JP2007171176A - 時計のムーブメント用のトリップ防止装置 - Google Patents

時計のムーブメント用のトリップ防止装置 Download PDF

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Abstract


【課題】 テンプ(1)を有し、前記テンプ(1)が正規の振れ角を越えて回転するのを阻止する、時計の脱進機のトリップ防止装置を提供する。
【解決手段】 本発明のテンプ(1)を有するトリップ防止装置は、前記テンプ(1)に取り付けられた真(2)が、かな(3)を具備し、前記かな(3)は、回転方向の如何を問わず、前記テンプ(1)が正規の振れ角を越えて回転するのを阻止する回転阻止手段(4)とかみ合う。
【選択図】 図3

Description

本発明は、時計の脱進機のトリップ防止装置に関し、特に、ヒゲゼンマイを有し、テンプが正規の振れ角を越えて回転するのを防止する装置に関する。
いくつかのトリップ防止装置が特許文献に開示されている。これらのトリップ防止装置の1つは、非特許文献1にも開示されている。特に、同文献のパラグラフ116−120(ページ74−77)と図25を参照されたい。このトリップ防止装置は、複数のコイルから形成されるヒゲゼンマイと、少なくとも1本のアームを具備するテンプを有する脱進機で実現されている。テンプ/ガンギ車は、プレートとブリッジの間に回転可能に搭載されている。このトリップ防止装置は、テンプのアームに固定されたフィンガと、2本のコラム(柱)と、ロッキング・アームとを有する。この2本の柱の間をテンプが動作中にフィンガが通過する。これらの柱は、テンプのブリッジに固定されている。ロッキング・アームは、ヒゲゼンマイの外側のコイルに固定されている。このロッキング・アームは、コラム(柱)とフィンガの間に挿入され、テンプがその正規の振れ角を越えて回転するのを阻止する。
欧州特許第A1538491号明細書 "Der Chronometer Gang" by Professor Alois Lrk and published by Deutsche Uhrmacher Zeitung, Berlin 1923
このトリップ防止装置は、いわゆる「つめ付き脱進機(detent escapement)」と称し、大きな時計(例えば海洋時計)に適したものである。これらの時計は、非常に高精度であると評価され、つめ付き脱進機は、その高精度ゆえに公知であり、しばしば用いられている。しかしこの脱進機には大きな欠点がある。ショック(衝撃)に弱いことである。従って、腕時計には適さないとされている。実際、時計に加わる衝撃により、テンプが正規の振れ角を越えて回転することがある。これにより、2回のロック解除と2回のパルスが同一振動の間に発生するため、トリップが、少なくともテンプの一回転方向に発生する、
小型の時計(例、腕時計)に「つめ付き脱進機」を適用して、従来のスイス・レバー脱進機を置換し、このつめ付き脱進機による利点を享受しようとする場合には、従来とは異なる新たな技術を用いて、この欠点を回避しなければならない。さまざまな解決方法が提案され、これにより、「つめ付き脱進機」のつめにかかる力に打ち勝つために、腕時計のヒゲゼンマイによるエネルギーの不足を補償しようとしている。これらの解決方法の一例が特許文献1に開示されている。しかし、トリップの問題は依然として残り、小型のヒゲゼンマイ(例えば腕時計に搭載されるようなもの)を用いる場合には、この問題を解決しなければならない。
非特許文献1により提案された解決方法を腕時計に適用すると、少なくとも2つの欠点がある。第1の欠点は、柔軟性/弾性部材(この場合ヒゲゼンマイの外側コイル)に固定されるロッキング要素を使用することである。これは、機械的な解決方法ではなく、ヒゲゼンマイの柔軟性に関連するあらゆる種類の予期せぬ未知の力がかかり、これにより、時計に衝撃が加わった後、予期せぬ方向に変形することである。第2の欠点は、非特許文献1のシステムでは、テンプの一回転方向(ヒゲゼンマイの最大拡張方向)にのみ動作する点である。他の方向(ヒゲゼンマイの収縮方向)に対しては、脱進機はトリップしてしまい、非特許文献1のシステムは十分ではない。
上記の欠点を解決するために、本発明は、次のような構成を有する。
付記1
テンプ1を有し、前記テンプ1が正規の振れ角を越えて回転するのを阻止する、時計の脱進機のトリップ防止装置において、
前記テンプ1に取り付けられた真2が、かな3を具備し、
前記かな3は、回転方向の如何を問わず、前記テンプ1が正規の振れ角を越えて回転するのを阻止する回転阻止手段4とかみ合う
ことを特徴とする時計ムーブメント用のトリップ防止装置。
付記2
前記回転阻止手段4は、前記かな3とかみ合う歯車5を有し、前記テンプ1が正規の振れ角を越えて回転するときには、固定された停止部材8に当たる少なくとも1本のスポーク6、7を具備する
ことを特徴とする付記1記載のトリップ防止装置。
付記3
前記回転阻止手段4は、ラック9を形成する回転可能な歯付きセクタを有し、前記テンプ1が正規の振れ角を越えて駆動されたときには、固定された停止部材8に当たる2本のエンド・スポーク10、11を具備する
ことを特徴とする付記1記載のトリップ防止装置。
付記4
前記停止部材8は、時計のプレート15に固定されたピン13、14である
ことを特徴とする付記2または3記載のトリップ防止装置。
付記5
前記かな3と、前記かな3により駆動される回転阻止手段4との間のギア比は、0.24である
ことを特徴とする付記1記載のトリップ防止装置。
図は、本発明のトリップ防止装置の2つの実施例を示す。このトリップ防止装置は時計の脱進機用で、特にこれに限定されるものではないが、つめ付き脱進機用である。図には、本発明の理解に必要なその一部の要素(すなわちテンプ1)のみを示す。本発明のトリップ防止装置は、テンプが正規の振れ角を越えて回転するのを阻止する。
ここに開示された「つめ付き脱進機」は、本発明のトリップ防止装置が適用される一実施例である。このつめ付き脱進機は図示しない以下の要素を含むが、これらの要素は、特許文献1に開示されている。すなわち、ロッキング用のアンクル石上に停止する歯を具備するガンギ車と、ブレーキレバーとを有する。このブレーキレバーは、その第1端に前記のロッキング用アンクル石と、その第2端に第1の駆動フィンガとを有する。この第1の駆動フィンガは、テンプに固定されたプレートが具備する第2駆動フィンガにより駆動される。このプレートは、さらにガンギ車の歯からの推進力を受ける推進アンクル石を具備する。テンプの各振動時に、ロッキング用のアンクル石は、ガンギ車の歯から解放され、ガンギ車の別の歯が、推進アンクル石に作用/動作してテンプに推進力を与える。この第2駆動フィンガは、ブレーキレバーの第1フィンガをテンプの一回転方向にのみ駆動するよう配置される。すなわち、推進力が発生した後、振動の第1振動の間である。テンプが反対方向に回転するとき、すなわち振動の第2の振動の間、テンプの第1フィンガは、駆動されない。その理由は、プレートが具備する第2フィンガが収縮し、その後推進力が生成されないからである。
上記の説明から明らかなように、第1振動によりテンプが正規の振れ角(320度)を超えて回転すると(例えば時計に加わった衝撃の結果)、ブレーキレバーの第1フィンガは2回駆動される。この2回目の推進力が同一の振動の間に生成されると、脱進機はトリップする。2回目の振動によりテンプが正規の振れ角を超えて回転すると、プレートが具備した第2フィンガは2回収縮し、その後、プレートの回転方向を変えることにより前記の第2フィンガによりロッキング・アンクル石が解放され、その後、望ましくない推進力により、かくしてテンプの同期をはずすことになる。
テンプの所望以上の回転を阻止して上記の欠点を回避するために、本発明は、テンプ1に取り付けられた真2が、かな3を具備し、このかな3は、回転方向の如何を問わず、前記テンプ1が正規の振れ角を越えて回転するのを阻止する回転阻止手段4とかみ合う。
図1、2は、本発明の第1実施例を示す。同図において、回転阻止手段4は、テンプ1が正規の振れ角を越えて回転するのを阻止する。テンプ1は、歯車5を有する。この歯車5は、テンプ1の真2により具備されるかな(ピニオン)3とかみ合う。この歯車5は、少なくとも2本のスポーク6、7を有し、スポーク6、7が、テンプ1が正規の振れ角を越えて回転したときに、固定された停止部材8に当たる。図2は、停止部材8がプレート15内に固定されたピン13であることを示すより詳細な説明図である。
図3、4は、本発明の第2実施例を示す。同図において、回転阻止手段4は、テンプ1が正規の振れ角を越えて回転するのを阻止し、ラック9で形成される回転可能な歯の付いたセクタの1つから構成される。このラック9は、2本のエンド・スポーク10、11を有し、エンド・スポーク10、11は、テンプ1がその正規の振れ角を越えて回転したときに、停止部材8に当たる。図4は、停止部材8がプレート15内にねじ込まれたピン14であることを示す詳細図である。
この両方の実施例に対し、歯車5のスポーク6、7と、ラック9のエンド・スポーク10、11が、その回転方向に関わらず、テンプ1が正規の動作角を越えて回転するのを阻止する。これは、上記の非特許文献1で提案されたシステム(このシステムではテンプの一回転方向のみ制限可能である)より利点がある。本発明は、テンプとその移動を制限する手段との間に剛性結合と称する機械的結合によっている。その理由は、この機械結合は非特許文献1で提案された弾性素子を使用していないからである。
一例として、この2つの実施例においては、テンプ1のかな3は9個のウイング(歯)を含んでいる。図1の歯車5とかな3のラック9(完全な歯車の一部と見た場合)は、それぞれ38枚の歯を有し、それ故に、ギア比は9/38=0.24である。前述したように、テンプの正規の振れ角は、約320度である。このことは、図3のラック9は320×0.24=76.8度回転することになる。図3に示すように、ラック9の回転を角度=約80°に、制限することにより、脱進機は適正に動作し、トリップを阻止する。この制限は、エンド・スポーク11はピン14に当たったときに起きる。同じことが、テンプの反対方向の回転に対しても言え、そこではエンド・スポーク10がピン14に当たる。同一の角80°である(図示せず)。
歯車5またはラック9が、常時動くテンプのかな3と永久にかみ合っているので、このような要素の材料は、非常に低い摩擦係数のものを選択することが重要である。経験上、かな3が鋼製で、歯車5またはラック9が、真鍮製であるのが好ましい。
この2つの実施例のうち、ラック9を歯車5よりも軽くすることが好ましい。すると、ラック9のバランスの問題が発生する。図3は、ラック9の歯に対向して回転中心にできるだけ近く配置するカウンタ・ウエイト16を用い、組み立て全体の慣性モーメントを下げている。
本発明の変形例によれば(図示せず)、歯車5は、1本のアーム/スポークのみを具備することも可能である。この場合、この歯車5とかな(ピニオン)3のギア比は、テンプが、正規の振れ角を越えて駆動したときには、アーム/スポークが停止部材8に当たるように設定する。
以上の説明は、本発明の一実施例に関するもので、この技術分野の当業者であれば、本発明の種々の変形例を考え得るが、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。特許請求の範囲の構成要素の後に記載した括弧内の番号は、図面の部品番号に対応し、発明の容易なる理解の為に付したものであり、発明を限定的に解釈するために用いてはならない。また、同一番号でも明細書と特許請求の範囲の部品名は必ずしも同一ではない。これは上記した理由による。
本発明の第1実施例のトリップ防止装置の平面図。 図1の実施例の断面図。 本発明の第2実施例のトリップ防止装置の平面図。 図3の実施例の断面図。
符号の説明
1 テンプ
2 真
3 かな(ピニオン)
4 回転阻止手段
5 歯車
6,7 スポーク
8 停止部材
9 ラック
10,11 エンド・スポーク
13,14 ピン
15 プレート
16 カウンタ・ウエイト

Claims (5)

  1. テンプ(1)を有し、前記テンプ(1)が正規の振れ角を越えて回転するのを阻止する、時計の脱進機のトリップ防止装置において、
    前記テンプ(1)に取り付けられた真(2)が、かな(3)を具備し、
    前記かな(3)は、回転方向の如何を問わず、前記テンプ(1)が正規の振れ角を越えて回転するのを阻止する回転阻止手段(4)とかみ合う
    ことを特徴とする時計ムーブメント用のトリップ防止装置。
  2. 前記回転阻止手段(4)は、前記かな(3)とかみ合う歯車(5)を有し、前記テンプ(1)が正規の振れ角を越えて回転するときには、固定された停止部材(8)に当たる少なくとも1本のスポーク(6、7)を具備する
    ことを特徴とする請求項1記載のトリップ防止装置。
  3. 前記回転阻止手段(4)は、ラック(9)を形成する回転可能な歯付きセクタを有し、前記テンプ(1)が正規の振れ角を越えて駆動されたときには、固定された停止部材(8)に当たる2本のエンド・スポーク(10、11)を具備する
    ことを特徴とする請求項1記載のトリップ防止装置。
  4. 前記停止部材(8)は、時計のプレート(15)に固定されたピン(13、14)である
    ことを特徴とする請求項2または3記載のトリップ防止装置。
  5. 前記かな(3)と、前記かな(3)により駆動される回転阻止手段(4)との間のギア比は、0.24である
    ことを特徴とする請求項1記載のトリップ防止装置。
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