JP2007157429A - 燃料電池の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】燃料電池を簡易かつ効率よく製造することができる燃料電池の製造方法を提供する。
【解決手段】電解質膜101の両側に電極前駆体が配置されてなる膜電極接合体前駆体と、燃料流路を有するアノード側セパレータ105と、酸化剤ガス流路を有するカソード側セパレータ105と、を含む単位セル前駆体の両側、または、前記単位セル前駆体を少なくとも二以上積層させて得られた積層体の両側をエンドプレート106で挟持する燃料電池の製造方法において、 前記エンドプレートで挟持した後に前記単位セル前駆体を、50〜200℃とし、前記燃料流路および前記酸化剤ガス流路を介して溶媒を供給する燃料電池の製造方法である。
【選択図】図1

Description

本発明は、燃料電池の製造方法に関し、より詳細には、簡易化された燃料電池の製造方法に関する。
燃料電池は、燃料である水素と酸化剤である酸素とを電気化学的に反応させることにより発電させるシステムである。この反応による生成物は原理的に水であることから環境への負荷が少なく、エネルギー・環境問題を背景とした社会的要求や動向と呼応して、注目されている。燃料電池としては、固体高分子電解質型、固体酸化物型、溶融炭酸塩型、リン酸型などが挙げられるが、中でも、他の燃料電池と比較して低温で作動し高出力密度が得られる固体高分子電解質型燃料電池が電気自動車用電源、定置型電源などとして期待され開発が進められている。
固体高分子型燃料電池の構成は、一般的には、高分子電解質膜の両側に一対の電極、すなわち、アノード側電極およびカソード側電極が配置された膜電極接合体(MEA)をセパレータで挟持した発電セルを有している。アノード側電極およびカソード側電極はそれぞれ、電極触媒と固体高分子電解質との混合物により形成された多孔性の電極触媒層と、カーボンペーパなどからなるガス拡散層と、を少なくとも有する。
また、固体高分子型燃料電池では、前記発電セルを単独で用いてもよいが、燃料電池の大容量化のため前記発電セルを複数積層して燃料電池スタックとして用いられている。前記燃料電池スタックは、各発電セルによって発電された電荷を集める電力取り出し用ターミナル板(集電板)および積層された発電セルを保持するために設けられたエンドプレート等により挟持されて燃料電池に用いられる。
従来では、固体高分子電解質型燃料電池の作製は、電極触媒および固体高分子電解質などを溶媒に分散混合させたスラリーを塗布後乾燥することにより電極触媒層とし、高分子電解質膜をガス拡散層/電極触媒層/高分子電解質膜/電極触媒層/ガス拡散層の順となるように挟持し、これをホットプレスにより接合してMEAとし、得られたMEAをセパレータおよびエンドプレートで挟持する方法などが用いられている。また、燃料電池スタックとする場合には、前記と同様にして複数作製したMEAをセパレータを介して積層し、得られた燃料電池スタックをエンドプレート等により挟持することにより固体高分子電解質型燃料電池が作製される(特許文献1)。
特開2002−352817号公報
従来の燃料電池の製造では、電極触媒層と電解質膜とをホットプレスにより接合する工程が必要であり、製造工程が煩雑であった。また、所望の発電量を得るために複数のMEAを積層して用いる場合には、一つのMEAごとにホットプレスを行うため前記接合工程を複数回行う必要があり、製造工程がさらに煩雑となる。
本発明は、このような従来技術の実情に鑑みてなされたものであり、燃料電池を簡易かつ効率よく製造することができる燃料電池の製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、電解質膜の両側に電極前駆体が配置されてなる膜電極接合体前駆体と、燃料流路を有するアノード側セパレータと、酸化剤ガス流路を有するカソード側セパレータと、を含む単位セル前駆体の両側、または、前記単位セル前駆体を少なくとも二以上積層させて得られた積層体の両側をエンドプレートで挟持する燃料電池の製造方法において、
前記エンドプレートで挟持した後に前記単位セル前駆体を、50〜200℃とし、前記燃料流路および前記酸化剤ガス流路を介して溶媒を供給する燃料電池の製造方法により上記課題を解決する。
本発明の方法によれば、MEA作製時のホットプレスによる接合工程を省略することができ、より簡便な方法により燃料電池を製造することが可能となる。
本発明では、電解質膜の両側に電極前駆体をホットプレスせずに単に配置のみし、得られた膜電極接合体前駆体をセパレータおよびエンドプレートで挟持した後に、所定の温度に設定した膜電極接合体前駆体に溶媒を供給することで電解質膜と電極前駆体との接合を行えることを見出した。電解質膜および電極前駆体に含まれるプロトン伝導性電解質はバインダーとしても機能するが、所定の温度で溶媒を供給することにより前記プロトン伝導性電解質などの高分子を僅かに動き易くし、電解質膜と電極との接触性を高めて接合することが可能となる。これにより、従来行われていたホットプレスによる電極と電解質膜との接合工程を省略することができ、簡便な方法により燃料電池を製造することができる。
本発明による効果は、スタックを作製する場合に特に発揮される。本発明では、前記膜電極接合体前駆体をセパレータを介して複数積層し、得られた積層体をエンドプレートで挟持した後、所定の温度に設定した膜電極接合体前駆体中に溶媒を供給することによっても燃料電池を作製することができる。これにより、従来のように膜電極接合体ごとに接合工程を施さなくとも、膜電極接合体前駆体を積層体として一度に電解質膜と電極とを接合することが可能となり、より簡便な方法により燃料電池を製造することが可能となる。以下、本発明を順を追ってより詳細に説明する。
まず、本発明の方法では、電解質膜の両側に電極前駆体が配置されてなる膜電極接合体前駆体を作製する。
前記電解質膜は、特に限定されず、プロトン伝導性を有する電解質からなる膜が挙げられる。例えば、デュポン社製の各種のナフィオン(デュポン社登録商標)やフレミオンに代表されるパーフルオロスルホン酸膜、ダウケミカル社製のイオン交換樹脂、エチレン−四フッ化エチレン共重合体樹脂膜、トリフルオロスチレンをベースポリマーとする樹脂膜などのフッ素系高分子電解質膜や、スルホン酸基を有する炭化水素系樹脂系膜など、一般的に市販されている高分子電解質膜、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)などから形成された高分子微多孔膜にリン酸やイオン性液体等などの液体電解質を含浸させた膜、多孔質体に高分子電解質を充填させた膜などを用いてもよい。前記電解質膜に用いられる電解質と、各触媒層に用いられる電解質とは、同じであっても異なっていてもよい。
本発明において、前記電極前駆体は、ガス拡散層上に形成された電極触媒層が好ましく用いられる。電解質膜上に電極触媒層を直接製造する方法も用いられるが、かような方法よりもガス拡散層上に電極触媒層を作製する方が電解質膜のシワなどの発生を抑制して、電解質膜と電極触媒層との高い接合性が得られる。
ガス拡散層上に電極触媒層を形成するには、特に制限されないが、電極触媒、および、電解質を、溶媒に混合して電極触媒層インクとし、これをガス拡散層上に塗布する方法などが用いられる。
前記電極触媒は、導電性担体に触媒成分が担持されたものなど、従来公知のものであれば制限なく用いられる。
前記触媒成分は、カソード触媒層においては酸素の還元反応に触媒作用を有するものであればよく、アノード触媒層においては水素の酸化反応に触媒作用を有するものであればよい。具体的には、白金、ルテニウム、イリジウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、タングステン、鉛、鉄、クロム、コバルト、ニッケル、マンガン、バナジウム、モリブデン、ガリウム、アルミニウム等の金属、及びそれらの合金等などから選択される。
前記導電性担体は、主成分がカーボンであるのが好ましい。具体的には、カーボンブラック、活性炭、コークス、天然黒鉛、人造黒鉛などからなるカーボン粒子が挙げられる。
前記電解質としては、特に限定されず公知のものを用いることができるが、少なくともプロトン伝導性を有するのが好ましい。これにより高い発電性能を有する電極触媒層が得られる。この際使用できる電解質は、ポリマー骨格の全部又は一部がフッ素化されたフッ素系ポリマーであってイオン交換基を備えた高分子電解質、または、ポリマー骨格にフッ素を含まない炭化水素系ポリマーであってイオン交換基を備えた高分子電解質、などが好ましく挙げられる。
前記イオン交換基としては、特に制限されないが、−SOH、−COOH、−PO(OH)、−POH(OH)、−SONHSO−、−Ph(OH)(Phはフェニル基を表す)等の陽イオン交換基、−NH、−NHR、−NRR’、−NRR’R’’、−NH 等(R、R’、R’’は、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基等を表す)等の陰イオン交換基などが挙げられる。
前記フッ素系ポリマーであってイオン交換基を備えた高分子電解質として、具体的には、ナフィオン(登録商標、デュポン社製)、アシプレックス(登録商標、旭化成株式会社製)、フレミオン(登録商標、旭硝子株式会社製)等のパーフルオロカーボンスルホン酸系ポリマー、ポリトリフルオロスチレンスルフォン酸系ポリマー、パーフルオロカーボンホスホン酸系ポリマー、トリフルオロスチレンスルホン酸系ポリマー、エチレンテトラフルオロエチレン−g−スチレンスルホン酸系ポリマー、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、ポリテトラフルオロエチレン−g−ポリスチレンスルホン酸系ポリマー、ポリフッ化ビニリデン−g−ポリスチレンスルホン酸系ポリマーなどが好適な一例として挙げられる。
前記炭化水素系ポリマーであってイオン交換基を備えた高分子電解質として、具体的には、ポリサルホンスルホン酸系ポリマー、ポリエーテルエーテルケトンスルホン酸系ポリマー、ポリベンズイミダゾールアルキルスルホン酸系ポリマー、ポリベンズイミダゾールアルキルホスホン酸系ポリマー、架橋ポリスチレンスルホン酸系ポリマー、ポリエーテルサルホンスルホン酸系ポリマー等が好適な一例として挙げられる。
高分子電解質は、高いイオン交換能を有し、化学的耐久性・力学的耐久性、などに優れることから、前記フッ素系ポリマーであってイオン交換基を備えた高分子電解質を用いるのが好ましく、なかでも、ナフィオン(登録商標、デュポン社製)、アシプレックス(登録商標、旭化成株式会社製)、フレミオン(登録商標、旭硝子株式会社製)などのフッ素系電解質が好ましく挙げられる。
前記溶媒としては、水、および/または、メタノール、エタノール、1−プロパノール(NPA)、2−プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのアルコール系溶媒などが挙げられる。
前記ガス拡散層は、特に限定されず公知のものが同様にして使用でき、例えば、炭素製の織物、紙状抄紙体、フェルト、不織布といった導電性及び多孔質性を有するシート状のガス拡散基材からなるものなどが挙げられる。
前記ガス拡散基材には、撥水性をより高めてフラッディング現象などを防ぐことを目的として、撥水剤を含んでいるのが好ましい。前記撥水剤としては、特に限定されないが、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)などのフッ素系の高分子材料、ポリプロピレン、ポリエチレンなどが挙げられる。
また、撥水性をより向上させるために、前記ガス拡散層は、前記ガス拡散基材上に撥水剤を含むカーボン粒子の集合体からなるカーボン粒子層を有するものであってもよい。
前記カーボン粒子としては、特に限定されず、カーボンブラック、黒鉛、膨張黒鉛などの従来一般的なものであればよい。なかでも、電子伝導性に優れ、比表面積が大きいことから、オイルファーネスブラック、チャネルブラック、ランプブラック、サーマルブラック、アセチレンブラックなどのカーボンブラックが好ましく挙げられる。前記カーボン粒子層に用いられる撥水剤としては、前記ガス拡散基材に用いられる上述した撥水剤と同様のものが挙げられる。なかでも、撥水性、電極反応時の耐食性などに優れることから、フッ素系の高分子材料が好ましく用いられる。
前記電極触媒層インクを前記ガス拡散層上に塗布するには、公知の方法でよく、例えばカーテンコーティング法、押し出しコーティング法、ロールコーティング法、スピンコーティング法、ディップコーティング法、バーコーティング法、スプレーコーティング法、スライドコーティング法、印刷コーティング法等を用いることができる。また、前記ガス拡散層上に塗布した触媒層インクは乾燥させてもよい。
上記の通りにしてガス拡散層104上に形成された電極触媒層102を二枚用いて、図1に模式的に示すように、前記電極触媒層102と前記電解質膜101とが接するように電解質膜101の両側に配置することで膜電極接合体前駆体が得られる。
本発明では、電極前駆体としては、上述したガス拡散層上に形成された電極触媒層の他に、支持体上に形成された電極触媒層と前記支持体に接して配置されるガス拡散層とを含むものも好ましく用いられる。かような形態を有する電極前駆体であっても電解質膜と電極触媒層との高い接合性が得られる。
前記支持体としては、電極触媒層が形成できるものであれば特に制限なく用いられるが、後の工程で単位セル前駆体に供給する溶媒に対して溶解性を示すものが好ましい。これにより、後の工程で単位セル前駆体に溶媒を供給することで、電解質膜と電極触媒層との接合とともに、前記支持体を溶解させることにより電極触媒層とガス拡散層とを接触させることが可能となる。
後の工程で単位セル前駆体に供給する溶媒に対して溶解性を示す前記支持体とは、50℃の前記溶媒に前記支持体を60分間、浸漬させた際に、前記支持体が20質量%以上、特に50〜100質量%溶解するものが好ましく用いられる。
前記支持体としては、PSS(ポリスチレンスルホン酸)、PEO(ポリエチレンオキシド)、PVP(ポリビニルピロリドン)、PVA(ポリビニルアルコール)、S−PES(スルホン化ポリアリーレンエーテルスルホン)等が挙げられる。
また、前記支持体上に電極触媒層を形成するには、ガス拡散層上に電極触媒層を形成する上述したのと同様の方法を用いて行えばよい。
前記支持体103上に形成された電極触媒層102を二枚用いて、図2に模式的に示すように、前記電極触媒層102と電解質膜101とが接するように電解質膜101の両側に配置した後、前記支持体103と隣接させてガス拡散層104を配置することで膜電極接合体前駆体が得られる。
本発明の膜電極接合体前駆体において、電解質膜の一方の側にガス拡散層上に形成された電極触媒層を含む電極触媒層前駆体が配置され、前記電解質膜の他方の側に支持体上に形成された電極触媒層とガス拡散層とを含む電極触媒層前駆が配置されてもよい。しかしながら、膜電極接合体前駆体において、図1および2に示すように、ガス拡散層上に形成された電極触媒層を含む電極触媒層前駆体、または、支持体上に形成された電極触媒層とガス拡散層とを含む電極触媒層前駆体の同じものが、電解質膜の両側にそれぞれ配置されるのが好ましい。
次に、本発明の方法では、上述の通りにして作製した膜電極接合体前駆体を、燃料流路を有するアノード側セパレータおよび酸化剤ガス流路を有するカソード側セパレータで挟持して単位セル前駆体とする。
前記アノード側セパレータは、アノード側電極触媒層に対向する面にアノード側電極触媒層に燃料を供給するための燃料流路を少なくとも有するものであれば、従来公知のものを特に制限なく用いることができる。前記アノード側セパレータの平面内であって外縁部に位置する横方向両端側には、入口側燃料連通孔、入口側酸化剤ガス連通孔、入口側冷却媒体連通孔、出口側冷却媒体連通孔、出口側燃料連通孔、及び出口側酸化剤ガス連通孔が形成されていてもよい。
前記カソード側セパレータは、カソード側電極触媒層に対向する面にカソード側電極触媒層に酸化剤ガスを供給するための酸化剤ガス流路を少なくとも有するものであれば、従来公知のものを特に制限なく用いることができる。前記カソード側セパレータの平面内であって外縁部に位置する横方向両端側には、入口側燃料連通孔、入口側酸化剤ガス連通孔、入口側冷却媒体連通孔、出口側冷却媒体連通孔、出口側燃料連通孔、及び出口側酸化剤ガス連通孔が形成されていてもよい。
アノード側およびカソード側に用いられるセパレータとしては、緻密カーボングラファイト、炭素板等のカーボン製、ステンレス等の金属製、セラミックス、ガラス、シリコン等の無機材料製、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエチレンテレフタラート(PET)等の有機材料製、ガラス繊維入りエポキシ樹脂などの有機・無機複合材料等、従来公知のものであれば制限なく用いることができる。セパレータの厚さや大きさ、ガス流路の形状などについては、特に限定されず、得られる燃料電池の出力特性などを考慮して適宜決定すればよい。前記セパレータは、カソード側セパレータおよびアノード側セパレータが一体化されたものを用いてもよい。
前記単位セル前駆体において、電気的絶縁性およびガスシール性を向上させるため、シール材を配置するのが好ましい。前記シール材107は、図1および2に示すように、電解質膜101の電極触媒層102およびガス拡散層103が形成されず露出している外周部表面、または、前記外周部表面に対向するセパレータ105表面などに形成される。また、ガスや冷却媒体などの流路等により形成されたセパレータの凹部を埋めるようにシール材を点在して形成してもよく、電解質膜上の電極の周囲部を取り囲むように額縁状にシール材を形成してもよい。このようにシール材を配置することにより、燃料電池においてシール材が緩衝材としての役割も果たし、締結圧による電解質膜の損傷を防止することができる。
前記シール材は、セパレータと膜電極接合体とのシール性を確保できる材料であれば特に制限されないが、例えば、フッ素ゴム、シリコンゴム、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、ポリイソブチレンゴム等のゴム材料、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)等のフッ素系の高分子材料、ポリオレフィンやポリエステル等の熱可塑性樹脂などが好ましく挙げられる。これらの材料であれば、膜電極接合体とセパレータとを密着させることができガスシール性が向上する。
本発明の方法では、上記の通りにして作製した単位セル前駆体の両側を、図1および2に示すように、エンドプレート106で挟持する。このとき、得られる燃料電池が所望の発電量を有するように、前記単位セル前駆体を2以上積層させて、得られた積層体の両側をエンドプレートで挟持するのがより好ましい。
前記エンドプレートは、従来公知のものであれば制限なく用いられる。また、前記エンドプレートは、入口側燃料連通孔、入口側酸化剤ガス連通孔、入口側冷却媒体連通孔、出口側冷却媒体連通孔、出口側燃料連通孔、及び出口側酸化剤ガス連通孔が形成されていてもよい。
前記単位セル前駆体の両側または前記積層体の両側をエンドプレートで挟持するには、前記単位セル前駆体の両側または前記積層体の両側を、集電版と絶縁板を介してエンドプレートで挟み、締結ボルトで両端から固定する方法などを用いて行えばよい。しかしながら、前記方法に限定されず、燃料電池スタックを組立てる際の従来公知の技術を適宜参照して行えばよい。
次に、本発明の方法では、単位セル前駆体の両側、または、前記単位セル前駆体を少なくとも二以上積層させて得られた積層体の両側をエンドプレートで挟持した後、アノード側セパレータおよびカソード側セパレータがそれぞれ有する燃料流路および酸化剤流路を介して溶媒を供給する。前記溶媒を供給することにより、前記単位セル前駆体における電解質膜および電極前駆体の構成材料を密に接着させることができ、電解質膜と接合した電極が得られる。また、前記単位セル前駆体が支持体上に形成された電極触媒層を含む場合には、前記溶媒の供給により前記支持体を溶解させて外部に排出させるとともに、電解質膜と電極触媒層とガス拡散層とを密着させて電解質膜と接合した電極が得られる。
前記溶媒を供給する際には、エンドプレートで挟持された前記単位セル前駆体の温度を、50〜200℃、好ましくは50〜100℃、より好ましくは50〜80℃とするのがよい。前記単位セル前駆体の温度を、50℃以上とすることにより電解質膜と電極との十分な接合性が得られ、200℃以下とすることにより熱による膜の酸化劣化などを抑制できる。
また、前記溶媒を供給する際には、溶媒の供給量も重要である。すなわち、前記溶媒は、1〜100cc/minの供給速度で1〜60分間供給されるのが好ましいが、より好ましくは1〜50cc/minの供給速度で1〜30分間供給され、特にこの好ましくは1〜30cc/minの供給速度で1〜10分間供給されるのがよい。前記供給速度および供給時間で溶媒を供給することにより、電解質膜と電極との十分な接合性が得られる。
前記溶媒は、前記単位セル前駆体に供給されることにより電解質膜および電極前駆体の構成材料、特に電解質を僅かに動き易くさせて電解質膜と電極前駆体とを蜜に接着させる。前記溶媒は、電解質膜と電極前駆体とを密に接着させることができるものであれば特に制限されないが、前記電解質膜および前記電極前駆体の構成材料に対して難溶性を示すものが好ましく用いられる。これにより、電極触媒層における多孔質構造を破壊を防止することができ、得られる燃料電池の発電性能を低下させることなく電解質膜と電極との高い接合性が得られる。
前記難溶性を示す溶媒としては、50℃の溶媒100gに、電解質1gを1時間浸漬させた際に、前記電解質の溶解量が0.01g以下、特に0.001g以下であるものが好ましく用いられる。
このような溶媒として具体的には、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2級ブタノール、3級ブタノール、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、エチレングリコール、ジエチレングリコールなどのアルコール溶媒、水などが用いられる。
前記単位セル前駆体はエンドプレートで挟持された後、さらに、締結ボルトで両端から固定される。このとき、各電極前駆体に印加される締結圧は、各単位セル前駆体において、セパレータと電極前駆体とが接する面積あたり、1〜100kgf/cm、好ましくは1〜50kgf/cm、特に好ましくは1〜20kgf/cmとするのがよい。前記締結圧が、100kgf/cm以上であると支持体上に形成された電極触媒層を用いた場合であっても、支持体が溶解した後に締結圧によって電解質膜と電極との十分な接合性が得られ、100kgf/cm以下とすることにより締結圧によって生じ得る微小短絡を抑制することができる。
以下に、実施例および比較例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)
ケッチェンブラックに白金が50wt%で担持された白金担持カーボン粉末(田中貴金属工業社製 TEC10E50E)5gと水4.6gを混合し、攪拌・脱泡処理を行った。次に、1−プロパノール(NPA)で希釈した5wt%高分子電解質(Nafion)分散液(Dupont社製、DE−520)55gを混合し、十分に攪拌及び脱泡処理を行い、さらにホモジナイザーを用いて常温で3時間以上粉砕及び均一化処理することにより、触媒層インクを調製した。
上記で調製した触媒層インクを、スクリーンプリンターを用いて、カーボンペーパ(東レ株式会社製 カーボンペーパTGP−H−060、厚さ190μm)を7cm角に打ち抜いたガス拡散基材に塗工し、30℃、6時間で、十分乾燥させて電極前駆体(電極触媒層:厚さ20μm、大きさ5cm角とした。
電解質膜(Dupont社製 Nafion112 厚さ50μm、面積10cm角)の両面に、上記で作製した電極前駆体を電極触媒層が内側となるように配置し膜電極接合体前駆体を得た後、電極前駆体が配置されずに露出している電解質膜の外周部に、シール材を配置し、セパレータで両側を挟持した。これを、さらに集電板と絶縁板を介して2枚のステンレス鋼製の端板で挟み、端板同士を締結ロッドで、30kgf/cmの圧力で締結し、膜電極接合体前駆体の温度を130℃まで加温した後、燃料流路および酸化剤ガス流路を介して1Mのメタノールを供給速度5cc/minで供給した。これにより、膜電極接合体前駆体における電極触媒層と電解質膜とを接合して膜電極接合体を得た。続いて、10分後に供給を停止し、パージガスを供給した状態で70℃まで降温させることにより燃料電池を得た。
なお、前記セパレータは、外形寸法は、厚さ2mm、高さ130mm、幅260mmであり、カソードまたはアノードと対向する面には、セパレータ板の中央部20cm×9cmの領域に、2.9mmピッチ、幅約2mmの酸化剤ガス流路または燃料流路を形成した。また、冷却水用流路は、ピッチ2.9mm、幅約2mmとした。また、前記セパレータには、酸化剤ガス、燃料ガス、および冷却水のマニホルド穴を設けた。
(比較例1)
実施例1と同様にして得た膜電極接合体前駆体を、130℃、10分間でホットプレスすることにより膜電極接合体を得た。前記膜電極接合体の電極前駆体が配置されずに露出している電解質膜の外周部に、シール材を配置した後に、セパレータで両側を挟持した。これを、さらに集電板と絶縁板を介して2枚のステンレス鋼製の端板で挟み、端板同士を締結ロッドで、30kgf/cmの圧力で締結することにより燃料電池を得た。
(評価)
上記で作製した燃料電池の発電性能を下記手順に従って評価した。
燃料電池のアノード側に燃料として水素を供給し、カソード側には酸化剤として空気を供給した。両ガスともセル出口圧力は大気圧とし、水素は58.6℃、R.H60%および0.261L/min、空気は55.0℃、R.H.50%、および1.041L/min、セル温度は70℃に設定し、水素利用率は60%、空気利用率は40%とした。この条件下で、電流密度1A/cmの電流密度で1分間発電した際のセル電圧(V@1A/cm2)を測定した。
実施例1で作製した燃料電池では0.92Vの電圧が得られたのに対して、比較例1で作製した燃料電池でも0.92Vの電圧が得られ、両者とも同等の電圧が得られた。これにより本発明によれば、従来の方法と比較してより簡便な方法により燃料電池を製造できることがわかる。
本発明の製造方法における単位セル前駆体を含む燃料電池の断面模式図である。 本発明の製造方法における単位セル前駆体を含む燃料電池の断面模式図である。
符号の説明
101…電解質膜、102…電極触媒層、103…支持体、104…ガス拡散層、105…セパレータ、106…エンドプレート、107…シール材、108…入口側燃料連通孔または入口側酸化剤ガス連通孔、109…出口側燃料連通孔または出口側酸化剤ガス連通孔。

Claims (6)

  1. 電解質膜の両側に電極前駆体が配置されてなる膜電極接合体前駆体と、燃料流路を有するアノード側セパレータと、酸化剤ガス流路を有するカソード側セパレータと、を含む単位セル前駆体の両側、または、前記単位セル前駆体を少なくとも二以上積層させて得られた積層体の両側をエンドプレートで挟持する燃料電池の製造方法において、
    前記エンドプレートで挟持した後に前記単位セル前駆体を、50〜200℃とし、前記燃料流路および前記酸化剤ガス流路を介して溶媒を供給する燃料電池の製造方法。
  2. 前記溶媒は、1〜100cc/minの供給速度で、1〜60分間、供給される請求項1記載の燃料電池の製造方法。
  3. 前記溶媒が、前記電解質膜および前記電極前駆体の構成材料に対して難溶性を示す請求項1または2記載の燃料電池の製造方法。
  4. 前記電極前駆体が、ガス拡散層上に形成された電極触媒層を含む請求項1〜3のいずれかに記載の燃料電池の製造方法。
  5. 前記電極前駆体が、支持体上に形成された電極触媒層と、前記支持体に接して配置されるガス拡散層と、を含む請求項1〜4のいずれかに記載の燃料電池の製造方法。
  6. 前記支持体は、前記溶媒に対して溶解性を示す請求項5記載の燃料電池の製造方法。
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