JP2007156264A - 高精度耐熱性ミラー及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】母材上に樹脂層、反射膜を順次形成した光学ミラーについて、前記母材の熱拡散率α=λ/(c・ρ)(mm2/sec)が、1乃至175であり、線膨張係数が1.0×10−5乃至5.0×10−5であり、樹脂層の厚さが0.01mm乃至0.30mm であり、母材を形成する材料の縦弾性率(Eb)と樹脂層を形成する材料の縦弾性率(Ep)の比(Eb/Ep)が5乃至120であること。 ただし、λ:熱伝導率(W/mm・K) c:比熱(J/g・K) ρ:密度(g/mm3)
【選択図】図12
Description
一方、プロジェクター用投射ユニットには高輝度の光源が使用されており、光源からの発熱による温度上昇が生じる。そのため、これらの光学ミラーには線膨張係数の高い樹脂素材では、温度変動に対して精度劣化が生じるため、光学性能の維持が難しく、ガラス素材が多用されている。
しかし、レーザー走査ユニットに用いられる光学ミラーの場合には、レーザーを走査させるためのポリゴンスモーターに近い側、つまり光学ミラーのミラー面側の温度が、光学ミラーの背面側の温度より高くなり、ミラー内部で温度差が生じてしまう。
また、プロジェクター用投射ユニットに用いられる光学ミラーの場合にも、高輝度の光源に近い側、つまり光学ミラーのミラー面側の温度が、光学ミラーの背面側の温度より高くなり、ミラー内部で温度差が生じている。
ただし、λ:熱伝導率(W/mm・K)
c:比熱(J/g・K)
ρ:密度(g/mm3)]
そのため、温度が高い光学ミラーのミラー面側の熱膨張量が大きく、背面側の熱膨張量が小さくなるため、図2に示す方向に熱変形が生じて、ミラー面の形状精度が大きく低下してしまう。
逆に、図4に示すように、ベース部材(母材1)表面に積層一体化させた樹脂部材(樹脂層2)の厚さが小さすぎると、ベース部材表面の微小凹凸(金属を射出成形やダイキャスト成形した際に生じる表面の粗さ、プラスチックに含有させた高熱伝導性フィラーや繊維などによる表面の粗さ)を、樹脂部材により吸収して改善して平滑な面にすることができず、ミラー面の形状精度、表面粗さが低い光学ミラーとなってしまう。
逆に、図7に示すように、ベース部材(母材1)の剛性(縦弾性率)が高くて樹脂部材(樹脂層2)との剛性(縦弾性率)の差が非常に大きい場合(樹脂部材の剛性≪ベース部材の剛性)、光学ミラーの樹脂部材(樹脂層2)がベース部材に対して大きく熱変形しようとするが、ベース部材(母材1)は樹脂部材(樹脂層2)の熱変形を阻止する方向に作用するので、樹脂部材とベース部材との界面で剥離してしまう。そのため、ベース部材の剛性(縦弾性率)が余り大きすぎるのも問題である。
(A)母材と、当該母材上に設けた樹脂層と、当該樹脂層上に設けた反射膜とにより形成されている光学ミラーについて、
(イ)前記母材の熱拡散率α=λ/(c・ρ)(mm2/sec)が、1乃至175であり、
(ロ)線膨張係数が1.0×10−5乃至5.0×10−5であり、
(ハ)樹脂層の厚さが0.01mm乃至0.30mmであり、
(ニ)母材を形成する材料の縦弾性率(Eb)と樹脂層を形成する材料の縦弾性率(Ep)の比(Eb/Ep)が5乃至120であること。
ただし、λ:熱伝導率(W/mm・K)
c:比熱(J/g・K)
ρ:密度(g/mm3)
そして、上記母材は、金属もしくはそれらの合金により形成することができ(請求項2に対応)、特に、アルミニウムもしくはその合金により形成することができる(請求項5に対応)。
また、上記母材は、高熱伝導性フィラーおよび金属を含有している樹脂により成形することができ(請求項3に対応)、さらに、マグネシウムもしくはその合金により形成することができる(請求項4に対応)。
上記母材は、高熱伝導性フィラーおよび金属を含有している樹脂により成形されたもの、あるいは、マグネシウムもしくはその合金により形成されたものであるときは、これを射出成形法により製造することができ(請求項6に対応)、また、アルミニウムもしくはその合金により形成されたものであるときはダイキャスト法によって製造することができる(請求項7に対応)。
上記樹脂層は、紫外線硬化性樹脂により形成することができ(請求項8に対応)、また、熱硬化性樹脂により形成することができ(請求項9に対応)、さらに、熱可塑性樹脂により形成することができる(請求項10に対応)。
上記反射膜は、銀により形成することができる(請求項13に対応)。
(1)母材を形成する材料の熱拡散率が1(mm2/sec)以上、好ましくは10(mm2/sec)乃至175(mm2/sec)、線膨張係数が1.0×10−5 乃至5.0×10−5、好ましくは3.0×10−5以下であり、
(2)樹脂層の厚さが0.01mm乃至0.30mm、好ましくは0.10mm以下であり、
(3)母材を形成する材料の縦弾性係数(Eb)と樹脂層を形成する材料の縦弾性率(Ep)の比(Eb/Ep)が5以上、好ましくは20乃至120であることによって、高精度な反射面を有し、かつ、高い耐熱性を持った、信頼性の高い光学ミラーを得ることができる。
また、樹脂層の厚さが0.01mm乃至0.30mm、好ましくは0.10mm以下であることにより、ベース部材(母材1)表面の小さな凹凸、粗さを、吸収・改善して平滑なミラー面にすることができる作用と、樹脂層の厚さが大きすぎるため、光学ミラーのミラー面側と背面側との温度差が大きくなることにより生じる熱変形を小さくする作用がある。
さらに、母材を形成する材料の縦弾性係数(Eb)と樹脂層を形成する材料の縦弾性係数(Ep)の比(Eb/Ep)が5以上、好ましくは20乃至120であることにより、ベース部材の剛性(縦弾性率)が低くて、樹脂部材(樹脂層2)の剛性(縦弾性率)に近い場合に生じる熱変形を小さくする作用と、ベース部材(母材1)の剛性(縦弾性率)が高すぎて、樹脂部材(樹脂層2)と剛性(縦弾性率)の差が非常に大きい場合に生じるベース部材(母材1)と樹脂部材(樹脂層2)の界面で剥離が生じるのを防ぐ作用がある。
その結果、高精度な反射面を有し、高い耐熱性を持った、信頼性の高い光学ミラーが得られる。
なお、母材を形成する材料の熱拡散率が1(mm2/sec)未満では、光学ミラーのミラー面側と背面側との温度差が大きくなり、温度差により生じる熱変形が10μm以上と大きくなってしまう。他方、熱拡散率が175(mm2/sec)を示す物質は銀(Ag)であり、これより熱拡散率が大きい物質は、今のところ現存していない。
また、ベース部材(母材1)の線膨張係数が1.0×10−5未満では、樹脂部材(樹脂層2)の熱膨張量とベース部材(母材1)の熱膨張量の差が大きくなるため、ベース部材(母材1)と樹脂部材(樹脂層2)と樹脂層の界面で剥離が生じてしまう。他方、5.0×10−5より大きいと、光学ミラーのミラー面側と背面側との温度差により生じる熱変形が非常に大きくなってしまい、上記効果を生じない。
また、樹脂層の厚さが0.01mm未満では、ベース部材(母材1)表面の小さな凹凸、粗さを樹脂部材(樹脂層2)により、吸収・改善して平滑なミラー面にすることができない。他方、0.30mmより大きいと、樹脂層の厚さが大きすぎるため、光学ミラーのミラー面側と背面側との温度差が大きくなり熱変形が大きくなってしまい、上記効果を生じない。
図1に、大型非球面ミラーMの構成が示されており、母材1の上に樹脂層2、反射膜3が積層されている。本実施例の構成は次のとおりである。
母材1はマグネシウム合金(AZ91D)であり、その熱拡散率 α、線膨張係数βは次のとおりである。
(a)熱拡散率 α=λ/(c・ρ)=30(mm2/sec)
ただし、熱伝導率 λ:5.61×10−2(W/mm・K)
比熱 c:9.78×10−1(J/g・K)
密度 ρ:1.82×10−3(g/mm3)
マグネシウム合金は射出成形法(チクソモールディング法)で成形可能であるから、生産性が良く、低コストかつ、熱拡散率が大きい母材を得られる。
この実施例1は、母材に熱拡散率αが約30であるマグネシウム合金を用いているため、熱変形量は非常に小さくなる。
(b)線膨張係数βは2.7×10−5(/℃)
線膨張係数βは、1.0×10−5 乃至5.0×10−5の範囲にある。
樹脂層2は紫外線硬化性樹脂(アクリル系樹脂)であり、母材1の上に、紫外線硬化性樹脂による樹脂層2が形成されている。紫外線硬化性樹脂として、アクリル系樹脂をベースにして耐熱性を向上させたものを用いている。樹脂層2の厚さは、0.1mmであり、0.01mm乃至0.30mmの範囲内にある。
5mmでの5種類)と樹脂温度の関係を示す。樹脂層2の厚さを大きくするにつれて、光学ミラーの反射面側の樹脂温度が上昇している。母材1の部分に熱拡散率αの大きいマグネシウム合金を用いているため、母材内部の厚さ方向位置による温度差はほとんどない。
図10に、樹脂層2の厚さと、光学ミラー表裏の温度差により生じる熱変形量の関係を示す。樹脂層2の厚さが大きくなるにつれて、光学ミラーに生じる熱変形量は大きくなることが示されている。樹脂層の厚さは0.1mmとなっているため、熱変形量は小さく抑えることができる。
反射膜3は反射層3a(Ag)および保護層3b(SiO2)によるものであり、樹脂層2の上に、反射層3aであるAg、さらに反射層3aの上に保護層3bであるSiO2の薄膜を形成させている。反射層3aにAgを用いているため、他の金属薄膜と比較して光線反射率が大きく、光源の発熱による光学ミラーの温度上昇を、低減することができる。また、反射層3aの上には、保護膜3bが設けられているので、キズなどがつきにくい。
母材1を形成するマグネシウム合金の縦弾性率(Eb)は4.6×10+3(kg/mm2)、樹脂層2を形成する紫外線硬化性樹脂の縦弾性率(Ep)は2.0×10+2(kg/mm2)であり、縦弾性率比(Eb/Ep)は約23となり、熱変形量は非常に小さくなる。
しかし、母材1の熱拡散率αが1以上、好ましくは10乃至175、線膨張係数βが1.0×10−5 乃至5.0×10−5、好ましくは3×10−5以下、樹脂層2の厚さが0.01mm乃至0.30mm、好ましくは0.1mm以下、母材1を形成する材料の縦弾性率(Eb)と樹脂層2を形成する材料の縦弾性率(Ep)の縦弾性率比(Eb/Ep)が5以上、好ましくは20乃至120のの光学ミラーは、非常に高精度で耐熱性のある特性を有している。
なお、上記の好ましい範囲にすることにより、ミラー面の熱変形量を3μm以内にすることができる。
次に、図1に示されるような光学ミラーの製造方法について述べる。
(1)母材1の形成
図14に、マグネシウム合金の母材を形成する方法である、チクソモールディング法を示している。チクソモールディング法は、樹脂を用いた射出成形法とほぼ同様な工程で、マグネシウム合金製の母材1を得ることができる。成形工程は、溶融状態に加熱したマグネシウム合金を、スクリューで金型内に射出充填して冷却することにより、欲する形状の母材1を成形することができる。チクソモールディング法は、射出成形と同様に、生産性が良く、低コストで母材を作成することができる。
図15に、母材1の上に樹脂層を形成する方法を示しており、これは母材1に紫外線硬化性樹脂を用いて樹脂層2を形成させる方法を用いている。紫外線硬化性樹脂として、アクリル系樹脂をベースにして、耐熱性を向上させたものを用いている。
まず、母材1と透明型D(樹脂製またはガラス製)の間に、液体状の紫外線硬化性樹脂を注入する。その後、加圧しながら、透明型D側から紫外線を照射する。これによって紫外線硬化性樹脂は、重合して硬化し、樹脂層2が形成される。
図16に、樹脂層2の上に反射膜3を形成する真空蒸着法を示している。この方法では真空炉内で蒸着源(Ag)10を加熱、蒸発させて、樹脂層2の上に堆積させ、反射層3aを形成させ、その後、反射層3a上に保護層3bであるSiO2の薄膜を形成させている。
図17に、fθミラーの構成を示す。母材11の上に樹脂層12、反射膜13が設けられている。本実施例の構成は次のとおりである。
母材11はPES(ポリエーテルサルフォン)に、熱伝導率の高いカーボンや金属を混入させた樹脂で、熱拡散率α、線膨張係数βは次のとおりである。
(a)熱拡散率 α=λ/(c・ρ)=1.8(mm2/sec)
ただし、熱伝導率 λ:2.85×10−3(W/mm・K)、
比熱 c:7.27×10−1(J/g・K)、
密度 ρ:2.20×10−3(g/mm3)
母材11の材質が樹脂のため、通常の射出成形法で成形可能であり、生産性が高く、低コストかつ、熱拡散率αが1以上の母材を得ることができる。また、射出成形法のため、成形品の寸法精度が高い。
(b)線膨張係数β=1.2×10−5(/℃)。
これは1.0×10−5乃至5.0×10−5の範囲内に入っている。
樹脂層12は熱硬化性樹脂(エポキシ系樹脂)製であり、母材11の上に形成されている。熱硬化性樹脂として、エポキシ系の樹脂で、耐熱性が高いグレードのものを用いている。樹脂層12の厚さは、0.05mmであり、これは0.01mm乃至0.30mmの範囲内に入っている。
樹脂層12の上に、反射層13aであるAl、さらに反射層の上に保護層13bであるMgF2の薄膜を形成させている。反射層13aの上に保護膜13bが設けられているので、キズなどがつきにくい。
母材11を形成するPES(ポリエーテルサルフォン)の縦弾性率(Eb)は1.6×10+3(kg/mm2)であり、また、樹脂層12を形成する紫外線硬化性樹脂の縦弾性率(Ep)は2.0×10+2(kg/mm2)である。したがって、縦弾性率比(Eb/Ep)は約8であり、熱変形量は小さい。
図18に、本実施例の光学ミラーの設計値との差を示す。この光学ミラーの設計値との差は小さく、高精度で耐熱性が高い。
次に、図17に示されるような光学ミラーの製造方法を、母材の形成、樹脂層の形成、反射層の形成の順で説明する。
(1)母材11の形成
通常の射出成形法で成形可能であり、生産性が良く、低コストで、母材11を得ることができる。成形工程は、溶融状態に加熱した樹脂を、スクリューで金型内に射出充填して冷却することにより、欲する形状の母材11を得ることができる。また、射出成形法のため、成形品の寸法精度が良い母材を得ることができる。
図19に、母材11上に樹脂層12を形成する方法を示す。母材11に熱硬化性樹脂を用いて、樹脂層12を形成させる方法を用いている。熱硬化性樹脂として、エポキシ系の樹脂で耐熱性の高いものを用いている。まず、母材11と温度制御手段(ヒータ、加熱流体など)Daにより昇温された金型D1との間に、液体状の熱硬化性樹脂を注入する。その後、金型D1で加圧しながら、熱硬化性樹脂の温度を上昇させる。熱硬化性樹脂は、温度上昇により重合、硬化して、樹脂層12が形成される。
図20に、樹脂層12上に反射膜13を形成させる真空蒸着法を示す。真空炉内で蒸着源(Al)10を加熱、蒸発させて、樹脂層12上に堆積させ、反射層13aを形成させる。その後、同様にして反射層13aに保護層(MgF2)の薄膜を形成させる。
fθミラーの構成は図20に示すものと違いはなく、母材11の上に樹脂層12、反射膜13が設けられている。本実施例の構成は次のとおりである。
母材11はアルミニウム合金製であり、その熱拡散率α、線膨張率βは次のとおりである。
(a)熱拡散率 α=λ/(c・ρ)=57(mm2/sec)
ただし、熱伝導率 λ:1.38×10−1(W/mm・K)
比熱 c:8.96×10−1(J/g・K)
密度 ρ:2.70×10−3(g/mm3)
この母材11はその材質がアルミニウム合金のため、アルミダイキャスト法で成形可能であり、生産性が高く、低コストかつ、熱拡散率αが非常に大きい。
(b)線膨張係数βは2.38×10−5(/℃)であり、1.0×10−5乃至5.0×10−5の範囲内にある。
樹脂層12は熱可塑性樹脂製であり、母材11上に熱可塑性樹脂により形成されている。熱可塑性樹脂としてポリカーボネートを用いている。樹脂層12の厚さは、0.05mmであり、0.01乃至0.30mmの範囲内にある。
反射膜13は反射層(Al)および保護層(MgF2)によるものであり、樹脂層12の上に、反射層13aであるAlが、さらに反射層13a上に保護層13bであるMgF2の薄膜がある。反射層13a上に保護膜13bが設けられていることにより、反射層13にキズなどがつきにくい。
母材11を形成するアルミニウム合金の縦弾性率(Eb)は7.0×10+3(kg/mm2)、樹脂層を形成する熱可塑性樹脂の縦弾性率(Ep)は2.5×10+2(kg/mm2)である。したがって、縦弾性率比(Eb/Ep)は約28であり、熱変形量が小さい。
本実施例3の光学ミラーはその設計値との差(熱変形量)は、非常に小さく、高精度で耐熱性が高い。
次に、実施例3の光学ミラーの製造方法を説明する。
(1)母材の形成
図21に、アルミニウム合金の母材を形成する方法である、アルミダイキャスト法を示す。アルミダイキャスト法は、溶融状態に加熱したアルミニウム合金を、プランジャー51で金型D4(固定金型D4a、可動金型D4bによる射出成形金型)のキャビティ52に射出充填し、その後、冷却、硬化させ、金型D4を開き、インジェクションピン53でキャビティ52から成型品を突き出して取り出す成形方法であり、欲する形状の母材を高精度で成形することができる。アルミダイキャスト法によれば、射出成形と同様に、母材11を高生産性、低コストで生産することができる。
図22に、母材11の上に樹脂層および反射膜を形成する方法を示している。これは、反射膜(反射層のAlと保護層のMgF2)を蒸着してある熱可塑性樹脂(ポリカーボネート)製樹脂シート20を用いて、樹脂層12と反射膜13を同時に母材11に形成させる方法である。母材11の上に配置した樹脂シート20(反射膜が蒸着してある熱可塑性樹脂シート)を、温度制御機構(赤外線ヒータなど)30を用いて加熱する。その後に、金型(上)D2を下降させて、樹脂シート20を金型(下)D2に押し付ける。樹脂シート20が母材11と密着するまで加圧することにより、母材11に樹脂層12と反射膜13が同時に形成される。この方法により、非常に低コストで光学ミラーを製造することができる。
この実施例4は、図17に示すような母材11の凹面に樹脂層12、反射膜13が積層された光学ミラーであり、その構成は次の通りである。
(1)母材11について
母材はPES(ポリエーテルサルフォン)に、熱伝導率の高いカーボンや金属を混入させた樹脂製である。そして、その熱拡散率α、線膨張係数βは次のとおりである。
(a)熱拡散率 α=λ/(c・ρ)=1.8(mm2/sec)
ただし、熱伝導率 λ:2.85×10−3(W/mm・K)
比熱 c:7.27×10−1(J/g・K)
密度 ρ:2.20×10−3(g/mm3)
(b)線膨張係数βは1.2×10−5(/℃)であり、1.0×10−5 乃至5.0×10−5の範囲内にある。
樹脂層12は熱可塑性樹脂であり、母材11の上に、熱可塑性樹脂による樹脂層12が形成されている。この熱可塑性樹脂としてポリカーボネートを用いている。樹脂層12の厚さは、0.1mmであり、0.01mm乃至0.30mmの範囲内にある。
反射膜13は反射層(Ag)および保護層(SiO2)によるものであり、樹脂層の上に、反射層であるAgの薄膜を、さらに反射層の上に保護層であるSiO2の薄膜を形成している。反射層にAgを用いているため、他の金属薄膜と比較して光線反射率が大きく、光源からの発熱による光学ミラーの温度上昇を低減することができ、また、反射膜13の反射層の上に保護膜が設けられていることにより、キズなどがつきにくい。
母材11を形成するPES(ポリエーテルサルフォン)の縦弾性率(Eb)は1.6×10+3(kg/mm2)、樹脂層を形成する熱可塑性樹脂(ポリカーボネ−ト)の縦弾性率(Ep)は2.5×10+2(kg/mm2)であるから、縦弾性率比(Eb/Ep)は約6.4である。
本実施例4の光学ミラーの設計値との差(熱変形量)は小さく、高精度で耐熱性が高い。
次に、実施例4の光学ミラーの製造方法について説明する。
(1)母材11および樹脂層12の形成
図23に、母材11および樹脂層12を同じ工程で並行して形成する方法を示す。この方法は、水平回転軸Sを中心にして上下一対の成形キャビティを備えた金型を用いるものであり、金型D3を縦に回転させながら、母材11の成形と樹脂層12との同時成形を繰り返し行うものである。
すなわち、金型D3は軸方向に分離される割型であり、その下方の成形キャビティでの母材11の成形と上方のキャビティに既に成形されている母材への樹脂層12の成形とを同時に行い(図23(a))、型D3を軸方向に開いて(図23(b))「母材+樹脂層」の中間製品Pを取り出し(図23(c))、その後、金型D3を水平回転軸Sを中心にして180度縦方向に回転させて、再び図(a)の行程に移る。
以上のように、連続的に母材11および樹脂層12が形成されるので、非常に生産性が高く、低コストで、「母材と樹脂層」とによる中間製品Pを製造することができる。また、射出成形法によるものであるから、寸法精度が高い母材および樹脂層を得ることができるのも大きなメリットである。
真空炉内で蒸着材料(Ag)を加熱、蒸発させて、樹脂層の上に堆積させ、反射層を形成し、その後、反射層と同様に、保護層であるSiO2の薄膜を形成する(図20参照)。
実施例5のfθミラー構成は基本的には図17のそれと特に違いはなく、母材11の上に樹脂層12、反射膜13を積層しているものであり、その詳細は次のとおりである。
(1)母材11について
母材は銀製であり、その熱拡散率α、線膨張係数βは次のとおりである。
(a)熱拡散率 α=λ/(c・ρ)=175(mm2/sec)
ただし、熱伝導率 λ:4.30×10−1(W/mm・K)
比熱 c:2.37×10−1(J/g・K)
密度 ρ:1.05×10−2(g/mm3)
(b)線膨張係数:1.9×10−5(/℃)
線膨張係数は、1.0×10−5乃至5×10−5の範囲内にある。
樹脂層12は紫外線硬化性樹脂(アクリル系樹脂)であり、母材11の上に形成されている。紫外線硬化性樹脂として、アクリル系樹脂をベースにして、耐熱性を向上させたものを用いている。樹脂層12の厚さは、0.1mmであり、0.01mm乃至0.30mm以下の範囲内にある。
反射膜13は反射層(Ag)と保護層(SiO2)によるものであり、樹脂層12の上に、反射層13aであるAg、さらに反射層の上に保護層13bであるSiO2の薄膜が形成されている。反射層にAgを用いているため、他の金属薄膜と比較して光線反射率が大きく、光源からの発熱による光学ミラーの温度上昇を低減することができる。また、反射層13aの上には、保護膜13bが設けられているので、キズなどがつきにくい。
母材11を形成する銀の縦弾性率(Eb)は1.0×10+4(kg/mm2)、樹脂層12を形成する紫外線硬化性樹脂の縦弾性率(Ep)は2.0×10+2(kg/mm2)である。したがって、縦弾性率比(Eb/Ep)は約50であり、熱変形量は非常に小さくなっている。
本実施例4の光学ミラーは熱拡散率の最も良い銀を母材としているため、設計値との差が非常に小さく、高精度で耐熱性が高い。
次に、実施例5の光学ミラーの製造方法を説明する。
(1)母材11の形成について
銀で母材11を形成する方法はアルミ合金と同様に、ダイキャスト法を用いる。ダイキャスト法は、溶融状態に加熱した銀をプランジャーで金型内に射出充填し、冷却、硬化させて、所定形状の母材を成形する方法である。
母材11に紫外線硬化性樹脂を用いて樹脂層12を形成させる方法を用いており、紫外線硬化性樹脂として、アクリル系樹脂をベースにして、耐熱性を向上させたものを用いている。
まず、母材11と透明型(樹脂製またはガラス製)Dの間に(図15参照。ただし、光学ミラーの基本形状は異なる)、液体状の紫外線硬化性樹脂を注入する。その後、加圧しながら、透明型D側から紫外線を照射する。紫外線硬化性樹脂は、紫外線により重合、硬化して、樹脂層が形成される。
真空炉内で蒸着材料(Ag)を加熱、蒸発させて、樹脂層の上に堆積させ、反射層を形成させる(図20参照)。その後、反射層と同様にして、保護層であるSiO2の薄膜を形成させている。
以上のような光学ミラーの製造方法によって、高精度かつ高耐熱性で信頼性の高い光学ミラーが作成される。
また、図25に示すような複写機、レーザープリンタ−やファクシミリ装置等のレーザー走査ユニットの非球面ミラーに用いることによって、温度変化による光学性能の劣化がなくかつ結像性能が良く、ドット位置ずれ等のないレーザープリンターやファクシミリ装置を実現できる。
2,12:樹脂層
3,13:反射膜
10:蒸着源
20:樹脂シート
30:赤外線ヒータ
D,D1,D2,D3,D4:金型
Claims (15)
- 母材と、当該母材上に設けた樹脂層と、当該樹脂層上に設けた反射膜とにより形成されている光学ミラーであって、
前記母材の熱拡散率α=λ/(c・ρ)(mm2/sec)が、1乃至175であって、線膨張係数が1.0×10−5 乃至5.0×10−5、樹脂層の厚さが0.01mm乃至0.30mmであり、前記母材を形成する材料の縦弾性率(Eb)と樹脂層を形成する材料の縦弾性率(Ep)の比(Eb/Ep)が5乃至120であることを特徴とする光学ミラー。
ただし、λ:熱伝導率(W/mm・K)
c:比熱(J/g・K)
ρ:密度(g/mm3) - 前記母材が、金属もしくはそれらの合金により形成されていることを特徴とする請求項1の光学ミラー。
- 前記母材が、高熱伝導性フィラーおよび金属を含有している樹脂により成形されていることを特徴とする請求項1の光学ミラー。
- 前記母材が、マグネシウムもしくはその合金により形成されていることを特徴とする請求項2の光学ミラー。
- 前記母材が、アルミニウムもしくはその合金により形成されていることを特徴とする請求項2の光学ミラー。
- 前記母材が、射出成形法により製造されることを特徴とする請求項3又は請求項4の光学ミラー用の光学ミラー製造方法。
- 前記母材が、ダイキャスト法により製造されることを特徴とする請求項5の光学ミラー用の光学ミラー製造方法。
- 前記樹脂層が、紫外線硬化性樹脂により形成されていることを特徴とする請求項1の光学ミラー。
- 前記樹脂層が、熱硬化性樹脂により形成されていることを特徴とする請求項1の光学ミラー。
- 前記樹脂層が、熱可塑性樹脂により形成されていることを特徴とする請求項1の光学ミラー。
- 前記樹脂層を、シート状の紫外線硬化樹脂、熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂により製造することを特徴とする請求項8,請求項9,又は請求項10の光学ミラー用光学ミラー製造方法。
- 前記樹脂層および反射膜が、金属薄膜もしくは誘電体多層膜を有しているシート状の紫外線硬化樹脂、熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂により製造することを特徴とする請求項8,請求項9,又は請求項10の光学ミラー用光学ミラー製造方法。
- 前記反射膜が、銀により形成されていることを特徴とする請求項1の光学ミラー。
- 請求項1乃至13のいずれかに記載の光学ミラーを用いたことを特徴とするレーザー走査ユニット。
- 請求項1乃至13のいずれかに記載の光学ミラーを用いたことを特徴とするプロジェクター用投射ユニット。
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