JP4870946B2 - 反応容器および反応方法 - Google Patents
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Description
また、従来、例えば生化学反応等において用いられる反応器として、反応チップの基材の表面上に設けられた複数の反応場としての凹部と、基材に熱溶着または圧着されて複数の凹部の各開口部を閉塞可能なフィルムとを備える反応器が知られている(例えば、特許文献2参照)。
しかしながら、上記従来技術に係る反応装置のように蓋を搬送する搬送装置を備える場合には、反応装置の装置構成が複雑化してしまうという問題が生じる。また、この搬送装置によって異なる反応チップに対して共通の蓋を用いる場合には、蓋を洗浄する洗浄装置が必要となり、より一層、装置構成が複雑化してしまうという問題が生じる。
また、上記従来技術に係る反応器のようにフィルムによって各開口部を閉塞する場合には、反応終了後にフィルムを剥離するという煩雑な手間が必要となり、フィルムを剥離しない場合にはノズルをフィルムに突き刺して反応液を回収することから、回収量にばらつきが生じ易い。つまり、一連の工程を効率良く安定的に実行することが困難となる。
また、試料溶液に相対的に比重が軽いミネラルオイルを重層させる方法では、試料溶液の蒸発を抑制する作用を向上させることが困難であって、しかも、反応終了後に試料溶液を回収する際にミネラルオイルの混入を防ぐことが困難になるという問題が生じる。
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、反応に用いる溶液の蒸発損失を容易に抑制しつつ、反応溶液の供給および回収を適切かつ容易に行うことが可能な反応容器および反応方法を提供することを目的とする。
さらに、本発明の反応容器では、前記蓋本体は、前記反応部を加熱あるいは冷却する温度制御手段が当接可能であり、前記開口部を閉塞する位置まで前記温度制御手段によって移動されることを特徴としている。
さらに、請求項2に記載の本発明の反応容器では、前記温度制御手段は、前記反応部内に収容された反応溶液に対してポリメラーゼ連鎖反応をさせることを特徴としている。
さらに、請求項2に記載の本発明の反応容器によれば、基材の表面上に反応部を容易に形成することができる。
さらに、請求項4に記載の本発明の反応容器によれば、溝部を形成する基材に対して相対的に厚さが薄くなることで熱伝導率が大きくなるフィルムによって反応部が形成されていることから、反応部に貯留された溶液全体の温度状態を容易に均一に制御することができる。
さらに、請求項5に記載の本発明の反応容器によれば、反応部の構成が複雑化することを防止することができる。
さらに、請求項8に記載の本発明の反応容器によれば、基材の表面上に検出部を容易に形成することができる。
さらに、請求項9に記載の本発明の反応容器によれば、単一の基材に対して、少なくとも、反応試薬を収容する処理と、所望の反応を生じさせる処理とを連続的に効率よく実行することができる。
さらに、請求項10に記載の本発明の反応容器によれば、基材の表面上に試薬収容部を容易に形成することができる。
さらに、請求項12に記載の本発明の反応容器によれば、ポリメラーゼ連鎖反応に用いられる溶液の蒸発損失を容易に抑制することができる。
例えば図1に示すように、温度制御装置5は、後述する反応容器10の反応部12を厚さ方向の両側(つまり、表面側および裏面側)から挟み込むようにして配置される2つのペルチェ素子部5a,5bを備え、反応容器10の表面と当接する各ペルチェ素子部5a,5bの表面は、後述する反応容器10の反応部12の表面形状(例えば、凸形状等)に沿った形状(例えば、凹形状等)を有するように形成されている。
なお、基材10aは、好ましくは、例えばPC(ポリカーボネート)、PP(ポリプロピレン)、シクロオレフィン系ポリマー、フッ素ポリマー、シリコン樹脂等の各プラスチックあるいは複数のプラスチックの適宜の組み合わせ、あるいは、ガラス等により形成されることで、耐熱性、耐薬品性、成形加工性等に優れたものとなる。
そして、検出部13は、例えば基材10aの長手方向に沿った他方の端部に設けられ、基材10aの表面上に設けられた複数の凹穴状の検出凹部13a,…,13aを備えて構成され、反応部12においてポリメラーゼ連鎖反応等の所定反応により調整された検体と、検出用の各種の試薬とを収容する。
なお、各試薬収容凹部11aおよび各検出凹部13aは、基材10aがプラスチックからなる場合には、例えば切削加工、成型加工等により形成される。また、基材10aがガラスからなる場合には、例えば切削加工等により形成される。
なお、DNAの分析に用いる試薬の量は微量であるため、各検出凹部13aは、好ましくは、開孔径5mm以下、特に、開孔径0.01mm〜5mmであって、深さ5mm以下、特に、深さ0.01mm〜5mmである。
また、各試薬収容凹部11aおよび各検出凹部13aの内面は、例えば親水化または撥水化等の表面処理が施されてもよい。
なお、厚さが1μm未満であると、熱変形が過剰に大きくなると共に所望の強度を確保することができなくなり、一方、厚さが500μmよりも厚くなると、熱伝導性が過剰に低下し、反応部12内の溶液の温度状態を外部から制御する際に、溶液全体に対して温度状態を均一に制御することが困難となって、反応状態に対する所望の均一性を確保することができなくなる。
また、金属からなるフィルム23は、好ましくは、厚さが1〜50μmである。
また、金属からなるフィルム23は、好ましくは、熱伝導率が100kcal/mh℃以上であって、例えばアルミニウムでは熱伝導率が177kcal/mh℃程度であり、銅では熱伝導率が324kcal/mh℃程度であり、金では熱伝導率が254kcal/mh℃程度である。
なお、金属からなる単層構造のフィルム23は、例えば軟質アルミニウムの場合、好ましくは、厚さが5〜80μm程度であり、硬質アルミニウムの場合、好ましくは、厚さが5〜50μm程度である。
また、プラスチックと金属との組み合わせによる多層構造のフィルム23は、例えばアルミニウムの場合、好ましくは、厚さが7〜50μm程度であり、さらに、アルミニウムの表面上には、反応容器10の基材10aの表面に、例えば熱溶着あるいは圧着により貼付可能なシール層が、アルミニウムと一体となるように設けられている。このシール層は、例えばナイロン等の樹脂フィルム状のシーラントがアルミニウムの表面上に積層、あるいは、例えばマレイン酸変性ポリプロピレン等がアルミニウムの表面上に塗工されて形成されている。このフィルム23では、さらに、強度を増大させるために、アルミニウム層側にPET(ポリエチレンテレフタレート)またはOPP(延伸ポリプロピレン)等のフィルムを積層させても良い。
なお、蓋本体26bには、蓋本体26bの表面上から突出する開口用撮み片部26cが一体に形成され、例えば蓋本体26bにより開口部24を閉塞させる外力の作用が消失した際に可撓基端部26aの復元力で開口部24の閉塞状態が解除されない場合等において、この開口用撮み片部26cに、例えば適宜の装置によって蓋本体26bを反応容器10の上方に向かい引き上げる外力を作用させることで、開口部24の閉塞状態が解除されるようになっている。
先ず、例えば図5に示すステップS11においては、反応液供給工程として、反応容器10の流路状の反応部12の開口部24から、反応部12の内部へと向かい反応溶液を供給する。
なお、ポリメラーゼ連鎖反応に対する反応溶液は、例えば血液等から抽出したDNAまたは予め生成された鋳型DNAと、ポリメラーゼ酵素と、各塩基の材料であるdNTP(デオキシヌクレオチド3リン酸)と、pHおよび濃度調整のための希釈液またはバッファー液とからなる。
次に、ステップS14においては、開放工程として、例えば反応容器10の反応部12を厚さ方向の両側(つまり、表面側および裏面側)から挟み込むようにして配置された2つのペルチェ素子部5a,5bを移動させ、基材10aの表面10A側に配置される一方のペルチェ素子部5aによる可動蓋部26の蓋本体26bに対する外力の作用を解除し、可撓基端部26aの自然状態への復元力によって蓋本体26bによる開口部24の閉塞を解除する。そして、回収工程として、生成された反応生成物を反応部12から回収し、一連の処理を終了する。
先ず、例えば図7に示すステップS21においては、変性工程として、温度制御装置5により反応部12の温度状態を、所定時間(例えば、5〜25秒等)に亘って、所定温度(例えば、90〜100℃程度)となるように制御し、反応溶液のDNAを熱変性させる。
この判定結果が「YES」の場合には、上述したステップS21に戻る。
一方、この判定結果が「NO」の場合には、一連の処理を終了する。
先ず、例えば射出成型法あるいは切削加工法により、例えばPC(ポリカーボネート)、PP(ポリプロピレン)、シクロオレフィン系ポリマー、フッ素ポリマー、シリコン樹脂等の各プラスチックあるいは複数のプラスチックの適宜の組み合わせからなる基材10aの裏面10B上に溝部21を形成する(ステップS31)。
次に、基材10aの表面10A上において開口部24の周辺の位置に可動蓋部26の可撓基端部26aを固定する(ステップS34)。
なお、PE(ポリエチレン)等からなるフィルム23は、熱溶着性であるため、接着剤を用いずに基材10aと貼り合わせることができる。
しかも、反応容器10は、単一の基材10aに試薬収容部11と、反応部12と、検出部13とを備えて構成されることから、一連の試薬収容工程と反応工程と検出工程とを連続的に効率よく実行することができる。
また、上述した実施の形態においては、反応容器10において、試薬収容部11と、反応部12と、検出部13とを、流路等によって互いに接続してもよい。この場合には、検査時間を短縮することができると共に、微量の試料および試薬で各種の分析を精度良く行うことができ、分析に要する費用を削減することができる。
つまり、この第1変形例において、第2の溝部31の底面31A上には、溝部21に接続される開口部31aが形成されており、底面31A上に貼付された第2のフィルム32が開口部31aを封止すると共に、フィルム23が溝部21の開口端21aを覆うことで流路22が形成されている。
なお、この第2のフィルム32は、例えばフィルム23と同等のフィルムである。
先ず、例えば射出成型法あるいは切削加工法により、例えばPC(ポリカーボネート)、PP(ポリプロピレン)、シクロオレフィン系ポリマー、フッ素ポリマー、シリコン樹脂等の各プラスチックあるいは複数のプラスチックの適宜の組み合わせからなる基材10aの裏面10B上に溝部21を形成する(ステップS41)。
次に、基材10aの表面10A上において開口部24の周辺の位置に可動蓋部26の可撓基端部26aを固定する(ステップS46)。
この第1変形例においては、溝部21を形成する基材10aに対して相対的に厚さが薄くなることで熱伝導率が大きくなる第2のフィルム32によって流路22が形成されていることから、反応生成工程において反応部12に貯留された反応溶液全体の温度状態を容易に均一に制御することができる。これにより、反応部12の反応溶液全体に対して所定反応を容易に均一に発生させることができる。
この第2変形例に係る反応容器10の反応部12の製造方法では、例えば、上述した実施の形態でのフィルム23に代わりに、基材10aと同等の略長方形板状の第2の基材35aを基材10aの裏面10B上に、例えばポリ酢酸ビニル系およびポリアミド系等の熱可塑性樹脂接着剤を介して貼付して、第2の基材35aにより溝部21の開口端21aを覆うことで溝部21の開口部を封止して流路22を形成する。
また、この第2変形例に係る反応容器10の反応部12の製造方法では、例えば射出成型法により、例えばPC(ポリカーボネート)、PP(ポリプロピレン)、シクロオレフィン系ポリマー、フッ素ポリマー、シリコン樹脂等の各プラスチックあるいは複数のプラスチックの適宜の組み合わせからなる基材10aの内部に中空孔35を形成してもよい
。
なお、この第3変形例においては、反応部12を、基材10aの表面10A上に形成された凹穴状の複数の凹部36,…,36を備えて構成し、各凹部36,…,36を適宜の流路により接続してもよい。
この第4変形例の可動蓋部26では、例えば蓋本体41bの表面上から突出する開口用撮み片部41cに対して、適宜の装置によって蓋本体41bをスライド可能な外力が作用させられて、蓋本体41bによる開口部24の閉塞および開放が行われる。
また、上述した実施の形態においては、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を、マルチプレックスPCRとしてもよい。このマルチプレックスPCRでは、ホットスタート法(つまり、プライマーのミスアニーリングやオリゴマー化の発生を抑制するために、反応溶液が相対的に高温状態になってから伸長反応工程の実行を開始する方法)を適用することが好ましい。
抗原抗体反応による抗原検出の場合、例えば、予め各反応部12内に抗原を含む試料を入れておき、後から抗体を含む試薬を添加し、抗原または抗体に標識物質を付けておくことで、反応の有無を検出できる。標識物質としては、蛍光などの発光物質が一般的に用いられる。
例えば、インベーダー・アッセイ法(サードウェイブテクノロジーズ,Inc(米国ウィスコンシン州マディソン市)を用いても良い。これによりSNP解析の具現化を図ることが可能となる。
また、検体DNA又は抗原などは反応部12内に固定してもよいし、固定させずに保持させておくだけでもよい。
10a 基材
11a 試薬収容凹部(試薬収容部)
12 反応部
13 検出部
13a 検出凹部(検出部)
21 溝部
22 流路
23 フィルム
24 開口部
25 貫通孔(流路)
26 可動蓋部
35 中空孔(流路)
36 凹部
ステップS11 (反応試薬供給工程)
ステップS12 (閉塞工程)
ステップS13 (反応工程)
ステップS14 (回収工程)
Claims (14)
- 生化学系の反応に用いる反応容器であって、
基材の表面上に設けられた少なくとも1つの開口部を具備する反応部と、
前記開口部を開閉可能な可動蓋部と、
を備え、
前記可動蓋部は、
前記表面に固定された弾性体からなる可撓基端部と、
前記可撓基端部と一体に形成され前記可撓基端部が弾性変形することにより前記開口部を閉塞可能な蓋本体と、
を有し、
前記可撓基端部は、自然状態で前記開口部が開放状態となるように前記蓋本体を支持し、
前記蓋本体は、前記反応部を加熱あるいは冷却する温度制御手段が当接可能であり、前記開口部を閉塞する位置まで前記温度制御手段によって移動される
ことを特徴とする反応容器。 - 前記温度制御手段は、前記反応部内に収容された反応溶液に対してポリメラーゼ連鎖反応をさせることを特徴とする請求項1に記載の反応容器。
- 前記反応部は、前記基材の表面上に設けられた凹部であることを特徴とする請求項1または2に記載の反応容器。
- 前記反応部は、少なくとも2つの前記開口部同士を接続する流路を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の反応容器。
- 前記流路は、前記基材の表面上に設けられた溝部と、該溝部の開口端の少なくとも一部を覆うフィルムとを備えることを特徴とする請求項4に記載の反応容器。
- 前記フィルムは前記溝部が伸びる方向での前記開口端の央部を覆い、前記フィルムおよび前記開口端の両端部により前記開口部が形成されてなることを特徴とする請求項5に記載の反応容器。
- 前記流路は、前記基材の表面上に設けられた溝部と、前記基材の内部で中空であって一端が前記開口部に接続されると共に他端が前記溝部で開口する中空孔と、前記溝部の開口端を覆うフィルムとを備えることを特徴とする請求項4に記載の反応容器。
- 前記基材の表面上に、光学分析可能な検出部を備えることを特徴とする請求項1から請求項7の何れか1つに記載の反応容器。
- 前記検出部は凹状であることを特徴とする請求項8に記載の反応容器。
- 前記基材の表面上に、反応試薬を収容可能な試薬収容部を備えることを特徴とする請求項1から請求項9の何れか1つに記載の反応容器。
- 前記試薬収容部は凹状であることを特徴とする請求項10に記載の反応容器。
- 前記反応部は、酵素反応用であることを特徴とする請求項1から請求項11の何れか1つに記載の反応容器。
- 前記酵素反応は、ポリメラーゼ連鎖反応であることを特徴とする請求項12に記載の反応容器。
- 請求項1から請求項13のいずれか一項に記載の反応容器を用いてポリメラーゼ連鎖反応を生じさせる反応方法であって、
前記可動蓋部の開状態で反応試薬を前記反応部に供給する反応試薬供給工程と、
前記可動蓋部により前記開口部を閉塞する閉塞工程と、
前記反応部の温度状態を制御して前記ポリメラーゼ連鎖反応を生じさせる反応工程と、
前記可動蓋部による前記開口部の閉塞を解除して、前記ポリメラーゼ連鎖反応により生成された反応生成物を前記反応部から回収する回収工程と、
を含むことを特徴とする反応方法。
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