ぐ目的でミネラルオイルなどの反応用液より比重の軽い不揮発性液体を加えても良い。
また、検体を検出するための試薬はウェル状反応部内に固定してもよいし、固定させずに保持させておくだけでもよい。
なお、前述の反応は、ウェルを用いない平坦な基板を用いても試薬を基板上に固定することにより行うことができる。
<実施例1>
ウェル形状の検出チップを、金型成形により作成する。成形に用いた樹脂は、ポリプロピレン(日本ポリプロ株式会社製)を用いて寸法縦2.5cm×横12cmの成形品を作成した。
試薬収容部は直径13mm、深さ6mmで先端が半球状とし、反応部は直径3mm、深さ2mmで側面が傾斜し底面が平坦である、断面台形形状とした。なお、基材厚みは1mmでウェル状試薬収容部及びウェル状反応部の底部は基板から下方にはみ出す形状にした。
試薬収容部は10個、反応部は24個設けた。
第二反応部であるPCR反応部は、開孔径1mmで基材を貫通させ、かつ基材上部に3mmせり出した開口部6aを2つを16mm空けて設け、底部を断面径1mmの流路で接続した形状にした。なお、流路は基材裏面に溝を形成し、ポリプロピレンフィルム6bをヒートシールにより貼り合わせることにより形成した。
なお、基板の端から試薬収容部、PCR反応部、反応部という順に設けた。
次に表面処理として、一対の電極間にAr 10L/min:O 0.5L/minを供給させ、基材の搬送速度を50mm/secで搬送させながら電極間に電圧を印加し、処理を行った。なおこの処理を3回行った。
処理したチップをプラスチックの容器に入れ、フタをし5℃に保つことができる保冷器にいれ2ヶ月保存した。
処理した基材の純水との接触角を処理から24時間後〜2ヶ月の期間で6点測定した。結果を表1に示す。なお、表面処理はウェル内部に施すことを目的としているが、ウェル内部の接触角の測定は困難であるため、基板表面の接触角を測定し、その値を用いた。
<実施例2>
成形に用いた樹脂を、ポリプロピレン(プライムポリマー株式会社製)に替えた以外は実施例1と同様に行った。
<実施例3>
成形に用いた樹脂を、環状シクロオレフィン系フィルム(ゼオノア 日本ゼオン株式会社製)に替えた以外は実施例1と同様に行った。
<比較例1>
実施例1と同様にチップを作成し、表面処理を行った。処理したチップをプラスチックの容器に入れ、常温(約25℃)で2ヶ月保存した。
処理した基材の純水との接触角を処理24時間後〜2ヶ月の期間で6点測定した。結果を表1に示す。なお、実施例1と同様に、基板表面の接触角を測定し、その値を用いた。
<比較例2>
成形に用いた樹脂を、ポリプロピレン(プライムポリマー株式会社製)に替えた以外は比較例1と同様に行った。
<比較例3>
成形に用いた樹脂を、環状シクロオレフィン系フィルム(ゼオノア 日本ゼオン株式会社製)に替えた以外は比較例1と同様に行った。
Figure 2007190511
以上、実施例、比較例の結果より、実施例1〜3のサンプルは、いずれも処理してから24時間後と1週間後(168時間後)の基材と純水との接触角の差が2°以内になったが、比較例1〜3のサンプルは5〜20°基材と純水との接触角の差が大きくなった。
また、実施例1〜3のサンプルでは処理してから24時間後と2ヵ月後の基材と純水との接触角の差が実施例3のサンプルで10°大きくなってしまったものの、実施例1、2のサンプルでは差が5°以内になった。それに対し、比較例1〜3のサンプルでは、17〜24°基材と純水との接触角の差が大きくなってしまった。
本発明の基板の一例を示す概略図である。 本発明の基板の一例を示す概略図である。 本発明の基板の一例を示す概略図である。 本発明の基板の一例を示す概略図である。 本発明の基板の一例を示す概略図である。 本発明の基板の一例を示す概略図である。 本発明の基板の一例を示す概略図である。 本発明の基板の一例を示す概略図である。
符号の説明
1 チップ
2 基板
3 ウェル
4 ウェル状試薬収納部
5 ウェル状反応部
6 第二反応部(PCR反応部)
6(a)貫通孔開口部突出部
6(b)下部フィルム
7 流路

Claims (8)

  1. 紫外線処理、コロナ処理又はプラズマ処理により親水処理を施してなる基板の表面状態保持方法であって、該基板を7℃以下の環境下で保持することを特徴とする基板の表面状態保持方法。
  2. 前記保持が、密封された空間でなされることを特徴とする請求項1記載の表面状態保持方法。
  3. コロナ処理又はプラズマ処理をしてから24時間後における基板の純水との接触角と168時間後における基板の純水との接触角の差が、5°以内であることを特徴とする請求項1または2に記載の基板の表面状態保持方法。
  4. 前記基板が、凹状反応部及び/又は凹状試薬収容部を備えてなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の基板の表面状態保持方法。
  5. さらに第二反応部を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の基板の表面状態保持方法。
  6. 紫外線処理、コロナ処理又はプラズマ処理により親水処理を施してなる基板であって、コロナ処理又はプラズマ処理をしてから24時間後における基板の純水との接触角と168時間後における基板の純水との接触角の差が、5°以内であることを特徴とする基板。
  7. 前記基板が、凹状反応部及び/又は凹状試薬収容部を備えてなることを特徴とする請求項6に記載の基板。
  8. さらに第二反応部を有することを特徴とする請求項6または7に記載の基板。
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