JP3907178B2 - 磁気記録媒体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、磁気テープ、フレキシブルディスク、ハードディスク等の磁気記録媒体に関し、特に高密度磁気記録が可能な垂直磁気記録媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、インターネット等の普及による大容量の画像情報の取り扱いに対応して、パーソナルコンピュータには大容量のハードディスクが装着されているが、このハードディスクドライブでは動画情報の保存のニーズが高く、さらに高容量化、低価格化が要求されている。また、このハードディスクに蓄積した大量の情報をバックアップしたり、あるいは他のコンピュータで利用するためには、各種のリムーバブル型の記録媒体が用いられている。磁気テープ、フレキシブルディスク等の可撓性の磁気記録媒体は、ハードディスクと同様に情報の記録、読み出しに要する時間が短く、また情報の記録、読み出しに必要な装置も小型である等の多くの特徴を有している。このため、磁気テープ、フレキシブルディスクは代表的なリムーバブル型の記録媒体として、コンピュータのバックアップ、大量のデータの保存に用いられている。そして、少ない個数の磁気テープ、フレキシブルディスクで大量のデータを保存可能な磁気記録媒体が求められており、記録密度の更なる向上が求められている。
【0003】
このため、高密度記録特性に優れているとされている垂直磁気記録方式が注目されてきており、様々な記録方式、磁気ヘッド、磁気記録媒体が提案されている。しかしながら、従来のCoCr合金、CoCrPt合金を磁性層とする垂直磁気記録媒体で、さらに高い面記録密度を達成するためには、低ノイズ化のため、記録膜厚を30nm以下にしなければならないが、この様な超薄膜では室温程度の熱によって磁化が失われる、いわゆる「熱揺らぎ」の問題が顕著なり、実用化を行う上で大きな問題となっている。一方、高い垂直磁気異方性を示し、熱揺らぎに強いとされる材料として、Co/PdやCo/PtといったCo系多層膜やTbFeCo等の希土類遷移金属合金が知られているが、この様な磁性材料では面内方向の交換結合が強く、従来のCoCrPt系合金よりもノイズが高いといった問題があった。これらの課題に対し、最近になって、面内の交換結合と垂直磁気異方性を制御する手法としてCoCrPt系垂直磁気記録膜と上記Co系多層膜や希土類遷移金属合金記録膜を積層する媒体(ハイブリッド媒体あるいはCGC媒体と呼ばれる)が提案されている。
【0004】
この様なハイブリッド媒体ではCoCrPt系合金を成膜する際には基板温度を200℃以上に加熱し、その上のCo系多層膜や希土類遷移金属合金を成膜する際には基板温度を室温とする必要があるため、これら2層の成膜工程間に冷却工程が必要であり、生産性に課題があった。また非磁性支持体として高分子基板を使用するフレキシブル媒体やポリカーボネート基板を使用しようとする場合、CoCrPt系合金を成膜する基板温度では、これれらの高分子基板が変形してしまうため、記録媒体を作製することができなかった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、高密度記録が可能な垂直磁気記録媒体を安価に提供することを課題とするものである。またリムーバブル型磁気記録媒体として使用することができる磁気テープ、フレキシブルディスク等に有用な磁気記録媒体を提供することを課題とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の課題は、支持体の少なくとも一方の面に、コバルトを含有する強磁性金属合金と非磁性金属酸化物から構成された第一磁性層と希土類遷移金属合金からなる第二磁性層をこの順に積層し、前記支持体は厚み3〜20μmの可撓性高分子支持体からなり、該可撓性高分子支持体表面には、厚み0.1μm〜3.0μmの下塗り層を設けることを特徴とする磁気記録媒体によって解決される。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明の磁気記録媒体は、支持体の少なくとも一方の面に、コバルトを含有する強磁性金属合金と非磁性金属酸化物から構成された第一磁性層と希土類遷移金属合金からなる第二磁性層をこの順に積層したことを特徴とする磁気記録媒体である。コバルトを含有する強磁性金属合金と非磁性金属酸化物から構成された磁性層は、支持体の温度が室温であってもスパッタリング法等によって形成することが可能であるので、引き続きその上に成膜する希土類遷移金属合金を成膜する前に必要な、基板冷却の工程を省略することできる。また支持体としてポリカーボネートやポリエチレンナフタレートなどの高分子支持体を基板とした場合であっても、熱による基板変形無く、記録特性が優れた磁気記録媒体を製造することができる。
【0008】
以下に図面を参照して本発明を説明する。
図1は、本発明の一実施例を示す図であり、断面図である。
磁気記録媒体1は、支持体2上に、コバルトを含有する強磁性金属合金と非磁性金属酸化物から構成された第一磁性層3Aと希土類遷移金属合金からなる第二磁性層3Bが形成されたものである。磁性層3Aと磁性層3Bからなる磁性層3上には、磁性層の酸化等による劣化を防止し、ヘッドや摺動部材との接触による摩耗かから保護する保護層4が形成されている。また、保護層4上には、走行耐久性および耐食性等を改善する目的で潤滑層5が設けられている。
【0009】
また、上記層構成において、磁性層3Aと支持体2の間に、支持体2の表面性を調整するとともに、支持体2から生じた気体が磁性層3A等に達することを防止するために下塗り層を支持体2上に設けてもよい。そして、さらに磁性層3Aに形成される強磁性金属の結晶配向性を制御して記録特性を高めるための下地層を下塗り層と磁性層3Aの間に設けてもよく、下地層によって強磁性金属の結晶配向性が良好となり、図1に示したものに比べて特性がより優れたものが得られる。
磁気記録媒体が磁気テープの場合は、通常、片面に上記構成の層が設けられ、開放リール、あるいはカートリッジ内に収納されたもののいずれの形態で用いることができる。
磁気記録媒体がフレキシブルディスクである場合、通常、支持体の両面に上記構成の層が設けられ、中心部には、フレキシブルディスクドライブに装着するための係合手段が装着される。
磁気記録媒体がハードディスクである場合、支持体は表面研磨されたガラス基板が通常用いられる。また、中心部には、ディスクドライブに装着するための係合手段が装着されている。またさらに単磁極ヘッドを使用する際の垂直磁気記録特性を改善するため、裏打ち層が設けられる。
【0010】
本発明の磁気記録媒体に形成する磁性層は、コバルトを含有する強磁性金属合金と非磁性金属酸化物から構成された第一磁性層と希土類遷移金属合金からなる第二磁性層を備えているので、従来のCoCrPt系合金薄膜磁性層と同様に高記録密度記録が可能となり、さらに熱揺らぎを大幅に低減することがきる。また室温の基板温度で磁性層を形成することできるため、従来のCoCrPt系合金磁性層やこれと希土類遷移金属を組み合わせた媒体より、生産性に優れている。さらに支持体を高分子基板で形成するリムーバブル型の磁気記録媒体の高容量化が可能となる。
このコバルトを含有する強磁性金属合金と非磁性金属酸化物からなる強磁性金属薄膜はハードディスクで提案されている、特開平5−73880号公報や特開平7−311929号公報等に記載されているものと同様の方法によって製造したものが使用できる。
【0011】
本発明の磁気記録媒体における磁性層は、磁性層面に対して垂直方向に磁化容易軸を有するいわゆる垂直磁気記録膜である。この磁化容易軸の方向は下地層の材料や結晶構造および磁性膜の組成と成膜条件によって制御することができる。
【0012】
本発明におけるコバルトを含有する強磁性金属合金と非磁性金属酸化物から構成された第一磁性層は、微細な強磁性金属合金結晶が均一に分散しているので、基板を加熱しなくとも高い保磁力を達成できるとともに、分散性が均一となる結果ノイズの小さな磁気記録媒体を得ることができる。またその上に垂直磁気異方性が高い希土類遷移金属からなる第二磁性層を有しているために、熱揺らぎに強く、一度記録した磁気記録情報を長期間にわたって保持することができる。
コバルトを含有する強磁性金属合金としてはCoと、Cr、Ni、Fe、Pt、B、Si、Ta等の元素との合金が使用できるが、Co−Pt、Co−Cr、Co−Pt−Cr、Co−Pt−Cr−Ta、Co−Pt−Cr−B等が磁気記録特性が良好であるので好ましい。
【0013】
例えば、垂直記録に使用するCoPtCr系合金の好ましい元素組成としては、Coが65〜80原子%、Ptが5〜20原子%、Crが10〜20原子%の範囲から選択される組成が挙げられる。また、これにBやTa等の非磁性元素を添加する場合には、10原子%以下の範囲でPtまたはCrを置換するように添加すれば良い。Coの含有率が多いほど、磁化が大きくなり、信号の再生出力が高まるが、ノイズも同時に増加する。一方、CrやPt等の非磁性元素の含有率が多いほど磁化が小さくなるが、保磁力が増加するため、信号の再生出力が減少するものの、ノイズが減少する。したがって、使用する磁気ヘッドや使用機器に応じてこれらの元素の配合比率を調整することが好ましい。
【0014】
また、磁化の異方性は組成の他、成膜時のアルゴン圧などの条件によっても調整することができるが、後述の下地層の種類にも依存する。下地層を使用しない場合やアモルファス材料を使用した場合には、磁性層は垂直に配向しやすいが、Crまたはその合金、Ruまたはその合金を使用した場合には面内配向する場合があり、面内磁気記録媒体として用いられている。
【0015】
非磁性金属酸化物としてはSi、Zr、Ta、B、Ti、Al等の酸化物が使用できるが、ケイ素の酸化物を用いたものが記録特性が最も良好である。
【0016】
コバルトを含有する強磁性金属合金と非磁性金属酸化物の混合比は、強磁性金属合金:非磁性金属酸化物=95:5〜80:20(金属原子比)の範囲であることが好ましく、90:10〜85:15の範囲であることが特に好ましい。このような範囲とすることにより、磁性粒子間の分離が十分となり、保磁力が低下することがなく、磁化量も高く維持できるので、高い信号出力が得られる。
【0017】
コバルトを含有する強磁性金属合金と非磁性金属酸化物の混合物からなる第一磁性層の厚みとしては好ましくは10nm〜60nm、さらに好ましくは20nm〜30nmの範囲である。このような厚みとすればノイズが低い媒体が得られる。
【0018】
コバルトを含有する強磁性金属合金と非磁性金属酸化物からなる第一磁性層を形成する方法としては真空蒸着法、スパッタリング法などの真空成膜法が使用できる。なかでもスパッタリング法は良質な薄膜が容易に成膜可能であることから、本発明に好適である。スパッタリング法としてはDCスパッタリング法、RFスパッタリング法のいずれも使用可能である。磁気テープやフレキシブルディスクを製造しようとする場合には、スパッタリング法は連続フィルム上に連続して成膜するウェブスパッタリング装置を用いることが好ましい。
スパッタリング時の雰囲気に使用する気体はアルゴンが使用できるが、その他の希ガスを使用しても良い。また非磁性金属酸化物の酸素含有率を調整するために微量の酸素を導入しても良い。
【0019】
スパッタリング法でコバルトを含有する強磁性金属合金と、非磁性金属酸化物からなる磁性層を形成するためには強磁性金属合金ターゲットと非磁性金属酸化物ターゲットの2種を用い、これらの共スパッタリング法を使用することも可能であるが、形成すべき強磁性金属合金と非磁性金属酸化物の組成比に合致した強磁性金属合金と非磁性金属酸化物を均質に混合した混合物ターゲットを用いると、強磁性金属合金が均一に分散した磁性層を形成することができる。また、この混合物ターゲットはホットプレス法で作製することができる。
【0020】
第二磁性層として形成する希土類遷移金属合金とは、希土類金属と遷移金属とを含有する合金をいう。
希土類遷移金属合金としては、テルビウム、ガドリニウム、ネオジウム、及びジスプロシウムから選択される少なくとも1種の希土類金属と、鉄及びコバルトの少なくとも一方の遷移金属とを含有する合金が好ましい。この中でも、テルビウム、鉄、及びコバルトを主成分として含有する合金、及びジスプロシウム、鉄、及びコバルトを主成分として含有する合金がより好ましく、テルビウム、鉄、及びコバルトを主成分として含有する合金が特に好ましい。
【0021】
希土類遷移金属合金の磁気特性は主に希土類金属と遷移金属の組成比によって決定される。例えば希土類金属としてテルビウムを含有する場合には、テルビウムの含有量が14〜20原子%である合金がより好ましい。テルビウムの含有量を14〜20原子%の範囲とすることにより、磁性層の垂直方向の保磁力を垂直磁気記録に適する1500Oe〜6000Oe(≒120〜480kA/m)の範囲とすることができる。 また、磁性層の飽和磁化は、50〜800emu/cc(≒0.063〜1.0Wb/m2)が好ましく、100〜400emu/cc(≒0.13〜0.50Wb/m2)が更に好ましい。
第一磁性層と第二磁性層を積層した磁気記録媒体の保磁力は、2000Oe〜6000Oe(≒160〜480kA/m)、飽和磁化は、50〜800A・m2/kg(≒0.063〜1.0Wb/m2)であることが好ましい。
【0022】
また、希土類遷移金属合金は、クロム及びニッケルの少なくとも一方を更に含有していてもよい。クロムやニッケルを含有することにより耐食性が向上する。
希土類遷移金属からなる第二磁性層を形成する方法としては真空蒸着法、スパッタリング法などの真空成膜法が使用できる。なかでもスパッタリング法は良質な薄膜が容易に成膜可能であることから、本発明に好適である。スパッタリング法としてはDCスパッタリング法、RFスパッタリング法のいずれも使用可能である。磁気テープやフレキシブルディスクを製造しようとする場合には、スパッタリング法は連続フィルム上に連続して成膜するウェブスパッタリング装置を用いることが好ましい。
スパッタリング時の雰囲気に使用する気体はアルゴンが使用できるが、その他の希ガスを使用しても良い。
スパッタリング法で希土類遷移金属合金の第二磁性層を形成するためには、希土類金属と遷移金属の2種のターゲットを用い、これらの共スパッタリング法を使用することも可能であるが、形成すべき希土類遷移金属合金の組成比に合致した希土類金属と遷移金属を均質に混合した混合物ターゲットを用いると、希土類遷移金属合金が均一に分散した磁性層を形成することができる。
【0023】
磁気記録媒体が磁気テープである場合について以下に説明する。
磁気テープに用いる可撓性支持体としては、合成樹脂フイルムが用いられる。具体的には、芳香族ポリイミド、芳香族ポリアミド、芳香族ポリアミドイミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、トリアセテートセルロース、フッ素樹脂等からなる合成樹脂フィルムが挙げられる。本発明では基板を加熱することなく良好な記録特性を達成することができるため、表面性が良好で、また入手も容易なポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレンナフタレートが特に好ましい。
【0024】
可撓性高分子支持体の厚みは、好ましくは3〜20μm、さらに好ましくは4μm〜12μmである。可撓性高分子支持体の厚みが3μmより薄いと、強度が不足し、切断やエッジ折れが発生しやすくなる。一方、可撓性高分子支持体の厚みが20μmより厚いと、磁気テープ一巻当たりに巻き取れる磁気テープ長が少なくなり、体積記録密度が低下してしまう。また剛性が高くなるため、磁気ヘッドへの当たり、すなわち追従性が悪化する。
【0025】
可撓性高分子支持体の表面は、磁気ヘッドと接触して情報の記録および読み出しを行うために、可能な限り平滑であることが好ましい。可撓性高分子支持体表面の凹凸は、信号の記録再生特性を著しく低下させる。
具体的には、後述する下塗り層を使用する場合は、光干渉式の表面粗さ計で測定した表面粗さが中心面平均粗さ(SRa)で通常、5nm以内、好ましくは2nm以内、触針式粗さ計で測定した突起高さが通常、1μm以内、好ましくは0.1μm以内である。また、下塗り層を用いない場合では、光干渉式の表面粗さ計で測定した表面粗さが中心面平均粗さ(SRa)で通常、3nm以内、好ましくは1nm以内、触針式粗さ計で測定した突起高さが通常、0.1μm以内、好ましくは0.06μm以内である。
【0026】
可撓性高分子支持体表面には、平面性の改善と気体遮断性を目的として下塗り層を設けることが好ましい。磁性層をスパッタリング等で形成するため、下塗り層は耐熱性に優れることが好ましく、下塗り層の材料としては、例えば、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂等を使用することができる。溶剤可溶型ポリイミド樹脂、熱硬化型ポリイミド樹脂、熱硬化型シリコーン樹脂は、平滑化効果が高く特に好ましい。下塗り層の厚みは、0.1μm〜3.0μmが好ましい。
熱硬化性シリコーン樹脂としては、有機基が導入されたケイ素化合物を原料としてゾルゲル法で重合したシリコーン樹脂が好適に用いられる。このシリコーン樹脂は、二酸化ケイ素の結合の一部を有機基で置換した構造からなりシリコーンゴムよりも大幅に耐熱性に優れると共に、二酸化ケイ素膜よりも柔軟性に優れるため、可撓性フィルムからなる高分子支持体上に樹脂膜を形成しても、クラックや剥離が生じ難い。また、原料となるモノマーを可撓性高分子支持体上に直接塗布して硬化させることができる。しかも、一般的な有機溶剤にモノマーを溶解させて塗布することができるので、凹凸に対する回り込みも良く、平滑化効果が高い。更に、縮重合反応は、酸やキレート剤などの触媒の添加により比較的低温から進行するため、短時間で硬化させることができ、汎用の塗布装置を用いて樹脂膜を形成することができる。
また熱硬化性シリコーン樹脂は気体遮断性に優れている。このため磁性層または下地層形成時に可撓性高分子支持体から発生して磁性層または下地層の結晶性、配向性を阻害する気体を遮蔽する気体遮蔽性が高く、特に好適である。
【0027】
下塗り層の表面には、磁気ヘッドやガイドポール等の摺動部材と磁気テープとの真実接触面積を低減し、摺動特性を改善することを目的として、微小突起(テクスチャ)を設けることが好ましい。また、微小突起を設けることにより、可撓性高分子支持体の取り扱い性も良好になる。微小突起を形成する方法としては、球状シリカ粒子を塗布する方法、エマルジョンを塗布して有機物の突起を形成する方法などが使用できるが、下塗り層の耐熱性を確保するため、球状シリカ粒子を塗布して微小突起を形成するのが好ましい。
【0028】
微小突起の高さは5nm〜60nmが好ましく、l0nm〜30mmがより好ましい。微小突起の高さが高すぎると記録再生ヘッドと磁気記録媒体のスペーシング損失によって信号の記録再生特性が劣化し、微小突起が低すぎると摺動特性の改善効果が少なくなる。微小突起の密度は0.1〜100個/μm2 が好ましく、1〜10個/μm2 がより好ましい。微小突起の密度が少なすぎる場合は摺動特性の改善効果が少なくなり、多過ぎると凝集粒子の増加によって高い突起が増加して記録再生特性が劣化する。
また、バインダーを用いて微小突起を支持体表面に固定することもできる。バインダーには、十分な耐熱性を備えた樹脂を使用することが好ましく、耐熱性を備えた樹脂としては、溶剤可溶型ポリイミド樹脂、熱硬化型ポリイミド樹脂、熱硬化型シリコン樹脂を使用することが特に好ましい。
【0029】
磁性層の下層には、下地層を設けることが好ましい。下地層としてはTi、Pt、Ru、Pd等の金属あるいはこれらの金属を主体とする合金、あるいはC等のアモルファス材料、Si、Al、Tiなどの窒化物、酸化物などをあげることができる。
この様な下地層を用いることによって、磁性層の配向性や粒状性を改善できるため、記録特性が向上する。下地層の厚みは10nm〜200nmが好ましく、20nm〜100nmが特に好ましい。
下地層によって磁性層が柱状に形成されたものが特に好ましい。柱状に形成されることによって、強磁性金属間の分離構造が安定し、高い保磁力を得ると共に、高出力が可能となり、また強磁性金属の分散が一様なものとなり低ノイズの磁気記録媒体が得られる。
【0030】
更に、下地層と可撓性高分子支持体との間には、下地層の密着性や構造を改善するために、シード層を設けることができる。シード層には、Ta、Ta−Si、Ni−P、Ni−Alなどを使用することができる。
【0031】
単磁極ヘッドによる垂直磁気記録を行う場合には磁性層と可撓性高分子支持体の間に軟磁性層を設けることが好ましい。軟磁性層を設けることによって、電磁変換特性を高めることができる。軟磁性材料としてはパーマロイやセンダスト等の材料が使用できる。その膜厚としては30〜200nmであることが好ましい。
【0032】
磁性層上には保護層が設けられる。保護層は磁性層に含まれる金属材料の腐蝕を防止し、磁気ヘッドと磁気テープとの擬似接触または接触摺動による摩耗を防止して、走行耐久性、耐食性を改善するために設けられる。保護層には、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化コバルト、酸化ニッケルなどの酸化物、窒化チタン、窒化ケイ素、窒化ホウ素などの窒化物、炭化ケイ素、炭化クロム、炭化ホウ素等の炭化物、グラファイト、無定型カーボンなどの炭素等の材料を使用することができる。
【0033】
保護層としては、磁気ヘッド材質と同等またはそれ以上の硬度を有する硬質膜であり、摺動中に焼き付きを生じ難くその効果が安定して持続するものが、摺動耐久性に優れており好ましい。また、同時にピンホールが少ないものが、耐食性に優れておりより好ましい。このような保護膜としては、CVD法で作製されるダイヤモンド状炭素(DLC)と呼ばれる硬質炭素膜が挙げられる。
保護層は、性質の異なる2種類以上の薄膜を積層した構成とすることができる。例えば、表面側に摺動特性を改善するための硬質炭素保護膜を設け、磁性層側に耐食性を改善するための窒化ケイ素などの窒化物保護膜を設けることで、耐食性と耐久性とを高い次元で両立することが可能となる。
【0034】
保護層上には、走行耐久性および耐食性を改善するために、潤滑層が設けられる。潤滑層には、炭化水素系潤滑剤、フッ素系潤滑剤、極圧添加剤等の潤滑剤が使用される。
炭化水素系潤滑剤としては、ステアリン酸、オレイン酸等のカルボン酸類、ステアリン酸ブチル等のエステル類、オクタデシルスルホン酸等のスルホン酸類、リン酸モノオクタデシル等のリン酸エステル類、ステアリルアルコール、オレイルアルコール等のアルコール類、ステアリン酸アミド等のカルボン酸アミド類、ステアリルアミン等のアミン類などが挙げられる。
【0035】
フッ素系潤滑剤としては、上記炭化水素系潤滑剤のアルキル基の一部または全部をフルオロアルキル基もしくはパーフルオロポリエーテル基で置換した潤滑剤が挙げられる。パーフルオロポリエーテル基としてはパーフルオロメチレンオキシド重合体、パーフルオロエチレンオキシド重合体、パーフルオロ−n−プロピレンオキシド重合体(CF2CF2CF2O)n、パーフルオロイソプロピレンオキシド重合体(CF(CF3)CF2O)n 、またはこれらの共重合体等である。具体的には、分子量末端に水酸基を有するパーフルオロメチレン−パーフルオロエチレン共重合体(アウジモント社製、商品名 FOMBLIN Z-DOL )等が挙げられる。
【0036】
極圧添加剤としては、リン酸トリラウリル等のリン酸エステル類、亜リン酸トリラウリル等の亜リン酸エステル類、トリチオ亜リン酸トリラウリル等のチオ亜リン酸エステルやチオリン酸エステル類、二硫化ジベンジル等の硫黄系極圧剤などが挙げられる。
【0037】
上記の潤滑剤は単独もしくは複数を併用して使用することができ、潤滑剤を有機溶剤に溶解した溶液を、スピンコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、ディップコート法等で保護層表面に塗布するか、真空蒸着法により保護層表面に付着させればよい。潤滑剤の塗布量としては、1〜30mg/m2が好ましく、2〜20mg/m2が特に好ましい。
【0038】
また、耐食性をさらに高めるために、防錆剤を併用することが好ましい。防錆剤としては、ベンゾトリアゾール、ベンズイミダゾール、プリン、ピリミジン等の窒素含有複素環類およびこれらの母核にアルキル側鎖等を導入した誘導体、ベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、テトラザインデン環化合物、チオウラシル化合物等の窒素および硫黄含有複素環類およびこの誘導体等が挙げられる。これら防錆剤は、潤滑剤に混合して保護層上に塗布してもよく、潤滑剤を塗布する前に保護層上に塗布し、その上に潤滑剤を塗布してもよい。防錆剤の塗布量としては、0.1〜10mg/m2が好ましく、0.5〜5mg/m2が特に好ましい。
【0039】
可撓性高分子支持体の磁性層を形成した面とは反対側の面にはバックコート層を設けることが好ましい。バックコート層は磁気記録媒体と摺動部材が摺動する際に磁気記録媒体の背面の磨耗を防止する潤滑効果を有している。また、バックコート層に潤滑層に用いる潤滑剤や防錆剤を添加することによって、バックコート層側から磁性層側へ潤滑剤や防錆剤が供給されるので、磁性層の耐食性を長期間保持することが可能となる。また、バックコート層自体のpHを調整することで磁性層の耐食性をさらに高めることもできる。
バックコート層はカーボンブラック、炭酸カルシウム、アルミナ等の非磁性紛体とポリ塩化ビニルやポリウレタンなどの樹脂結合剤、さらに潤滑剤や硬化剤を有機溶剤に分散した溶液をグラビア法やワイヤーバー法などで塗布し、乾燥することで作製できる。
バックコート層に防錆剤や潤滑剤を付与する方法としては、前記の溶液中に溶解しても良いし、作製したバックコート層に塗布しても良い。
【0040】
次に、磁気記録媒体がフレキシブルディスクである場合について説明をする。
フレキシブルディスクの支持体は、磁気ヘッドとフレキシブルディスクとが接触した時の衝撃を回避するために、可撓性を備えた合成樹脂フィルム、すなわち可撓性高分子支持体で構成されている。このような合成樹脂フィルムとしては、芳香族ポリイミド、芳香族ポリアミド、芳香族ポリアミドイミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、トリアセテートセルロース、フッ素樹脂等からなる合成樹脂フィルムが挙げられる。本発明では基板を加熱することなく良好な記録特性を達成することができるため、表面性が良好な基材が得られ、しかも入手が容易なポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレンナフタレートが特に好ましい。
【0041】
また、可撓性高分子支持体として合成樹脂フィルムを複数枚を積層したものを用いても良い。複数枚を積層した積層フィルムを用いることにより、可撓性高分子支持体自身に起因する反りやうねりを軽減することができる。その結果、磁気記録媒体の表面が磁気ヘッドと衝突による磁性層の耐傷性を著しく改善することがきる。
可撓性フイルムを積層する方法としては、熱ロールによるロール積層、平板熱プレスによる平板積層、接着面に接着剤を塗布してラミネートするドライ積層、予めシート状に成形された接着シートを用いる積層方法等が挙げられる。積層に接着剤を用いる場合には、ホットメルト接着剤、熱硬化性接着剤、UV硬化型接着剤、EB硬化型接着剤、粘着シート、嫌気性接着剤などを使用することがきる。
【0042】
可撓性高分子支持体の厚みは、10μm〜200μm、好ましくは20μm〜150μm、さらに好ましくは30μm〜100μmである。可撓性高分子支持体の厚みが10μmより薄いと、高速回転時の安定性が低下し、面ぶれが増加する。一方、可撓性高分子支持体の厚みが200μmより厚いと、回転時の剛性が高くなり、接触時の衝撃を回避することが困難になり磁気ヘッドの跳躍を招く。
【0043】
可撓性支持体の腰の強さは、下記式で表され、b=10mmでの値が0.5kgf/mm2〜2.0kgf/mm2(≒4.9〜19.6MPa)の範囲にあることが好ましく、0.7kgf/mm2〜1.5kgf/mm2(≒6.9〜14.7MPa)がより好ましい。
支持体の腰の強さ=Ebd3/12
なお、この式において、Eはヤング率、bはフィルム幅、dはフィルム厚さを各々表す。
【0044】
可撓性高分子支持体の表面は、磁気ヘッドによる記録を行うために、可能な限り平滑であることが好ましい。支持体表面の凹凸は、信号の記録再生特性を著しく低下させる。具体的には、後述する下塗り層を使用する場合では、光干渉式の表面粗さ計で測定した表面粗さが中心面平均粗さSRaで5nm以内、好ましくは2nm以内、触針式粗さ計で測定した突起高さが1μm以内、好ましくは0.1μm以内である。また、下塗り膜を用いない場合では、光干渉式の表面粗さ計で測定した表面粗さが中心面平均粗さSRaで3nm以内、好ましくは1nm以内、触針式粗さ計で測定した突起高さが0.1μm以内、好ましくは0.06μm以内である。
【0045】
可撓性高分子支持体表面には、平面性の改善と気体遮断性を高めるために下塗り層を設けることが好ましい。磁性層をスパッタリング等で形成するため、下塗り層は耐熱性に優れることが好ましく、下塗り層の材料としては、例えば、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂等を使用することができる。熱硬化型ポリイミド樹脂、熱硬化型シリコーン樹脂は、平滑化効果が高く、特に好ましい。下塗り層の厚みは、0.1μm〜3.0μmが好ましい。支持体に他の樹脂フィルムを積層する場合には、積層加工前に下塗り層を形成してもよく、積層加工後に下塗り層を形成してもよい。
【0046】
熱硬化性ポリイミド樹脂としては、ビスアリルナジイミド(丸善石油化学社製BANI)のように、分子内に末端不飽和基を2つ以上有するイミドモノマーを、熱重合して得られるポリイミド樹脂が好適に用いられる。このイミドモノマーは、モノマーの状態で支持体表面に塗布した後に、比較的低温で熱重合させることができるので、原料となるモノマーを支持体上に直接塗布して硬化させることができる。また、このイミドモノマーは一般的な有機溶剤に溶解させて使用することができ、生産性、作業性に優れると共に、分子量が小さく、その溶液粘度が低いために、塗布時に凹凸に対する回り込みが良く、平滑化効果が高い。
【0047】
熱硬化性シリコーン樹脂としては、有機基が導入されたケイ素化合物を原料としてゾルゲル法で重合したシリコーン樹脂が好適に用いられる。このシリコーン樹脂は、二酸化ケイ素の結合の一部を有機基で置換した構造からなりシリコーンゴムよりも大幅に耐熱性に優れると共に、二酸化ケイ素膜よりも柔軟性に優れるため、可撓性フィルムからなる支持体上に樹脂膜を形成しても、クラックや剥離が生じ難い。また、原料となるモノマーを可撓性高分子支持体上に直接塗布して硬化させることができるため、汎用溶剤を使用することができ、凹凸に対する回り込みも良く、平滑化効果が高い。更に、縮重合反応は、酸やキレート剤などの触媒の添加により比較的低温から進行するため、短時間で硬化させることができ、汎用の塗布装置を用いて樹脂膜を形成することができる。また熱硬化性シリコーン樹脂は気体遮断性に優れており、磁性層形成時に可撓性高分子支持体から発生し、磁性層または下地層の結晶性、配向性を阻害する気体を遮蔽する気体遮蔽性が高く、特に好適である。
【0048】
下塗り層の表面には、磁気ヘッドとフレキシブルディスクとの真実接触面積を低減し、摺動特性を改善することを目的として、微小突起(テクスチャ)を設けることが好ましい。また、微小突起を設けることにより、可撓性高分子支持体の取り扱い性も良好になる。微小突起を形成する方法としては、球状シリカ粒子を塗布する方法、エマルジョンを塗布して有機物の突起を形成する方法などが使用できるが、下塗り層の耐熱性を確保するため、球状シリカ粒子を塗布して微小突起を形成するのが好ましい。
【0049】
微小突起の高さは5nm〜60nmが好ましく、l0nm〜30mmがより好ましい。微小突起の高さが高すぎると記録再生ヘッドと媒体のスペーシング損失によって信号の記録再生特性が劣化し、微小突起が低すぎると摺動特性の改善効果が少なくなる。微小突起の密度は0.1〜100個/μm2が好ましく、1〜10個/μm2がより好ましい。微小突起の密度が少なすぎる場合は摺動特性の改善効果が少なくなり、多過ぎると凝集粒子の増加によって高い突起が増加して記録再生特性が劣化する。
また、バインダーを用いて微小突起を支持体表面に固定することもできる。バインダーには、十分な耐熱性を備えた樹脂を使用することが好ましく、耐熱性を備えた樹脂としては、溶剤可溶型ポリイミド樹脂、熱硬化型ポリイミド樹脂、熱硬化型シリコン樹脂を使用することが特に好ましい。
【0050】
磁性層の下層には、下地層を設けることが好ましい。下地層としてはTi、Pt、Ru、Pd等の金属あるいはこれらの金属を主体とする合金、あるいはC等のアモルファス材料、Si、Al、Tiなどの窒化物、酸化物などをあげることができる。
この様な下地層を用いることによって、磁性層の配向性や粒状性を改善できるため、記録特性が向上する。下地層の厚みは10nm〜200nmが好ましく、20nm〜100nmが特に好ましい。
下地層によって磁性層が柱状に形成されたものが特に好ましい。柱状に形成されることによって、強磁性金属間の分離構造が安定し、高い保磁力を得ると共に、高出力が可能となり、また強磁性金属の分散が一様なものとなり低ノイズの磁気記録媒体が得られる。
【0051】
更に、下地層と可撓性高分子支持体との間には、下地層の密着性や構造を改善するために、シード層を設けることができる。シード層には、Ta、Ta−Si、Ni−P、Ni−Alなどを使用することができる。
【0052】
単磁極ヘッドによる垂直磁気記録を行う場合には磁性層と可撓性高分子支持体の間に軟磁性層を設けることが好ましい。軟磁性層を設けることによって、電磁変換特性を高めることができる。軟磁性材料としてはパーマロイやセンダスト等の材料が使用できる。その膜厚としては30〜200nmであることが好ましい。 磁性層の下層には、下地層を設けることが好ましい。下地層としてはCrまたはCrとTi、Si、W、Ta、Zr、Mo、Nb等から選ばれる金属との合金、Ru、Cなどを挙げることができる。
【0053】
磁性層の表面には保護層が設けられる。保護層は、磁性層に含まれる金属材料の腐蝕を防止し、磁気ヘッドと磁気ディスクとの擬似接触または接触摺動による摩耗を防止して、走行耐久性、耐食性を改善するために設けられる。保護層には、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化コバルト、酸化ニッケルなどの酸化物、窒化チタン、窒化ケイ素、窒化ホウ素などの窒化物、炭化ケイ素、炭化クロム、炭化ホウ素等の炭化物、グラファイト、無定型カーボンなどの炭素等の材料を使用することができる。
【0054】
保護層としては、磁気ヘッド材質と同等またはそれ以上の硬度を有する硬質膜であり、摺動中に焼き付きを生じ難くその効果が安定して持続するものが、摺動耐久性に優れており好ましい。また、同時にピンホールが少ないものが、耐食性に優れておりより好ましい。このような保護膜としては、CVD法で作製されるダイヤモンド状炭素(DLC)と呼ばれる硬質炭素膜が挙げられる。
保護層は、性質の異なる2種類以上の薄膜を積層した構成とすることができる。例えば、表面側に摺動特性を改善するための硬質炭素保護膜を設け、磁性層側に耐食性を改善するための窒化ケイ素などの窒化物保護膜を設けることで、耐食性と耐久性とを高い次元で両立することが可能となる。
【0055】
保護層上には、走行耐久性および耐食性を改善するために、潤滑層が設けられる。潤滑層には、炭化水素系潤滑剤、フッ素系潤滑剤、極圧添加剤等の潤滑剤が使用される。
炭化水素系潤滑剤としては、ステアリン酸、オレイン酸等のカルボン酸類、ステアリン酸ブチル等のエステル類、オクタデシルスルホン酸等のスルホン酸類、リン酸モノオクタデシル等のリン酸エステル類、ステアリルアルコール、オレイルアルコール等のアルコール類、ステアリン酸アミド等のカルボン酸アミド類、ステアリルアミン等のアミン類などが挙げられる。
【0056】
フッ素系潤滑剤としては、上記炭化水素系潤滑剤のアルキル基の一部または全部をフルオロアルキル基もしくはパーフルオロポリエーテル基で置換した潤滑剤が挙げられる。パーフルオロポリエーテル基としては、パーフルオロメチレンオキシド重合体、パーフルオロエチレンオキシド重合体、パーフルオロ−n−プロピレンオキシド重合体(CF2CF2CF2O)n、パーフルオロイソプロピレンオキシド重合体(CF(CF3)CF2O)n、またはこれらの共重合体等である。具体的には、分子量末端に水酸基を有するパーフルオロメチレン−パーフルオロエチレン共重合体(アウジモント社製、商品名:FOMBLIN Z-DOL)等が挙げられる。
【0057】
極圧添加剤としては、リン酸トリラウリル等のリン酸エステル類、亜リン酸トリラウリル等の亜リン酸エステル類、トリチオ亜リン酸トリラウリル等のチオ亜リン酸エステルやチオリン酸エステル類、二硫化ジベンジル等の硫黄系極圧剤などが挙げられる。
【0058】
上記の潤滑剤は単独もしくは複数を併用して使用することができ、潤滑剤を有機溶剤に溶解した溶液を、スピンコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、ディップコート法等で保護層表面に塗布するか、真空蒸着法により保護層表面に付着させればよい。潤滑剤の塗布量としては、1〜30mg/m2が好ましく、2〜20mg/m2が特に好ましい。
【0059】
また、耐食性をさらに高めるために、防錆剤を併用することが好ましい。防錆剤としては、ベンゾトリアゾール、ベンズイミダゾール、プリン、ピリミジン等の窒素含有複素環類およびこれらの母核にアルキル側鎖等を導入した誘導体、ベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、テトラザインデン環化合物、チオウラシル化合物等の窒素および硫黄含有複素環類およびこの誘導体等があげられる。これら防錆剤は、潤滑剤に混合して保護層上に塗布してもよく、潤滑剤を塗布する前に保護層18上に塗布し、その上に潤滑剤を塗布してもよい。防錆剤の塗布量としては、0.1〜10mg/m2が好ましく、0.5〜5mg/m2が特に好ましい。
【0060】
ハードディスクを作製する場合には、支持体としてAlまたはその合金、ガラス、カーボン、ポリカーボネート、アモルファスポリオレフィン等が使用できる。これらの材料は打ち抜き、成型等の手法によってあらかじめ所定の形状に加工したものを準備し、この表面を機械的あるいは化学的に研磨し、十分に平滑にした後、必要に応じてテクスチャーを設け、適度の表面粗さに仕上げる。
その他、ハードディスクを作製する上で上記テープやフレキシブルディスクで記載した技術を適宜適用することができる。
【0061】
以下に、可撓性高分子支持体を用いた磁気記録媒体の作製方法について説明する。
成膜装置を用いた可撓性高分子支持体上への磁性層の形成方法を説明する。
成膜装置は、真空室を有し、巻だしロールから巻だされた可撓性高分子支持体は、張力調整ロールによって張力を調整されて、成膜室へ送られる。
成膜室は真空ポンプによって所定の減圧度に減圧された状態でアルゴンがスパッタリング気体供給管から所定の流量で供給されている。可撓性高分子支持体は、成膜室に設けた成膜ロールに巻つきながら搬送された状態で、下地層スパッタリング装置のターゲットから下地層形成用の原子が飛び出して可撓性高分子支持体上に成膜される。
【0062】
次いで、成膜ロールにおいて、磁性層スパッタリング装置に装着した強磁性金属合金と非磁性金属酸化物を均一に分散したターゲットから、磁性層形成用原子が放出されて下地層上に磁性層が形成される。
次に、磁性層が形成された面を第2の成膜ロールに巻きつけながら移動した状態で、下地層スパッタリング装置のターゲットから下地層形成用の原子が飛び出して可撓性高分子支持体の先に磁性層が形成された面とは反対側が成膜される。更に、成膜ロール上において、磁性層スパッタリング装置に装着した強磁性金属合金と非磁性金属酸化物を均一に分散したターゲットから、磁性層形成用原子が放出されて下地層上に磁性層が形成される。
【0063】
以上の工程によって、可撓性高分子支持体の両面に磁性層が形成されて、巻き取りロールによって巻き取られる。
また、以上の説明では、可撓性高分子支持体の両面に磁性層を形成する方法について説明をしたが、同様の方法で一方の面のみに形成することも可能である。
磁性層を形成した後に、磁性層上にダイヤモンド状炭素をはじめとした保護層がCVD法によって形成される。
【0064】
本発明に適用可能な高周波プラズマを利用したCVD装置の一例を説明する。磁性層を形成した可撓性高分子支持体は、ロールから巻き出され、パスローラによってバイアス電源からバイアス電圧が磁性層に給電され成膜ロールに巻きつけられた状態で走行する。
一方、炭化水素、窒素、希ガス等を含有する原料気体は、高周波電源から印加された電圧によって発生したプラズマによって、成膜ロール上の金属薄膜上に窒素、希ガスを含有した炭素保護膜が形成され、巻き取りロールに巻き取られる。また、炭素保護膜の作製の前に磁性膜表面を希ガスや水素ガスによるグロー処理などによって清浄化することでより大きな密着性を確保することができる。また、磁性層表面にシリコン中間層等を形成することによって密着性をさらに高めることができる。
【0065】
【実施例】
以下に実施例、比較例を示し、本発明を説明する。
(磁気テープの作製)
実施例1−1
厚み6.3μm、表面粗さRa=1.2nmのポリエチレンテレフタレートフィルム上に3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、塩酸、アルミニウムアセチルアセトネート、エタノールからなる下塗り液をグラビアコート法で塗布した後、100℃で乾燥と硬化を行い、厚み0.2μmのシリコーン樹脂からなる下塗り層を作製した。
得られた下塗り層上に粒子径25nmのシリカゾルと前記下塗り液を混合した塗布液をグラビアコート法で塗布して、下塗り層上に高さ15nmの突起を10個/μm2の密度で形成して、磁気テープ用原反とした。
【0066】
次にウェブスパッタリング装置に得られた原反を装着し、水冷した成膜ロール上にフィルムを密着させながら搬送し、下塗り層上にDCマグネトロンスパッタリング法でTiからなる下地層を30nmの厚みで形成し、引き続き、CoPtCr合金(Co:Pt:Cr=70:20:10原子比):SiO2=88:12(金属原子比)からなる組成の第一磁性層を20nmの厚みで形成し、さらにTb18Fe72Co10(原子比)からなる組成の第二磁性層を5nmの厚みで形成した。
【0067】
次に磁性層を形成した原反をウェブ式のCVD装置に装着して、エチレンガス、窒素ガス、アルゴンガスを反応ガスとして用いたRFプラズマCVD法でC:H:N=62:29:7(mol比)からなる窒素添加ダイヤモンド状炭素(DLC)保護膜を10nmの厚みで形成した。なおこのとき磁性層には−400Vのバイアス電圧を印加した。
【0068】
次に可撓性高分子支持体の磁性層を形成した面とは反対側の面にカーボンブラック、炭酸カルシウム、ステアリン酸、ニトロセルロース、ポリウレタン、イソシアネート硬化剤をメチルエチルケトンに溶解、分散したバックコート液をワイヤーバー法で塗布し、100℃で乾燥して、厚み0.5μmのバックコート層を作製した。
【0069】
更に、保護層表面に分子末端に水酸基を有するパーフルオロポリエーテル系潤滑剤(アウジモント社製FOMBLIN Z−DOL)をフッ素系溶剤(住友スリーエム社製HFE−7200)に溶解した溶液をグラビアコート法で塗布し、厚み1nmの潤滑層を形成した。
【0070】
次に得られた原反を幅8mmに裁断した後に、表面をテープ研磨した後に8mmビデオカセット用のカートリッジに組み込んで磁気テープを作製した。
【0071】
比較例1−1
実施例1−1において磁性層の組成を第一磁性層及び第二磁性層共にCo:Pt:Cr=70:20:10(原子比)とし、総厚25nmとした以外の点は実施例1−1と同様に磁気テープを作製した。
【0072】
比較例1−2
実施例1−1において第一磁性層をCo:Pt:Cr=70:20:10(原子比)とし、下地層と第一磁性層を成膜する際の成膜ロールの温度を150℃として成膜し、一度巻き取った後、基板を水冷し、第二磁性層を形成した以外は実施例1−1と同様に磁気テープを作製した。
【0073】
比較例1−3
実施例1−1において第一磁性層の膜厚を25nmとし、第二磁性層を形成しなかった以外は実施例1−1と同様に磁気テープを作製した。
【0074】
得られた各々の磁気テープを以下に示した評価方法1によって特性の評価を行い、その結果を表1に示す。
【0075】
(評価方法1)
1.磁気特性
垂直方向の保磁力Hcを試料振動型磁力計(VSM)で測定して磁気特性とした。
2.カッピング量
磁気テープを長さ100mmに切断し、これを平滑なガラス板に静置し、そのテープ幅を測定することで、テープ幅方向の変形をカッピング量として評価した。
3.C/N
インダクティブヘッドで記録し、再生トラック幅2.2μm、再生ギャップ0.26μmのMRヘッドを用いて、線記録密度130kFCIの記録再生を行い、再生信号/ノイズ(C/N)比を測定した。なおこのとき、テープ/ヘッドの相対速度は10m/sec、ヘッド加重は29.4mN(3gf)とした。
4.耐久性
8mmビデオテープレコーダでスチル再生を行い、出力が初期値の−3dBとなった時点までのスチル再生時間を耐久時間として表した。なお測定環境は23℃10%RHとし、試験は最大24時間とした。
5.保存性
60℃50%RHの環境に72時間保管し、保管前後の信号出力減少幅を調べた。
【0076】
【表1】
【0077】
上記結果から本発明の磁気テープは記録特性、耐久性、保存性に優れていることがわかる。一方、磁性層に非磁性金属酸化物を含有していない比較例1−1の磁気テープは保磁力(Hc)が低下し、記録特性が低下している。さらに下地層と磁性層の成膜温度を高めた比較例2では、保磁力は改善されたものの、可撓性高分子支持体のフィルムが熱で変形してしまい耐久性が著しく悪化した。また、テープ表面を顕微鏡観察したところ、磁性層に微細なクラックが発生していた。希土類遷移金属を用いなかった比較例1−3のサンプルでは保存後の信号出力が大きく、熱揺らぎの影響が現れた。
【0087】
【発明の効果】
本発明はリムーバブル型磁気記録媒体として使用することができる磁気テープ、フレキシブルディスク等に有用な磁気記録媒体であって、高密度記録が可能な垂直磁気記録媒体を安価に提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の一実施態様を示す図であり、支持体面に対して垂直方向に切断した断面図である。
【符号の説明】
1:磁気記録媒体、2:支持体、3A:第一磁性層、3B:第二磁性層、3:磁性層、4:保護層、5:潤滑層
Claims (1)
- 支持体の少なくとも一方の面に、コバルトを含有する強磁性金属合金と非磁性金属酸化物から構成された第一磁性層と希土類遷移金属合金からなる第二磁性層をこの順に積層し、前記支持体は厚み3〜20μmの可撓性高分子支持体からなり、該可撓性高分子支持体表面には、厚み0.1μm〜3.0μmの下塗り層を設けることを特徴とする磁気記録媒体。
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