JP5381966B2 - 金属材の圧延方法 - Google Patents

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Description

本発明は、鋼帯などの金属材を、蛇行を抑制しつつ連続圧延するための圧延機及びこの圧延機を用いた金属材の圧延方法に関する。
近年、熱間連続圧延の分野においては、HC−MILLなど各種のクラウン制御ミルが実用化された結果、板クラウンのない平坦な熱延鋼帯を安定して製造できるようになってきた。しかしながら、板クラウンが小さくなった分だけ圧延中に鋼帯が蛇行しやすくなり、特に熱延鋼帯の尾端部が尻抜けする際にサイドガイドに衝突して倒れ込んで圧延される、いわゆる絞り込みが発生するという新たな問題が生じている。熱間仕上圧延機における熱延鋼帯の尾端部通板性向上は、稼働率向上及びロール原単位向上のために、非常に重要な課題である。
図9に圧延機の概略を示す。同図に示すように、一般に圧延時における圧延機の変形は、(1)ハウジングの変形、(2)ロールのたわみ(軸心変位と同じ)、(3)ロールの偏平変形(圧延荷重による圧縮を受けたロールの弾性変形)、(4)圧下ねじの縮み(圧延荷重による圧縮を受けた圧下ねじの弾性変形)、(5)軸受部の変形、油膜厚さの変化、(6)ロッカープレート、その他の部材の変形、(7)圧下シリンダの変形及び油柱厚さの変形、からなる。実測及び計算によると、ロールギャップの変化量のうちで各部の占める割合は、ロール部の変形が40〜70%、ハウジングの変形が10〜16%、圧下ねじの変形が4〜20%であり、ロール変形の占める割合が圧倒的に大きいことが知られている(板圧延の理論と実際,日本鉄鋼協会,P.224)。
圧延時においては、圧延荷重に応じた変形が各所で発生し、実際に圧延後の熱延鋼帯の板厚を決定するロールギャップ部においては、上記変形量の総和分だけロールギャップが開いていることを意味する。つまり、圧延機はバネ定数の異なるバネを直列につないだモデルとも考えることができる。一般的に圧延荷重と上記圧延機の総和変形量との関係はミル定数と呼ばれ、熱間圧延機においては300〜800tonf/mm程度の値となる。
圧延機における熱延鋼帯の蛇行現象は、一般的に2階積分特性を持つと言われている。図10はその物理的解釈を示したもので、図10(A)は、熱延鋼帯の尾端がワークロールを抜ける瞬間を上方から見た図である。例えば、熱延鋼帯が蛇行した場合、図10(B)に示すように鋼帯が寄った側の圧延荷重が一方よりも高くなるため、ロール開度が一方よりも広くなる。当然、ロールギャップの狭い側は他方よりも薄く圧延されるため、圧延方向に長く伸ばされ、通板速度は他方よりも遅くなる。このため、鋼帯は図10(A)に示すように圧延部を境界にくの字型に折れ曲がることになる。このように一旦鋼帯が曲がると、そこから後方の蛇行量は時間とともに増大する。これによって、図10(B)に示すように板道がロールセンタから外れると、鋼帯が曲がった方向(図10(B)では右方向)のミル伸びが増大してロールギャップが開き、図10(C)に示すように、さらにたわみが助長されることで、時間の2乗に比例した蛇行量が発生する。また、被圧延材(鋼帯)の板厚が薄くなるほど蛇行が発生しやすい。圧延機に入る鋼帯と、圧延されて圧延機から出て行く鋼帯の質量は保存するため、被圧延材の質量保存の関係から下記(i)式が成り立つ。(i)式の右項のΨは被圧延材の回転速度を表し、このΨが大きいほど、図10(C)で説明した鋼帯の曲がりが大きくなり、蛇行量も増大する。一方、(i)式の左項の分母にあたる被圧延材の板幅中央の板厚hが小さくなるほど、左項は大きくなる。つまり、被圧延材の板厚が薄いほど、蛇行が発生しやすくなる。
Figure 0005381966
但し B:被圧延材の板幅
:圧延機入側における被圧延材の板幅中央の板厚
:圧延機出側における被圧延材の板幅中央の板厚
1df:圧延機入側における被圧延材板厚の左右差
0df:圧延機出側における被圧延材板厚の左右差
ν:圧延機入側における被圧延材の速度
ν:圧延機出側における被圧延材の速度
Ψ:圧延機入側における被圧延材の回転速度
Ψ:圧延機出側における被圧延材の回転速度
従来、こうした問題を回避するための熱延鋼帯の蛇行制御技術として、いくつかの提案がなされている。
その1つは、図11に示すように圧延機の圧延荷重の左右差Pdfにより発生する左右ロール開度差Sdfを打ち消すように、比例制御でレベリング修正量SLを動かす蛇行制御(平行剛性制御)である。図11において、αは制御ゲイン(0〜1)、Mは平行剛性である。この蛇行制御技術は、圧延機の圧下装置(スクリュー、油圧シリンダ等)のレベリング修正量SLを、下記の(ii)式に従い蛇行を抑制する方向に制御する方法(一般にレベリング操作と呼ぶ)である。なお、下記(ii)〜(iv)式において、αは制御ゲイン、Pdfは圧延荷重の左右差、Sdfは左右ロールの開度差、Mは平行剛性または左右剛性、Lは左右圧下装置間距離、ycは熱間圧延ラインの幅方向中心に対する熱延鋼帯の幅中央のずれ量(以下、単に「蛇行量yc」という)を示す。
平行剛性または左右剛性Mは、下記(iii)式に示すように、圧延荷重の左右差Pdfと圧下装置位置での左右ロール開度差Sdfの比で表される。また、蛇行量ycと圧延荷重の左右差Pdfとの関係は、下記(iv)式のように表される。つまり、平行剛性Mが高い圧延機では、圧延荷重の左右差Pdfによる左右ロール開度差Sdfが生じにくいこと、また、下記(iv)式に示す関係から、被圧延材の蛇行量ycによって発生する圧延荷重の左右差Pdfに起因した左右ロール開度差Sdfも生じにくいことになる。
この提案においては、熱延鋼帯の尾端部が当該スタンドの直前のスタンドを抜けてからの時間、または熱延鋼帯尾端部の当該スタンドの直前のスタンドからの距離が増大するほど、下記(ii)式に示す制御ゲインαを小さくなるように変更することにより、熱延鋼帯の尾端部が尻抜けする際の絞り込みを防止することを特徴としている(例えば、特許文献1参照)。
SL=−α(Pdf/M) …(ii)
M=Pdf/Sdf …(iii)
yc=(Pdf・L)/2P=(Sdf・L)/(2P・M) …(iv)
但し P:全圧延荷重
提案の他の1つは、圧延機の左右ベンダ力差を、蛇行を抑制する方向に制御する方法である。この方法は、圧延ロールにおける圧延荷重の左右差Pdfを測定し、この圧延荷重の左右差Pdfに応じて、圧延ロールにおける左右のベンダ圧力差を調節することによって、圧延機の平行剛性Mを制御し、蛇行を抑制することを特徴としている(例えば、特許文献2参照)。
上述した特許文献1、2は、いずれも圧延機の平行剛性制御の考え方に基づく蛇行制御技術であるが、特許文献1は圧下装置位置、特許文献2はベンダ力を制御手段とすることに特徴がある。
特開平9−38710号公報 特開平9−248614号公報
被圧延金属材(以下、被圧延材という)の蛇行量ycは、被圧延材の板厚が薄くなるほど大きくなる性質がある。一方、近年では薄物(一般に板厚2mm以下)に対する需要家からのニーズが高まりつつあり、将来的にはさらにその傾向が進むものと考えられている。さらには、被圧延材の薄物化によって通板速度は従来より高速化するため、前述した当該スタンドの圧延荷重の左右差Pdfに応じた現状の平行剛性制御では、応答性(つまり制御周期)が通板速度に対して不足し、蛇行に十分追従できないという問題が生じる。また、圧延機に入る被圧延材と、圧延されて圧延機から出て行く被圧延材の質量保存の関係から、被圧延材の板厚が薄くなるほど蛇行が発生しやすい。
さらに、特許文献1に示した左右のロール開度差Sdfを調整する制御方法では、被圧延材が蛇行した側の圧下位置を下げ、ロール開度を狭くする側に制御するため、狭くした側の圧延荷重が高くなり、つまりロールの弾性変形、ハウジングの伸び等の左右非対称性が拡大する。このため、蛇行防止に必要な圧下締め込み量に加え、圧延機の左右非対称要因を打ち消すために、さらに圧下位置を下げ、ロール開度を狭くする必要があり、結果的に制御の応答性に対して不利な方向に作用する。以上の理由から、特許文献1に示すような平行剛性制御を用いた圧延機においても、蛇行による絞りトラブルが散発しているのが現状である。また、特許文献1においても、蛇行制御の応答性が十分でない。
したがって本発明の目的は、被圧延材の薄物化に対応できない現状の平行剛性制御の問題点を解消し、良好な圧延材形状を得ることができるとともに、安定した蛇行制御を行うことで、絞りトラブルを生じることなく熱延鋼帯等の金属材を安定して製造することができる金属材の圧延機及び圧延方法を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明者らは、一般的な圧延機における平行剛性Mはワークロール−バックアップロール間の弾性変形、つまり左右ロール偏平差が支配的であることを解析により明らかにした上で、左右ロール偏平差を低減することができる平行剛性向上手段に着目し、ワークロールとバックアップロールの左右の各ロールチョック間に突っ張り手段となる剛性部材を挟みこむことにより、特別な制御を行うことなく被圧延材のずれ量ycによる左右ロール偏平差の発生を抑制し、被圧延材の蛇行を効果的に防止できることを見出した。
しかし、実際のワークロール−バックアップロールの各ロールチョックの隙間はロール径によって変化するため、一般的な熱間圧延ラインで2〜3時間おきに行われる定期ロール替の度に、上記剛性部材の高さ(鉛直方向)寸法を調整する必要がある。さらに、同一ロールによる圧延中においても、被圧延材の寸法、圧延荷重、ベンダ力等の操業条件によってロールチョックの隙間は変化することに加え、1本の鋼帯の圧延中でも操業条件は時々刻々と変化する。このため、ワークロール−バックアップロールの各ロールチョック間に常時一定の寸法の剛性部材を介在させておくことは、操業で実施されている各種制御の外乱となり、形状不良等の欠陥、さらには穴明き、板の破断等の通板トラブルを引き起こす可能性がある。そこで、このような問題を生じない剛性部材の構成について検討した結果、複数の楔体をスライド可能に重ね合わせて高さを調整できるようにした突っ張り用ブロックが、各ロールチョックの隙間変動に適切に対応し、且つ各ロールチョック間に剛性の高い突っ張りを形成する手段として最適であることが判った。
本発明はかかる知見に基づきなされたもので、その特徴は以下のとおりである。
[1]ワークロールとバックアップロールの左右の各ロールチョック間に配置されることで、ワークロールのロールチョックとバックアップロールのロールチョック間の突っ張り手段として機能する部材であって、楔先端側が逆向きになるように楔の傾斜面どうしが傾斜面長手方向スライド可能に重ね合わされた複数の楔体からなり、少なくとも1つの楔体が他の楔体に対してスライド移動することにより高さを可変とした突っ張り用ブロックと、該突っ張り用ブロックを構成する少なくとも1つの楔体を他の楔体に対してスライド移動させ、且つ任意のスライド位置で保持するためのアクチュエータとを備えたロールチョック間保持装置を有し、該ロールチョック間保持装置が、圧延期間の全部ではなく、圧延期間中において蛇行抑制効果を発揮させる時にのみ突っ張り用ブロックによる突っ張り手段を形成する圧延機を用いた金属材の圧延方法であって、
ワークロールとバックアップロールの左右の各ロールチョック間の突っ張り用ブロックを所定の高さに保持し、該突っ張り用ブロックにより、圧延時の圧延機の平行剛性を高める突っ張り手段を形成する圧延方法であり、
圧延期間中において、前記突っ張り手段が形成されていない状態から、下記(a)〜(d)のいずれかのタイミングで前記突っ張り手段を形成することを特徴とする金属材の圧延方法。
(a)金属材の蛇行が検知されたとき
(b)自圧延機に金属材が噛みこみ、自圧延機の圧下荷重が制御開始されたとき
(c)自圧延機の前段の圧延機から金属材の尾端が抜けたとき
(d)自圧延機の前々段の圧延機から金属材の尾端が抜けたとき
[2]上記[1]の圧延方法において、圧延機が備える突っ張り用ブロックが2つの楔体からなり、一方の楔体がバックアップロールのロールチョックに固定され、他方の楔体がアクチュエータによりスライド可能であることを特徴とする金属材の圧延方法。
[3]上記[1]または[2]の圧延方法において、圧延機が熱延鋼帯製造用の熱間圧延機であることを特徴とする金属材の圧延方法。
本発明によれば、圧延機のワークロールとバックアップロールの左右の各ロールチョック間に、左右のロールチョック間隔を保持する突っ張り手段として機能することができる突っ張り用ブロックを介在させ、所定のタイミングで突っ張り手段として機能させることで、圧延機の平行剛性を効果的に高めることができる。このため、既存の圧延制御の外乱要因となることなく被圧延材の蛇行量ycによる左右ロール偏平差の発生を抑止し、被圧延材の蛇行を効果的に抑制することができる。特に、薄物の熱延鋼帯の製造において、安定通板を実現することができ、絞りトラブル抑制によるライン稼働率向上及びロール原単位向上を達成しつつ、優れた品質の熱延鋼帯を安定して製造することができる。
また、本発明の圧延機は、ワークロールチョック−バックアップロールチョック間にロールチョック間保持装置を設置し、これを圧延機自体の上位の制御系から独立した簡易な制御系により、蛇行を抑制したいタイミングで突っ張り手段として機能させる、という簡易な設備と制御だけでよいため、既存の圧延機にも簡単に適用することができる。したがって、制御周期がかなり悪い制御システムや応答性が遅い圧下装置しか備えていない既存の圧延機であっても問題なく適用でき、金属材の蛇行を効果的に抑制することができる。一方、応答性の良い圧下装置を有し、制御周期が早い最新の制御システムを有する圧延機に適用した場合にも、蛇行抑制効果をより高度に実現することができる。
本発明の一実施形態における圧延機及びこれによる圧延状況を示す説明図 図1の実施形態におけるロールチョック間保持装置とその使用状況を示す説明図 本発明の他の実施形態におけるロールチョック間保持装置とその使用状況を示す説明図 本発明の他の実施形態におけるロールチョック間保持装置とその使用状況を示す説明図 本発明の他の実施形態におけるロールチョック間保持装置とその使用状況を示す説明図 本発明の他の実施形態におけるロールチョック間保持装置とその使用状況を示す説明図 本発明の他の実施形態におけるロールチョック間保持装置とその使用状況を示す説明図 本発明の他の実施形態におけるロールチョック間保持装置を示す説明図 圧延機の剛性の構成部品を説明するための一般的な圧延機の概略図 蛇行現象の物理的解釈を示す説明図 蛇行に対する従来の平行剛性制御の考え方を説明するための説明図 ベンダ力付与によるロールチョック間隙の変動を示す説明図 蛇行による圧延機の左右非対称な変形及び力の釣り合いを計算するモデルを説明するための説明図 蛇行が圧延機の左右非対称変形に及ぼす影響と、本発明の効果を説明するための計算モデルによる計算例を示す説明図 本発明によるウェッジ低減効果(蛇行低減効果)を比較例とともに示したグラフ 圧延機の左右非対称変形が被圧延材の左右板厚差に及ぼす影響を示す説明図 本発明の効果を示す概念図 実施例における本発明例及び比較例の蛇行量を示すグラフ 一般的な熱間圧延ラインのレイアウトを示す説明図 熱間仕上圧延機の実施形態における本発明による蛇行低減効果を比較例とともに示したグラフ
以下、熱間圧延機とこれを用いた熱延鋼帯の製造を例に、本発明の詳細と好ましい実施形態を説明する。
図1及び図2は、本発明の熱間圧延機及びこれによる圧延状況の一実施形態を示すもので、図1は熱間圧延機の正面図である。また、図2は熱間圧延機の上ワークロールと上バックアップロールの一方のロールチョック間に設けられたロールチョック間保持装置の使用状況を示すものである。この熱間圧延機(圧延スタンド)の基本構造は従来装置と同様であり、上下ワークロール1a,1bと、これらワークロールをそれぞれ上下で支持する上下バックアップロール2a,2bと、これら各ロールの両端部を支持するロール支持部6(ハウジング)を備えている。上下ワークロール1a,1b及び上下バックアップロール2a,2bは、各々の両ロール軸がロールチョック3,4(上ワークロールチョック3a,下ワークロールチョック3b,上バックアップロールチョック4a,下バックアップロールチョック4b)で支持され、これら各ロールのロールチョック3,4は、前記ロール支持部6内で上下方向スライド可能に保持されている。
各ロールは、装置下側から、下バックアップロール2b、下ワークロール1b、上ワークロール1a、上バックアップロール2aの順に積み重ねられた構造(なお、図は圧延中の状態を示しているため、上下ワークロール1a,1b間に被圧延材である鋼帯が介在している)となっている。また、下バックアップロール2bのロールチョック4bは、ロール支持部6側の支持手段7で支持され、一方、上バックアップロール2aのロールチョック4aはロール支持部6側の圧下手段8(圧下シリンダ等の圧下装置)で上方から拘束・圧下されている。したがって、圧下手段8による圧下荷重は、上バックアップロールチョック4a→上バックアップロール2a→上ワークロール1a→(被圧延金属材)→下ワークロール1b→下バックアップロール2b→下バックアップロールチョック4bという経路で伝わり、支持手段7で受けられる。
このような基本構造において、本実施形態の熱間圧延機では、上下のワークロール1とバックアップロール2の左右の各ロールチョック3,4間を任意の間隔で保持できる突っ張り用ブロックを備えたロールチョック間保持装置5が設けられている。
このロールチョック間保持装置5は、ワークロール1とバックアップロール2の左右の各ロールチョック3,4間に配置されることでロールチョック間の突っ張り手段として機能する、複数の楔体からなる突っ張り用ブロック9と、この突っ張り用ブロック9を構成する少なくとも1つの楔体を他の楔体に対してスライド移動させ、且つ所望の任意のスライド位置で保持するためのアクチュエータ10とを備えている。
前記突っ張り用ブロック9は、楔先端側が逆向きになるように楔の傾斜面どうしが傾斜面長手方向(=傾斜面勾配方向)スライド可能に重ね合わされた複数の楔体からなり、少なくとも1つの楔体が他の楔体に対してスライド移動することにより、高さ(ロールチョック間方向での長さ)を可変としたもので、本実施形態では2つの楔体11x,11yにより構成され、このうち一方の楔体11xが下側のロールチョック3又はロールチョック4に固定され、他方の楔体11yがアクチュエータ10に接続され、楔体11xに対してスライド移動可能となっている。すなわち、この突っ張り用ブロック9は、楔体11xに対して楔体11yを傾斜面長手方向にスライド移動させることにより高さ(高さ寸法)が変化する。
なお、本発明において楔体11をロールチョックに固定するとは、少なくとも楔体11がロールチョックに対してロール軸方向で動かないように係止されることを意味し、楔体11がロールチョックに対して完全に固定された状態に限定されるものではない。したがって、例えば、後述する図6や図7の実施形態に示される楔体11yのように、ロールチョック3に対してロール軸方向で動かないように係止されつつ配置される形態であってもよい。
前記アクチュエータ10は、本実施形態ではシリンダ本体12と作動(駆動)ロッド13を備えた液圧シリンダ装置により構成されている。この液圧シリンダ装置は、その作動ロッド13が前記楔体11yに接続され、これを楔体11xに対してスライド移動させるとともに、この楔体11yを任意のスライド位置で保持する。
前記突っ張り用ブロック9がロールチョック間で突っ張り手段として機能する際には大きな圧縮荷重が作用するため、ロールチョック間保持装置5を構成する突っ張り用ブロック9とアクチュエータ10は、その荷重に十分耐え得るものであることが必要である。
通常、突っ張り用ブロック9を構成する楔体11は金属材料で構成される。この金属材料は所定の剛性を有するとともに、耐熱性、低熱膨張性に優れたものが好ましく、例えば、アルミ合金などの各種金属材料を用いることができるが、その中でも特に、Fe−36mass%Niからなるインバー合金が望ましい。また、楔体11の傾斜面(摺動面)どうしの滑り性を高めるために、傾斜面に被覆層(例えば、フッ素樹脂シートなどを被覆したもの)を設けてもよい。
また、アクチュエータ10には、上記荷重に抗して楔体11yを所定のスライド位置に保持するための保持力(剛性)が必要である。したがって、例えば、アクチュエータ10を油圧シリンダ装置などの液圧シリンダ装置で構成する場合には、通常の液圧シリンダ装置でもよいが、特に、シリンダストロークを高い剛性でロックする機能を持つ液圧シリンダ装置を用いるのが好ましい。そのような液圧シリンダ装置としては、例えば、特開平10−267021号公報に示されるような、油圧シリンダ装置の外側部材の内周面と内側部材の外周面との間の摩擦によって、シリンダストロークを高い剛性でロックする機能を持つ油圧シリンダ装置が挙げられる。また、その他に、シリンダ本体12内に作動流体(液体)を封じ込めることで作動ロッド13を所定の伸長状態にロックすることができる封入機構(ロック機構)を有する液圧シリンダ装置を用いてもよい。この封入機構は、例えば、作動流体供給用の流体流路に設けられる電磁仕切り弁により構成することができ、この電磁仕切り弁が流体流路を遮断し、シリンダ本体12内に作動流体が封じ込められることで作動ロッド12が所定の伸長状態でロックされる。
また、液圧シリンダ装置の作動ロッド13を機械的にロックするロック機構を有するものを用いてもよい。このロック機構の構成に特別な制限はないが、例えば、作動ロッド13に設けられた被係合部(例えば、凹部、孔、ラック部など)と、これに機械的に噛み合うことで作動ロッド13を拘束する係合手段などからなるロック手段を用いることができる。この場合、係合手段の駆動にはバネやアクチュエータなどを利用することができる。
また、上述したようなシリンダ本体がロック機能を有する液圧シリンダ装置において、さらに、このような機械的なロック機構を併用すれば、液圧シリンダ装置によるロールチョック間の突っ張り機能をより確実なものとすることができる。
また、アクチュエータ10としては、上記液圧シリンダ装置以外に、例えば、後述するような負荷作用時のセルフロック機能を有するスクリュー式アクチュエータなど、適宜な方式のアクチュエータを用いることができる。
図3は、ロールチョック間保持装置5のアクチュエータ10としてスクリュー式アクチュエータを用いた場合の一実施形態を示すもので、ロールチョック間保持装置5の使用状況を示すものである。
アクチュエータ10を構成するスクリュー式アクチュエータは、モータを備えた装置本体14とこの装置本体14に回転自在に保持され、前記モータにより回転するスクリュー軸15とを備えており、このスクリュー軸15が前記楔体11yに貫設された雌ネジ孔(図示せず)に螺挿されることで、楔体11yに接続されている。そして、前記スクリュー軸15の回転により、楔体11yを楔体11xに対してスライド移動させるとともに、この楔体11yを任意のスライド位置で保持する。
本発明の圧延機では、突っ張り用ブロック9を構成する複数の楔体11のうち、少なくとも1つの楔体11をアクチュエータ10によりスライド移動可能とし、残余の楔体11はワークロール1のロールチョック3又は/及びバックアップロール2のロールチョック4に固定する。したがって、突っ張り用ブロック9が2つの楔体11により構成される場合には、一方の楔体11をワークロール1のロールチョック3、バックアップロール2のロールチョック4のいずれに固定してもよい。但し、熱延鋼帯などの金属材を製造する際の圧延機では、ワークロール1は頻繁に交換されるのに対してバックアップロール2の交換頻度はそれほど高くなく、したがって、突っ張り用ブロック9が2つの楔体11により構成される場合には、楔体11はバックアップロール2のロールチョック4に固定するのが好ましい。
また、このように楔体11をバックアップロールのロールチョック4に固定する構造とすることにより、ロールチョック間保持装置5のメンテナンス等を定期バックアップロール交換と同期させることができ、ロールチョック間保持装置の脱着作業によってライン稼働率を低下させることなく、スムーズな運用が可能となる。また、ロールチョック間保持装置5について、使用済バックアップロールとともにオフラインにてメンテナンスを行うことができるため、装置の故障による圧延トラブルを回避することができる。
また、突っ張り用ブロックが2つの楔体で構成される場合、図1〜図3に示すように下側の楔体11xをロールチョック(下部側のロールチョック)に固定し、上側の楔体11yをアクチュエータ10でスライド移動させるようにした場合には、上側の楔体11yのスライド移動に伴い楔体11yとアクチュエータ10との連結部の高さが変動するため、アクチュエータ10がこれに追随して傾動又は昇降できるような構造上の工夫、例えば、図1〜図3には図示していないが、楔体11yとアクチュエータ10の作動部材(作動ロッド13又はスクリュー軸15)との連結部を上下方向回動可能な枢着構造とし、且つアクチュエータ10の支持部も上下方向回動可能な枢着部とする、などの工夫が必要になる。
これに対して、上側の楔体11yをロールチョック(上部側のロールチョック)に固定し、下側の楔体11xをアクチュエータ10でスライド移動させるようにした場合には、下側の楔体11xがスライド移動しても楔体11とアクチュエータ10との連結部の高さが変動することはないため、上記のような構造上の工夫が必要でなく、このためアクチュエータ−楔体の連結構造を簡素化でき、また保全性にも優れた構造とすることができる。図4及び図5は、そのような構造の実施形態を示すもので、図4はアクチュエータ10として液圧シリンダ装置を用いた場合、図5はアクチュエータ10としてスクリュー式アクチュエータを用いた場合を示している。なお、図4(A)、図5(A)は突っ張り用ブロック9の高さを低くした状態(正面図及びそのA−A′断面図)を、図4(B)、図5(B)は突っ張り用ブロック9の高さを高くした状態(正面図及びそのA−A′断面図)を、それぞれ示している。
図4、図5のいずれの場合も、上側の楔体11yをロールチョック(上部側のロールチョック)に固定し、下側の楔体11xにアクチュエータ10(作動ロッド13又はスクリュー軸15)を接続してスライド移動させるようにしている。また、下側の楔体11xの傾斜面の幅方向中央には傾斜面長手方向に沿った突条110が形成されるとともに、上側の楔体11yの傾斜面の幅方向中央には傾斜面長手方向に沿った凹溝111が形成され、この凹溝111に前記突条110が噛み合うようにして、上側の楔体11yの傾斜面に下側の楔体xの傾斜面がスライド可能に当接している。
また、ワークロール1とバックアップロール2は、それらのロールチョック3,4とともに定期的に交換されることから、突っ張り用ブロック9とアクチュエータ10を1つのユニットにして、ロールチョック3,4のうちの一方に取り付ける構造とすることが、装置構成の簡易化と脱着の容易性の面から好ましい。また、ロールの交換頻度は、さきに述べたようにワークロール1に較べてバックアップロール2の方が少ないため、特に、バックアップロール2のロールチョック4にユニット化された突っ張り用ブロック9とアクチュエータ10を取り付けるようにすることが好ましい。具体的な構造としては、保持フレームと、この保持フレームに固定されたアクチュエータと、2つの楔体からなる突っ張り用ブロックであって、そのうちの一方の楔体が前記アクチュエータに保持され且つ前記保持フレーム面に対してスライド可能である突っ張り用ブロックとを備えたユニットを、前記保持フレームを介してバックアップロール又はワークロールのロールチョック(特に好ましくは、バックアップロールのロールチョック)に固定する構造が好ましい。
図6及び図7は、そのような構造の実施形態を示すものである。各図において、16は突っ張り用ブロック9とアクチュエータ10を備えたユニットであり、図6はユニット16を上側のロールチョックに取り付けた実施形態、図7はユニット16を下側のロールチョックに取り付けた実施形態である。上述したように、ユニット16はバックアップロール2のロールチョック4に取り付けることが好ましく、したがって、図6は上部のワークロール1aとバックアップロール2aのロールチョック3a,4a間に、また、図7は下部のワークロール1bとバックアップロール2bのロールチョック3b,4b間に、それぞれ適用することが好ましい構造であると言える。したがって、図6及び図7については、ユニット16をバックアップロール2のロールチョック4に取り付ける場合を例に説明する。なお、図6(A)、図7(A)は突っ張り用ブロック9の高さを低くした状態(正面図及びそのA−A′断面図)を、図6(B)、図7(B)は突っ張り用ブロック9の高さを高くした状態(正面図及びそのA−A′断面図)を、それぞれ示している。また、図6及び図7の各実施形態は、アクチュエータとしてスクリュー式アクチュエータを適用した例を示しているが、アクチュエータとしては液圧シリンダ装置等の適宜なものを適用できる。
図6において、ユニット16は、保持フレーム17と、この保持フレーム17の下部に固定(例えば、ボルト止めによる固定)されたアクチュエータ10と、2つの楔体11x,11yからなり、上側の楔体11xに前記アクチュエータ10が接続された突っ張りブロック9とを備えている。なお、この実施形態では、上側のロールチョックがバックアップロール2のロールチョック4,下側のロールチョックがワークロール1のロールチョック3である。
前記保持フレーム17の構造に特別な制限はないが、本実施形態では下部が開放した容器状の形態を有し、その内部にアクチュエータ10と突っ張りブロック9が収納されている。
前記上側の楔体11xには、アクチュエータ10のスクリュー軸15(液圧シリンダ装置の場合には作動ロッド)が接続され、楔体11xはアクチュエータ10に保持されている。また、楔体11xの平面状の上面は、保持フレーム17の下面170にスライド移動可能に当接している。
また、上側の楔体11xの傾斜面の幅方向中央には傾斜面長手方向に沿った突条110が形成されるとともに、この突条110の両側面に、前記傾斜面と同じ傾きを持ったガイド突条112A,112Bが突条110の長手方向に沿って突設されている。一方、下側の楔体11yの傾斜面の幅方向中央には傾斜面長手方向に沿った凹溝111が形成されるとともに、この凹溝111の内側の両側面に、前記傾斜面と同じ傾きを持ったガイド溝113A,113Bが凹溝111の長手方向に沿って形成されている。
そして、下側の楔体11yの傾斜面に上側の楔体xの傾斜面がスライド可能に当接した状態で、楔体11yの凹溝111内に楔体11xの突条110が嵌り込むとともに、楔体11yのガイド溝113A,113B内に楔体11xのガイド突条112A,112Bがスライド可能に嵌合(係合)する。このようなガイド突条112A,112Bとガイド溝113A,113Bとの係合により、図6(A)に示すように楔体xは楔体yを保持することができる。
保持フレーム17は楔体11yの両端部に面してストッパ部18,19を有しており、楔体11yは、これらストッパ部18,19によりロール軸方向で移動しないように係止(拘束)される。すなわち、楔体11yは、その両端部側がストッパ部18,19で係止されることで実質的に上下動のみ可能であり、且つ上記のようにガイド突条112A,112Bとガイド溝113A,113Bとの係合により楔体xに保持された状態で、アクチュエータ10による楔体11xのスライド移動に伴い上下動することになる。
以上のようなユニット16は、その保持フレーム17を上側のロールチョック4(ロールチョック4aにボルト止めなどで固定することにより、ロールチョック3,4(ロールチョック3a,4a)間に配置される。
実際にユニット16を取り付ける場合には、バックアップロール交換時に圧延機にセットする前のバックアップロール2のロールチョック4にユニット16を固定し、このロールチョック4が圧延機内に組み入れられることにより、ユニット16がロールチョック3,4間に設置される。
また、図7の実施形態のものは、図6の実施形態とは上下逆の構造を有しており、そのユニット16は、保持フレーム17と、この保持フレーム17の上部に固定(例えば、ボルト止めによる固定)されたアクチュエータ10と、2つの楔体11x,11yからなり、下側の楔体11xに前記アクチュエータ10が接続された突っ張りブロック9とを備えている。なお、この実施形態では、下側のロールチョックがバックアップロール2のロールチョック4,上側のロールチョックがワークロール1のロールチョック3である。
前記保持フレーム17の構造にも特別な制限はないが、本実施形態では上部が開放した容器状の形態を有し、その内部にアクチュエータ10と突っ張りブロック9が収納されている。
前記下側の楔体11xには、アクチュエータ10のスクリュー軸15(液圧シリンダ装置の場合には作動ロッド)が接続され、楔体11xはアクチュエータ10に保持されている。また、楔体11xの平面状の下面は、保持フレーム17の上面171にスライド移動可能に当接している。
また、下側の楔体11xの傾斜面の幅方向中央には傾斜面長手方向に沿った突条110が形成されるとともに、この突条110の両側面に、前記傾斜面と同じ傾きを持ったガイド突条112A,112Bが突条110の長手方向に沿って突設されている。一方、上側の楔体11yの傾斜面の幅方向中央には傾斜面長手方向に沿った凹溝111が形成されるとともに、この凹溝111の内側の両側面に、前記傾斜面と同じ傾きを持ったガイド溝113A,113Bが凹溝111の長手方向に沿って形成されている。
そして、上側の楔体11yの傾斜面に下側の楔体xの傾斜面がスライド可能に当接した状態で、楔体11yの凹溝111内に楔体11xの突条110が嵌り込むとともに、楔体11yのガイド溝113A,113B内に楔体11xのガイド突条112A,112Bがスライド可能に嵌合(係合)する。このようなガイド突条112A,112Bとガイド溝113A,113Bとの係合により、図7(A)に示すように楔体xは楔体yを保持することができる。
保持フレーム17は楔体11yの両端部に面してストッパ部18,19を有しており、楔体11yは、これらストッパ部18,19によりロール軸方向で移動しないように係止(拘束)される。すなわち、楔体11yは、その両端部側がストッパ部18,19で係止されることで実質的に上下動のみ可能であり、且つ上記のようにガイド突条112A,112Bとガイド溝113A,113Bとの係合により楔体xに保持された状態で、アクチュエータ10による楔体11xのスライド移動に伴い上下動することになる。
以上のようなユニット16は、その保持フレーム17を下側のロールチョック4(ロールチョック4b)にボルト止めなどで固定することにより、ロールチョック3,4(ロールチョック3b,4b)間に配置される。
この実施形態の場合も、実際にユニット16を取り付ける場合には、バックアップロール交換時に圧延機にセットする前のバックアップロール2のロールチョック4にユニット16を固定し、このロールチョック4が圧延機内に組み入れられることにより、ユニット16がロールチョック3,4間に設置される。
また、突っ張り用ブロック9は、3つ以上の楔体で構成することもできる。図8は、突っ張り用ブロック9を3つの楔体11で構成した場合の一実施形態を示すもので、上側及び下側の楔体11z,11zをそれぞれロールチョック4,3に固定するとともに、中央の楔体11wを上下の楔体11z,11zに対してスライド可能に設け、この楔体11wにアクチュエータ10(作動ロッド13又はスクリュー軸15)を接続してスライド移動させるようにしている。
なお、ロールチョック保持装置5は、上側のワークロール−バックアップロールのロールチョック3a,4a間、下側のワークロール−バックアップロールのロールチョック3b,4b間のうちのいずれか一方に設けることも可能であるが、いずれか一方のみに設けた場合には効果が半減するので、本実施形態のように上側・下側のワークロール−バックアップロールの各ロールチョック3,4間に設けることが好ましい。
ここで、本発明の圧延機において、上述したようなロールチョック3,4間の突っ張り手段として、特に突っ張り用ブロック9を備えたロールチョック間保持装置5を用いるのは、以下のような理由による。
(a)突っ張り用ブロック9により、ロールチョック3,4間の突っ張り手段として強力な保持力が得られ、圧延機の高い平行剛性が確保できる。
(b)ロールチョック3,4の間隙を突っ張り手段で保持する必要がないときには、突っ張り用ブロック9はロールチョック3,4間の距離の変動に追従して高さ寸法が変化するなどして、ロールチョック3,4間の距離の変動を妨げない動作を容易に行わせることができる。
(c)ワークロールやバックアップロールの交換に伴うロールチョック3,4間の距離の変化に対しても、突っ張り用ブロック9であれば問題なく対応することができる。
なお、突っ張り用ブロック9を実際に使用するに当たっては、通常、以下のような調整を行う。すなわち、ロールチョック3,4間の間隔はワークロール1、バックアップロール2のロール径によっても変化するため、定期的に実施されるロール交換に応じて突っ張り用ブロック9の高さ(高さ寸法)の零調を実施する。具体的には、ロール交換が終了し、圧延を実施していない時点で、ロールチョック3,4間と突っ張り用ブロック9との隙間がなくなるまで、突っ張り用ブロック9の高さ(高さ寸法)を伸長させ、アクチュエータに取り付けたエンコーダ等で0位置として記憶する。その後、ロールチョック3,4間と突っ張り用ブロック9との隙間が所望の間隔(例えば3mm)となるように、突っ張り用ブロック9の高さ(高さ寸法)を減少させ、この状態を突っ張り用ブロック9の待機位置とする。
次に、以上のような本発明の圧延機を用いた金属材の圧延方法について説明すると、この圧延方法では、ワークロール1とバックアップロール2の左右の各ロールチョック3,4間の突っ張り用ブロック9を所定の高さに保持し、この突っ張り用ブロック9により、圧延時の平行剛性を高める突っ張り手段を形成するものである。具体的には、左右の各ロールチョック間の突っ張り用ブロック9の楔体11をアクチュエータ10でスライド移動させて所定の位置に保持することで、ワークロール1とバックアップロール2を平行に保持するための突っ張り手段を形成する。但し、このような突っ張り手段の形成は、圧延中において蛇行抑制効果を発揮させたい所定のタイミングで行われ、それ以外の圧延期間中は突っ張り手段は形成しない。これは、金属材の圧延中は被圧延材の寸法、圧延荷重、ベンダ力等の操業条件によってロールチョックの隙間が変化し、このような要因によるロールチョックの隙間の変化を極力阻害しないことが好ましいからである。
例えば、図12(A)に示すように、通常の圧延ではワークロール1の幅に対して鋼帯の幅は小さく、ワークロール1は胴中央部で大きく曲げられ、これによって鋼帯も凸状に圧延されることになる。これに対して、鋼帯は極力フラットに圧延されることが望まれるため、図12(B)に示すように、ベンダ力をワークロール1のロールチョック3に作用させ、ワークロール1の曲がりを制御する手法が一般的に用いられている。一方、ベンダ力制御によって、ロールチョック3,4間の間隔は常時変化するため、突っ張り用ブロック9による突っ張り手段を圧延期間中に常時作用させると、ベンダ力の機能を阻害することになる。
また、本発明の圧延機を使用するに当たっては、突っ張り用ブロック9と各ロールチョックとの当たり面精度を考慮する必要がある。例えば、通常の熱間圧延ラインに設けられる圧延機におけるロールチョックの上下面は、殆どメンテナンスされていないため、腐食による凹凸、繰り返し荷重によるひずみ等が生じていることが少なくない。このため単純に突っ張り用ブロック9が上下のロールチョック間に挟まれた状態である場合でも、十分な剛性が出るまでに10ton程度のガタ殺し荷重が必要となることを実験により確認した。このため、ロールチョック間保持装置5は以下のような条件で運用されることが好ましい。
例えば、ロールチョック間保持装置5のアクチュエータ10として液圧シリンダ装置、特に作動ロッドを高い剛性でロックする機能を持つ液圧シリンダ装置を用いた場合の運用方法について、図2を用いて説明する。
(1)ロールチョック間保持装置5の不使用時(通常は非圧延時)には、図2(A)に示すようにアクチュエータ10を構成する液圧シリンダ装置の作動ロッド13は最小ストローク位置まで退避しておく。このため突っ張り用ブロック9とロールチョックとの間には隙間が存在する。
(2)被圧延材が圧延機に噛み込んだ後、その尾端が圧延機を抜けるまでの間の任意のタイミングにおいて、図2(B)に示すように、突っ張り用ブロック9とロールチョック間のガタ殺しのため、アクチュエータ10を構成する液圧シリンダ装置を一定圧で作動させ、突っ張り用ブロック9とロールチョック間に一定力のガタ殺し力(比較的小さい突っ張り力)が作用した状態とする(ロールチョック3,4と突っ張り用ブロック9との隙間は0mm)。なお、通常の熱間圧延においては、被圧延材の尾端方向への温度低下(サーマルランダウン)を考慮した板厚制御により、1本の鋼帯の圧延中でもワークロールとバックアップロールの各ロールチョック間の隙間は時々刻々と変化するが、突っ張り用ブロック9の高さは、液圧シリンダ装置の液圧バネの作用によりこの隙間変化に追従して変化する。
(3)ロールチョック間保持装置5による被圧延材の蛇行抑制効果を発揮させたいタイミングにおいて、図2(C)に示すように、液圧シリンダ装置により突っ張り用ブロック9を所定の高さに保持し、ロールチョック3,4間に突っ張り手段を形成する。この際、液圧シリンダ装置がロック機構を有している場合には、このロック機構を作動させることで突っ張り手段を形成する。特に、作動ロッド13を高い剛性でロックする機能を持つ液圧シリンダ装置の場合には、作動ロッド13の所定のストローク位置でこれをロック(例えば、シリンダ締まり嵌め効果によるロック)する。以上のような突っ張り手段の形成により、両ロールチョック3,4の間隔が保持されるため、蛇行抑制効果が発揮される。
以上述べたような、アクチュエータ10として液圧シリンダ装置(特に作動ロッドを高い剛性でロックする機能を持つ液圧シリンダ装置)を用いる方式では、ガタ殺し荷重を作用させた状態で待機すること、待機位置からそのまま突っ張り手段形成動作(例えば、ロック動作)に入ることが可能であることから、応答性に優れる。
また、ロールチョック間保持装置5のアクチュエータ10としてスクリュー式アクチュエータを用いた場合の運用方法について、図3を用いて説明する。
(1)ロールチョック間保持装置5の不使用時(通常は非圧延時)には、図3(A)に示すようにアクチュエータ10を構成するスクリュー式アクチュエータのスクリュー軸15は最小ストローク位置まで退避しておく。すなわち、突っ張り用ブロック9は待機位置にあり、突っ張り用ブロック9とロールチョックとの間には隙間(例えば、3mm)が存在する。
(2)蛇行抑制効果を発揮させたい所望のタイミングに図3(B)の状態となるよう、ロールチョック3,4間と突っ張り用ブロック9との隙間を高さ(高さ寸法)方向の駆動速度で除した時間だけ前のタイミングから、突っ張り用ブロック9とロールチョック間での10ton程度のガタ殺し力に相当するモータトルクが発生するまでスクリュー式アクチュエータのスクリュー軸15を駆動し、突っ張り力を発生させる。この時点で、待機位置で3mmあったロールチョック3,4間と突っ張り用ブロック9との隙間は0mmとなる。
(3)その後、駆動(モータ)を停止しても、スクリュー軸15及び楔体11x,11y間の摩擦によるセルフロック機能によりスクリュー軸15をそのストローク位置で保持することができる。これにより突っ張り用ブロック9を所定の高さに保持し、被圧延材尾端における蛇行抑制効果を発揮することができる。
以上述べたような、アクチュエータ10としてスクリュー式アクチュエータを用いる方式では、液圧シリンダ装置を用いる方式のようなガタ殺し荷重を作用させた状態での待機はできないが、スクリュー軸15がセルフロック機能を有するため、ロック動作自体には時間を要しないという利点がある。
上記のようにロールチョック3,4間で突っ張り用ブロック9による突っ張り手段を形成するタイミングとしては、例えば、以下のようなものがあり得る。これらのうち、(c)の場合に蛇行が最も発生しやすいことが知られている。
(a)鋼帯の蛇行が検知されたとき
(b)自圧延機に鋼帯が噛みこみ、自圧延機の圧下荷重が制御開始されたとき
(c)自圧延機の前段の圧延機から鋼帯の尾端が抜けたとき
(d)その他のタイミング
上記(a)〜(c)のうち(a)の鋼帯の蛇行は、例えば幅計によるエッジ位置の検出又は差荷重の検出に基づき検知することができ、また、上記(c)は、例えば前段の圧延機のロードオフを検出することで検知することができ、これらの検出信号に基づいてアクチュエータ10が作動し、ロールチョック3,4間に突っ張り用ブロック9による突っ張り手段が形成される。
圧延機において蛇行が発生した場合の圧延機の変形挙動を、図13に示す圧延機モデルにて解析した結果について説明する。
図9に関して述べたように、圧延機の変形は、(1)ハウジングの変形、(2)ロールのたわみ、(3)ロールの偏平変形、(4)圧下ねじの縮み、(5)軸受部の変形、油膜厚さの変化、(6)ロッカープレート、その他の部材の変形、(7)圧下シリンダの変形及び油柱厚さの変形、からなる。
これをモデル化するため、圧延機の変形に占める割合の最も高いロール部での変形である、上記(2)のロールのたわみ及び上記(3)のロールの偏平変形をより詳細に解析するために、図13に示すようにロール軸方向のたわみと偏平分布を考慮した。その他の部位の変形である上記(1)及び(4)〜(7)については、圧延荷重との線形関係を仮定し、バネ定数Kのバネモデルと考えた。このバネ定数Kに関しては、図13に示すように(1)、(4)〜(7)の各部材の荷重−変形特性からそれぞれのバネ定数を見積もり、それらを直列に繋いだモデルとして表現することができる。ここで、k1はハウジングの変形、k2はロールの曲がり、k3はロールの扁平変形、k4は圧下ねじの縮み、k5は軸受部の変形、油膜厚さの変化、k6はロッカープレート及びその他部材の変形、k7は圧下シリンダの変形、にそれぞれ相当するバネ定数を示す。
図14に、本計算モデルによる計算例として、蛇行量yc=0mmの場合、蛇行量yc=30mmの場合における、ワークロール−バックアップロール間線圧(A)(荷重分布)、ワークロール−バックアップロール間偏平分布(B)、出側板厚分布(C)を示す。なお、計算条件は、前述の絞りトラブルの発生確率が高い一般的な薄物材の圧延を想定し、鋼帯の蛇行量yc=30mm、圧延荷重P=1000ton、ベンダ力Fb=50ton/chk、入側板厚H1=1.5mm、出側板厚H2=1.2mm、板巾b=1000mm、バネ定数K=1200ton/mmとした。例えば、蛇行するとワークロール−バックアップロール間線圧(A)は蛇行側で高くなり、よって偏平分布(B)も蛇行側で大きくなる。蛇行側のミル偏平量の拡大とともに、ロールギャップも拡大し、ウェッジ(鋼帯左右端における厚みの差)が発生する。
図15は、以上の解析より求めた上記(2)のロールのたわみ、上記(3)のロール偏平変形、上記(1),(4)〜(7)の和であるミル変形量、被圧延材厚を、鋼帯端部における座標位置について、蛇行による離れ側から寄り側を減じた左右変形量差として表現し、比較して示したものである。
図16に示すように、(1),(4)〜(7)の和はハウジング及びハウジング内部構造の変形量の左右差を示しており、鋼帯端部における左右差に及ぼす影響を評価する場合には、左右ハウジング間の間隔BLを被圧延材の板巾B相当に換算する必要がある。また、(2)ロールたわみ、(3)ロール扁平変形もロール軸方向に連続的に分布するため、これも鋼帯端部における左右差を評価する。
この場合、ロールたわみ量差、ロール扁平量差(ワークロール−バックアップロール間扁平量差)、ミル変形量差の3つを加え合わせたものが、被圧延材厚の左右差(ウェッジ)となる。これによれば、当然のことながら、蛇行量yc=0の場合は、圧延機における力の関係は左右対称であるため、左右変形量差は0となる。しかしながら、蛇行量yc=30mmが発生した場合、蛇行した側の線圧が高くなり、左右偏平量差が約24μm発生する。これにより、左右のロールギャップ差が発生し、ウェッジが約27μm発生する。
図9で説明したように、蛇行量ycは板厚が薄くなるほど大きくなり、時間の2乗に比例して発散する、つまり、ウェッジが発生→蛇行が拡大→ウェッジが拡大→蛇行が拡大、という蛇行の発散により、例えば、計算条件の場合には鋼帯尾端部が当該スタンドに達するまでには蛇行量ycは約250mmにも達し、一般的に熱間圧延機におけるサイドガイド開度は所望の板厚+30〜50mm程度であることを考慮すると、蛇行した鋼帯尾端部がサイドガイドに衝突し、絞りトラブルが発生することになる。
これに対して、図1のようにワークロール1とバックアップロール2の左右の両ロールチョック3,4間に、両ロールチョック3,4間の突っ張り手段となる剛体(突っ張り用ブロック)を介在させた場合には、ロール端部における左右ロール偏平差はほぼ半減し、これにより鋼帯のウェッジも半減できる。この場合の尾端部での蛇行量は約50mmとなり、先に述べた理由から絞りトラブルの発生を回避できることが判る。
剛体(突っ張り用ブロック)を介在させた場合でも残るウェッジについては、従来のレベリングによる蛇行制御によりカバーすることになるが、必要となるレベリング操作量は剛体(突っ張り用ブロック)を介在させない場合と比べて半減できるため、従来の蛇行制御における問題点の一つであった応答性についても大幅に改善され、絞りトラブル発生を回避することができる。
図17は、本発明による左右ロール偏平差解消の効果を示す概念図である。図17(A)のように、ワークロール−バックアップロールの左右の各ロールチョック間に剛体(突っ張り用ブロック)を介在させない場合には、ワークロールとバックアップロール間のロール偏平に左右差が生じ、その分ロールギャップ差が拡大することになる。これに対して、本発明において図17(B)に示すようにワークロール−バックアップロールの左右ロールチョック間に剛体(突っ張り用ブロック)を介在させることにより、上記ロール偏平差による左右ロールギャップ差は解消され、鋼帯の蛇行は抑制される。
このように本発明によれば、熱間圧延機のワークロールとバックアップロールの左右ロールチョック間に突っ張り手段となる剛体(突っ張り用ブロック)を介在させることで圧延機の平行剛性を向上させ、特別な制御を行うことなく熱延鋼帯のずれ量ycによる左右ロール偏平差の発生を抑止し、鋼帯の蛇行を抑えることができる。
また、このような本発明法は、圧下装置の電動スクリュー等の応答性が悪く、従来の平行剛性制御に適さない圧延機にも適用可能である。
金属材の蛇行の問題は、特に熱延鋼帯を製造するための熱間仕上圧延において大きな問題となっており、したがって、本発明は、熱延鋼帯を製造するための熱間仕上圧延機及び熱間仕上圧延工程に適用した場合に特に大きな効果を発揮する。但し、これに限定されるものではなく、例えば、冷延鋼板を製造するための冷間圧延機及び冷間圧延、厚鋼板を得るための厚板圧延機及び厚板圧延、さらには鋼板以外の金属材の圧延機及び圧延など、各種の金属材の圧延機及び圧延に適用することができる。
また、本発明を熱延鋼帯製造用の熱間仕上圧延工程に適用する場合には、仕上圧延機群のなかで特に蛇行が生じやすいのは、圧延機群後段の圧延機であることから、少なくとも全圧延機数/2の数の圧延機群後段の圧延機(例えば、圧延スタンド数が7スタンドの場合には、No.4〜7スタンド)とその圧延工程に本発明を適用することが好ましい。もちろん、全部の圧延機に本発明を適用してもよい。
[実施例1]
試験用4Hiミルにおいて、ワークロールとバックアップロールの左右の各ロールチョック間に突っ張り用ブロックを介在させたもの(本発明例)と介在させないもの(比較例)を用いて圧延を行い、両者の違いが蛇行に及ぼす影響を調査した。
室温鋼帯(板厚h=2mm、板巾b=100mm、長さL=1000mm)を初期蛇行量yc=10mmを設けて圧延荷重P=100tonにて圧延し、そのときの尾端蛇行量ycの変化を測定した。本発明例ではロールチョック間保持装置として、図5に示すような突っ張り用ブロック(300mm×200mm×高さ100mm)とアクチュエータ(スクリュー式アクチュエータ)からなるものを用いた。ガタ殺し荷重5tonの作用時からの圧縮荷重−変形特性から求めた装置剛性は約600ton/mmである。本発明例では、ロールチョック間保持装置を以下のように操作して圧延を行った。
(1)ロールチョック間保持装置の突っ張り用ブロックは、最小ストローク位置で待機させるか、若しくは圧延前のロールバランス状態から1mm退避させた位置で待機させる。このとき、被圧延材が当該スタンドに噛み込み後、圧延荷重やベンダ力の影響によってワークロール−バックアップロールチョック間が縮小するため、待機する際にとる退避距離が十分でないと、突っ張り用ブロックによる突っ張り力が作用し、圧延制御の外乱となる。
(2)被圧延材の先端が圧延機に噛み込んだ直後のタイミングで、ワークロール−バックアップロールの左右の各ロールチョック間に介在させた突っ張り用ブロックと各チョック間のガタをなくすため、ガタ殺し荷重が5ton作用するまでスクリューストロークを拡大させ(所要時間約0.5秒)、その後、被圧延材の尾端が抜けるまでセルフロックにより位置保持させる。
被圧延材の蛇行量を評価するため、被圧延材の幅中央およびワークロールの軸方向中央部にそれぞれ罫書き線を設けておき、圧延によりロール側から被圧延材側に転写した罫書き線と、元々被圧延材側に設けた罫書き線との板幅方向距離を蛇行量ycとして評価した。図18に、被圧延材の通板方向位置での蛇行量ycを示す。ここで、被圧延材の通板方向位置0は先端噛み込み時、同1000mmは尾端抜け時に相当する。図18によれば、ロールチョック間に突っ張り用ブロックを介在させない比較例の場合には、蛇行が急激に拡大していくのに対し、ロールチョック間に突っ張り用ブロックを介在させた本発明例の場合には、蛇行の拡大は比較例の10分の1以下に抑えられていることが判る。
[実施例2]
図19に示すようなレイアウトを有する熱間圧延ラインにおける仕上圧延機最終スタンドの4Hiミルにおいて、ワークロールとバックアップロールの左右の各ロールチョック間に突っ張り用ブロックを介在させたもの(本発明例)と介在させないもの(比較例)を用いて圧延を行い、両者の違いが蛇行に及ぼす影響を調査した。
調査対象は蛇行が発生しやすい薄物材の圧延サイクル(圧延本数合計75本、最終スタンド圧延機入側板厚h1=1.5〜3.0mm、出側板厚h=1.2〜2.0mm、板巾b=1000〜1500mm)とし、最終スタンド入側に設けられているx線板厚計によって被圧延材の板端を検出し、尾端蛇行量ycを測定した。
本発明例ではロールチョック間保持装置として、図6及び図7に示すような突っ張り用ブロック(300mm×200mm×高さ100mm)、アクチュエータ(スクリュー式アクチュエータ)及びこれらを収納・保持する保持フレームからなるユニットをバックアップロールに固定(ボルト止めによる固定)したものを用いた。ガタ殺し荷重5tonの作用時からの圧縮荷重−変形特性から求めた装置剛性は約600ton/mmである。本発明例では、ロールチョック間保持装置を以下のように操作して圧延を行った。
(1)蛇行量の調査対象となる薄物材(一般的に製品板厚2.0mm以下)の圧延サイクルが開始するまでは本装置を使用することはないため、図6(A)に示すように突っ張り用ブロック9の高さ(高さ寸法)を最小位置とし、突っ張り力が作用しないように十分退避させておく(本実施例においては10mm程度)。ロールチョック3,4間の間隔はワークロール1,バックアップロール2のロール径によっても変化するため、定期的に実施されるロール交換に応じて突っ張り用ブロック9の高さ(高さ寸法)の零調を実施する必要がある。本実施例においても、調査対象となる薄物材用のワークロール1が組み入れられた後、圧延を実施していない時点で、ロールチョック3,4間と突っ張り用ブロック9との隙間がなくなるまで、突っ張り用ブロックの高さ(高さ寸法)を伸長させ、アクチュエータに取り付けたエンコーダ等で0位置として記憶した。その後、ロールチョック3,4間と突っ張り用ブロック9との隙間が3mmとなるように、突っ張り用ブロック9の高さ(高さ寸法)を減少させ、この位置を待機位置とした。
(2)さきに述べたように、熱間仕上圧延機においては被圧延材の最尾端(圧延ライン上流側)が圧延機を抜けると同時に圧延による拘束がなくなるため、次スタンドにおける蛇行が顕著となる。このため、本実施例では、蛇行抑制効果を発揮させるタイミングは、蛇行拡大が顕著となる前のタイミング、具体的には装置を設置している最終スタンドの前々スタンドの圧延終了時から、前スタンドの圧延終了時までの間とした。蛇行量は最終スタンド入側に設けられているx線板厚計によって被圧延材の板端を検出し、前スタンド圧延終了直前の蛇行量yc1から最終スタンド圧延終了直前の蛇行量yc2までの蛇行拡大量Δyc(=yc2−yc1)を評価対象とした。
上述のタイミングにて図6(B)の状態となるよう、ロールチョック3,4間と突っ張り用ブロック9との隙間3mmを高さ(高さ寸法)方向の駆動速度10mm/sで除した時間0.3sだけ前のタイミングから、突っ張り用ブロック9とロールチョック間での10ton程度のガタ殺し力に相当するモータトルクが発生するまでスクリュー式アクチュエータのスクリュー軸15を駆動し、突っ張り力を発生させた。この時点で、待機位置で3mmあったロールチョック3,4間と突っ張り用ブロック9との隙間は0mmとなった。
(3)駆動(モータ)を停止した後も、スクリュー軸15及び楔体11x,11y間の摩擦によるセルフロック機能によりスクリュー軸15をそのストローク位置で保持することができ、これにより突っ張り用ブロック9を所定の高さに保持し、被圧延材尾端における蛇行抑制効果を発揮することができた。最終スタンドにおける圧延が終了した後は、ロールチョック3,4間と突っ張り用ブロック9との隙間が3mmとなる待機位置に戻り、次材の圧延時にて同様の動作を繰り返すが、本実施例では本装置の蛇行抑制効果を確認するため、圧延材一本毎に本装置の使用、不使用を繰り返す操作を行った。
図20に薄物サイクルにおける蛇行拡大量Δycを示す。図20によれば、ロールチョック間に突っ張り用ブロックを介在させない比較例の場合には、蛇行拡大量は最終スタンド出側板厚が薄くなるほど大きくなり、およそ±25mmの範囲でばらついているのに対し、ロールチョック3,4間に突っ張り用ブロックを介在させ、蛇行抑制効果を発揮させた本発明例の場合には、蛇行拡大量Δycはおよそ±5mm以内のばらつきにまで抑制できていることが判る。
1a,1b ワークロール
2a,2b バックアップロール
3a,3b,4a,4b ロールチョック
5 ロールチョック間保持装置
6 ロール支持部
7 支持手段
8 圧下手段
9 突っ張り用ブロック
10 アクチュエータ
11x,11y,11z,11z,11w 楔体
12 シリンダ本体
13 作動ロッド
14 装置本体
15 スクリュー軸
16 ユニット
17 保持フレーム
18,19 ストッパー部
110 突条
111 凹溝
112A,112B ガイド突条
113A,113B ガイド溝
170 下面
171 上面

Claims (3)

  1. ワークロールとバックアップロールの左右の各ロールチョック間に配置されることで、ワークロールのロールチョックとバックアップロールのロールチョック間の突っ張り手段として機能する部材であって、楔先端側が逆向きになるように楔の傾斜面どうしが傾斜面長手方向スライド可能に重ね合わされた複数の楔体からなり、少なくとも1つの楔体が他の楔体に対してスライド移動することにより高さを可変とした突っ張り用ブロックと、該突っ張り用ブロックを構成する少なくとも1つの楔体を他の楔体に対してスライド移動させ、且つ任意のスライド位置で保持するためのアクチュエータとを備えたロールチョック間保持装置を有し、該ロールチョック間保持装置が、圧延期間の全部ではなく、圧延期間中において蛇行抑制効果を発揮させる時にのみ突っ張り用ブロックによる突っ張り手段を形成する圧延機を用いた金属材の圧延方法であって、
    ワークロールとバックアップロールの左右の各ロールチョック間の突っ張り用ブロックを所定の高さに保持し、該突っ張り用ブロックにより、圧延時の圧延機の平行剛性を高める突っ張り手段を形成する圧延方法であり、
    圧延期間中において、前記突っ張り手段が形成されていない状態から、下記(a)〜(d)のいずれかのタイミングで前記突っ張り手段を形成することを特徴とする金属材の圧延方法。
    (a)金属材の蛇行が検知されたとき
    (b)自圧延機に金属材が噛みこみ、自圧延機の圧下荷重が制御開始されたとき
    (c)自圧延機の前段の圧延機から金属材の尾端が抜けたとき
    (d)自圧延機の前々段の圧延機から金属材の尾端が抜けたとき
  2. 圧延機が備える突っ張り用ブロックが2つの楔体からなり、一方の楔体がバックアップロールのロールチョックに固定され、他方の楔体がアクチュエータによりスライド可能であることを特徴とする請求項1に記載の金属材の圧延方法。
  3. 圧延機が熱延鋼帯製造用の熱間圧延機であることを特徴とする請求項1または2に記載の金属材の圧延方法。
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