JP2007165565A - 多層セラミック基板の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 収縮抑制用グリーンシートの焼成物を速やかに剥離除去可能とし、残渣の残存を解消し得る多層セラミック基板の製造方法を提供する。
【解決手段】 複数の基板用グリーンシート1a〜1fを積層し、積層された基板用グリーンシートの積層体1の両面に炭酸カルシウムを含む下地層3,4を介在させ、この上に収縮抑制用グリーンシート5,6を配して焼成する。炭酸カルシウムを含む下地層3,4は、焼成の際に熱分解し、その上に形成された収縮抑制用グリーンシート5,6の焼成物の剥離を促進する。
【選択図】 図1
【解決手段】 複数の基板用グリーンシート1a〜1fを積層し、積層された基板用グリーンシートの積層体1の両面に炭酸カルシウムを含む下地層3,4を介在させ、この上に収縮抑制用グリーンシート5,6を配して焼成する。炭酸カルシウムを含む下地層3,4は、焼成の際に熱分解し、その上に形成された収縮抑制用グリーンシート5,6の焼成物の剥離を促進する。
【選択図】 図1
Description
本発明は、多層セラミック基板の製造方法に関するものであり、特に、無収縮焼成方法の改良に関する。
電子機器等の分野においては、電子デバイスを実装するための基板が広く用いられているが、近年、電子機器の小型軽量化や多機能化等の要望に応え、且つ高信頼性を有する基板として、多層セラミック基板が提案され実用化されている。多層セラミック基板は、複数のセラミック層を積層することにより構成され、各セラミック層に配線導体(導体パターン)や電子素子等を一体に作り込むことで、高密度実装が可能となっている。
前記多層セラミック基板は、複数のグリーンシートを積層して積層体を形成した後、これを焼成することにより形成される。そして、前記グリーンシートは、この焼成工程における焼結に伴って必ず収縮し、多層セラミック基板の寸法精度を低下する大きな要因となっている。具体的には、前記収縮に伴って収縮バラツキが発生し、最終的に得られる多層セラミック基板において、寸法精度は0.5%程度に留まっている。
このような状況から、多層セラミック基板の焼成工程において、グリーンシートの面内方向の収縮を抑制し、厚さ方向にのみ収縮させる、いわゆる無収縮焼成方法が提案されている(例えば、特許文献1や特許文献2等を参照)。これらの特許文献にも記載されるように、前記焼成温度でも収縮しないシートをグリーンシートの積層体に貼り付け、この状態で焼成を行うと、前記面内方向の収縮が抑制され、厚さ方向にのみ収縮する。その結果、多層セラミック基板の面内方向の寸法精度を0.05%程度にまで改善することが可能である。
特開昭62−260777号公報
特開平10−75060号公報
ところで、多層セラミック基板においては、通常、これを構成する各セラミック層に配線パターンや接続電極、ビアホール等、多彩な形状の導体パターンが形成されており、各セラミック層に設置されている電極間の導通を得たり、回路を構成する各部品間を接続する等の役割を果たしている。
前述のように表面に導体パターンが形成された多層セラミック基板を無収縮焼成方法を用いて作製する場合、収縮抑制用グリーンシートの焼成物が残渣として表面に残存することがあり、導通信頼性等の点で問題が生ずる可能性がある。収縮抑制用グリーンシートの焼成物は絶縁物であり、例えばこれが接続電極上等に残存すると、接続抵抗が高くなったり、極端な場合には電気的導通が不可能になることも想定される。
前記収縮抑制用グリーンシートの焼成物の残存を解消するためには、前記焼成物を剥離した後、多層セラミック基板の表面を洗浄すればよいが、前記残渣が多層セラミック基板の表面に強固に結合していると、洗浄に長時間を要する等、生産性の低下を招くおそれがある。
本発明は、このような従来の課題に鑑みて提案されたものであり、収縮抑制用グリーンシートの焼成物を速やかに剥離除去することができ、残渣の残存を解消し得る新規な多層セラミック基板の製造方法を提供することを目的とする。また、本発明は、前記残渣の解消により、例えば接続信頼性を確保することが可能な多層セラミック基板の製造方法を提供することを目的とする。
前述の目的を達成するために、本発明の多層セラミック基板の製造方法は、複数の基板用グリーンシートを積層し、積層された基板用グリーンシートの少なくとも一方の面に収縮抑制用グリーンシートを配して焼成する多層セラミック基板の製造方法であって、前記収縮抑制用グリーンシートと基板用グリーンシートの間に炭酸カルシウムを含む下地層を介在させ、前記焼成を行うことを特徴とする。
基板用グリーンシートの両側に収縮抑制用グリーンシートを重ねて焼成を行うと、基本的に面方向に収縮することができず、厚さ方向にのみ収縮する。その結果、面内方向での寸法精度が確保される。このとき、収縮抑制用グリーンシートが基板用グリーンシートと直接接していると、収縮抑制用グリーンシートの焼成物が焼成後の多層セラミック基板の表面に残存するおそれがある。そこで、本発明においては、基板用グリーンシートと収縮抑制用グリーンシートの間に炭酸カルシウムを含有する下地層を介在させることで、前記収縮抑制用グリーンシートの焼成物の残存を解消するようにしている。
炭酸カルシウムは焼成により熱分解し、例えば焼成後の多層セラミック基板がガラスセラミックにより構成され、収縮抑制用グリーンシートがトリジマイトや石英で構成される場合、収縮抑制用グリーンシートの焼成物と一体化し、多層セラミック基板表面から速やかに剥離される。焼成後の多層セラミック基板がガラスセラミックにより構成され、収縮抑制用グリーンシートが例えばアルミナ(酸化アルミニウム)やジルコニア(酸化ジルコニウム)を含むセラミック材料で構成される場合には、前記熱分解により生成する酸化カルシウム(CaO)が吸湿により水酸化カルシウムに変化することで、経時とともに収縮抑制用グリーンシートの焼成物を多層セラミック基板の表面から浮き上がらせ、多層セラミック基板表面から剥離されるように作用する。
前述のように、本発明の製造方法においては、基板用グリーンシートと収縮抑制用グリーンシートの間に炭酸カルシウムを含む下地層を介在させているので、収縮抑制用グリーンシートの焼成物を速やかに剥離除去することができ、残渣の残存を解消することが可能である。したがって、接続信頼性に優れた高品位な多層セラミック基板を製造することが可能である。
以下、本発明を適用した多層セラミック基板の製造方法について、図面を参照して詳細に説明する。
多層セラミック基板を作製するには、先ず、焼成後に各セラミック層となる基板用グリーンシートを用意する。基板用グリーンシートは、セラミック粉末と有機ビヒクルとを混合して得られるスラリー状の誘電体ペーストを作り、これを例えばポリエチレンテレフタレート(PET)シート等の支持体上にドクターブレード法等によって成膜することにより形成する。前記セラミック粉末や有機ビヒクルとしては、公知のものがいずれも使用可能であるが、基板用グリーンシートの焼成により形成されるセラミック層がガラスセラミックである場合に後述の下地層の効果が大きい。
前記基板用グリーンシートには、所望の回路に応じて、導体パターン(配線パターンや電極パッド、ビアホール等)を形成しておく。さらには、必要に応じて電子素子(インダクタやキャパシタ等)を作り込んでおいてもよい。
前記導体パターンは、例えば導電ペーストを所定のパターンで印刷することにより形成されるが、使用する導電ペーストは、Ag、Ag−Pd合金、Cu、Ni等の各種導電性金属や合金からなる導電材料と有機ビヒクルとを混練することにより調製されるものである。有機ビヒクルは、バインダと溶剤を主たる成分とするものであり、前記導電材料との配合比等は任意であるが、通常はバインダ1〜15質量%、溶剤が10〜50質量%となるように導電材料に対して配合される。導電ペーストには、必要に応じて各種分散剤や可塑剤等から選択される添加物が添加されていてもよい。
前記の基板グリーンシートを準備した後、図1に示すように、これを重ねて積層体とする。本実施形態の場合、6枚の基板用グリーンシート1a〜1fを積層して積層体1を構成するようにしている。また、本実施形態の場合、最上層の基板用グリーンシート1eの表面には、所定の面積の電極2が形成されている。
これを焼成して多層セラミック基板とするが、焼成に際しては、図1(A)に示すように、前記積層体1の両面に下地層3,4を介して収縮抑制用グリーンシート5,6を重ね合わせる。積層状態を図1(B)に示す。この図1(B)に示すように、焼成時には、前記基板用グリーンシート1a〜1fを積層した積層体1の両側にシートの形態で形成された下地層3,4が配され、その外側にそれぞれ収縮抑制用グリーンシート5,6が配された形になる。なお、前記収縮抑制用グリーンシート5,6や下地層3,4は、ここでは積層体1の両面に配するようにしたが、場合によっては積層体1の一方の面のみに配することも可能である。
ここで、先ず、前記収縮抑制用グリーンシート5,6には、前記基板用グリーンシート1a〜1fの焼成温度では収縮しない材料、例えばトリジマイトやクリストバライト、さらには石英、溶融石英、アルミナ、ムライト、ジルコニア、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、酸化マグネシウム、炭化ケイ素等を含む組成物を用いる。これら収縮抑制用グリーンシート5,6間に積層体1を挟み込み、焼成を行うことで、その面内方向での収縮が抑えられ、厚み方向にのみ収縮することになる。
一方、前記下地層3,4には、炭酸カルシウム(CaCO3)を含むシートが用いられ、これを前記積層体1と収縮抑制用グリーンシート5,6の間に介在させることにより、収縮抑制用グリーンシート5,6の焼成物の剥離を促進する。なお、本実施形態においては、炭酸カルシウムを含む下地層3,4をシートの形態で形成し、これを積層体1と収縮抑制用グリーンシート5,6の間に介在させるようにしたが、これに限らず、例えば炭酸カルシウムを含む下地層3,4を印刷法により積層体1の表面、あるいは収縮抑制用グリーンシート5,6の表面に形成することも可能である。
前記下地層3,4は、シート状に形成される場合であっても、あるいは印刷法で形成される場合であっても、バインダと炭酸カルシウムを混合した炭酸カルシウム含有ペーストをシート化、あるいは印刷することにより形成される。このとき、下地層3,4における炭酸カルシウムの含有量は、30質量%以上とすることが好ましい。炭酸カルシウムの含有量が30質量%未満であると、下地層3,4による剥離促進機能が十分に発揮されなくなるおそれがある。炭酸カルシウムの含有量に関して、特に上限はないが、例えば下地層3,4をシート状にする場合には、シート形状を維持するためにある程度の量のバインダ等が必要になり、これを差し引いた量が実用的な上限ということになる。下地層3,4を印刷により形成する場合にも、下地層3,4の形態を維持するためにある程度の量のバインダ等が必要になり、やはりこれを差し引いた量が実用的な上限ということになる。
前記下地層3,4に含まれるバインダには、例えば任意の樹脂材料を使用することが可能であるが、焼成時に速やかに熱分解し得る材料を用いることが好ましい。特に、前記基板用グリーンシート1a〜1fに含まれる有機ビヒクルよりも熱分解し易い材料、あるいは基板用グリーンシート1a〜1fに含まれる有機ビヒクルと同等の材料を用いることが好ましい。
また、前記下地層3,4の厚さは任意であるが、その効果を十分に発揮させるためには、10μm以上とすることが好ましい。下地層3,4の厚さが10μm未満であると、剥離促進機能が十分に発揮されなくなるおそれがある。逆に、前記下地層3,4の厚さが厚すぎると、収縮抑制用グリーンシート5,6の拘束力が積層体1に十分に加わらなくなるおそれがあることから、厚さの上限は100μmとすることが好ましい。したがって、下地層3,4の好ましい厚さの範囲は10μm〜100μm、より好ましい厚さの範囲は10μm〜40μmである。
以上のように積層体1の両側に下地層3,4及び収縮抑制用グリーンシート5,6を配して焼成を行うが、焼成後の多層セラミック基板は、寸法精度に優れ、反りや撓み等の変形が少ないものとなる。すなわち、前記収縮抑制用グリーンシート5,6の働きにより、積層体1を構成する各基板用グリーンシート1a〜1fの面内方向における収縮が抑えられ、寸法精度が確保される。
前記焼成に際しては、焼成温度は任意であるが、例えば基板用グリーンシート1a〜1fにAgを導電材料とする導体パターンを形成した場合には、Agの融点(約960℃)以下の温度で焼成を行うことが好ましい。この場合の好ましい焼成温度は、850℃〜950℃である。
前記焼成後には、前記下地層3,4の働きにより、収縮抑制用グリーンシート5,6の焼成物は速やかに多層セラミック基板の表面から剥離除去される。前記下地層3,4に含まれる炭酸カルシウムは、前記焼成により酸化カルシウム(CaO)と二酸化炭素に熱分解される。熱分解により生成する酸化カルシウムは、基板用グリーンシート1a〜1fの焼成により形成されるセラミック層に対する親和性が小さく、例えば収縮抑制用グリーンシート5,6が収縮抑制材料としてトリジマイトを含有する場合には、収縮抑制用グリーンシート5,6の焼成物と一体化し、焼成後、多層セラミック基板の表面から直ちに離脱する。
例えば収縮抑制用グリーンシート5,6が収縮抑制材料としてアルミナ及びジルコニアを含有する場合には、前記トリジマイトの場合と異なり、収縮抑制用グリーンシート5,6の焼成物の剥離までに若干の時間を要する。この場合には、炭酸カルシウムの熱分解により生成した酸化カルシウムが、室温に戻した時に吸湿し、水酸化カルシウム[Ca(OH)2]に変化することで前記焼成物を多層セラミック基板の表面から持ち上げるように作用する。これにより収縮抑制用グリーンシート5,6の焼成物が多層セラミック基板の表面から浮き上がり、多層セラミック基板の表面から離脱する。
いずれの場合にも、積層体1(基板用グリーンシート1a〜1f)と収縮抑制用グリーンシート5,6の間に炭酸カルシウムを含む下地層3,4を介在させることで、収縮抑制用グリーンシート5,6の焼成物が残渣として多層セラミック基板の表面(特に導体パターンの表面)に残存することを防止することができる。収縮抑制用グリーンシート5,6の焼成物は絶縁物であり、これが導体パターンの表面に残渣として残存すると、導通の妨げになるが、前記下地層3,4の働きにより残渣がほとんど残らず、洗浄を行わなくとも十分に接続信頼性(導通信頼性)に優れた多層セラミック基板を製造することが可能になる。なお、前記の通り焼成後に多層セラミック基板を洗浄しなくとも残渣を解消することができるが、焼成後の多層セラミック基板に対して、超音波洗浄等の洗浄を行うことは任意である。
以下、本発明を適用した具体的な実施例について、実験結果に基づいて説明する。
基板用グリーンシートの作製
セラミック材料としてアルミナ−ガラス系誘電体材料を準備し、有機バインダー、可塑剤及び有機溶剤と混合して誘電体ペーストを調製した後、ドクターブレード法によりシート化して、縦56mm、横65mm、厚さ125μmのセラミックグリーンシート(基板用グリーンシート)を作製した。誘電体ペーストの組成は下記の通りである。
ガラス成分 52.2質量%
アルミナ 30.6質量%
バインダ(アクリル樹脂) 12.4質量%
可塑剤 4.8質量%
セラミック材料としてアルミナ−ガラス系誘電体材料を準備し、有機バインダー、可塑剤及び有機溶剤と混合して誘電体ペーストを調製した後、ドクターブレード法によりシート化して、縦56mm、横65mm、厚さ125μmのセラミックグリーンシート(基板用グリーンシート)を作製した。誘電体ペーストの組成は下記の通りである。
ガラス成分 52.2質量%
アルミナ 30.6質量%
バインダ(アクリル樹脂) 12.4質量%
可塑剤 4.8質量%
前記組成において、ガラス成分の組成は下記の通りである。
SiO2 52.4質量%
B2O3 3.5質量%
Al2O3 11.5質量%
MgO 1.7質量%
CaO 3.2質量%
SrO 27.7質量%
SiO2 52.4質量%
B2O3 3.5質量%
Al2O3 11.5質量%
MgO 1.7質量%
CaO 3.2質量%
SrO 27.7質量%
電極付き基板用グリーンシートの作製
前記基板用グリーンシートの表面に電極層(縦48mm×横50mm)を印刷形成し、電極付き基板用グリーンシートを作製した。電極層の印刷形成に用いた導電ペーストの組成は下記の通りである。
銀粉末 94.0質量%
ガラス 3.6質量%
チタニア 0.4質量%
バインダ(エチルセルロース) 2.0質量%
なお、ガラスとしてはSiO2−ZnO−B2O3系ガラスを用いた。
前記基板用グリーンシートの表面に電極層(縦48mm×横50mm)を印刷形成し、電極付き基板用グリーンシートを作製した。電極層の印刷形成に用いた導電ペーストの組成は下記の通りである。
銀粉末 94.0質量%
ガラス 3.6質量%
チタニア 0.4質量%
バインダ(エチルセルロース) 2.0質量%
なお、ガラスとしてはSiO2−ZnO−B2O3系ガラスを用いた。
収縮抑制用グリーンシートAの作製
収縮抑制材料としてトリジマイト及び石英を準備し、有機バインダー、可塑剤、分散剤及び有機溶剤と混合して収縮抑制材料ペーストを調製した後、ドクターブレード法によりシート化して、縦56mm、横65mm、厚さ125μmの収縮抑制用グリーンシートAを作製した。収縮抑制材料ペーストの組成は下記の通りである。
トリジマイト 28.3質量%
石英 50.0質量%
バインダ(アクリル樹脂) 14.8質量%
可塑剤 5.7質量%
分散剤 1.2質量%
収縮抑制材料としてトリジマイト及び石英を準備し、有機バインダー、可塑剤、分散剤及び有機溶剤と混合して収縮抑制材料ペーストを調製した後、ドクターブレード法によりシート化して、縦56mm、横65mm、厚さ125μmの収縮抑制用グリーンシートAを作製した。収縮抑制材料ペーストの組成は下記の通りである。
トリジマイト 28.3質量%
石英 50.0質量%
バインダ(アクリル樹脂) 14.8質量%
可塑剤 5.7質量%
分散剤 1.2質量%
収縮抑制用グリーンシートBの作製
収縮抑制材料としてアルミナ及びジルコニアを準備し、有機バインダー、可塑剤、分散剤及び有機溶剤と混合して収縮抑制材料ペーストを調製した後、ドクターブレード法によりシート化して、縦56mm、横65mm、厚さ125μmの収縮抑制用グリーンシートBを作製した。収縮抑制材料ペーストの組成は下記の通りである。
アルミナ 41.2質量%
ジルコニア 41.2質量%
バインダ(アクリル樹脂) 12.4質量%
可塑剤 4.7質量%
分散剤 0.5質量%
収縮抑制材料としてアルミナ及びジルコニアを準備し、有機バインダー、可塑剤、分散剤及び有機溶剤と混合して収縮抑制材料ペーストを調製した後、ドクターブレード法によりシート化して、縦56mm、横65mm、厚さ125μmの収縮抑制用グリーンシートBを作製した。収縮抑制材料ペーストの組成は下記の通りである。
アルミナ 41.2質量%
ジルコニア 41.2質量%
バインダ(アクリル樹脂) 12.4質量%
可塑剤 4.7質量%
分散剤 0.5質量%
炭酸カルシウム含有シート(下地層)の作製
炭酸カルシウムを有機バインダー、可塑剤、分散剤及び有機溶剤と混合して炭酸カルシウム含有ペーストを調製した後、ドクターブレード法によりシート化して、縦56mm、横65mm、厚さ60μmの炭酸カルシウム含有シートを作製した。炭酸カルシウム含有ペーストの組成は下記の通りである。
炭酸カルシウム 80.1質量%
バインダ(アクリル樹脂) 14.2質量%
可塑剤 5.3質量%
分散剤 0.4質量%
炭酸カルシウムを有機バインダー、可塑剤、分散剤及び有機溶剤と混合して炭酸カルシウム含有ペーストを調製した後、ドクターブレード法によりシート化して、縦56mm、横65mm、厚さ60μmの炭酸カルシウム含有シートを作製した。炭酸カルシウム含有ペーストの組成は下記の通りである。
炭酸カルシウム 80.1質量%
バインダ(アクリル樹脂) 14.2質量%
可塑剤 5.3質量%
分散剤 0.4質量%
実施例1
作製した基板用グリーンシートを6枚積層して積層体を形成し、その両面にそれぞれ炭酸カルシウム含有シートを下地層として介在させて収縮抑制用グリーンシートAを配した。なお、前記6枚の基板用グリーンシートのうち最上層は電極付き基板用グリーンシートとした。これを900℃で焼成し、多層セラミック基板を得た。
作製した基板用グリーンシートを6枚積層して積層体を形成し、その両面にそれぞれ炭酸カルシウム含有シートを下地層として介在させて収縮抑制用グリーンシートAを配した。なお、前記6枚の基板用グリーンシートのうち最上層は電極付き基板用グリーンシートとした。これを900℃で焼成し、多層セラミック基板を得た。
比較例1
炭酸カルシウム含有シートを介在させず、他は実施例1と同様にして多層セラミック基板を作製した。
炭酸カルシウム含有シートを介在させず、他は実施例1と同様にして多層セラミック基板を作製した。
実施例2
収縮抑制用グリーンシートAの代わりに収縮抑制用グリーンシートBを用い、他は実施例1と同様にして多層セラミック基板を作製した。
収縮抑制用グリーンシートAの代わりに収縮抑制用グリーンシートBを用い、他は実施例1と同様にして多層セラミック基板を作製した。
比較例2
炭酸カルシウム含有シートを介在させず、他は実施例2と同様にして多層セラミック基板を作製した。
炭酸カルシウム含有シートを介在させず、他は実施例2と同様にして多層セラミック基板を作製した。
実施例3
電極付き基板用グリーンシートを用いないで基板用グリーンシートを6枚積層して積層体を形成し、他は実施例1と同様にして多層セラミック基板を作製した。
電極付き基板用グリーンシートを用いないで基板用グリーンシートを6枚積層して積層体を形成し、他は実施例1と同様にして多層セラミック基板を作製した。
比較例3
炭酸カルシウム含有シートを介在させず、他は実施例3と同様にして多層セラミック基板を作製した。
炭酸カルシウム含有シートを介在させず、他は実施例3と同様にして多層セラミック基板を作製した。
実施例4
収縮抑制用グリーンシートAの代わりに収縮抑制用グリーンシートBを用い、他は実施例3と同様にして多層セラミック基板を作製した。
収縮抑制用グリーンシートAの代わりに収縮抑制用グリーンシートBを用い、他は実施例3と同様にして多層セラミック基板を作製した。
比較例4
炭酸カルシウム含有シートを介在させず、他は実施例4と同様にして多層セラミック基板を作製した。
炭酸カルシウム含有シートを介在させず、他は実施例4と同様にして多層セラミック基板を作製した。
評価
先ず、前記各実施例及び比較例で作製された多層セラミック基板について、焼成後の基板寸法を測定して収縮抑制用グリーンシートによる拘束効果を確認した。結果を表1に示す。
先ず、前記各実施例及び比較例で作製された多層セラミック基板について、焼成後の基板寸法を測定して収縮抑制用グリーンシートによる拘束効果を確認した。結果を表1に示す。
この表1から明らかなように、いずれの実施例、比較例においても、焼成前と焼成後で基板寸法がほとんど変わっておらず、収縮抑制用グリーンシートの働きにより寸法精度が確保されていることがわかる。
そこで次に、炭酸カルシウム含有シートの有無による効果を確認するために、焼成後の多層セラミック基板に残存する残渣の量を計測した。残渣の計測は、収縮抑制用グリーンシートAを用いた場合には超音波洗浄時間0分〜13分について行い、収縮抑制用グリーンシートBを用いた場合には超音波洗浄時間0分〜70分について行った。
図2は、実施例1と比較例1の残渣量の相違を示すものである。炭酸カルシウム含有シートを介在させていない比較例1では、初期(超音波洗浄時間0分=超音波洗浄前)の残渣量も実施例1に比べた遙かに多く、また超音波洗浄を13分間行った後にも0.03g以上残存し、残渣量がこれ以上減少していない。これに対して、実施例1では、初期の残渣量も少なく、僅かな時間の超音波洗浄で残渣量がほとんどゼロになっている。
一方、図3は、実施例2と比較例2の残渣量の相違を示すものである。なお、実施例2と比較例2では残渣量が大きく相違してるため、図3ではそれぞれスケールを変えて表示してある。図3において、図中右側のスケールは実施例2に対応し、図中左側のスケールが比較例2に対応する。収縮抑制用グリーンシートBを拘束層として用いた場合、残渣量も多く、炭酸カルシウム含有シートを介在させないと、超音波洗浄を10分程度行っても残渣量がほとんど減らず、超音波洗浄を70分間行った後にも残渣が半分以上残っている。これに対して、炭酸カルシウム含有シートを介在させた実施例2では、初期の残渣量が桁違いに少なく、やはり僅かな時間の超音波洗浄で残渣量がほとんどゼロになっている。
前記の傾向は、電極付き基板用グリーンシートを用いない場合についても確認された。図4は実施例3と比較例3の残渣量の相違を示すものであり、図5は実施例4と比較例4の残渣量の相違を示すものである。なお、実施例4と比較例4においても残渣量が大きく相違してるため、図5ではそれぞれスケールを変えて表示してある。図5において、図中右側のスケールは実施例4に対応し、図中左側のスケールが比較例4に対応する。いずれの場合にも、炭酸カルシウム含有シートを介在させることで、初期の残渣量が著しく少なくなり、僅かな時間の超音波洗浄で残渣がほぼゼロなることがわかる。
炭酸カルシウム含有シートにおける炭酸カルシウム含有量に関する検討
炭酸カルシウム含有シートにおける炭酸カルシウム含有量を20質量%、30質量、40質量%、50質量、60質量%、80質量%とし、これら炭酸カルシウム含有シートを介在させて実施例1と同様にして多層セラミック基板を作製した。得られた多層セラミック基板について、初期の残渣量及び5分間の超音波洗浄後の残渣量を計測した。結果を表2に示す。
炭酸カルシウム含有シートにおける炭酸カルシウム含有量を20質量%、30質量、40質量%、50質量、60質量%、80質量%とし、これら炭酸カルシウム含有シートを介在させて実施例1と同様にして多層セラミック基板を作製した。得られた多層セラミック基板について、初期の残渣量及び5分間の超音波洗浄後の残渣量を計測した。結果を表2に示す。
この表2から明らかなように、炭酸カルシウム含有シートにおける炭酸カルシウム含有量が20重量%であると、残渣量が増加することがわかる。これは、炭酸カルシウム含有量が少ないために炭酸カルシウム含有シートの剥離促進効果が十分に発揮されない結果によるものと推測される。したがって、炭酸カルシウム含有シートにおける炭酸カルシウム含有量は30重量%以上とすることが好ましいと言える。
炭酸カルシウム含有シートの厚さに関する検討
炭酸カルシウム含有シートの厚さを5μm、10μ、50μm、100μm、150μmとし、これら炭酸カルシウム含有シートを介在させて実施例1と同様にして多層セラミック基板を作製した。得られた多層セラミック基板について、初期の残渣量及び基板寸法を計測した。結果を表3に示す。
炭酸カルシウム含有シートの厚さを5μm、10μ、50μm、100μm、150μmとし、これら炭酸カルシウム含有シートを介在させて実施例1と同様にして多層セラミック基板を作製した。得られた多層セラミック基板について、初期の残渣量及び基板寸法を計測した。結果を表3に示す。
表3を見ると、炭酸カルシウム含有シートの厚さが5μmの場合には、基板の寸法精度は確保されているものの残渣の量が多い。一方、炭酸カルシウム含有シートの厚さが150μmの場合には、残渣量は少ないが、収縮抑制用グリーンシートの拘束力が十分に働かず基板の寸法精度の低下が見られる。したがって、炭酸カルシウム含有シートの厚さは、10μm〜100μmとすることが好ましいことがわかる。
1 積層体、1a〜1e 基板用グリーンシート、2 電極層、3,4 下地層(炭酸カルシウム含有シート)5,6 収縮抑制用グリーンシート
Claims (8)
- 複数の基板用グリーンシートを積層し、積層された基板用グリーンシートの少なくとも一方の面に収縮抑制用グリーンシートを配して焼成する多層セラミック基板の製造方法であって、
前記収縮抑制用グリーンシートと基板用グリーンシートの間に炭酸カルシウムを含む下地層を介在させ、前記焼成を行うことを特徴とする多層セラミック基板の製造方法。 - 前記下地層をシートとして形成し、前記収縮抑制用グリーンシートと基板用グリーンシートの間に挟み込むことにより介在させることを特徴とする請求項1記載の多層セラミック基板の製造方法。
- 前記下地層を印刷法により形成し、前記収縮抑制用グリーンシートと基板用グリーンシートの間に炭酸カルシウムを含む下地層を介在させることを特徴とする請求項1記載の多層セラミック基板の製造方法。
- 前記下地層の厚さを10μm〜100μmとすることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載の多層セラミック基板の製造方法。
- 前記下地層において、炭酸カルシウムの含有量が30質量%以上であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載の多層セラミック基板の製造方法。
- 前記基板用グリーンシートの焼成により形成されるセラミック層がガラスセラミック層であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項記載の多層セラミック基板の製造方法。
- 前記焼成温度を850℃以上、950℃以下とすることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項記載の多層セラミック基板の製造方法。
- 前記基板用グリーンシートの前記下地層と接する面に導体パターンが形成されていることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項記載の多層セラミック基板の製造方法。
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US8241449B2 (en) | 2008-06-13 | 2012-08-14 | Murata Manufacturing Co., Ltd. | Method for producing ceramic body |
JPWO2013133198A1 (ja) * | 2012-03-05 | 2015-07-30 | 株式会社フジミインコーポレーテッド | 研磨用組成物、及び当該研磨用組成物を用いた化合物半導体基板の製造方法 |
-
2005
- 2005-12-13 JP JP2005359606A patent/JP2007165565A/ja active Pending
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