以下、本発明に係る電子部品実装方法及び装置の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1はランドの形成された回路基板にクリーム半田を印刷して電子部品を実装するまでの工程を概略的に示す図である。本実施形態においては、まず、回路基板をクリーム半田印刷装置100に供給して、回路基板上のランド位置に対応させてクリーム半田を印刷する。次いで後段の検査装置200によって、ランドとクリーム半田とを認識して双方の位置ずれ等を検査する。この検査結果は更に後段の電子部品実装装置300に送信されると共に、クリーム半田が印刷された回路基板は電子部品実装装置300に供給される。電子部品実装装置300は、供給された回路基板に対して、検査装置200から送信された検査結果に基づいて電子部品の実装位置を補正し、この補正した位置に電子部品を実装する。以上が基本的な回路基板の製造工程の内容であるが、本発明は、回路基板に印刷されたクリーム半田の印刷位置を基準として電子部品を実装することを特徴としている。なお、本明細書において、クリーム半田とは、粉末半田を高粘性フラックスに混ぜ合わせたペースト状の半田をいう。
ここで、電子部品をクリーム半田印刷位置を基準として実装する本発明の電子部品実装方法の原理を詳細に説明する。図2は回路基板上のランドと印刷されたクリーム半田と実装される電子部品との位置関係を示す図で、図3及び図4は実装された電子部品のセルフアライメント効果をそれぞれ図2のP−P断面で説明する説明図である。
図2に示すように、ここでは回路基板12上に形成されたランド14a,14b上に、クリーム半田16a,16bがランド中心線Llから距離ΔLだけずれた位置に印刷されている。この場合、電子部品18はクリーム半田16a,16bの位置に合わせて実装され、クリーム半田16a,16bの中心線Lcが電子部品の中心線Lpに略一致している。この状態でリフロー処理すると、クリーム半田が溶融してランド上を流動する。この流動の初期段階においては、図3(a)に示すように、半田20は一般的に毛管浸透時に見られる"浸せきぬれ"によってぬれ広がる。そして、図3(b)に示すように半田20が電子部品18の両端面18a,18aまでぬれ広がると、部品端面側の半田のぬれ広がりが止まり、ランド14側の半田だけがぬれ広がるようになる。すると半田20は、力学的につり合う安定状態となるように電子部品18を矢印方向に移動させる。これがセルフアライメント効果として作用して、電子部品18は最終的に、図3(c)に示すようにランド14の中心線Llと電子部品18の中心線Lpとが一致する位置に配置される。
また、このセルフアライメント効果は、図4に示すように作用する場合もある。即ち、図4(a)、(b)に示すように半田20が溶融すると、"浸せきぬれ"によるぬれ広がりと共に電子部品18が移動して、これによりセルフアライメント効果が得られる。そして、図4(c)に示すようにランド14上における半田20のぬれ広がりが終了し、半田20が力学的につり合った安定状態になると電子部品18の移動も停止する。従って、電子部品18は最終的にランド14の中心線Llと電子部品18の中心線Lpとが一致する位置に配置されることになる。
このようなセルフアライメント効果は、ランド位置を目標実装位置として電子部品を実装する場合、例えば50μm以上の位置決めずれが生じたときに電子部品の位置ずれが補正される確率は50%程度となる。一方、印刷されたクリーム半田位置を目標実装位置として電子部品を実装する場合、同じく50μm以上の位置決めずれが生じても、セルフアライメント効果により80〜90%の確率で位置ずれが補正される。
次に、上記セルフアライメント効果を利用して電子部品を実装させるための電子部品実装システムの一構成例を以下に説明する。本実施形態のクリーム半田印刷装置100,検査装置200,電子部品実装装置300の具体的な構成は次の通りである。まず、本実施形態のクリーム半田印刷装置(以降、印刷装置と略記する)としては、例えば図5に示す構成のものが使用できる。図5は印刷装置100の一部を切り欠いて示した外観斜視図である。印刷装置100は、クリーム半田の印刷対象である回路基板12を印刷装置100内に搬入・搬出する回路基板搬送部22と、搬入された回路基板12を載置して印刷用マスク24の下面に移動するテーブル部26と、印刷用マスク24の下面に位置決めされた回路基板12の上方でスキージ28a,28bによりクリーム半田を印刷する印刷部30とを備えて構成される。
この印刷装置100によれば、回路基板12は次のように搬送される。即ち、回路基板搬送部22は、ストッカやラインから搬入された回路基板12を受け取り、印刷装置100内部に配置されたテーブル部26に回路基板12を供給する。そして、テーブル部26は、供給された回路基板12を位置決め固定して、印刷部30の印刷用マスク24下面の所定位置に移動させる。また、印刷部30による印刷処理が終了すると、テーブル部26は回路基板12を印刷部30から回路基板搬送部22まで搬送する。その後、回路基板搬送部22は、テーブル部26から回路基板12を取り出して、図示しない搬送出口に回路基板12を排出する。
ここで、図6にテーブル部26の詳細な構成を示した。テーブル部26は、回路基板12を狭持部材32により固定して、図に示すX、Y、Z、θ方向にモータ制御により移動・回転可能な基板載置台34と、回路基板12上の位置合わせマーク認識用の基板認識カメラ36と、印刷用マスク24上の位置合わせマーク認識用のマスク認識カメラ38とを備えている。
基板認識カメラ36は、回路基板搬送部22によりテーブル部26に供給された印刷対象となる回路基板12上に予め設けられた位置合わせマークを撮像する。この撮像画像を画像処理してマーク位置を認識することで回路基板12の位置を正確に管理し、印刷のための所定位置に高精度で位置決めする。
また、マスク認識カメラ38は、印刷用マスク24に予め設けられた位置合わせマークを撮像する。この撮像画像を画像処理してマーク位置を認識することで、印刷用マスク24の穿孔パターンに応じた適正位置に回路基板12を高精度で位置決めする。なお、上述の回路基板搬送部22及びテーブル部26は、一般的に広く用いられているローダ、アンローダ、及び4軸ステージを用いることで構成できる。
図7には印刷部30を一部断面で表示した斜視図を示した。印刷部30は、狭持部材32により基板載置台34上に固定された回路基板12を印刷用マスク24の下側に配置した状態で、印刷用マスク24の上側で一対のスキージ28a,28bを前後の両印刷方向に移動させことで、回路基板12にクリーム半田を印刷する。ここで、後方向印刷時にはスキージ28aが使用され、前方向印刷時にはスキージ28bが使用される。
上記構成の印刷装置100を用いて回路基板12に形成されたランド位置にクリーム半田を印刷した後、印刷済みの回路基板12が印刷装置100から取り出され、後段の検査装置200に供給される。次に、検査装置の構成を説明する。図8は検査装置200の構成を一部切り欠いて示す外観斜視図である。検査装置200は、回路基板に印刷されたクリーム半田の印刷位置を検出する印刷位置検出装置が含まれる。この検査装置200は、供給された回路基板12を搬送する基板搬送部40と、検査位置42で静止させた回路基板12に対して斜め方向から照明する蛍光灯等の光源44,44と、回路基板12の上方から基板面を撮像する撮像カメラ46とを備えている。この検査装置200では、光源44,44により照明された回路基板12を撮像カメラ46で撮像し、これにより得られた撮像画像を、検査装置200内に配置されたコントローラ(図示せず)により画像処理することで、回路基板12の各ランドと、印刷されたクリーム半田とを検出し、対応する双方のずれ量等を求めている。求められたずれ量等の情報は、コントローラに一旦保存されて後段の電子部品実装装置300に検査結果として送信される。また、この検査結果はクリーム半田印刷装置100にフィードバックされ、クリーム半田の印刷位置ずれをいち早く補正するようにクリーム半田印刷装置100が調整される。
次に、電子部品実装装置の構成を説明する。図9に電子部品実装装置の斜視図、図10に電子部品実装装置の移載ヘッドの拡大斜視図、図11に電子部品実装装置を制御する制御装置の構成を示すブロック図、図12に電子部品実装装置に使用される実装データの構成を示すブロック図を示した。この電子部品実装装置300の構成を簡単に説明すると、図9に示すように、電子部品実装装置300は、基台50上面中央に、回路基板12のガイドレール52が設けられ、このガイドレール52の搬送ベルトによって回路基板12は一端側の基板搬入部54から電子部品の実装位置56に、また、実装位置56から他端側の基板搬出部58に搬送される。回路基板12上方の基台50上面両側部には、Yテーブル60,62がそれぞれ設けられ、これら2つのYテーブル60,62の間には、Xテーブル64が懸架されている。また、Xテーブル64には移載ヘッド66が取り付けられており、これにより移載ヘッド66をX−Y平面内で移動可能にしている。
上記Xテーブル64、Yテーブル60,62からなるXYロボット上に搭載され、X−Y平面(水平面)上を自在移動する移載ヘッド66は、例えば抵抗チップやチップコンデンサ等の電子部品が供給される部品供給ユニット68、又はSOPやQFP等のICやコネクタ等の比較的大型の電子部品が供給される部品供給トレイ70から、所望の電子部品を吸着ノズル72により保持して、認識装置74により電子部品の吸着姿勢を検出した後、回路基板12の所定位置に実装するように構成されている。このような電子部品の実装動作は、予め設定された実装プログラム(実装データと総称する)に基づいて制御装置により制御される。なお、制御装置には操作パネル76により直接的にデータ入力が可能である。
部品供給ユニット68は、ガイドレール52の両端部に多数個並設されており、各部品供給ユニット68には、例えば抵抗チップやチップコンデンサ等の電子部品が収容されたテープ状の部品ロールがそれぞれ取り付けられている。また、部品供給トレイ70は、ガイドレール52と直交する方向が長尺となるトレイ70aが計2個載置可能で、各トレイ70aは部品の供給個数に応じてガイドレール52側にスライドして、Y方向の部品取り出し位置を一定位置に保つ構成となっている。
ガイドレール52に位置決めされた回路基板12の側部には、吸着ノズル72に保持された電子部品の二次元的な位置ずれ(吸着姿勢)を検出して、この位置ずれを移載ヘッド66側で補正させるための認識装置74が設けられている。認識装置74の内側底部には姿勢認識カメラが設けられ、この姿勢認識カメラ周囲の筐体内面には、吸着ノズル72に保持された電子部品を照明するための発光ダイオードLED等の発光素子が多段状に複数設けられている。これにより、電子部品の実装面に対して所望の角度から光を照射することができ、部品種類に応じて適切な照明角度で撮像できる。この照明角度は、予め設定される部品認識用のデータによって電子部品毎に設定される。また、得られた認識装置74による撮像データは、制御装置により認識処理がなされ、電子部品の中心位置や電極位置等が認識され、実装位置や角度の補正データに供される。
移載ヘッド66は、図10に示すように、複数個(本実施形態では4個)の装着ヘッド(第1装着ヘッド78a,第2装着ヘッド78b,第3装着ヘッド78c,第4装着ヘッド78d)を横並びに連結した多連式ヘッドとして構成している。4個の装着ヘッド78a〜78dは同一構造であって、吸着ノズル72と、吸着ノズル72に上下動作を行わせるためのアクチュエータ80と、吸着ノズル72自体を回転させるためのモータ82、タイミングベルト84、プーリ86とを備えている。各装着ヘッドの吸着ノズル72は交換可能であり、他の吸着ノズルは電子部品実装装置300の基台50上のノズルストッカ88に予め収容されている。吸着ノズル72には、例えば1.0×0.5mm程度の微小チップ部品を保持するSサイズノズル、18mm角のQFPを保持するMサイズノズル等があり、装着する電子部品の種類に応じて選定されて用いられる。
ここで、制御装置は、図11に主要な構成をブロック図で示すように、認識装置74の姿勢認識カメラからの画像信号をデジタル変換して取り込むと共に、検査装置200からの検査結果を取り込むI/O処理回路90と、I/O処理回路90を介してデジタルデータを取り込み、画像処理等の各種情報処理を行うマイクロコンピュータ92と、画像データを記憶する画像メモリ94と、予め定めた制御プログラムを実行するための各種実装データを記憶しているデータベース96とを備えている。また、制御装置は、マイクロコンピュータ92からの指令により図9に示すXYロボットのX軸、Y軸移動制御用のモータ98a,98b、及び図11に示す装着ヘッド78a〜78dのZ軸移動制御用のモータ98c(アクチュエータ80)、θ軸移動制御用のモータ98d(モータ82)を駆動するためのX軸、Y軸、Z軸、θ軸駆動用のドライバ99a〜99dを備えている。
さらに、制御装置は、少なくとも回路基板12に電子部品を実装する実装動作を行うための実装データが格納された情報記憶媒体(例えば、磁気記録媒体、光磁気記録媒体、光記録媒体等、あるいは、フラッシュメモリ等の固体記憶素子)110から、この実装データを読み取る読み取り装置112を備えている。なお、この情報記録媒体110による実装データの提供は、通信回線としてのネットワークを介して行うものであってもよい。
なお、上記実装データとしては、図12に示すように回路基板12への実装位置、部品供給ユニット68や部品供給トレイ70における部品供給位置、実装順序等の情報が記録されたNCプログラム114、各部品供給位置への電子部品の割り付けの情報が記録された配列プログラム116、電子部品の形状に関する情報が記録された部品ライブラリ118、回路基板の位置合わせ用マーク等の基板マーク形状に関する情報が記録されたマークライブラリ120、回路基板の形状やランド形状の情報が記録された基板データ122等が存在する。
次に、上記構成の電子部品実装装置300による実装動作を説明する。まず、前述の検査装置200から搬出された回路基板12をガイドレール52の基板搬入部54から装置内に搬入し、回路基板12を所定の実装位置56に搬送する。また、検査装置200から送信される検査結果を制御装置に入力する。次いで、移載ヘッド66をXYロボットによりXY平面内で移動させ、部品供給ユニット68又は部品供給トレイ70から予め設定された実装プログラムに基づいて所定の電子部品を吸着保持する。そして、電子部品を保持したまま移載ヘッド66を認識装置74の姿勢認識カメラ上に移動し、電子部品の吸着姿勢を認識させる。これにより、吸着ノズル72と吸着保持された電子部品との位置関係を検出する。そして、検査装置200から入力された検査結果に基づいて、電子部品の目標実装位置を、通常用いられるランド位置からクリーム半田の印刷位置に変更すると共に、認識された吸着姿勢による吸着ノズル72と電子部品との位置ずれを補正し、電子部品を回路基板12上に実装する。
なお、目標実装位置の変更動作及び認識された吸着姿勢に応じた補正動作としては、例えばX方向及びY方向へのずれ量をXYロボットにオフセットとして持たせ、回転成分のずれ量を吸着ノズル72をモータ82により回転させることで行える。
ここで、検査装置200から入力された検査結果に基づき、電子部品の目標実装位置を通常用いられるランド位置からクリーム半田の印刷位置に変更する手順を図13に示すフローチャートを用いて詳細に説明する。まず、印刷装置100に回路基板12を搬入して、この回路基板12に形成された各ランドに対応してクリーム半田を印刷する(S10)。そして、印刷装置100から回路基板12を搬出し、後段の検査装置200に搬入する。
この検査装置200では、図14に検査内容の概略を示すように、回路基板12に形成されたランド14と、このランド14を目標位置に印刷されたクリーム半田16とを光源44により照明し、撮像カメラ46で撮像する。そして、得られた撮像画像を、各画素の輝度差等からランド部分126とクリーム半田部分128とに画像処理により分離させ、クリーム半田16と回路基板12との間に挟まれて撮像されなかったランドの欠落部分を、予め用意されランド形状の登録されたランドデータを用いて補間処理して再現する。これは例えば、欠落部分以外のランドの形状特徴点(撮像されている角部や辺等のエッジ成分)を正確に検出し、検出した形状特徴点の位置から、ランドデータに登録されたランド形状と照合しつつ残りの形状特徴点の位置を推定することで、完全なランド形状を正確に再現することができる。
次に、このようにして分離・再現したランド形状の中心位置を測定する(S11)。ここでは図15に示すように、回路基板12の対角線位置に設けられた位置合わせ用の基板マーク130(或いは他の目的で設けた個別マークであってもよい)のいずれかを基準位置として、回路基板12のランド14a,14bの各重心位置OL1(x1,y1)、OL2(x2,y2)を測定する。そして、これら重心位置OL1、OL2を結ぶ中点をランド中心点OL(xL,yL)とする。
また、同様にして、分離されたクリーム半田部分128から半田印刷位置を測定する(S12)。ここでは図16に示すように、回路基板12に印刷されたクリーム半田16a,16bの各重心位置OC1(x3,y3)、OC2(x4,y4)を測定する。そして、これら重心位置OC1、OC2を結ぶ中点をクリーム半田中心点OC(xC,yC)とする。このようにして、ランド中心位置OLとクリーム半田中心位置OCが求まるので、これら中心位置OL,OCからX方向及びY方向のずれ量α、βを求める(S13)。
次に、得られたずれ量α、βを予め設定された所定のずれ許容値と比較して(S14)、ずれ量α、βがずれ許容値以上である場合には、図17に示すように回転方向に対してもずれが生じている可能性があるため、回転方向のずれ量θを測定する(S15)。ここで、ずれ量θは、例えば(1)式により求められる。
θ=tan-1{(y3+y4)/(x3−x4)} (1)
なお、ずれ量α、βがずれ許容値より小さい場合には、この回転方向のずれ量θの測定を省略してθ=0とみなすが、ずれ量α、βがずれ許容値より小さい場合でも回転方向のずれ量θを積極的に求めるようにしてもよい。
以上、ランド位置とクリーム半田印刷位置との間のX方向、Y方向、回転方向に対するずれ量α、β、θを用いて、図2に示すように電子部品18をクリーム半田印刷位置を基準として実装する(S16)。即ち、ランド14a,14bに対してα、β、θのずれ量を伴って印刷されたクリーム半田16a,16bの中心位置に電子部品18の中心位置が一致するように、電子部品実装装置300のXYロボットや装着ヘッドに搭載されるX軸モータ98a,Y軸モータ98b、Z軸モータ98c、θ軸モータ98d(図11参照)を制御することで電子部品18を実装する。
上記目標実装位置の変更は、電子部品実装装置300側で電子部品実装時に逐次変更することで行う以外にも、例えば図12に示す実装データのNCプログラム114に記録された実装位置を変更することでも行える。また、α、β、θの各ずれ量に対して100%補正するように目標実装位置を変更する以外にも、ずれ量に対して0〜100%の間で任意の割合だけ変更するものとしてもよい。この場合、微妙な条件で変化するセルフアライメント効果を最大限活かされるように微調整が行え、最適な実装状態を得ることができる。
以上説明した電子部品実装方法によれば、印刷位置検出工程により出力される印刷位置の検出結果を実装工程へフィードフォワード制御することで、クリーム半田印刷位置検出対象となった回路基板に対して電子部品の目標実装位置をクリーム半田印刷位置基準として即時に設定することができる。また、一旦実装した電子部品がリフロー処理により正規のランド位置に移動するセルフアライメント効果が最大限に発揮され、たとえ電子部品の実装間隔の狭い回路基板であっても、電子部品端子の側面に不必要に半田がぬれ広がることによるブリッジの発生が防止され、実装済み回路基板の品質を高い水準に維持でき、高密度な電子部品の実装が安定して可能となる。また、電子部品毎に最適な目標実装位置を設定できるため、実装精度を向上させることができる。なお、本電子部品実装方法においては、ランド位置を測定することなく、単にクリーム半田の印刷位置だけを検出して、このクリーム半田印刷位置を目標実装位置として電子部品を実装するようにしてもよい。
次に、本発明に係る電子部品実装方法の第2実施形態を説明する。上記第1実施形態においては、回路基板に実装される各電子部品それぞれに対し、ランド位置とクリーム半田印刷位置をそれぞれ電子部品毎に検出して、これら双方のずれ量を求めて電子部品の実装位置を変更していたが、本実施形態においては、回路基板に実装される電子部品全てに対し、ランド位置と印刷されたクリーム半田の位置とのずれ量をそれぞれ求め、これら各電子部品に対するずれ量の平均値を求め、得られたずれ量の平均値に基づいて、回路基板への電子部品実装位置を一括して変更している。
ここで、具体的な変更手順を以下に説明する。例えば回路基板上にN個の電子部品を実装する場合、実装データとしてのNCデータに対して、各ずれ量が実装順に次のように設定される。
データ1:α1,β1,θ1データ2:α2,β2,θ2データ3:α3,β3,θ3…データN:αN,βN,θN
これらずれ量からX方向補正値、Y方向補正値、θ方向補正値を(2)式〜(4)式を用いて設定する。
X方向補正値=(α1+α2+α3+…+αN)/N (2)
Y方向補正値=(β1+β2+β3+…+βN)/N (3)
θ方向補正値=(θ1+θ2+θ3+…+θN)/N (4)
(2)式〜(4)式の各補正値を回路基板に実装する電子部品全てに対して適用し、目標実装位置を一括に変更して実装する。これにより、各電子部品それぞれに対して個別に実装位置を変更する場合と比較して、全体的な計算処理量が軽減され、実装動作の高速化が図られる。
次に、本発明に係る電子部品実装方法の第3実施形態を説明する。上記第2実施形態においては、回路基板に印刷されたクリーム半田のランドからのずれ量を平均化して、全電子部品に対して一元的に目標実装位置を変更しているが、本実施形態においては、回路基板を任意の数のブロックに分割し、各ブロックに対して、ずれ量の平均値をそれぞれ求め、得られた各ブロックの平均値を用いて、それぞれのブロック毎に電子部品の実装位置を変更している。
ここで、回路基板を任意の数のブロックに分割するパターンとしては、例えば図18に示す分割パターンが挙げられる図18(a)は、回路基板の周縁から中心に向けて環状に領域分割した一例で、図18(b)は、回路基板を格子状に領域分割した一例を示している。図18(a)に示す分割パターンでは、回路基板の中央部(領域C)のずれ量は小さく、周縁部(ブロックA)ほどずれ量が大きくなる傾向がある場合であって、ブロックC内の小さなずれ量は小さい値の補正値を、ブロックA内の大きなずれ量は大きい値の補正値を用いて電子部品の目標実装位置をそれぞれ設定する。また、図18(b)に示す分割パターンでは、角部(例えばブロックA)がずれ量が小さく、角部から離れるにつれ、ずれ量が大きくなる傾向がある場合であって、ブロックA内では小さな値の補正値を、他のブロックではそれぞれ大きな値の補正値を用いて目標実装位置を設定する。
具体的には、いま、領域分割の数(ブロック数)をM、各ブロック内の実装部品数をNaj(jは1〜M)とすると、各ブロックでの設定ずれ量(補正値)αi、βi、θi(iは1〜M)は、(5)〜(7)式で表される。
αi=(αij+…+αiMNaj)/Naj (5)
βi=(βij+…+βiMNaj)/Naj (6)
θi=(θij+…+θiMNaj)/Naj (7)
ここで、αij、βij、θijは、ブロックi内のj番目の電子部品に対するずれ量である。
このように、各ブロックに対して個別に補正値を設定することにより、ずれ量の小さいブロックの目標実装位置が、ずれ量の大きいブロックの影響を受けてずれが大きくなることが防止され、回路基板全体にわたって均等な位置合わせ精度で実装を行うことができる。
次に、本発明に係る電子部品実装方法の第4実施形態を説明する。本実施形態においては、図19に示すように、実装する電子部品の重量や形状、使用するクリーム半田の材料組成、摩擦性、粘性、半田粉径、融点、フラックス成分(レジンベース、有機物ベース、無機物ベース)、フラックス活性度、印刷厚さ等の各種パラメータをテーブル化し、このテーブルを用いて実際に使用する電子部品の種類及びクリーム半田の材質の組合せに応じて、セルフアライメント率を想定する。ここで、セルフアライメント率とは、印刷されたクリーム半田の中心からどの程度ずれたところまでセルフアライメントが効くかを百分率で表した指標である。このセルフアライメント率により、上述したクリーム半田の印刷位置ずれ量を、どの程度(例えば50%、80%、100%等)目標実装位置を設定するための補正値として活かすかを設定する。
上記クリーム半田のパラメータテーブルは、図12に示すように半田データ124として、実装データの一部に登録されるが、これに限らず、例えばNCプログラム114や配列プログラム116等の他のデータ領域内に登録する構成であってもよい。また登録内容としては、上記各パラメータの他にも、クリーム半田のメーカー型式名等とすることもできる。この場合、この型式名に対応する各特性パラメータを予めテーブルに登録しておき、このテーブルから一括して自動設定することができる。これにより実装データの入力作業を大幅に単純化できる。
以上、本実施形態によれば、実際に使用する電子部品の種類やクリーム半田の種類の組合せに応じて、各実装部品に対してそれぞれ補正値を適切に変更でき、実装される電子部品がより大きなセルフアライメント効果を得られるようになる。また、補正値をセルフアライメント効果を直接的に反映させて設定するため、部品実装精度を一層向上させることができる。
次に、本発明に係る電子部品実装方法の第5実施形態を説明する。本実施形態においては、図20に示すように、ランド位置に対するクリーム半田の印刷位置に応じてセルフアライメント効果の大小がある程度決定されるため、クリーム半田の印刷位置を目標実装位置に設定するか、ランド位置を目標実装位置に設定するかを、クリーム半田の印刷位置ずれ状態に応じて選択的に設定している。ここで、図20(a)は、ランド14a,14bの中心からクリーム半田がずれて印刷された状態を示しており、この場合は十分なセルフアライメント効果が得られる。図20(b)は、ランド14a,14bからはみ出してクリーム半田が印刷された状態を示しており、この場合は、リフロー時にクリーム半田がランド外に分断され、セルフアライメント効果が小さくなる。
本実施形態においては、このようにクリーム半田の印刷状態を検出することで、前述のセルフアライメント率を想定し、このセルフアライメント率に応じて目標実装位置を決定する。図21に本実施形態の電子部品実装方法のフローチャートを示した。これによれば、まず、ランド位置及びランド形状を検査装置200により撮像して認識する(S20)。また、クリーム半田印刷位置及び印刷形状を認識する(S21)。これらの認識結果からセルフアライメント率の大小判定を行い(S22)、セルフアライメント率の大きいときはクリーム半田印刷位置を目標実装位置に設定し(S23)、セルフアライメント率が小さいときはランド位置を目標実装位置に設定する(S24)。このため、クリーム半田の印刷ずれが大きい場合等に、セルフアライメント効果が十分に得られない位置に電子部品を実装して、リフロー処理後に電子部品が位置ずれを生じたまま固定されることを未然に防止できる。
次に、本発明に係る電子部品実装方法の第6実施形態を説明する。本実施形態においては、クリーム半田印刷位置を目標実装位置に設定して電子部品を実装する場合に、図22に示すように隣接する電子部品同士が干渉することが考えられるが、この干渉の有無を実装前に予め計算により求めることにより、実装不良の発生を未然に防止している。
具体的には、図12に示す実装データに設けられるNCプログラム114に記録された電子部品の実装位置、及び部品ライブラリ118に記録された部品サイズ等から電子部品の輪郭を求め、前述のクリーム半田印刷位置のずれ量を補正した後の実装位置における輪郭と、隣接部品の輪郭との干渉の有無を判断する。干渉がない場合はそのまま実装処理を行い、干渉のある場合はその部品の実装を行わないようにする。また、干渉のある場合に、電子部品同士が干渉しなくなる位置まで再度実装位置を補正して実装してもよい。この場合、電子部品の実装を中止することによるリカバリー処理をなくすことができ、実装工程の高速化が図られる。なお、上記実装位置の補正は、実装時に逐一目標実装位置を変更して実装する方式であってもよく、NCプログラム114の実装位置を書き換えて実装する方式であってもよい。これにより、実装不良の発生が未然に防止され、回路基板の生産性低下を防止することができる。
次に、以上説明した各実施形態の電子部品実装方法を実現する電子部品実装システムの変形例を説明する。図23は、第1の変形例による電子部品実装システムの構成例を示す図である。本変形例では、前述のクリーム半田印刷装置100の機能と、検査装置200の機能を一体化した検査機能付きのクリーム半田印刷装置102を用いた構成としている。この場合のクリーム半田印刷装置102は、例えば、図6に示す基板認識カメラ36やマスク認識カメラ38をランド位置及びクリーム半田印刷位置検出用としても用いることで実現できる。また、検査部を別途付加する構成としてもよい。この構成によれば、設置スペースの削減と回路基板の搬送処理の簡略化が図れ、一層の高速処理が可能となる。
図24は、第2の変形例による電子部品実装システムの構成例を示す図である。本変形例では、前述の検査装置200の機能と、電子部品実装装置300の機能を一体化した検査機能付きの電子部品実装装置302を用いた構成としている。この場合の電子部品実装装置302は、例えば位置合わせ用の基板マークを検出する基板認識カメラをランド位置及びクリーム半田印刷位置検出用としても用いることで実現できる。また、検査部を別途付加する構成としてもよい。この構成によっても、設置スペースの削減と回路基板の搬送処理の簡略化が図れ、一層の高速処理が可能となる。
図25は、第3の変形例による電子部品実装システムの構成例を示す図である。この場合は、クリーム半田印刷装置100,検査装置200,電子部品実装装置300のそれぞれがホストコンピュータ140に接続され、各装置はホストコンピュータ140によって統括的に制御される。検査装置200からのクリーム半田印刷位置ずれの検査結果は、ホストコンピュータ140に入力され、ホストコンピュータ140は電子部品実装装置300に、入力された位置ずれ情報を出力し、フィードフォーワード制御させる。この構成によれば、電子部品実装システムが統括的に管理でき、複数の実装システムによる回路基板製造ラインが存在する場合でも、簡単にこれらを接続して制御することができる。
また、上述した電子部品実装システムにおいては、実装データ(実装プログラム)を電子部品実装装置300上で作成する方式として説明したが、電子部品実装装置300に通信回線や記録媒体を介して接続される他の外部装置(実装データ作成装置)で作成する方式としてもよい。この場合、実装データ作成装置により作成した実装データを電子部品実装装置300に取り込むことで実装動作が可能となり、また、電子部品実装装置300が実装動作中であっても実装データを作成することができるため、データ作成の作業性が向上し、生産設備の稼働効率を向上できる。
また、上述した電子部品実装装置300は、電子部品が実装される回路基板が固定され、装着ヘッドの搭載された移載ヘッドが回路基板上を移動して実装動作を行う構成であるが、本発明はこれに限らず、例えば図26、図27に示すように、ロータリーヘッドを備えた電子部品実装装置に対しても同様に本発明の電子部品実装方法を適用できる。
ここで、図26はロータリーヘッドを備えた電子部品実装装置の外観図、図27はロータリーヘッドの動作を説明するためのロータリーヘッドの概略断面図である。この電子部品実装装置400は、主に、電子部品を連続的に供給する部品供給部150と、部品供給部150の所定の部品供給位置で電子部品を保持してこの電子部品を回路基板に実装するロータリーヘッド152と、回路基板を位置決めするX−Yテーブル154とを有する。これによれば、基板搬入部156から供給された回路基板をX−Yテーブル154上に載置して、ロータリーヘッド152により部品供給部150から電子部品を保持した後、適切な補正処理を行って回路基板上に実装する。そして、部品実装を完了した回路基板はX−Yテーブル154から基板搬出部158に搬出される。
部品供給部10は、図27に示すように多数の電子部品を収容した複数の部品供給ユニット160が紙面垂直方向に複数配列され、その配列方向に部品供給ユニット160が移動することで所望の電子部品を部品供給位置に供給する。XYテーブル154は、基板搬入部156と基板搬出部158との間で移動可能に設けられ、基板搬入部156の基板搬送路に接続される位置に移動して部品装着前の回路基板を受け取り、回路基板を固定してロータリーヘッド152の部品実装位置に移動する。そして、各電子部品の実装位置に応じた回路基板12の移動を繰り返し行い、部品装着を完了するとXYテーブル154は基板搬出部158に接続される位置まで移動し、回路基板12を基板搬出部158へ送り出す。
ロータリーヘッド152は、電子部品を吸着する複数の装着ヘッド162と、装着ヘッド162を上下動可能に周面で支持して回転駆動される回転枠体164と、回転枠体164をインデックス回転駆動する間欠回転駆動装置168を備えている。装着ヘッド262は、回転枠体164の回転により部品供給部150の部品供給位置からその反対側の部品装着位置までを連続的に回転移動し、部品供給部150の部品供給位置で下降動作することで電子部品を吸着し、部品認識装置のある部品認識位置で電子部品の吸着姿勢を認識し、部品装着位置で下降動作することで電子部品を回路基板12上に装着する。このようなロータリー式ヘッドを備えた電子部品実装装置400に対しても、上記各実施形態の電子部品実装方法を適用することができ、同様な効果を得ることができる。