以下、本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。
[実施の形態1]
(検査治具の構成)
図1は、本発明の実施の形態1にかかる検査治具1の概略構成を示す斜視図である。図2は、図1のE−E断面の一部を拡大して示す部分拡大断面図である。
本形態の検査治具1は、ICチップ等の集積回路や回路基板等の検査対象物T(図2参照)の配線パターンTpの導通状態を検査して、配線パターンTpの短絡や断線等の異常を発見するための検査装置2に用いられるものである。特に、本形態の検査冶具1は、携帯電話の液晶用のドライバ基板や、FPD(Flat Panel Display)等の配線パターンTpのピッチが狭い検査対象物Tの検査に適したものである。この検査治具1は、図1に示すように、導電性を有する複数の導線3と、複数の導線3が固定される固定部材4と、複数の導線3を押さえるための押え板5と、複数の導線3の端部が固定されたコネクタ6とを備えている。また、検査治具1は、図1に示すように、検査冶具1を検査装置2に取り付けるための取付部材7と、固定部材4と取付部材7との間に配設される緩衝部材8とを備えている。なお、図1では便宜上、一部の導線3にのみ符号を付している。
固定部材4は、略直方体状の絶縁性樹脂部材(たとえば、スーパーエンプラ)が階段状に加工されて形成されている。すなわち、固定部材4は、図1および図2に示すように、略直方体状に基部4aと、基部4aから図1の上方に突出し、複数の導線3が配設される複数の溝部4bが形成された略直方体状の溝形成部4cとから構成されている。図1に示すように、溝形成部4cの図示左右方向の長さはLとなっている。なお、固定部材4は、加工性に優れたセラミック材料で形成しても良い。また、図1では便宜上、一部の溝部4bにのみ符号を付している。
複数の溝部4bは、図1および図2における溝形成部4cの上面側に、導線3の長手方向に沿って、かつ、互いが平行になるように形成されている。本形態では、複数の溝部4bは、図1における溝形成部4cの右端から左端まで連続的に形成されている。また、図2に示すように、溝部4bの断面形状は矩形状となっている。たとえば、溝部4bの幅W1は35μmであり、また、溝部4bの深さD1は25μmから30μmとなっている。さらに、これらの複数の溝部4bは略等ピッチPで形成されている。この溝部4bのピッチPは非常に狭く、たとえば、溝部4bのピッチPは50μmとなっている。なお、溝部4bの断面形状は矩形状には限定されず、円形状や図2の上側を底辺とする三角形状であっても良い。
押え板5は、図1に示すように、たとえば、金属材料から細長の板状に形成されている。この押え板5は、図1における固定部材4の基部4aの上面に複数の導線3を押さえ付けて導線3のばらつきや重なりを防止するため、図示を省略するネジ等の固定手段によって、基部4aに取り付けられている。なお、本形態では、押え板5の基部4bと当接する面(図1の下面)は平面となっているが、押え板5の基部4bと当接する面に、複数の導線3を配設可能な複数の溝を形成して、導線3を整列配置させても良い。
取付部材7は、たとえば、金属材料で直方体状に形成されている。この取付部材7は、図1に示すように、検査装置2の取付部10にネジ等の取付手段によって取り付けられている。緩衝部材8は、たとえば、ゴムやスポンジ等の弾力性を有する部材で略直方体状に形成されている。取付部材7は、緩衝部材8を挟んだ状態で、図1における固定部材4の下面に固定されている。なお、取付部材7および緩衝部材8は、必ずしも必要でなく、固定部材4が直接、取付部10に取り付けられても良い。
導線3は、たとえば、銅線、真鍮線、銀線、アルミニウム線等の導電性を有する電線である。本形態の導線3は、銅線の回りに絶縁層となる絶縁被膜(図示省略)が形成されたエナメル線である。また、本形態の導線3は極細のものであり、その太さは、溝部4bに配設できる太さとなっている。たとえば、導線3の径は35μmよりもわずかに小さな径となっている。なお、本形態の導線3は、絶縁被膜が形成されたエナメル線であるが、導線3には絶縁被膜が形成されていなくても良い。
導線3は、図1および図2に示すように、溝部4bに配設されている。具体的には、図1に示すように、長尺状の導線3の一部が溝部4bに配設されるとともに、導線3の一端(図1の左端)が図1における固定部材4の一端面(図1の左端面)4dからはみ出さないように配設されている。また、本形態の導線3は、溝部4bで固定部材4に固定されている。具体的には、図2に示すように、導線3は、溝部4bと導線3との間に注入された接着剤11によって、溝部4bに固定されている。本形態の接着剤11は紫外線硬化型の接着剤である。そのため、本形態では、接着剤11への紫外線の照射強度や照射時間を制御することで、接着剤11が硬化するまでの時間の制御ができる。また、紫外線硬化型の接着剤は硬化時に発熱しないため、本形態では、接着剤の硬化時の熱が導線3や固定部材4に与える影響を排除することができる。
本形態では、導線3の径は溝部4bの深さD1よりも大きくなっており、溝部4bに固定された導線3の側面の一部は、溝形成部4cの長さLにわたって、図1における溝形成部4cの上面から突出する。この導線3の、溝形成部4cの上面から突出する部分(すなわち、側面の一部)は、長さLにわたって、図2に示すように、絶縁被膜とともに除去されている。この絶縁被膜と側面の一部が除去されて形成された導線3の細長い平面状の部分にはメッキ加工が施されている。すなわち、図2に示すように、本形態では、溝部4bに固定された導線3の図示上側の側面の絶縁被膜等は除去され、この絶縁被膜等が除去された部分には幅W2かつ長さLのメッキ層12が形成されている。本形態では、メッキ層12が、検査対象物Tの配線パターンTpに形成された端子部Tp1(図2参照)に導電接触する接触部となっている。すなわち、本形態では、溝部4bに固定された導線3の固定部分に接触部が形成されている。また、本形態では、図1および図2における溝形成部4cの上面側に平行に並んで一列で配置された接触部が形成されている。なお、本形態では、溝形成部4cの長さLにわたって、メッキ層12が形成されているが、溝形成部4cの上面から突出する導線3の側面の長さL方向の一部の絶縁被膜等を除去して(たとえば、長さLの半分の部分の絶縁被膜等を除去して)、その部分にメッキ層12を形成しても良い。
本形態のメッキ層12は、ニッケルメッキ層上に、金メッキ層、パラジウムメッキ層あるいは、ロジウムメッキ層等が積層された2層構造になっている。すなわち、メッキ層12では、ニッケル等の下地メッキ層の上に、高硬度で耐摩耗性に優れるとともに、接触抵抗が低く、しかも酸化しにくいメッキ層が積層されている。たとえば、本形態のメッキ層12では、下地メッキとしてのニッケルメッキ層の上に、金メッキ層が形成されている。
コネクタ6には、図1に示すように、複数の導線3の図示右端が固定されている。このコネクタ6は、検査装置2の本体部(図示省略)に設けられたコネクタ13に接続されている。すなわち、本形態では、接触部となるメッキ層12が形成された複数の導線3がコネクタ6、13によって、検査装置2の本体部に接続されている。
(検査冶具の製造方法)
図3は、図1の検査冶具1の製造工程を示すフローチャートである。図4は、図1の検査治具1の製造工程の前半部分を説明するための説明図であり、(A)は、溝部4bが形成される前の固定部材4を示し、(B)は、溝部4b形成時の固定部材4を示し、(C)は、溝部4bの形成後の固定部材4を示す。図5は、図1の検査治具1の製造工程の後半部分を説明するための説明図であり、(A)は、溝部4bに導線3が配設された状態を示し、(B)は、溝部4bに配設された導線3が接着剤11で固定された状態を示し、(C)は、溝部4bに固定された導線3の側面の一部の絶縁被膜が除去された状態を示す。なお、図5には、図1のE−E断面に相当する図が示されている。
以上のように構成された検査冶具1の製造方法を以下に説明する。
まず、図3および図4に示すように、固定部材4に溝部4bを形成する(溝部形成工程S1)。すなわち、図4(A)に示す階段状の固定部材4の溝形成部4cに、図4(B)に示すように、ダイシングソー15によって溝部4bを形成する。より具体的には、図示を省略する駆動手段で回転駆動されたダイシングソー15によって、溝形成部4cの上面側に、長さLにわたって、略等ピッチPでかつ互いが平行になるように、複数の溝部4bを形成する。そして、図4(C)に示すように、所定数の溝部4bを形成すると、溝部形成工程S1が終了する。
この溝部形成工程S1で用いられるダイシングソー15は、ダイアモンド粒を結合剤で固めた薄い回転刃15aを備えている。この回転刃15aは、溝部4bを形成する際に高速回転する。また、ダイシングソー15では、回転刃15aとして、最小で厚さ5μmといった非常に薄い回転刃15aを使用することができるため、ダイシングソー15は、狭いピッチPの溝部4bを形成するのに適している。
溝部形成工程S1が終了すると、図3および図5(A)に示すように、溝部4bに導線3を配設する(導線配設工程S2)。その後、図3および図5(B)に示すように、溝部4bに配設された導線3を接着剤11で溝部4bに固定する(導線固定工程S3)。本形態では、接着剤11は、紫外線硬化型の接着剤であるため、導線3が配設された溝部4bに接着剤11を注入し、その後、溝部4bに向かって紫外線を照射する。紫外線照射によって、接着剤11が硬化し、導線固定工程S3が終了すると、図3および図5(C)に示すように、導線3の一部の側面の絶縁被膜を除去する(被膜除去工程S4)。具体的には、平面研削機(またはマシニング)16によって、導線3の、溝形成部4cの上面から突出する部分の絶縁被膜を除去する。同時に、溝形成部4cの上面から突出する導線3の側面部分を除去する。また、被膜除去工程S4では、絶縁被膜とともに除去された導線3の側面部分(図5(C)における複数の導線3上部の平面部分)の平面度を出す。
被膜除去工程S4が終了すると、図2および図3に示すように、導線3の絶縁被膜が除去された部分にメッキ加工を行う(メッキ加工工程S5)。具体的には、まず、ニッケルメッキ加工を行い、その後に、金メッキ加工等を行う。すなわち、2層構造のメッキ層12を形成する。本形態のメッキ加工工程S5では、電解メッキでメッキ加工を行う。すなわち、電解メッキ装置(図示省略)の電源に陰極として接続された導線3および陽極として接続されたニッケル等の金属片をメッキ液に浸けた状態で通電することで、メッキ加工を行う。なお、本形態では、電解メッキでメッキ加工を行っているが、無電解メッキでメッキ加工を行い、メッキ層12を形成しても良い。
メッキ加工工程S5が終了すると、図1および図3に示すように、押え板5、コネクタ6、取付部材7および緩衝部材8といった各種の部材を取り付ける(部材取付工程S6)。部材取付工程S6で各種部材の取付が完了すると、検査冶具1の製造工程が終了する。
(実施の形態1の主な効果)
以上説明したように、実施の形態1の検査治具1では、複数の導線3の側面の一部にメッキ層12が形成され、このメッキ層12が検査対象物Tに導電接触する接触部となっている。そのため、導線3の先端を検査対象物Tに導電接触させる場合と比較して、接触部と検査対象物Tとの接触面積を広くすることができ、導線3の径を細くしても、導線3と検査対象物Tとを安定して導電接触させることができる。したがって、検査治具1では、導線3の径を細くして、導線3に形成されるメッキ層12のピッチPを狭めることができる。その結果、配線パターンTpのピッチが狭く、かつ、検査用パターンを備えていない回路基板等の検査対象物Tであっても、実施の形態1の検査冶具1によって、電気的特性の検査を適切に行うことができる。
実施の形態1では、複数の導線3が検査装置2の本体部へコネクタ6、13によって接続されている。そのため、従来の検査冶具のように、プローブ針の後端部と導線の先端が接続された接続電極とを接触させる必要がなくなる。したがって、プローブ針が細くなることで生じるプローブ針と接続電極との位置合わせの問題やプローブ針と接続電極とを接触させる際の安定性の問題が生じることはない。その結果、導線3の径を細くすることができ、接触部となるメッキ層12のピッチPを狭めることができる。
実施の形態1では、固定部材4は、導線3の一部が配設される溝部4bを備えている。そのため、固定部材4に対する導線3の位置決めを確実に行うことができる。したがって、導線3に形成されるメッキ層12と検査対象物Tの端子部Tp1とを確実に接触させることが可能となる。特に、実施の形態1では、導線3は、溝部4bで固定部材4に固定され、かつ、メッキ層12は、溝部4bに固定された導線3の固定部分に形成されている。そのため、メッキ層12を確実に位置決めすることができ、メッキ層12と検査対象物Tの端子部Tp1とをより確実に接触させることができる。
実施の形態1では、検査冶具1が検査装置2の取付部10と固定部材4との間に配設される緩衝部材8を備えている。そのため、緩衝部材8によって、メッキ層12と検査対象物Tの端子部Tp1との接触圧力を調整することが可能となる。その結果、メッキ層12と端子部Tp1とを適切に接触させることができる。
実施の形態1では、固定部材4に複数の溝部4bを形成し、これらの溝部4bに導線3を配設した後、導線3を固定部材4に固定している。そのため、従来に比べ、導線3のピッチPを狭めた検査冶具1を容易に製造することが可能となる。すなわち、従来のような保持孔をドリル加工によって狭いピッチで形成する場合と比較して、溝加工によって溝部4bを狭いピッチPで形成する方が容易であるため、従来の保持孔のピッチよりも狭いピッチPの溝部4bを容易に形成することができる。したがって、溝部4bに配設されるメッキ層12のピッチPを容易に狭めることができる。特に、実施の形態1では、ダイシングソー15を用いて溝部4bを形成しているため、溝部4bをより狭いピッチPで容易に形成することができる。
なお、配線パターンTpのピッチが狭く、かつ、検査用パターンを備えていない回路基板等の検査対象物Tの電気的特性の検査を行う検査冶具として、狭いピッチの配線パターンが形成された検査用の回路基板を用いることも可能である。しかしながら、このような回路基板の製造工程は複雑であるため、回路基板の設計に時間がかかるとともに製造にも時間がかかる。また、その結果、製造コストも高くなる。さらに、回路基板を製造するための大掛かりな設備が必要になる。これに対して、実施の形態1の検査冶具1の場合、製造工程が簡易であるため、設計、製造時間の短縮化が図れるとともに、製造コストの低減も図ることができる。また、ダイシングソー15および平面研削機16があれば、検査冶具1を製造できるため、大掛かりな設備も不要になる。
実施の形態1では、導線3には絶縁性の絶縁被膜が形成されている。そのため、固定部材4の基部4a上の配設される導線3同士が接触していても絶縁被膜によって導線3同士の短絡を防止することができる。したがって、導線3同士の接触を考慮することなく、検査冶具1を製造することができる。その結果、検査冶具1の製造が容易になる。また、製造後においても、絶縁被膜によって導線3同士の短絡を確実に防止することができる。
実施の形態1では、導線3にメッキ層12が形成され、そのメッキ層12が接触部となっている。そのため、接触部の腐食(錆)を防止することができ、電気的に安定した状態で接触部と検査対象物Tの端子部Tp1とを接触させることができる。また、実施の形態1では、電解メッキでメッキ層12が形成されるため、メッキ加工の際の電流値や通電時間を制御することで、メッキ層12の厚さを制御することができる。したがって、厚さのばらつきが少ないメッキ層12を形成することができる。その結果、メッキ層12と端子部Tp1とを確実に接触させることが可能となる。また、電解メッキでメッキ加工を行うため、導線3の絶縁被膜が除去された部分にのみメッキ層12が形成される。すなわち、不要な部分にメッキが付着することがないため、安定した検査が可能になる。
(実施の形態1の変形例)
図6は、本発明の実施の形態1の変形例にかかる検査冶具21の概略構成を示す図であり、(A)は平面図、(B)は側面図である。図7は、本発明の実施の形態1の変形例にかかる溝形成部34cの周辺を拡大して示す部分拡大断面図である。なお、図7では、図1のF−F断面に相当する断面が図示されている。
実施の形態1では、接触部となるメッキ層12が、図1および図2における溝形成部4cの上面側に一列で配置されている。この他にもたとえば、図6に示す検査治具21のように、固定部材4と同様に製造された固定部材24に導線3が固定されたものを検査冶具1の図示上側に重ねて固定することで、図6における検査冶具21の上面側に接触部が2列で配置されるようにしても良い。
すなわち、検査冶具21では、固定部材24は、複数の溝部4bと同様に形成された複数の溝部24bを有する溝形成部24cを備え、実施の形態1と同様に、複数の溝部24bのそれぞれに複数の導線3が固定されている。また、溝部24bに固定された導線3の固定部分には、図2のメッキ層12と同様のメッキ層12Aが形成されている。そして、この導線3が固定された固定部材24は、押え板5がない状態の検査冶具1の基部4aの上に重ねて固定され、複数の溝部4bに固定された導線3のメッキ層12からなる接触部と、複数の溝部24bに固定された導線3のメッキ層12Aからなる接触部とによって、検査冶具21の上面側に接触部が2列で配置されている。なお、図6では、実施の形態1と共通する構成には同一の符号を付している。
この場合、図6(A)に示すように、ピッチPで形成された複数の溝部4bと、ピッチPで形成された複数の溝部24bとが千鳥配置されても良いし、複数の溝部4bと複数の溝部24bとが図6(A)の上下方向で一致するように配置されても良い。すなわち、固定部材4に配設された導線3に形成された接触部と、固定部材24に配設された導線3に形成された接触部とが千鳥配置されても良いし、図6(A)の上下方向で同一位置に配置されても良い。また、検査冶具21では、図6の上面側に接触部が2列で配置されているが、導線3が配設された固定部材(固定部材4、24と同種のもの)を同様に重ねることで、検査冶具の上面側に3列以上の接触部が配列されるようにしても良い。
また、実施の形態1では、略直方体状の溝形成部4cに溝部4bが形成され、この溝部4bに導線3が固定されている。この他にもたとえば、図7に示すように、図示の断面が半円状に形成された溝形成部34cを固定部材34が備えるとともに、この溝形成部34cの表面に沿うように、図示の断面が円弧状に形成された複数の溝部34bのそれぞれに複数の導線3が固定されるようにしても良い。この場合には、図7に示すように、円弧状の溝部34bに沿って配設された導線3の図7における上端位置にメッキ層12Bが形成されている。このように構成すると、図7における固定部材34の上端位置に接触部となるメッキ層12Bが形成されるため、メッキ層12Bと検査対象物Tの端子部Tp1とを接触させやすくなる。
[実施の形態2]
図8は、本発明の実施の形態2にかかる検査治具41の概略構成を示す図であり、(A)は平面図、(B)は側面図、(C)は(B)のG方向から固定部材4の一端面4d側を拡大して示す拡大図である。図9は、図8(A)のH−H断面の一部を拡大して示す部分拡大断面図である。
実施の形態1の検査治具1と実施の形態2の検査治具41とでは、固定部材4に対する導線3の固定位置が相違し、この点が検査治具1と検査治具41との主要な相違点となっている。したがって、以下では、この相違点を中心に実施の形態2の検査冶具41の構成を説明する。なお、以下では、実施の形態1の構成と共通する構成については、図面に同一の符号を付するとともに、共通する部分についての詳細な説明は省略する。あるいは、実施の形態1と共通する部分についての図示および説明は省略する。
実施の形態2の検査装置41は、実施の形態1の検査治具1と同様に、検査対象物Tの配線パターンTpの導通状態を検査して、配線パターンTpの短絡や断線等の異常を発見するための検査装置2(図8では図示省略)に用いられるものである。この検査冶具41は、図8に示すように、実施の形態1と同様の複数の導線3、固定部材4およびコネクタ6(図8では図示省略)を備えている。また、検査冶具41は、図8に示すように、検査装置2の取付部10に直接固定されている。なお、検査冶具41は、押え板5を備えていない。
実施の形態2では、図8に示すように、複数の導線3は、その一部が溝部4bに配設された状態で、固定部材4の基部4aの図示上面と一端面4dとの2箇所で固定されている。すなわち、実施の形態2では、導線3が溝部4bでは固定されず、導線3の長手方向(図8の左右方向)における溝部4bの前後両側の2箇所で、導線3が固定部材4に固定されている。具体的には、シリコン系の接着剤等の粘性が高く軟らかい接着剤51によって、導線3の先端部分が一端面4dに固定され、基部4a上に配設される導線3の一部分が基部4aに固定されている。なお、導線3は、接着剤51でなく、固定板等の固定手段によって固定部材4に固定されても良い。また、固定部材4への導線3の固定箇所は2箇所には限定されず、溝部4bの前後の3箇所以上で、導線3が固定部材4に固定されても良い。
また、実施の形態2では、図9に示すように、溝部4bの底部と導線4との間に緩衝部材48が配設されている。この緩衝部材48は、実施の形態1の緩衝部材11と同様に、たとえば、ゴムやスポンジ等の弾力性を有する部材で形成されている。なお、溝部4bの底部と導線4との間に緩衝部材48を配設しないように構成しても良い。
さらに、実施の形態2では、図8(C)および図9に示すように、溝部4bに配設された導線3の配設部分には、メッキ層12が形成されている。具体的には、実施の形態1と同様に、導線3の溝形成部4cの上面から突出する部分は、絶縁被膜とともに除去されている。また、この絶縁被膜等が除去された部分にメッキ層12が形成されている。実施の形態2でも、このメッキ層12が、検査対象物Tの端子部Tp1に導電接触する接触部となっている。すなわち、溝部4bに配設された導線3の配設部分に接触部が形成されている。なお、実施の形態1と同様に、溝形成部4cの長さLにわたって、メッキ層12を成しても良いし、溝形成部4cの上面から突出する導線3の側面の長さL方向の一部の絶縁被膜等を除去して、その部分にメッキ層12を形成しても良い。
以上のように構成された検査冶具41は、実施の形態1の検査冶具1とほぼ同様に製造される。すなわち、検査冶具41の製造方法では、導線固定工程S3において、導線3を、その長手方向における溝部4bの前後両側の2箇所で、接着剤51によって固定する点、および、部品取付工程S6で、コネクタ6のみが取り付けられる点が相違するが、その他の工程は、検査冶具1の製造方法と同様である。
以上説明したように、実施の形態2の検査冶具41では、導線3が、その長手方向における溝部4bの前後両側の2箇所で固定部材4に固定され、溝部4bに配設された導線3の配設部分に形成されたメッキ層12が接触部となっている。また、溝部4bの底部と導線4との間に緩衝部材48が配設されている。そのため、緩衝部材48によって、溝部4bに配設された各導線3ごとに、メッキ層12と検査対象物Tの端子部Tp1との接触圧力を調整することができる。そのため、メッキ層12と検査対象物Tの端子部Tp1とをより適切に接触させることができる。
なお、図6および図7に示す実施の形態1の変形例の構成を実施の形態2の検査冶具41に適用しても良い。
[実施の形態3]
図10は、本発明の実施の形態3にかかる検査治具の溝形成部44cの周辺を拡大して示す部分拡大断面図である。図11は、本発明の実施の形態3の変形例にかかる検査冶具の固定部材54を示す斜視図である。図12は、本発明の実施の形態3の変形例にかかる検査冶具61の一端面54d側を示す側面図である。なお、図10では、図1のF−F断面に相当する断面が図示されている。
上述した実施の形態1および2では、溝部4b、24bに固定された導線3の、図1等における図示上側の側面の絶縁被膜等が除去され、この絶縁被膜等が除去された部分に形成されたメッキ層12、12Aが接触部となっている。すなわち、図1等における溝形成部4c、24cの上面側に接触部が形成されている。これに対して、実施の形態3では、図10に示すように、実施の形態1および2における固定部材4の一端面4dに対応する固定部材44の一端面44d側で、導線3の側面にメッキ層42が形成され、このメッキ層42が接触部となっている。具体的には、メッキ層42が形成される実施の形態3の溝形成部44cの周辺は、以下のように構成されている。
図10に示すように、固定部材44の溝形成部44cには、図示の断面がL形状をなす溝部44bが形成されている。すなわち、溝形成部44cには、図10における溝形成部44cの上面側に形成された上面溝部44b1と一端面(図10の左端面)44d側に形成された側面溝部44b2とが連続する断面L形状をなす溝部44bが形成されている。実施の形態3では、上面溝部44b1の深さD2は導線3の径とほぼ同じであり、側面溝部44b2の深さD3は導線3の径より浅くなっている。なお、この溝部44bは、上述した溝部形成工程S1に相当する溝部形成工程で、ダイシングソー15によって形成される。
導線3は、溝部44bに沿って配設されている。すなわち、導線3の一部は、図10に示すように、上側溝部44b1および側面溝部44b2の両方に配設されている。また、導線3は、図示を省略する紫外線硬化型の接着剤等の接着剤で上面溝部44b1および側面溝部44b2に固定されている。なお、溝部44bへの導線3の配設は、上述した導線配設工程S2に相当する導線配設工程で行われ、溝部44bへの導線3の固定は、上述した導線固定工程S3に相当する導線固定工程で行われる。
また、実施の形態3では、導線3の側面溝部44b2から図示左方向へ突出する部分は、絶縁被膜とともに除去され、この絶縁被膜等が除去された部分にはメッキ加工が施されている。すなわち、図10に示すように、側面溝部44b2に固定された導線3の図示左側の側面の絶縁被膜等は除去され、この絶縁被膜等が除去された部分にはメッキ層42が形成されている。このメッキ層42は検査対象物Tの端子部Tp1に導電接触する接触部となっている。すなわち、実施の形態3では、固定部材44の一端面44d側に接触部が形成されている。なお、絶縁被膜等の除去は、上述した被膜除去工程S4に相当する被膜除去工程で行われ、メッキ層42の形成は、上述したメッキ加工工程S5に相当するメッキ加工工程で行われる。
以上のように、接触部となるメッキ層42を固定部材44の一端面44d側に形成しても良い。なお、図11に示すように、図示上面側に形成された上面溝部54b1と図示手前側の側面である一端面54dに形成された側面溝部54b2とからなる溝部54bを有する直方体状の固定部材54を用いて、固定部材54の一端面54d側にメッキ層42に相当するメッキ層を形成しても良い。また、この固定部材54を用いる場合には、1個の固定部材54を利用して、接触部となるメッキ層が一端面54d側に一列に配置された検査冶具を構成しても良いし、図12に示すように、複数個の固定部材54(図12に示す例では3個)を積層して、接触部となるメッキ層が一端面54d側に複数列(図12に示す例では3列)に配置された検査冶具61を構成しても良い。
[実施の形態4]
図13は、本発明の実施の形態4にかかる検査治具の溝形成部64cを拡大して示す部分拡大断面図である。図14は、本発明の実施の形態4の変形例にかかる検査冶具の固定部材74を示す斜視図である。図15は、本発明の実施の形態4の変形例にかかる検査冶具71の一端面74d側を拡大して示す拡大図である。なお、図13では、図1のF−F断面に相当する断面が図示されている。
上述した実施の形態1から3では、導線3の側面の絶縁被膜等が除去され、この絶縁被膜等が除去された部分に形成されたメッキ層12、12A、42が接触部となっている。すなわち、実施の形態1から3では、導線3の側面に接触部が形成されている。これに対して、実施の形態4では、図13に示すように、導線3の先端部にメッキ層62が形成され、このメッキ層62が接触部となっている。具体的には、メッキ層62が形成される実施の形態4の溝形成部64cの周辺は、以下のように構成されている。
図13に示すように、固定部材64の溝形成部64cの上面には、溝部64bが形成されている。この溝部64bは、上述した溝部形成工程S1に相当する溝部形成工程で、ダイシングソー15によって形成される。また、導線3の一部は、溝部64bに配設されている。具体的には、図13に示すように、導線3の先端部が固定部材64の一端面(図13の左端面)64dから左側にわずかに突出するように、導線3が溝部64bに配設されている。この溝部64bへの導線3の配設は、上述した導線配設工程S2に相当する導線配設工程で行われる。さらに、導線3は、図示を省略する紫外線硬化型の接着剤等の接着剤で溝部64bに固定されている。この溝部64bへの導線3の固定は、上述した導線固定工程S3に相当する導線固定工程で行われる。
また、実施の形態4では、導線3の先端部にはメッキ加工が施され、メッキ層62が形成されている。このメッキ層62は検査対象物Tの端子部Tp1に導電接触する接触部となっている。すなわち、実施の形態4では、導線3の先端部に接触部が形成されている。また、この接触部は、固定部材64の一端面64d側に形成されている。このメッキ層62の形成は、上述したメッキ加工工程S5に相当するメッキ加工工程で行われる。なお、実施の形態4では、上述した被膜除去工程S4に相当する被膜除去工程がない。
以上のように、導線3の先端部に形成されたメッキ層62を接触部とすることもできる。なお、図14に示すように、図示上面側に形成された溝部74bを有する直方体状の固定部材74を用いて、導線3の先端部にメッキ層62を形成しても良い。また、この固定部材74を用いる場合には、1個の固定部材74を利用して、接触部となるメッキ層62が一端面74d側に一列に配置された検査冶具を構成しても良いし、図15に示すように、複数個の固定部材74(図15に示す例では3個)を積層して、接触部となるメッキ層62が一端面74d側に複数列(図15に示す例では3列)に配置された検査冶具を構成しても良い。
[他の実施の形態]
上述した各形態は、本発明の好適な形態の一例ではあるが、これに限定されるものではなく本発明の要旨を変更しない範囲において種々変形可能である。
たとえば、上述した実施の形態1等では、複数の導線3の端部はコネクタ6に固定され、コネクタ6は、検査装置2の本体部(図示省略)に設けられたコネクタ13に接続されている。この他にもたとえば、図16に示すように、検査装置の本体部(図示省略)が検査対象物Tの導通状態を判断するための検査用基板TBを備えている場合には、検査治具81のように、検査治具が検査用基板TBの端子部(図示省略)に導電接触する基板接触部を備えても良い。すなわち、検査治具は、以下のように構成された検査治具81であっても良い。
図16に示すように、検査治具81は、実施の形態1等で説明した固定部材4を2つ備えている。この2つの固定部材4は、それぞれの一端面4d側でかつ下面側が圧縮コイルバネ等の付勢部材82によって図16の上下方向に付勢された状態で連結され、それぞれの他端面4e側でかつ下面側が図示を省略する蝶番等によって連結されている。すなわち、2つの固定部材4は、他端面4e側の連結部分を中心とした矢印X方向への相対的な揺動が可能となるように連結されている。
また、2つの固定部材4のうちの一方の固定部材4の複数の溝部4bにはそれぞれ複数の導線3の一端が固定され、他方の固定部材4の複数の溝部4bにはそれぞれ、一方の固定部材4に固定された導線3につながる複数の導線3の他端が固定されている。さらに、2つの固定部材4のそれぞれの溝部4bに固定された導線3の固定部分の側面には、実施の形態1と同様にメッキ層12が形成されている(図16では図示省略)。すなわち、導線3の両端側の側面には、メッキ層12が形成されている。そして、一方(図16では上側)の固定部材4の溝部4bに配設された導線3の一端側に形成されたメッキ層12が検査対象物Tに導電接触する接触部となっており、他方(図16では下側)の固定部材4の溝部4bに配設された導線3の他端側に形成されたメッキ層12が検査用基板TBに導電接触する基板接触部となっている。
なお、導線3は、それぞれの固定部材4において押え板5によって、ばらつかないように押さえられている。また、検査用基板TBは、所定のコネクタ83を介して検査装置の制御部(図示省略)に接続されている。すなわち、図16における検査用基板TBは、中継基板となっている。
このように構成された検査治具81では、複数の導線3の両端側の側面にそれぞれ、検査対象物Tに導電接触する接触部となるメッキ層12と、検査用基板TBに導電接触する基板接触部となるメッキ層12とが形成されている。そのため、検査対象物Tの電気的特性の検査を容易にするため、検査装置の本体部に検査用基板TBが設けられる場合であっても、導線3と検査用基板TBとを容易に電気的に接続することができる。
また、検査用基板TBの端子部に導電接触する基板接触部を備える検査冶具は、検査冶具81の他にも、図17に示す検査治具91であっても良い。すなわち、基板接触部を備える検査治具は、以下のように構成された検査治具91であっても良い。
検査治具91は、側面から見た形状が浅い溝型をなす固定部材94を備えている。すなわち、検査治具91は、複数の溝部4bと同様の複数の溝部(図示省略)がそれぞれ形成された2つの溝形成部94cを有する固定部材94を備えている。一方の溝形成部94cに形成された複数の溝部にはそれぞれ複数の導線3の一端が固定され、他方の溝形成部94cの複数の溝部にはそれぞれ、一方の固定部材4に固定された導線3につながる複数の導線3の他端が固定されている。また、2つの溝形成部94cのそれぞれの溝部に固定された導線3の固定部分の側面には、実施の形態1と同様にメッキ層12が形成されている(図17では図示省略)。すなわち、導線3の両端側の側面には、メッキ層12が形成されている。そして、一方(図17では左側)の溝形成部94cの溝部に配設された導線3の一端側に形成されたメッキ層12が検査対象物Tに導電接触する接触部となっており、他方(図17では右側)の溝形成部94cの溝部に配設された導線3の他端側に形成されたメッキ層12が検査用基板TBに導電接触する基板接触部となっている。
このように構成された検査治具91でも、検査治具81と同様の効果を有する。
また、上述した実施の形態1から3では、導線3の側面にメッキ層12、12A、12B、42が形成され、このメッキ層12、12A、12B、42が接触部となっている。この他にもたとえば、メッキ層12、12A、12B、42を形成せずに、導線3の絶縁被膜を除去した部分をそのまま接触部としても良い。この場合には、導線3は、銀線や真鍮線等の酸化しにくい電線であることが好ましい。
さらに、上述した実施の形態1から3では、固定部材4、24、34、44、54、64、74、94は、絶縁性樹脂部材やセラミック材料で形成されている。この他にもたとえば、これらの固定部材は、弾性部材で形成されても良い。より具体的には、これらの固定部材は、シリコンゴムで形成されても良い。この場合には、固定部材の弾性力によって、固定部材に固定される導線3の側面に形成された接触部(具体的にはメッキ層12、12A、12B、42、62)と、検査対象物Tの端子部Tp1との接触圧力を調整することが可能となる。そのため、緩衝部材8、48を用いなくても、接触部と端子部Tp1とを適切に接触させることができる。また、緩衝部材8、48が不要となるため、検査治具の構成が簡素化される。なお、固定部材は、ウレタンゴム等の他のゴム材料やスポンジ等の絶縁性を有する弾性部材で形成されても良い。
また、固定部材4、24、34、44、54、64、74、94をシリコンゴム等の弾性部材で形成する場合には、上述した実施の形態1と同様にダイシングソー等を用いた切削加工で、これらの固定部材に溝部4b、24b、34b、44b、54b、64b、74bを形成しても良いが、型を用いた成型加工で固定部材を形成するとともに、この成型加工時に型を用いて溝部を形成することが好ましい。このように構成すると、固定部材を形成すると同時に溝部を形成することができるため、検査冶具の製造工程が簡素化される。すなわち、溝部形成工程S1が、階段状に固定部材を形成するための工程に含まれるため、別途、溝部を形成するための工程が不要となり、検査冶具の製造工程が簡素化される。
なお、この場合の成型加工に用いる型には、上述した溝部形成工程S1と同様に、ダイシングソー15を用いて、成型加工時に固定部材に溝部を形成するための所定幅の凸部を所定ピッチで複数形成することが好ましい。すなわち、ダイシングソー15によって所定ピッチの複数の凹部を型に形成することで、各凹部間に凸部を形成することが好ましい。このとき、成型加工に用いる型は、実施の形態1から3の固定部材と同様に、絶縁性樹脂部材やセラミック材料で形成されても良いし、金属部材で形成されても良い。なお、絶縁性樹脂部材やセラミック材料で固定部材を形成する場合にも、成型加工で固定部材を形成しても良い。
さらにまた、上述した各形態では、検査治具を例として本発明の実施の形態を説明したが、本発明の構成は、各種のコネクタに適用することも可能である。すなわち、コネクタに形成される端子間のピッチが狭くなると、コネクタの製造が困難となるが、固定部材に溝部を形成し、その溝部に配設された導線を固定部材に固定するという本発明の構成を採用すれば、端子間のピッチが狭いコネクタであっても容易に製造することができる。なお、この場合には、導線に形成される接触部が端子としての役割を果たす。