JP2007172782A - 磁気記録媒体及び磁気記録媒体の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】面内磁気記録ヘッドで記録可能であり、且つ、熱的に安定であり、しかも、SNRが高い磁気記録媒体を得る。
【解決手段】非磁性支持体12と、該非磁性支持体12の少なくとも一方の面に形成されたシード層14と、該シード層14上に形成された下地層16と、該下地層16上に形成された磁性層18とを有し、シード層14は、RuAl又はRuNiAlから選ばれるB2構造の合金の層であり、下地層16は、Ti含有率が20〜35at%のCrTi合金の層であり、磁性層18は、CoPtを主成分とする強磁性体微粒子が酸化物又は窒化物で分離されたグラニュラ構造を有する層である。
【選択図】図1
【解決手段】非磁性支持体12と、該非磁性支持体12の少なくとも一方の面に形成されたシード層14と、該シード層14上に形成された下地層16と、該下地層16上に形成された磁性層18とを有し、シード層14は、RuAl又はRuNiAlから選ばれるB2構造の合金の層であり、下地層16は、Ti含有率が20〜35at%のCrTi合金の層であり、磁性層18は、CoPtを主成分とする強磁性体微粒子が酸化物又は窒化物で分離されたグラニュラ構造を有する層である。
【選択図】図1
Description
本発明は、デジタル情報の記録に使用する磁気記録媒体及び磁気記録媒体の製造方法に関する。
最近、磁性材料としてCoPtCr−SiO2に代表されるグラニュラ材料が注目されている。このグラニュラ材料はCoと相分離しやすいSiO2等の酸化物等を添加することで、加熱によるCr偏析を用いずに、磁性体粒子を微細化し、磁性体粒子の磁気的相互作用を低減することができる。このグラニュラ材料を使用すると基板加熱プロセスを用いることなく、粒径が4〜10nmという非常に微細な磁性体を作製することができる。
一般に、酸化ケイ素や酸化クロム等の添加物を使用すると、これらの元素が磁性体内部まで拡散するため、保磁力(Hc)、飽和磁化(Ms)、異方性磁界(Hk)、Ku(磁気異方性定数)が低下してしまう。そこでグラニュラ磁性層では磁性体中のPt含有率を高め、磁性体自体のHcやHkを増加させる必要がある。高Pt含有率のCoPt(Cr)磁性体は、従来のCoCrPtと比較して結晶を形成するhcp−Coの格子が広がるため、従来のCr系下地層ではエピタキシャル成長させることが難しくなる。
この問題を解決するために、CoPtCr−SiO2用の下地層としてはCoPtに格子定数が近いhcp−Ruを用いることが多く、このRu下地層によって磁性層の結晶性と配向性を向上させることができる。
基板加熱型の面内記録媒体で一般的に使用されるCr−Mo、Cr−V等のCr合金は高Pt含有率のCoPtを主体とする磁性層と格子マッチングを確保するには格子が小さすぎ、さらに基板非加熱プロセスにおいてはCo(110)面とエピタキシャル成長が可能なCr(200)面の配向が得られないため、あまり検討されていない。
これらの技術に基づき、CoPtCr−SiO2等のグラニュラ材料をPETフイルムやPENフイルムを支持体とするフレキシブルディスクやPCを支持体とするプラスチックHD用に応用しようとする検討が進められている。
例えば特許文献1や特許文献2には、基板非加熱成膜でRu下地層上にCoPtCr−SiO2からなる磁性層を形成し、SNR(信号−ノイズ比)や分解能に優れる面内磁気記録媒体を作製している。これらの技術では磁性層中に添加した酸化物=SiO2の含有率が12mol%と比較的高く、且つ、Ru下地層のスパッタ圧が高いという共通の特徴がある。
ここで、酸化物の含有率が高いのは、磁性体粒子間の結合を抑制するためであり、Ruのスパッタ圧が高いのはRuのC軸を面内配向させ、面内媒体を作製するためである。
これに加え、前記2つの技術は共に磁性体粒子サイズを縮小させる効果がある。もともと酸化物を添加するグラニュラ構造の媒体では磁性粒子が小さくなる傾向が強いことに加え、これらの技術を用いると、磁性体粒子サイズは円柱換算で5nmφ前後まで小さくなる。このため、SNRと記録分解能に優れた磁気記録媒体を作製できる訳であるが、一方で磁性体粒子の体積が非常に小さくなるため、熱揺らぎの問題が無視できなくなる。
熱揺らぎの問題とは、記録した磁気信号が環境の熱エネルギーの影響によって消失する問題である。磁気エネルギーは磁気異方性定数Kuと磁化反転体積Vの積に比例しており、KuあるいはVが小さい程、熱揺らぎの影響を受けやすくなる。一般的に磁気信号を安定に保持するためには、磁気エネルギーと熱エネルギーの比KuV/kT>60である必要があると言われている。
CoPtと酸化物からなる磁性層はPt含有率を高めることで、Kuを非常に高くできる特徴を有している。しかし、Ku=MsHk/2であるため、Kuを高めると飽和磁化Msあるいは異方性磁界Hkが増大する。Msを増加させると記録分解能が劣化し、Hkを高めるとヘッドによる記録性が劣化する。特に面内記録媒体の場合、記録ヘッドから発生させられる記録磁場は原理的に垂直記録方式より低く、ヘッドの記録能力の制約から高Ku化には限界がある。面内記録ヘッドを前提した場合、5nmφの磁性体が熱的に安定になるまでKuを高めた媒体では、飽和記録が不可能となる。
本発明はこのような課題を考慮してなされたものであり、面内磁気記録ヘッドで記録可能であり、且つ、熱的に安定であり、しかも、SNRが高い磁気記録媒体を提供することを目的とする。
また。本発明の他の目的は、上述した面内磁気記録ヘッドで記録可能であり、且つ、熱的に安定であり、しかも、SNRが高い磁気記録媒体を容易に作製することができる磁気記録媒体の製造方法を提供することを目的とする。
本発明に係る磁気記録媒体は、非磁性支持体と、前記非磁性支持体の少なくとも一方の面に形成されたシード層と、前記シード層上に形成された下地層と、前記下地層上に形成された面内磁気記録層とを有し、前記シード層は、RuAl又はRuNiAlから選ばれるB2構造の合金の層であり、前記下地層は、Ti含有率が20〜35at%のCrTi合金の層であり、前記面内磁気記録層は、CoPtを主成分とする強磁性体微粒子が酸化物又は窒化物で分離されたグラニュラ構造を有する層であることを特徴とする。
従来のRu下地層では、面内配向性を高めるため、Ru成膜時のスパッタガス圧を高くすると、Ru粒子が磁性体と比較して微細になりすぎ、磁性体粒子のサイズを抑制する効果が現れる。
これに対し、高Ti含有率のCrTi合金では、CrTi合金のスパッタガス圧が低い方が磁性層の面内配向性が高まるため、面内配向性高める成膜条件と磁性体粒子径を増大させる成膜条件の方向が一致する。
これは、磁性体が過度に微細化しやすい本発明のようなグラニュラ媒体においては、磁性体粒子径を制御するのに非常に有効な制御因子とすることができる。
また、基板非加熱プロセスでCrTi合金を成膜すると、CrTi合金は(110)面が優先配向面となり、基板非加熱プロセスで使用される(200)面は極わずかにしか観察されない。このような現象は、Cr合金下地膜のシード層として知られているNiAl等のB2合金についても同様である。
しかし、B2合金の中でもRuAlあるいはRuNiAlはCrTi合金と比較して(200)面のピークが強く観察される。このため、RuAl又はRuNiAlをシード層として使用すると、CrTi合金の(200)面の配向を促進する効果がある。
さらに、本発明の高Pt含有率のCoPtを主体とする磁性体は、その格子が純Coと比較して大きいため、基板加熱プロセスで使用されるTi=10%程度のCrTi合金では格子ミスマッチが非常に大きくなってしまう。CoPtを主体とする磁性体との格子マッチングを高めるためには、Ti含有率を20〜35%まで高める必要がある。このような高Ti含有率のCrTi合金は結晶性が低下する傾向にあり、この結晶性を高めるためにも高Ti含有率のCrTi合金と格子マッチングのよいRuAlあるいはRuNiAlシード層が好適である。
このように、本発明に係る磁気記録媒体は、面内磁気記録ヘッドで記録可能であり、且つ、熱的に安定であり、しかも、SNRが高い磁気記録媒体とすることができる。
そして、本発明において、前記シード層は、RuAlから選ばれるB2構造の合金の層であり、前記RuAlの元素比率は、50:50であることが好ましい。
また、本発明において、前記シード層は、RuNiAlから選ばれるB2構造の合金の層であり、前記RuNiAlのNiの含有率は、Ru+Niの全量に対して50at%以下であることが好ましい。
また、本発明において、前記シード層の厚みは、3nm以上、30nm以下であることが好ましい。
また、本発明において、前記シード層は、スパッタ法にて形成され、スパッタ圧が0.1Pa以上、5.0Pa以下であることが好ましい。
また、本発明において、前記下地層は、スパッタ法にて形成され、スパッタ圧が0.1Pa以上、1.0Pa以下であることが好ましい。
また、本発明において、前記面内磁気記録層中の前記強磁性体微粒子の平均径は、3nm以上、10nm以下であることが好ましい。
また、本発明において、前記面内磁気記録層中の前記強磁性体微粒子は、Co−Pt又はCo−Pt−Crであることが好ましい。
また、本発明において、前記面内磁気記録層中の前記強磁性体微粒子は、Co(100-X-Y)PtXCrYであり、ここで、Xは、10以上、25以下であり、Yは、5以上、15以下であることが好ましい。
また、本発明において、前記面内磁気記録層の厚みは、5nm以上、50nm以下であることが好ましい。
また、本発明において、前記面内磁気記録層中の前記強磁性体微粒子と前記酸化物又は前記窒化物の混合比は、強磁性体微粒子:酸化物又は窒化物=96:4〜89:11の範囲であることが好ましい。
また、本発明において、前記面内磁気記録層中の前記酸化物は、酸化ケイ素、酸化クロム、酸化コバルト、酸化ニッケル、酸化鉄、酸化ジルコニウム、酸化タンタル、酸化チタン、酸化アルミニウム又はこれらの中から選ばれた少なくとも2種以上の混合物を使用することができる。
また、本発明において、前記面内磁気記録層中の前記酸化物は、窒化ケイ素、窒化クロム、窒化コバルト、窒化ニッケル、窒化鉄、窒化ジルコニウム、窒化タンタル、窒化チタン、窒化アルミニウム又はこれらの中から選ばれた少なくとも2種以上の混合物を使用することができる。
特に、前記酸化物は、酸化ケイ素であることが好ましい。あるいは、前記酸化物は、酸化ケイ素と前記酸化クロムの混合物であり、前記酸化ケイ素と前記酸化クロムの混合比は、9:1〜1:9の範囲であることが好ましい。
また、本発明において、前記面内磁気記録層は、スパッタ法にて形成され、スパッタ圧が0.8Pa以上、3.0Pa以下であることが好ましい。
この場合、前記面内磁気記録層は、スパッタガス中に酸素ガスが混合したスパッタ法にて形成されていることが好ましく、前記酸素ガスは前記スパッタガスに対して0.01%〜2.0%の分圧となるように混合されていることが好ましい。
また、本発明において、前記面内磁気記録層中の前記強磁性体微粒子の平均磁化反転体積をV、平均磁性体体積をVgとしたとき、前記平均磁化反転体積と前記平均磁性体体積の比V/Vgが2以下であることが好ましい。
次に、本発明に係る磁気記録媒体の製造方法は、非磁性支持体の少なくとも一方の面にシード層を形成する工程と、前記シード層上に下地層を形成する工程と、前記下地層上に面内磁気記録層を形成する工程とを有する磁気記録媒体の製造方法において、前記シード層は、スパッタ法にて形成され、スパッタ圧が0.1Pa以上、5.0Pa以下であることを特徴とする。
これにより、面内磁気記録ヘッドで記録可能であり、且つ、熱的に安定であり、しかも、SNRが高い磁気記録媒体を製造することができる。
そして、本発明において、前記下地層は、スパッタ法にて形成され、スパッタ圧が0.1Pa以上、1.0Pa以下であることが好ましい。
また、本発明において、前記面内磁気記録層は、スパッタ法にて形成され、
スパッタ圧が0.8Pa以上、3.0Pa以下であることが好ましい。
スパッタ圧が0.8Pa以上、3.0Pa以下であることが好ましい。
また、本発明において、前記面内磁気記録層は、スパッタガス中に酸素ガスが混合したスパッタ法にて形成されていることが好ましい。この場合、前記酸素ガスは前記スパッタガスに対して0.01%〜2.0%の分圧となるように混合されていることが好ましい。
以上説明したように、本発明に係る磁気記録媒体及び磁気記録媒体の製造方法によれば、面内磁気記録ヘッドで記録可能であり、且つ、熱的に安定であり、しかも、SNRが高い磁気記録媒体を得ることができる。
以下、本発明に係る磁気記録媒体及び磁気記録媒体の製造方法の実施の形態例を図1〜図4を参照しながら説明する。
本実施の形態に係る磁気記録媒体10は、図1に示すように、非磁性支持体12と、前記非磁性支持体12の少なくとも一方の面に形成されたシード層14と、該シード層14上に形成された下地層16と、該下地層16上に形成された面内磁気記録層(磁性層)18とを有する。
非磁性支持体12は、可とう性を備えた高分子フイルム12A(図1参照)や、ハードディスク基板を使用することができる。ディスク形態の場合、非磁性支持体12の大きさ、つまり、ディスクの大きさは直径20mm〜150mmであって、ディスクシステムのドライブサイズに応じて任意のサイズが選択できる。また、高分子フイルムの場合には、テープ状の形態として使用することも可能である。
高分子フイルム12Aとしては、芳香族ポリイミド、芳香族ポリアミド、芳香族ポリアミドイミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルサルフォン、ポリエーテルイミド、ポリサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、トリアセテートセルロース、フッ素樹脂等からなる樹脂フイルムが挙げられる。価格や表面性の観点からPET又はPENが特に好ましい。
高分子フイルム12Aの厚みは、3μm〜200μmであり、フレキシブル磁気ディスクの場合、好ましくは20μm〜100μm、さらに好ましくは30μm〜70μmである。また、磁気テープの場合、好ましくは3〜12μm、さらに好ましくは3.5〜10μmである。
図1に示すように、非磁性支持体12が高分子フイルム12Aの場合、その表面には、平面性の改善とガスバリア性を目的として下塗り層20を設けることが好ましい。磁性層18をスパッタリング等で形成するため、下塗り層20は耐熱性に優れることが好ましい。
下塗り層20の材料としては、例えば、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、シリコン樹脂、フッ素系樹脂、あるいは放射線硬化樹脂等を使用することができる。熱硬化型シリコン樹脂あるいは放射線硬化樹脂は、平滑化効果が高く、特に好ましい。下塗り層20の厚みは、0.1μm〜3.0μmが好ましい。非磁性支持体12に他の樹脂フイルムをラミネートする場合には、ラミネート加工前に下塗り層20を形成してもよく、ラミネート加工後に下塗り層20を形成してもよい。
図2に示すように、非磁性支持体12がフレキシブル媒体12Bの場合、ディスク、テープいずれのシステムにおいても磁気記録媒体10と磁気ヘッドは接触摺動するため、フレキシブル媒体12Bの表面あるいは下塗り層20の表面には、磁気ヘッドと磁気記録媒体10の真実接触面積を低減し、摺動特性を改善することを目的として、微小突起(テクスチャ)28を設けることが好ましい。また、微小突起28を設けることにより、フレキシブル媒体12Bのハンドリング性も良好になる。
微小突起28を形成する方法としては、球状シリカ粒子を塗布する方法、エマルジョンを塗布して有機物の突起を形成する方法等が使用できるが、下塗り層20の耐熱性を確保するため、球状シリカ粒子30を塗布して微小突起28を形成する方法が好ましい。
微小突起28の高さhは5nm〜25nmが好ましく、7nm〜18mmがより好ましい。微小突起28の高さhが高すぎると、記録再生ヘッドと磁気記録媒体10のスペーシングロスによって信号の記録再生特性が劣化し、微小突起28が低すぎると、摺動特性の改善効果が少なくなる。微小突起28の密度は0.1〜10個/μm2が好ましく、1〜5個/μm2がより好ましい。微小突起28の密度が少なすぎる場合は、摺動特性の改善効果が少なくなり、多過ぎると凝集粒子の増加によって高い突起が増加して記録再生特性が劣化する。
また、バインダーを用いて微小突起28をフレキシブル媒体12Bの表面、あるいは下塗り層20の表面に固定することもできる。バインダーには、十分な耐熱性を備えた樹脂を使用することが好ましく、耐熱性を備えた樹脂としては、溶剤可溶型ポリイミド樹脂、熱硬化型ポリイミド樹脂、熱硬化型シリコン樹脂を使用することが特に好ましい。
非磁性支持体12としてハードディスク基板を用いる場合は、該ハードディスク基板として、PC、アモルファスポリオレフィン(APO)、ガラス、アルムニウム合金、カーボン、珪素等が使用できる。ハードディスク形態の場合、非磁性支持体の厚みは0.1〜3mm、好ましくは0.3〜2mmである。
ハードディスク基板の場合、磁気ヘッドは磁気記録媒体10から極わずかに浮上して走行するため、非磁性支持体12の表面は平滑であることが好ましい。具体的にはAFMで測定した際の表面粗さRaで1nm以下、好ましくは0.6nm以下である。磁気ヘッドが磁気記録媒体10と接触した際の摩擦力(スティクション)を低減するため、テクスチャーと呼ばれる表面粗さを化学的、物理的研磨方法で付与してもかまわない。
しかし、本実施の形態は、基板非加熱プロセスで形成することを想定しているため、一般的なハードディスクドライブのようなテクスチャによる配向性、OR(オリエーテンション・レシオ)の向上は期待できない。
そして、本実施の形態では、非磁性支持体12上にRuAl又はRuNiAlから選択されるB2構造のシード層14を形成する。RuAlの元素比率は50:50が好ましいが、±数at%の範囲であれば、元素比率が変化してもB2構造は維持される。
また、Ru50Al50のRuの一部をNiに置換すると、格子定数を調整することができる。RuAlは、本実施の形態で使用されるCrTi合金、特にCr70Ti30組成の合金と良好な格子マッチングを確保できるが、Ti含有率がこれより少ない場合には、Ruの一部をNiに置換して格子定数を小さくなるように調整する。
RuNiAlの場合のNi含有率はRu+Niの全量に対して50at%以下であることが好ましい。また、このようなB2構造の合金をシード層14として使用すると、微細で均一な得られるため、この上に積層される下地層16、磁性層18のコラム径を微細化できる効果もある。
シード層14の膜厚は3〜30nmが好ましく、5〜25nmが特に好ましい。膜厚がこれより薄い場合にはシード層14を形成した効果が得られず、膜厚がこれより厚い場合にはシード層14の粒子径が増大し、この影響が下地層16、磁性層18まで及ぶため、磁性体粒子の粒径が増大し、ノイズが増大しやすい。
また、シード層14は、一般的なスパッタ法で形成することができ、この際のスパッタガス圧は0.1Pa〜5.0Paの範囲であることが好ましい、0.3〜3.0Paの範囲であることがさらに好ましい。スパッタ圧が低すぎると、磁性体の粒子の分離性が悪化し、高すぎると、密着性の低下、機械強度の低下を招く。
本実施の形態では、磁性層18とシード層14の間にbcc構造のCrTi合金の下地層16を形成する。CrTi合金中のTi含有率は20〜35at%の範囲である。これより少ないと、磁性層18との格子ミスマッチが大きくなり、磁気特性の低下を招く。逆に、これより多いと、徐々に非晶質に近づいていき、同様に磁気特性の低下を招く。
また、下地層16は、一般的なスパッタ法で形成することができる。この際のスパッタガス圧は、下地層16の結晶配向性と粒子径に強く影響するため、重要である。本実施の形態の組成のCrTi合金の場合、スパッタガス圧は低い方が、磁性層18の面内配向性が高まり、且つ、CrTi粒子の粒径が増大する。従って、スパッタ圧は低い方が好ましく、0.1Pa〜1.0Paが特に好ましい。
下地層16の膜厚は3〜30nmが好ましく、5〜25nmが特に好ましい。膜厚がこれより薄い場合には下地層16を形成した効果が得られず、膜厚がこれより厚い場合には下地層16の粒子径が増大し、この影響が磁性層18まで及ぶため、磁性体粒子の粒子径が増大し、ノイズが増大しやすい。
磁性層18は、CoPtを主体とした強磁性金属合金と酸化物あるいは窒化物の混合物からなるグラニュラ構造の磁性層18である。このグラニュラ構造の磁性層18は、基板非加熱プロセスで形成しても、磁性体の微粒子化と孤立化が可能である。
つまり、一般的な基板加熱プロセスでは磁性層18に添加したCrが加熱によって粒界に偏析し、磁性体を分離するのに対し、このグラニュラ構造の磁性層18では、強磁性金属合金微粒子をこれと相分離しやすい酸化物あるいは窒化物が被覆するような構造となっており、強磁性金属合金粒子の大きさは3nmから10nm程度とすることができる。このような構造となることで、高い保磁力を達成でき、また、磁性粒子サイズの分散性が均一となるため、比較的ノイズを低く抑えることができる。
CoPtを主体とする強磁性金属合金としては、CoPtとCr、Ni、Fe、B、Si、Ta等の元素との合金が使用できるが、記録特性を考慮するCo−Pt、Co−Pt−Crが好ましい。Ptの添加は、保磁力(Hc)、異方性磁界(Hk)、磁気異方性定数(Ku)を増加させる。本実施の形態で用いるグラニュラ構造の磁性層18では、添加する酸化物あるいは窒化物が、磁性層18のKuを低下させる方向に寄与するため、Pt添加量を増加させ、磁性体自体のKuを高め、熱安定性を確保する必要がある。また、Crは、Hc、Hk、残留磁化(Mr)、Kuを低下させるが、グラニュラ構造の磁性層18の問題点である磁性体の磁気的相互作用を低減させる効果があるため、ある程度添加することが好ましい。
このとき、強磁性金属合金の組成をCo(100-X-Y)PtXCrYとする場合、Xは好ましくは10〜25、さらに好ましくは14〜18である。また、Yは好ましくは5〜15、さらに好ましくは7〜10である。
CoPtを主体とする強磁性金属合金と酸化物あるいは窒化物の混合物として用いる酸化物あるいは窒化物としては、Si、Cr、Co、Ni、Fe、Zr、Ta、Ti、Al等の酸化物あるいは窒化物が使用できるが、記録特性を考慮すると酸化ケイ素(SiOx)が最も好ましい。しかし、酸化ケイ素は粒子を微細にする効果が大きいが、一方で粒子間の結合が生じやすい。このため、高Ku化が比較的容易な垂直磁気記録媒体では酸化ケイ素含有率を高め、微細、且つ、粒子間の結合の少ない磁性層が検討されている。
しかし、面内記録媒体で同様な製法を用いると使用可能なKuに比較して粒子径が小さくなりすぎる。この課題に対し、酸化ケイ素の一部を酸化クロムで置換することにより、平均粒子径が増加し、且つ、粒子間の結合が抑制されることがわかった。添加できる酸化クロム(CrOx)としてはCr2O3が最も上記効果が高い。
この酸化物の含有率は、ある程度多い(12mol%前後)と、磁性体粒子間の分離が進み、磁性体粒子が微細化し、SNR(信号−ノイズ比)が向上する。酸化物含有率をこれより増加させると磁性体粒子が微細化しすぎて、KuとSNRが共に低下してしまう。逆に、これより低減すると、Kuは増加するものの、粒子径が増加し、磁性体粒子の結合が進み、SNRが悪化する。
粒子径を増加させ、熱的に安定な面内磁気記録媒体10を作製するためには、酸化物含有率を低減する必要があるが、これにはSNRの劣化を抑制する技術の併用が必須である。これが酸化クロムによる酸化ケイ素の置換と後述の酸素ガス添加スパッタである。
CoPtを主体とする強磁性金属合金と酸化物の混合比は、強磁性金属合金:酸化物(又は窒化物)=96:4〜89:11の範囲であることが好ましく、95:5〜91:9の範囲であることが特に好ましい。これよりも強磁性金属合金が多くなると、酸素添加スパッタ等の他の技術を併用しても磁性体粒子間の分離が不十分となり、ノイズの増加を招く。逆に、これよりも少なくなると、磁性体が微粒子化しすぎることと、さらに非磁性元素の磁性体内部への拡散が多くなることが理由となって、熱安定性が低下する。
使用する酸化ケイ素と酸化クロムの混合比は9:1〜1:9の範囲であることが好ましく、8:2〜5:5の範囲であることが特に好ましい。
磁性層18の厚みとしては好ましくは5nm〜50nm、さらに好ましくは12nm〜20nmの範囲である。これよりも厚みが厚くなるとノイズが著しく増加してしまい、逆に厚みが薄くなると、熱安定性が低下し、且つ、出力が著しく減少してしまう。
CoPtを主体とする強磁性金属合金と酸化物の混合物からなる磁性層18を形成する方法として、スパッタ法を使用することができる。スパッタ法としては公知のDCスパッタ法、RFスパッタ法のいずれも使用可能である。高分子フイルム上に成膜する場合にはウェブスパッタ装置が好適である。ハードディスク形態においては枚様式スパッタ装置や通過型スパッタ装置が使用可能できる。
スパッタ時のスパッタガスとしては、一般的なアルゴンガスが使用できるが、その他の希ガスを使用してもよい。スパッタ圧が高い(3Pa以上)と磁性体粒子間の分離が進み、磁性体粒子が微細化し、SNRが向上する。スパッタ圧を低減すると、Kuは増加するものの、粒子径が増加し、磁性体粒子の結合が進み、SNRが悪化する。粒子径を増加させ、熱的に安定な面内磁気記録媒体を作製するためにはスパッタ圧を低減し、好ましくは0.8〜3.0Paとする必要があるが、SNRの劣化を抑制する技術の併用が必須である。これが前述の酸化クロムによる酸化ケイ素の置換と後述の酸素ガス添加スパッタである。
スパッタガス中に酸素ガスを混合すると、反応性スパッタが可能となる。少量の酸素ガスを混合した場合、その酸素ガスは粒界に作用し、酸化物の粒界を形成する傾向がある。CoPtを主体とする磁性体と酸化物の混合物のスパッタにおいて、酸素は酸化物の酸素欠損や粒界部の酸化に消費される。この結果、磁性体粒子の分離が促進され、且つ、粒度分布が狭まり、磁性体粒子のサイズがわずかに微細化する。酸素の導入量は磁性層ターゲット中の酸化物含有率、スパッタ圧、スパッタパワーの影響を強く受けるため、一概に好ましい範囲を決定することができないが、スパッタガスとなるAr等の希ガスに対して0.01%〜2.0%の分圧となるように混合する。酸素過多の場合、磁気エネルギーとSNRが共に低下してしまう。酸素不足の場合、酸素導入の効果、つまり、磁性体粒子の分離効果が得られず、高ノイズ媒体となってしまう。
スパッタ法で強磁性金属合金と酸化物の混合物からなる磁性層18を形成するためには、強磁性金属合金ターゲットと酸化物ターゲットの2種を用い、これらの共スパッタ法を使用することも可能であるが、磁性粒子径の分散性を改善し、均質な膜を作成するため、コバルトを含有する強磁性金属合金と酸化物の合金ターゲットを用いることが好ましい。この合金ターゲットはホットプレス法、HIP法、アップセット法等で作製することができる。
以上の好ましい実施形態を組み合わせることで、磁性層18の平均粒子径は円形換算で6〜10nmの範囲に制御することが可能となる。ここで、円形換算とは、磁性粒子を面直方向から観察すると、粒子は円形に近い不定形として観察される。この粒子の面積と同じ面積の円形に換算した場合の直径を指す。また、磁性体粒子の面積を測定する方法としては、実際の磁気記録媒体からイオンミリング法でTEM観察用サンプルを加工し、これをTEM観察し、得られた画像から粒子径を測定する方法がある。この方法は、一般的には面内TEM観察法と呼ばれている。
従来技術を用いて作製したグラニュラ型の面内記録媒体はSNRを高めるように設計すると、その平均粒子径が5nm前後となる。しかし、実際には粒界の厚みむらが大きいため、形態的、磁気的に結合している粒子の頻度が高く、平均磁化反転体積は磁性体体積の2〜4倍程度となる。磁気的に結合している粒子は熱揺らぎの影響を受けにくいが、散在する孤立粒子は熱揺らぎの影響を受けやすい。
一般的に、熱揺らぎ現象を阻止するためには、KuV/kT>60が指標となる。ここでKuは結晶磁気異方性定数、Vは平均磁化反転体積、kはボルツマン定数、Tは温度であり、面内記録媒体で現在の記録ヘッドの能力を考慮すると使用できるKuの上限は、3.0×106erg/cc(Hk=15kOe,Ms=5000Gauss)が目安となる。
従来技術においても、KuV/kT>60を実現することは可能である。しかし、熱揺らぎに対する信頼性を高めるためには磁性体粒子1つが磁化反転すると仮定し、Vg=Vとし、KuVg/kT>60を確保することが好ましく、甘く見積もっても、KuVg/kT>40が必要である(Vgは平均磁性体体積)。この指標に関して、従来技術で5nmφの磁性体を使用しようとすると、磁性層の厚みを20nmと厚く設計しても、Vgは約400nm3であり、Ku=3.0×106erg/ccと高いKuを仮定しても、KuVg/kTは28となってしまい、熱的に不安定な媒体となってしまう。KuVg/kT>60を達成するためには、Vgは810nm3(7.2nmφ×20nm)が、KuVg/kT>40としてもVgは570nm3(6.0nmφ×20nm)必要である。
本実施の形態の製造方法を用いれば、面内磁気記録媒体10においても、平均磁性体体積Vgを810nm3以上(粒子径6.0nm以上)としながらも、且つ、SNRは従来技術と同等以上を実現することができる。これは本実施の形態を用いた磁気記録媒体10は、従来技術と比較して磁性体の粒界が均一であり、磁性体の粒度分布が狭く、平均磁化反転体積と平均磁性体体積の比V/Vgを2以下まで低減できるためである。
図1及び図2に示すように、磁性層18の上には保護層22を形成することが好ましい。保護層22は、磁性層18に含まれる金属材料の腐蝕を防止し、磁気ヘッドと磁気記録媒体10との擬似接触又は接触摺動による摩耗を防止して、走行耐久性、耐食性を改善するために設けられる。保護層22には、シリカ、アルミナ、テタニア、ジルコニア、酸化コバルト、酸化ニッケル等の酸化物、窒化チタン、窒化ケイ素、窒化ホウ素等の窒化物、炭化ケイ素、炭化クロム、炭化ホウ素等の炭化物、グラファイト、無定型カーボン等の炭素等の材料を使用することができる。
保護層22としては、磁気ヘッド材質と同等又はそれ以上の硬度を有する硬質膜であり、摺動中に焼き付きを生じ難く、その効果が安定して持続するものが、摺動耐久性に優れており好ましい。また、同時にピンホールが少ないものが、耐食性に優れており、より好ましい。このような保護層22としては、CVD法、反応性スパッタ法で作製されるDLC(ダイヤモンドライクカーボン)と呼ばれる硬質炭素膜が挙げられる。
保護層22は、性質の異なる2種類以上の薄膜を積層した構成とすることができる。例えば、表面側に摺動特性を改善するための硬質炭素保護層を設け、磁性層18側に耐食性を改善するための窒化珪素等の窒化物保護層を設けることで、耐食性と耐久性とを高い次元で両立することが可能となる。
保護層22上には、走行耐久性及び耐食性を改善するために、潤滑層24を形成することが好ましい。潤滑層24には、公知の炭化水素系潤滑剤、フッ素系潤滑剤、極圧添加剤等の潤滑剤が使用される。
炭化水素系潤滑剤としては、ステアリン酸、オレイン酸等のカルボン酸類、ステアリン酸ブチル等のエステル類、オクタデシルスルホン酸等のスルホン酸類、リン酸モノオクタデシル等のリン酸エステル類、ステアリルアルコール、オレイルアルコール等のアルコール類、ステアリン酸アミド等のカルボン酸アミド類、ステアリルアミン等のアミン類等が挙げられる。
フッ素系潤滑剤としては、上記炭化水素系潤滑剤のアルキル基の一部又は全部をフルオロアルキル基もしくはパーフルオロポリエーテル基で置換した潤滑剤が挙げられる。パーフルオロポリエーテル基としては、パーフルオロメチレンオキシド重合体、パーフルオロエチレンオキシド重合体、パーフルオロ−n−プロピレンオキシド重合体(CF2CF2CF2O)n、パーフルオロイソプロピレンオキシド重合体(CF(CF3)CF2O)n、又はこれらの共重合体等である。具体的には、分子量末端に水酸基を有するパーフルオロメチレン−パーフルオロエチレン共重合体(アウジモント社製、商品名FOMBLIN Z−DOL)等が挙げられる。
極圧添加剤としては、リン酸トリラウリル等のリン酸エステル類、亜リン酸トリラウリル等の亜リン酸エステル類、トリチオ亜リン酸トリラウリル等のチオ亜リン酸エステルやチオリン酸エステル類、二硫化ジベンジル等の硫黄系極圧剤等が挙げられる。
上記の潤滑剤は単独もしくは複数を併用して使用することができ、潤滑剤を有機溶剤に溶解した溶液を、スピンコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、ディップコート法等で保護層22の表面に塗布するか、真空蒸着法により保護層22の表面に付着させればよい。潤滑層24の厚みとしては、0.1〜3nmが好ましく、0.5〜2nmが特に好ましい。
また、耐食性をさらに高めるために、防錆剤を併用することが好ましい。防錆剤としては、ベンゾトリアゾール、ベンズイミダゾール、プリン、ピリミジン等の窒素含有複素環類及びこれらの母核にアルキル側鎖等を導入した誘導体、ベンゾチアゾール、2−メルカプトンベンゾチアゾール、テトラザインデン環化合物、チオウラシル化合物等の窒素及び硫黄含有複素環類及びこの誘導体等が挙げられる。これら防錆剤は、潤滑剤に混合して保護層22上に塗布してもよく、潤滑剤を塗布する前に保護層22上に塗布し、その上に潤滑剤を塗布してもよい。防錆剤量としては、前記潤滑剤への混合比として0.01〜100重量%が好ましく、0.1〜50重量%が特に好ましい。
上記のような構成の磁気記録媒体10は、そのままの状態では、非磁性支持体12の表面の付着物や下塗り層20の表面上に塗布した球状シリカ粒子30等の凝集物が存在することがあり、さらにスパッタ工程等の製造工程で付着したコンタミネーションによって形成された異常突起も存在する。このような欠陥は、MRヘッドやGMRヘッド等の耐摩耗性が低い高感度ヘッドを使用する場合に、磁気信号のドロップアウトやエラーにつながるだけではなく、これらの磁気ヘッドを破壊してしまうことがある。
このような場合には、研磨テープによるバーニッシュ加工を用いることが好ましい。ハードディスク型磁気ディスクのバーニッシュ方法としては、バーニッシュヘッド、グライドヘッドを実際に磁気ディスク上を浮上走行させ、バーニッシュ加工を行うことも可能である。また、バーニッシュ方法としては、研磨テープを媒体表面に押し当て、加工する方法を用いることが好ましい。この際、研磨テープを磁気記録媒体10の表面に押し当てるには、研磨テープをバックアップロールやバックアップパッドに沿わせ、このバックアップローラーやバックアップパッドの規制力を利用して磁気記録媒体10と研磨テープを接触させればよい。
磁気記録媒体10の面内Hcは、好ましくは2000〜5000Oeであり、さらに好ましくは2500Oe〜4000Oeの範囲である。Hcが高すぎると、磁気ヘッドでの書き込みが困難となり、飽和記録することが難しくなる。また、Hcが低すぎると、記録分解能が低下する。面内Mrは、好ましくは1500〜5000Gauss、さらに好ましくは3000〜4500Gaussの範囲である。Mrδ(Mr:残留磁化、δ:磁性膜の厚み)は、好ましくは25〜90Gauss・μm、さらに好ましくは40〜75Gauss・μmの範囲である。Mrδが高すぎるとノイズが増加し、一方、低すぎると出力が低下する。Msは好ましくは3500〜7000Gauss、さらに好ましくは4000〜6000Gaussである。Kuは1.0×106〜3.5×106erg/cc、好ましくは2.0×106〜3.0×106erg/ccである。面内の保磁力角形比(S*)は、好ましくは0.50〜0.90、さらに好ましくは0.55〜0.85の範囲である。面内の保磁力角形比が高すぎるとノイズが増大し、低すぎると熱安定性が低下し、記録分解能も低下する。
ここで、実施例1〜6と比較例1〜4について、熱揺らぎに対する信頼性をみる上で好適なパラメータであるKuVg/kT及びKuVg/kTと、保磁力(Hc:Oe)、残留磁化(Mr:Gauss)、SNR(dB)、記録分解能(nm)を評価を行った実験例について説明する。なお、Kuは磁気異方性定数、Vgは平均磁性体体積、Vは平均磁化反転体積、kはボルツマン定数、Tは絶対温度である。
まず、実施例1〜6、比較例1〜4の内容は以下のとおりである。なお、実施例1〜6、比較例1〜4のシード層14及び下地層16の各組成並びに下地層16のスパッタ圧の違いを図3に示す。
(実施例1)
非磁性支持体12として、厚み52μm、表面粗さRa=1.4nmのポリエチレンナフタレートフイルム(以下、単に支持体フイルムと記す)を用意し、該支持体フイルム上に、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、塩酸、アルミニウムアセチルアセトネート、エタノールからなる下塗り液をグラビアコート法で塗布した後、100℃で乾燥と硬化を行い、厚み1.0μmのシリコン樹脂からなる下塗り層20を形成した。
非磁性支持体12として、厚み52μm、表面粗さRa=1.4nmのポリエチレンナフタレートフイルム(以下、単に支持体フイルムと記す)を用意し、該支持体フイルム上に、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、塩酸、アルミニウムアセチルアセトネート、エタノールからなる下塗り液をグラビアコート法で塗布した後、100℃で乾燥と硬化を行い、厚み1.0μmのシリコン樹脂からなる下塗り層20を形成した。
この下塗り層20上に、粒子径18nmのオルガノシリカゾルをシクロヘキサノンに分散した溶液をグラビアコート法で塗布して、表面突起を形成した。突起密度は5個/μm2であった。この下塗り層20は、支持体フイルムの両面に形成した。
次に、この下塗り層20が形成された支持体フイルムの原反から150mmφの円盤(以下、原板と記す)を切り出し、この原板をリング状の基板ホルダーに組み込んだ後、5inchφの円形ターゲットを使用したカソードを3機有するスパッタ装置に設置した。
スパッタ装置を3×10-5Torrまで排気し、原板を加熱することなく、ArをスパッタガスとしたDCマグネトロンスパッタ法(スパッタガス圧3.5Pa)で、下塗り層20上に、RuAl合金のシード層14(組成:Ru50Al50)を25nmの厚みで形成した。
その後、シード層14上に、CrTi合金の下地層16(組成:Cr70Ti30)を、スパッタ圧1.0Paで、25nmの厚みとなるように形成した。
さらに、下地層16上に、磁性層18(組成:(Co73Pt17Cr10)92−(Cr2O3)2−(SiO2)6)を分圧1.0%の酸素を添加し、スパッタ圧1.5Pa、投入電力1100Wで、17nmの厚みとなるように形成し、その上にカーボンからなる保護層22を5nmの厚みで形成した。このシード層14、下地層16、磁性層18、保護層22は原板の両面に成膜した。
次に、この保護層22の表面に分子末端に水酸基を有するパーフルオロポリエーテル系潤滑剤(モンテフルオス社製FOMBLIN Z−DOL)をフッ素系潤滑剤(住友スリーエム社製HFE−7200)に溶解した溶液をディップコート法で塗布し、厚み1nmの潤滑層24を形成した。この潤滑層24も原板の両面に形成した。
次に、この原板から2.5inchサイズのディスクを打ち抜き、これを1/2inch幅のアルミナ研磨テープ(30000番)を用いて両面同時にバーニッシュ加工した後、金属製カートリッジに組み込んで、フレキシブルディスク媒体を作製した。
(実施例2)
下地層16をスパッタ圧0.7Paで形成したこと以外は、実施例1と同じである。
下地層16をスパッタ圧0.7Paで形成したこと以外は、実施例1と同じである。
(実施例3)
下地層16をスパッタ圧0.3Paで形成したこと以外は、実施例1と同じである。
下地層16をスパッタ圧0.3Paで形成したこと以外は、実施例1と同じである。
(実施例4)
下地層16をスパッタ圧3.5Paで形成したこと以外は、実施例1と同じである。
下地層16をスパッタ圧3.5Paで形成したこと以外は、実施例1と同じである。
(実施例5)
組成がCr80Ti20の下地層16を用い、該下地層16をスパッタ圧0.7Paで形成したこと以外は、実施例1と同じである。
組成がCr80Ti20の下地層16を用い、該下地層16をスパッタ圧0.7Paで形成したこと以外は、実施例1と同じである。
(比較例1)
組成がCr90Ti10の下地層16を用い、該下地層16をスパッタ圧0.7Paで形成したこと以外は、実施例1と同じである。
組成がCr90Ti10の下地層16を用い、該下地層16をスパッタ圧0.7Paで形成したこと以外は、実施例1と同じである。
(比較例2)
組成がCr60Ti40の下地層16を用い、該下地層16をスパッタ圧0.7Paで形成したこと以外は、実施例1と同じである。
組成がCr60Ti40の下地層16を用い、該下地層16をスパッタ圧0.7Paで形成したこと以外は、実施例1と同じである。
(実施例6)
組成がRu75Ni25Al50のシード層14と、組成がCr70Ti30の下地層16を用い、該下地層16をスパッタ圧0.7Paで形成したこと以外は、実施例1と同じである。
組成がRu75Ni25Al50のシード層14と、組成がCr70Ti30の下地層16を用い、該下地層16をスパッタ圧0.7Paで形成したこと以外は、実施例1と同じである。
(比較例3)
組成がNi50Al50のシード層14と、組成がCr70Ti30の下地層16を用い、該下地層16をスパッタ圧0.7Paで形成したこと以外は、実施例1と同じである。
組成がNi50Al50のシード層14と、組成がCr70Ti30の下地層16を用い、該下地層16をスパッタ圧0.7Paで形成したこと以外は、実施例1と同じである。
(比較例4)
組成がCのシード層14と、組成がRuの下地層16を用い、該下地層16をスパッタ圧3.5Paで形成したこと以外は、実施例1と同じである。
組成がCのシード層14と、組成がRuの下地層16を用い、該下地層16をスパッタ圧3.5Paで形成したこと以外は、実施例1と同じである。
(評価)
そして、KuVg/kT及びKuVg/kTを構成するパラメータである平均磁性体体積Vg及び平均磁化反転体積Vを以下のように求めた。
そして、KuVg/kT及びKuVg/kTを構成するパラメータである平均磁性体体積Vg及び平均磁化反転体積Vを以下のように求めた。
すなわち、作製した試料をイオンミリング法で加工し、面内TEM観察により、磁性体の形態観察を行った。このTEM像から約200個の粒子について粒子面積を計算した。この面積データと磁性層18の厚みから平均磁性体体積Vgをその標準偏差を計算した。
また、パルス着磁器とVSM(振動試料型磁力計)を組み合わせて使用し、磁化反転時間4点におけるレマネンス保磁力を測定した。この結果をシャーロックの式を用いてフィッティングし、KuV/kTをもとめ、下記方法で測定したKuから平均磁化反転体積Vを計算した。実施例1〜5並びに比較例1〜5に係る媒体は、2次元ランダム配向であるのでフィッティングの乗数は0.67とした。
さらに、実施例1〜5並びに比較例1〜5の磁気特性を求めた。すなわち、VSMを用いて磁化ヒステリシス曲線を測定し、面内のHc、Mrδ、Msを求めた。但し、δは磁性層18の厚みを指す。
また、磁気トルク計を用い、Kuを測定した。Kuの測定において、試料は長手方向から面直方向に向かって回転させ、そのトルクを測定した。さらに、不飽和トルクカーブから飽和トルクカーブのKuを計算するため、測定磁界を10〜20kOeの範囲で変化させ、測定磁界の逆数対各測定磁界におけるKuプロットを作成し、その測定磁界の逆数が0となる切片をKuとした。ここでのKuはKu1+Ku2である。
また、実施例1〜6並びに比較例1〜4のSNR及び記録分解能を求めた。すなわち、再生トラック幅0.18μm、記録トラック幅0.30μmのGMRヘッドを用いて、線記録密度200kFCIの記録再生を行い、再生信号/ノイズ比(SNR)を測定した。なお、ノイズの積分範囲は400kFCIまでとし、ディスク回転数は4200rpm、半径位置は25.4mmとした。
また、5kFCIの孤立反転波形の半値幅PW50から記録分解能を評価した。さらに、400kFCI/40kFCIのオーバーライトを評価した。
図4に実施例1〜6並びに比較例1〜4のKu、Vg、KuVg/kT、V、KuV/kT、Hc、Mr、SNR、記録分解能の結果を示す。
この図4の結果から、実施例1〜3、5、6は、いずれもKuVg/kTが50を超え、また、KuV/kTも70を超えていることから、熱揺らぎに対する信頼性が高いことがわかる。しかも、磁気特性やSNRも良好な値となっている。
実施例4は、KuVg/kTが43であって、KuV/kTが62とわずかに低いことから、熱揺らぎに対する信頼性が実施例1〜3、5、6よりも若干低いが、SNRは良好な値となっている。
実施例3は、KuVg/kTが70を超え、また、KuV/kTも70を超えていることから、熱揺らぎに対する信頼性が最も高いことがわかる。しかも、磁気特性、SNR及び記録分解能も良好な値となっている。
さらに、実施例2、4、6は、いずれも平均磁性体体積Vgが800nm3を超えながらも、SNRが21dB以上となっており、記録特性が良好となっている。
一方、比較例1、4は、KuV/kTが60以上で良好であるが、SNRが低くなっている。比較例3は、KuVg/kTが50を超え、また、KuV/kTが60を超えて良好であるが、SNRが低くなっている。比較例2は、比較例1〜4の中で、SNRが20.5と比較的高い値(但し、実施例1〜6よりも低い値)となっているが、KuVg/kTが30で、KuV/kTも60を下回っているため、熱揺らぎに対する信頼性が低いことがわかる。
なお、本発明に係る磁気記録媒体及び磁気記録媒体の製造方法は、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
10…磁気記録媒体 12…非磁性支持体
14…シード層 16…下地層
18…磁性層 20…下塗り層
22…保護層 24…潤滑層
14…シード層 16…下地層
18…磁性層 20…下塗り層
22…保護層 24…潤滑層
Claims (18)
- 非磁性支持体と、
前記非磁性支持体の少なくとも一方の面に形成されたシード層と、
前記シード層上に形成された下地層と、
前記下地層上に形成された面内磁気記録層とを有し、
前記シード層は、RuAl又はRuNiAlから選ばれるB2構造の合金の層であり、
前記下地層は、Ti含有率が20〜35at%のCrTi合金の層であり、
前記面内磁気記録層は、CoPtを主成分とする強磁性体微粒子が酸化物又は窒化物で分離されたグラニュラ構造を有する層であることを特徴とする磁気記録媒体。 - 請求項1記載の磁気記録媒体において、
前記シード層は、RuAlから選ばれるB2構造の合金の層であり、
前記RuAlの元素比率は、50:50であることを特徴とする磁気記録媒体。 - 請求項1記載の磁気記録媒体において、
前記シード層は、RuNiAlから選ばれるB2構造の合金の層であり、
前記RuNiAlのNiの含有率は、Ru+Niの全量に対して50at%以下であることを特徴とする磁気記録媒体。 - 請求項1〜3のいずれか1項に記載の磁気記録媒体において、
前記シード層の厚みは、3nm以上、30nm以下であることを特徴とする磁気記録媒体。 - 請求項1〜4のいずれか1項に記載の磁気記録媒体において、
前記シード層は、スパッタ法にて形成され、
スパッタ圧が0.1Pa以上、5.0Pa以下であることを特徴とする磁気記録媒体。 - 請求項1〜5のいずれか1項に記載の磁気記録媒体において、
前記下地層は、スパッタ法にて形成され、
スパッタ圧が0.1Pa以上、1.0Pa以下であることを特徴とする磁気記録媒体。 - 請求項1〜6のいずれか1項に記載の磁気記録媒体において、
前記面内磁気記録層中の前記強磁性体微粒子の平均径は、3nm以上、10nm以下であることを特徴とする磁気記録媒体。 - 請求項1〜7のいずれか1項に記載の磁気記録媒体において、
前記面内磁気記録層中の前記強磁性体微粒子は、Co−Pt又はCo−Pt−Crであることを特徴とする磁気記録媒体。 - 請求項8記載の磁気記録媒体において、
前記面内磁気記録層中の前記強磁性体微粒子は、Co(100-X-Y)PtXCrYであり、
Xは、10以上、25以下であり、
Yは、5以上、15以下であることを特徴とする磁気記録媒体。 - 請求項1〜9のいずれか1項に記載の磁気記録媒体において、
前記面内磁気記録層の厚みは、5nm以上、50nm以下であることを特徴とする磁気記録媒体。 - 請求項1〜10のいずれか1項に記載の磁気記録媒体において、
前記面内磁気記録層中の前記強磁性体微粒子と前記酸化物又は前記窒化物の混合比は、強磁性体微粒子:酸化物又は窒化物=96:4〜89:11の範囲であることを特徴とする磁気記録媒体。 - 請求項1〜11のいずれか1項に記載の磁気記録媒体において、
前記面内磁気記録層中の前記酸化物は、酸化ケイ素、酸化クロム、酸化コバルト、酸化ニッケル、酸化鉄、酸化ジルコニウム、酸化タンタル、酸化チタン、酸化アルミニウム又はこれらの中から選ばれた少なくとも2種以上の混合物であることを特徴とする磁気記録媒体。 - 請求項1〜11のいずれか1項に記載の磁気記録媒体において、
前記面内磁気記録層中の前記酸化物は、窒化ケイ素、窒化クロム、窒化コバルト、窒化ニッケル、窒化鉄、窒化ジルコニウム、窒化タンタル、窒化チタン、窒化アルミニウム又はこれらの中から選ばれた少なくとも2種以上の混合物であることを特徴とする磁気記録媒体。 - 請求項12記載の磁気記録媒体において、
前記酸化物は、酸化ケイ素であることを特徴とする磁気記録媒体。 - 請求項1〜14のいずれか1項に記載の磁気記録媒体において、
前記面内磁気記録層中の前記強磁性体微粒子の平均磁化反転体積をV、平均磁性体体積をVgとしたとき、前記平均磁化反転体積と前記平均磁性体体積の比V/Vgが2以下であることを特徴とする磁気記録媒体。 - 非磁性支持体の少なくとも一方の面に、RuAl又はRuNiAlから選ばれるB2構造の合金からなるシード層を形成する工程と、
前記シード層上に、Ti含有率が20〜35at%のCrTi合金からなる下地層を形成する工程と、
前記下地層上に、CoPtを主成分とする強磁性体微粒子が酸化物又は窒化物で分離されたグラニュラ構造を有する面内磁気記録層を形成する工程とを有し、
前記シード層は、スパッタ法にて形成され、
スパッタ圧が0.1Pa以上、5.0Pa以下であることを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。 - 請求項16記載の磁気記録媒体の製造方法において、
前記下地層は、スパッタ法にて形成され、
スパッタ圧が0.1Pa以上、1.0Pa以下であることを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。 - 請求項16又は17記載の磁気記録媒体の製造方法において、
前記面内磁気記録層は、スパッタ法にて形成され、
スパッタ圧が0.8Pa以上、3.0Pa以下であることを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
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