JP2007168131A - 光学記録媒体及びその記録層形成用色素 - Google Patents

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Abstract

【課題】 光学記録媒体の記録層形成時の塗布溶媒である2,2,3,3−テトラフルオロプロパノール(TFP)への溶解性に優れ、かつ、青色レーザー光を用いた光記録にも対応可能な光学記録媒体。
【解決手段】記録層形成用のベンゾオキサゾール−置換基を有しても良いある種のアリール基金属キレート錯体系色素を用いる。
【選択図】 なし

Description

本発明は、光学記録媒体の記録層の形成に用いられるベンズイミダゾール−置換基を有してもよいアリール基金属キレート錯体系色素に関するものである。特に、本発明は青色レーザー光対応の光学記録媒体に用いられる色素に関するものである。本発明はまた、このような色素を用いた記録層を有する光学記録媒体およびその記録方法に関する。
近年、高密度での情報の記録保存/再生が可能なことから、レーザー光を用いた光学記録媒体、特に光ディスクについての開発が取り進められている。光ディスクの中でも最近注目を集めているものに、書き込み型コンパクトディスク(CD−R)がある。CD−Rは、通常、案内溝を有する円形のプラスチック基板上に、色素を主成分とする記録層、金属反射膜および保護膜が順次積層された構造をしている。CD−Rへの情報の記録は、レーザー光を照射し、その照射エネルギーが記録層で吸収されることにより、レーザー光照射部分の記録層、反射層または基板に分解、蒸発、溶解等の熱的変形を生じさせる方法(ヒートモード)や、レーザー光照射部分の記録層に含まれる色素の構造を可逆的に変化させる方法(フォトンモード)などにより行なわれる。また、記録された情報の再生は、レーザー光照射による熱的変形や色素構造の変化が起きている部分と起きていない部分のレーザー光に対する反射率の差を読み取ることにより行われる。従って、光学記録媒体の記録層はレーザー光のエネルギーを効率よく吸収する必要があり、記録層には一般的にレーザー光吸収色素が用いられている。
レーザー光吸収色素として有機色素を利用した光学記録媒体は、有機色素溶液を塗布するという簡単な方法で記録層を形成し得るため、安価な光学記録媒体として今後益々普及することが期待されている。
また、近年、記録の高密度化のため、記録に用いるレーザー光の波長を従来の半導体レーザーの発光波長である780nmを中心としたものから、405nm前後以下の青色光領域へと短波長化することが検討されつつある。
さらに、近年、記録媒体の高容量化のため、記録媒体に記録層を2層作成することによって記憶容量の倍化を図った2層記録媒体の作成が検討されている。
光学記録媒体では、記録データの形成、すなわち記録前後における記録層の反射率変化を、一般的に記録レーザー照射前後において色素の吸収強度が低下することに起因する反射率の上昇を用いる方法(吸収変化方式)もしくは記録レーザー照射前後において色素の複素屈折率強度が低下することに起因する反射率の低下を用いる方法(屈折率変化方式)によって行うが、これらのうち、屈折率変化方式による記録が2層記録媒体には有利である。一般的に、吸収変化方式では、未記録状態の記録層はレーザー光をよく吸収するため、1層目の記録層を透過し、2層目に至るレーザー光の強度が低くなる。従って、2層目の記録層には低いレーザー光強度で記録可能な著しく高い記録感度が求められる。さらに、1層目でレーザー光がよく吸収され、2層目に至るレーザー光の強度が低くなるということは、照射光量に対するレーザー光反射率が未記録部・記録部の別なく極端に小さくなること意味するため、記録後の反射率変化の低下を招き、記録信号の信頼性を低下させる要因ともなる。一方、屈折率変化方式では、色素の吸収極大近傍に存在する複素屈折率極大を用いるため、色素によるレーザー光の吸収はあまりなく、1層目の記録層を透過し2層目に至る光の量はそれほど低減しない。このことから、2層記録媒体であっても2層目に用いられる記録層用色素化合物のレーザー光に対する記録感度は吸収変化方式で用いられる色素ほど高くなくてよく、また、2層目における記録後の反射率変化が著しく小さくなる懸念はない。さらに、色素によるレーザー光の吸収があまりないということは、再生光劣化に強いことも併せて意味するため、記録媒体に好適である。
先述したように、屈折率変化方式による記録の際には色素の吸収極大近傍に存在する複素屈折率極大を用いるが、特に記録前後の反射率変化を大きくとるには、吸収極大より長波長側に存在する正の屈折率極大を用いることが好ましい。従って、405nm前後の青色レーザー光を記録光として用いる場合、その吸収極大は405nm以下、特に380〜390nm以下である必要がある。さらに、吸収極大近傍における複素屈折率は該吸収極大の半値幅が小さいほど増大するため、吸収極大波長が記録光の波長に近いことが屈折率変化を大きく取れる点で好ましい。また、屈折率変化方式による記録の際には、記録前後における色素の光吸収変化に伴う反射率変化が無視できるほど小さいことが記録前後の反射率変化を大きくとるために好ましく、従って上記のレーザー光を記録光として用いる場合、405nmにおける色素の光吸収が極大吸収波長における吸収強度にくらべ大幅に小さいことが好ましい。
また、一般的にデータの記録および読み出しをともにレーザー光によって行い、読み出しレーザー強度は記録レーザー強度より弱い。従って、光学記録媒体の記録層を形成する色素が読み出し光である弱いレーザー光照射によって分解されてしまうほど該色素の耐光性が低いと、記録データの読み出しを行う際にデータエラーを生じる原因となる。また、光学記録媒体はその性質上記録面に太陽光や照明等が長時間照射される機会が多いため、色素が耐光性に劣ると光学記録媒体の記録データを長期保存することが困難になる。
さらに、色素を記録層に用いる場合、一般的にスピンコート法を用いて基板へ塗布することがコスト面で真空蒸着法に比べ有利であるため、光学記録媒体用色素は塗布溶媒に高い溶解性を示すことが必須である。
縮合環系化合物の金属キレート錯体は300〜500nm付近に吸収極大を有し、光に安定であることから、特に青色レーザー光を用いた光学記録媒体への応用が期待される化合物の1つである。特許文献1では、ベンゾオキサゾールとフェノールの縮合環系化合物のキレート錯体が報告されている。しかしながら、特許文献1には化合物の吸収波長の記載がなく、また、色素の基板への塗布をスピンコート法ではなく真空蒸着法にて行っているため、該実施例における化合物群が有機溶媒への溶解性に劣ることが容易に推察される。
また、特許文献1に例示化合物として記載の化合物(3)を用意し、検討を行ったところ塗布溶媒への溶解性が非常に悪く、さらにその吸収スペクトルは405nmに大きな吸収を有するため2層記録の青色レーザー光対応光学記録媒体には不適であることが明らかとなった。
Figure 2007168131
特開2004−74504号公報
本発明は上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、光学記録媒体の記録層形成時の塗布溶媒である2,2,3,3−テトラフルオロプロパノール(TFP)への溶解性に優れ、かつ、青色レーザー光を用いた光記録にも対応可能な光学記録媒体の記録層形成用のベンゾオキサゾール−置換基を有しても良いアリール基金属キレート錯体系色素を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、一般式(1)で表される化合物が、塗布溶媒である2,2,3,3−テトラフルオロプロパノール(TFP)への溶解性に優れ、高い膜性および耐光性を有し、かつこれを記録層に用いた光学記録媒体が青色レーザー光で良好に記録できることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明は、以下を要旨とする。
[1] 下記一般式(1)で表される化合物を含有することを特徴とする光学記録媒体の記録層形成用色素。
Figure 2007168131
(式中、XとX2は、それぞれ酸素、置換基を有していても良い窒素、または、硫黄を
示す。R1〜R4、R9〜R12は、任意の1価の置換基を示し、R5〜R8の少なくとも1つと、R13〜R16の少なくとも1つは、電子吸引性置換基を示し、その他は、任意の1価の置
換基を示す。R1〜R16は、隣り合った置換基が、直接または連結基を介して結合してい
てもよい。Mは任意の金属原子を示す。分子全体を中性にするために、カウンターアニオンYを有しても良い。nは一般式を中性にする整数を表し、mは整数を示す)
[2] 上記一般式(1)において、電子吸引性置換基が、下記一般式(2)または(3)で表される官能基部分を含むことを特徴とする、[1]に記載の光学記録媒体の記録層形成用色素。
Figure 2007168131
(一般式(2)中、Gaは価数が4以上の原子を表し、Qaは周期律表第16族原子を表し、Yaは窒素または酸素を表わす。Raはアルキル基、アリール基、複素環基を表し、Raは更に置換基を有していても良い。Gaが5価以上の原子の場合、−Yaを2個以上有していても良く、該2個以上のYaは同一であっても異なっても良い。また、Gaが価数6以上の原子の場合、=Qaを2個有していても良く、その場合において、該2個のQaは同一のものであっても良く、異なるものであっても良い。また、Yaが窒素である場合、YaはRaを2個有していてもよく、該2個のRaは同一であっても異なっても良い。なお、aはアリール環の炭素への結合位置を示す。)
Figure 2007168131
(一般式(3)中、Gbは価数が4以上の原子を表し、Qbは周期律表第16族原子を表し、Ybは窒素または酸素を表わす。Rbはアルキル基、アリール基、複素環基を表し、Rbは更に置換基を有していても良い。Gbが5価以上の原子の場合、−Ybを2個以上有していても良く、該2個以上のYbは同一であっても異なっても良い。また、Gbが価数6以上の原子の場合、=Qbを2個有していても良く、その場合において、該2個のQbは同一のものであっても良く、異なるものであっても良い。また、Ybが窒素である場合、YbはRbを2個有していてもよく、該2個のRbは同一であっても異なっても良い。nは1〜3の整数。nが2以上である場合、各々の(Gb(=Qb)−Yb−Rb)は同一のものであっても良く、異なるものであっても良い。なお、aはアリール環の炭素への結合位置を示す。)
[3] MがCr,Mn,Fe,Co,Ni,Cuのいずれかの元素記号で表される[1]
または[2]に記載の光学記録媒体の記録層形成用色素。
[4] キセノン光強度0.55W/m、温度58℃湿度50%下で40時間の耐光性試験を行った際の色素残存率が80%以上であることを特徴とする[1]〜[3]のいずれか1つに記載の光学記録媒体の記録層形成用色素。
[5] 基板と、該基板上に形成された記録層とを少なくとも有し、 該記録層が、[1]から[6]のいずれか1つに記載の光学記録媒体の記録層形成用色素を用いて形成されたものであることを特徴とする、光学記録媒体。
[6] [5]に記載の光学記録媒体に対し、波長350〜530nmのレーザー光を用いて記録を行なうことを特徴とする、光学記録媒体の記録方法。
本発明の光学記録媒体の記録層形成用色素は、溶解性、吸収スペクトル形状および青色レーザー記録感度に優れている。従って、この色素を光学記録媒体の記録層に用いることにより、青色レーザー光による記録特性に優れ、かつ耐光性も良好な高密度2層光学記録媒体を、良好な膜性のもとに、安価に提供することが可能となる。また、特定の置換基を導入することで、高極性溶媒に対する高い溶解性を保つことを可能にする。
以下、本発明の実施の形態を具体的に説明するが、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々に変更して実施することができる。
[記録層形成用色素]
本発明に係る光学記録媒体の記録層形成用色素は下記一般式(1)からなるベンズオキサゾールー置換フェノール金属キレート錯体系色素を最低1種類含む。
本発明において、「置換基を有していても良い」とは、1つ以上の置換基を有していても良いことを意味する。
(一般式(1)で表される化合物)
Figure 2007168131
(式中、XとX2は、それぞれ酸素、置換基を有していても良い窒素、または、硫黄を
示す。R1〜R4、R9〜R12は、任意の1価の置換基を示し、R5〜R8の少なくとも1つと、R13〜R16の少なくとも1つは、電子吸引性置換基を示し、その他は、任意の1価の置
換基を示す。R1〜R16は、隣り合った置換基が、直接または連結基を介して結合してい
てもよい。Mは任意の金属原子を示す。分子全体を中性にするために、カウンターアニオンYを有しても良い。nは一般式を中性にする整数を表し、mは整数を示す)
<X1,X2
1、X2は、酸素原子、硫黄原子、1つの1価の置換基を有していても良い窒素原子を
示す。窒素が有していても良い置換基としては、錯体を特に不安定化するものでなければなものであれば特に制限はないが、電子吸引性基であるほうが好ましいが、例えば、アルキル基、アミノスルホニル基、スルホニル基、アセチル基などがあげられる。
<R1〜R4,R9〜R12
1〜R4、R9〜R12は、色素の性能に影響を及ぼさない置換基であれば任意の1価の置換基を示し、例えば、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、シアノ基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロアリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロアリールチオ基、アミノ基、アシル基、アミノアシル基、ウレイド基、スルホンアミド基、カルバモイル基、スルファモイル基、スルファモイルアミノ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、ヘテロアリールスルホニル基、イミド基及びシリル基などからなる群より選択される。
具体的には、メチル基、エチル基などの炭素数1〜6程度のアルキル基、エチニル基、プロピレニル基などの炭素数2〜6程度のアルケニル基、アセチレニル基などの炭素数2〜6程度のアルキニル基、フェニル基、ナフチル基などの炭素数6〜20程度のアリール基、チエニル基、フリル基、ピリジル基などの炭素数3〜20程度のヘテロアリール基、エトキシ基、プロポキシ基などの炭素数1〜6程度のアルコキシ基、フェノキシ基、ナフトキシ基などの炭素数6〜20程度のアリールオキシ基、チエニルオキシ基、ピリジルオキシ基などの炭素数3〜20程度のヘテロアリールオキシ基、メチルチオ基、エチルチオ基などの炭素数1〜6程度のアルキルチオ基、フェニルチオ基、ナフチルチオ基などの炭素数6〜20程度のアリールチオ基、チエニルチオ基、ピリジルチオ基などの炭素数3〜20程度の炭素数3〜20程度のヘテロアリールチオ基、ジメチルアミノ基、ジフェニルアミノ基などの炭素数1〜20程度の置換基を有していても良いアミノ基、アセチル基、ピバロイル基などの炭素数2〜20程度のアシル基、アセチルアミノ基、プロピオニルアミノ基などの炭素数2〜20程度のアシルアミノ基、3−メチルウレイド基などの炭素数2〜20程度のウレイド基、メタンスルホンアミド基、ベンゼンスルホンアミド基などの炭素数1〜20程度のスルホンアミド基、ジメチルカルバモイル基、エチルカルバモイル基などの炭素数1〜20程度のカルバモイル基、エチルスルファモイル基などの炭素数1〜20程度のスルファモイル基、ジメチルスルファモイルアミド基などの炭素数1〜20程度のスルファモイルアミド基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などの炭素数2〜6程度のアルコキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基、ナフトキシカルボニル基などの炭素数7〜20程度のアリールオキシカルボニル基、ピリジルカルボニル基などの炭素数5〜20程度のヘテロアリールオキシカルボニル基、メタンスルホニル基、エタンスルホニル基、トリフルオロメタンスルホニル基などの炭素数1〜6程度のアルキルスルホニル基、ベンゼンスルホニル基、モノフルオロベンゼンスルホニル基などの炭素数6〜20程度のアリールスルホニル基、チエニルスルホニル基などの炭素数3〜20程度のヘテロアリールスルホニル基、フタルイミド基などの炭素数4〜20程度のイミド基、または、アルキル基及びアリール基から選ばれる置換基で3置換されているシリル基などがあげられる。
<R5〜R8、R13〜R16
5〜R8かつR13〜R16の少なくとも2つは、電子吸引性置換基で、その他は、任意の1価の置換基を示す。電子吸引性置換基としては、Hammettの置換基定数σmが0.00<σm<0.90となるような電子吸引性基が挙げられる。ここでHammettの置換基定数とは、無置換の安息香酸の酸解離平衡定数(pKa)から置換安息香酸のpKaを引くことで算出される値であり、置換基の電子求引性および電子供与性の強度を示すパラメーターとなる定数である。上記電子吸引性基としては、例えば、「化学の領域増刊122 薬物の構造活性相関、96〜103頁、南江堂刊」に記載されているようなものが挙げられるが、より具体的には、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、ハロアルキル基、ハロアルコキシ基、ハロアリールオキシ基、カルボニル基(アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、複素環オキシカルボニル基、アシル基、アルデヒド基、置換基を有していても良いアミノカルボニル基)アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、複素環スルホニル基、置換基を有していてもよいアミノスルホニル基、アルコキシスルホニル基、アリールオキシスルホニル基、複素環オキシスルホニル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、複素環スルフィニル基、置換基を有していてもよいアミノスルフィニル基、アルコキシスルフィニル基、アリールオキシスルフィニル基、複素環オキシスルフィニル基、チオカルボニル基(アルコキシチオカルボニル基、アリールオキシチオカルボニル基、複素環オキシチオカルボニル基、チオアシル基、チオアルデヒド基、置換基を有していても良いアミノチオカルボニル基)、リン酸エステル基、等が挙げられる。
さらに、1)テトラフルオロプロパンなどの極性溶媒への溶解性を向上させ、かつ、2)吸収極大を短波長化させるために、より好ましくは、Hammettの置換基定数σmが0.00<σm<0.90となるような電子吸引性基であり、かつ極性が高い置換基である。このような置換基の具体例としては、例えば下記一般式(2)で表わされるGroup1または下記一般式(3)で表わされるGroup2が挙げられ、特に好ましくは合成、単離精製の容易さの点でGroup1である。
{Group1:下記一般式(2)で表される構造を有する置換基 }
Figure 2007168131
(一般式(2)中、Gaは価数が4以上の原子を表し、Qaは周期律表第16族原子を表し、Yaは窒素または酸素を表わす。Raはアルキル基、アリール基、複素環基を表し、Raは更に置換基を有していても良い。Gaが5価以上の原子の場合、−Yaを2個以上有していても良く、該2個以上のYaは同一であっても異なっても良い。また、Gaが価数6以上の原子の場合、=Qaを2個有していても良く、その場合において、該2個のQaは同一のものであっても良く、異なるものであっても良い。また、Yaが窒素である場合、YaはRaを2個有していてもよく、該2個のRaは同一であっても異なっても良い。なお、aはアリール環の炭素への結合位置を示す。)
上記一般式(2)において、Gaとしては、C、S、P等が挙げられ、特にC、Pが、中でもCが好ましい。Qaは、周期律表第16族原子を表し、好ましくはO又はS、特に好ましくはOである。即ち、−Ga(=Qa)はカルボニル基またはリン酸エステル基であることが好ましい。
Raはアルキル基、アリール基、複素環基であり、その具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、i-プロピル基、ペンチル基などの炭素数1〜6程度のアルキル基、フェニル基、ナフチル基などの炭素数6〜20程度のアリール基、チエニル基、フリル基、ピリジル基などの炭素数3〜20程度のヘテロアリール基があげられ、特に好ましくは、炭素数1〜4程度のアルキル基である。Raはさらに置換基を有していても良い。グラム吸光係数(OD値)をさげないために、Raの分子量は、Raがさらに置換基を有する場合には置換基も含めて、通常100以下、好ましくは50以下である。
{Group2:下記一般式(3)で表される構造を有する置換基 }
Figure 2007168131
(一般式(3)中、Gbは価数が4以上の原子を表し、Qbは周期律表第16族原子を表し、Ybは窒素または酸素を表わす。Rbはアルキル基、アリール基、複素環基を表し、Rbは更に置換基を有していても良い。Gbが5価以上の原子の場合、−Ybを2個以上有していても良く、該2個以上のYbは同一であっても異なっても良い。また、Gbが価数6以上の原子の場合、=Qbを2個有していても良く、その場合において、該2個のQbは同一のものであっても良く、異なるものであっても良い。また、Ybが窒素である場合、YbはRbを2個有していてもよく、該2個のRbは同一であっても異なっても良い。nは1〜3の整数。nが2以上である場合、各々の(Gb(=Qb)−Yb−Rb)は同一のものであっても良く、異なるものであっても良い。なお、aはアリール環の炭素への結合位置を示す。)
上記一般式(3)において、Gbとしては、C、S、P等が挙げられ、特にCが好ましい。Qbは、周期律表第16族原子を表し、好ましくはO又はS、特に好ましくはOである。即ち、−Gb(=Qb)はカルボニル基であることが特に好ましい。
Rbの具体例としては、一般式(2)においてRaの具体例として述べたものが挙げられる。Rbはさらに置換基を有していても良い。OD値をさげないために、Rbの分子量は、Rbがさらに置換基を有する場合には置換基も含めて、通常100以下、好ましくは50以下である。
前記一般式(2)および(3)で表される構造の具体例としては、例えば以下の様なものが挙げられる。なお、これらの構造は、aの部位でそれぞれアリール環の炭素に結合する。
Figure 2007168131
<M1
また、M1は、4配位または6配位子の形態をとりうる金属原子であれば特に限定され
ないが、好ましくは第4周期元素、更に好ましくはCr,Mn,Fe,Co,Ni,Cuであ
る。
なお、M1がカチオン原子であり、該カチオン原子が3価以上の場合、更に炭素数20
以下のカウンターアニオンYを有していてもよい。
<Y>
Yは、炭素数20以下のカウンターアニオンである。具体例としては、アルコール、フェノール、カルボン酸、ホスホン酸、ハロゲン、過塩素酸、過沃素酸、シアン酸、イソシアン酸、イソチオシアン酸、アジド、硝酸、炭酸、炭酸水素酸、置換または無置換の硫酸(硫酸、硫酸水素酸、メチル硫酸など)、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トシル酸、置換または無置換のリン酸(リン酸、リン酸水素酸、リン酸二水素酸、フェニルリン酸など)、六フッ化リン、六フッ化アンチモン、置換または無置換のホスフィン酸(ホスフィン酸、メチルホスフィン酸など)、置換または無置換のボロン酸(テトラフェニルボロン酸など)、ベンゼンスルホン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸それぞれをアニオン化したもの等が挙げられる。これらのうち、吸光度低下による記録感度低下を防止する観点から、分子量300以下のものが好ましく、溶解性向上および化合物のレーザー感度向上の面から、ハロゲンアニオン、過塩素酸アニオン、四フッ化ホウ素アニオン、六フッ化リンアニオン等が含まれることが特に好ましい。
<具体例>
本発明の光学記録媒体の記録層形成に用いられる化合物の好ましい具体例としては、例えば、以下に例示されるものが挙げられる。ただし、以下の化合物に限定されるものではない。
Figure 2007168131
Figure 2007168131
Figure 2007168131
Figure 2007168131
Figure 2007168131
Figure 2007168131
第4周期の金属でここで例示していないものでも、錯体を形成できるが、煩雑の為、N
iを主に示した。
<化合物の物性>
上記一般式(1)の化合物は、分子量増大に伴いOD値をさげないために観点から、カウンターイオンが存在する場合はそれも含めて、分子量が通常2000以下、中でも1500以下であることが好ましい。
また、上記一般式(1)の化合物は、記録媒体の保存安定性の向上させる理由から、通常は水不溶性であることが好ましい。ここで「水不溶性」とは、25℃、1気圧の条件下における水に対する溶解度が、通常0.01重量%以下、好ましくは0.001重量%以下であることを言う。
<合成方法>
以上に説明した一般式1)の化合物は、Mag.Resonance Chem.,41,291−295(2003)に記載の公知の方法などにより合成した配位子を用い、各種金属無機塩、あるいは、金属有機塩と配位させて得ることができる。
このようにして得られた本発明に係る記録層形成用色素は、塗布溶媒であるTFP(2,2,3,3−テトラフルオロプロパノール)への溶解性と吸収スペクトル形状に優れ、かつこれを記録層に用いたときの膜性、耐光性、記録感度に優れるという特徴がある。
この場合の溶解性に優れるとは、室温(通常、15〜30℃)で、実施例に記載する試験方法で評価したTFPへの溶解度が1.5重量%以上、さらに好ましくは2.0重量%以上、特に好ましくは3.0重量%以上であることをいう。 一方、本発明の用途におい
ては溶解度の上限は特に制限されるものではないが、実質20%以下、中でも10重量%以下程度であればよい。
なお、本発明のベンゾオキサゾール−置換基を有しても良いアリール金属キレート錯体が溶解性に優れるのは、該化合物が有する電子吸引性の基がTFPをはじめとするパーフルオロアルキルアルコール系溶媒に対する親和性を向上させているから、と推定される。
[記録層]
本発明の光学記録媒体が有する記録層は、一般式(1)で表わされるベンゾオキサゾール−置換基を有しても良いアリール金属キレート錯体を少なくとも一種含有する色素(これを適宜「本発明の光記録媒体の記録層形成用色素」或いは単に「本発明の色素」という。)を用いて形成されたものである。 即ち、本発明の光学記録媒体の記録層は、本発明のベンゾオキサゾール−置換基を有しても良いアリール金属キレート錯体を少なくとも1種類以上含有することになる。
本発明の光学記録媒体の記録層形成に用いる色素(本発明の色素)としては、本発明のベンゾオキサゾール−置換基を有しても良いアリール金属キレート錯体を一種類のみ用いてもよく、本発明のベンゾオキサゾール−置換基を有しても良いアリール金属キレート錯体を二種類以上、任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。また、一種又は二種以上の本発明のベンゾオキサゾール−置換基を有しても良いアリール金属キレート錯体に加えて、他の色素を一種又は二種以上併用してもよい。但し、本発明のベンゾオキサゾール−置換基を有しても良いアリール金属キレート錯体以外の色素を併用する場合には、本発明のベンゾオキサゾール−置換基を有しても良いアリール金属キレート錯体の優れた特性を十分に発揮させる観点から、全色素の合計に対する本発明のベンゾオキサゾール−置換基を有しても良いアリール金属キレート錯体が占める比率を、通常50重量%以上、好ましくは70重量%以上とすることが好ましい。
本発明のベンゾオキサゾール−置換基を有しても良いアリール金属キレート錯体と併用可能な他系統の色素としては、記録用のレーザー光波長域に吸収を有し、照射されたレーザー光のエネルギーを吸収して、照射部分の記録層、反射層または基板に、分解、蒸発、溶解等の熱的変形を伴うピットを形成させるものが好ましい。また、CD−R向けの770〜830nmの範囲から選ばれた波長の近赤外レーザー光やDVD−R向けの620〜690nmの範囲から選ばれた赤色レーザー光での記録に適する色素を併用して、複数の波長域のレーザー光での記録に対応する光学記録材料とすることもできる。他系統の色素としては、具体的には、含金属アゾ系色素、フタロシアニン系色素、ナフタロシアニン系色素、シアニン系色素、アゾ系色素、スクアリリウム系色素、含金属インドアニリン系色素、トリアリールメタン系色素、メロシアニン系色素、アズレニウム系色素、ナフトキノン系色素、アントラキノン系色素、インドフェノール系色素、キサンテン系色素、オキサジン系色素、ピリリウム系色素ジチオレート系錯体、テトラチオレート系錯体、アミノカテコール系錯体、アミノチオール系錯体、フェニレンジアミン系錯体等が挙げられ、これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
なお、これら他系統の色素のうち、CD−R向けの770〜830nmの範囲から選ばれた波長の近赤外レーザー光やDVD−R向けの620〜690nmの範囲から選ばれた赤色レーザー光での記録に適する色素を併用して、複数の波長域のレーザー光での記録に対応する光学記録材料とすることもできる。
記録層に占める本発明の記録層形成用色素の割合は、通常10重量%以上、好ましくは50重量%以上、特に好ましくは90重量%以上である。
色素の割合が少なすぎると、記録感度が著しく低下するので好ましくない。本発明の色素として2種類以上の色素を併用する場合には、その合計が上記範囲を満たすようにする。また、後述のバインダーや各種の添加剤を用いる場合には、形成された記録層に占める本発明の色素の割合が上記の範囲内となるように、バインダーや添加剤の使用量を調整することが好ましい。なお、本発明のベンゾオキサゾール−置換基を有しても良いアリール金属キレート錯体の優れた特性を十分に発揮させる観点から、バインダーや添加剤が使用されないことが特に好ましい。
記録層は成膜性を向上させるためにバインダーを含有していてもよい。バインダーとしては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ケトン樹脂、ニトロセルロース、酢酸セルロース、ポリビニルブチラール、ポリカーボネート等既知のものが1種を単独で、或いは2種以上を混合して用いられる。記録層に占めるバインダーの割合が高すぎると記録感度が著しく低下するので、バインダー、更には後述の各種添加剤を用いる場合、形成された記録層に占める本発明の記録層形成用色素の割合が、上記の範囲となるような量を用いる。
また、記録層は、安定性や耐光性向上のための一重項酸素クエンチャーや記録感度向上剤などを含有していてもよい。
一重項酸素クエンチャーとしては、アセチルアセトナート、ビスフェニルジチオール、サリチルアルデヒドオキシム、ビスジチオ−α−ジケトン等と遷移金属とのキレート化合物などが挙げられ、これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
記録感度向上剤としては、遷移金属等の金属が原子、イオン、クラスター等の形で化合物に含まれる金属系化合物等が挙げられ、例えばエチレンジアミン系錯体、アゾメチン系錯体、フェニルヒドロキシアミン系錯体、フェナントロリン系錯体、ジヒドロキシアゾベンゼン系錯体、ジオキシム系錯体、ニトロソアミノフェノール系錯体、ピリジルトリアジン系錯体、アセチルアセトナート系錯体、メタロセン系錯体、ジチオレート系錯体、テトラチオレート系錯体、アミノカテコール系錯体、アミノチオール系錯体、フェニレンジアミン系錯体のような有機金属化合物などが挙げられ、これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。金属原子の種類は特に限定されないが、遷移金属が好ましい。
なお、一重項酸素クエンチャーは色素に対して通常5〜30重量%程度、記録感度向上剤は色素に対して通常10〜40重量%程度用いられる。二種以上の一重項酸素クエンチャーを併用する場合や、二種以上の記録感度向上剤を併用する場合には、各々、その合計が上記範囲を満たすようにする。
本発明の記録層形成用色素を用いて光学記録媒体の記録層を形成するには、真空蒸着法、スパッタリング法、ドクターブレード法、キャスト法、スピンコート法、浸漬法等の一般に行われている薄膜形成法を用いることができる。これらのうち、量産性、コスト面からスピンコート法が好ましい。スピンコート法により記録層を成膜する場合、回転数は500〜5000rpmが好ましく、スピンコート後、必要に応じて、加熱または溶媒蒸気にさらす等の処理を行ってもよい。記録層の膜厚は、特に限定されないが、通常10nm〜5μm、好ましくは20nm〜2μm、更に好ましくは50nm以上300nm以下である。色素層の膜厚が前記の下限値より大きい場合は、熱拡散の影響を抑えることができ、良好な記録がしやすい。また、記録信号に歪みが発生しにくいため、信号振幅を大きくしやすい。色素層の膜厚が前記の上限値より小さい場合は、反射率を高くしやすく、再生信号特性を良好としやすい。
記録層をドクターブレード法、キャスト法、スピンコート法、浸漬法等により形成する場合には、まず、本発明の記録層形成用色素、並びに、必要に応じて用いられる上述のバインダー、一重項酸素クエンチャー、記録感度向上剤等を溶媒に溶解させ、塗布液を作成する。溶媒としては、基板を侵さない溶媒であれば、特に限定されず、ジアセトンアルコール、3−ヒドロキシ−3−メチル−2−ブタノン等のケトンアルコール系溶媒、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のセロソルブ系溶媒、n−ヘキサン、n−オクタン等の鎖状炭化水素系溶媒、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、n−ブチルシクロヘキサン、t−ブチルシクロヘキサン、シクロオクタン等の脂環式炭化水素系溶媒、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル等のエーテル系溶媒、TFP、オクタフルオロペンタノール、ヘキサフルオロブタノール等のパーフルオロアルキルアルコール系溶媒、乳酸メチル、乳酸エチル、イソ酪酸メチル等のヒドロキシエステル系溶媒等が挙げられるが、TFP、オクタフルオロペンタノール、ヘキサフルオロブタノール等のパーフルオロアルキルアルコール系溶媒を用いることが工業面からさらに好ましく、現在一般に工業的に用いられている溶媒であるTFP(2,2,3,3−テトラフルオロプロパノール)を用いることが特に好ましい。なお、これらの溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
塗布液中の本発明の記録層形成用色素の濃度は、その溶媒溶解性に応じて適宜決定されるが、通常0.7重量%以上、好ましくは1.0重量%以上で、通常10重量%以下、好ましくは3.0重量%以下とされる。塗布液中の色素濃度が過度に低いと、記録層の形成効率が悪くなる。塗布液中の色素濃度が過度に高いと成膜工程において、色素の結晶化等の問題が発生する。
また、スピンコート後の余剰色素を効率的に回収するためには、通常塗布液の濃度の1.5倍以上、好ましくは2倍以上の濃度であっても、色素化合物が塗布溶媒に溶解可能であることが好ましい。
[光学記録媒体]
本発明の光学記録媒体は、本発明の記録層形成用色素を用いて上述のようにして形成された記録層を有するものである。
記録層を形成する光学記録媒体の基板としては、ガラスや種々のプラスチックなど、使用するレーザー光に対して透明なものが好ましく用いられる。プラスチックとしては、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ニトロセルロース、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリスチレン樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられるが、生産性、コスト、耐吸湿性などの点からポリカーボネート樹脂を射出成形したものが好ましい。
通常、基板上には、必要に応じて更に、反射層、保護層、下引き層などの記録層以外の層が設けられ、光学記録媒体として使用される。
反射層としては、金、銀、アルミニウムまたはそれらの合金のような金属からなるもの等が挙げられるが、550nm以下の波長のレーザー光に対する反射率から、金やアルミニウムより、銀の方が好ましい。金属反射層は、蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などによって記録層上に成膜される。ここで、金属反射層と記録層との間に層間の密着力を向上させるため、または、反射率を高める等の目的で中間層を設けてもよい。
反射層の上に形成する保護層の材料としては、例えば、紫外線硬化型樹脂組成物などが挙げられる。
また、上記構成の光学記録媒体を接着層を介して2枚貼りあわせ、或いは、基板の片面だけでなく両面に反射層、記録層、保護層等を設けることにより、両面記録型光学記録媒体としてもよい。更には、基板上に反射層及び記録層の組を、中間層を介して二組以上形成し、その上に保護層を設けることにより、多層型光記録媒体としてもよい。
[光学記録媒体の記録方法]
上述のようにして得られた光学記録媒体への情報の記録は、通常、記録層に0.4〜0.6μm程度に集束したレーザー光を照射することにより行う。記録層がレーザー光のエネルギーを吸収すると、レーザー光照射部分では、分解、発熱、溶融等の熱的変形が起こる。一方、記録された情報の再生は、通常、記録時よりもエネルギーの低いレーザー光を記録層に照射するとともに、反射光を光ピックアップ等の手段で受光し、レーザー光による上記熱的変形が起きている部分と起きていない部分の反射率の差を読み取ることにより行う。
高密度記録のためには、記録時に使用するレーザー光の波長が短いほど好ましく、特に、本発明の光学記録媒体は、その記録層に上述した本発明のベンゾオキサゾール−置換基を有しても良いアリール金属キレート錯体を含有することから、その利点を十分に発揮させる観点から、波長350〜530nmのレーザー光を用いて情報の記録を行なうことが好ましい(これを以下適宜「本発明の光学記録媒体の記録方法」或いは単に「本発明の記録方法」という。)。
かかる波長350〜530nmのレーザー光の代表例としては、例えば、中心波長405nm、410nmなどの青色レーザー光、中心波長515nmの青緑色の高出力半導体レーザー光が挙げられる。これら以外にも(a)基本発振波長が740〜960nmの連続発振可能な半導体レーザー光、または(b)半導体レーザー光によって励起されかつ基本発振波長が740〜960nmの連続発振可能な固体レーザー光のいずれかを、第二高調波発生素子(SHG)により波長変換することによって得られる光なども挙げられる。
上記のSHGとしては、反射対称性を欠くピエゾ素子であればいかなるものでもよいが、KDP(KHPO)、ADP(NHPO)、BNN(BaNaNb15)、KN(KNbO)、LBO(LiB)、化合物半導体などが好ましい。第二高調波の具体例としては、基本発振波長が860nmの半導体レーザーの場合は、その倍波の波長430nm、また半導体レーザー励起の固体レーザーの場合は、CrドープしたLiSrAlF6結晶(基本発振波長860nm)からの倍波の波長430nmなどが挙げられる。
光学記録媒体が有する吸収波長および吸光度のうち好ましいものは、記録に用いるレーザー光の種類に依存する。例えば、405〜410nmを中心波長とする青色レーザーに対しては、光学記録媒体の吸収スペクトルの極大吸収波長(λmax)が300〜400nmであり、該λmaxにおけるモル吸光係数が5000以上、より好ましくは、10000以上、さらに好ましくは、30000以上であること、が好ましい。また、405nmにおける吸収強度は、λmaxにおける吸収強度の通常0%以上、中でも0.01%以上、また、通常15%以下、中でも10%以下の範囲であることが好ましい。(特に、本発明に係るベンゾオキサゾール−置換基を有しても良いアリール金属キレート錯体はこれら青色レーザー光を用いた光学記録材料に好適である。また、合成が比較的容易であることから、安価な光学記録媒体を提供することができる。
また、本発明に係るベンゾオキサゾール−置換基を有しても良いアリール金属キレート錯体は、耐光性に優れているため、通常、本発明に係るベンゾオキサゾール−置換基を有しても良いアリール金属キレート錯体を記録層に含んだ光学記録媒体は、高温高湿かつ直射光の下で放置しても劣化しにくい。具体的には、本発明に係るベンゾオキサゾール−置換基を有しても良いアリール金属キレート錯体を記録層に含んだ光学記録媒体のうち好ましいものは、温度58℃−湿度50%−キセノンランプ(強度0.55W/m)照射の条件下に40時間放置しても当該ベンゾオキサゾール−置換基を有しても良いアリール金属キレート錯体の80%以上、好ましくは90%以上、更に好ましくは95%以上が劣化せずに残存する。
このような耐光性の試験は、まず、乾燥後の膜厚が約50nmとなるように、色素を含む溶液をプラスチック基板上に塗布した後、乾燥し、色素を含む層を得る。得られた色素を含む層に対して、温度58%、湿度50%の条件下、キセノンランプ(強度0.55W
/m)の照射を所定時間行い、照射前後の吸収極大波長における吸光度を比較し、色素残存率を求める。
また、本発明に係るベンゾオキサゾール−置換基を有しても良いアリール金属キレート錯体は、記録レーザー感度に優れる。具体的には、本発明に係るベンゾオキサゾール−置換フェノール金属キレート錯体を記録層に含んだ光学記録媒体のうち好ましいものは、中心波長404nm、NA=0.85の青色レーザー光を照射した場合に、レーザー強度10mW以下においても良好な記録ピットの形成が可能である。なおここで良好な記録ピットの形成が可能であるとは、特定のレーザー強度の青色レーザー光を光学記録媒体の記録面に照射した場合に、目視もしくは光学顕微鏡を用いてピットの形成を確認できることを言う。
さらに、本発明に係るベンゾオキサゾール−置換基を有しても良いアリール金属キレート錯体は、膜性に優れている。すなわち、スピンコート法により記録層を形成後、ディスク表面に化合物の結晶化に由来する白化現象が認められない点においても、工業的に有利である。
以下に、実施例により本発明の実施態様を説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、これらに限定されるものではない。
(合成例1)
Figure 2007168131
2−(benzo[d]oxazol−2−yl)−4−bromophenol3.
1g(10.7mmol)をアセトン100mLに溶解し、炭酸カリウム4.5g(32
.6mmol)を加えた。この反応溶液を0℃まで冷やし、メトキシメチルクロライド1.3mLを加え、室温に昇温した。10時間、撹拌した後、クロロホルムで抽出し、飽和
食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。有機層を濃縮し、カラムクロマトグラフィーにより精製し、2−(5−bromo−2−(methoxymethoxy)pheny)benzo[d]oxazole 3.4g(収率96%)を得た。
MS;334
(合成例2)
Figure 2007168131
2−(5−bromo−2−(methoxymethoxy)pheny)benzo[d]oxazole 3.4g(10.2mmol)を無水トルエン(100mL)とトリエチルアミン(14.4mL)に溶解し、亜リン酸ジエチル(2.6mL,20.4mmol)、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0)0.5g加え、9時間還流した。室温まで冷やした後、クロロホルムで抽出し、飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。有機層を濃縮し、カラムクロマトグラフィーにより精製し、diethyl 3−(benzo[d]oxazol−2−yl)−4−(methoxymethoxy)phenylphoshonateを(3.3g,収率83%)で得た。
MS;391
(合成例3)
Figure 2007168131
diethyl 3−(benzo[d]oxazol−2−yl)−4−(methoxymethoxy)phenylphosphonate(3.3g,8.44mmol)をエタノール30mLに溶解し、濃塩酸2.4mLを加え、室温で一晩撹拌した。反応溶液を濃縮した後、クロロホルムで抽出し、飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。有機層を濃縮し、カラムクロマトグラフィーにより精製し、dithyl 3−(benzo[d]oxazol−2−yl)−4−hydroxyphenylphosphonateを定量的に得た。
MS;347
(実施例1)
Figure 2007168131
dithyl 3−(benzo[d]oxazol−2−yl)−4−hydroxyphenylphosphonate(1.33g,3.83mmol)を無水THF40mLに溶解させ、tBuOK(0.38g,3.45mmol)を加え、室温で15
分間撹拌した。この反応溶液に塩化ニッケル6水和物(0.36g,1.51mmol)をメタノール0.5mLに溶かしたものを加えた。さらに、室温で1時間撹拌した後、反
応溶液を濃縮した。得られた粗生成物にクロロホルムを加え、ろ過し、固体を水で洗い、例示化合物1を(1.2g,収率81%)、pale yellow 固体として得た。
MS;767
1max THF 367nm
<溶解性試験>
例示化合物1および比較化合物1,2を、規定の重量%濃度となるようにTFPと混合し、30分間室温で超音波処理した。該混合物をそれぞれ濾紙(東洋濾紙株式会社製定量濾紙No.5C)上に滴下し、室温で24時間乾燥させTFPを除去した後、未溶解成分の結晶残渣が濾紙上に存在するか否かで溶解性を判定した。その結果を以下に示す。例示化合物1は、5.0重量%溶液を用いた場合でも濾紙上に未溶解成分が確認されず、完全に溶解していることが明らかとなった。これに対して比較化合物1,2は、何れも0.1重量%溶液を用いた場合でも濾紙上に多くの不溶成分が確認され、溶解性は0.1重量%未満であった。
例示化合物1と比較化合物1、2のTFPへの溶解性を表1に示す。
Figure 2007168131
Figure 2007168131
例示化合物1の膜吸収スペクトルを図1に示す。
<光学記録媒体の作製>
[光学記録媒体の作製]
実施例1に記載の化合物を2,2,3,3−テトラフルオロプロパノールに5wt%溶解させ、濾過によって微細なゴミを取り除いた後に、得られた溶液を直径120mm、厚さ1.2mmの射出成形ポリカーボネート基板上に滴下し、スピンコート法(4900rpm)により塗布し、80℃で30分間乾燥することで透明な塗布膜(膜厚約50nm)を得た。
該塗布膜に化合物の結晶化に由来する白化現象は確認されなかった。
<耐光性試験>
上記手法で作製した光学記録媒体に対し、温度58℃−湿度50%−キセノンランプ(強度0.55W/m)照射の条件で耐光性試験を行った。結果を表2に示す。この結果から、本発明におけるベンゾオキサゾール−置換基を有しても良いアリール金属キレート錯体を用いた光学記録媒体が耐光性にも著しく優れることが明らかである。
Figure 2007168131
<光学記録媒体の評価>
上記手法で作製した光学記録媒体に対し、中心波長404nm、NA=0.85、記録レーザー強度5.0mWの半導体レーザー光を照射したところ、良好な記録ピットの形成が確認された。
図1は、実施例1における例示化合物1の膜吸収スペクトルである。

Claims (6)

  1. 下記一般式(1)で表される化合物を含有することを特徴とする光学記録媒体の記録層形成用色素。
    Figure 2007168131
    (式中、XとX2は、それぞれ酸素、置換基を有していても良い窒素、または、硫黄を
    示す。R1〜R4、R9〜R12は、任意の1価の置換基を示し、R5〜R8の少なくとも1つと、R13〜R16の少なくとも1つは、電子吸引性置換基を示し、その他は、任意の1価の置
    換基を示す。R1〜R16は、隣り合った置換基が、直接または連結基を介して結合してい
    てもよい。Mは任意の金属原子を示す。分子全体を中性にするために、カウンターアニオンYを有しても良い。nは一般式を中性にする整数を表し、mは整数を示す)
  2. 一般式(1)において、電子吸引性置換基が、下記一般式(2)または(3)で表される官能基部分を含むことを特徴とする、請求項1に記載の光学記録媒体の記録層形成用色素。
    Figure 2007168131
    (一般式(2)中、Gaは価数が4以上の原子を表し、Qaは周期律表第16族原子を表し、Yaは窒素または酸素を表わす。Raはアルキル基、アリール基、複素環基を表し、Raは更に置換基を有していても良い。Gaが5価以上の原子の場合、−Yaを2個以上有していても良く、該2個以上のYaは同一であっても異なっても良い。また、Gaが
    価数6以上の原子の場合、=Qaを2個有していても良く、その場合において、該2個のQaは同一のものであっても良く、異なるものであっても良い。また、Yaが窒素である場合、YaはRaを2個有していてもよく、該2個のRaは同一であっても異なっても良い。なお、aはアリール環の炭素への結合位置を示す。)
    Figure 2007168131
    (一般式(3)中、Gbは価数が4以上の原子を表し、Qbは周期律表第16族原子を表し、Ybは窒素または酸素を表わす。Rbはアルキル基、アリール基、複素環基を表し、Rbは更に置換基を有していても良い。Gbが5価以上の原子の場合、−Ybを2個以上有していても良く、該2個以上のYbは同一であっても異なっても良い。また、Gbが価数6以上の原子の場合、=Qbを2個有していても良く、その場合において、該2個のQbは同一のものであっても良く、異なるものであっても良い。また、Ybが窒素である場合、YbはRbを2個有していてもよく、該2個のRbは同一であっても異なっても良い。nは1〜3の整数。nが2以上である場合、各々の(Gb(=Qb)−Yb−Rb)は同一のものであっても良く、異なるものであっても良い。なお、aはアリール環の炭素への結合位置を示す。)
  3. がCr,Mn,Fe,Co,Ni,Cuのいずれかの元素記号で表される請求項1また
    は2に記載の光学記録媒体の記録層形成用色素。
  4. キセノン光強度0.55W/m2、温度58℃湿度50%下で40時間の耐光性試験を
    行った際の色素残存率が80%以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の光学記録媒体の記録層形成用色素。
  5. 基板と、該基板上に形成された記録層とを少なくとも有し、 該記録層が、請求項1〜6のいずれか1項に記載の光学記録媒体の記録層形成用色素を用いて形成されたものであることを特徴とする、光学記録媒体。
  6. 請求項5記載の光学記録媒体に対し、波長350〜530nmのレーザー光を用いて記録を行なうことを特徴とする、光学記録媒体の記録方法。
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