JP2007186463A - 化粧料用金属石鹸およびその製造方法 - Google Patents

化粧料用金属石鹸およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】皮膚への滑沢性や付着性の向上、顔料の分散剤などの目的で使用する化粧料用添加物として有用であり、化粧料の成分に対する影響の小さい金属石鹸を提供すること。
【解決手段】複分解法により得られた炭素数6〜24の脂肪酸マグネシウム、脂肪酸カルシウムまたは脂肪酸亜鉛である金属石鹸であって、該金属石鹸の2質量%水分散液のpHが6〜7未満であることを特徴とする化粧料用金属石鹸とし、その製造方法は、炭素数6〜24の脂肪酸1モルに対して1価の塩基性化合物を0.9〜1モル未満の割合で反応させて脂肪酸の塩基性化合物塩を得、これとマグネシウム塩、カルシウム塩または亜鉛塩とを水性媒体中で反応させることを特徴とする化粧料用金属石鹸の製造方法とした。
【選択図】なし

Description

本発明は化粧料用添加物として有用な金属石鹸に関し、皮膚への滑沢性や付着性の向上、顔料の分散剤などの目的で使用する化粧料用添加物として有用であり、化粧料の成分に対する影響の小さい金属石鹸である脂肪酸カルシウム、脂肪酸マグネシウム、または脂肪酸亜鉛、およびその製造方法に関する。
金属石鹸は、脂肪酸と金属酸化物または水酸化物とを直接反応させる直接法や、水溶液状態で脂肪酸に塩基性化合物を添加、反応させて脂肪酸の塩基性化合物塩とし、さらに金属塩を反応させる複分解法により工業的に製造されている。
直接法は、無溶媒下で脂肪酸と金属化合物とを生成する金属石鹸の融点以上の温度に保ち、反応によって生じた水を系外に蒸発させて反応を進め金属石鹸を得る方法である。
この直接法においては、反応に時間を要すること、金属石鹸の熱劣化により着色すること、遊離脂肪酸や未反応金属化合物の含有量が高いことなどの問題があった。この問題を解決するため、加熱式混練型反応器内で脂肪酸を溶融させ、結晶水または吸着水を有する金属の酸化物または水酸化物を徐々に添加し、目的金属石鹸の融点付近の温度で、生成水分を除去しつつ無溶媒下で反応させる金属石鹸の製造方法が提案されている。(特許文献1参照)
しかし、特許文献1の方法でも、実施例2において、水酸化カルシウムの添加量は、脂肪酸に対して0.55モル(脂肪酸に対して1.1倍当量)であり、依然として、未反応金属化合物の含有量が懸念され、化粧料用金属石鹸としての使用には問題がある。
一方、複分解法は、遊離脂肪酸が少ないこと、粒子が細かく分散が容易なこと、異種金属の混入を低レベルに抑えることができることなどの利点を有している。しかし、これらの利点は、通常、大量の水を使用して反応を完結し、金属石鹸としての純度を高めるために、精製による除去が容易な原料を過剰に仕込んで製造することに拠っている。
すなわち、脂肪酸の塩基性化合物塩を得る中和工程において、脂肪酸の当量に対し過剰の塩基性化合物を反応させている。
また、複分解法において、粒子の大きな金属石鹸の製造方法として、予め目的とする脂肪酸金属石鹸を脂肪酸アルカリ金属塩または脂肪酸アンモニウム塩の水溶液中に分散させ、結晶成長させて大粒径化する方法が提案されている。(特許文献2参照)
この、大粒径化を目的とする特許文献2記載の複分解法においては、実施例1〜3から換算すると、脂肪酸に対し平均1.08倍モルの苛性ソーダと反応させて脂肪酸ナトリウム塩を経て、さらに塩化カルシウムと反応させて金属石鹸を得ることが提案されているように、従来においては、脂肪酸の当量に対し過剰の塩基性化合物を反応させている。
一方、従来より、化粧料における添加物として金属石鹸が使用されており、皮膚への滑沢性や付着性の向上、顔料の分散剤などとして、クリームやジェル状の化粧料、ベビーパウダー、パウダリーファンデーションなどの粉末化粧料などに配合されている。
しかしながら、金属石鹸としての純度向上を重視してきた従来の金属石鹸では、直接法については過剰の金属酸化物または水酸化物が残存していることから、また複分解法については過剰の塩基性化合物を使用していることから、水分と接するとpHが9〜11程度のアルカリ性を示してしまう。このため、化粧料用添加物として使用した場合には、特にpHの影響を受けやすい着色料などを配合した化粧料が退色するなどといった問題点を生じる恐れがあった。
また、直接法においては、脂肪酸過剰で反応させた場合でも、反応率の低下を伴うことにより金属酸化物または水酸化物が完全には消費されずに残存するため、上述のアルカリ性を示す問題を解決するには至らなかった。
以上の如く、化粧料に対する影響の小さい金属石鹸ないしその製造方法は未だ提案されていない。
また、35%粒径と70%粒径との差が3μm以下または50%粒径と95%粒径との差が6μm以下である金属石鹸微粒子を含有するメイクアップ化粧料が付着性および延展性が良好で、色むら、色浮き、色別れを抑え、仕上がりがきれいになる技術が提案されている(特許文献3参照)。しかしながら、この文献による金属石鹸では、粒径による化粧料への効果はあるものの、配合する着色料への影響については議論されていない。
特開平4−66551号公報 特公昭62−41658号公報 特開2000−169340号公報
本発明は、皮膚への滑沢性や付着性の向上、顔料の分散剤などの目的で使用する化粧料用添加物として有用であり、化粧料の成分に対する影響の小さい金属石鹸を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、脂肪酸過剰となる特定範囲のモル比で反応させて得られる脂肪酸の塩基性化合物塩と、マグネシウム塩、カルシウム塩または亜鉛塩とを反応させる複分解法により、化粧料の成分に対する影響の小さい化粧料用添加に適した、脂肪酸マグネシウム、脂肪酸カルシウムまたは脂肪酸亜鉛である金属石鹸が得られることを見出し、さらに、この金属石鹸は、水に分散させた場合のpHがアルカリ性を示さないという特徴を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、
(1)複分解法により得られた炭素数6〜24の脂肪酸マグネシウム、脂肪酸カルシウムまたは脂肪酸亜鉛である金属石鹸であって、該金属石鹸の2質量%水分散液のpHが6〜7未満であることを特徴とする化粧料用金属石鹸、
(2)脂肪酸マグネシウム、脂肪酸カルシウムまたは脂肪酸亜鉛であり、かつその2質量%水分散液のpHが6〜7未満である金属石鹸を複分解法により製造する方法であって、炭素数6〜24の脂肪酸1モルに対して1価の塩基性化合物を0.9〜1モル未満の割合で反応させて脂肪酸の塩基性化合物塩を得、これとマグネシウム塩、カルシウム塩または亜鉛塩とを水性媒体中で反応させることを特徴とする化粧料用金属石鹸の製造方法、
(3)前記マグネシウム塩、カルシウム塩または亜鉛塩を、使用した脂肪酸1モルに対して0.4〜0.6モルの割合で反応させる前記(2)記載の化粧料用金属石鹸の製造方法
を提供するものである。
本発明の金属石鹸は、化粧料用添加物として使用した場合に、化粧料の成分に影響を与えることがなく、皮膚への滑沢性や付着性の向上、顔料の分散などの効果を付与することができる。
また、本発明の金属石鹸の製造方法は、化粧料用添加物として有用な本発明の金属石鹸を、安定かつ生産性良く製造することができる。
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
本発明の化粧料用金属石鹸は、複分解法により得られた炭素数6〜24の脂肪酸マグネシウム、脂肪酸カルシウムまたは脂肪酸亜鉛である金属石鹸であって、該金属石鹸の2質量%水分散液のpHが6〜7未満であることを特徴としている。
本発明の金属石鹸は、本発明の方法によれば、炭素数6〜24の脂肪酸1モルに対して1価の塩基性化合物を0.9モル〜1モル未満の割合で反応させて得られる脂肪酸の塩基性化合物塩と、マグネシウム塩、カルシウム塩または亜鉛塩とを水媒体中で複分解法により反応させ、生成した金属石鹸スラリーを脱水・乾燥させることにより、効率よく製造することができる。これらの金属石鹸を化粧料用添加物として使用する場合は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明に使用しうる炭素数6〜24の脂肪酸は、飽和、不飽和のいずれであってもよく、このようなものとしては、例えばカプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ステアリン酸、アラキン酸等、好ましくは炭素数12〜22の直鎖飽和脂肪酸である。
炭素数が6未満の場合、化粧料用添加物として添加した場合に皮膚への滑沢性や付着性の向上、顔料の分散性向上などの効果を得ることができず、炭素数が24を超える場合には工業的に入手が困難である。これらの脂肪酸は単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明に使用しうる1価の塩基性化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の1価のアルカリ金属の水酸化物、またはアンモニア、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン等のアンモニアやアミン化合物が挙げられる。
これらのうち、脂肪酸塩としての水溶性の点から、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムが好ましい。これらの塩基性化合物は単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上述の脂肪酸の塩基性化合物塩は、脂肪酸1モルに対して、塩基性化合物を0.9〜1モル未満、好ましくは0.92〜0.99モル、より好ましくは0.93〜0.98モルの割合で水性媒体中で反応させることにより、得ることができる。
なかでも、マグネシウム塩については脂肪酸1モルに対して塩基性化合物0.95〜0.98モル、カルシウム塩については0.93〜0.96モルの割合で反応させて得られる脂肪酸の塩基性化合物塩が特に好ましい。塩基性化合物の仕込み比率が上記の範囲を外れると、化粧料用添加物として添加した場合に、化粧料の成分に影響を与えたり、また金属石鹸の生産性が悪くなったりする。
上述の複分解反応系における脂肪酸の塩基性化合物塩の濃度は、金属石鹸の生産性や反応溶液の取扱い性の点から、通常、1〜20質量%、好ましくは5〜15質量%である。
脂肪酸の塩基性化合物塩の濃度が1質量%以上であれば、金属石鹸の生産性が実用的であり、また、20質量%以下では、脂肪酸の塩基性化合物塩水溶液または金属石鹸スラリーの粘度が適度となり、均一な反応を行うことができる。
反応温度については、上記のモル比率で、一般に脂肪酸の融点以上であり、該脂肪酸が分解しない程度の温度、好ましくは100℃以下、より好ましくは50〜100℃、さらに好ましくは75〜95℃である。
本発明の複分解工程で使用できるマグネシウム塩、カルシウム塩または亜鉛塩としては、水溶性の中性塩であればよく、例えば塩化マグネシウム、塩化カルシウム、硝酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、硝酸亜鉛、塩化亜鉛などが挙げられる。これらの金属塩のうち、水への溶解性や副生塩の溶解性の高さおよび化粧料用添加物としての利用であることから、塩化カルシウム、硝酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、硫酸亜鉛や塩化亜鉛が好ましい。
これらの金属塩は単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
脂肪酸の塩基性化合物塩水溶液から金属石鹸を得る複分解反応は、通常、上述の金属塩の水溶液を別に調製しておき、脂肪酸の塩基性化合物塩水溶液と混合することにより行われる。例えば、脂肪酸の塩基性化合物塩水溶液に金属塩水溶液を滴下する、金属塩水溶液に脂肪酸の塩基性化合物塩水溶液を滴下する、あるいは反応槽にこれらを同時に滴下することによって行われる。
なお、金属塩水溶液中の金属塩の濃度は、金属石鹸の生産性や反応溶液の取扱い性の点から、通常、1〜60質量%、好ましくは10〜50質量%である。
複分解工程における各原料の仕込み比については、脂肪酸の塩基性化合物塩を得るために使用した脂肪酸1モルに対し、マグネシウム塩またはカルシウム塩、亜鉛塩を好ましくは0.4〜0.6モル、特に好ましくは0.45〜0.55モル用い、水性媒体中で反応させることにより本発明の金属石鹸を得ることができる。金属塩のモル比が0.4〜0.6モルの範囲にあれば、金属石鹸の生産性が良好であると共に、品質の良好な金属石鹸を得ることができる。
反応温度については、脂肪酸の塩基性化合物塩の溶解度を考慮して、当業者が通常行う温度条件下で行われる。好ましくは50〜100℃、より好ましくは75〜95℃である。
こうして得られる金属石鹸スラリーは、フィルタープレス等のろ過器を使用して水分を除去し、脱水ケーキを得るとともに、必要に応じて反応の際に副生する塩を除去するために洗浄を行なう。さらに、脱水ケーキを気流式乾燥機または送風乾燥機などを使用して乾燥処理し、必要であれば粉砕を行なって本発明の金属石鹸を得ることができる。
本発明の金属石鹸は、脂肪酸過剰となる特定範囲のモル比で反応させて得られた脂肪酸の塩基性化合物塩を経て製造されることにより、金属石鹸を2質量%水分散液としたときのpHが6〜7未満でアルカリ性を呈さないことが特徴であり、pHが6.3〜6.9のものが好ましい。
本発明におけるpH測定値は、pHに影響を及ぼすことのない非イオン性界面活性剤を使用して、金属石鹸2質量%をイオン交換水に分散させて調製した金属石鹸水分散液のpHを測定した値である。上記非イオン性界面活性剤としては、HLBが12〜15のポリエチレングリコール系非イオン性界面活性剤が挙げられ、分散安定性の点から、ポリオキシエチレン(10モル)ノニルフェノールエーテルやポリオキシエチレン(9モル)トリデシルエーテルなどのHLBが13程度のものが好ましい。
本発明の金属石鹸を使用しうる化粧料としては、洗顔クリーム、化粧水、マッサージクリーム、乳液、モイスチャークリームなどのスキンケア化粧品、ファンデーション、口紅、ほほ紅、などのメイクアップ化粧料、入浴剤、日焼け止めクリーム、デオドラントスプレーなどのボディケア化粧品、シャンプー、リンス、ヘアリキッド、ヘアカラーなどのヘアケア化粧品などが挙げられる。
また、本発明の金属石鹸に加え、その他の公知の化粧料原料として、有機、無機顔料、香料、油脂、ロウ類、炭化水素、高級脂肪酸、高級アルコール、エステル類、シリコーン油、非イオン、アニオン、カチオン、両性などの界面活性剤、保湿剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤などを使用することができる。
次に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例になんら限定されるものでない。
<金属石鹸の調製>
表1に示す組成の2種の混合脂肪酸を使用して、実施例1〜3により本発明の金属石鹸を、比較例1および2により比較例の金属石鹸を得た。脂肪酸のアルキル組成を表1に示した。
脂肪酸Aの組成は、ステアリン酸66質量%、パルミチン酸31質量%、ミリスチン酸2質量%、アラキジン酸1質量%、脂肪酸Bの組成は、ラウリン酸99質量%、ミリスチン酸1質量%である。
Figure 2007186463
実施例1
5Lガラス製フラスコに水道水3000gを仕込み、ここに脂肪酸Aを245g(0.9モル)加えて90℃まで昇温した。次いでフラスコを攪拌しながら48質量%水酸化ナトリウム水溶液73g(0.88モル;脂肪酸1モルに対して0.98モルに相当)を30分で投入し、投入後同温度で1時間攪拌を継続し、脂肪酸ナトリウム水溶液を得た。
ここに、同温度で35質量%塩化カルシウム水溶液149g〔0.47モル;脂肪酸1モルに対して0.52モル(1.04当量)に相当〕を30分かけて攪拌しながら加え、終了後、同温度で1時間攪拌を継続し、脂肪酸カルシウムスラリーを得た。得られたスラリーを70℃まで冷却した後、吸引ろ過器を用いてろ過を行ない、更にろ過器の上部から3000gの水道水を加え、脂肪酸カルシウムケーキの洗浄を行なった後に、送風乾燥機中で80℃にて36時間乾燥を行い、脂肪酸カルシウム(Y−1)を得た。
実施例2
5Lガラス製フラスコに水道水3000gを仕込み、ここに脂肪酸Bを180g(0.9モル)加えて90℃まで昇温した。次いでフラスコを攪拌しながら40質量%水酸化カリウム水溶液120g(0.86モル;脂肪酸1モルに対して0.96モルに相当)を30分で投入し、投入後同温度で1時間攪拌を継続し、ラウリン酸カリウム水溶液を得た。
ここに同温度で35質量%硫酸マグネシウム水溶液150g〔0.44モル;脂肪酸1モルに対して0.49モル(0.98当量)に相当)〕を30分かけて攪拌しながら加え、終了後、同温度で1時間攪拌を継続し、ラウリン酸マグネシウムスラリーを得た。得られたスラリーを70℃まで冷却した後、吸引ろ過器を用いてろ過を行ない、更にろ過器の上部から3000gの水道水を加え、ラウリン酸マグネシウムケーキの洗浄を行なった後に、送風乾燥機中で80℃にて36時間乾燥を行い、ラウリン酸マグネシウム(Y−2)を得た。
実施例3
5Lガラス製フラスコに水3000gおよび脂肪酸Aを245g(0.9モル)仕込み、攪拌しながら90℃に昇温し、ここに48質量%水酸化ナトリウム水溶液73g(0.89モル;脂肪酸1モルに対して0.99モルに相当)を加え、同温度で30分攪拌を継続し、脂肪酸ナトリウム水溶液を得た。ここに同温度で20質量%硫酸亜鉛水溶液388g〔0.48モル;脂肪酸1モルに対して0.53モル(1.07当量)に相当〕を1時間かけて滴下し、同温度で1時間攪拌を継続し、脂肪酸亜鉛スラリーを得た。得られたスラリーを60℃以下まで冷却し、直径30cmの遠心脱水装置に仕込み、脱水を行なうとともに、脱水器内に5000gの水道水を加えてケーキの洗浄を行った。得られた脱水ケーキを60℃にて60時間乾燥し、脂肪酸亜鉛(Y−3)を得た。
実施例4
5Lガラス製フラスコに水3000gおよび脂肪酸Aを245g(0.9モル)仕込み、攪拌しながら85℃に昇温し、ここに48質量%水酸化ナトリウム水溶液71g(0.85モル;脂肪酸1モルに対して0.94モルに相当)を加え、同温度で30分攪拌を継続し、脂肪酸ナトリウム水溶液を得た。ここに同温度で35質量%硫酸マグネシウム水溶液165g〔0.48モル;脂肪酸1モルに対して0.53モル(1.07当量)に相当〕を1時間かけて滴下し、終了後90℃に昇温して1時間攪拌を継続し、脂肪酸マグネシウムスラリーを得た。得られたスラリーを60℃以下まで冷却し、直径30cmの遠心脱水装置に仕込み、脱水を行なうとともに、脱水器内に5000gの水道水を加えてケーキの洗浄を行った。得られた脱水ケーキを60℃にて60時間乾燥し、脂肪酸マグネシウム(Y−4)を得た。
比較例1
実施例4の脂肪酸マグネシウムの製造において、48質量%水酸化ナトリウム水溶液の使用量を79g(0.95モル; 脂肪酸1モルに対して1.05モルに相当)、35質量%硫酸マグネシウム水溶液171g〔0.50モル;脂肪酸1モルに対して0.55モル(1.11当量)に相当〕とした以外は実施例4と同様の操作を行ない、脂肪酸マグネシウム(Z−1)を得た。
比較例2
5Lガラス製フラスコに脂肪酸Aを245g(0.9モル)および水道水3000gを仕込み、攪拌しながら80℃まで昇温し、ついで同温度で水酸化カルシウム32g(0.43モル;脂肪酸1モルに対して0.48モル、つまり0.96当量に相当)を30分かけて加え、終了後、90℃に昇温し1時間攪拌を継続して脂肪酸カルシウムスラリーを得た。この脂肪酸カルシウムスラリーを60℃まで冷却した後、吸引ろ過器を使用してろ過した後に、60℃で48時間乾燥を行ない、直接法による脂肪酸カルシウム(Z−2)を得た。
<金属石鹸の分析>
実施例1〜4および比較例1〜2で得られた金属石鹸を以下の方法で分析し、表2にまとめて示した。
(A)マグネシウム、カルシウム、または亜鉛含有量
化粧品原料基準に記載された方法でマグネシウム分、カルシウム分、または亜鉛分を測定した。
(B)遊離脂肪酸
金属石鹸5gをビーカーに秤取り、ジエチルエーテル/エタノール混合溶媒(容量比で1:1の混合液)50gを加え、30秒間攪拌した後に30分間静置し、その後5Bのろ紙を使用してろ過を行ない、ろ液を0.1Nの水酸化カリウム滴定液を用いて滴定し、下記の式(1)に従って遊離脂肪酸量を計算した。同様の操作を脂肪酸ブランクでも行なった。
遊離脂肪酸含有量=(A−B)×f×M/W/100 (1)
ただし、A:サンプルでの滴下量(ml)、B:ブランクでの滴下量(ml)、f:N/10水酸化カリウム滴定液のファクター、M:使用した脂肪酸の分子量、W:金属石鹸のサンプル量(g)である。
(C)乾燥減量
化粧品原料基準に収載の方法で乾燥減量を測定した。
(D)金属石鹸2質量%水分散液のpH
25℃に保った実験室内において、金属石鹸2.0gを100mlビーカーに秤取り、HLBが13.3であるオキシエチレン(10モル)ノニルフェノールエーテルをイオン交換水で希釈して調製した0.1質量%水溶液98.0gを加え、均一になるまで攪拌して分散液を得て、pH電極によりpH測定を3回行ない平均して求めた。
分析結果について表2にまとめた。
Figure 2007186463
表2に示すように、本発明の実施例1〜4の金属石鹸は、金属含有量、遊離脂肪酸、水分(乾燥減量)が、いずれも化粧品原料基準を満たし、かつ、2質量%分散時のpHが6〜7未満である。一方、比較例1、2の金属石鹸では、pHが10台であり、化粧料として使用した場合には、後述するように、安定性に欠けるものであった。
<化粧料添加の効果>
実施例1〜4、比較例1,2により得られ各金属石鹸を用い、表3の化粧品配合物欄に示す物質を所定の配合比率で配合して、口紅であるメイクアップ化粧料を調製し、型に流しスティック状にした後、以下の項目によりメイクアップ化粧料の評価を行なった。なお、金属石鹸を配合しないものを比較例3とした。
(1)付着性
20名の女性(20〜35才)をパネラーとし、メイクアップ化粧料を使用した時の肌へのつきについて下記のように判定し、20名の平均値を求めて、平均1.5点以上を肌へのつき(付着性)が良好な化粧料であると評価した。
2点:肌へのつきがよいと感じた場合。
1点:肌へのつきがやや悪いと感じた場合。
0点:肌への付きが悪いと感じた場合。
(2)延展性
20名の女性(20〜35才)をパネラーとし、メイクアップ化粧料を使用した時の化粧料の延びについて下記のように判定し、20名の平均値を求めて、平均1.5点以上を使用時の延び(延展性)が良好な化粧料であると評価した。
2点:使用時に化粧料の延びがよいと感じた場合。
1点:使用時に化粧料の延びがやや悪いと感じた場合。
0点:使用時に化粧料の延びが悪いと感じた場合。
(3)化粧の仕上がり
20名の女性(20〜35才)をパネラーとし、メイクアップ化粧料を使用した時の仕上がりについて下記のように判定し、20名の平均値を求めて、平均1.5点以上を使用時の仕上がりが良好な化粧料であると評価した。
2点:色ムラがなく仕上がりが良いと感じた場合。
1点:やや色ムラがあり、仕上がりがやや悪いと感じた場合。
0点:色ムラがあり仕上がりが悪いと感じた場合。
(4)持続性
20名の女性(20〜35才)をパネラーとし、メイクアップ化粧料を使用してから4時間後の化粧料の状態について下記のように判定し、20名の平均値を求めて、平均1.5点以上を持続性が良好な化粧料であると評価した。
2点:色浮きがなく、化粧崩れを生じていないと感じた場合。
1点:やや色浮きがあり、やや化粧崩れを生じていると感じた場合。
0点:明らかに化粧崩れが生じていると感じた場合。
(5)安定性
調製した口紅を35℃ 60%RHの恒温恒湿槽中で3ヶ月間保存し、これと5℃の冷蔵庫中で保存した口紅の色調を目視で比較し、下記の通り評価を行なった。
○:5℃保存品と色調が同一であると判断される。
△:保存前と比較して色調が若干変化していると感じられる。
×:明らかに色調が変化した。
結果を表3にまとめて示す。
Figure 2007186463
表3より明らかなように、本発明の実施例による金属石鹸を添加した口紅では、付着性、延展性、化粧の仕上がり、持続性のいずれの項目においても使用感に優れ、さらに35℃、60%RHの保存においても色調の変化はない。これに対して、比較例1では、使用感に関しては問題はないが、保存時の安定性に欠け、色調の変化が認められた。また比較例2の金属石鹸を使用した口紅では、使用感および色調の変化が劣り、比較例3のように金属石鹸を使用しない場合には、保存時の色調は安定しているものの、使用感に劣る結果が得られた。
本発明の化粧料用金属石鹸は、皮膚への滑沢性や付着性の向上、顔料の分散性に優れ、化粧料の成分に対する影響が小さいので、例えば、口紅、ほほ紅、などのメイクアップ化粧料の他、洗顔クリーム、化粧水、マッサージクリーム、乳液、モイスチャークリームなどのスキンケア化粧品、ファンデーション、入浴剤、日焼け止めクリーム、デオドラントスプレーなどのボディケア化粧品、シャンプー、リンス、ヘアリキッド、ヘアカラーなどのヘアケア化粧品などの化粧料用として好適に使用できる。
また、本発明の化粧料用金属石鹸の製造方法は、上記の有用な化粧料用金属石鹸を、安定かつ生産性良く製造する方法として利用できる。

Claims (3)

  1. 複分解法により得られた炭素数6〜24の脂肪酸マグネシウム、脂肪酸カルシウムまたは脂肪酸亜鉛である金属石鹸であって、該金属石鹸の2質量%水分散液のpHが6〜7未満であることを特徴とする化粧料用金属石鹸。
  2. 脂肪酸マグネシウム、脂肪酸カルシウムまたは脂肪酸亜鉛であって、かつその2質量%水分散液のpHが6〜7未満である金属石鹸を複分解法により製造する方法であって、炭素数6〜24の脂肪酸1モルに対して1価の塩基性化合物を0.9〜1モル未満の割合で反応させて脂肪酸の塩基性化合物塩を得、これとマグネシウム塩またはカルシウム塩または亜鉛塩とを水性媒体中で反応させることを特徴とする化粧料用金属石鹸の製造方法。
  3. 前記マグネシウム塩、カルシウム塩または亜鉛塩を、使用した脂肪酸1モルに対して0.4〜0.6モルの割合で反応させる請求項2記載の化粧料用金属石鹸の製造方法。
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