JP5009531B2 - 反応容器 - Google Patents
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ところで、この種の反応容器に試薬を収容したり、試薬を分注したりする際には、所定の生化学反応装置に備える固定台に反応容器を固定する(例えば、特許文献2参照。)。従来、反応容器は、上記固定台において板状のチップをその厚さ方向から挟み込んで把持することで固定される。
また、反応容器を厚さ方向から挟み込む場合には、チップの表面が削られて基板を形成する材料の欠片が発生するため、この欠片がウェル内に混入するという問題もある。
請求項1に係る発明は、生化学反応装置に固定される反応容器であって、基板の上面に開口して試薬を収容可能な複数の収容部を設けて構成され、前記基板に、その下面から厚さ方向に突出して前記生化学反応装置に固定するための突起が形成され、前記突起に、その側方から窪む凹部が形成されていることを特徴とする反応容器を提案している。
また、治具により突起を挟み込むことで突起が削れて基板を形成する材料の欠片が発生しても、突起は基板の下面に形成されているため、上記欠片が基板の上面側に飛散することが無く、収容部内に欠片が混入することも防止できる。
この実施の形態に係る反応容器1は、化学反応やDNA反応、タンパク質反応等の生化学反応を同一のチップ上にて行うμ―Total Analysis System技術やLab−on−Chip技術で利用されるものであり、例えば図1から図3に示すように、縦横寸法が数ミリ角に設定された略長方形で板状の基板3を備えている。基板3は、例えばPC(ポリカーボネート)、PP(ポリプロピレン)、シクロオレフィン系ポリマー、フッ素ポリマー、シリコン樹脂等の各プラスチックあるいは複数のプラスチックの適宜の組み合わせ、あるいは、ガラス等、耐熱性、耐薬品性、成形加工性等に優れた材料により形成されている。
試薬収容部5は、PCR部7や検出部9で用いる検体試薬やその他の試薬、その後の検出反応に用いる試薬、バッファー液、希釈液等の種々の液体(試薬)を注入して保存する収容部としてなるものであり、基板3の上面3aに開口する凹状のウェル(収容部)11を複数(図示例では4個)備えている。この試薬収容部5のウェル11の大きさは、収容される液体の量に応じて適宜設定されている。なお、試薬収容部5のウェル11内には、上記液体の他に例えば検体DNAを収容しておいても良い。
このPCR部7は、断面視で略U字状に形成されると共に、両端が基板3の上面3aに開口する流路部(収容部)13を備えている。この流路部13は、基板3の下面3bから窪んで形成された帯状の溝部15と、基板3の下面3bに配されて溝部15を塞ぐフィルム17と、基板3の上面3aから厚さ方向に貫通して、基板3の上面3aに開口すると共に溝部15の両端に連通する2つの貫通孔19とにより構成されている。
ここで、試薬収容装置33は、例えばポリメラーゼ連鎖反応等の各種の反応処理に用いる検体試薬および他の試薬と、検出工程で用いる各種の試薬と、希釈液またはバッファー液等とを、反応容器1の試薬収容部5に収容する。
さらに、検出装置37は、反応装置35によるポリメラーゼ連鎖反応等の所定反応によって調整された検体と、検出用の各種の試薬とを、反応容器1の検出部9において反応させ、予め検体あるいは核酸プローブに付けた標識物質(例えば、蛍光物質)の有無を、例えば反応容器1の検出部9の底部側等から検出する発光検出を行う。
固定治具43は、基板3の幅方向の外側に一対配置されており、固定台41に対して基板3の幅方向の内側に向けて移動できるように構成されている。そして、これら一対の固定治具43を相互に近づけるように移動させることで、各固定治具43の先端部が各突起部25の凹部27に挿入される。すなわち、各突起部25が各固定治具43の先端部に係合して、反応容器1が生化学反応装置31の固定台41に固定されることになる。
はじめに、上述したように、反応容器1を生化学反応装置31に固定する。次いで、生化学反応装置31の試薬収容装置33において、例えばポリメラーゼ連鎖反応等の各種の反応処理に用いる検体試薬および他の試薬と、検出工程で用いる各種の試薬と、希釈液またはバッファー液等とを、反応容器1の試薬収容部5に収容する試薬収容工程を行う。
そして、生化学反応装置31の反応装置35において、反応容器1のPCR部7の流路部13に反応溶液を供給する反応液供給工程を行う。なお、上記反応溶液は、例えばポリメラーゼ連鎖反応に使用するものであり、血液等から抽出したDNAまたは予め生成された鋳型DNAと、ポリメラーゼ酵素と、各塩基の材料であるdNTP(デオキシヌクレオチド3リン酸)と、pHおよび濃度調整のための希釈液またはバッファー液とからなる。
すなわち、この反応生成工程においては、はじめに、温度制御装置39によりPCR部7の温度状態を、所定時間(例えば、5〜25秒等)に亘って、所定温度(例えば、90〜100℃程度)となるように制御し、反応溶液のDNAを熱変性させる変性工程を行う。
次いで、温度制御装置39によりPCR部7の温度状態を、所定時間(例えば、15〜60秒等)に亘って、所定温度(例えば、50〜60℃程度)となるように制御し、各種のプライマー(つまり、DNAの断片)を所望の遺伝子配列と結合(アニーリング)させるアニーリング工程を行う。
この伸長反応工程の終了後には、上述した変性工程から伸長反応工程までの一連の処理を継続するか否かを判定し、継続する場合には再度変性工程から一連の処理を行う。一方、一連の処理を継続しないと判定された場合には、反応生成工程を終了する。
最後に、生化学反応装置31の検出装置37において、反応生成工程でのポリメラーゼ連鎖反応によって調整された検体と、検出用の各種の試薬(例えば、核酸プローブ等)とを、反応容器1の検出部9でハイブリダイゼーション等により反応させ、予め検体あるいは核酸プローブに付けた標識物質(例えば、蛍光物質)の有無を、反応容器1の検出部9の底部側から検出する発光検出工程を行い、一連の処理を終了する。
以上説明したように、この反応容器1は、試薬収容部5とPCR部7と検出部9とから構成されるため、PCRによる検体の調製からDNAの分析まで同一チップ上で連続して行うことができる。
抗原抗体反応による抗原検出の場合、例えば、予めPCR部7内に抗原を含む試料を入れておき、後から抗体を含む試薬を添加し、抗原または抗体に標識物質を付けておくことで、反応の有無を検出できる。標識物質としては、蛍光などの発光物質が一般的に用いられる。
ここで、検体DNAとしては、血液等から抽出したDNAをPCR法、LAMP法などにより調整しておいたものを用いることができる。また、核酸プローブとして配列の異なる核酸を複数用意することで検体DNAがどのような配列であるかを検出することができる。
また、標識物質は、結合したプローブ核酸と検体DNAに特異的に作用するものを、反応後に加えることもできる。このようなものとしては、インターカレーターなどがある。また、ここでいう標識物質とは間接的なものも含む。すなわち、蛍光物質などに結合する物質を標識物質として検体DNAに結合させておき、後から蛍光物質を加えても良い。
この場合、検出DNAの検出に用いるプローブ核酸などの物質が複数種でもよく、予めPCR部7内に少なくとも1種の物質を入れておき、その後、検出DNAと他の物質を同時または順次注入し、反応をおこなっても良い。
また、基板3の上面3aに配置される温度制御装置39の大きさや配置位置も制限されず、温度制御装置39の設計自由度も向上できる。さらに、ウェル11,21が被覆フィルムにより被覆される場合には、反応容器1を生化学反応装置31に固定した状態でも上記被覆フィルムを基板3の上面3aから剥がすことができるため、生化学反応装置31における反応容器1の取り扱いが容易となる。
さらに、一対の突起部25が基板3の長手方向に延びる梁状に形成されているため、基板3の曲げ剛性を向上させて基板3の反りを防止することができる。特に、検出部9の反りを防止することで、発光検出工程を正しく実行することができる。
この構成の反応容器2の場合でも、生化学反応装置31の固定治具44に一対の突起部25を係合させることができる。なお、この固定治具44は、基板3の幅方向の内側に一対配置されており、固定台41に対して基板3の幅方向の外側に向けて移動できるように構成されている。そして、これら一対の固定治具44を相互に離間させる方向に移動させることで、各固定治具44の先端部が各突起部25の凹部28に挿入されるため、各突起部25が各固定治具44に係合することになる。
上記構成の反応容器57を生化学反応装置31に固定する場合には、固定台41の上面41aに断面視略T字状の軌道59を固定治具として一対形成しておく。そして、一対の突起部25の窪み部51に各軌道59が挿入されるように、固定台41の上面41a上で反応容器57を軌道59の長手方向にスライドさせることにより、一対の軌道59が各窪み部51の溝部53及び一対の凹部55の両方に係合されることになる。
この構成においては、基板3の各突起部25を生化学反応装置31の固定治具により挟み込むことで反応容器を生化学反応装置31に固定することができる。そして、この固定治具の挟み込みによって突起部25が削れて欠片が発生したとしても、突起部25は基板3の下面3bに形成されているため、上記欠片が基板3の上面3a側に飛散することが無い。したがって、上記実施形態と同様に、試薬収容部5及び検出部9のウェル11,21内やPCR部7の流路部13内に欠片が混入することを防止できる効果を奏する。
また、試薬収容部5及び検出部9を構成するウェル11,21は、それぞれ複数形成されるとしたが、これに限ることはなく、例えば1つだけ形成されるとしても構わない。
3 基板
3a 上面
3b 下面
5 試薬収容部
7 PCR部
9 検出部
11,21 ウェル(収容部)
13 流路部(収容部)
25 突起部(突起)
27,28,55 凹部
Claims (6)
- 生化学反応装置に固定される反応容器であって、
基板の上面に開口して試薬を収容可能な複数の収容部を設けて構成され、
前記基板に、その下面から厚さ方向に突出して前記生化学反応装置に固定するための突起が形成され、
前記突起に、その側方から窪む凹部が形成されていることを特徴とする反応容器。 - 前記突起が、梁状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の反応容器。
- 前記凹部が、前記突起の長手方向にわたって溝状に形成されることを特徴とする請求項2に記載の反応容器。
- 少なくとも1つの前記収容部が、光学検出可能な検出部を構成することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の反応容器。
- 少なくとも1つの前記収容部が、前記試薬を収容して保存する試薬収容部を構成することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の反応容器。
- 少なくとも1つの前記収容部が、PCR部を構成することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の反応容器。
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