JP2007166975A - 黒酢の製造方法、及び該方法により製造された黒酢 - Google Patents

黒酢の製造方法、及び該方法により製造された黒酢 Download PDF

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Abstract

【課題】 米や大麦由来の糖分を豊富に含む黒酢であっても、沈殿が発生しない黒酢の製造方法、及び該方法によって製造された黒酢を提供すること。
【解決手段】 米及び/又は大麦由来の糖分を8〜50重量/容量%含有する黒酢を製造するにあたり、米及び/又は大麦の糖化液と酒精発酵液とを混合して酢酸発酵させること、及び、最終的な黒酢中のシュウ酸濃度を36ppm以下、好ましくは30ppm以下とすることを特徴とする黒酢の製造方法を提供する。また、黒酢中のシュウ酸の低下方法としては、米及び/又は大麦の糖化液、又は、酢酸発酵終了後の発酵液を、攪拌しつつ保管することが有効である。そして、これらの方法によって製造されたシュウ酸塩沈殿が発生しにくく、飲用に適した黒酢を提供する。
【選択図】 なし

Description

本発明は、原料である米や大麦由来の糖分を高濃度に含有する黒酢の製造方法、及び該方法により製造された黒酢に関し、さらに詳細には、糖分を高濃度に含有しているため黒酢特有のクセのある風味が緩和されて飲用に適し、かつ、原料由来のシュウ酸に起因する沈殿が発生しない、品質の良好な黒酢の製造方法、及び該方法で製造された黒酢に関する。
近年、食酢を飲用として摂取することが広まっており、中でも米や大麦を原料として製造される黒酢はアミノ酸やミネラル等の栄養成分を多く含有しており、また、種々の健康機能が知られていることから、特に人気が高いものである。
しかしながら、従来の黒酢をそのまま水で希釈して飲用する場合は、黒酢特有のクセのある味や香りを有するために飲みにくいきらいがあった。
このような黒酢の飲みにくさを解消するために、黒酢にハチミツ等の糖分を添加して飲用する方法や、さらに酢酸発酵前の含アルコール原料液の糖分をあらかじめ10〜30%に調整し、次いで酢酸発酵を行って、酸度2%以上、糖分10〜30%、エキス分16〜40%とした、玄米などを原料とした糖分濃度を従来よりも高めた飲用酢を製造する方法(例えば、特許文献1参照)が開示されている。
糖分濃度を高めるこれらの方法のうち、前者のハチミツ等の糖分を黒酢に添加する方法は、糖分を適切に配合する手間が煩雑であり、また、甘味が遊離して感じられて味のバランスを欠くきらいのあるものになることなどから、後者のように酢酸発酵前に糖分濃度を増加させておく方法が好ましいものとされている。
後者における糖分の増加方法としては、黒酢の品質基準によれば米や大麦以外の他の糖質を含有する原料を使用することに制限があることなどから、米や大麦などの穀物原料を従来よりも多く使用せざるをえなくなる。
しかし、このように米や大麦などの穀物原料を従来よりも多く使用して黒酢を製造した場合には、黒酢において沈殿が発生しやすくなる問題が生じることが確認された。
このような沈殿発生の問題については、その問題の存在すら上記特許文献1などにおいても何ら記載がなく、従って、米や大麦などの穀物原料を従来よりも多く使用して糖分濃度を高めた黒酢を製造する場合において、沈殿を防止する方法を開発することが必要であった。
特開昭61−96981号公報
本発明の課題は、米や大麦由来の糖分を豊富に含む黒酢であっても、沈殿が発生しない黒酢の製造方法、及び該方法によって製造された黒酢を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、豊富に使用される米や大麦などの原料に由来する糖分を多く含む黒酢において発生する沈殿の原因が、該原料由来のシュウ酸であることを見出して、シュウ酸塩(シュウ酸カルシウム)の結晶沈殿の発生を防止しうる黒酢中のシュウ酸濃度を特定し、さらに原料由来のシュウ酸を該濃度以下に低下させる方法を開発して、本発明を完成した。
すなわち、本発明は以下の(1)〜(5)に関する。
(1)米及び/又は大麦由来の糖分を8〜50重量/容量%含有する黒酢を製造するにあたり、米及び/又は大麦の糖化液と酒精発酵液とを混合して酢酸発酵させること、及び、最終的な黒酢中のシュウ酸濃度を36ppm以下とすることを特徴とする黒酢の製造方法。
(2)最終的な黒酢中のシュウ酸濃度を30ppm以下とすることを特徴とする上記1に記載の黒酢の製造方法。
(3)糖化液として、シュウ酸濃度が下記の式1で与えられる値以下となるように調製した糖化液を用いることを特徴とする上記(1)に記載の黒酢の製造方法。
(式1)
糖化液のシュウ酸濃度(ppm)=33.6÷糖化液使用割合(容量部/100)
(4)糖化液として、シュウ酸濃度が下記の式2で与えられる値以下となるように調製した糖化液を用いることを特徴とする上記(2)に記載の黒酢の製造方法。
(式2)
糖化液のシュウ酸濃度(ppm)=27.8÷糖化液使用割合(容量部/100)
(5)糖化液を攪拌しつつ保管することにより、シュウ酸除去処理を行うことを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれかに記載の黒酢の製造方法。
(6)酢酸発酵終了後の発酵液を攪拌しつつ保管することにより、シュウ酸除去処理を行うことを特徴とする上記(1)〜(5)のいずれかに記載の黒酢の製造方法。
(7)上記(1)〜(6)に記載の製造方法により製造された黒酢。
本発明により、玄米または大麦などの原料由来の糖分を豊富に含みながら、シュウ酸含有量が少なくて、その結果、シュウ酸塩の結晶沈殿を生じない、水で希釈するだけで飲用に適する黒酢が提供される。
以下、本発明を詳細に説明する。
請求項1に係る本発明は、米及び/又は大麦由来の糖分を8〜50重量/容量%含有する黒酢を製造するにあたり、米及び/又は大麦の糖化液と酒精発酵液とを混合して酢酸発酵させること、及び、最終的な黒酢中のシュウ酸濃度を36ppm以下とすることを特徴とする黒酢の製造方法である。
本発明における黒酢とは、食酢品質表示基準(農林水産省告示第1821号平成16年10月7日改正参照)により定義されるものであり、米黒酢と大麦黒酢とからなる。
このうち、米黒酢については、「穀物酢のうち、原材料として米(玄米のぬか層の全部を取り除いて精白したものを除く。以下この項において同じ。)又はこれに小麦若しくは大麦を加えたもののみを使用したもので、米の使用量が穀物酢1Lにつき180g以上であって、かつ、発酵及び熟成によって褐色又は黒褐色に着色したものをいう。」と定義され、また、大麦黒酢は、「穀物酢のうち、原材料として大麦のみを使用したもので、大麦の使用量が穀物酢1Lにつき180g以上であって、かつ、発酵及び熟成によって褐色又は黒褐色に着色したものをいう。」と定義されている。
本発明で原料として用いる米とは、玄米のぬか層の全部を取り除いて精白したもの以外の米であり、具体的には、玄米ないしは玄米からぬか部分を完全に除去しないように精白した米を意味する。玄米からぬか部分を完全に除去しないように精白した米とは、実質的には玄米表面からぬか層を除去する度合(以下、精白度と称する)が約6%未満の米、すなわち精白度約6%未満の米が該当する。本発明においては、特に精白度0〜5%の米が好適に用いられる。また、上記の米は、破砕あるいは粉砕したものを用いるのが好適である。
本発明の方法において、糖化液を調製する際の上記米の使用量は、糖化液(ろ過前)に対して20〜45重量/容量%、好ましくは30〜40重量/容量%である。米の使用量が上限を超えると粘度上昇に伴い均一な糖化反応が得られないため好ましくなく、また、下限未満であると、目的とする高濃度の糖分を含有する黒酢が得られないため好ましくない。
なお、原料として後述する大麦を米と併用することもできる。このとき、大麦の使用量は、米の使用量が穀物酢1Lにつき180g以上となるように留意して調整される必要がある。
また、本発明で原料として用いる大麦とは、上記米の場合と同様に、玄大麦ないしは玄大麦のフスマ層を完全に除去しないように精白した大麦を意味する。玄大麦からフスマ部分を完全に除去しないように精白した大麦とは、実質的には精白度約30%未満の大麦が該当する。本発明においては、特に精白度0〜15%の大麦が好適に用いられる。また、上記の大麦は、破砕あるいは粉砕したものを用いるのが好適である。
大麦黒酢を製造する場合、糖化液を調製する際の上記大麦の使用量は、糖化液(ろ過前)に対して20〜45重量/容量%、好ましくは30〜40重量/容量%である。大麦の使用量が上限を超えると粘度上昇に伴い均一な糖化反応が得られないため好ましくなく、また、下限未満であると、目的とする高濃度の糖分を含有する黒酢が得られないため好ましくない。
一般に、黒酢の製造は以下の方法により行われる。
すなわち、まず上記の米及び/又は大麦を原料として、麹や糖化酵素を用いて原料中の糖質を糖化した後、ろ過などにより糖化粕などを除去した糖化液を調製する。その後、該糖化液を酵母により酒精発酵させた後、酒粕などの固形物をろ過などにより除去して、酒精発酵液を得る。さらに、得られた該酒精発酵液を含アルコール原料液として種酢と混合したものを酢酸菌により酢酸発酵させ、酢酸発酵終了後には適宜熟成を行った後、ろ過、殺菌し、壜などの容器に充填して製造される。
なお、壷などの中で、上記の糖化、酒精発酵、酢酸発酵の各工程を同時並行して行わせて製造する方法も知られている。
このような一般的な方法で黒酢の製造を行うと、原料である米及び/又は大麦由来の糖分の殆どが酒精発酵工程においてアルコールに消費されてしまうため、黒酢中の糖分濃度は一般に低く、例えば8重量/容量%以上の糖分濃度の黒酢は製造されないのが一般的である。
本発明の方法は、糖分濃度が高く、そのまま水で希釈するだけでおいしく飲用できるような黒酢を製造しようとするものであり、そのためには米や大麦などの原料由来の糖分を従来の黒酢よりも高濃度に含有させる必要がある。
そこで本発明の方法においては、酢酸発酵前の含アルコール原料液を調製する際に、一般的には米及び/又は大麦の糖化液を酒精発酵させて得られる酒精発酵液を含アルコール原料液としているところ、酒精発酵を行う前の糖化液を酒精発酵液に添加し、得られる含アルコール原料液の糖分濃度を高めて酢酸発酵を行うことによって、米及び/又は大麦由来の糖分を8〜50重量/容量%含有する、糖分濃度の高い黒酢を製造する。
このように、本発明における含アルコール原料液は、米及び/又は大麦の糖化液と、該糖化液を酒精発酵させて得られる(あるいは、上記原料について糖化および酒精発酵を同時並行させて得られる)酒精発酵液、および必要に応じて添加する水とを混合することにより調製される。なお、含アルコール原料液を調製する際の各原料の使用割合および種酢との混合割合は、得ようとする最終黒酢の糖分濃度や酸度などに応じて適宜調整することができる。
本発明における糖化液は、前記した一般的な黒酢の製造方法において用いられる糖化液と同様に調製することができる。すなわち、上記したような原料の米及び/又は大麦を上記の割合で水に懸濁させ、麹あるいは糖化酵素を加えて糖化することにより糖化液を得ることができる。
このようにして調製された糖化液の糖分濃度は10〜25重量/容量%であるので、これよりも糖分濃度の高い糖化液が必要なときは、減圧濃縮などの公知の方法により濃縮して糖分濃度を高めた糖化液(以下、濃縮糖化液と称する場合もある。)を調製して使用することも可能である。本発明において糖化液とは、このような濃縮糖化液をも包含するものである。
本発明の方法により製造される黒酢はこのようにして糖分濃度を高めたものであり、具体的な米及び/又は大麦由来の糖分濃度は8〜50重量/容量%程度、好ましくは15〜35重量/容量%程度である。
このとき、酒精発酵液の糖分は酒精発酵に使用されて殆ど含まれていないため、最終的な黒酢中の糖分の殆どは糖化液に由来する。したがって、黒酢中の糖分濃度は、上記のようにして含アルコール原料液を調製する際の糖化液の糖分濃度及びその使用比率を加減することによって調整することができる。
黒酢中の糖分濃度が8重量/容量%未満では、従来の黒酢と同様に糖分が少なく、黒酢特有のクセのある香味を和らげる効果が弱いので、そのまま水で希釈するだけでおいしく飲用することに適しておらず、好ましくない。
また、黒酢中の糖分濃度を50重量/容量%よりも高くすると、酢酸菌が生育しにくくなり、酢酸発酵がうまく実施できなくなるため、好ましくない。
なお、本発明の方法により製造される黒酢中における酢酸等の有機酸の濃度については特に制限はないが、水で希釈するだけでおいしく飲用できるという観点からは、酸度2〜6%程度であることが好ましい。なお酸度(%)は、酢酸等の有機酸の濃度を、水酸化ナトリウム溶液を用いて中和滴定し、酢酸濃度に換算して求めることができる。
さらに、本発明における糖分とは甘みを有する糖質の合計であり、具体的には、グルコース、マルトース、フラクトース、シュクロース、ソルビトール、グリセロールの濃度(重量/容量%)を合計して求めることができる。該糖質の測定は、例えば糖分析用の液体クロマトグラフィー(HPLC)を用い、下記のHPLC条件で実施することができる。
<HPLC条件>
カラム:Shodex Asahipak NH2P−50 4E(4.6mmID×250mm)(昭和電工社製)
溶離液:CHCN/HO=75/25
検出:RI検出器
流速:1.0mL/min
カラム温度:30℃
本発明は、黒酢に使用する原料の米や大麦由来の糖分を豊富に含有させようとすると原料使用量が多くなり、その結果シュウ酸濃度が高くなって、沈殿が生じてしまうという課題を解決するものである。
米や大麦のシュウ酸はぬかやフスマ部分に多くが含まれるため、かかる問題は精白米や精白大麦を使用した食酢では糖分を高くしても生じないので、黒酢において特に顕著な問題となるといえる。
本発明の方法では、米及び/又は大麦由来の糖分を8〜50重量/容量%含有する黒酢を製造するため、上記の如く、米及び/又は大麦の糖化液と酒精発酵液、及び必要に応じて添加する水とを混合して糖分濃度の高い含アルコール原料液を調製し、酢酸発酵を行う。
このようにして製造された黒酢は、シュウ酸濃度が36ppmを超えてしまうのであるが、その場合はシュウ酸塩(シュウ酸カルシウム)の沈殿が発生してしまうことが本発明によりはじめて判明した。しかし、最終的な黒酢中のシュウ酸濃度を36ppm以下、好ましくは30ppm以下まで低減させておけば、糖分が8重量/容量%以上の黒酢でもシュウ酸塩沈殿は発生しないことが分かった。
なお、シュウ酸濃度の測定は、例えば有機酸分析用の液体クロマトグラフィー(HPLC)を用い、下記のHPLC条件で実施することができる。
<HPLC条件>
カラム:Shodex KC811 (8mmID×300mm)(昭和電工社製)
溶離液:0.1%リン酸溶液
検出:UV検出器210nm
流速:1.0mL/min
カラム温度:50℃
本発明の方法においては、最終的な黒酢中のシュウ酸濃度を上記の値以下に低下させるために、シュウ酸除去処理を行うことが好ましい。シュウ酸除去処理方法としては特に制限されないが、具体例としては、静置状態で保管して生じるシュウ酸塩沈殿をろ別する方法、攪拌状態で保管して生じるシュウ酸塩沈殿をろ別する方法、陰イオン交換樹脂による処理によりシュウ酸を吸着除去する方法、シュウ酸を分解酵素で処理する方法、カルシウムを添加して生じるシュウ酸塩沈殿をろ別する方法、カルシウムを充填したカラムを通してシュウ酸を吸着除去する方法等が挙げられる。
この中で、静置状態で保管して生じるシュウ酸塩沈殿をろ別する方法は簡単に実施可能である点で優れているが、シュウ酸を目的濃度までに低減するのに時間が長くかかり、必要な保管期間の予測がしにくいきらいがあることなどから、より好ましいのは、請求項5及び6に記載したように攪拌状態で保管する方法である。
攪拌状態で保管する方法は、攪拌することによりシュウ酸塩(シュウ酸カルシウム)の結晶化を促して、短期間でシュウ酸塩を析出させることができる。当該方法における攪拌条件には特に制限はないが、例えば、攪拌翼径と保管容器内径の比率は概ね0.2〜0.9くらいが好ましい。また、攪拌翼の取り付け高さと液高の好ましい比率は概ね0.05〜0.45であり、攪拌スピードは概ね10rpmから600rpmであるのが好ましい。攪拌は連続的でも断続的でもよいが、断続的攪拌の場合は、攪拌する合計時間は攪拌を停止している合計時間の1/10以上であることが好ましい。
このような処理を加えた結果、一旦シュウ酸が上記の目的とする濃度以下になれば、その後は攪拌を止めて静置しても良いし、さらに攪拌を継続しても良い。攪拌中の保管温度は0〜30℃程度が好ましく、0〜20℃がさらに好ましい。
黒酢は含アルコール原料液に酢酸菌を加え、酢酸発酵して製造されるが、本発明では黒酢に多くの糖分を含ませるために、含アルコール原料液の糖分を高くすることが必要である。
そこで本発明の方法においては、上述の通り、米及び/又は大麦の糖化液を酒精発酵させて得られる(あるいは、上記原料について糖化および酒精発酵を同時並行させて得られる)酒精発酵液と、酒精発酵前の糖化液、及び必要に応じて添加する水を混合して、糖分濃度の高い含アルコール原料液を調製する。
本発明の方法において、上記のシュウ酸除去処理を行う時期については特に制限は無く、糖化液や、酢酸発酵前の含アルコール原料液、並びに、請求項5に記載した酢酸発酵後の酢酸発酵液など、どの段階で行うこともできる。
しかし、米及び/又は大麦の糖化液中のシュウ酸濃度が高く、これらに由来するシュウ酸が最終的な黒酢のシュウ酸含有量の大部分を占めることが判明したことから、請求項6に記載したように、予め米及び/又は大麦の糖化液のシュウ酸濃度を低減させておくことが好ましい。
その理由としては、高濃度のシュウ酸を含有するものにシュウ酸除去処理を加える方が短期間で処理できることや、処理する液量も少なくて済むためである。
シュウ酸除去処理を糖化液に対して行う場合に、糖化液中のシュウ酸濃度を低下させる目標値は、最終的な黒酢中のシュウ酸濃度が36ppm以下となるように、さらに好ましくは、請求項2に記載した如く30ppm以下となるように、含アルコール原料液を調製する際の該糖化液の使用割合を考慮した計算によって求めることができる。
この場合、本発明の黒酢の製造に用いられる酒精発酵液や種酢は殆どシュウ酸を含有しておらず、本発明の方法により得られる黒酢中のシュウ酸の殆どが糖化液に由来することが確認されている。すなわち、酒精発酵液のシュウ酸濃度は酒精発酵中に減少して、非常に低いレベルとなり、例えば、シュウ酸濃度が90ppm程度である糖化液を酒精発酵させた後にはシュウ酸濃度が8ppm程度となるのである。また、酒精発酵液を希釈して酢酸発酵させて製造される種酢におけるシュウ酸濃度は、例えば、5ppm程度である。
本発明の方法により得られる糖分濃度が高い黒酢は、このようなシュウ酸濃度が低い酒精発酵液や種酢と、糖化液を配合して酢酸発酵することにより製造されるため、最終的な黒酢中のシュウ酸のほとんどは糖化液に由来することになるのである。
したがって、例えば、シュウ酸濃度が36ppm以下の黒酢を調製しようとする際には、請求項3に記載したように、糖化液のシュウ酸濃度を、下記の式1に示す計算式で算出される値以下になるようにすれば良い。
(式1)
糖化液のシュウ酸濃度(ppm)=33.6÷糖化液使用割合(容量部/100)
式中、糖化液使用割合とは、含アルコール原料液及び種酢の合計に対する割合を指す。
また同様に、シュウ酸濃度が30ppm以下の黒酢を調製しようとする場合には、請求項4に記載したように、糖化液のシュウ酸濃度を、下記の式2に示す計算式で算出される値以下になるようにすれば良い。
(式2)
糖化液のシュウ酸濃度(ppm)=27.8÷糖化液使用割合(容量部/100)
式中、糖化液使用割合とは、含アルコール原料液及び種酢の合計に対する割合を指す。
なお、上記のようにシュウ酸濃度を低下させた糖化液は、含アルコール原料液を調製する際に用いるだけでなく、これを酒精発酵させて酒精発酵液を得るために用いることも、もちろん可能である。
このようにして製造された請求項7に係る本発明の黒酢は、原料の米及び/又は大麦を多く使用して、原料由来の糖分を8〜50重量/容量%含有するにも係わらず、シュウ酸の濃度が36ppm以下、好ましくは30ppm以下と低く抑えられている。その結果、シュウ酸塩に起因する沈殿の発生を防止することができ、しかも、糖分濃度が高いために黒酢特有のクセのある風味が和らげられて飲用に適した黒酢である。
以下に、試験例及び実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<試験例1> 沈殿が発生しない黒酢中のシュウ酸濃度の決定
1.米糖化液及び濃縮米糖化液の調製
粉砕した米(精白度5%)6Kgを全容量20リッターになるように水に懸濁させ、液化型アミラーゼ製剤(クライスターゼT−5:大和化成社製)20gを加え、攪拌しながら90℃で90分間保持して液化させた。液化後、120℃で20分間加熱して液化酵素を失活させ、さらに58℃に冷却した後、糖化型アミラーゼ製剤(スミチーム:新日本化学社製)40g及びプロテアーゼ製剤(スミチームLP −50:新日本化学社製)10gを加えて、さらに58℃で18時間糖化処理を行い、その後、圧搾ろ過して米糖化液を得た。この米糖化液の糖分濃度は20重量/容量%であった。またこの米糖化液のシュウ酸濃度は92ppmであった。
さらに、上記米糖化液を減圧下濃縮して、糖分60重量/容量%の濃縮米糖化液を調製した。この米糖化液のシュウ酸濃度は150ppmであった。
なお、糖分濃度の測定は、後述の方法によって行った。
2.米酒精発酵液の調製
米(精白度5%)を破砕したものを6Kg、粉砕した米麹(精白度5%の米を定法に従い常圧で蒸煮後冷却し、種麹菌アスペルギルス・オリゼーを接種後、30℃で3日間培養し、乾燥させたもの)1Kg、液化型アミラーゼ製剤(クライスターゼT−5:大和化成社製)20g、糖化型アミラーゼ製剤(スミチーム:新日本化学社製)20g、及びプロテアーゼ製剤(スミチームLP−50:新日本化学社製)40gを、全容量20リッターになるように水に懸濁し、酵母(サッカロミセス・セレビシエ(オリエンタル酵母工業社製))25gを添加して、30℃で5日間酒精発酵し、ろ過して、米酒精発酵液を得た。この米酒精発酵液のアルコール濃度は15容量/容量%であり、シュウ酸濃度は8ppmであった。
3.米黒酢の調製
表1に示すように、上記の米糖化液又は濃縮米糖化液、及び米酒精発酵液を、水と適宜混合して調製した含アルコール原料液(アルコール濃度2.5%)70容量部と、種菌液(種酢)30容量部(深部発酵槽で、上記の米酒精発酵液を用いて、30℃、500rpm、0.2vvmの条件で、酸度7.5重量/容量%及びアルコール濃度0.4容量/容量%で旺盛に連続酢酸発酵を継続している酢酸菌アセトバクター・アセチを含む発酵液)を混合し、アルコール濃度0.3容量/容量%程度になるまで、深部発酵法(30℃、500rpm、0.2vvm)で酢酸発酵して、酢酸発酵終了後の発酵液を得た。なお、種酢のシュウ酸濃度は5ppmであった。その後、約3ヶ月間熟成させ、熟成終了後にろ過し、さらに壜に充填して加熱殺菌後、密閉して黒酢を得た。
得られた黒酢について、糖分とシュウ酸の濃度を測定し、冷蔵庫(5℃)に1ヶ月間保管してシュウ酸塩の沈殿が生じるかどうかを調べた。
なお、糖分濃度は、糖分析用の液体クロマトグラフィー(HPLC)を用い、下記のHPLC条件で実施して得られたグルコース、マルトース、フラクトース、シュクロース、ソルビトール、グリセロールの濃度(重量/容量%)を合計して求めた。
<HPLC条件>
カラム:Shodex Asahipak NH2P−50 4E(4.6mmID×250mm、昭和電工社製)
溶離液:CHCN/HO=75/25
検出:RI検出器
流速:1.0mL/min
カラム温度:30℃
また、シュウ酸濃度は有機酸分析用の液体クロマトグラフィー(HPLC)を用い、下記のHPLC条件で分析して求めた。
<HPLC条件>
カラム:Shodex KC811 (8mmID×300mm、昭和電工社製)
溶離液:0.1%リン酸溶液
検出:UV検出器210nm
流速:1.0mL/min
カラム温度:50℃
結果を表2に示したが、同表中、シュウ酸塩沈殿の発生状況は、−:なし、±:わずかに有り、+:沈殿が目立ち好ましくない、++:沈殿が非常に目立ち好ましくない、を示す。
Figure 2007166975

単位は容量部
Figure 2007166975
以上の結果より、黒酢中のシュウ酸濃度が38ppm以上の場合はビン詰めした黒酢の保管中にシュウ酸塩沈殿が生じる悪影響があることが分かった。しかし、シュウ酸濃度を36ppm以下とすればシュウ酸塩の沈殿はわずかに生じたもののほとんど目立たなかった。さらに、シュウ酸濃度が30ppm以下の場合は、シュウ酸塩の沈殿は全く認められなかった。
さらに、上記の試験結果について以下の解析を行った。
即ち、黒酢のシュウ酸濃度(ppm)をaとし、糖化液のシュウ酸濃度(ppm)をbとし、含アルコール原料液及び種酢の合計に対する糖化液の使用割合(容量部/100)をcとして、表2に示した試験区1〜6の結果を、aと(b×c)との関係でグラフ化すると、図1に示すような関係が認められることが分かった。
図1の結果から、aと(b×c)との関係について最小二乗法による近似式を求めると、以下の式3が得られた。
(式3)
a=1.0312(b×c)+1.3421
この結果から、黒酢中のシュウ酸のその殆どが糖化液に由来しており、黒酢のシュウ酸濃度と糖化液の使用割合とがほぼ比例関係にあること、すなわち、黒酢中のシュウ酸濃度は糖化液のシュウ酸濃度とその使用割合で決まることが確認された。
<試験例2> シュウ酸除去処理方法
試験例1で調製した濃縮米糖化液30容量部と米酒精発酵液14容量部、及び水16容量部とで調製した含アルコール原料液(アルコール濃度2.5%)70容量部と、種菌液(試験例1と同様に調製したもの)30容量部を混合し、試験例1と同様にして、アルコール濃度0.3容量/容量%程度になるまで深部発酵法(30℃、500rpm、0.2vvm)で酢酸発酵して、酢酸発酵終了後の発酵液を得た。
得られた該発酵液について、表3に示す保管期間の間、保管して該発酵液中のシュウ酸の濃度変化を調べた。
温度15℃で静置して保管した場合(静置保管)、及び、温度15℃で攪拌(直径25cmの円筒容器に発酵液を入れ、直径6cmの攪拌翼で90rpmで連続攪拌)しつつ保管した場合(攪拌保管)について、発酵液中のシュウ酸濃度(ppm)を測定し、シュウ酸濃度を低減させる効果を比較した。なお、シュウ酸濃度は試験例1と同様にして測定した。結果を表3にまとめた。
Figure 2007166975
以上の結果より、静置保管と攪拌保管の両方の場合で発酵液中のシュウ酸濃度は低下するが、静置保管した場合のシュウ酸濃度の低下は比較的遅く、かつ、100日間の保管でもシュウ酸沈殿の発生を防止できる36ppm以下のシュウ酸濃度にはならなかった。
これに対して、攪拌保管の場合は、14日間の比較的短期間の保管でもシュウ酸濃度は35ppmとなり、さらに30日間の保管では30ppmとなって、十分にシュウ酸塩沈殿を防止できるシュウ酸濃度にまで低下させることができたことから、攪拌を加えて保管することによって効率的かつ効果的にシュウ酸濃度を低下させうることが確認できた。
<試験例3> シュウ酸除去処理を行う時期
1.濃縮米糖化液の調製
米(精白度5%)を粉砕したもの7Kgを、全容量20リッターになるように水に懸濁させ、液化型アミラーゼ製剤(クライスターゼT−5:大和化成社製)20gを加え、攪拌しながら90℃で90分間保持して液化させた。次いでこの液を加圧下120℃で20分間加熱して酵素を失活させ、58℃に冷却し、糖化型アミラーゼ製剤(スミチーム:新日本化学社製)40gおよびプロテアーゼ製剤(スミチームLP−50:新日本化学社製)10gを加えて、58℃で18時間糖化処理を行い、その後圧搾ろ過して、米糖化液を得た。
この米糖化液の糖分濃度は24重量/容量%であった。その後、この米糖化液を減圧濃縮して、糖分濃度49重量/容量%の濃縮米糖化液を調製した。該濃縮糖化液のシュウ酸濃度は140ppmであった。
さらに得られた該濃縮米糖化液を、試験例2と同様にして、4日間攪拌保管してシュウ酸を75ppmにまで低下させたシュウ酸低下濃縮糖化液を調製した。
なお、糖分濃度、シュウ酸濃度の測定は試験例1に準じた。
2.米酒精発酵液の調製
米(精白度5%)を粉砕したもの6Kg、粉砕した米麹(試験例1と同様に調製したもの)1Kg、液化型アミラーゼ製剤(クライスターゼT−5:大和化成社製)20g、糖化型アミラーゼ製剤(スミチーム:新日本化学社製)20g、及びプロテアーゼ製剤(スミチームLP−50:新日本化学社製)40gを、全容量20リッターになるように水に懸濁し、酵母(サッカロミセス・セレビシエ (オリエンタル酵母工業社製))25gを添加して、30℃で5日間酒精発酵し、ろ過して、米酒精発酵液を得た。この米酒精発酵液のアルコール濃度は14.9容量/容量%であり、シュウ酸濃度は8ppmであった。
3.米黒酢の調製
上記のシュウ酸低下濃縮米糖化液36容量部と米酒精発酵液14容量部、及び水20容量部を混合して調製した含アルコール原料液(アルコール濃度2.5%)70容量部と、種菌液(試験例1と同様に調製したもの)30容量部を混合し、アルコール濃度0.3容量/容量%程度になるまで、深部発酵法(30℃、500rpm、0.2vvm)で酢酸発酵して、酢酸発酵終了後の発酵液(酢酸発酵液A)を得た。該酢酸発酵液Aは、酸度4.5%でアルコール濃度が0.3容量/容量%であり、糖分濃度は16重量/容量%で、シュウ酸濃度は24ppmであった。
一方、上記のシュウ酸低下濃縮米糖化液の代わりに、濃縮米糖化液を用いる以外は上記と同様にして酢酸発酵終了後の発酵液(酢酸発酵液B)を得た。該酢酸発酵液Bは、酸度4.5%でアルコール濃度が0.35容量/容量%であり、糖分濃度は16重量/容量%で、シュウ酸濃度は50ppmであった。そこで、該酢酸発酵液Bを、試験例2と同様にして、14日間攪拌保管し、最終的に34ppmのシュウ酸濃度の酢酸発酵液を得た。
上記で調製された酢酸発酵液を、ろ過後、壜に充填して加熱殺菌した後、密閉して得た2種類の米黒酢は、3ヶ月間冷蔵保管(5℃)してもシュウ酸塩の白色沈殿の発生はどちらも認められなかった。
そこで、上記の酢酸発酵液A及び同Bについて、シュウ酸除去処理に要した保管期間や、最終的な米黒酢中のシュウ酸濃度について比較した結果を表4に示した。
Figure 2007166975
以上の結果、シュウ酸除去処理を濃縮糖化液段階で実施した方が、シュウ酸除去処理に要する攪拌保管期間が4日間と非常に短期間で済み、かつ、米黒酢にした段階でのシュウ酸濃度も24ppmと、酢酸発酵液段階でシュウ酸除去処理を実施する場合に比較して、短期間で、しかもより低濃度のシュウ酸濃度にまで、低減させえたことから、糖化液段階でシュウ酸除去処理を実施する方が、優れていることが確認できた。
ここで、試験例1で求めた黒酢のシュウ酸濃度と糖化液のシュウ酸濃度の関係式(式3)を利用すれば、黒酢中のシュウ酸濃度を特定値以下となるように製造するためには糖化液のシュウ酸濃度をどの程度の値以下に低下させれば良いかを設定可能であると期待できるので、以下の解析を行った。
すなわち、黒酢のシュウ酸濃度(ppm)をaとし、糖化液のシュウ酸濃度(ppm)をb、含アルコール原料液及び種酢の合計に対する糖化液の使用割合(容量部/100)をcとして、aと(b×c)との相関について求めた近似式は、以下の式3であった。
(式3)
a=1.0312(b×c)+1.3421
この式3を、変形すると以下の式4が得られる。
(式4)
b=(a−1.3421)÷1.0312÷c
ここで、例えば、シュウ酸濃度が36ppm以下の黒酢を調製しようとする際には、糖化液のシュウ酸濃度をどの程度の値まで低下させておけば良いかを算出するには、上記式4においてaを36とすればよく、その結果、以下の式1が得られる。
(式1)
糖化液のシュウ酸濃度(ppm)=33.6÷糖化液使用割合(容量部/100)
式中、糖化液使用割合とは、含アルコール原料液及び種酢の合計に対する割合を指す。
同様に、上記式4において、aを30とすれば、シュウ酸濃度が30ppm以下の黒酢を調製しようとする際の糖化液のシュウ酸濃度をどの程度の値まで低下させておけば良いかを求めることができ、その結果は以下の式2となることが分かる。
(式2)
糖化液のシュウ酸濃度(ppm)=27.8÷糖化液使用割合(容量部/100)
式中、糖化液使用割合とは、含アルコール原料液及び種酢の合計に対する割合を指す。
以上の如く、黒酢中のシュウ酸のその殆どが糖化液に由来しており、黒酢のシュウ酸濃度と含アルコール原料液及び種酢の合計に対する糖化液の使用割合とがほぼ比例関係にあることから、例えば、シュウ酸濃度が36ppm以下の黒酢を調製しようとする際には、糖化液のシュウ酸濃度は上記式1で求められる値以下になるようにすれば良いことが確認された。また、同様にシュウ酸濃度が30ppm以下の黒酢を調製しようとする際には、糖化液のシュウ酸濃度は上記式2で求められる値以下になるようにすれば良いことが確認された。
<実施例1>
1.濃縮米糖化液の調製
米(精白度5%)を粉砕したもの7Kgを、全容量20リッターになるように水に懸濁させ、液化型アミラーゼ製剤(クライスターゼT−5:大和化成社製)20gを加え、攪拌しながら90℃で90分間保持して液化させた。次いでこの液を加圧下120℃で20分間加熱して酵素を失活させ、58℃に冷却し、糖化型アミラーゼ製剤(スミチーム:新日本化学社製)40gおよびプロテアーゼ製剤(スミチームLP−50:新日本化学社製)10gを加えて、58℃で18時間糖化処理を行い、その後圧搾ろ過して、米糖化液を得た。
この米糖化液の糖分は24重量/容量%であった。その後、この米糖化液を減圧下濃縮して、糖分濃度50重量/容量%の濃縮米糖化液を調製し、さらに得られた濃縮米糖化液を試験例2と同様にして5日間攪拌保管してシュウ酸を60ppmにまで低下させた。
なお、本実施例において糖分濃度、シュウ酸濃度の測定は試験例1に準じた。
2.米酒精発酵液の調製
米(精白度5%)を粉砕したもの6Kg、粉砕した米麹(試験例1と同様に調製したもの)1Kg、液化型アミラーゼ製剤(クライスターゼT−5:大和化成社製)20g、糖化型アミラーゼ製剤(スミチーム:新日本化学社製)20g、及びプロテアーゼ製剤(スミチームLP−50:新日本化学社製)40gを、全容量20リッターになるように水に懸濁し、酵母(サッカロミセス・セレビシエ(オリエンタル酵母工業社製))25gを添加して、30℃で5日間酒精発酵し、ろ過して、米酒精発酵液を得た。この米酒精発酵液のアルコール濃度は15容量/容量%であった。
3.米黒酢の調製
上記の濃縮米糖化液36容量部と米酒精発酵液14容量部、及び水20容量部を混合して調製した含アルコール原料液(アルコール濃度2.5%)70容量部と、種菌液(試験例1と同様に調製したもの)30容量部を混合し、アルコール濃度0.3容量/容量%程度になるまで、深部発酵法(30℃、500rpm、0.2vvm)で酢酸発酵して酢酸発酵終了後の発酵液を得た。該発酵液は、酸度4.5%でアルコール濃度が0.3容量/容量%であり、糖分濃度は18重量/容量%で、シュウ酸濃度は24ppmであった。
その後、該発酵液を、ろ過後、壜に充填して加熱殺菌した後、密閉して米黒酢を得た。この米黒酢は3ヶ月間冷蔵保管(5℃)してもシュウ酸塩の白色沈殿の発生は認められなかった。また、この米黒酢は水で希釈するだけでおいしく飲用することができた。
<実施例2>
1.濃縮大麦糖化液の作製
粉砕した玄大麦7Kgを全容量20リッターになるように水に懸濁させ、液化型アミラーゼ製剤(クライスターゼT−5:大和化成社製)20gを加え、攪拌しながら90℃で90分間保持して液化させた。次いでこの液を加圧下120℃で20分間加熱して酵素を失活させ、58℃に冷却し、糖化型アミラーゼ製剤(スミチーム:新日本化学社製)40gおよびプロテアーゼ製剤(スミチームLP−50:新日本化学社製)10gを加えて58℃で18時間糖化処理を行い、その後圧搾ろ過して、大麦糖化液を得た。その後、該大麦糖化液を減圧濃縮して、濃縮大麦糖化液を得た。
この濃縮大麦糖化液の糖分濃度は50重量/容量%で、シュウ酸濃度は168ppmであった。この濃縮糖化液を冷蔵庫(4℃)で1ヶ月間静置保管してシュウ酸濃度を低減させた。保管後のシュウ酸濃度は55ppmであった。
2.大麦酒精発酵液の調製
蒸煮した大麦(精白度10%)7Kg、液化型アミラーゼ製剤(クライスターゼT−5:大和化成社製)20g、糖化型アミラーゼ製剤(スミチーム:新日本化学社製)20gおよびプロテアーゼ製剤(スミチームLP−50:新日本化学社製)40gを全容量20リッターになるように水に懸濁し、酵母(サッカロミセス・セレビシエ (オリエンタル酵母工業社製))25gを添加して、30℃で5日間酒精発酵し、ろ過して、大麦酒精発酵液を得た。この大麦酒精発酵液のアルコール濃度は14.2容量/容量%であった。
3.大麦黒酢の調製
濃縮大麦糖化液45容量部、大麦酒精発酵液18容量部、及び水7容量部を混合し、含アルコール原料液(アルコール濃度2.5%)を調製した。その後、種菌液(試験例1と同様にして調製したもの)30容量部に対して、含アルコール原料液70容量部を添加してアルコール濃度0.3容量/容量%程度になるまで深部発酵法(30℃、500rpm、0.2vvm)で酢酸発酵して、発酵終了後の発酵液を得た。
得られた発酵液は、酸度4.5%でアルコール濃度0.3容量/容量%、糖分濃度は22重量/容量%でシュウ酸濃度は25ppmであった。該発酵液を、ろ過後、壜に充填して加熱殺菌した後、密閉して大麦黒酢を得た。この大麦黒酢は3ヶ月冷蔵保管(5℃)してもシュウ酸塩の白色沈殿の発生を認めなかった。また、この大麦黒酢は水で希釈するだけでおいしく飲用することができた。
なお、本実施例において糖分濃度、シュウ酸濃度の測定は試験例1に準じた。
<実施例3>
米(精白度5%)を粉砕したもの7Kgを全容量20リッターになるように水に懸濁し、液化型アミラーゼ製剤(クライスターゼT−5:大和化成社製)20gを加え、攪拌しながら90℃で90分間保持して液化させた。次いでこの液を120℃で20分間加熱して酵素を失活させ、58℃に冷却し、糖化型アミラーゼ製剤(スミチーム:新日本化学社製)40g及びプロテアーゼ製剤(スミチームLP−50:新日本化学社製)10gを加えて58℃で18時間糖化処理を行い、その後圧搾ろ過して、米糖化液を得た。この米糖化液の糖分は24重量/容量%であった。
また、米(精白度5%)を粉砕したもの6Kg、粉砕した米麹(試験例1と同様に調製したもの)1Kg、液化型アミラーゼ製剤(クライスターゼT−5:大和化成社製)20g、糖化型アミラーゼ製剤(スミチーム:新日本化学社製)20g、及びプロテアーゼ製剤(スミチームLP−50:新日本化学社製)40gを、全容量20リッターになるように水に懸濁し、酵母(サッカロミセス・セレビシエ(オリエンタル酵母工業社製))25gを添加して、30℃で5日間酒精発酵し、ろ過して、米酒精発酵液を得た。この米酒精発酵液のアルコール濃度は14.9容量/容量%であった。
この米糖化液33容量部、米酒精発酵液25容量部に種酢(酢酸酸度7.5%で糖分は0%の玄米酢酸発酵液)25容量部と水17容量部を加え、酢酸菌膜(食酢の静置発酵生産を継続しているものから採取した。)を、発酵液表面積の約30%程度移植し、30℃で2週間の静置発酵を行い、発酵終了後に酢酸菌をろ別して、酸度5%でアルコール濃度0.4容量/容量%の発酵液を得た。
この発酵液は、糖分8重量/容量%でシュウ酸濃度42ppmであった。この発酵液に陰イオン交換樹脂(ダイヤイオンWA21J、三菱化学社製)を0.3重量/容量%混合し、3時間攪拌後、該陰イオン交換樹脂をろ別して、壜に充填して加熱殺菌後、密閉して米黒酢を製造した。
その米黒酢のシュウ酸濃度は23ppmであり、冷蔵(5℃)で6ヶ月間保管後でもシュウ酸塩沈殿を生じず、品質上好ましいものであり、また飲用に適したものであった。
なお、本実施例において糖分濃度、シュウ酸濃度の測定は試験例1に準じた。
試験例1における、黒酢のシュウ酸濃度(ppm)(a)と、糖化液のシュウ酸濃度(ppm)(b)及び糖化液の使用割合(容量部/100)(c)との関係を示すグラフである。

Claims (7)

  1. 米及び/又は大麦由来の糖分を8〜50重量/容量%含有する黒酢を製造するにあたり、米及び/又は大麦の糖化液と酒精発酵液とを混合して酢酸発酵させること、及び、最終的な黒酢中のシュウ酸濃度を36ppm以下とすることを特徴とする黒酢の製造方法。
  2. 最終的な黒酢中のシュウ酸濃度を30ppm以下とすることを特徴とする請求項1に記載の黒酢の製造方法。
  3. 糖化液として、シュウ酸濃度が下記の式1で与えられる値以下となるように調製した糖化液を用いることを特徴とする請求項1に記載の黒酢の製造方法。
    (式1)
    糖化液のシュウ酸濃度(ppm)=33.6÷糖化液使用割合(容量部/100)
  4. 糖化液として、シュウ酸濃度が下記の式2で与えられる値以下となるように調製した糖化液を用いることを特徴とする請求項2に記載の黒酢の製造方法。
    (式2)
    糖化液のシュウ酸濃度(ppm)=27.8÷糖化液使用割合(容量部/100)
  5. 糖化液を攪拌しつつ保管することにより、シュウ酸除去処理を行うことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の黒酢の製造方法。
  6. 酢酸発酵終了後の発酵液を攪拌しつつ保管することにより、シュウ酸除去処理を行うことを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載の黒酢の製造方法。
  7. 請求項1〜請求項6に記載の製造方法により製造された黒酢。

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