JP2007179009A - 定着部材及びそれを有する画像形成装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】耐熱性の基材、該基材上に設けた合成ゴムを主成分とする弾性層、及び該弾性層上に設けたフッ素系樹脂を主成分とする離型層を順次有する定着部材であって、前記弾性層と離型層の間に、フッ素系樹脂を主成分とし炭素クラスターを含む中間層を設けるか、或いは、フッ素系樹脂を主成分とし炭素クラスターを含む第1中間層と、フッ素系樹脂を主成分とし炭素クラスターを含まない第2中間層からなる中間層を設けた画像形成装置用定着部材。
【選択図】図3
Description
定着部材(1)を作製するためには、ベルト基材(2a)又はローラ基材(2b)の表面に合成ゴムをコーティングして弾性層(3)を設け、更に、該弾性層(3)上にフッ素系樹脂をコーティングして離型層(4)を設けて定着ベルト(1)とする。なお、一般に各々の界面はプライマー処理されているが、ここでは図示していない。
定着ベルト(1a)は、加熱ローラ(5)を定着ローラ(6)から離間する方向に付勢したり、図示しないテンションローラを別途設けたりすることによって弛み無く張架される。加熱ローラ(5)や加圧ローラ(7)の表面温度はセンサー(9a)、(9b)によって検知され、所定の設定温度(例えば約170℃)となるように制御されている。また、加熱ローラ(5)の表面温度検知は、加熱ローラ(5)、定着ローラ(6)間に張架した定着ベルト(1a)上の温度をセンサー(9c)により検知することもある。
定着ローラ(1b)や加圧ローラ(7)の表面温度はセンサー(9a)、(9b)によって検知され、所定の設定温度(例えば約170℃)となるように制御されている。
しかし、上述のような離型層に用いられるフッ素系樹脂は一般に融点が高く、四フッ化エチレン樹脂(PTFE)で320〜330℃、四フッ化エチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体樹脂(PFA)で300〜320℃、四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体樹脂(FEP)で250〜280℃であり、何れも高温である。したがって、従来の定着部材においては、フッ素系樹脂を前記したような高温で成膜して離型層を形成する際に、弾性層を形成する合成ゴムが熱によって劣化してしまい、弾性層にクラック等が生じ易くなるという問題があった。
しかしながら、合成ゴム自体の耐熱性を向上させた定着部材は、離型層の焼成における弾性層の劣化が軽減されるが必ずしも十分とは言えなかった。更に、近年は部品やユニットの高信頼性が求められており、特に画像形成装置に組み込んで長期使用した際の信頼性に関する要求が高まってきている。また、上記問題を解決するために合成ゴム自体に耐熱向上剤を添加すると、弾性層の比重が増大するのに伴って熱容量が増大して定着装置の立ち上げ時間、すなわち、ウォームアップ時間が長くなったりするという問題が現れる。また、熱容量が増すために、定着装置を所定の温度に維持するための消費電力も大きくなり、近年の省エネ化に関する要求に反するような問題も現れる。
1) 耐熱性の基材、該基材上に設けた合成ゴムを主成分とする弾性層、及び該弾性層上に設けたフッ素系樹脂を主成分とする離型層を順次有する定着部材であって、前記弾性層と離型層の間に、フッ素系樹脂を主成分とし炭素クラスターを含む中間層を設けたことを特徴とする画像形成装置用定着部材。
2) 耐熱性の基材、該基材上に設けた合成ゴムを主成分とする弾性層、及び該弾性層上に設けたフッ素系樹脂を主成分とする離型層を順次有する定着部材であって、前記弾性層と離型層の間に、フッ素系樹脂を主成分とし炭素クラスターを含む第1中間層と、フッ素系樹脂を主成分とし炭素クラスターを含まない第2中間層からなる中間層を設けたことを特徴とする画像形成装置用定着部材。
3) 弾性層上にフッ素系樹脂を主成分とし炭素クラスターを含む第1中間層を形成し、その上に、フッ素系樹脂を主成分とし炭素クラスターを含まない第2中間層を形成する工程を含むことを特徴とする2)記載の定着部材の製造方法。
4) 1)又は2)記載の定着部材を有することを特徴とする画像形成装置。
図3は本発明1の実施形態の一例を示す断面図である。
定着部材(1)は、基材(2)の上に、図示しないプライマー層を介して、合成ゴムを主成分とする弾性層(3)、フッ素系樹脂を主成分とし炭素クラスターを含む中間層(10)、及びフッ素系樹脂を主成分とする離型層(4)が順次設けてある。なお、中間層(10)において、炭素クラスターは弾性層(3)との界面側に偏って含有されていてもよい。
定着部材(1)は、基材(2)の上に、図示しないプライマー層を介して、合成ゴムを主成分とする弾性層(3)、フッ素系樹脂を主成分とし炭素クラスターを含む第1中間層(10a)、フッ素系樹脂を主成分とし炭素クラスターを含まない第2中間層(10b)、及びフッ素系樹脂を主成分とする離型層(4)が順次設けてある。
本形態では、弾性層(3)上に第1中間層(10a)を塗布した後、その上に第2中間層(10b)を塗布する工程を含む方法で製造することによって、定着部材の形状や形成過程に拘わらず、中間層(10c)における炭素クラスターを意図的に弾性層(3)との界面側に偏らせることができる。
基材(2)としては、定着部材(1)が定着ベルトである場合には、例えば、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、フッ素系樹脂等の樹脂、又はニッケルやステンレス等の金属からなるシームレスベルトが好ましく用いられる。また、定着部材(1)が定着ローラである場合には、例えば、アルミニウム、ステンレススチール、真鍮などの金属からなるパイプが好ましく用いられる。
合成ゴムとしては、シリコーンゴム、フッ素ゴム、フルオロシリコーンゴム等が好ましく用いられる。
弾性層(3)は、基材(2)上に、図示しないプライマー層を介して、合成ゴム溶液を塗工することによって塗布層を形成し、次いで、ゴムを加硫して形成することができる。また、塗工方法としては、有機溶剤等を用いて溶液の濃度を調整することにより、スプレーコート、ブレードコート、ディッピングコート等を用いることができる。
中間層(10)の厚さは、0.1〜3μmの範囲内であれば特に限定されない。厚さが0.1μm未満では炭素クラスターの含有量が少なく、弾性層(3)に対する熱劣化抑制効果が十分に得られない場合がある。一方、厚さが3μmを超えると所望の接着性が得られない場合があり、定着部材の使用中に層間剥離が生じる恐れがある。
また、第2中間層(10b)としては、第1中間層(10a)を構成するフッ素系樹脂含有プライマーを用いても、異なるフッ素系樹脂含有プライマーを用いてもよい。
炭素クラスターを弾性層(3)との界面側に偏らせるためには、炭素クラスターを分散させたフッ素系樹脂含有プライマーを塗工・乾燥して第1中間層(10a)を形成した後で、その上に第2中間層(10b)を同様の方法で形成すればよい。
第1中間層(10a)及び第2中間層(10b)の厚さとしては、2層合計(10c)の厚さが0.1〜3μmの範囲内であれば特に限定されないが、第1中間層(10a)の厚さは0.1〜2μmであることが好ましい。第1中間層(10a)の厚さが0.1μm未満では炭素クラスターの含有量が少なく、弾性層(3)に対する熱劣化抑制効果が十分に得られない場合がある。一方、2層合計(10c)の厚さが3μmを超えると、所望の接着性が得られない場合があり、定着部材の使用中に層間剥離が生じる恐れがある。
炭素クラスターとしては、球状又は長球状の構造を有するもの(以下、フラーレンという)、チューブ状の構造を有するもの(以下、カーボンナノチューブという)、球体の一部が欠損したような籠状の構造を有するもの、平面構造を有する鱗片状の構造を有するもの等が挙げられる。これらの中では、フラーレンとカーボンナノチューブが好ましく用いられる。
フラーレンをフッ素系樹脂含有プライマーへ添加する方法としては、超音波分散やホモジナイザー等、一般的な方法を用いることができる。
なお、フラーレンにはラジカル捕捉能があるので、熱や酸素によってポリマーから発生したラジカルを捕捉し、ポリマー劣化の進行を抑制する作用があると考えられる。
本発明2及び3によれば、定着部材の形状に拘わらず中間層に含まれる炭素クラスターを意図的に弾性層との界面側に偏らせた積層構造を形成することができるので、より効率的に弾性層の劣化を抑制することができる。
本発明4によれば、長期に亘って高品質な画像を安定して出力することができ、部品やユニット交換の頻度が少なく、信頼性の高い画像形成装置が提供できる。
攪拌機、バルブ、圧力ゲージ、温度計を備えた3L(リットル)のガラスライニング製オートクレーブに、純水1500mL、パーフルオロオクタン酸アンモニウム9.0gを入れ、窒素ガスで充分置換したのち真空にし、エタンガス20mLを仕込んだ。
次いで、ヒドロキシル基を有する含フッ素エチレン性単量体として、パーフルオロ−(1,1,9,9−テトラヒドロ−2,5−ビストリフルオロメチル−3,6−ジオキサ−8−ノネン−1−オール)3.8g、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)18gを窒素ガスを用いて圧入し、系内の温度を70℃に保ちつつ攪拌を行いながらテトラフルオロエチレンガスを内圧が8.5kgf/cm2Gとなるように圧入した。
次いで、過硫酸アンモニウム0.15gを水5.0gに溶かした溶液を窒素を用いて圧入して反応を開始した。
重合反応の進行に伴って圧力が低下するので、7.5kgf/cm2Gまで低下した時点で、テトラフルオロエチレンガスを用いて8.5kgf/cm2Gまで再加圧し、降圧、昇圧を繰り返した。テトラフルオロエチレンガスの供給を続けながら、重合開始からテトラフルオロエチレンガスが約40g消費されるごとに、前記ヒドロキシル基を有する含フッ素エチレン性単量体1.9gを計3回(計5.7g)圧入して重合を継続し、重合開始からの合計でテトラフルオロエチレンが約160g消費された時点で供給を止め、オートクレーブを冷却し、未反応モノマーを放出し、青みがかった半透明の水性フッ素系樹脂分散液1702gを得た。
得られた水性フッ素系樹脂分散液中のフッ素系樹脂の固形分濃度は、10.9重量%、動的光散乱法で測定した粒子径は、70.7nmであった。
更にこの水性フッ素系樹脂分散液を界面活性剤により濃縮し、固形分濃度を15重量%とした。
次いで、水性フッ素系樹脂分散液100重量部(固形分濃度15重量%)、界面活性剤(濃縮時に使用した量と併せて)1.0重量部、増粘剤:メチルセルロース水溶液(メチルセルロース4.8重量%)4.0重量部を均一混合し、SUS網(300メッシュ)で濾過して、フッ素系樹脂含有プライマーとした。
次の(a)〜(c)の工程により定着ベルトを得た。
(a)直径60mm、幅400mm、厚さ0.1mmのポリイミド樹脂製シームレスベルトの表面にシリコーンゴム用プライマー(東レダウコーニング社製、DY39−067)を厚さが1μmとなるようにスプレーコートし、この上にシリコーンゴム(東レダウコーニング社製、DY35−2083)のトルエン溶液をスプレーコートして厚さ200μmの塗布層を形成し、シリコーンゴムを120℃×15分間の1次加硫後、200℃×4時間の2次加硫を経て弾性層を形成する工程。
(b)この弾性層の上に、参考例のフッ素系樹脂含有プライマー100重量部に対し、0.1重量部のフラーレンC60(フロンティアカーボン社製、nanom purple N60−S)を分散させたプライマー組成物をスプレーコートした後、自然乾燥させて厚さ2μmの中間層を形成する工程。
(c)この中間層の上に、PFA分散液(三井・デュポンフロロケミカル社製、PFA945HP−Plus)をスプレーコートして厚さ30μmの塗布層を形成し、この塗布層を340℃で30分間焼成して離型層を形成する工程。
前記(b)の工程において、参考例のフッ素系樹脂含有プライマー100重量部に対し、0.1重量部のフラーレンC60(フロンティアカーボン社製、nanom purple N60−S)を分散させたプライマー組成物をスプレーコートした後、自然乾燥させて厚さ1μmの第1中間層を形成し、その上に、フラーレンを含まない参考例のフッ素系樹脂含有プライマーをスプレーコートした後、自然乾燥させて厚さ1μmの第2中間層を形成した点以外は、実施例1と同様の工程を順次経て定着ベルトを得た。
前記(b)の工程において、フラーレンの代りに、0.1重量部のカーボンナノファイバー〔昭和電工社製、VGCF(商標)〕を分散させたプライマー組成物を用いた点以外は、実施例1と同様の工程を順次経て定着ベルトを得た。
前記(b)の工程において、フラーレンの代りに、0.1重量部のカーボンナノファイバー〔昭和電工社製、VGCF(商標)〕を分散させたプライマー組成物を用いた点以外は、実施例2と同様の工程を順次経て定着ベルトを得た。
前記(a)の工程において、ポリイミド樹脂製シームレスベルトの代りに、直径40mm、長さ400mm、肉厚1.0mmのアルミニウムで構成される基材を用いた点以外は、実施例2と同様の工程を順次経て定着ローラを得た。
前記(a)の工程において、ポリイミド樹脂製シームレスベルトの代りに、直径40mm、長さ400mm、肉厚1.0mmのアルミニウムで構成される基材を用いた点以外は、実施例4と同様の工程を順次経て定着ローラを得た。
前記(b)の工程において、フラーレンを含まない参考例のフッ素系樹脂含有プライマーを用いた点以外は、実施例1と同様の工程を順次経て定着ベルトを得た。
前記(a)の工程において、ポリイミド樹脂製シームレスベルトの代りに、直径40mm、長さ400mm、肉厚1.0mmのアルミニウムで構成される基材を用いた点以外は、比較例1と同様の工程を順次経て定着ローラを得た。
次いで、各定着部材を用いて複写を行い、複写枚数が「1枚」、「10万枚」、「20万枚」に達した時点での「画質(ベタ地)」を観察し、定着部材の表面の「複写後の外観」について異常の有無を目視により確認した。
評価基準は次の通りとした。
○ : 実用上、問題とならないレベル
△ : 若干の異変や画質の劣化が認められるレベル
× : 著しい異変や画質の劣化が認められるレベル
なお、ここでいう画質の劣化とは、ゆず肌や光沢ムラのことを意味する。これは、定着部材の弾性層が劣化することにより、定着部材表面の平滑性が失われたり、定着の圧力が不均一になったりしたことに起因するものである。
しかし、20万枚の複写を終えた時点では画質が著しく劣化し、定着ベルトを観察するとクラックが発生・成長しており、定着部材として満足に機能しないレベルまで劣化・破損していた。
1a 定着ベルト
1b 定着ローラ
2 基材
2a ベルト基材
2b ローラ基材
3 弾性層
4 離型層
5 加熱ローラ
6 定着ローラ
7 加圧ローラ
8a ハロゲンヒータ
8b ハロゲンヒータ
9a 温度センサー
9b 温度センサー
9c 温度センサー
10 中間層
10a 炭素クラスターを含むフッ素系樹脂で構成された第1中間層
10b 炭素クラスターを含まないフッ素系樹脂で構成された第2中間層
10c 中間層
P 記録材
T トナー
Claims (4)
- 耐熱性の基材、該基材上に設けた合成ゴムを主成分とする弾性層、及び、該弾性層上に設けたフッ素系樹脂を主成分とする離型層を順次有する定着部材であって、前記弾性層と離型層の間に、フッ素系樹脂を主成分とし炭素クラスターを含む中間層を設けたことを特徴とする画像形成装置用定着部材。
- 耐熱性の基材、該基材上に設けた合成ゴムを主成分とする弾性層、及び、該弾性層上に設けたフッ素系樹脂を主成分とする離型層を順次有する定着部材であって、前記弾性層と離型層の間に、フッ素系樹脂を主成分とし炭素クラスターを含む第1中間層と、フッ素系樹脂を主成分とし炭素クラスターを含まない第2中間層からなる中間層を設けたことを特徴とする画像形成装置用定着部材。
- 弾性層上にフッ素系樹脂を主成分とし炭素クラスターを含む第1中間層を形成し、その上に、フッ素系樹脂を主成分とし炭素クラスターを含まない第2中間層を形成する工程を含むことを特徴とする請求項2記載の定着部材の製造方法。
- 請求項1又は2記載の定着部材を有することを特徴とする画像形成装置。
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