JP2007230145A - 光学記録媒体の記録層形成用色素、及びそれを用いた光学記録媒体、その光学記録媒体の記録方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】塗布溶媒への溶解性、及び耐光性に優れ、青色レーザー光を用いた光記録にも対応可能な光学記録媒体の記録層形成用色素、及びそれを用いた光学記録媒体、その光学記録媒体の記録方法を提供する。
【解決手段】ヒドロキシクロモン化合物のリガンドと遷移金属カチオンからなる錯体を含む、光学記録媒体の記録層形成用色素、及び、基板と、該基板上に形成された記録層とを少なくとも有し、該記録層が前記記録層形成用色素により形成されたものである光学記録媒体、前記光学記録媒体に対し、波長350〜530nmのレーザー光を用いて記録を行う、光学記録媒体の記録方法。
【選択図】 なし
【解決手段】ヒドロキシクロモン化合物のリガンドと遷移金属カチオンからなる錯体を含む、光学記録媒体の記録層形成用色素、及び、基板と、該基板上に形成された記録層とを少なくとも有し、該記録層が前記記録層形成用色素により形成されたものである光学記録媒体、前記光学記録媒体に対し、波長350〜530nmのレーザー光を用いて記録を行う、光学記録媒体の記録方法。
【選択図】 なし
Description
本発明は、光学記録媒体の記録層形成用色素、及びそれを用いた光学記録媒体、その光学記録媒体の記録方法に関し、特に、青色レーザー光対応の光学記録媒体に好適に用いられる記録層形成用色素、及びそれを用いた光学記録媒体、その光学記録媒体の記録方法に関する。
近年、高密度での情報の記録保存/再生が可能なことから、レーザー光を用いた光学記録媒体、特に光ディスクについての開発が取り進められている。光ディスクの中でも、最近注目を集めているものに、書き込み型コンパクトディスク(CD−R)がある。CD−Rは、通常、案内溝を有する円形のプラスチック基板上に、色素を主成分とする記録層、金属反射膜、及び保護膜が順次積層された構造をしている。CD−Rへの情報の記録は、レーザー光を照射し、その照射エネルギーが記録層で吸収されることにより、レーザー光照射部分の記録層、反射層、又は基板に分解、蒸発、溶解等の熱的変形を生じさせる方法(ヒートモード)や、レーザー光照射部分の記録層に含まれる色素の構造を可逆的に変化させる方法(フォトンモード)等により行なわれる。又、記録された情報の再生は、レーザー光照射による熱的変形や色素構造の変化が起きている部分と起きていない部分のレーザー光に対する反射率の差を読み取ることにより行われる。
従って、光学記録媒体の記録層はレーザー光のエネルギーを効率よく吸収する必要があり、記録層には一般的にレーザー光吸収色素が用いられており、そのレーザー光吸収色素として有機色素を用いた光学記録媒体は、有機色素溶液を塗布するという簡単な方法で記録層を形成し得るため、安価な光学記録媒体として今後益々普及することが期待されている。
又、近年、記録の高密度化のため、記録に用いるレーザー光の波長を従来の半導体レーザーの発光波長である780nmを中心としたものから、405nm前後以下の青色光領域へと短波長化することが検討されつつある。更に、近年、記録媒体の高容量化のため、記録媒体に記録層を2層作製することによって記憶容量の倍化を図った2層記録媒体や、記録の高速化が検討されているため、記録層形成用色素化合物には益々、記録レーザーに対する高感度化が求められている。
一方、色素を記録層に用いる場合、一般的にスピンコート法を用いて基板へ塗布することがコスト面で真空蒸着法に比べ有利であるため、光学記録媒体の記録層形成用色素は、塗布溶媒に高い溶解性を示すことが必須である。現状では、ポリカーボネート基板に2,2,3,3−テトラフルオロプロパノールや2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンタノール等のフッ素系アルコール溶媒を用いて塗布するのが一般的である。又、一般的にデータの記録及び読み出しを共にレーザー光によって行い、その場合、読み出しレーザー強度は記録レーザー強度より弱い。従って、光学記録媒体の記録層形成用色素が読み出し光である弱いレーザー光照射によって分解されてしまう程に耐光性が低いと、記録データの読み出しを行う際にデータエラーを生じる原因となる。更に、光学記録媒体はその性質上、記録面が太陽光や照明等に長時間晒される機会が多いため、色素が耐光性に劣ると光学記録媒体の記録データを長期保存することが困難になる。
その光学記録媒体の記録層形成用色素として、縮合環系化合物のリガンドと遷移金属カチオンからなる錯体は、300〜500nmの波長域に吸収極大を有し、光に対して安定であることから、特に青色レーザー光対応の光学記録媒体への応用が期待されており、例えば、特許文献1には、ベンゾオキサゾールとフェノールの縮合環系化合物の金属キレート錯体が提案されている。しかしながら、該特許文献1には、提案の化合物による基板上への記録層の形成は真空蒸着法でなされており、実際に本発明者等が溶液塗布法により検討を行ったところ、塗布溶媒への溶解性が劣り、例えばスピンコート法等の塗布法による層形成には用い得ないことが判明した。
特開2004−74504号公報
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、塗布溶媒への溶解性、及び耐光性に優れ、青色レーザー光を用いた光記録にも対応可能な光学記録媒体の記録層形成用色素、及びそれを用いた光学記録媒体、その光学記録媒体の記録方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、以下の一般式(I)で表される化合物の錯体が、塗布溶媒への溶解性に優れ、特定の金属との錯体では、耐光性に著しく優れ、且つ、これを記録層に用いた光学記録媒体が青色レーザー光で良好に記録できることを見出し、本発明を完成させた。即ち、下記一般式(I)で表される化合物のリガンドと遷移金属カチオンからなる錯体を含む、光学記録媒体の記録層形成用色素、及び、基板と、該基板上に形成された記録層とを少なくとも有し、該記録層が前記記録層形成用色素により形成されたものである光学記録媒体、前記光学記録媒体に対し、波長350〜530nmのレーザー光を用いて記録を行う、光学記録媒体の記録方法、を要旨とする。
〔式(I)中、XはOH、又はSHを示し、YはO、又はSを示し、ZはO、S、又はNR6 を示し、R1 、R2 、R3 、R4 、R5 、及びR6 は各々独立して、水素原子、置換基を有していてもよい芳香環基、又は非芳香環基を示し、R1 とR6 、R2 とR3 、R3 とR4 、R4 とR5 、及びR5 とR6 は、それぞれ結合して縮合環を形成していてもよい。〕
本発明は、塗布溶媒への溶解性、及び耐光性に優れ、青色レーザー光を用いた光記録にも対応可能な光学記録媒体の記録層形成用色素、及びそれを用いた光学記録媒体、その光学記録媒体の記録方法を提供することができる。
以下、本発明を具体的に説明するが、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々に変更して実施することができる。
本発明の光学記録媒体の記録層形成用色素は、下記一般式(1)で表される化合物のリガンドと遷移金属カチオンからなる錯体を含むことを必須とする。
〔式(I)中、XはOH、又はSHを示し、YはO、又はSを示し、ZはO、S、又はNR6 を示し、R1 、R2 、R3 、R4 、R5 、及びR6 は各々独立して、水素原子、置換基を有していてもよい芳香環基、又は非芳香環基を示し、R1 とR6 、R2 とR3 、R3 とR4 、R4 とR5 、及びR5 とR6 は、それぞれ結合して縮合環を形成していてもよい。〕
本発明において、前記一般式(I)中のXはOH、又はSHであり、錯体の安定性の面から、中でOHであるのが好ましい。又、YはO、又はSであり、錯体の安定性の面から、中でOであるのが好ましい。又、ZはO、S、又はNR6 であり、錯体の安定性の面から、中でOであるのが好ましい。又、後述するように、溶解性も鑑みるに、前記一般式(I)で表される化合物の中で、特に好ましい化合物は3−ヒドロキシクロモンに電子吸引性基が置換した化合物である。
そして、前記一般式(I)中のR1 〜R5 、及びR6 の芳香環基とは、芳香族性を有する環、即ち(4n+2)π電子系(nは自然数)を有する環を意味し、その骨格構造は、通常、5或いは6員環の、単環或いは2〜6縮合環からなるものであり、該芳香環には、芳香族炭化水素環、芳香族複素環の他、アントラセン環、カルバゾール環、アズレン環のような縮合環の含まれる。
その芳香環としては、具体的には、例えば、5員環単環として、フラン環、チオフェン環、ピロール環、イミダゾール環、チアゾール環、オキサジアゾール環、6員環単環として、ベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環、縮合環として、ナフタレン環、フェナンスレン環、アズレン環、ピレン環、キノリン環、イソキノリン環、キノキサリン環、ベンゾフラン環、カルバゾール環、ジベンゾチオフェン環、アントラセン環等が挙げられる。これらのうち、合成上の理由から単環が好ましく、更に好ましくは6員環の単環であり、特に好ましくはベンゼン環である。
又、その芳香環の置換基としては、例えば、炭素数が20以下の、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、炭化水素環基、複素環基、アルコキシ基、アルキルカルボニル基、アリールオキシ基、ヘテロアリールオキシ基、アラルキルオキシ基、ヘテロアラルキルオキシ基、更に置換基を有していてもよいアミノ基、更に置換基を有していてもよいカルバモイル基、エステル基、及び、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン原子、水酸基等が挙げられる。
そのアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、i−プロピル基、ブチル基、i−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、ヘキサドデシル基等の炭素数1〜20のアルキル基;そのアルケニル基としては、例えば、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、2−メチル−1−プロペニル基、ヘキセニル基、オクテニル基、ヘキサドデセニル基等の炭素数2〜20のアルケニル基;そのアルキニル基としては、例えば、エチニル基、プロピニル基、ブチニル基、2−メチル−1−プロピニル基、ヘキシニル基、オクチニル、ヘキサドデシニル基等の炭素数2〜20のアルキニル基;その炭化水素環基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロヘキシル基、シクロヘキセニル基、テトラデカヒドロアントラニル基、フェニル基、アントラニル基、フェナンスリル基、フェロセニル基等の炭素数3〜20の炭化水素環基;その複素環基としては、例えば、ピリジル基、チエニル基、ベンゾチエニル基、カルバゾリル基、キノリニル基、2−ピペリジニル基、2−ピペラジニル基、オクタヒドロキノリニル基等の、5或いは6員環の単環又は2〜6縮合環由来の複素環基;そのアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、i−プロポキシ基、ブトキシ基、i−ブトキシ基、s−ブトキシ基、t−ブトキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基等の炭素数1〜9のアルコキシ基;そのアルキルカルボニル基としては、例えば、メチルカルボニル基、エチルカルボニル基、i−プロピルカルボニル基、t−ブチルカルボニル基、シクロヘキシルカルボニル基、ヘキサドデシルカルボニル基等の炭素数2〜18のアルキルカルボニル基;そのアリールオキシ或いはヘテロアリールオキシ基としては、例えば、フェノキシ基、ナフチルオキシ基、ピレニルオキシ基、2−チエニルオキシ基、2−フリルオキシ基、2−キノリルオキシ基等の炭素数2〜18のアリールオキシ或いはヘテロアリールオキシ基;そのアラルキルオキシ或いはヘテロアラルキルオキシ基としては、例えば、ベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基、ナフチルメトキシ基、ピレニルメトキシ基、2−チエニルメトキシ基、2−フリルメトキシ基、2−キノリルメトキシ基等の炭素数3〜18のアラルキルオキシ或いはヘテロアラルキルオキシ基;その更に置換基を有していてもよいアミノ基としては、例えば、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、メチルエチルアミノ基、ジブチルアミノ基、ピペリジル基、ヘキサドデシルアミノ基等の炭素数2〜20のアルキルアミノ基;ジフェニルアミノ基、ジナフチルアミノ基、ナフチルフェニルアミノ基、ジトリルアミノ基、ピレニルアミノ基、ジ(2−チエニル)アミノ基、ジ(2−フリル)アミノ基、フェニル(2−チエニル)アミノ基等の炭素数2〜30のアリールアミノ或いはヘテロアリールアミノ基;メチルカルボキシアミノ基、エチルカルボキシアミノ基等の炭素数2〜20のカルボキシアミノ基;メチルチオカルボキシアミノ基、エチルチオカルボキシアミノ基、プロピルチオカルボキシアミノ基等の炭素数2〜20のチオカルボキシアミノ基;メチルスルホニルアミノ基等の炭素数1〜20のスルホニルアミノ基;その更に置換基を有していてもよいカルバモイル基としては、N−メチルカルバモイル基、N,N−ジメチルカルバモイル基、N−エチル−N−シクロヘキシルカルバモイル基等の炭素数2〜20のアルキルカルバモイル基;そのエステル基としては、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、i−プロポキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基、アセチルオキシ基、ベンゾイルオキシ基等の炭素数2〜20のエステル基;そのハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、沃素原子等が挙げられる。これらの置換基のうち、塗布溶媒への溶解性、及び吸収波長を調整する観点から、炭素数1〜10のアルキル基や炭素数2〜20のエステル基等が特に好ましい。
又、前記一般式(I)中のR1 〜R5 、及びR6 の非芳香環基としては、前記芳香環基の置換基として挙げた中の芳香環基以外の基が挙げられる。
尚、R1 〜R5 が芳香環基であり、且つ該芳香環基が2つ以上の置換基を有する場合、該置換基同士が結合して環状構造をなしていてもよい。例えば、R1 〜R5 がベンゼン環基である場合、該ベンゼン環基が有する置換基同士が結合して環状構造を形成している例として以下に示す構造が挙げられる。尚、以下において、aが母骨格への結合位置である。
又、R1 〜R5 が芳香環基である場合は、前述の置換基を有している方が溶解性及び膜性向上の観点から好ましいが、置換基を有していない方が合成上の観点からは好ましい。特に、テトラフルオロプロパノールやメチルセロソルブ等の極性溶媒に対しては、N,N−2置換カルバモイル基やエステル基等の極性置換基を有することが該溶剤に対する溶解性向上の面で好ましく、塩化メチレン、ジブチルエーテルやメチルシクロヘキサン等の非極性溶媒に対しては、アルキル基やアルキルオキシ基等の非極性置換基を有することが該溶剤に対する溶解性向上の面で好ましい。又、該芳香環基に対する置換基の置換位置については、より母骨格に近接するように置換することが化合物の溶解性及び膜性向上の面で好ましいが、離れている方が合成上の面からは好ましい。
又、R1 〜R5 が非芳香環基である場合、隣接する置換基はそれぞれ結合して環を形成していてもよい。その具体例としては、例えば以下に示す構造が挙げられる。尚、以下において点線で示される部分が母骨格の一部を表す。これらの環構造は更に炭素数20以下の置換基を有していてもよく、その具体例としては、R1 〜R5 の芳香環基の置換基として挙げたものが挙げられる。
本発明において、前記一般式(I)の化合物としては、R1 が芳香環基、就中、ベンゼン環で、該ベンゼン環に電子吸引性基が置換したもので、R2 〜R5 がそれぞれ水素原子であるものが、塗布溶媒への溶解性の面から好ましい。
前記一般式(I)で表される化合物の具体例を以下に示す。
尚、一般式(1)で表される前記化合物は、光学記録媒体の保存安定性を向上させる面から、通常、水不溶性であることが好ましい。ここで「水不溶性」とは、25℃、1気圧の条件下における水に対する溶解度が、通常0.01重量%以下、好ましくは0.001重量%以下であることを言う。
本発明における前記一般式(I)で表される化合物は、例えば、以下に示す方法によって容易に合成できる。
本発明における前記一般式(I)で表される化合物は、種々の方法によって、例えば、J.Heterocycl.Chem.,5,425(1968)等に記載の方法により、容易に合成できる。例えば、置換o−ヒドロキシアセトフェノンと当量の置換ベンズアルデヒドをメタノールやエタノール等のアルコール系溶媒に溶解させ、当量程度の水酸化ナトリウム水溶液存在下、0℃から溶媒の沸点の範囲内の温度で10分〜10時間程度反応させることにより、置換カルコンを合成する。このとき、溶媒であるアルコールの量はo−ヒドロキシアセトフェノン1mmolに対して、1〜10ml程度とする。その後、反応溶液に当量〜10倍程度のアルコール系溶媒を加えて希釈した後、当量程度の水酸化ナトリウムの10〜50wt%水溶液を添加し、更に当量〜5倍程度の過酸化水素水を添加して、0〜60℃の範囲内、好ましくは30〜50℃程度で10分から10時間程度反応させることにより、置換ヒドロキシカルコンを合成し、必要に応じて懸洗、又はカラムクロマトグラフィーにより精製する。又、その際、X=Sの化合物については、出発物質の置換o−ヒドロキシアセトフェノンを置換o−メルカプトアセトフェノンにすることにより、置換メルカプトカルコンが合成できる。又、Inorg.Chem.,42,7455-7459 (2003) 等に記載の方法により、例えば、置換ヒドロキシクロモンを出発物質として、Z=NRの化合物については、置換ヒドロキシカルコンとアミンを希塩酸存在下、10分〜10時間程度、0℃〜溶媒の還流温度で反応させることにより置換ヒドロキシキノリノン誘導体が合成できる。又、Z=NR、Y=Sの化合物については、得られた置換ヒドロキシキノリノン誘導体に更にトリエチルアミン存在下、5硫化2リンを作用させ、アセトニトリル中0℃〜還流温度で1時間〜10時間程度反応させることにより、ヒドロキシキノリンチオンが合成できる。
本発明の光学記録媒体の記録層形成用色素は、前記一般式(I)で表される化合物のリガンドと遷移金属カチオンからなる錯体を含むものであり、その遷移金属としては、前記化合物をリガンドとして錯体を形成し得るものであれば任意であるが、具体例としては、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、Pt、Au、Er等が挙げられる。本発明においては、これらの中で、第4周期元素であるのが好ましく、Fe、Co、Ni、Cuが更に好ましく、中でもCo、Ni、Cuが特に好ましい。又、遷移金属カチオンの価数は特に規定されないが、錯体の安定性から、2〜4価、特に2価であるのが好ましい。
本発明において、前記一般式(I)で表される化合物のリガンドと前記遷移金属カチオンからなる錯体としては、中性であれば特に限定されないが、遷移金属カチオン1に対して化合物リガンドの構成数が1〜3であるのが好ましい。
又、本発明における錯体は、更にカウンターアニオンを有してもよく、そのカウンターアニオンとしては、炭素数20以下であるのが好ましく、その具体例としては、アルコール、フェノール、カルボン酸、ホスホン酸、ハロゲン、過塩素酸、過沃素酸、シアン酸、イソシアン酸、イソチオシアン酸、アジド、硝酸、炭酸、炭酸水素酸、置換或いは無置換の硫酸(硫酸、硫酸水素酸、メチル硫酸等)、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トシル酸、置換或いは無置換のリン酸(リン酸、リン酸水素酸、リン酸二水素酸、フェニルリン酸等)、六フッ化リン、六フッ化アンチモン、置換或いは無置換のホスフィン酸(ホスフィン酸、メチルホスフィン酸等)、置換或いは無置換のボロン酸(テトラフェニルボロン酸等)、ベンゼンスルホン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸等をアニオン化したもの等が挙げられる。これらのうち、吸光度低下による記録感度低下を防止する観点から、分子量300以下のものが好ましく、水不溶性とするために、ClO4 - 、PF6 - 、BF4 - 、NO3 - 、SbF6 - 、トリフルオロメタンスルホン酸アニオン等が含まれることが特に好ましい。
又、化合物リガンド、遷移金属カチオン、及びカウンターアニオンの構成数のいずれかが2以上である場合、それぞれのヒドラジド化合物リガンド、遷移金属カチオン、及びカウンターアニオンは同じでもよく、異なっていてもよい。
本発明における錯体は、吸光度低下による感度低下防止の点から、遷移金属カチオン及びカウンターアニオンを含めて、分子量2000以下であるのが好ましく、中でも1000以下であるのが特に好ましい。
本発明における前記錯体は、前記化合物を溶媒存在下にアルカリを作用させてプロトンを引き抜いた後、遷移金属塩を加えて、室温から溶媒が還流する程度の温度で反応させることにより得られる。
本発明における錯体は、塗布溶媒への溶解性、及び耐光性に優れ、更に光学記録媒体の記録層形成用色素として用いたときの膜性及び記録感度に優れるという特徴がある。その塗布溶剤への溶解性は、2,2,3,3−テトラフルオロプロパノールに対して、20℃、常圧にて1.0重量%以上溶解するのが好ましく、又、その耐光性は、基板上に膜厚50nmに形成した層を、温度50℃、相対湿度50の条件下で、0.55W/m2 の照射強度でキセノンランプを40時間照射した後の色素残存率が80%以上であるのが好ましい。
本発明の光学記録媒体が有する記録層は、前記一般式(I)で表わされる化合物のリガンドと前記遷移金属カチオンからなる錯体を少なくとも1種含有する色素を用いて形成されたものである。ここで、本発明の光学記録媒体の記録層形成に用いる色素としては、本発明の前記錯体が1種のみ用いられていても、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で併用されていてもよい。更に、1種又は2種以上の本発明の錯体に加えて、他の色素が1種又は2種以上併用されていてもよい。但し、本発明の錯体以外の色素を併用する場合には、本発明の錯体の優れた特性を十分に発揮させる観点から、全色素の合計に対する本発明の錯体が占める比率を、通常30重量%以上、好ましくは50重量%以上、更に好ましくは60重量%以上とすることが好ましい。
本発明の錯体と併用可能な他の色素としては、記録用のレーザー光波長域に吸収を有し、照射されたレーザー光のエネルギーを吸収して、照射部分の記録層、反射層又は基板に、分解、蒸発、溶解等の熱的変形を伴うピットを形成させ得るもの、又は、主成分たる前記錯体が照射されたレーザー光のエネルギーを吸収し、発生した熱又はラジカルにより連鎖的に分解、蒸発、溶解等をおこすもの、具体的には、405nmに吸収を有し、300℃以下の温度域において発熱を伴い分解するもの、が好ましい。他の色素としては、具体的には、例えば、クマリン系色素、カルボスチリル系色素、エチレンジアミン系色素、アゾメチン系色素、フェニルヒドロキシアミン系色素、フェナントロリン系色素、ジヒドロキシアゾベンゼン系色素、ジオキシム系色素、ニトロソアミノフェノール系色素、ピリジルトリアジン系色素、アセチルアセトナート系色素、メタロセン系色素、アゾ系色素、ポルフィリン系色素、フタロシアニン系色素、ナフタロシアニン系色素、シアニン系色素、スクアリリウム系色素、インドアニリン系色素、トリアリールメタン系色素、メロシアニン系色素、アズレニウム系色素、ナフトキノン系色素、アントラキノン系色素、インドフェノール系色素、キサンテン系色素、オキサジン系色素、ピリリウム系色素等が挙げられる。尚、金属化合物の場合、金属元素としては、遷移金属であるのが好ましい。又、これらの中で、CD−R向けの770〜830nmの範囲から選ばれた波長の近赤外レーザー光やDVD−R向けの620〜690nmの範囲から選ばれた赤色レーザー光での記録に適する色素を併用して、複数の波長域のレーザー光での記録に対応する光学記録材料とすることもできる。
記録層には、更に、後述するバインダーや各種添加剤が用いられていてもよいが、記録層に占める色素の割合は、通常10重量%以上、好ましくは50重量%以上、特に好ましくは90重量%以上である。色素の割合が少なすぎると、記録感度が著しく低下する傾向となる。
記録層は、成膜性を向上させるためにバインダーを含有していてもよい。バインダーとしては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ケトン樹脂、ニトロセルロース、酢酸セルロース、ポリビニルブチラール、ポリカーボネート等の既知のものが、1種を単独で、或いは2種以上を混合して用いられる。
又、記録層は、安定性や耐光性向上のために一重項酸素クエンチャーや記録感度向上剤等を含有していてもよい。一重項酸素クエンチャーとしては、アセチルアセトナート、ビスフェニルジチオール、サリチルアルデヒドオキシム、ビスジチオ−α−ジケトン等と遷移金属とのキレート化合物等が挙げられ、これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。又、記録感度向上剤としては、好ましくは遷移金属等の金属が原子、イオン、クラスター等の形で化合物に含まれる金属系化合物等、具体的には、例えば、エチレンジアミン系錯体、アゾメチン系錯体、フェニルヒドロキシアミン系錯体、フェナントロリン系錯体、ジヒドロキシアゾベンゼン系錯体、ジオキシム系錯体、ニトロソアミノフェノール系錯体、ピリジルトリアジン系錯体、アセチルアセトナート系錯体、メタロセン系錯体のような有機金属化合物等が挙げられ、これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。尚、一重項酸素クエンチャーは色素に対して通常5〜30重量%程度、記録感度向上剤は色素に対して通常10〜30重量%程度用いられる。
本発明の錯体を用いて光学記録媒体の記録層を形成するには、真空蒸着法、スパッタリング法、ドクターブレード法、キャスト法、スピンコート法、浸漬法等の一般に行われている薄膜形成法を用い、基板上に層を形成する。これらのうち、量産性、コスト等の面からスピンコート法が好ましい。スピンコート法により記録層を形成する場合、回転数は500〜5000rpmが好ましく、スピンコート後、必要に応じて、加熱或いは溶媒蒸気に晒す等の処理を行ってもよい。記録層の膜厚は、特に限定されないが、通常10nm〜5μm、好ましくは20nm〜2μm、更に好ましくは50nm〜300nmである。膜厚をこの範囲とすることにより、熱拡散の影響を抑えることができ、良好な記録がし易く、又、記録信号に歪みが発生しにくいため信号振幅を大きくし易い。更に、反射率を高くし易く、再生信号特性を良好とし易い。
記録層をドクターブレード法、キャスト法、スピンコート法、浸漬法等により形成する場合には、まず、本発明の記録層形成用色素、及び他の色素、並びにバインダー、一重項酸素クエンチャー、記録感度向上剤等を溶媒に溶解させ、塗布液を作製する。その際の溶媒としては、2,2,3,3−テトラフルオロプロパノールを用いることが工業面で特に好ましいが、基板を侵さない溶媒であれば、その他の、例えば、ジアセトンアルコール、3−ヒドロキシ−3−メチル−2−ブタノン等のケトンアルコール系溶媒、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のセロソルブ系溶媒、n−ヘキサン、n−オクタン等の鎖状炭化水素系溶媒、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、n−ブチルシクロヘキサン、t−ブチルシクロヘキサン、シクロオクタン等の脂環式炭化水素系溶媒、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル等のエーテル系溶媒、2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンタノール、ヘキサフルオロブタノール等のパーフルオロアルキルアルコール系溶媒、乳酸メチル、乳酸エチル、イソ酪酸メチル等のヒドロキシエステル系溶媒等の1種を単独で、或いは2種以上を混合して用いてもよい。
塗布液中の記録層形成用色素の濃度は、その溶媒溶解性に応じて適宜決定されるが、通常0.7重量%以上、好ましくは1.0重量%以上で、通常10重量%以下、好ましくは3.0重量%以下とされる。塗布液中の色素濃度が過度に低いと、記録層の形成効率が悪くなる傾向となり、一方、塗布液中の色素濃度が過度に高いと、成膜工程において色素の結晶化等の問題が発生する傾向となる。尚、スピンコート後の余剰色素を効率的に回収するためには、通常塗布液の濃度の1.5倍以上、好ましくは2倍以上の濃度であっても、色素が塗布溶媒に溶解可能であることが好ましい。
本発明の光学記録媒体は、基板上に、本発明の記録層形成用色素を用いて上述のようにして形成された記録層を有するものであり、その基板としては、ガラスや種々のプラスチック等、使用するレーザー光に対して透明なものが好ましく用いられる。プラスチックとしては、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ニトロセルロース、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリスチレン樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられるが、生産性、コスト、耐吸湿性等の点からポリカーボネート樹脂を射出成形したものが好ましい。
基板上には、必要に応じて、更に、反射層、保護層、下引き層等の記録層以外の層が設けられ、光学記録媒体とされる。
反射層としては、金、銀、アルミニウム或いはそれらの合金のような金属からなるもの等が挙げられるが、550nm以下の波長のレーザー光に対する反射率から、金やアルミニウムより、銀の方が好ましい。金属反射層は、蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等によって記録層上に成膜される。ここで、金属反射層と記録層との間に層間の密着力を向上させるため、又は反射率を高める等の目的で中間層を設けてもよい。反射層の膜厚は、通常50nm以上、300nm以下の範囲である。
反射層の上に形成する保護層の材料は、反射層を外力から保護するものであれば特に限定されない。例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂、例えばウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート等の紫外線硬化性樹脂等の有機物質、及び、SiO2 、SiN4 、MgF2 、SnO2 等の無機物質等が挙げられる。保護層の形成の方法としては、記録層と同様に、スピンコート法やキャスト法等の塗布法やスパッタ法や化学蒸着法等の方法が用いられるが、この中でもスピンコート法が好ましい。保護層の膜厚は、通常、0.1μm以上、100μm以下の範囲である。
尚、各層間の接着力を高めるために、各層間に下引き層を用いてもよい。下引き層の種類としては、各層の接着力を高め、かつ各層の性質に影響を与えないものであれば特に限定されないが、取扱いの容易さから有機層であることが好ましい。又、上記構成の光学記録媒体を接着層を介して2枚貼りあわせ、或いは、基板の片面だけでなく両面に反射層、記録層、保護層等を設けることにより、両面記録型光学記録媒体としてもよい。更には、基板上に反射層及び記録層の組を、中間層を介して二組以上形成し、その上に保護層を設けることにより、多層型光学記録媒体としてもよい。
本発明における錯体は、膜性に優れており、従って、本発明における錯体を含む記録層を形成するにおいて、スピンコート法により形成された記録層表面に化合物の結晶化に由来する白化現象は認められない。
又、光学記録媒体が有する好ましい吸収波長及び吸光度は、記録に用いるレーザー光の種類に依存し、例えば、後述するように、本発明における錯体を記録層に含む光学記録媒体において好適とされる405〜410nmを中心波長とする青色レーザー光に対しては、光学記録媒体の吸収スペクトルの極大吸収波長(λmax )が350〜450nmであり、該λmax におけるモル吸光係数(ε)が15000以上であるのが好ましく、極大吸収波長(λmax )が370〜430nmであり、該λmax におけるモル吸光係数(ε)が20000以上であるのが特に好ましい。
又、本発明における錯体を記録層に含む光学記録媒体は、記録レーザー感度に優れる。具体的には、光学記録媒体を、中心波長404nm、NA=0.85の青色レーザー光を照射した場合に、レーザー強度12mW以下、好ましくは10mW以下、特に好ましくは7.5mW以下においても良好な記録ピットの形成が可能である。
又、本発明における錯体を記録層に含む光学記録媒体は、高温高湿かつ直射光の下で放置しても劣化しにくい。具体的には、光学記録媒体を、温度50℃、相対湿度50の条件下で、0.55W/m2 の照射強度でキセノンランプを40時間照射した後の記録層の色素残存率が80%以上、更には90%以上、特には95%以上であるのが好ましい。
以上のようにして得られた光学記録媒体への情報の記録は、通常、記録層に0.4〜0.6μm程度に集束したレーザー光を照射することにより行う。記録層がレーザー光のエネルギーを吸収すると、レーザー光照射部分では、分解、発熱、溶融等の熱的変形が起こる。記録された情報の再生は、レーザー光による上記熱的変形が起きている部分と起きていない部分の反射率の差を読み取ることにより行う。
高密度記録のためには、記録時に使用するレーザー光の波長が短いほど好ましく、特に、本発明の光学記録媒体は、その記録層に上述した本発明の錯体を含有することから、その利点を十分に発揮させる観点から、波長350nm〜530nmのレーザー光が好ましい。かかるレーザー光の代表例としては、例えば、中心波長405nm、410nm等の青色レーザー光、中心波長515nmの青緑色の高出力半導体レーザー光等が挙げられる。これら以外にも(a)基本発振波長が740〜960nmの連続発振可能な半導体レーザー光、又は(b)半導体レーザー光によって励起されかつ基本発振波長が740〜960nmの連続発振可能な固体レーザー光のいずれかを、第二高調波発生素子(SHG)により波長変換することによって得られる光等も挙げられる。
上記のSHGとしては、反射対称性を欠くピエゾ素子であればいかなるものでもよいが、KDP(KH2 PO4 )、ADP(NH4 H2 PO4 )、BNN(Ba2 NaNb5 O15)、KN(KNbO3 )、LBO(LiB3 O5 )、化合物半導体等が好ましい。第二高調波の具体例としては、基本発振波長が860nmの半導体レーザーの場合は、その倍波の波長430nm、又、半導体レーザー励起の固体レーザーの場合は、CrドープしたLiSrAlF6 結晶(基本発振波長860nm)からの倍波の波長430nm等が挙げられる。以上の中で、中心波長405nmの青色レーザー光を使用することが特に好ましい。
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
実施例1
<一般式(I)の化合物の合成>
2―〔2−(2−クロロエトキシ)エトキシ〕エタノール(東京化成社製)を常法に従ってメチル化し、得られた化合物を3,4−ジヒドロキシベンズアルデヒド(東京化成社製)と反応させることにより、下記化合物(1)を合成した。得られた化合物(1)、及びo―ヒドロキシアセトフェノン(関東化学社製)を用いて常法に従い、下記化合物(2)を合成した(収率59%)。
<一般式(I)の化合物の合成>
2―〔2−(2−クロロエトキシ)エトキシ〕エタノール(東京化成社製)を常法に従ってメチル化し、得られた化合物を3,4−ジヒドロキシベンズアルデヒド(東京化成社製)と反応させることにより、下記化合物(1)を合成した。得られた化合物(1)、及びo―ヒドロキシアセトフェノン(関東化学社製)を用いて常法に従い、下記化合物(2)を合成した(収率59%)。
<錯体の合成>
得られた化合物(2)0.95g(2mmol)をメタノール20mlに溶解させ、1N―NaOH溶液2mlを加え、更にNiCl2 ・6H2 Oを0.21g加えた後、室温で4時間攪拌した後、濾別し、MeOHで懸濁洗浄してNi2+を遷移金属カチオンとする錯体0.44gを得た(収率63%)。
得られた化合物(2)0.95g(2mmol)をメタノール20mlに溶解させ、1N―NaOH溶液2mlを加え、更にNiCl2 ・6H2 Oを0.21g加えた後、室温で4時間攪拌した後、濾別し、MeOHで懸濁洗浄してNi2+を遷移金属カチオンとする錯体0.44gを得た(収率63%)。
得られた錯体について、塗布溶媒に対する溶解性を以下に示す方法で試験した結果、濃度1.0重量%、及び1.5重量%のいずれにおいても、完全に溶解していることが確認された。
<溶解性試験>
塗布溶媒として、2,2,3,3−テトラフルオロプロパノールを用い、錯体の濃度を1.0重量%、及び1.5重量%として、20℃、常圧にて30分間超音波処理した後、濾紙(東洋濾紙社製定量濾紙「No.5C」)上に滴下し、室温で24時間乾燥させ、未溶解成分の結晶残渣が濾紙上に存在しているか否かを目視観察した。
<溶解性試験>
塗布溶媒として、2,2,3,3−テトラフルオロプロパノールを用い、錯体の濃度を1.0重量%、及び1.5重量%として、20℃、常圧にて30分間超音波処理した後、濾紙(東洋濾紙社製定量濾紙「No.5C」)上に滴下し、室温で24時間乾燥させ、未溶解成分の結晶残渣が濾紙上に存在しているか否かを目視観察した。
更に、得られた錯体を2,2,3,3−テトラフルオロプロパノールに濃度1.5重量%で溶解させ、濾過によって微細なゴミを取り除いた後、得られた溶液を、直径120mm、厚さ1.2mmの射出成形ポリカーボネート基板上に滴下し、スピンコート法(4900rpm)により塗布し、60分間乾燥させることにより膜厚約50nmの記録層を形成し、光学記録媒体を作製した。
得られた光学記録媒体の紫外可視吸収スペクトルを図1に示す。図1より、λmax は468nmであり、得られた光学記録媒体は、350〜530nmのレーザー光に対して充分な吸収強度と反射率が見込めることが分かった。
又、得られた光学記録媒体について、以下に示す方法で記録感度を試験したところ、記録ピットの形成が確認された最高記録感度は7.5mWであった。
<記録感度試験>
中心波長404nm、NA=0.85の半導体レーザー光を照射し、光学顕微鏡により記録ピットの形成が確認された最高記録感度を測定した。
<記録感度試験>
中心波長404nm、NA=0.85の半導体レーザー光を照射し、光学顕微鏡により記録ピットの形成が確認された最高記録感度を測定した。
更に、得られた光学記録媒体について、以下に示す方法で耐光性を試験したところ、色素残存率は95%以上であった。
<耐光性試験>
温度50℃、相対湿度50の条件下で、0.55W/m2 の照射強度でキセノンランプを40時間照射した後の記録層について、吸収極大波長における照射前後の吸光度から求めた。
<耐光性試験>
温度50℃、相対湿度50の条件下で、0.55W/m2 の照射強度でキセノンランプを40時間照射した後の記録層について、吸収極大波長における照射前後の吸光度から求めた。
実施例2
<錯体の合成>
実施例1で得られた化合物(2)0.65g(2mmol)をメタノール20mlに溶解させ、1N―NaOH溶液2mlを加え、更にCuCl2 ・2H2 Oを0.15g加えた後、室温で4時間攪拌した後、濾別し、MeOHで懸濁洗浄してCu2+を遷移金属カチオンとする錯体0.46gを得た(収率65%)。
<錯体の合成>
実施例1で得られた化合物(2)0.65g(2mmol)をメタノール20mlに溶解させ、1N―NaOH溶液2mlを加え、更にCuCl2 ・2H2 Oを0.15g加えた後、室温で4時間攪拌した後、濾別し、MeOHで懸濁洗浄してCu2+を遷移金属カチオンとする錯体0.46gを得た(収率65%)。
得られた錯体について、塗布溶剤に対する溶解性を前記に示す方法で試験した結果、濃度1.0重量%、及び1.5重量%のいずれにおいても、完全に溶解していることが確認された。更に、実施例1におけると同様にして光学記録媒体を作製した。得られた光学記録媒体の紫外可視吸収スペクトルのλmax は451nmであり、得られた光学記録媒体は、350〜530nmのレーザー光に対して充分な吸収強度と反射率が見込めることが分かった。又、得られた光学記録媒体について、前記に示す方法で記録感度を試験したところ、記録ピットの形成が確認された最高記録感度は7.5mWであった。又、得られた光学記録媒体について、前記に示す方法で耐光性を試験したところ、色素残存率は95%以上であった。
比較例1
前記特許文献1に記載される下記錯体を用いて、実施例1に準じて、塗布溶媒としての2,2,3,3−テトラフルオロプロパノールに濃度1.0重量%での溶解を試みたが、不溶分が存在し、均一な塗膜を形成することができなかった。
前記特許文献1に記載される下記錯体を用いて、実施例1に準じて、塗布溶媒としての2,2,3,3−テトラフルオロプロパノールに濃度1.0重量%での溶解を試みたが、不溶分が存在し、均一な塗膜を形成することができなかった。
Claims (8)
- 前記一般式(I)におけるXがOHであり、YがOである請求項1に記載の、光学記録媒体の記録層形成用色素。
- 更に、ZがOである請求項2に記載の、光学記録媒体の記録層形成用色素。
- 遷移金属カチオンが第4周期の元素からなる請求項1乃至3のいずれかに記載の、光学記録媒体の記録層形成用色素。
- 遷移金属がコバルト、ニッケル、又は銅である請求項1乃至4のいずれかに記載の、光学記録媒体の記録層形成用色素。
- 基板上に膜厚50nmに形成した層を、温度50℃、相対湿度50%の条件下で、0.55W/m2 の照射強度でキセノンランプを40時間照射した後の色素残存率が80%以上である請求項1乃至5のいずれかに記載の、光学記録媒体の記録層形成用色素。
- 基板と、該基板上に形成された記録層とを少なくとも有し、該記録層が請求項1乃至6のいずれかに記載の、光学記録媒体の記録層形成用色素により形成されたものであることを特徴とする光学記録媒体。
- 請求項7に記載の光学記録媒体に対し、波長350〜530nmのレーザー光を用いて記録を行うことを特徴とする、光学記録媒体の記録方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2006056770A JP2007230145A (ja) | 2006-03-02 | 2006-03-02 | 光学記録媒体の記録層形成用色素、及びそれを用いた光学記録媒体、その光学記録媒体の記録方法 |
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Cited By (2)
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JP2015533128A (ja) * | 2012-10-11 | 2015-11-19 | アーマロン バイオ ピーティーワイ リミテッド | 新規フラボノイド化合物およびその使用 |
US11820747B2 (en) | 2021-11-02 | 2023-11-21 | Flare Therapeutics Inc. | PPARG inverse agonists and uses thereof |
-
2006
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US10316053B2 (en) | 2012-10-11 | 2019-06-11 | Armaron Bio Pty Ltd | Flavonoid compounds and uses thereof |
US11820747B2 (en) | 2021-11-02 | 2023-11-21 | Flare Therapeutics Inc. | PPARG inverse agonists and uses thereof |
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