JP2007176144A - 積層フィルム及び積層体 - Google Patents

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貴裕 重光
Naohisa Sendo
尚久 千東
Shinichi Kando
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Sanji Fukaya
三治 深谷
Shuji Aida
修二 合田
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Abstract

【課題】 本発明は、適度な柔軟性と発泡ポリウレタンとの密着性に優れ、且つ良好な加工適性を持つ積層フィルムを提供する。
【解決手段】 本発明の積層フィルムは、ポリオレフィン系樹脂層、接着性樹脂層及び熱可塑性ポリウレタン樹脂層がこの順序で積層一体化されてなり且つ10%伸長時のモジュラスが0.1〜3MPaであることを特徴とするので、保管又は運搬のために円柱状に巻回された場合にあっても、熱可塑性ポリウレタン樹脂層はポリオレフィン系樹脂層を介在させた状態に円柱状に巻回され、内外方向に隣接する熱可塑性ポリウレタン樹脂層同士が密着するようなことはなくブロッキングは発生しない。
【選択図】 なし

Description

本発明は、積層フィルム及びこれを用いた積層体に関する。
自動車用のヘッドレストやアームレスト、事務いすなどに軟質発泡ポリウレタンが使用されている。これまでは、発泡体を予め成形した後、該発泡体に表皮材を被せて生産されていた。しかしながら、このような方法で成形した場合、表皮材と発泡体が固定されていないため、触感がよくないといった問題があり、近年は、表皮材を予め成形品の外形形状に縫製して成形型を作製した後、この成形型内にポリウレタンを注入発泡させて成形品を製造している。
上述のように、成形型内にポリウレタンを注入発泡させて成形品を製造する際に、成形型内に注入したポリウレタンの原液が外部に滲み出すのを防ぐ手段として、特許文献1に記載のように、熱可塑性ポリウレタンからなるフィルムを、表皮材の内面に貼り合せることが知られている。
特許第2896145号公報
しかしながら、ポリウレタンフィルムを使用する場合、ポリウレタンフィルムは非常にすべりが悪いために、表皮材を縫製する際に不具合を起こしやすい。ポリウレタンフィルムの滑りを良くするためには通常スリップ材が添加されるが、スリップ材が添加されるとフィルム同士が密着(ブロッキング)し易くなり、次工程の加工時に、不具合が起こりやすくなる。特に、工業的な製造の場合は、ポリウレタンフィルムは巻物の状態で保管、運送されるため特にブロッキングの問題が起こりやすくなる。
本発明の目的は、上記問題点に鑑み、適度な柔軟性を有し且つブロッキングを生じることがなく良好な加工適性を持つ積層フィルム、及び、この積層フィルムを用いた積層体を提供することにある。
本発明の積層フィルムは、ポリオレフィン系樹脂層、接着性樹脂層及び熱可塑性ポリウレタン樹脂層がこの順序で積層一体化されてなり且つ10%伸長時のモジュラスが0.1〜3MPaであることを特徴とする。
上記ポリオレフィン系樹脂層を構成するポリオレフィン系樹脂としては、特に限定されず、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂などが挙げられ、積層フィルムが柔軟性に優れていることから、ポリエチレン系樹脂が好ましい。ポリエチレン系樹脂としては、例えば、超低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体などが挙げられ、ポリプロピレン系樹脂としては、例えば、ホモポリプロピレン、プロピレン−α−オレフィン共重合体などが挙げられる。なお、α−オレフィンとしては、例えば、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテンなどが挙げられる。
又、後述するように、本発明の積層フィルムは、そのポリオレフィン系樹脂層上に表皮材を積層一体化させて積層体として用いられる。この際、表皮材として、裏面がウレタンスラブフォームからなる表皮材を用い、積層フィルムと表皮材とを、フレームラミネート法を用いて、積層フィルムのポリオレフィン系樹脂層と表皮材のウレタンスラブフォームとが対向した状態に積層一体化させる場合には、ポリオレフィン系樹脂層とウレタンスラブフォームとの接着性を向上させるために、ポリオレフィン系樹脂層に、粘度平均分子量が500〜10000のポリオレフィン系樹脂(以下、「低分子量ポリオレフィン系樹脂」という)を含有させることが好ましい。
そして、上記低分子量ポリオレフィン系樹脂としては、特に限定されないが、例えば、超低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレンなどが挙げられ、これらの製造方法としては、チーグラー・ナッタ触媒を用いた合成方法やメタロセン触媒を用いた合成方法などが挙げられる。
又、上記低分子量ポリオレフィン系樹脂の粘度平均分子量は、小さいと、ポリオレフィン系樹脂全体の溶融粘度が低くなり過ぎて、ポリオレフィン系樹脂が押出機内でスクリューとバレルの間で滑り、ポリオレフィン系樹脂層を製膜するのが困難になることがある一方、大きいと、表皮材として、裏面がウレタンスラブフォームからなる表皮材を用い、積層フィルムと表皮材とを、フレームラミネート法を用いて、積層フィルムのポリオレフィン系樹脂層と表皮材のウレタンスラブフォームとが対向した状態に積層一体化させる場合、ポリオレフィン系樹脂層とウレタンスラブフォームとの接着性が低下することがあるので、500〜10000が好ましく、1000〜5000がより好ましい。
ここで、本発明におけるポリオレフィン系樹脂の粘度平均分子量(Mv)は、溶剤としてデカリンを使用して測定温度135℃における固有粘度(η)を測定し、下記式により算出したものをいう。
固有粘度(η)=6.2×10-4×Mv0.7 (Chiangの式)
なお、ポリオレフィン系樹脂の粘度平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定することもでき、具体的には、Waters社から商品名「Alliance GPC/V2000システム」にて市販されている分析装置を用いて測定することができる。
そして、上記ポリオレフィン系樹脂層中における低分子量ポリオレフィン系樹脂の含有量は、少ないと、表皮材として、裏面がウレタンスラブフォームからなる表皮材を用い、積層フィルムと表皮材とを、フレームラミネート法を用いて、積層フィルムのポリオレフィン系樹脂層と表皮材のウレタンスラブフォームとが対向した状態に積層一体化させる場合、ポリオレフィン系樹脂層とウレタンスラブフォームとの接着性が低下することがある一方、多いと、低分子量ポリオレフィン系樹脂を含むポリオレフィン系樹脂全体の溶融粘度が低くなり過ぎて、低分子量ポリオレフィン系樹脂を含むポリオレフィン系樹脂が押出機内でスクリューとバレルの間で滑り、ポリオレフィン系樹脂層を製膜するのが困難になることがあるので、ポリオレフィン系樹脂層を構成しているポリオレフィン系樹脂の全重量の0.1〜10重量%であることが好ましく、0.5〜5重量%であることがより好ましい。
又、上記低分子量ポリオレフィン系樹脂の密度は、小さいと、ポリオレフィン系樹脂中における分散性が低下することがある一方、大きいと、ポリオレフィン系樹脂中への溶解が不充分となることがあるので、0.90〜1.00g/cm3 が好ましい。なお、低分子量ポリオレフィン系樹脂の密度は、ASTM−D1505に準拠して測定されたものをいう。
上記熱可塑性ポリウレタン樹脂層を構成する熱可塑性ポリウレタン樹脂としては、特に限定されず、例えば、重量平均分子量が500〜4000の二官能性ポリオール(以下、単に「二官能性ポリオール」という)と、ジイソシアネートと、重量平均分子量が500未満の低分子量ジオール(以下「鎖伸長剤」という)とを主原料としてなり、分子構造中にウレタン基を含有する高分子のうち熱可塑性を有するものなどが挙げられる。
上記熱可塑性ポリウレタン樹脂は、鎖伸長剤とジイソシアネートとの反応によってできたハードセグメントと、二官能性ポリオールとジイソシアネートとの反応によってできたソフトセグメントからなるブロック共重合体であることが好ましい。
又、熱可塑性ポリウレタン樹脂は、使用される上記二官能性ポリオールなどの主原料の種類によって区別され、例えば、ポリエーテル系熱可塑性ポリウレタン樹脂、ポリエステル系熱可塑性ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート系熱可塑性ポリウレタン樹脂などが挙げられ、積層フィルムがその保管中に大気中に含まれる水分による加水分解を生じにくく、積層フィルムの経時的な劣化を抑えることができる点で、ポリエーテル系熱可塑性ポリウレタン樹脂が好ましい。これらの熱可塑性ポリウレタン樹脂は、単独で用いられてもよいし、2種類以上が併用されてもよい。又、本発明の効果を阻害しない範囲であれば、成形性を改善する目的や、貼り合わせた積層体のすべり性を改善する目的などで、熱可塑性ポリウレタン樹脂以外の材料を含有してもよい。
上記二官能性ポリオールとしては、特に限定されず、例えば、ポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、ポリカーボネート系ポリオールなどが挙げられ、単独で用いられても2種以上が併用されてもよい。
上記ポリエーテル系ポリオールとしては、例えば、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコールなどが挙げられ、1,2−エタンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、1,4−ブタンジオールなどを縮合重合させたり、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、テトラヒドロフランなどの環状エーテルの開環重合により得ることができる。
又、上記ポリエステル系ポリオールとしては、例えば、アジピン酸、セバシン酸、テレフタル酸などの二塩基酸と、低分子量ポリオールとの縮合重合により得られるポリエステルポリオール、ポリカプロラクトングリコールなどが挙げられる。
更に、上記ポリカーボネート系ポリオールとしては、例えば、ジメチルカーボネートやジエチルカーボネートなどのジアルキルカーボネート、ホスゲン、クロロギ酸エステル、ジアリルカーボネート、アルキレンカーボネートなどと、低分子量ポリオールとを縮合重合させて得られるポリカーボネートポリオールなどが挙げられる。
又、上記ジイソシアネートとしては、例えば、トルエンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ポリメリックMDI、トリレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加MDIなどが挙げられる。
上記鎖伸長剤としては、例えば、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、トリメチロールプロパン、ビスヒドロキシエトキシベンゼンなどが挙げられる。
そして、本発明の積層フィルムは、上記ポリオレフィン系樹脂層と上記熱可塑性ポリウレタン樹脂層とが接着性樹脂層を介して積層一体化されてなる。この接着性樹脂層を構成する接着性樹脂としては特に限定されず、低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンなどのポリエチレン系樹脂やポリプロピレン系樹脂などの無極性のポリオレフィン系樹脂に、変性剤により接着性を付与した変性ポリオレフィン系樹脂などが挙げられる。
上記変性剤としては不飽和カルボン酸又はその誘導体などが挙げられ、具体的には、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、テトラヒドロフタル酸などの不飽和カルボン酸、又は、それらの無水物、酸ハライド、アミド、イミド若しくはエステルなどの誘導体などが挙げられる。
そして、上記接着性樹脂の密度は、高いと、接着性樹脂が硬くなり、積層フィルムの柔軟性が低下することがあるので、0.92g/cm3 以下が好ましいが、低すぎると、積層フィルムの機械的強度が低下することがあるので、0.80〜0.92g/cm3 がより好ましい。なお、接着性樹脂の密度は、ASTM−D1505に準拠して測定されたものをいう。
更に、上記接着性樹脂における示差走査熱量分析(DSC)による融点は、高いと、積層フィルムの製膜時に接着性樹脂が接着性を発現しないことがあるので、130℃以下が好ましく、低すぎても、積層フィルムの製膜性が低下することがあるので、70〜130℃がより好ましい。なお、上記接着性樹脂における示差走査熱量分析(DSC)による融点は、ASTM−D2117に準拠して測定されたものをいう。
本発明の積層フィルムは、10%伸長時のモジュラスが0.1〜3MPaに限定される。これは、上記モジュラスが0.1MPa未満の場合は、後述する表皮材との貼り合せ時に積層フィルムにしわが発生してしまう不具合が発生する虞れがあり、逆に、上記モジュラスが3MPaを超えると、発泡時に表皮材が伸びず、設計どおりの形に成形できないことがあるからである。なお、積層フィルムの10%伸長時のモジュラスは、JIS K7127に準拠して500mm/分の速度で引っ張り試験を行って測定されたものをいう。
本発明の積層フィルムの製造方法としては特に限定されないが、例えば、粘度平均分子量が500〜10000のポリオレフィン系樹脂が必要に応じて含有されたポリオレフィン系樹脂、接着性樹脂及び熱可塑性ポリウレタン樹脂を、Tダイ法又はインフレーション法で共押出製膜する方法、粘度平均分子量が500〜10000のポリオレフィン系樹脂が必要に応じて含有されたポリオレフィン系樹脂、及び、熱可塑性ポリウレタン樹脂を、Tダイ法又はインフレーション法でそれぞれポリオレフィン系樹脂フィルムと熱可塑性ポリウレタン樹脂フィルムに製膜し、このポリオレフィン系樹脂フィルム及び熱可塑性ポリウレタン樹脂フィルムとの間に、接着性樹脂フィルムを押出機から押出して、上記接着性樹脂フィルムを介してポリオレフィン系樹脂フィルムと熱可塑性ポリウレタン樹脂フィルムとを連続的に積層一体化させる方法などが挙げられ、積層フィルムのすべり性の観点から、Tダイ法を用いることにより製膜し、熱可塑性ポリウレタン樹脂層にエンボスを形成する方法が好ましい。又、後述する表皮材との接着性を向上させる目的で、積層フィルムのポリオレフィン系樹脂層にコロナ放電処理、プラズマ処理、その他各種コーティング剤を施してもよい。
そして、上記積層フィルムは表皮材の裏面に積層一体化されて積層体として、好ましくは、上記積層フィルムはそのポリオレフィン系樹脂層を表皮材の裏面に対向させた状態にして表皮材に積層一体化されて積層体として用いられる。
このような表皮材としては、特に限定されず、例えば、皮革;ポリ塩化ビニルなどからなる合成皮革;布などの表皮層の裏面にバッキング材及びウレタンスラブフォームがこの順序で積層一体化されてなるものなどが挙げられる。なお、上記バッキング材を構成する材料としては、通常、ポリアクリル酸エステル、ブタジエンゴムなどの混合物が挙げられる。上記バッキング材は、必要に応じて積層されればよい。
上記積層体の製造方法としては、特に限定されないが、例えば、表皮材の裏面を加熱、溶融し、この溶融面に積層フィルムを積層一体化させるフレームラミネート法、表皮材の裏面に接着剤を介して積層フィルムを積層一体化させるドライラミネート法などが挙げられる。
ここで、表皮材として、裏面がウレタンスラブフォームからなる表皮材を用いる場合には、積層フィルムのポリオレフィン系樹脂層に低分子量ポリオレフィン系樹脂を含有させた上で、フレームラミネート法を用いて、積層フィルムと表皮材とを、ポリオレフィン系樹脂層とウレタンスラブフォームとが対向した状態となるように積層一体化させることが好ましい。
そして、上記積層体を用いて成形品を製造する方法としては、積層体を成形品の外形形状に合致した状態に縫製して成形型を作製した後、この成形型内にポリウレタンを注入発泡させることによって所望形状を有する成形品を製造することができる。
この際、表皮材の裏面には積層フィルムが積層一体化されていることから、上記成形型内に注入したポリウレタンが表皮材に滲み出すようなことはなく、成形型内において充分な発泡圧でもってポリウレタンを発泡させることができる。
又、上記積層フィルムをそのポリオレフィン系樹脂層が表皮材の裏面に対向された状態に表皮材に積層一体化して積層体として用いる場合には、成形型の内面は、積層フィルムの熱可塑性ポリウレタン樹脂層から形成されているので、発泡ポリウレタンと積層体とを強固に一体化させ、積層体と発泡ポリウレタンとの密着性に優れた成形品を得ることができる。
本発明の積層フィルムは、上述の如き構成を有しているので、保管又は運搬のために円柱状に巻回された場合にあっても、熱可塑性ポリウレタン樹脂層はポリオレフィン系樹脂層を介在させた状態に円柱状に巻回され、内外方向に隣接する熱可塑性ポリウレタン樹脂層同士が密着するようなことはなくブロッキングは発生しない。従って、巻回状態の積層フィルムを巻き出す場合にあっても、内外方向に隣接する積層フィルム同士がブロッキングするようなことはなく、巻回状態の積層フィルムを円滑に巻き出し使用することができる。
そして、本発明の積層フィルムは、所定範囲のモジュラスを有し、適度な柔軟性及び伸長性を備えていると共に、熱可塑性ポリウレタン樹脂層が発泡ポリウレタンとの密着性に優れている。従って、表皮材の裏面に積層フィルムをそのポリオレフィン系樹脂層が表皮材に対向した状態に積層一体化してなる積層体を、成形品の外形形状に合致した状態に縫製して成形型を作製し、この成形型内にポリウレタンを注入発泡させることにより、発泡ポリウレタンの表面に積層フィルムを介して表皮材が強固に積層一体化してなる所望形状の成形品を精度良く得ることができる。
又、本発明の積層フィルムにおいて、熱可塑性ポリウレタン樹脂がポリエーテル系熱可塑性ポリウレタン樹脂である場合、ポリエーテル系熱可塑性ポリウレタン系樹脂は、大気中に含まれている水分による加水分解が起こりにくく、積層フィルムがその保存中に劣化してしまうのを抑えることができ、積層フィルムを長期間に亘って良好な品質に保持しておくことができる。
更に、本発明の積層フィルムのポリオレフィン系樹脂層に、粘度平均分子量が500〜10000の低分子量ポリオレフィン系樹脂を含有させている場合には、表皮材として、裏面がウレタンスラブフォームからなる表皮材を用いた時に、ウレタンスラブフォームとポリオレフィン系樹脂層との接着性が向上し、その結果、フレームラミネート法によって、積層フィルムと表皮材とをポリオレフィン系樹脂層とウレタンスラブフォームとが対向した状態に強固に積層一体化させることができる。従って、このようにして得られた積層体によれば、表皮材と積層フィルムとが剥離するようなことのない優れた品質の成形品を製造することができる。
以下に実施例を挙げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
(実施例1)
ポリエーテル系熱可塑性ポリウレタン樹脂(DICバイエルポリマー社製 商品名「パンデックス」、ショア硬度:85A)、接着性樹脂(三井化学社製 商品名「アドマー」、密度:0.90g/cm3 、示差走査熱量分析による融点:122℃)、直鎖状低密度ポリエチレン(出光石油化学社製 商品名「モアテック」)をTダイ法にて共押出製膜して、熱可塑性ポリウレタン樹脂層と直鎖状低密度ポリエチレン層とが接着性樹脂層を介して積層一体化してなる厚さが30μmの積層フィルムを得た。なお、熱可塑性ポリウレタン樹脂層の厚さは10μm、接着性樹脂層の厚さは10μm、直鎖状低密度ポリエチレン層の厚さは10μmであった。
ポリエステル系繊維からなる布の裏面にポリアクリル酸エステル層及びウレタンスラブフォームがこの順序で積層一体化されてなる表皮材を用意し、この表皮材のウレタンスラブフォームを炎であぶって溶融させ、この溶融したウレタンスラブフォーム上に積層フィルムをその直鎖状低密度ポリエチレン層が対向した状態に積層一体化させて積層体を得た。
(実施例2)
直鎖状低密度ポリエチレンの代わりに、超低密度ポリエチレン(東ソー社製 商品名「ルミタック」)を用いたこと以外は実施例1と同様にして積層フィルムを作製し、この積層フィルムを用いて実施例1と同様の要領で積層体を得た。
(実施例3)
直鎖状低密度ポリエチレンの代わりに、エチレン−酢酸ビニル共重合体(東ソー社製 商品名「ウルトラセン」)を用いたこと以外は実施例1と同様にして積層フィルムを作製し、この積層フィルムを用いて実施例1と同様の要領で積層体を得た。
(実施例4)
直鎖状低密度ポリエチレン(出光石油化学社製 商品名「モアテック」)の代わりに、直鎖状低密度ポリエチレン(プライムポリマー社製 商品名「エボリュー」)100重量部及び低分子量ポリエチレン(三井化学社製 商品名「エクセレックスM−2」、密度:0.980g/cm3 、粘度平均分子量:4000)2重量部からなるポリオレフィン系樹脂組成物を用いたこと以外は実施例1と同様にして積層フィルムを作製し、この積層フィルムを用いて実施例1と同様の要領で積層体を得た。
(実施例5)
三井化学社から商品名「エクセレックスM−2」で市販されている低分子量ポリエチレンの代わりに、三井化学社から商品名「エクセレックスM−4」(密度:0.902g/cm3 、粘度平均分子量:4600)で市販されている低分子量ポリエチレンを用いたこと以外は実施例4と同様にして積層フィルムを作製し、この積層フィルムを用いて実施例4と同様の要領で積層体を得た。
(比較例1)
積層フィルムのかわりに、低密度ポリエチレン(旭化成ケミカルズ社製 商品名「サンテック−LD」)からなる厚さが30μmのフィルムを用いたこと以外は実施例1と同様にして積層体を得た。
(比較例2)
熱可塑性ポリウレタン樹脂として、ポリエーテル系熱可塑性ポリウレタン樹脂(DICバイエルポリマー社製 商品名「パンデックス」、ショア硬度:98A)を用いたこと以外は実施例1と同様にして積層フィルムを作製し、この積層フィルムを用いて実施例1と同様の要領で積層体を得た。
(比較例3)
積層フィルムのかわりに、ポリエステル系熱可塑性ポリウレタン樹脂(DICバイエルポリマー社製 商品名「パンデックス」、ショア硬度:85A)からなる厚さが30μmのフィルムを用いたこと以外は実施例1と同様にして積層体を得た。
得られた積層フィルム、低密度ポリエチレンフィルム、及び、ポリエステル系熱可塑性ポリウレタン樹脂フィルムにおける10%伸長時のモジュラス、成形性、密着性、保存性、並びに、耐加水分解性を下記に示した方法にて測定し、その結果を表1に示した。
(10%伸長時のモジュラス)
積層フィルム、低密度ポリエチレンフィルム、及び、ポリエステル系熱可塑性ポリウレタン樹脂フィルムから、縦40mm×横10mmの平面長方形状の試験片を作製し、引張試験機(東洋精機製作所製)を用いて、JIS K7127に準拠して『500mm/分』の速度で試験片の引っ張り試験を行って10%伸長時のモジュラスを測定した。
(成形性及び密着性)
積層体から長さ400mm×幅200mmの平面長方形状の帯状体を切り出し、この帯状体をその長さ方向の中央部から二つ折りすると共に幅方向の両端部を全長に亘って縫製することによって袋状の成形型を作製した。なお、袋状の成形型の外面が表皮材となるようにした。
次に、上記袋状の成形型内にポリウレタン樹脂を注入発泡させて成形品を作製した。この成形品に基づいて成形性を下記基準に基づいて評価した。しかる後、成形品から幅25mm、長さ200mmの試験片を切り出し、この試験片の表皮材と発泡ポリウレタンとを手で引きはがし下記の基準に基づいて密着性を評価した。
〔成形性〕
○・・・所望形状の成形品であった。
×・・・積層フィルムの伸びが悪く、所望形状の成形品ではなかった。
〔密着性〕
○:発泡ポリウレタンが材破した。
×:発泡ポリウレタンが材破せずに発泡ポリウレタンの表面からフィルムが剥がれた。
(保存性)
積層フィルム、低密度ポリエチレンフィルム、及び、ポリエステル系熱可塑性ポリウレタン樹脂フィルムのそれぞれから、幅1600mm、長さ500mの長尺状の帯状体を作製し、この帯状体を巻取り軸に円柱状に巻回した。次に、この円柱状に巻回された帯状体を45℃にて168時間に亘って放置した後、上記帯状体を巻取り軸から巻き出した際におけるブロッキングの有無を目視観察し、ブロッキングを生じなかった場合を○、ブロッキングを生じた場合を×として保存性の評価とした。
(耐加水分解性)
積層フィルム、低密度ポリエチレンフィルム、及び、ポリエステル系熱可塑性ポリウレタン樹脂フィルムのそれぞれから、縦40mm×横10mmの平面長方形状の試験片を作製した。そして、引張試験機(東洋精機製作所製 商品名「ストログラフE−L」)を用いて、JIS K7127に準拠して500mm/分の速度条件下にて試験片の引張試験を行って、試験片の破断時における引張強度及び引張伸度を測定した(なお、表1では「浸漬前」と表記した)。
次に、上記試験片を100℃の水中に168時間浸漬した後、引張試験機(東洋精機製作所製 商品名「ストログラフE−L」)を用いて、JIS K7127に準拠して500mm/分の速度条件下にて試験片の引張試験を行って、試験片の破断時における引張強度及び引張伸度を測定した(なお、表1では「浸漬後」と表記した)。
Figure 2007176144

Claims (6)

  1. ポリオレフィン系樹脂層、接着性樹脂層及び熱可塑性ポリウレタン樹脂層がこの順序で積層一体化されてなり且つ10%伸長時のモジュラスが0.1〜3MPaであることを特徴とする積層フィルム。
  2. 接着性樹脂層を構成している接着性樹脂は、その密度が0.92g/cm3 以下で且つ示差走査熱量分析(DSC)による融点が130℃以下であることを特徴とする請求項1に記載の積層フィルム。
  3. 熱可塑性ポリウレタン樹脂は、ポリエーテル系熱可塑性ポリウレタン樹脂であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の積層フィルム。
  4. ポリオレフィン系樹脂層中に、粘度平均分子量が500〜10000のポリオレフィン系樹脂が、ポリオレフィン系樹脂層を構成するポリオレフィン系樹脂の全重量の0.1〜10重量%含有されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の積層フィルム。
  5. 請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の積層フィルム上に表皮材が積層一体化されてなることを特徴とする積層体。
  6. ポリウレタンを注入発泡させてなる成形体に用いられることを特徴とする請求項5に記載の積層体。
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