JP2007167927A - 金属材の圧延機及び圧延方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】鋼帯などの金属材を蛇行制御しながら連続圧延する為の圧延機及び圧延方法を提供する。
【解決手段】次の(a)と(b)を備えたロールチョック間保持装置を有することを特徴とする金属材の圧延機。(a)ワークロールと中間ロールの各ロールチョック間、および/または、中間ロールとバックアップロールの各ロールチョック間に配置されることで、ロールチョック間の突っ張り手段として機能し、楔先端側が逆向きになるように楔の傾斜面どうしが傾斜面勾配方向へスライド可能に重ね合わされた複数の楔体からなり、少なくとも1つの楔体が他の楔体に対してスライド移動することにより高さを可変とした楔積層ブロック。(b)該楔積層ブロックを構成する少なくとも1つの楔体を、他の楔体に対してスライド移動させ、かつ任意のスライド位置で保持するためのアクチュエータ。
【選択図】図7

Description

本発明は、鋼帯などの金属材を、蛇行を抑制しつつ連続圧延するための圧延機及びこの圧延機を用いた金属材の圧延方法に関する。
近年、熱間連続圧延の分野においては、HC−MILLなど各種のクラウン制御ミルが実用化された結果、板クラウンのない平坦な熱延鋼帯を安定して製造できるようになってきた。しかしながら、板クラウンが小さくなった分だけ圧延中に鋼帯が蛇行しやすくなり、特に熱延鋼帯の尾端部が尻抜けする際にサイドガイドに衝突して倒れ込んで圧延される、いわゆる絞り込みが発生するという新たな問題が生じている。熱間仕上圧延機における熱延鋼帯の尾端部通板性向上は、稼働率向上及びロール原単位向上のために、非常に重要な課題である。
図9に一般的な6Hi圧延機の例として、HC−MILL圧延機の概略を示す。同図に示すように、一般に圧延時における圧延機の変形は、(1)ハウジングの変形、(2)ロールのたわみ(軸心変位と同じ)、(3)ロールの偏平変形(圧延荷重による圧縮を受けたロールの弾性変形)、(4)圧下ねじの縮み(圧延荷重による圧縮を受けた圧下ねじの弾性変形)、(5)軸受部の変形、油膜厚さの変化、(6)ロッカープレート、その他の部材の変形、(7)圧下シリンダの変形及び油柱厚さの変形、からなる。実測及び計算によると、ロールギャップの変化量のうちで各部の占める割合は、ロール部の変形が40〜70%、ハウジングの変形が10〜16%、圧下ねじの変形が4〜20%であり、ロール変形の占める割合が圧倒的に大きいことが知られている(例えば、非特許文献1参照)。
圧延時においては、圧延荷重に応じた変形が各所で発生し、実際に圧延後の熱延鋼帯の板厚を決定するロールギャップ部においては、上記変形量の総和分だけロールギャップが開いていることを意味する。つまり、圧延機はバネ定数の異なるバネを直列につないだモデルとも考えることができる。一般的に圧延荷重と上記圧延機の総和変形量との関係はミル定数と呼ばれ、熱間圧延機においては300〜800tonf/mm程度の値となる。
圧延機における熱延鋼帯の蛇行現象は、一般的に2階積分特性を持つと言われている。図10はその物理的解釈を示したもので、図10(A)は、熱延鋼帯の尾端がワークロールを抜ける瞬間を上方から見た図である。例えば、熱延鋼帯が蛇行した場合、図10(B)に示すように鋼帯が寄った側の圧延荷重が一方よりも高くなるため、ロール開度が一方よりも広くなる。当然、ロールギャップの狭い側は他方よりも薄く圧延されるため、圧延方向に長く伸ばされ、通板速度は他方よりも遅くなる。このため、鋼帯は図10(A)に示すように圧延部を境界にくの字型に折れ曲がることになる。このように一旦鋼帯が曲がると、そこから後方の蛇行量は時間とともに増大する。これによって、図10(B)に示すように板道がロールセンタから外れると、鋼帯が曲がった方向(図10(B)では右方向)のミル伸びが増大してロールギャップが開き、図10(C)に示すように、さらにたわみが助長されることで、時間の2乗に比例した蛇行量が発生する。
また、被圧延材の板厚が薄くなるほど蛇行が発生しやすくなる。圧延機に入る鋼帯と、圧延されて圧延機から出て行く鋼帯の質量は保存するため、被圧延材の質量保存の関係から下記(i)式が成り立つ。(i)式の右項に示すΨは被圧延材の回転速度を表し、Ψが大きいほど、図10(C)で説明した鋼帯の曲がりが大きくなり、蛇行量も増大する。一方、(i)式の左項の分母にあたる被圧延材の板幅中央における板厚hが小さくなるほど、左項は大きくなる。つまり、被圧延材の板厚が薄いほど、蛇行が発生しやすいことになる。
Figure 2007167927
ここで、Bは被圧延材の板幅、hは被圧延材の板幅中央における板厚、hdfは被圧延材板厚の左右差、vは被圧延材の速度、Ψは被圧延材の回転速度を示す。尚、添え字は1が圧延機入側、0が圧延機出側を示す。
従来、こうした問題を回避するための熱延鋼帯の蛇行制御技術として、いくつかの提案がなされている。
その1つは、図11に示すように圧延機の圧延荷重の左右差Pdfにより発生する左右ロール開度差Sdfを打ち消すように、比例制御でレベリング修正量SLを動かす蛇行制御(平行剛性制御)である。図11において、αは制御ゲイン(0〜1)、Mは平行剛性である。この蛇行制御技術は、圧延機の圧下装置(スクリュー、油圧シリンダ等)のレベリング修正量SLを、下記の(ii)式に従い蛇行を抑制する方向に制御する方法(一般にレベリング操作と呼ぶ)である。なお、下記(ii)〜(iv)式において、αは制御ゲイン、Pdfは圧延荷重の左右差、Mは平行剛性または左右剛性、Lは左右圧下装置間距離、ycは熱間圧延ラインの幅方向中心に対する熱延鋼帯の幅中央の蛇行量(以下、単に「蛇行量yc」という)を示す。平行剛性または左右剛性Mは、下記(iii)式に示すように、圧延荷重の左右差Pdfと圧下装置位置での左右ロール開度差Sdfの比で示す。また、蛇行量ycと圧延荷重の左右差との関係は下記(iv)式のように表される。つまり、平行剛性Mが高い圧延機では圧延荷重の左右差Pdf、または蛇行量ycによる左右ロール開度差Sdfが生じにくく、その結果、時間経過に伴う蛇行量ycの拡大も生じにくいことになる。この提案においては、熱延鋼帯の尾端部が当該スタンドの直前のスタンドを抜けてからの時間、または熱延鋼帯尾端部の当該スタンドの直前のスタンドからの距離が増大するほど、下記(ii)式に示す制御ゲインαを小さくなるように変更することにより、熱延鋼帯の尾端部が尻抜けする際の絞り込みを防止することを特徴としている(例えば、特許文献1参照)。
SL=−α(Pdf/M) …(ii)
M=Pdf/Sdf …(iii)
yc=(Pdf・L)/2P=(Sdf・L)/(2P・M) …(iv)
ここで、Pは全圧延荷重を示す。
提案の他の1つは、圧延機の左右ベンダ力差を、蛇行を抑制する方向に制御する方法である。この方法は、圧延ロールにおける圧延荷重の左右差Pdfを測定し、この圧延荷重の左右差Pdfに応じて、圧延ロールにおける左右のベンダ圧力差を調節することによって、圧延機の平行剛性Mを制御し、蛇行を抑制することを特徴としている(例えば、特許文献2参照)。
特開平9−38710号公報 特開平9−248614号公報 特開平10−267021号公報 (社)日本鉄鋼協会編、「板圧延の理論と実際」、(社)日本鉄鋼協会、昭和59年9月1日、p.224 上述した特許文献1、2は、いずれも圧延機の平行剛性制御の考え方に基づく蛇行制御技術であるが、特許文献1は圧下装置位置、特許文献2はベンダ力を制御手段とすることに特徴がある。
被圧延金属材(以下、単に被圧延材と称す)の蛇行量ycは、被圧延材の板厚が薄くなるほど大きくなる性質がある。一方、近年では薄物(一般に板厚2mm以下)に対する需要家からのニーズが高まりつつあり、将来的にはさらにその傾向が進むものと考えられている。さらには、圧延材の薄物化によって通板速度は従来より高速化するため、前述した当該スタンドの圧延荷重の左右差Pdfに応じた現状の平行剛性制御では、応答性(つまり制御周期)が通板速度に対して不足し、蛇行に十分追従できないという問題が生じる。また、圧延機に入る鋼帯と、圧延されて圧延機から出て行く鋼帯の質量保存の関係から、被圧延材の板厚が薄くなるほど蛇行が発生しやすい。
さらに、特許文献1に示した左右のロール開度差Sdfを調整する制御方法では、熱延鋼帯が蛇行した側の圧下位置を下げ、ロール開度を狭くする側に制御するため、狭くした側の圧延荷重が高くなり、つまりロールの弾性変形、ハウジングの伸び等の左右非対称性が拡大する。このため、蛇行防止に必要な圧下締め込み量に加え、圧延機の左右非対称要因を打ち消すために、さらに圧下位置を下げ、ロール開度を狭くする必要があり、結果的に制御の応答速度に対して不利な方向に作用する。以上の理由から、特許文献1に示すような平行剛性制御を用いた圧延機においても、蛇行による絞りトラブルが散発しているのが現状である。
また、特許文献2におけるベンダ力差を利用する蛇行制御についても、特許文献1同様、既存技術の中で高出力・高応答性を誇るサーボ油圧アクチュエータを駆動源としている場合であっても応答性が十分でない。
したがって本発明の目的は、被圧延材の薄物化に対応できない現状の平行剛性制御の問題点を解消し、良好な圧延材形状を得ることができるとともに、安定した蛇行制御を行うことで、絞りトラブルを生じることなく熱延鋼帯等の金属材を安定して製造することができる金属材の圧延機及び圧延方法を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明者らは、一般的な圧延機における平行剛性Mはワークロールからバックアップロール間の弾性変形、つまり左右ロール偏平差が支配的であることに着目し、ワークロールのロールチョックと中間ロールのロールチョックの間(以降、ワークロールと中間ロールのロールチョック間、と呼ぶ)、および/または、中間ロールのロールチョックとバックアップロールのロールチョックの間(以降、中間ロールとバックアップロールのロールチョック間、と呼ぶ)に、突っ張り手段となる剛性部材を挟みこむことにより、特別な制御を行うことなく被圧延材の蛇行量ycによる左右ロール偏平差の発生を抑制し、被圧延材の蛇行を効果的に防止できることを見出した。
ただし、実際のワークロールのロールチョックと中間ロールのロールチョックの隙間、および中間ロールのロールチョックとバックアップロールのロールチョックの隙間は、ロール径によって変化するため、一般的な熱間圧延ラインで2〜3時間おきに行われる定期ロール替の度に、上記剛性部材の高さ(鉛直方向)寸法を調整する必要がある。さらに、同一ロールによる圧延中においても、被圧延材の寸法、圧延荷重、ベンダ力等の操業条件によってロールチョック間の隙間は変化することに加え、1本の鋼帯の圧延中でも操業条件は時々刻々と変化する。このため、ワークロールと中間ロールのロールチョック間、および/または、中間ロールとバックアップロールのロールチョック間に、常時一定の寸法の剛体を介在させておくことは、操業で実施されている各種制御の外乱となり、形状不良等の欠陥、さらには穴明き、板の破断等の通板トラブルを引き起こす可能性がある。そこで、このような問題を生じない剛性部材の構成について検討した結果、複数の楔体をスライド可能に重ね合わせて高さを調整できるようにした楔積層ブロックが、ロールチョック間の隙間変動に適切に対応し、且つロールチョック間に剛性の高い突っ張りを形成する手段として最適であることが判った。
本発明はかかる知見に基づきなされたもので、その特徴は以下のとおりである。
[1] 次の(a)と(b)を備えたロールチョック間保持装置を有することを特徴とする金属材の圧延機。
(a)ワークロールと中間ロールのロールチョック間、および/または、中間ロールとバックアップロールのロールチョック間に配置されることで、ロールチョック間の突っ張り手段として機能し、楔先端側が逆向きになるように楔の傾斜面どうしが傾斜面勾配方向へスライド可能に重ね合わされた複数の楔体からなり、少なくとも1つの楔体が他の楔体に対してスライド移動することにより高さを可変とした楔積層ブロック。
(b)該楔積層ブロックを構成する少なくとも1つの楔体を、他の楔体に対してスライド移動させ、かつ任意のスライド位置で保持するためのアクチュエータ。
[2] 上記[1]の圧延機において、楔積層ブロックは、少なくとも1つの楔体がロールチョックに固定され、かつ、残余の楔体の内の少なくとも1つの楔体が、アクチュエータに接続されてスライド移動が可能であることを特徴とする金属材の圧延機。
[3] 上記[1]の圧延機において、アクチュエータと楔積層ブロックが、保持フレームに設置されてなるロールチョック間保持装置において、前記アクチュエータは、前記保持フレームに固定され、前記楔積層ブロックの少なくとも1つの楔体は、前記アクチュエータにより該アクチュエータが固定された前記保持フレームの面に対し水平方向へスライド可能に設置され、前記保持フレームは、中間ロールのロールチョックに固定されたことを特徴とする金属材の圧延機。
[4] 上記[1]の圧延機において、アクチュエータと2つの楔体からなる楔積層ブロックが、保持フレームに設置されてなるロールチョック間保持装置において、前記アクチュエータは、前記保持フレームに固定され、前記楔積層ブロックの1つの楔体は、前記アクチュエータにより該アクチュエータが固定された前記保持フレームの面に対しスライド可能に設置され、前記保持フレームは、中間ロールのロールチョックに固定されたことを特徴とする金属材の圧延機。
[5] 上記[1]〜[4]のいずれかの圧延機において、熱延鋼帯製造用の熱間圧延機であることを特徴とする金属材の圧延機。
[6] 上記[1]〜[5]のいずれかの圧延機を用いた金属材の圧延方法であって、ワークロールと中間ロールのロールチョック間、および/または、中間ロールとバックアップロールのロールチョック間の楔積層ブロックを所定の高さに保持し、該楔積層ブロックにより、圧延時の平行剛性を高める突っ張り手段を形成することを特徴とする金属材の製造方法。
本発明によれば、圧延機のワークロールと中間ロールのロールチョック間、および/または、中間ロールとバックアップロールのロールチョック間に、ロールチョック間隔を保持する突っ張り手段として機能することができる楔積層ブロックを介在させ、所定のタイミングで突っ張り手段として機能させることで、圧延機の平行剛性を効果的に高めることができる。このため、既存の圧延制御の外乱要因となることなく被圧延材の蛇行量ycによる左右ロール偏平差の発生を抑止し、被圧延材の蛇行を効果的に抑制することができる。特に、薄物の熱延鋼帯の製造において、良好な安定通板を実現することができ、絞りトラブル抑制によるライン稼働率向上及びロール原単位向上を達成しつつ、優れた品質の熱延鋼帯を安定して製造することができる。
また、本発明の圧延機は、ワークロールチョックと中間ロールのロールチョック間、および/または中間ロールとバックアップロールのロールチョック間それぞれに、ロールチョック間隙保持装置を設置し、これを圧延機自体の上位の制御系から独立した簡易な制御系にて、蛇行を抑制したいタイミングで突っ張り手段として機能するように制御するだけでよいため、圧下装置自体の応答が速い必要がなく、既存の圧延機にも簡単に適用することができる。したがって、制御周期がかなり遅い制御システムや応答が遅い圧下装置しか備えていない既存の圧延機であっても、問題なく適用でき、金属材の蛇行を効果的に抑制することができる。一方、応答の速い圧下装置を有し、制御周期が早い最新の制御システムを有する圧延機に適用した場合にも、蛇行抑制効果をより高度に実現することができる。
以下、熱間圧延機とこれを用いた熱延鋼帯の製造を例に、本発明の詳細と好ましい実施形態を説明する。
図1及び図2は、本発明の熱間圧延機及びこれによる圧延状況の一実施形態を示すもので、図1は熱間圧延機の正面図である。また、図2は、熱間圧延機の上バックアップロールと上中間ロールの左右いずれか一方のロールチョック間に設けられた、ロールチョック間保持装置の使用状況を示すものである。この熱間圧延機(圧延スタンド)の基本構造は従来装置と同様であり、上下ワークロール1a,1bと、これらワークロールをそれぞれ上下で支持する上下中間ロール21a,21bと、さらにこれら中間ロールをそれぞれ上下で支持する上下バックアップロール22a,22bと、これら各ロールの両端部を支持するロール支持部6(ハウジング)を備えている。上下ワークロール1a,1b、上下中間ロール21a,21b、及び上下バックアップロール22a,22bは、各々の両ロール軸がロールチョック3,41,42(上ワークロールチョック3a,下ワークロールチョック3b,上中間ロールチョック41a,下中間ロールチョック41b,上バックアップロールチョック42a,下バックアップロールチョック42b)で支持され、これら各ロールのロールチョック3,41,42は、前記ロール支持部6内で上下方向スライド可能に保持されている。
各ロールは、装置下側から、下バックアップロール22b、下中間ロール21b、下ワークロール1b、上ワークロール1a、上中間ロール21a、上バックアップロール22aの順に積み重ねられた構造(なお、図は圧延中の状態を示しているため、上下ワークロール1a,1b間に被圧延材である鋼帯17が介在している)となっている。また、下バックアップロール22bのロールチョック42bは、ロール支持部6側の支持手段7で支持され、一方、上バックアップロール22aのロールチョック42aはロール支持部6側の圧下装置8(圧下シリンダ等)で上方から拘束・圧下されている。したがって、圧下手段8による圧下荷重は、上バックアップロールチョック42a→上バックアップロール22a→上中間ロール21a→上ワークロール1a→(被圧延金属材17)→下ワークロール1b→下中間ロール21b→下バックアップロール22b→下バックアップロールチョック42bという経路で伝わり、支持手段7で受けられる。
このような基本構造に加えて、本実施形態の熱間圧延機では、上下のワークロール1と中間ロール21の左右の各ロールチョック3、41間、および、上下の中間ロール21とバックアップロール22の左右の各ロールチョック41、42間を、任意の間隔で保持できる突っ張り手段を備えたロールチョック間保持装置5が設けられている。
このロールチョック間保持装置5は、楔積層ブロック9およびアクチュエータ10から構成されている。楔積層ブロック9は、ワークロール1と中間ロール21の左右の各ロールチョック3、41間、および、中間ロール21とバックアップロール22の左右の各ロールチョック41、42間に配置されることで、ロールチョック間の突っ張り手段として機能する複数の楔体からなる。アクチュエータ10は、この楔積層ブロック9を構成する少なくとも1つの楔体を他の楔体に対してスライド移動させ、且つ任意のスライド位置で保持する。
楔積層ブロック9は、楔先端側が逆向きになるように楔の傾斜面どうしが傾斜面勾配方向にスライド可能に重ね合わされた複数の楔体からなり、少なくとも1つの楔体が他の楔体に対してスライド移動することにより、高さ(ロールチョック間方向での長さ)を可変としたもので、本実施形態では2つの楔体11x,11y(図2〜図5、図7においては、下側が11x、上側が11y、図6においては、上側が11x、下側が11y)により構成される。
図2では、一方の楔体11xは、アクチュエータによりロール軸方向に移動かつスライド可能に設置され、他方の楔体11yは、一方の楔体に対してスライド可能に当接して設置される。すなわち、この楔積層ブロック9は、楔体11xに対して楔体11yを傾斜面勾配方向にスライド移動させることにより高さ(高さ寸法)が変化する。
ロールチョック3、41間、ならびにロールチョック41、42間の間隔は、ワークロール1、中間ロール21およびバックアップロール22のロール径によっても変化するため、定期的に実施されるロール交換に応じて楔積層ブロック9の高さ(高さ寸法)の零点調整を実施する。具体的にはロール交換が終了し、圧延を実施していない時点で、ロールチョック3、41間と楔積層ブロック9との隙間、および/または、ロールチョック41、42間と楔積層ブロック9との隙間が無くなるまで、楔積層ブロック9の高さ(高さ寸法)を高くし、アクチュエータに取り付けたエンコーダ等で0位置として記憶する。その後、ロールチョック3、41間と楔積層ブロック9との隙間、および/または、ロールチョック41、42間と楔積層ブロック9との隙間が、所定の間隔(例えば3mm)となるように楔積層ブロック9の高さ(高さ寸法)を低くし、圧延時に備える。
アクチュエータ10は、本実施の形態ではシリンダ本体12と作動(駆動)ロッド13を備えた液圧シリンダにより構成されている。この液圧シリンダは、その作動ロッド13が前記楔体11xに接続され、これを楔体11yに対してスライド移動させるとともに、この楔体11xを任意のスライド位置で保持する。
楔積層ブロック9がロールチョック間で突っ張り手段として機能する際には大きな圧縮荷重が作用するため、ロールチョック間保持装置5を構成する楔積層ブロック9とアクチュエータ10は、その荷重に十分耐え得るものであることが必要である。
通常、楔積層ブロック9を構成する楔体11は、金属材料で構成される。この金属材料は所定の剛性を有するとともに、耐熱性、低熱膨張性に優れたものが好ましく、例えば、アルミ合金などの各種金属材料を用いることができるが、その中でも特に、Fe−36mass%Niからなるインバー合金等が望ましい。また、楔体11の傾斜面(摺動面)どうしの滑り性を高めるために、傾斜面に被覆層(例えば、フッ素樹脂等を被覆したもの)を設けてもよい。
また、アクチュエータ10には、上記荷重に抗して楔体11xを所定のスライド位置に保持するための保持力(剛性)が必要である。したがって、例えば、アクチュエータ10を油圧シリンダ装置などの液圧シリンダで構成する場合には、通常の液圧シリンダでもよいが、特に、シリンダストロークを高い剛性でロックする機能を持つ液圧シリンダを用いるのが好ましい。そのような液圧シリンダとしては、例えば、特許文献3に示されるような、油圧シリンダの外側部材の内周面と内側部材の外周面との間の摩擦によって、シリンダストロークを高い剛性でロックする機能を持つ油圧シリンダ装置が挙げられる。また、その他に、シリンダ本体12内に作動流体を封じ込めることで作動ロッド13を所定の伸長状態にロックすることができる封入機構(ロック機構)を有する液圧シリンダを用いてもよい。この封入機構は、例えば、作動液体供給用の液体流路に設けられる電磁仕切り弁により構成することができ、この電磁仕切り弁が流体流路を遮断し、シリンダ本体12内に作動流体が封じ込められることで作動ロッド12が所定の伸長状態でロックされる。
また、液圧シリンダの作動ロッド13を機械的にロックするロック機構を有するものを用いてもよい。このロック機構の構成に特別な制限はないが、例えば、作動ロッド13に設けられた係合部(例えば、凹部、孔、ラック部など)と、これに機械的に噛み合うことで作動ロッド13を拘束する係合手段などからなるロック手段を用いることができる。この場合、係合手段の駆動にはバネやアクチュエータなどを利用することができる。
また、上述したようなシリンダ本体がロック機能を有する液圧シリンダにおいて、さらに、このような機械的なロック機構を併用すれば、液圧シリンダによるロールチョック間の突っ張り機能をより確実なものとすることができる。
また、アクチュエータ10としては、上記液圧シリンダ以外に、例えば、後述するような負荷作用時のセルフロック機能を有するスクリュー式アクチュエータなど、適宜な方式のアクチュエータを用いることができる。
図3は、ロールチョック間保持装置5のアクチュエータ10としてスクリュー式アクチュエータを用いた場合の一実施形態を示すもので、上中間ロールと上バックアップロールの一方(この図の場合向かって右側)のロールチョック間に設けられた、ロールチョック間保持装置5の使用状況を示すものである。
アクチュエータ10を構成するスクリュー式アクチュエータは、モータを備えた装置本体14とこの装置本体14に回転自在に保持され、前記モータにより回転するスクリュー軸15とを備えており、このスクリュー軸15が前記楔体11xに貫設された雌ネジ孔(図示せず)に螺挿されることで、楔体11xに接続されている。そして、前記スクリュー軸15の回転により、楔体11xを楔体11yに対してスライド移動させるとともに、この楔体11xを任意のスライド位置で保持する。
本発明の圧延機では、楔積層ブロック9を構成する複数の楔体11のうち、少なくとも1つの楔体11xは、アクチュエータ10によりロール軸方向に移動かつスライド可能に設置され、他の楔体11は一方の楔体に対してスライド可能に当接されている。そのため、少なくとも1つの楔体が他の楔体に対してスライド移動することにより、楔積層ブロックの高さは、可変可能となっている。したがって、これら楔積層ブロック9およびアクチュエータ10を有するロールチョック間保持装置5は、ワークロール1のロールチョック3、中間ロール21のロールチョック41、もしくはバックアップロール22のロールチョック42のいずれに固定してもよい。但し、熱延鋼帯などの金属材を製造する際の圧延機では、ワークロール1は頻繁に交換されるのに対して、中間ロール21とバックアップロール22の交換頻度はそれほど高くない。そこで、ロールチョック3、41間とロールチョック41、42間のいずれにも設置する労力やメンテナンス性等を考慮した場合、ロールチョック間保持装置5は中間ロール21のロールチョック41に固定するのが好ましい。
また、このようにロールチョック間保持装置5を中間ロール21のロールチョック41に固定する構造とすることにより、ロールチョック間保持装置5のメンテナンス等を定期バックアップロール交換と同期させることができ、ロールチョック間保持装置5の脱着作業によってライン稼働率を低下させることなく、スムーズな運用が可能となる。また、ロールチョック間保持装置5について、使用済バックアップロールとともにオフラインにてメンテナンスを行うことができるため、装置の故障による圧延トラブルを回避することができる。
また、楔積層ブロック9が2つの楔体11x、11yで構成され、アクチュエータ10がロールチョックに固定され、かつ下側の楔体11xをアクチュエータ10でスライド移動させるようにし、さらに上側の楔体11yがロールチョックに固定された場合は、下側の楔体11xがスライド移動しても楔体11とアクチュエータ10との連結部の高さが変動することはない。このため、アクチュエータ10と楔体11の連結構造を簡素化でき、また保全性にも優れた構造とすることができる。図4及び図5は、そのような構造の実施形態を示すもので、図4はアクチュエータ10として液圧シリンダ装置を用いた場合、図5はアクチュエータ10としてスクリュー式アクチュエータを用いた場合を示している。なお、図4(A)、図5(A)は突っ張り用ブロック9の高さを低くした状態(正面図及びそのA−A′断面図)を、図4(B)、図5(B)は突っ張り用ブロック9の高さを高くした状態(正面図及びそのA−A′断面図)を、それぞれ示している。
図4、図5のいずれの場合も、上側の楔体11yをロールチョック42(上部側のロールチョック42a)に固定し、下側の楔体11xにアクチュエータ10(作動ロッド13又はスクリュー軸15)を接続してスライド移動させるようにしている。また、下側の楔体11xの傾斜面の幅方向中央には傾斜面勾配方向に沿った突条110が形成されるとともに、上側の楔体11yの傾斜面の幅方向中央には傾斜面長手方向に沿った凹溝111が形成され、この凹溝111に前記突条110が噛み合うようにして、上側の楔体11yの傾斜面に下側の楔体xの傾斜面がスライド可能に当接している。
また、ワークロール1、中間ロール21およびバックアップロール22は、それらのロールチョック3、41、42とともに定期的に交換されることから、少なくとも楔積層ブロック9とアクチュエータ10とから構成されるロールチョック保持装置5を1つのユニットにして、ロールチョック3、41、42のうちの何れか一つに取り付ける構造とすることが、装置構成の簡易化と脱着の容易性の面から好ましい。また、ロールの交換頻度は、さきに述べたようにワークロール1に較べて中間ロール21とバックアップロール22の方が少ないため、特に、中間ロール21のロールチョック41にユニット化されたロールチョック保持装置5を取り付けるようにすることが好ましい。具体的な構造としては、保持フレームと、この保持フレームに固定されたアクチュエータと、2つの楔体からなる楔積層ブロックであって、そのうちの一方の楔体が前記アクチュエータに保持されかつ前記保持フレーム面に対してスライド可能である楔積層ブロック9とを備えたユニットを、前記保持フレームを介してバックアップロール22のロールチョック42、中間ロール21のロールチョック41もしくはワークロール1のロールチョック3、特に好ましくは、中間ロール21のロールチョック41、に固定する構造が好ましい。
図6及び図7は、そのような構造の実施形態を示すものである。図6はユニット化されたロールチョック保持装置5を上側のロールチョック41aに取り付けた実施形態、図7はユニット化されたロールチョック保持装置5を下側のロールチョック41bに取り付けた実施形態である。上述したように、ユニット化されたロールチョック保持装置5は中間ロール21のロールチョック41に取り付けることが好ましく、したがって、図6は上側のワークロール1aと中間ロール21aのロールチョック3a、41a間に、また、図7は下側のワークロール1bと中間ロール21bのロールチョック3b、41b間に、それぞれ適用している。図6(A)、図7(A)は突っ張り用ブロック9の高さを低くした状態(正面図及びそのA−A′断面図)を、図6(B)、図7(B)は突っ張り用ブロック9の高さを高くした状態(正面図及びそのA−A′断面図)を、それぞれ示している。また、図6及び図7の各実施形態は、アクチュエータとしてスクリュー式アクチュエータを適用した例を示しているが、アクチュエータとしては液圧シリンダ装置等の適宜なものを適用できる。
図6において、ユニット化されたロールチョック保持装置5は、保持フレーム16、この保持フレーム16の内側上面160に固定(例えば、ボルト止めによる固定)されたアクチュエータ10および楔積層ブロック9からなり、さらにこの楔積層ブロック9は、2つの楔体11x,11yを有する。この楔体11の内、上側の楔体11xが前記アクチュエータ10に接続されている。なお、この実施形態では、上側のロールチョックが中間ロール21のロールチョック41、下側のロールチョックがワークロール1のロールチョック3で、当該ロールチョック41に保持フレーム16が固定されている。
この保持フレーム16に特別な制限は無いが、本実施形態では底面が開放した箱型の形態を有し、その内側にアクチュエータ10と楔積層ブロック9が収納されている。
上側の楔体11xには、アクチュエータ10のスクリュー軸15(液圧シリンダ装置の場合は作動ロッド13)が接続され、それにより楔体11xはアクチュエータ10に保持されている。また、楔体11xの平面状の上面は、当該アクチュエータ10が固定された保持フレーム16の面、即ち保持フレーム16の内側上面160に対しスライド移動可能に当接している。
また、上側の楔体11xの傾斜面の幅方向中央には傾斜面勾配方向に沿った突条110が形成されるとともに、この突条110の両側面に、前記傾斜面と同じ傾きを持ったガイド突条112が突条110の勾配方向に沿って突設されている。一方、下側の楔体11yの傾斜面の幅方向中央には傾斜面勾配方向に沿った凹溝111が形成されるとともに、この凹溝111の内側の両側面に、前記傾斜面と同じ傾きを持ったガイド溝113が凹溝111の傾斜面勾配方向に沿って形成されている。
そして、下側の楔体11yの傾斜面に上側の楔体xの傾斜面がスライド可能に当接した状態で、楔体11yの凹溝111内に楔体11xの突条110が嵌り込むとともに、楔体11yのガイド溝113内に楔体11xのガイド突条112がスライド可能に嵌合(係合)する。このようなガイド突条112とガイド溝113との係合により、図6(A)に示すように楔体11xは楔体11yを保持することができる。
保持フレーム16は楔体11yの両端部に面してストッパ部162、163を有しており、楔体11yは、これらストッパ部162、163によりロール軸方向で移動しないように係止(拘束)される。すなわち、楔体11yは、その両端部側がストッパ部162、163で係止されることで実質的に上下動のみ可能であり、かつ上記のようにガイド突条112とガイド溝113との係合により楔体11xに保持された状態で、アクチュエータ10による楔体11xのスライド移動に伴い上下動することになる。
以上のようなユニット化されたロールチョック保持装置5は、その保持フレーム16を外側上面161を上側のロールチョック41(ロールチョック41a)にボルト止めなどで固定することにより、ロールチョック3、41(ロールチョック3a、41a)間に配置される。
実際にユニット化されたロールチョック保持装置5を取り付ける場合には、中間ロール交換時に圧延機にセットする前の中間ロール2のロールチョック41にユニット化されたロールチョック保持装置5を固定し、このロールチョック41が圧延機内に組み入れられることにより、ユニット化されたロールチョック保持装置5がロールチョック3、41間に設置される。
また、図7の実施形態のものは、図6の実施形態とは上下逆の構造を有しており、そのユニット化されたロールチョック保持装置5は、保持フレーム16と、この保持フレーム16の内側底面160に固定(例えば、ボルト止めによる固定)されたアクチュエータ10と、2つの楔体11x、11yからなり、下側の楔体11xに前記アクチュエータ10が接続された楔積層ブロック9とを備えている。なお、この実施形態では、下側のロールチョックが中間ロール21のロールチョック41、上側のロールチョックがワークロール1のロールチョック3である。
この保持フレーム16にも特別な制限は無いが、本実施形態では上面が開放した箱型の形態を有し、その内側にアクチュエータ10と楔積層ブロック9が収納されている。
前記下側の楔体11xには、アクチュエータ10のスクリュー軸15(液圧シリンダ装置の場合には作動ロッド)が接続され、楔体11xはアクチュエータ10に保持されている。また、楔体11xの平面状の下面は、保持フレーム16の内側底面160にスライド移動可能に当接している。
また、下側の楔体11xの傾斜面の幅方向中央には傾斜面勾配方向に沿った突条110が形成されるとともに、この突条110の両側面に、前記傾斜面と同じ傾きを持ったガイド突条112が突条110の勾配方向に沿って突設されている。一方、上側の楔体11yの傾斜面の幅方向中央には傾斜面勾配方向に沿った凹溝111が形成されるとともに、この凹溝111の内側の両側面に、前記傾斜面と同じ傾きを持ったガイド溝113が凹溝111の勾配方向に沿って形成されている。
そして、上側の楔体11yの傾斜面に下側の楔体xの傾斜面がスライド可能に当接した状態で、楔体11yの凹溝111内に楔体11xの突条110が嵌り込むとともに、楔体11yのガイド溝113内に楔体11xのガイド突条112がスライド可能に嵌合(係合)する。このようなガイド突条112とガイド溝113との係合により、図7(A)に示すように楔体11xは楔体11yを保持することができる。
保持フレーム16は楔体11yの両端部に面してストッパ部162、163を有しており、楔体11yは、これらストッパ部62、163によりロール軸方向で移動しないように係止(拘束)される。すなわち、楔体11yは、その両端部側がストッパ部162、163で係止されることで実質的に上下動のみ可能であり、かつ上記のようにガイド突条112とガイド溝113との係合により楔体11xに保持された状態で、アクチュエータ10による楔体11xのスライド移動に伴い上下動することになる。
以上のようなユニット化されたロールチョック保持装置5は、その保持フレーム16の外側底面161をロールチョック41にボルト止めなどで固定することにより、ロールチョック3、41間および/またはロールチョック41、42間に配置される。
実際にユニット化されたロールチョック保持装置5を取り付ける場合には、中間ロール交換時に圧延機にセットする前の中間ロール21のロールチョック41にユニット化されたロールチョック保持装置5を固定し、このロールチョック41が圧延機内に組み入れられることにより、ユニット化されたロールチョック保持装置5がロールチョック3、41間および/またはロールチョック41、42間に設置される。
上述の楔積層ブロック9とアクチュエータ10を保持する保持フレーム16は、その材質は、周囲で使用される冷却水を考慮して、耐腐食性に優れるものであれば良く、例えば、ステンレス鋼等で作成する。
またその形状は、上面視が矩形で上面(あるいは底面)が開口した箱型であり、さらにその底面(あるいは上面)の長手方向2箇所のへりは、水平方向に張り出している。この張り出したへりに、ロールチョック3、41、42に固定するための治具を通す孔を設けておく。矩形の箱型を構成する全ての面が前述の材料の板で覆われていても、あるいは矩形の骨組のみでも構わない。その箱型の内側に楔積層ブロック9とアクチュエータ10を収めて、かつ当該アクチュエータ10を固定でき、さらに当該アクチュエータ10に接続されていない楔体11の1つがロールチョックに接することができる形状であれば、特に制限は無い。故に、上面から見た時に,円形やその他の形状でも構わないが、製作の容易さやロールチョックへの固定の容易さ等を考慮すると、図6や図7に示した矩形が最も好適である。
当該保持フレーム16へのアクチュエータ10の固定は、アクチュエータの反力に対して当該アクチュエータ自身が位置決めされるものであれば良く、またその固定方法は、フレーム側にボルト固定してもよいし、フレーム側に凹凸を設けてキー構造としても良く、フレームの形状やアクチュエータの形状等に合わせて適宜選択すれば良い。
以上のようなアクチュエータの作用力、反力が保持フレーム16内に内包される構造のため、ロールチョック間保持装置5をロールチョック3、41、42に固定する場合には、この保持フレーム16をロールチョックに固定すれば良い。図6もしくは図7に示した本実施の形態においては、当該保持フレーム外側上面あるいは外側底面161を、上述の張り出したへりを利用して、中間ロール21のロールチョック41に固定した。この固定方法は、ボルト締めやワイヤー固定等、特に制限は無く、圧延中の振動によって装置が圧延機内外にずれ落ちたり、大きな位置ずれによって突っ張り手段として機能しなくならなければ良く、かつ取外しが可能であれば良い。
また、楔積層ブロック9は、3つ以上の楔体で構成することもできる。図8は、楔積層ブロック9を3つの楔体11で構成した場合の一実施形態を示すもので、上側の楔体11zはロールチョック42に、下側の楔体11zはロールチョック41にそれぞれ固定されるとともに、中央の楔体11wを上下の楔体11z,11zに対してスライド可能に設け、この楔体11wにアクチュエータ10(作動ロッド13又はスクリュー軸15)を接続してスライド移動するようにしている。但し、この場合には、楔体11wのスライド移動に伴い楔体11wとアクチュエータ10との連結部の高さが変動するため、アクチュエータ10がこれに追随して傾動又は昇降できるように、例えば、楔体11zとアクチュエータ10の作動部材(作動ロッド13又はスクリュー軸15)との連結部を上下方向回動可能な枢着構造とし、且つアクチュエータ10の支持部も上下方向回動可能な枢着部とする。
また、図14に示すHC−MILL圧延機の場合、中間ロールはロール軸方向に位置が変化することで被圧延材の形状を制御する機能を有する。このために、楔積層ブロック9が突っ張り力を作用させる、ロールチョック3、41間とロールチョック41、42間のロール軸方向の相対位置がずれ、最悪の場合、突っ張り力を発揮できないことになる。この場合、ロールチョック間保持装置5を中間ロール21のロールチョック41に設置するにあたり、突っ張り力を発揮できるように、ロール軸方向における位置や設置するロールチョック間保持装置5の個数、等に留意することで、蛇行抑制効果を発揮させることができる。
なお、ロールチョック保持装置5は、上側のロールチョック3a、41a間、及び上側のロールチョック41a、42a間、下側のロールチョック3b、41b間、および下側のロールチョック41b、42b間の内のいずれかに設けても良い。しかし、いずれかに設けた場合には効果が半減するので、本実施形態のように、上側と下側両側で、かつワークロール1、中間ロール21およびバックアップロール22の、ロールチョック間(即ち、3aと41aの間、3bと41bの間、41aと42aの間、ならびに41bと42bの間)に設けることが、最も好ましい。同様に、左右のロールチョック3、41間、及び左右のロールチョック41、42間の内のいずれかに設けても良い。しかし、いずれかに設けた場合には効果が半減するので、本実施形態のように、右側と左側両側で、かつワークロール1、中間ロール21およびバックアップロール22の、ロールチョック間(即ち、3と41の間ならびに41と42の間における、左右両側)に設けることが、最も好ましい。その上で、どのロールチョック保持装置5を動作させるかは、鋼帯17の蛇行状況に応じ適宜決めれば良い。
ここで、本発明の圧延機において、上述したようなロールチョック3、41間、および、ロールチョック41、42間の突っ張り手段として、特に楔積層ブロック9を備えたロールチョック間保持装置5を用いるのは、以下のような理由による。
(a)楔積層ブロック9により、ロールチョック3、41間、および、ロールチョック41、42間の突っ張り手段として強力な保持力が得られ、圧延機の高い平行剛性が確保できる。
(b)ロールチョック3、41間、および、ロールチョック41、42間の間隙を突っ張り手段で保持する必要がないときには、突っ張り用ブロック9はロールチョック3、41間の距離の変動に追従して高さを変化させることで、ロールチョック3、41間、および、ロールチョック41、42間の距離の変動を妨げない動作を容易に行わせることができる。
(c)ワークロール、中間ロールおよびバックアップロールの交換に伴う、ロールチョック3、41間、および、ロールチョック41、42間の距離の変化に対しても、楔積層ブロック9であれば問題なく対応することができる。
次に、以上のような本発明の圧延機を用いた金属材の圧延方法について説明する。この圧延方法では、左右の、ワークロール1と中間ロール21の各ロールチョック3、41間、および、中間ロール21とバックアップロール22の各ロールチョック41、42間に設置した、楔積層ブロック9を所定の高さに保持し、この楔積層ブロック9により、圧延時の平行剛性を高める突っ張り手段を形成するものである。具体的には、左右の各ロールチョック間(即ち、3aと41aの間、3bと41bの間、41aと42aの間、ならびに41bと42bの間)の楔積層ブロック9の楔体11をアクチュエータ10でスライド移動させて所定の位置に保持することで、ワークロール1と中間ロール21、ならびに中間ロール21とバックアップロール22を平行に保持するための突っ張り手段を形成する。
但し、このような突っ張り手段の形成は、圧延中において蛇行抑制効果を発揮させたい、所定のタイミングで行われ、それ以外の圧延期間中は突っ張り手段は形成しない。これは、金属材の圧延中は被圧延材の寸法、圧延荷重、ベンダ力等の操業条件によってロールチョックの隙間が変化し、このような要因によるロールチョックの隙間の変化を極力阻害しないことが好ましいからである。
例えば図12(A)に示すように、通常の圧延ではワークロール1の幅に対して鋼帯17の幅は小さく、ワークロール1は胴中央部で大きく曲げられ、これによって鋼帯17も凸状に圧延されることになる。一方、鋼帯17は極力フラットに圧延されることが望まれるため、図12(B)に示すように、ベンダ力をワークロールチョック3に作用させ、ワークロール1の曲がりを制御する手法が一般的に用いられている。一方、ベンダ力制御によって、ロールチョック3、41間、および/または、ロールチョック41、42間の間隔は常時変化するため、楔積層ブロック9の突っ張り手段を圧延期間中に常時作用させると、ベンダ力の機能を阻害することになる。
このため、蛇行抑制効果を発揮させたいタイミングがくるまでは、図3(A)に示すように、楔積層ブロック9とロールチョック3、41間、および/または、楔積層ブロック9とロールチョック41、42間との間に隙間を設けた状態で待機しておく。そして、蛇行抑制効果を発揮させたい所望のタイミングに図3(B)の状態となるよう、楔積層ブロック9との隙間を高さ(高さ寸法)方向の駆動速度で除した時間だけ前のタイミングから装置の制御を開始する。前述のように、この制御系は、圧延機自体の上位の制御系から独立した、別の制御系としても良く、また、応答速度が速い必要もない。
また、本発明の圧延機を使用するに当たっては、楔積層ブロック9とロールチョック3、41、42との当たり面精度を考慮する必要がある。例えば、通常の熱間圧延ラインに設けられる圧延機におけるロールチョックの上下面は、殆どメンテナンスされていないため、腐食による凹凸、繰り返し荷重によるひずみ等が生じていることが少なくない。このため単純に楔積層ブロック9が上下のロールチョック間に挟まれた状態である場合でも、十分な剛性が出るまでに10ton程度のガタ殺し荷重が必要となることを実験により確認した。このため、ロールチョック間保持装置5は以下のような条件で運用されることが好ましい。
例えば、ロールチョック間保持装置5のアクチュエータ10として液圧シリンダ、特に作動ロッドを高い剛性でロック(固定)する機能を持つ液圧シリンダを用いた場合の運用方法について、上中間ロールと上バックアップロールの左右どちらか一方のロールチョック41、42間に設けられた、ロールチョック間保持装置5の使用状況を示す図2を用いて説明する。
(1)ロールチョック間保持装置5の不使用時(通常は非圧延時)には、図2(A)に示すようにアクチュエータ10を構成する液圧シリンダの作動ロッド13は最小ストローク位置まで退避しておく。このため楔積層ブロック9とロールチョック42との間には隙間が存在する。
(2)被圧延材が圧延機に噛み込んだ後、その尾端が圧延機を抜けるまでの間の任意のタイミングにおいて、図2(B)に示すように、楔積層ブロック9とロールチョック42との間、ならびに楔積層ブロック9とロールチョック41との間のガタ殺しのため、アクチュエータ10を構成する液圧シリンダを一定圧で作動させ、楔積層ブロック9とロールチョック42との間、ならびに、楔積層ブロック9とロールチョック41との間に、一定力のガタ殺し力(比較的小さい突っ張り力)が作用した状態とする。なお、通常の熱間圧延においては、被圧延材の尾端方向への温度低下(サーマルランダウン)を考慮した板厚制御により、1本の鋼帯17の圧延中でもワークロール1と中間ロール21のロールチョック3、41間、ならびに中間ロール21とバックアップロール22のロールチョック41、42間の隙間は、時々刻々と変化するが、楔積層ブロック9の高さは、液圧シリンダの液圧バネの作用によりこの隙間変化に追従して変化する。
(3)ロールチョック間保持装置5による被圧延材の蛇行抑制効果を発揮させたいタイミングにおいて、液圧シリンダのロック機構を作用させる。これにより、ロールチョック41、42間と楔積層ブロック9との隙間は0mmで、ガタ殺し力が作用した状態で位置保持することができる。特に、作動ロッド13を高い剛性でロックする機能を持つ液圧シリンダの場合には、作動ロッド13の所定のストローク位置でこれをロック(例えば、シリンダ締まり嵌め効果によるロック)する。
(4)以降、被圧延材の蛇行によってロールチョック41、42間の間隔が更に狭くなる方向に作用すると、図2(C)に示すように、液圧シリンダにより楔積層ブロック9を所定の高さに保持しているために、ロールチョック41、42間に突っ張り手段を形成し、蛇行抑制効果を発揮する。
以上述べたような、アクチュエータ10として液圧シリンダ(特に作動ロッドを高い剛性でロックする機能を持つ液圧シリンダ)を用いる方式では、ガタ殺し荷重を作用させた状態で待機すること、待機位置からそのまま突っ張り手段形成動作(例えば、ロック動作)に入ることが可能であることから、応答が速い。
また、ロールチョック間保持装置5のアクチュエータ10としてスクリュー式アクチュエータを用いた場合の運用方法について、上中間ロールと上バックアップロールのロールチョック41、42間に設けられたロールチョック間保持装置5の使用状況を示す図3を用いて説明する。
(1)ロールチョック間保持装置5の不使用時(通常は非圧延時)には、図3(A)に示すようにアクチュエータ10を構成するスクリュー式アクチュエータのスクリュー軸15は最小ストローク位置まで退避しておく。このため楔積層ブロック9とロールチョック41との間には隙間が存在する。
(2)ロールチョック41とロールチョック42の間隔は、中間ロール21とバックアップロール22のロール径によっても変化するため、定期的に実施されるロール交換に応じて楔積層ブロック9の高さ(高さ寸法)の零点調整を実施する必要がある。このため、ロール交換が終了し、圧延を実施していない時点で、ロールチョック41、42間と楔積層ブロック9との隙間が無くなるまで、装置高さ(高さ寸法)を高くし、アクチュエータに取り付けたエンコーダ等で0位置として記憶する。その後、ロールチョック41、42間と楔積層ブロック9との隙間が所定の間隔(例えば3mm)となるように、楔積層ブロック9の高さ(高さ寸法)を低くし、本位置を待機位置とする。
(3)蛇行抑制効果を発揮させたい所望のタイミングに図3(B)の状態となるよう、ロールチョック41、42間と楔積層ブロック9との隙間を高さ(高さ寸法)方向の駆動速度で除した時間だけ前のタイミングから、楔積層ブロック9とロールチョック41との間、ならびに楔積層ブロック9とロールチョック42との間に、10ton程度のガタ殺し力に相当するモータトルクが発生するまで、スクリュー式アクチュエータ10のスクリュー軸15を駆動し、突っ張り力を発生させる。この時点で、待機位置で3mmあったロールチョック41、42間と楔積層ブロック9との隙間は0mmとなる。
(4)その後、駆動(モータ)を停止しても、スクリュー軸15、及び楔体11x,11y間の摩擦によるセルフロック機能によりスクリュー軸15をそのストローク位置で保持することができる。これにより楔積層ブロック9を所定の高さに保持し、被圧延材尾端における蛇行抑制効果を発揮することができる。
以上述べたような、アクチュエータ10としてスクリュー式アクチュエータを用いる方式では、液圧シリンダを用いる方式のようなガタ殺し荷重を作用させた状態での待機はできないが、スクリュー軸15がセルフロック機能を有するため、ロック動作自体には時間を要しないという利点がある。
上記のように、ロールチョック41、42間、およびロールチョック3、41間で楔積層ブロック9による突っ張り手段を形成するタイミングとしては、例えば、以下のようなものがあり得る。
(1)鋼帯の蛇行が検知されたとき
(2)圧延機に鋼帯が噛みこみ、圧延機の圧下位置が制御開始されたとき
(3)圧延機の前段の圧延機から鋼帯の尾端が抜けたとき
(4)その他のタイミング
上記(1)〜(3)のうち(1)の鋼帯の蛇行は、例えば幅計によるエッジ位置の検出又は差荷重の検出に基づき検知することができ、また、上記(3)は、例えば前段の圧延機のロードオフを検出することで検知することができ、これらの検出信号に基づいてアクチュエータ10が作動し、ロールチョック3、41間、およびロールチョック41、42間に楔積層ブロック9による突っ張り手段が形成される。
このようにロールチョック間保持装置5を利用した本発明は、熱間圧延機のワークロール1と中間ロールの21のロールチョック間(即ち、ロールチョック3とロールチョック41との間)、および/または、中間ロールの21とバックアップロール22のロールチョック間(即ち、ロールチョック41とロールチョック42との間)に、突っ張り手段となる剛体(楔積層ブロック9)を介在させることができ、圧延機の平行剛性を向上させ、特別な制御を行うことなく熱延鋼帯の蛇行量ycによる左右ロール偏平差の発生を抑止し、鋼帯17の蛇行を抑えることができる。
また、このような本発明は、圧下装置の電動スクリュー等の応答が遅く、従来の平行剛性制御に適さない圧延機にも適用可能である。
金属材の蛇行の問題は、特に熱延鋼帯を製造するための熱間仕上圧延において大きな問題となっており、したがって、本発明は、熱延鋼帯を製造するための熱間仕上圧延機及び熱間仕上圧延に適用した場合に特に大きな効果を発揮する。但し、これに限定されるものではなく、例えば、冷延鋼板を製造するための冷間圧延機及び冷間圧延、厚鋼板を得るための厚板圧延機及び厚板圧延、さらには鋼板以外の金属材の圧延機及び圧延など、各種の金属材の圧延機及び圧延に適用することができる。
また、本発明を熱延鋼帯製造用の熱間仕上圧延工程に適用する場合には、仕上圧延機群のなかで特に蛇行が生じやすいのは、圧延機群後段の圧延機であることから、少なくとも全圧延機数/2の数の圧延機群後段の圧延機(例えば、圧延スタンド数が7スタンドの場合には、No.4〜7スタンド)とその圧延工程に本発明を適用することが好ましい。もちろん、全部の圧延機に本発明を適用してもよい。
図13に示すようなレイアウトを持つ熱間圧延ライン仕上圧延機最終スタンドの6Hiにおいて、
[本発明例1]ワークロールと中間ロールの左右ロールチョック間(即ち、ロールチョック3と41の間)にロールチョック間保持装置5を設置し、蛇行抑制効果を発揮させたもの、
[本発明例2]ワークロールと中間ロールの左右ロールチョック間、および、中間ロールとバックアップロールの左右ロールチョック間(即ち、ロールチョック3と41の間、および、ロールチョック41と42の間)それぞれに、ロールチョック間保持装置5を設置し、蛇行抑制効果を発揮させたもの、
[比較例]楔積層ブロックを使用しないもの、
と3種類の条件にて圧延を行い、蛇行に及ぼす影響を調査した。
本実施例において蛇行抑制効果を発揮させるタイミングは、蛇行拡大が顕著となる前のタイミングとするため、装置を設置している最終スタンドの前々スタンドの圧延終了時から前スタンドの圧延終了時までの間とした。蛇行量は最終スタンド入側に設けられているx線板厚計によって被圧延材の板端を検出し、前スタンド圧延終了直前の蛇行量yc1から最終スタンド圧延終了直前の蛇行量yc2までの蛇行拡大量Δyc(=yc2−yc1)を評価対象とした。
調査対象は、蛇行が発生しやすい薄物材の圧延サイクル(圧延本数合計105本、最終スタンド圧延機入側板厚h1=1.5〜3.0mm、出側板厚h=1.2〜2.0mm、板巾b=1000〜1500mm)とし、最終スタンド入側に設けられているx線板厚計によって被圧延材の板端を検出し、尾端蛇行量ycを測定した。
本発明例1と本発明例2ではロールチョック間保持装置として、図7に示した、楔積層ブロック(大きさは、200mm×300mm×高さ最低100mm)、アクチュエータ(スクリュー式アクチュエータ)およびこれらを収納するための保持フレームからなるものを用いた。ガタ殺し荷重5tonの作用時からの圧縮荷重−変形特性から求めた装置剛性は、約600tonf/mmである。このロールチョック間保持装置を、中間ロールのロールチョックに保持フレームを固定することで設置し、しかる後に定期的に行われる中間ロールの交換時に、中間ロールと共に圧延機内に組み入れた。本発明例1と本発明例2においては、ロールチョック間保持装置を以下のように操作して圧延を行った。
(1)薄物材(一般的に製品板厚2.0mm以下)の圧延サイクルが開始するまでは本装置を使用することは無いため、図7(A)に示すように楔積層ブロック9の高さ(高さ寸法)を最小位置とし、突っ張り力が作用しないように退避させておく。退避に必要な、楔積層ブロックとワークロールのロールチョックとの隙間、および/または、楔積層ブロックとバックアップロールのロールチョックとの隙間は、本実施例においては、それぞれ10mm程度であった。
(2)調査対象となる薄物材用のワークロール1が組み入れられた後、圧延を実施していない時点で、楔積層ブロックとワークロールのロールチョックとの隙間、および/または、楔積層ブロックとバックアップロールのロールチョックとの隙間が無くなるまで、楔積層ブロックの高さ(高さ寸法)を高くし、アクチュエータに取り付けたエンコーダ等で0位置として、それぞれ記憶した(零点調節)。その後、楔積層ブロックとワークロールのロールチョックとの隙間、および/または、楔積層ブロックとバックアップロールのロールチョックとの隙間がそれぞれ3mmとなるまで、楔積層ブロックの高さ(高さ寸法)を低くし、この位置を待機位置とした。
(3)ワークロールのロールチョックと楔積層ブロックとの隙間、および/または、バックアップロールのロールチョックと楔積層ブロックとの隙間それぞれ3mmを、高さ(高さ寸法)方向の駆動速度10mm/sで除した時間0.3sだけ前のタイミングから、楔積層ブロックとロールチョックとの間で10ton程度のガタ殺し力に相当するモータトルクが発生するまで、スクリュー式アクチュエータのスクリュー軸を駆動し、突っ張り力を発生させた。この時点で、待機位置でそれぞれ3mmあった、ワークロールのロールチョックと楔積層ブロックとの隙間、および/または、バックアップロールのロールチョック間と楔積層ブロックとの隙間は、それぞれ0mmとなり図3(B)の状態となる。
(4)アクチュエータの駆動を停止した後も、スクリュー軸と楔体間の摩擦によるセルフロック機能により、スクリュー軸はそのストローク位置で保持された。、これにより楔積層ブロック9を所定の高さに保持し、被圧延材尾端における蛇行抑制効果を発揮することができる。最終スタンドにおける圧延が終了した後は、ワークロールのロールチョックと楔積層ブロックとの隙間、および/または、バックアップロールのロールチョックと楔積層ブロックとの隙間が、それぞれ3mmとなる待機位置に戻り、次材の圧延時にて同様の動作を繰り返す。
(5)さらに、圧延材一本毎に、ロールチョック間保持装置の使用と不使用とを繰り返す操作を行った。
図15に薄物サイクルにおける蛇行拡大量Δycを示す。図15によれば、比較例の場合には、蛇行拡大量は最終スタンド出側板厚が薄くなるほど大きくなり、およそ±25mmの範囲でばらついているのに対し、本発明例1の場合には、蛇行拡大量Δycはおよそ±15mm以内、本発明例2の場合には、およそ±5mm以内のばらつきにまで抑制できた。この結果より、ロールチョック間保持装置により蛇行抑制効果が発揮されたこと、また、全てのロールチョック間に設けた方がより効果が高いこと、が明らかになった。
本発明の一実施形態における圧延機及びこれによる圧延状況を示す説明図。 図1の実施形態におけるロールチョック間保持装置とその使用状況を示す説明図。 本発明の他の実施形態におけるロールチョック間保持装置とその使用状況を示す説明図。 本発明の他の実施形態におけるロールチョック間保持装置とその使用状況を示す説明図。 本発明の他の実施形態におけるロールチョック間保持装置とその使用状況を示す説明図。 本発明のさらに他の実施形態におけるロールチョック間保持装置とその使用状況を示す説明図。 本発明のさらに他の実施形態におけるロールチョック間保持装置とその使用状況を示す説明図。 本発明の他の実施形態におけるロールチョック間保持装置を示す説明図。 圧延機の剛性の構成部品を説明するための一般的な圧延機の概略図。 蛇行現象の物理的解釈を示す説明図。 蛇行に対する従来の平行剛性制御の考え方を説明するための説明図。 ベンダ力付与によるロールチョック間隙の変動を示す説明図。 一般的な熱間圧延ラインのレイアウトを示す説明図。 本発明をHC−Millに適用した場合の実施の形態における中間ロールシフトを考慮した最適装置配置を説明するための説明図。 本発明による熱間圧延仕上圧延機の実施形態における蛇行低減効果を比較例とともに示したグラフ。
符号の説明
1、1a,1b ワークロール
21、21a,21b 中間ロール
22、22a,22b バックアップロール
3、3a,3b,41a,41b,42a,42b ロールチョック
5 ロールチョック間保持装置
6 ロール支持部
7 支持手段
8 圧下手段
9 楔積層ブロック
10 アクチュエータ
11、11x,11y,11z,11z,11w 楔体
12 シリンダ本体
13 作動ロッド
14 装置本体
15 スクリュー軸
16 保持フレーム
160 保持フレームの内側底面(あるいは内側上面)
161 保持フレームの外側底面(あるいは外側上面)
162、163 保持フレームのストッパ部
17 鋼帯
110 突条
111 凹溝
112 ガイド突条
113 ガイド溝

Claims (6)

  1. 次の(a)と(b)を備えたロールチョック間保持装置を有することを特徴とする金属材の圧延機。
    (a)ワークロールと中間ロールのロールチョック間、および/または、中間ロールとバックアップロールのロールチョック間に配置されることで、ロールチョック間の突っ張り手段として機能し、楔先端側が逆向きになるように楔の傾斜面どうしが傾斜面勾配方向へスライド可能に重ね合わされた複数の楔体からなり、少なくとも1つの楔体が他の楔体に対してスライド移動することにより高さを可変とした楔積層ブロック。
    (b)該楔積層ブロックを構成する少なくとも1つの楔体を、他の楔体に対してスライド移動させ、かつ任意のスライド位置で保持するためのアクチュエータ。
  2. 楔積層ブロックは、少なくとも1つの楔体がロールチョックに固定され、かつ、残余の楔体の内の少なくとも1つの楔体が、アクチュエータに接続されてスライド移動が可能であることを特徴とする請求項1に記載の金属材の圧延機。
  3. アクチュエータと楔積層ブロックが、保持フレームに設置されてなるロールチョック間保持装置において、
    前記アクチュエータは、前記保持フレームに固定され、
    前記楔積層ブロックの少なくとも1つの楔体は、前記アクチュエータにより該アクチュエータが固定された前記保持フレームの面に対し水平方向へスライド可能に設置され、
    前記保持フレームは、中間ロールのロールチョックに固定されたことを特徴とする請求項1に記載の金属材の圧延機。
  4. アクチュエータと2つの楔体からなる楔積層ブロックが、保持フレームに設置されてなるロールチョック間保持装置において、
    前記アクチュエータは、前記保持フレームに固定され、
    前記楔積層ブロックの1つの楔体は、前記アクチュエータにより該アクチュエータが固定された前記保持フレームの面に対しスライド可能に設置され、
    前記保持フレームは、中間ロールのロールチョックに固定されたことを特徴とする請求項1に記載の金属材の圧延機。
  5. 熱延鋼帯製造用の圧延機であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の金属材の圧延機。
  6. 請求項1乃至5のいずれかに記載の圧延機を用いた金属材の圧延方法であって、
    ワークロールと中間ロールのロールチョック間、および/または、中間ロールとバックアップロールのロールチョック間の楔積層ブロックを所定の高さに保持し、該楔積層ブロックにより、圧延時の圧延機の平行剛性を高める突っ張り手段を形成することを特徴とする金属材の圧延方法。
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