JP4483808B2 - 光学記録媒体及びその記録層形成用色素 - Google Patents

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Description

本発明は、光学記録媒体の記録層形成用色素、及びそれを用いた光学記録媒体、その光学記録媒体の記録方法に関し、特に、青色レーザー光対応の光学記録媒体に好適に用いられる記録層形成用色素、及びそれを用いた光学記録媒体、その光学記録媒体の記録方法に関する。
近年、高密度での情報の記録保存/再生が可能なことから、レーザー光を用いた光学記録媒体、特に光ディスクについての開発が取り進められている。光ディスクの中でも最近注目を集めているものに、書き込み型コンパクトディスク(CD−R)がある。CD−Rは、通常、案内溝を有する円形のプラスチック基板上に、色素を主成分とする記録層、金属反射膜および保護膜が順次積層された構造をしている。CD−Rへの情報の記録は、レーザー光を照射し、その照射エネルギーが記録層で吸収されることにより、レーザー光照射部分の記録層、反射層または基板に分解、蒸発、溶解等の熱的変形を生じさせる方法(ヒートモード)や、レーザー光照射部分の記録層に含まれる色素の構造を可逆的に変化させる方法(フォトンモード)などにより行なわれる。また、記録された情報の再生は、レーザー光照射による熱的変形や色素構造の変化が起きている部分と起きていない部分のレーザー光に対する反射率の差を読み取ることにより行われる。従って、光学記録媒体の記録層はレーザー光のエネルギーを効率よく吸収する必要があり、記録層には一般的にレーザー光吸収色素が用いられている。
レーザー光吸収色素として有機色素を利用した光学記録媒体は、有機色素溶液を塗布するという簡単な方法で記録層を形成し得るため、安価な光学記録媒体として今後益々普及することが期待されている。
また、近年、記録の高密度化のため、記録に用いるレーザー光の波長を従来の半導体レーザーの発光波長である780nmを中心としたものから、405nm前後以下の青色光領域へと短波長化することが検討されつつある。
さらに、近年、記録媒体の高容量化のため、記録媒体に記録層を2層作成することによって記憶容量の倍化を図った2層記録媒体の作成や、記録の高速化が検討されているため、記録層用色素化合物にはますますの記録レーザーに対する高感度化が求められている。
また、色素を記録層に用いる場合、一般的にスピンコート法を用いて基板へ塗布することがコスト面で真空蒸着法に比べ有利であるため、光学記録媒体用色素は塗布溶媒に高い溶解性を示すことが必須である。現状では、ポリカーボネート基板に2,2,3,3−テトラフルオロプロパノール(TFP)や2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンタノール(OFP)などのフッ素系アルコール溶媒を用いて塗布するのが一般的である。
さらに、一般的にデータの記録および読み出しをともにレーザー光によって行い、読み出しレーザー強度は記録レーザー強度より弱い。従って、光学記録媒体の記録層を形成する色素が読み出し光である弱いレーザー光照射によって分解されてしまうほど該色素の耐光性が低いと、記録データの読み出しを行う際にデータエラーを生じる原因となる。また、光学記録媒体はその性質上記録面に太陽光や照明等が長時間照射される機会が多いため、色素が耐光性に劣ると光学記録媒体の記録データを長期保存することが困難になる。従って記録層用色素には高い耐光性が併せて求められる。
イミン化合物は、その合成の簡便さおよび主に300nm以上に極大吸収を有すること
から、光学記録媒体への応用が期待される化合物の1つであり、これまでにも特許文献1〜2などの出願がなされている。
特表2005−515914号公報 国際公開2004−102551号公報
しかしながら、これらの化合物は、一般的に金属錯体でない場合塗布溶剤への溶解性は優れるものの耐光性に著しく劣り、金属錯体である場合耐光性は改善される反面塗布溶剤への溶解性が大きく低下する。すなわち、特許文献1〜2に記載のイミン化合物は、一般に塗布溶剤への溶解性もしくは耐光性のいずれか一方に著しく劣る。
例えば、特許文献1においては、実施例として金属を含まないイミン化合物を用いた光学記録媒体のみしか記載がなく、該実施例の化合物は発明者による検討の結果耐光性に著しく劣ることが明らかとなった。また、特許文献2で実施例として挙げられているイミン金属錯体系化合物は発明者による検討の結果、特にフッ素系アルコール溶剤への溶解性に著しく劣ることが明らかとなった。さらに、イミン金属錯体系化合物のうち一般的なものであるサレン系錯体化合物に対しても同様の検討を行ったところ、やはりフッ素系アルコール溶剤への溶解性に著しく劣ることが明らかとなった。
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであって、塗布溶剤への溶解性および耐光性のいずれにも優れ、青色レーザー光を用いた光記録にも対応可能な光学記録媒体の記録層形成用色素、及びそれを用いた光学記録媒体、その光学記録媒体の記録方法を提供することを目的とする。
金属錯体でない場合耐光性に著しく劣る理由としては、イミン構造が化学的に、かつ、光に不安定であることが一因であると考えられ、金属錯体である場合、耐光性は改善される反面塗布溶剤への溶解性が大きく低下する理由としては金属錯体化により化合物の平面性が増加し、分子間でのスタッキング等により、安定性は向上するが溶媒との親和性が低下するのが一因であると考えられる。
一方、イミン化合物の一種であるヒドラジド化合物は、シッフ塩基に隣接したアミノ基(C(O)−NR−N=C骨格)を有する骨格を持つため、上記イミン化合物より化合物への溶解性基の導入が容易であり、金属錯体において溶解性の向上が期待される。しかしながら、一般的にN−N単結合は光その他に不安定であること、N−N単結合によって化合物全体のπ共役系が途切れてしまうことによる長波長化の困難さなどから、光学記録媒体への応用は不可能であると思われていた。
ところが、本発明者らが、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、以下の一般式(I)で表されるヒドラジド化合物のリガンドを含む金属キレート錯体化合物が、塗布溶剤への溶解性および薄膜状態での耐光性に優れ、かつこれを記録層に用いた光学記録媒体が青色レーザー光で良好に記録できることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明は、以下を要旨とする。
[1] 下記一般式(I)で表されるヒドラジド化合物のリガンドと遷移金属カチオンからなる錯体を含むことを特徴とする、光学記録媒体の記録層形成用色素。
Figure 0004483808
〔式(I)中、環Aは置換基を有していてもよい芳香環基を示す。Rは、置換基を有していても良い炭化水素基、または、置換基を有していても良い複素環基を示し、Rと環Aとは、連結基を介して、または介さずに直接結合していてもよい。Rは、置換基を有
していても良い炭化水素基、置換基を有していても良い複素環基、または、水素原子を示す。ピリジン環は環Bとともに縮合環を形成してもよい。この場合、環Bは置換基を有していても良いアリール基である。〕
[2] 錯体が下記一般式(II)で表されるものである[1]に記載の、光学記録媒体の記録層形成用色素。
Figure 0004483808
〔式(II)中、環A、環B、R、およびRは、式(I)におけると同様であり、複数の環A、複数の環B、複数のR及び複数のRは、同一であっても異なっていてもよく、Mは遷移金属を示し、式(II)の錯体は、更にカウンターアニオンを有してもよい。〕
[3] 遷移金属カチオンが第4周期の元素からなることを特徴とする[1]または[2]に記載の光学記録媒体の記録層形成用色素。
[4] 遷移金属カチオンがコバルトからなることを特徴とする[1]〜[3]のいずれか1つに記載の光学記録媒体の記録層形成用色素。
[5] 基板と、該基板上に形成された記録層とを少なくとも有し、 該記録層が、[1]〜[4]のいずれか1つに記載の光学記録媒体の記録層形成用色素を用いて形成されたものであることを特徴とする光学記録媒体。
[6] [5]に記載の光学記録媒体における記録層用色素が、基板に塗布した薄膜状態において50℃、相対湿度50、キセノン光0.55W/mの条件で40時間耐光性試験を行った際を行った際の色素残存率が80%以上であることを特徴とする光学記録媒体。
[7] [6]に記載の光学記録媒体に対し、波長350〜530nmのレーザー光を用いて記録を行なうことを特徴とする光学記録媒体の記録方法。
本発明の光学記録媒体の記録層形成用色素は、溶解性、耐光性および青色レーザー記録感度に優れている。従って、この色素を光学記録媒体の記録層に用いることにより、青色レーザー光による記録特性に優れ、かつ耐光性も良好な高密度光学記録媒体を、良好な膜性のもとに、安価に提供することが可能となる。
以下、本発明の実施の形態を具体的に説明するが、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々に変更して実施することができる。
I.記録層形成用色素
本発明の光学記録媒体の記録層形成用色素は、下記一般式(I)で表されるヒドラジド化合物のリガンドと遷移金属カチオンからなる錯体を含むことを必須とする。
Figure 0004483808
〔式(I)中、環Aは、置換基を有していてもよい芳香環基を示す。Rは、置換基を有していても良い炭化水素基、または、置換基を有していても良い複素環基を示し、Rと環Aとは、連結基を介して、または介さずに直接結合していてもよい。Rは、置換基を
有していても良い炭化水素基、置換基を有していても良い複素環基、または、水素原子を示す。ピリジン環は環Bとともに縮合環を形成してもよい。この場合、環Bは置換基を有していても良いアリール基である。〕
{語句の説明}
本発明において芳香環とは、芳香族性を有する環、すなわち(4n+2)π電子系(nは自然数)を有する環を意味する。その骨格構造は、通常、5または6員環の、単環または2〜6縮合環からなる芳香環であり、該芳香環には、芳香族炭化水素環、芳香族複素環の他、アントラセン環、カルバゾール環、アズレン環のような縮合環も含まれる。
また、本発明において、「置換基を有していても良い」とは置換基を1以上有していても
良いことを意味する。
なお、本発明に係る製造法によって製造される化合物中には、本発明に係る置換ヒドラジド金属錯体の1種が単独で含まれていても良く、2種以上が混合して含まれていても良い。
以下に、上記一般式(1)で表される置換ヒドラジドと金属原子Mからなる金属錯体に
ついて詳細に説明する。
[一般式(I)で表されるヒドラジド化合物のリガンドについて]
{環A}
環Aは置換基を有していても良い芳香環基を示す。
芳香環基の具体例としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントラニル基、フルオレニル基、フェナンスリル基、アズレニル基、メタロセン環基等のアリール基;チエニル基、フリル基、ピロリル基、ピリジル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、インドールイル基、キノキサリニル基、アクリジニル基、チアゾリル基、ピラジニル基等のヘテロアリール基が挙げられる。
これらのうち、環Aは、6員環単環または、6員環2縮合環であることが好ましい。また
、ヘテロ原子を有する場合は、環Aに結合するカルボニル基に対し、メタ位、かつ/また
はパラ位にヘテロ原子を有することが好ましい。
なお、環Aが有していても良い置換基の具体例は、後述するRおよびRが有していても良い置換基の具体例と同様である。
さらに隣り合った置換基同士は、連結基を介して、あるいは、直接、結合していてもよい。特に環AとRとの結合の場合については、後述するRの項で具体例を挙げて説明する。
{R
一般式(I)中、Rは置換基を有していても良い炭化水素基、または、置換基を有していても良い複素環基を表す。
の炭化水素基としては、以下のi)、ii)、複素環基としてはiii)の置換基が挙げられる。
i)脂肪族炭化水素基;
メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基、シクロヘキシルメチル基、ネオペンチル基、2−エチルブチル基、2−ブチル基、シクロヘキシル基、3−ペンチル基などの直鎖状、分岐鎖状、もしくは、環状のアルキル基、2−プロペニル基、エチニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、2,4−ペンタジエニル基などのアルケニル基、2−ヘキシン基などのアルキニル基などがあげられる。このうち好ましくは、炭素数1〜12程度の脂肪族炭化水素基、特に好ましくは、炭素数3〜12程度の分岐鎖脂肪族炭化水素基である。
ii)アリール基;
フェニル基、ナフチル基、アントラニル基、フルオレニル基、フェナンスリル基、アズレニル基、メタロセン環基などがあげられ、このうち好ましくは、炭素数6〜12程度の単環または縮合2員環式アリール基である。中でも特に好ましくは、単環式アリール基である。
iii)複素環基;
チエニル基、フリル基、ピロリル基、ピリジル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、インドールイル基、キノキサリニル基、アクリジニル基、チアゾリル基、ピラジニル基などがあげられる。これらのうち好ましくは、炭素数3〜12程度の単環式5、6員環あるいは2環式5員環複素環基である。特に好ましくは、炭素数3〜12程度の単環式6員環である。
<Rの分子量>
の分子量は、分子量増大に伴う吸光係数低下を防止する観点から、合計300以下であることが好ましい。
先の炭化水素基、複素環基が置換基を有する場合、その種類は色素の安定性や性能に影響を与えないものであれば特に限定をされないが
例えば、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、シアノ基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロアリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロアリールチオ基、アミノ基、アシル基、アミノアシル基、ウレイド基、スルホンアミド基、カルバモイル基、スルファモイル基、スルファモイルアミノ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、ヘテロアリールオキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、ヘテロアリールスルホニル基、イミド基及びシリル基などからなる群より選択される。
より具体的には、メチル基、エチル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基
、2−ペンチル基、n−ヘキシル基などの炭素数1〜6程度のアルキル基、エチニル基、
プロピレニル基などの炭素数2〜6程度のアルケニル基、アセチレニル基などの炭素数2〜6程度のアルキニル基、フェニル基、ナフチル基、アントラニル基、フェナンスリル基、フェロセン環基などの炭素数6〜20程度のアリール基、チエニル基、フリル基、ピリジル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基などの炭素数3〜20程度のヘテロアリール基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、t−ブトキシ基、n−ブトキシ基などの炭素数
1〜6程度のアルコキシ基、フェノキシ基、ナフトキシ基などの炭素数6〜20程度のアリールオキシ基、チエニルオキシ基、ピリジルオキシ基などの炭素数3〜20程度のヘテロアリールオキシ基、メチルチオ基、エチルチオ基、イソプロピルチオ基、n−ブチルチ
オ基、sec-ブチルチオ基、3-ペンチルチオ基などの炭素数1〜6程度のアルキルチオ基、フェニルチオ基、ナフチルチオ基などの炭素数6〜20程度のアリールチオ基、チエニルチオ基、ピリジルチオ基、イミダゾリルチオ基、ピラゾリルチオ基などの炭素数3〜20程度の炭素数3〜20程度のヘテロアリールチオ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジフェニルアミノ基などの炭素数1〜20程度の置換基を有していても良いアミノ基、アセチル基、ピバロイル基などの炭素数2〜20程度のアシル基、アセチルアミノ基、プロピオニルアミノ基などの炭素数2〜20程度のアシルアミノ基、3−メチルウレイド基などの炭素数2〜20程度のウレイド基、メタンスルホンアミド基、ベンゼンスルホンアミド基などの炭素数1〜20程度のスルホンアミド基、ジメチルカルバモイル基、エチルカルバモイル基などの炭素数1〜20程度のカルバモイル基、エチルスルファモイル基などの炭素数1〜20程度のスルファモイル基、ジメチルスルファモイルアミド基などの炭素数1〜20程度のスルファモイルアミド基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などの炭素数2〜6程度のアルコキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基、ナフトキシカルボニル基などの炭素数7〜20程度のアリールオキシカルボニル基、ピリジルカルボニル基などの炭素数5〜20程度のヘテロアリールオキシカルボニル基、メタンスルホニル基、エタンスルホニル基、トリフルオロメタンスルホニル基などの炭素数1〜6程度のアルキルスルホニル基、ベンゼンスルホニル基、モノフルオロベンゼンスルホニル基などの炭素数6〜20程度のアリールスルホニル基、チエニルスルホニル基などの炭素数3〜20程度のヘテロアリールスルホニル基、フタルイミド基などの炭素数4〜20程度のイミド基、または、アルキル基及びアリール基から選ばれる置換基で3置換されているシリル基などがあげられる。
これらの置換基は、さらに任意の置換基で置換されていてもよい。具体的には、Rが有していても良い置換基として先にあげた任意の置換基の具体例があげられる。
なお、Rは、環Aが有する置換基乃至は後述するRと、連結基を介して、または連結基を介さずに直接結合していてもよい。Rと環Aが有する置換基が結合している構造とは、下記構造式における環Xに相当し、具体的には、−(CH−、−(CH−等の炭素数2〜6程度のアルキレン基;又は、−OCHO−、−O(CHO−等の炭素数1〜4程度のアルキレンジオキシ基等を形成する事で縮合環を形成している構造、または、カルボニル基、チオカルボニル基など−C1−ユニットで連結されている構造である。一方、RとRとが結合している構造とは、下記構造式における環Yに相当する。
Figure 0004483808
環Xおよび環Yは窒素、酸素、炭素から構成され、特に、環Xは、5員環、または、6員環、環Yは、5員環であることが好ましい。
{R
一般式(I)中、Rは、置換基を有していても良い炭化水素基、置換基を有していても良い複素環基、または、水素原子を表す。炭化水素基および複素環基の具体例としては、先にあげた、Rの具体例があげられ、置換基も同様のものがあげられるが、なかでもRは、芳香族炭化水素基より脂肪族炭化水素基であることが好ましく、炭素数が1〜10程度のものが特に好ましい。また、Rが水素原子である場合も好ましい。
{環B}
一般式(I)において、ピリジン環は環Bとともに縮合環を形成してもよい。この場合、環Bは置換基を有していても良いアリール基である。アリール基の具体例としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントラニル基、フルオレニル基、フェナンスリル基、アズレニル基、メタロセン環基等が挙げられる。これらのうち、環Bは、6員環単環または、6員環2環であることが好ましい。 なお、環Bが有していても良い置換基の具体例は、先のRが有していても良い置換基の具体例と同様である。
{具体例}
一般式(I)で表わされるヒドラジドリガンドの具体例を以下に例示するが、本発明はその要旨をこえない限りこれらに限定されるものではない。
Figure 0004483808
Figure 0004483808
Figure 0004483808
Figure 0004483808
尚、一般式(1)で表される化合物は、記録媒体の保存安定性の向上させる理由から、通常水不溶性であることが好ましい。ここで「水不溶性」とは、25℃、1気圧の条件下における水に対する溶解度が、通常0.01重量%以下、好ましくは0.001重量%以下であることを言う。
{合成法}
一般式(I)で表されるヒドラジドリガンドは、以下に示す反応などによって容易に合成できる。
Figure 0004483808
酸クロライド誘導体Iの塩化メチレン溶液を過剰のヒドラジン水和物の塩化メチレン溶
液に滴下し(滴下の間は、−78℃〜―20℃程度に保持)、滴下後、室温で1時間から24時間程度撹拌した。得られたヒドラジド誘導体IIを、2−ピリジンカルバルデヒドIIIとアルコール性溶媒(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノールなど)中、1時間〜24時間程度還流することで、化合物IVを定量的に得た。化合物IVを炭酸カリウム、NaI存在下、DMF中アルキルハライドと反応させて、化合物V(R:置換アルキル基)をえた。
また、化合物IVをPd触媒により、アリールハライドと反応させて、化合物V(R:置換アリール基、置換へテロアリール基)をえた。
Rが1級アルキル基の場合は、RNH−NHのヒドラジン誘導体と酸クロライドIとの反応により化合物VIを得た後、2−ピリジンカルバルデヒドIIIとの反応により、化
合物Vを得ることもできる。
[金属錯体について]
本発明の光学記録媒体の記録層形成用色素は、前記一般式(I)で表されるヒドラジド化合物のリガンドと遷移金属カチオンからなる錯体を含むものである。
{遷移金属カチオン}
遷移金属カチオンとして挙げられる金属元素はヒドラジドと金属錯体を形成し得るものであれば任意であるが、具体例としてはTi,V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni,Cu,Mo,Ru,Rh,Pd,Ag,Pt,Au,Er等が挙げられる。
本発明においては、これらの中でも、安価な、第4周期元素であることが好ましい。また、遷移金属カチオンの価数は特に規定されないが、錯体の安定性から特に2価または、3価であることが好ましい。特に、Mn、Fe、Co、Ni、Cuが好ましく、中でも耐久性の面から、Coは、特に好ましい。
{カウンターアニオン}
本発明の錯体は、更にカウンターアニオンを有していても良い。
カウンターアニオンの具体例としては、アルコール、フェノール、カルボン酸、ホスホン酸、ハロゲン、過塩素酸、過沃素酸、シアン酸、イソシアン酸、イソチオシアン酸、アジド、硝酸、炭酸、炭酸水素酸、置換または無置換の硫酸(硫酸、硫酸水素酸、メチル硫酸など)、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トシル酸、置換または無置換のリン酸(リン酸、リン酸水素酸、リン酸二水素酸、フェニルリン酸など)、六フッ化リン、六フッ化アンチモン、置換または無置換のホスフィン酸(ホスフィン酸、メチルホスフィン酸など)、置換または無置換のボロン酸(テトラフェニルボロン酸など)、ベンゼンスルホン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸それぞれをアニオン化したもの等が挙げられる。これらのうち、吸光度低下による記録感度低下を防止する観点から、炭素数20以下、分子量300以下のものが好ましく、水不溶性とするために、ClO -、PF -、BF -、トリフルオロメタンスルホニルアニオン、NO3 -、SbF6 -等が含まれることが
特に好ましい。
{金属錯体の構成形態}
前記一般式(I)で表されるヒドラジド化合物のリガンド、前記遷移金属カチオン、および前記カウンターアニオンからなる錯体としては、中性であれば特に限定されないが、下記一般式(II)で表されるものが好ましい。
Figure 0004483808
〔式(II)中、環A、環B、R、およびRは、式(I)におけると同様であり、複数の環A、複数の環B、複数のR及び複数のRは、同一であっても異なっていてもよく、Mは遷移金属を示し、式(II)の錯体は、更にカウンターアニオンを有してもよい。〕
ヒドラジドリガンド、遷移金属カチオンおよびカウンターアニオンそれぞれの金属キレート錯体1分子中における構成数に関しては、金属キレート錯体として中性であれば特に規定されないが、金属カチオン1に対してヒドラジドリガンドの構成数が1〜2であり、アニオンの構成数が該金属カチオンの価数であることが好ましい。特に好ましくは、カウンターアニオンを含まず、リガンドと金属カチオンの比が2:1の場合、あるいは、リガンドと金属カチオンとカウンターアニオンの比が、2:1:1の場合である。
また、ヒドラジドリガンド、遷移金属カチオンおよびカウンターアニオンの構成数のいずれかが2以上である場合、それぞれヒドラジドリガンド、遷移金属カチオンおよびカウンターアニオンは同じでもよく、異なっていても良い。たとえば、金属キレート錯体1分子中に遷移金属カチオンが2つ含まれている場合、該遷移金属カチオンがCr3+およびCu2+であっても良い。
なお、複数の環A、複数の環B、複数のR及び複数のR は、同一であっても異な
っていてもよいが、合成の簡便さから同じである方が好ましい。
{分子量}
以上に説明した一般式(I)で表されるリガンドを含むヒドラジド金属キレート錯体は、吸光度低下による感度低下防止の点から、金属カチオンおよびアニオンを含めて、通常分子量2,500以下、中でも2,000以下であることが好ましい。
{錯体の合成方法}
本発明における前記錯体は、一般式(I)で表されるヒドラジドリガンドと、遷移金属塩を、溶媒の存在下もしくは非存在下、室温から溶媒が還流する程度加熱反応することで得られる。反応溶媒を用いる場合、該溶媒としては水、メタノール、エタノール、アセトニトリルなどのアルコール系溶媒や、ジクロロメタン、クロロホルムなどのハロゲン系溶媒やトルエン、キシレンなどの炭化水素系溶媒を用いることができる。なお、生成したキレート錯体に含まれるアニオンは、溶媒中にてさらに別の塩を添加することにより変更することができる。
{耐光性および塗布溶剤への溶解性}
本発明の錯体を含む本発明の記録層形成用色素のうち好ましいものは耐光性および塗布溶剤への溶解性に優れ、さらに光学記録媒体の記録層形成に用いたときの膜性および記録感度に優れるという特徴がある。この場合の耐光性に優れるとは、約50nmの膜厚になるように塗布したヒドラジド金属キレート錯体薄膜に対し、温度50℃、相対湿度50、キセノンランプ(強度0.55W/m)照射条件の耐光性試験を40時間行っても当該ヒドラジド金属キレート錯体薄膜の90%以上が劣化せずに残存することを言う。ここで、劣化の度合いは300〜500nmにおける吸収極大の吸収減少率によって判定する。また、塗布溶剤への溶解性に優れるとは、20℃、常圧条件においてTFPに1.0重量%
以上溶解することを示す。溶解の判定は特定の濃度で化合物とTFPを混合したときに、溶
媒中に化合物の結晶残渣が残存するか否かで行う。
II.光学記録媒体
{記録層}
本発明の光学記録媒体が有する記録層は、一般式(1)で表わされるヒドラジド金属キレート錯体を少なくとも一種含有する色素(これを適宜「本発明の光記録媒体の記録層形成用色素」或いは単に「本発明の色素」という。)を用いて形成されたものである。 即
ち、本発明の光学記録媒体の記録層は、本発明のヒドラジド金属キレート錯体を少なくとも1種類以上含有することになる。
本発明の光学記録媒体が有する記録層は、記録層形成用色素として本発明で表されるヒドラジド金属キレート錯体を最低1種類含む。
本発明の光学記録媒体の記録層形成に用いる色素(本発明の色素)としては、本発明のヒドラジド金属キレート錯体を一種類のみ用いてもよく、本発明のヒドラジド金属キレート錯体を二種類以上、任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。また、一種又は二種以上の本発明のヒドラジド金属キレート錯体に加えて、他の色素を一種又は二種以上併用してもよい。但し、本発明のヒドラジド金属キレート錯体以外の色素を併用する場合には、本発明のヒドラジド金属キレート錯体の優れた特性を十分に発揮させる観点から、全色素の合計に対する本発明のヒドラジド金属キレート錯体が占める比率を、通常50重量%以上、好ましくは70重量%以上とすることが好ましい。
本発明のヒドラジド金属キレート錯体と併用可能な他系統の色素としては、記録用のレーザー光波長域に吸収を有し、照射されたレーザー光のエネルギーを吸収して、照射部分の記録層、反射層または基板に、分解、蒸発、溶解等の熱的変形を伴うピットを形成させるものが好ましい。また、CD−R向けの770〜830nmの範囲から選ばれた波長の近赤外レーザー光やDVD−R向けの620〜690nmの範囲から選ばれた赤色レーザー光での記録に適する色素を併用して、複数の波長域のレーザー光での記録に対応する光学記録材料とすることもできる。他系統の色素としては、具体的には、含金属アゾ系色素、フタロシアニン系色素、ナフタロシアニン系色素、シアニン系色素、アゾ系色素、スクアリリウム系色素、含金属インドアニリン系色素、トリアリールメタン系色素、メロシアニン系色素、アズレニウム系色素、ナフトキノン系色素、アントラキノン系色素、インドフェノール系色素、キサンテン系色素、オキサジン系色素、ピリリウム系色素等が挙げられ、これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
なお、これら他系統の色素のうち、CD−R向けの770〜830nmの範囲から選ばれた波長の近赤外レーザー光やDVD−R向けの620〜690nmの範囲から選ばれた赤色レーザー光での記録に適する色素を併用して、複数の波長域のレーザー光での記録に対応する光学記録材料とすることもできる。
記録層には、更に、後述するバインダーや各種添加剤が用いられていてもよいが、記録層に占める本発明の記録層形成用色素の割合は、通常10重量%以上、好ましくは50重量%以上、特に好ましくは90重量%以上である。
色素の割合が少なすぎると、記録感度が著しく低下するので好ましくない。本発明の色素として2種類以上の色素を併用する場合には、その合計が上記範囲を満たすようにする。また、後述のバインダーや各種の添加剤を用いる場合には、形成された記録層に占める本発明の色素の割合が上記の範囲内となるように、バインダーや添加剤の使用量を調整することが好ましい。なお、本発明のヒドラジド金属錯体の優れた特性を十分に発揮させる観点から、バインダーや添加剤が使用されないことが特に好ましい。
記録層は成膜性を向上させるためにバインダーを含有していてもよい。バインダーとしては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ケトン樹脂、ニトロセルロース、酢酸セルロース、ポリビニルブチラール、ポリカーボネート等既知のものが1種を単独で、或いは2種以上を混合して用いられる。記録層に占めるバインダーの割合が高すぎると記録感度が著しく低下するので、バインダー、更には後述の各種添加剤を用いる場合、形成された記録層に占める本発明の記録層形成用色素の割合が、上記の範囲となるような量を用いる。
また、記録層は、安定性や耐光性向上のための一重項酸素クエンチャーや記録感度向上剤などを含有していてもよい。
一重項酸素クエンチャーとしては、アセチルアセトナート、ビスフェニルジチオール、サリチルアルデヒドオキシム、ビスジチオ−α−ジケトン等と遷移金属とのキレート化合物などが挙げられ、これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
記録感度向上剤としては、遷移金属等の金属が原子、イオン、クラスター等の形で化合物に含まれる金属系化合物等が挙げられ、例えばエチレンジアミン系錯体、アゾメチン系錯体、フェニルヒドロキシアミン系錯体、フェナントロリン系錯体、ジヒドロキシアゾベンゼン系錯体、ジオキシム系錯体、ニトロソアミノフェノール系錯体、ピリジルトリアジン系錯体、アセチルアセトナート系錯体、メタロセン系錯体のような有機金属化合物などが挙げられ、これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。金属原子の種類は特に限定されないが、遷移金属が好ましい。
なお、一重項酸素クエンチャーは色素に対して通常5〜30重量%程度、記録感度向上剤は色素に対して通常10〜30重量%程度用いられる。
二種以上の一重項酸素クエンチャーを併用する場合や、二種以上の記録感度向上剤を併用する場合には、各々、その合計が上記範囲を満たすようにする。
本発明のヒドラジド金属キレート錯体錯体を用いて光学記録媒体の記録層を形成するには、真空蒸着法、スパッタリング法、ドクターブレード法、キャスト法、スピンコート法、浸漬法等の一般に行われている薄膜形成法を用いることができる。これらのうち、量産性、コスト面からスピンコート法が好ましい。スピンコート法により記録層を成膜する場合、回転数は500〜5000rpmが好ましく、スピンコート後、必要に応じて、加熱または溶媒蒸気にさらす等の処理を行ってもよい。記録層の膜厚は、特に限定されないが、通常10nm〜5μm、好ましくは20nm〜2μm、更に好ましくは50nm以上300nm以下である。色素層の膜厚が前記の下限値より大きい場合は、熱拡散の影響を抑えることができ、良好な記録がしやすい。また、記録信号に歪みが発生しにくいため、信号振幅を大きくしやすい。色素層の膜厚が前記の上限値より小さい場合は、反射率を高くしやすく、再生信号特性を良好としやすい。
記録層をドクターブレード法、キャスト法、スピンコート法、浸漬法等により形成する場合には、まず、本発明の記録層形成用色素、バインダー、一重項酸素クエンチャー、記録感度向上剤および他の色素等を溶媒に溶解させ、塗布液を作成する。溶媒としては、TFPを用いることが工業面で特に好ましいが、基板を侵さない溶媒であればTFPに限定されるものではなく、ジアセトンアルコール、3−ヒドロキシ−3−メチル−2−ブタノン等のケトンアルコール系溶媒、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のセロソルブ系溶媒、n−ヘキサン、n−オクタン等の鎖状炭化水素系溶媒、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、n−ブチルシクロヘキサン、t−ブチルシクロヘキサン、シクロオクタン等の脂環式炭化水素系溶媒、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル等のエーテル系溶媒、OFP、ヘキサフルオロブタノール等の
パーフルオロアルキルアルコール系溶媒、乳酸メチル、乳酸エチル、イソ酪酸メチル等のヒドロキシエステル系溶媒等を用いることもできる。なお、これらの溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよいが、工業面からは1種を単独で用いることが好ましい。
塗布液中の本発明の記録層形成用色素の濃度は、その溶媒溶解性に応じて適宜決定されるが、通常0.7重量%以上、好ましくは1.0重量%以上で、通常10重量%以下、好ましくは3.0重量%以下とされる。塗布液中の色素濃度が過度に低いと、記録層の形成効率が悪くなる。塗布液中の色素濃度が過度に高いと成膜工程において、色素の結晶化等の問題が発生する。
また、スピンコート後の余剰色素を効率的に回収するためには、通常塗布液の濃度の1.5倍以上、好ましくは2倍以上の濃度であっても、色素化合物が塗布溶媒に溶解可能であることが好ましい。
{光学記録媒体}
本発明の光学記録媒体と、本発明の記録層形成用色素を用いて上述のようにして形成された記録層を有するものである。
記録層を形成する光学記録媒体の基板としては、ガラスや種々のプラスチックなど、使用するレーザー光に対して透明なものが好ましく用いられる。プラスチックとしては、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ニトロセルロース、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリスチレン樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられるが、生産性、コスト、耐吸湿性などの点からポリカーボネート樹脂を射出成形したものが好ましい。
通常、基板上には、必要に応じて更に、反射層、保護層、下引き層などの記録層以外の層が設けられ、光学記録媒体として使用される。
反射層としては、金、銀、アルミニウムまたはそれらの合金のような金属からなるもの等が挙げられるが、550nm以下の波長のレーザー光に対する反射率から、金やアルミニウムより、銀の方が好ましい。金属反射層は、蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などによって記録層上に成膜される。ここで、金属反射層と記録層との間に層間の密着力を向上させるため、または、反射率を高める等の目的で中間層を設けてもよい。反射層の膜厚は、通常50nm以上、300nm以下の範囲である。
反射層の上に形成する保護層の材料は、反射層を外力から保護するものであれば特に限定されない。例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂、UV(紫外線)硬化性樹脂等の有機物質、SiO、SiN、MgF、SnO等の無機物質などが挙げられる。
熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等は適当な溶剤に溶解して塗布液を塗布し、乾燥することによって形成することができる。
UV硬化性樹脂は、そのままもしくは適当な溶剤に溶解して塗布液を調製した後にこの塗布液を塗布し、UV光を照射して硬化させることによって形成することができる。UV硬化性樹脂としては、例えば、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート等のアクリレート系樹脂を用いることができる。これらの材料は単独で又は混合して用いてもよいし、1層だけでなく多層膜にして用いてもよい。
保護層の形成の方法としては、記録層と同様に、スピンコート法やキャスト法等の塗布法やスパッタ法や化学蒸着法等の方法が用いられるが、この中でもスピンコート法が好ましい。保護層の膜厚は、通常、0.1μm以上、100μm以下の範囲である。
なお、各層間の接着力を高めるために、各層間に下引き層を用いても良い。下引き層の種類としては、各層の接着力を高め、かつ各層の性質に影響を与えない物であれば特に限定されないが、取扱いの容易さから有機層であることが好ましい。
また、上記構成の光学記録媒体を接着層を介して2枚貼りあわせ、或いは、基板の片面だけでなく両面に反射層、記録層、保護層等を設けることにより、両面記録型光学記録媒体としてもよい。更には、基板上に反射層及び記録層の組を、中間層を介して二組以上形成し、その上に保護層を設けることにより、多層型光記録媒体としてもよい。
{耐光性}
本発明に係るヒドラジド金属キレート錯体は、耐光性に優れているため、通常、本発明
に係るヒドラゾン金属キレート錯体を記録層に含んだ光学記録媒体は、高温高湿かつ直射光の下で放置しても劣化しにくい。具体的には、本発明に係るヒドラゾン金属キレート錯体を記録層に含んだ光学記録媒体のうち好ましいものは、温度50℃、相対湿度50、キセノンランプ(強度0.55W/m)照射の条件下に40時間放置しても当該ヒドラジド金属キレート錯体の80%以上、好ましくは90%以上、更に好ましくは95%以上が劣化せずに残存する。
このような耐光性の試験は、まず、乾燥後の膜厚が約50nmとなるように、色素を含む溶液をプラスチック基板上に塗布した後、乾燥し、色素を含む層を得る。得られた色素を含む層に対して、温度50℃、相対湿度50の条件下、キセノンランプ(強度0.55W/m)の照射を所定時間行い、照射前後の吸収極大波長における吸光度を比較し、色
素残存率を求める。
{膜性}
さらに、本発明に係るヒドラジド金属キレート錯体は、膜性に優れている。すなわち、スピンコート法により記録層を形成後、ディスク表面に化合物の結晶化に由来する白化現象が認められない点においても、工業的に有利である。
III.光学記録媒体の記録方法
上述のようにして得られた光学記録媒体への情報の記録は、通常、記録層に0.4〜0.6μm程度に集束したレーザー光を照射することにより行う。記録層がレーザー光のエネルギーを吸収すると、レーザー光照射部分では、分解、発熱、溶融等の熱的変形が起こる。記録された情報の再生は、レーザー光による上記熱的変形が起きている部分と起きていない部分の反射率の差を読み取ることにより行う。
高密度記録のためには、記録時に使用するレーザー光の波長が短いほど好ましく、特に、本発明の光学記録媒体は、その記録層に上述した本発明のヒドラジド金属キレート錯体を含有することから、その利点を十分に発揮させる観点から、波長350nm〜530nmのレーザー光が好ましい(これを以下適宜「本発明の光学記録媒体の記録方法」或いは単に「本発明の記録方法」という。)。
かかるレーザー光の代表例としては、例えば、中心波長405nm、410nmなどの青色レーザー光、中心波長515nmの青緑色の高出力半導体レーザー光が挙げられる。これら以外にも(a)基本発振波長が740〜960nmの連続発振可能な半導体レーザー光、または(b)半導体レーザー光によって励起されかつ基本発振波長が740〜960nmの連続発振可能な固体レーザー光のいずれかを、第二高調波発生素子(SHG)により波長変換することによって得られる光なども挙げられる。
上記のSHGとしては、反射対称性を欠くピエゾ素子であればいかなるものでもよいが、KDP(KHPO)、ADP(NHPO)、BNN(BaNaNb15)、KN(KNbO)、LBO(LiB)、化合物半導体などが好ましい。第二高調波の具体例としては、基本発振波長が860nmの半導体レーザーの場合は、その倍波の波長430nm、また半導体レーザー励起の固体レーザーの場合は、CrドープしたLiSrAlF6結晶(基本発振波長860nm)からの倍波の波長430nmなどが挙げられる。
これらのうち、中心波長405nmの青色レーザー光を使用することが特に好ましい。
光学記録媒体が有する吸収波長および吸光度のうち、光学記録媒体の吸収スペクトルの最大吸収波長(λmax)が350〜450nmであり、該λmaxにおけるモル吸光係数が30,000以上であることが、膜厚の制御およびレーザーへの高感度化の面で好ましい。
光学記録媒体が有する吸収波長および吸光度のうち好ましいものは、記録に用いるレーザー光の種類に依存する。例えば、405〜410nmを中心波長とする青色レーザーに対しては、光学記録媒体の吸収スペクトルの極大吸収波長(λmax)が300〜400nmであり、該λmaxにおけるモル吸光係数が5000以上、より好ましくは、10000以上、さらに好ましくは、30000以上であること、が好ましい。また、405nmにおける吸収強度は、λmaxにおける吸収強度の通常0%以上、中でも0.01%以上、また、通常15%以下、中でも10%以下の範囲であることが好ましい。特に、本発明に係るヒドラゾン金属キレート錯体はこれら青色レーザー光を用いた光学記録材料に好適である。また、合成が比較的容易であることから、安価な光学記録媒体を提供することができる。
{記録感度}
また、本発明に係るヒドラゾン金属キレート錯体は、記録レーザー感度に優れる。具体的には、本発明に係るヒドラゾン金属キレート錯体を記録層に含んだ光学記録媒体のうち好ましいものは、中心波長404nm、NA=0.85の青色レーザー光を照射した場合に、レーザー強度10mW以下においても良好な記録ピットの形成が可能である。なおここで良好な記録ピットの形成が可能であるとは、特定のレーザー強度の青色レーザー光を光学記録媒体の記録面に照射した場合に、目視もしくは光学顕微鏡を用いてピットの形成を確認できることを言う。
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
尚、以下において、TG分析は、エスアイアイ・ナノテクノロジー社製示差熱熱重量分析装置「EXSTAR6000 TG−DTA」を用い、試料量1.0mg、温度上昇1
0℃/分、窒素流量0.2L/分、アルミニウムパンの条件で行い、熱分解温度は上記TG条件にて化合物重量が10%減少する温度とした。
実施例1
<ヒドラジド化合物の合成>
Figure 0004483808
メチルヒドラジン(5mL、94 mmol)を塩化メチレン100mLに加え、−60
℃まで冷却した。ベンゾイルクロライド(5.5 mL、47.0mmol)を15分か
けて、滴下した後、反応溶液を室温まで昇温し、さらに3時間撹拌した。水を100mL
加え、有機層を抽出し、NaHCO3水溶液でクロロホルム層を洗い、濃縮した。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、ヒドラジド誘導体である化合物VIaを84%収率で得た。
EI MS: 150
Figure 0004483808
化合物VIa(2.0g、13.3mmol)と2−キノリンカルバルデヒド(2.1g、13.3mmol) をメタノール30mL中で5時間還流した。冷却後、生成した沈殿をろ取し、結晶を冷メタノールで洗って、乾燥し、目的リガンドである化合物Vaを89%収率で得た。
EI MS: 289
<錯体の合成>
Figure 0004483808
化合物Va(1.0g、3.46mmol)をメタノール30mLに溶解し、メタノール5mLに溶解したCo(BF)六水和物(0.53g、1.56mmol)を加え、1
時間還流した。室温まで冷却し、メタノールを10mL程度まで濃縮し、冷蔵庫で冷却し
、沈殿をろ取し、冷メタノールで洗い、目的化合物VIIaを78%収率で得た。
UV/vis (DCM) 361 nm (ε41000)
熱分解温度:244℃
得られた錯体のアセトニトリル溶液中での紫外可視吸収スペクトルを図1に示す。
図1に記載のスペクトルは、図3に記載のスペクトルに比べ、吸収形状がシャープであり、裾切れがよいことから、記録感度の向上に寄与する。
得られた錯体について、塗布溶媒に対する溶解性を以下に示す方法で試験した結果、濃度1.0重量%、及び1.5重量%のいずれにおいても、完全に溶解していることが確認された。
<溶解性試験>
塗布溶媒として、2,2,3,3−テトラフルオロプロパノールを用い、錯体の濃度を1.0重量%、及び1.5重量%として、20℃、常圧にて30分間超音波処理した後、濾紙(東洋濾紙社製定量濾紙「No.5C」)上に滴下し、室温で24時間乾燥させ、未溶解成分の結晶残渣が濾紙上に存在しているか否かを目視観察した。
更に、得られた錯体を2,2,3,3−テトラフルオロプロパノールに濃度1.0重量%で溶解させ、濾過によって微細なゴミを取り除いた後、得られた溶液を、直径120mm、厚さ1.2mmの射出成形ポリカーボネート基板上に滴下し、スピンコート法(4900rpm)により塗布し、80℃で30分間乾燥させることにより膜厚約50nmの記
録層を形成し、光学記録媒体を作製した。
得られた光学記録媒体について、紫外可視吸収スペクトルを図2に示す。図2より、λmaxは376nmであり、得られた光学記録媒体は、320nm〜430nmのレーザー光に対して充分な吸収強度と反射率が見込めることがわかった。
得られた光学記録媒体について、以下に示す方法で記録感度を試験したところ、記録ピットの形成が確認された最高記録感度は7.5mWであった。
<記録感度試験>
中心波長404nm、NA=0.85の半導体レーザー光を照射し、光学顕微鏡により記録ピットの形成が確認された最高記録感度を測定した。
更に、得られた光学記録媒体について、以下に示す方法で耐光性を試験したところ、色素残存率は91%であった。
<耐光性試験>
温度50℃、相対湿度50の条件下で、0.55W/m の照射強度でキセノンラン
プを40時間照射した後の記録層について、吸収極大波長における照射前後の吸光度から求めた。
(比較例)
比較例1
下記のシッフ塩基化合物の錯体について、クロロホルム溶液中での紫外可視吸収スペクトルを図3に示す。
図3は、図1とは対照的に、アセトニトリルなどのアルコール系溶媒へは難溶であり、か
つ、スペクトル形状は、副吸収の影響で、ブルードである。
このシッフ塩基化合物の錯体を用い、該錯体を塩化メチレンに1.0重量%溶解させ、濾過によって微細なゴミを取り除いた後に、得られた溶液を直径120mm、厚さ1.2mmの日本ゼオン社製「ゼオネックス」基板上に滴下し、スピンコート法(4900rpm)により塗布し、80℃で30分間乾燥させることにより膜厚約50nmの記録層を形成し、光学記録媒体を作製した。
Figure 0004483808
尚、用いたシッフ塩基化合物の錯体についての前記の方法による塗布溶剤に対する溶解性は、濃度1.0重量%、及び1.5重量%のいずれにおいても、不溶成分の存在が確認された。更に、得られた光学記録媒体について、前記に示す方法で記録感度を試験したところ、記録ピットの形成が確認された最高記録感度は15.0mWであった。又、得られた光学記録媒体について、前記に示す方法で耐光性を試験したところ、色素残存率は86%であった。
実施例1の錯体のアセトニトリル溶液中での紫外可視吸収スペクトルを示す図である。 実施例1の錯体のTFP塗布による膜スペクトルを示す図である。 比較例1の錯体のクロロホルム溶液中での紫外可視吸収スペクトルを示す図である。

Claims (7)

  1. 下記一般式(I)で表されるヒドラジド化合物のリガンドと遷移金属カチオンからなる錯体を含むことを特徴とする、光学記録媒体の記録層形成用色素。
    Figure 0004483808
    〔式(I)中、環Aは置換基を有していてもよい芳香環基を示す。Rは、置換基を有していても良い炭化水素基、または、置換基を有していても良い複素環基を示し、Rと環Aとは、連結基を介して、または介さずに直接結合していてもよい。Rは、置換基を有
    していても良い炭化水素基、置換基を有していても良い複素環基、または、水素原子を示す。ピリジン環は環Bとともに縮合環を形成してもよい。この場合、環Bは置換基を有していても良いアリール基である。〕
  2. 錯体が下記一般式(II)で表されるものである請求項1に記載の、光学記録媒体の記録層形成用色素。
    Figure 0004483808
    〔式(II)中、環A、環B、R、およびRは、式(I)におけると同様であり、複数の環A、複数の環B、複数のR及び複数のRは、同一であっても異なっていてもよく、Mは遷移金属を示し、式(II)の錯体は、更にカウンターアニオンを有してもよい。〕
  3. 遷移金属カチオンが第4周期の元素からなることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の光学記録媒体の記録層形成用色素。
  4. 遷移金属カチオンがコバルトからなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の光学記録媒体の記録層形成用色素。
  5. 基板と、該基板上に形成された記録層とを少なくとも有し、 該記録層が、請求項1〜4のいずれか1項に記載の光学記録媒体の記録層形成用色素を用いて形成されたものであることを特徴とする光学記録媒体。
  6. 請求項5に記載の光学記録媒体における記録層用色素が、基板に塗布した薄膜状態にお
    いて50℃、相対湿度50、キセノン光0.55W/mの条件で40時間耐光性試験を行った際を行った際の色素残存率が80%以上であることを特徴とする光学記録媒体。
  7. 請求項6に記載の光学記録媒体に対し、波長350〜530nmのレーザー光を用いて記録を行なうことを特徴とする光学記録媒体の記録方法。
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