JP2007154380A - 繊維シートの製造方法 - Google Patents

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【課題】嵩高で柔らかい繊維シート(不織布等)を効率良く製造することのできる、繊維シートの製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明の繊維シートの製造方法は、割繊可能な複合合成繊維1を含む繊維ウエブに、熱処理を施し、前記複合合成繊維1の構成樹脂2,3間を部分的に剥離させる工程、及び構成樹脂2,3間を部分的に剥離させた前記複合合成繊維に、水流を作用させ、該複合合成繊維を極細繊維4に分割させる工程を具備する。
【選択図】図2

Description

本発明は、不織布等の繊維シートの製造方法に関する。
例えば、カード法で使用可能な繊維の限界の繊度は0.9dtex程度であり、これより細い径の繊維の不織布等を製造する場合には、割繊可能な複合合成繊維(以下、分割繊維ともいう)に分割処理を施して分割させる必要がある。
分割繊維を分割して微細な繊維を含む不織布を得る方法として、カードにより繊維ウエブを形成した後、高圧水流を作用させ、前記分割繊維を分割させると共に繊維を交絡させる方法がある(例えば、特許文献1参照)。しかし、分割繊維の分割には、スパンレース法による通常の不織布製造に用いる水流よりも高い水圧が必要となるため、製造される不織布は、薄くて硬く締まった不織布となり、嵩高で柔らかい不織布を製造することが困難である。
また、熱処理によって複合繊維を一部を剥離させ、次いで、カレンダーロールを用いて繊維を分割させる方法がある(特許文献2参照)。しかし、熱処理により分割させる方法には、例えば複数成分のうちの一方の成分がその融点付近で50%近く縮むような特殊な分割繊維を用いる必要があり、分割繊維として汎用されている繊維を使用することができない。また、熱処理により分割させる繊維は、一般に分割率が低く、また、該繊維を混合できる比率に限界があり物性が不安定で加工安定性が低い。
また、熱処理後に高圧水流を作用させ分割繊維の一部を分離させる方法(特許文献3参照)が知られている。しかし、この方法は、熱処理により分割繊維同士を部分的に融着させ、高圧水流を当てるときに繊維を固定しておくことにより、分割繊維の分離を促進する方法であり、繊維を固定しておくことにより、分割繊維の長手方向の全体が分割されにくく、極細繊維からなる柔軟な不織布を製造することができない。
特開平4−257359号公報 特開平8−158229号公報 特開平8−266829号公報
従って、本発明の目的は、嵩高で柔らかい繊維シート(不織布等)を効率良く製造することのできる、繊維シートの製造方法に関する。
本発明は、割繊可能な複合合成繊維を含む繊維ウエブに、熱処理を施し、前記複合合成繊維の構成樹脂間を部分的に剥離させる工程、及び構成樹脂間を部分的に剥離させた前記複合合成繊維に、水流を作用させ、該複合合成繊維を極細繊維に分割させる工程を具備する繊維シートの製造方法を提供することにより前記目的を達成したものである。
本発明によれば、嵩高で柔らかい繊維シート(不織布等)を効率良く製造することができる。
本発明で用いられる、割繊可能な複合合成繊維は、熱処理により、少なくとも構成成分間に部分的な剥離を生じさせ得るものであり、従来、極細繊維等の製造に用いられている各種公知の複合合成繊維を用いることができる。
本発明においては、従来、高圧水流を作用させて分割させていた分割繊維、即ち、構成成分の収縮率に極端な差がないような繊維も好ましく用いられる。
複合合成繊維の例としては、複合合成繊維を構成する樹脂のうち融点が最も低い樹脂の融点(T1)が110℃<T1<170℃の範囲にあり、且つ該融点(T1)が、他の成分の融点より少なくとも20℃低い熱可塑性樹脂である、複合合成繊維を挙げることができる。
このような複合合成繊維における高融点樹脂と低融点樹脂との組み合わせとしては、ポリエチレンテレフタレートとポリエチレン、ポリエチレンテレフタレートとポリプロピレン、ポリプロピレンとポリエチレン、ポリエチレンテレフタレートと低融点化したポリエチレンテレフタレート等が挙げられる。
融点最低の樹脂の融点(T1)は、115〜165℃の範囲内にあることがより好ましく、該融点(T1)は、他の成分の融点より20〜140℃低いもの、特に30〜130℃低いものであることが好ましい。尚、融点は、DSCにより測定した値である。
本発明で用いられる割繊可能な複合合成繊維は、例えば、図1に示すように、2種類の樹脂2,3が、繊維1の長手方向に連続的に配されており且つ繊維1の周方向に交互に配されている繊維であることが好ましい。このような複合合成繊維は6分割〜24分割可能な繊維であることが好ましく、特にコスト、生産性、分割性の点で8分割〜16分割可能な繊維であることが好ましい。
本発明で製造する繊維シートの目付及び比容積は、例えば、目付が10〜50g/m2であり、比容積が18〜40cm3/gである。
従来、水流交絡法(スパンレース)で分割繊維を分割させる場合、高圧水流により生じる繊維のムラを目立たなくしたり、高圧水流により不織布が硬く締まった状態になるのを防いだりする観点から、繊維ウエブの目付を高くする必要があった。本発明によれば、従来のスパンレース法ではムラなく分割させるのは困難であった低目付の繊維ウエブを用いて、低目付けの繊維シートを製造することができる。繊維シートの目付は、例えば15〜45g/m2とすることができ、更には20〜40g/m2とすることができる。比容積は、例えば18〜40cm3/gとすることができ、更には20〜35cm3/gとすることができる。低目付の繊維シートを製造することによって、低コスト化が図れるだけでなく、生産速度を高めることができるという効果も奏される。
繊維ウエブの製造方法としては、カード機を用いるカード法、積繊機を用いるエアレイ法等が挙げられる。好ましくはカード法である。
本発明で用いられる複合合成繊維は、熱処理前の平均繊度が1.5〜6dtexであることが好ましく、より好ましくは1.8〜5.6dtexであり、更に好ましくは2.0〜4.4dtexである。このような繊度の複合合成繊維は、カード機を用いて容易且つ効率的に繊維ウエブに形成することができる。尚、水流を作用させた後の極細繊維の平均繊度は、例えば0.1〜0.6dtexとなることが、柔軟な不織布を得る点から好ましい。
また、繊維ウエブ中の複合合成繊維の割合は、50〜100重量%であることが好ましく、より好ましくは60〜100重量%であり、更に好ましくは70〜100重量%である。従来、高圧水流のみの作用や熱による収縮のみの作用により分割繊維を分割させる方法においては、複合合成繊維の割合を50重量%以上とすることは困難であったが、本発明によれば、複合合成繊維の割合を上記のような範囲とすることができ、上記の範囲とすることで、構成繊維の低繊度化が達成され、繊維シートの柔軟性が高まるといった効果が奏される。繊維ウエブ中には、前記複合合成繊維以外の繊維を含有させても良く、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、アクリル、ナイロン、綿や羊毛等の単繊維、異なる2種の樹脂を組み合わせた芯鞘型繊維、偏芯芯鞘型繊維、サイドバイサイド型繊維等の熱融着性繊維を、0〜50重量%程度、混合することができる。
本発明の製造方法においては、割繊可能な複合合成繊維を含む繊維ウエブに熱処理を施し、該複合合成繊維の構成樹脂2,3間を、図2に示すように、部分的に剥離させる。例えば、図2に示す繊維1のように、隣接する2種類の樹脂2,3間が剥離した部分と、隣接する2種類の樹脂2,3間が接触している部位とが混在するようにする。
この熱処理には、エアースルー法、フローティング法、ヤンキードライヤー法を用いることができ、エアースルー法を用いることが好ましい。
この熱処理は、部分的な剥離を生じさせると共に、複合合成繊維同士の熱融着を生じさせない条件で行うことが好ましい。熱融着を生じさせない条件としては、処理温度を、複合合成繊維を構成する樹脂のうち融点が最も低い樹脂の融点(T1)未満としたり、処理温度を該融点T1以上とする一方、処理時間を短くすることが挙げられる。熱処理の温度は、部分的な剥離を生じさせると同時に複合合成繊維同士を熱融着させない観点から、複合合成繊維を構成する樹脂のうち融点が最も低い樹脂の融点(T1)に対して、20℃低い温度から15℃高い温度までの範囲内であることが好ましく、T1から15℃低い温度からT1に対して15℃高い温度までの範囲内であることがより好ましい。
複合合成繊維が、融点が最も低い樹脂として、ポリエチレンやポリプロピレンを含む場合には、該樹脂が収縮を開始する温度と、該樹脂の融点とが比較的近いため、部分的な剥離をしっかりと生じさせようとすると、繊維同士の熱融着が生じやすい。複合合成繊維同士の熱融着は、極細繊維への分離性を低下させる方向に働くため好ましくないが、水流による極細繊維への分離性を阻害しない程度の弱い熱融着が生じるような条件で行っても良い。
即ち、本発明においては、複合合成繊維同士を熱融着させないか、又は水流処理により消失させ得る弱い熱融着部が生じる程度の条件で熱処理を行い、複合合成繊維同士の熱融着に由来する熱融着部が残存しない繊維シートを得ることが、柔らかな繊維シートが得られるので好ましい。
本発明の繊維シートの製造方法においては、図2に示すように、熱処理により構成樹脂2,3間に部分的に剥離を生じさせた複合合成繊維に対し、高圧水流を作用させ、図3に示すように、該複合合成繊維を極細繊維4,4・・に分割させる。極細繊維4は、分割した各構成樹脂からなる。
高圧水流を作用させる方法としては、高圧水流の圧力を変える以外は、従来のスパンレース法不織布の製造方法の際と同様に行うことができる。
高圧水流を作用させる際の条件としては、処理速度に合わせて処理水圧を適宜設定する必要があるが、通常の分割繊維の割繊に用いる水圧条件より2〜5割程度低く設定することがムラによる外観の悪化防止や嵩高で柔らかい不織布製造の点から好ましい。
本発明の好ましい実施形態においては、この水流の作用により繊維ウエブ中の繊維が適度に交絡して、得られたシートが、不織布化している。
他の好ましい実施形態においては、熱処理後の繊維ウエブに、別に製造した不織布を積層させておき、この水流を作用させる際に、該繊維ウエブと該不織布とを、両者の構成繊維を互いに絡合させて一体化させる。
別に製造した不織布と繊維の絡合により一体化させることで、繊維ウエブの交絡が弱い場合でも不織布としての強度を高くすることが可能となるため、より嵩高で柔らかい不織布を作ることができる。別に製造した製造方法の製造方法としては、エアースルー法、ポイントボンド(ヒートロール)法、スパンレース法、ケミカルボンド法、エアレイ法、スパンボンド法、メルトブロー法等が挙げられる。別に製造した不織布は、短繊維からなるものであっても、長繊維からなるものであっても良い。
本発明の繊維シートの製造方法によれば、熱処理により構成樹脂間に部分的に剥離を生じさせておくことによって、後の水流を作用させる工程において、水流の圧力により容易に複合合成繊維が、極細繊維に分割する。そのため、従来における水流による分割繊維の分割方法に比して、水流の圧力を低くすることができ、その結果、嵩高で柔らかな繊維シートが得られる。また、繊維の偏在等が生じにくくムラも発生しにくいため、ムラによる強度不足や外観の悪化を防止するために、目付を不必要に増やすこともない。
また、水流で分割する方法に従来使用されていた各種公知の分割繊維を原料として用いることができ、従来の熱分割型繊維のように特殊なものを用いなくても、嵩高で柔らかな不織布(繊維シート)が得られる。
本発明で製造される繊維シートは、嵩高で柔らかな性質を活かして、各種多様な用途に使用することができる。例えば、その柔らかさを活かして、生理用ナプキンやパンティライナー、使い捨ておむつなどの吸収性物品の表面シート、該吸収性物品における吸収体と表面シートの間に配置されるセカンドシート、パンツ型おむつの外装材等として用いられる。また、繊維径が比較的細く、繊維の自由度が高いものを得ることができることから、清掃用シートなどとしても好適に用いられる。また、スキンケアシート等として用いることもできる。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲はかかる実施例に制限されるものではない。
1.繊維ウエブの製造
ポリエチレンテレフタレート(融点250℃、DSC法)とポリエチレン(融点127℃、DSC法)とが周方向に交互に配置された8分割型の複合合成繊維(ダイワボウポリテック株式会社製、DFS(SH)(商品名)、平均繊度2.2dtex))を原料として、カード法によって目付が30g/m2のカードウエブを製造した。このカードウエブの比容積(40Paの荷重下にて測定)は、80cm3/gであった。
2.熱処理
得られたカードウエブに、エアースルー法にて熱処理を行った。
熱処理の条件は以下の通りである。
熱処理の熱風温度:134℃
熱処理の時間:20秒
熱処理の風速:1.5m/s
熱処理後のウエブを、電子顕微鏡 S−4300SE(株式会社日立ハイテクノロジーズ社製)にて、倍率500倍で観察したところ、カードウエブに含まれる複合合成繊維の2つの樹脂成分間が図2に示すように部分的に剥離していることが確認された。
3.水流による不織布化
熱処理後のウエブに、スパンレース法により水流を作用させた。
条件は以下の通りである。
処理速度(ウエブの搬送速度):3m/min
処理水圧:0.5 − 2.0 − 3.0MPa(ノズルを3本使用し、この順に処理)
〔実施例2〜4〕
熱処理の温度を、下記に示す通りに変更した以外は、実施例1と同様にして不織布を製造した。
実施例2:128℃
実施例3:140℃
実施例4:144℃
〔実施例5〜6〕
処理水圧を、下記に示す通りに変更した以外は、実施例1と同様にして不織布を製造した。
実施例5: 0.5 − 1.5 − 2.0 MPa
実施例6: 1.0 − 3.0 − 5.0 MPa
〔比較例1〕
実施例1において得られたカードウエブに、熱処理を施さないで、スパンレース法により水流を作用させた以外は、実施例1と同様にして不織布を製造した。
〔比較例2〕
実施例1において得られたカードウエブに、実施例1と同様の熱処理を施しただけで、スパンレース法による割繊処理を実施しなかった。
〔参考例〕
処理水圧を、下記に示す通りに変更した以外は、実施例1と同様にして不織布を製造した。
処理水圧: 2.0 − 5.0 − 7.0 MPa
〔柔らかさの評価〕
実施例、比較例及び参考例で得られた不織布について、以下の方法により、(1)繊維の分割の程度、(2)柔らかさ、(3)嵩高性を評価した。それらの結果を表1に示す。
(1)繊維の分割の程度
電子顕微鏡にて倍率1000倍で観察し、任意の0.8×0.6mmの観察範囲に関し、その観察範囲における約100個の繊度を測定し、それらの平均値を平均繊度とした。測定対象は割繊可能な複合合繊維のみとし、それ以外の繊維は測定しなかった。この求められた平均繊度から、下記式に従って、分割率(完全に分割した状態を100%、未分割の状態を0%とする)を算出した。
分割率=(De/Da −1)/(Dn−1)
式中、Daは平均繊度、Dnは最大分割数(16分割繊維なら16)、Deは分割前の繊度である。
尚、上記式は、分割した繊維は完全に分割していると仮定している。
(2)柔らかさ
圧縮試験機(KES FB−3:KATO TECH社製)を用いた圧縮弾性値(LC)の測定を行った。
測定条件は以下の通りとした。
SENS 2 ; スピード 50秒/mm ; ストローク 10mm/10V ; 加圧面積 2cm2 ; 上限荷重 50gf/cm2
尚、表1中のLC値は、弾性を示す数値で、最大値は1(弾性体の場合)である。不織布においてはLC値が小さい程、柔らかいことを示す。
(3)嵩高性
不織布に40Paの応力をかけた状態で、レーザー変位計(LK−085、LK−2110:KEYENCE社製)を用い、サンプルの厚みを測定した。
サンプルの厚みと面積と重量から比容積(単位cm3/g)を算出し、表1中に併せて示した。
Figure 2007154380
表1に示す結果から、本発明によれば、繊維の分割の程度、柔らかさ及び嵩高性に優れた不織布が得られることが判る。参考例は、水流の圧力を高めたものであり、繊維の分割性の観点では良好であるが、柔らかさ及び嵩高性の点では劣っている。参考例の結果から、加える水流の最大水圧は、6.0MPa以下であることが好ましい。尚、実施例の不織布においては、水流を作用させた後の平均繊度が0.1〜0.6dtexであった。
図1は、熱処理前の繊維ウエブ中の複合合成繊維の一例を示す斜視図である。 熱処理により、図1の複合合成繊維の構成樹脂が部分的に剥離した状態を示す斜視図である。 熱処理により、図1の複合合成繊維が極細繊維に分割した状態を示す斜視図である。
符号の説明
1 割繊可能な複合合成繊維
2,3 構成樹脂
4 極細繊維


Claims (6)

  1. 割繊可能な複合合成繊維を含む繊維ウエブに、熱処理を施し、前記複合合成繊維の構成樹脂間を部分的に剥離させる工程、及び構成樹脂間を部分的に剥離させた前記複合合成繊維に、水流を作用させ、該複合合成繊維を極細繊維に分割させる工程を具備する繊維シートの製造方法。
  2. 前記複合合成繊維を構成する樹脂のうち融点が最も低い樹脂は、その融点(T1)が110℃<T1<170℃の範囲にあり、該融点(T1)が、他の成分の融点より少なくとも20℃低い熱可塑性樹脂である、請求項1記載の繊維シートの製造方法。
  3. 前記複合合成繊維の、前記熱処理前の平均繊度が1.5〜6dtexであり、水流を作用させた後の平均繊度が0.1〜0.6dtexである、請求項1又は2記載の繊維シートの製造方法。
  4. 前記繊維シートは、目付が10〜50g/m2で、比容積が18〜40cm3/gである、請求項1〜3の何れかに記載の繊維シートの製造方法。
  5. 前記繊維ウエブ中の前記複合合成繊維の割合が50〜100重量%である、請求項1〜4の何れかに記載の繊維シートの製造方法。
  6. 熱処理後の繊維ウエブに、別に製造した不織布を積層させ、前記水流を作用させる際に、該繊維ウエブと該不織布とを両者の構成繊維を互いに絡合させて一体化させる、請求項1〜5の何れかに記載の繊維シートの製造方法。

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