以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき説明する。本発明の伸縮性不織布は、弾性繊維層を有している。伸縮性不織布は、弾性繊維層のみから構成されていてもよく、或いは後述する図1に示すようにその少なくとも一方の面に実質的に非弾性の非弾性繊維層が積層されていてもよい。弾性繊維層は弾性繊維を含んでいる。弾性繊維層は弾性繊維のみからなるか、又は弾性繊維及び/若しくは非弾性繊維を含んでいる。弾性繊維は1種又は2種以上を用いることができる。弾性繊維層に非弾性繊維が含まれる場合、非弾性繊維は1種又は2種以上を用いることができる。
弾性繊維のうちの少なくとも1種の繊維は、スチレン系エラストマーを含有する弾性繊維である。弾性繊維層に含まれる弾性繊維は、該スチレン系エラストマーを含有する弾性繊維のみであるか、又は該弾性繊維及び該弾性繊維と異なる他の弾性繊維である。
前記スチレン系エラストマーを含有する弾性繊維は、該スチレン系エラストマーのみから構成されるか、又は該スチレン系エラストマー及び他の1種又は2種以上の樹脂を含有して構成される。
本発明で用いられる前記スチレン系エラストマーを含有する弾性繊維は、その構成樹脂の溶融粘度及び溶融張力によって特徴付けられる。前記スチレン系エラストマーを含有する弾性繊維の構成樹脂は、その溶融粘度が230℃において100〜700Pa・sである。また前記スチレン系エラストマーを含有する弾性繊維の構成樹脂は、その溶融張力が0.2〜2.0cNである。この範囲の溶融粘度は、従来用いられているスチレン系エラストマーの溶融粘度と比較して低いレベルにあり、またこの範囲の溶融張力は、従来用いられているスチレン系エラストマーの溶融張力と比較して高いレベルにある。つまり、本発明で用いられる前記スチレン系エラストマーを含有する弾性繊維の構成樹脂は、低溶融粘度及び高溶融張力を有することによって特徴付けられる。このような特徴を有する構成樹脂からなる弾性繊維を用いることで、本発明の伸縮性不織布は、その伸縮特性が従来のものに比較して一層高くなる。
特に、前記スチレン系エラストマーを含有する弾性繊維の構成樹脂が低溶融粘度及び高溶融張力を有することによって、弾性繊維を溶融紡糸するときの糸切れが起こりにくくなり、細径の連続繊維を容易に製造することができる。弾性繊維を細径にできることは、不織布の地合いにムラが生じづらくなることに大きく寄与し、また伸縮特性の向上にも大きく寄与する。弾性繊維を連続繊維(フィラメント)にできることも、伸縮特性の向上に大きく寄与する。連続繊維とは実質的に連続であり、例えば10cm以上の長さのものを意味する。
更に、前記スチレン系エラストマーを含有する弾性繊維の構成樹脂が低溶融粘度及び高溶融張力を有することによって、糸切れによるショットが生じにくくなる。その結果、肌触りの良好な不織布が得られる。ショットとは、溶融紡糸時の糸切れによって生じる繊維の塊のようなものである。溶融紡糸時に繊維が切れると、切れた繊維が縮もうとするので繊維が丸まり塊のようになることが原因で発生する。ショットが生じると、不織布がざらついた感じになる。
以上の各観点から、前記スチレン系エラストマーを含有する弾性繊維の構成樹脂の溶融粘度を200〜700Pa・s、特に300〜600Pa・sとすると、伸縮特性が一層向上する。スチレン系エラストマーの溶融張力を0.2〜1.5cN、特に0.5〜1.5cNとすることも同様の効果がある。
前記スチレン系エラストマーを含有する弾性繊維の構成樹脂の溶融粘度及び溶融張力は、キャピログラフ(東洋精機製)を用いて測定される。測定条件は次の通りである。バレルのシリンダー直径は10mm、ピストン直径は9.55mmである。ダイのノズル孔の直径は1.0mmである。バレルを230℃に保ち、気泡が入らないように少量ずつ樹脂ペレットをシリンダー内に入れながら棒で押して充填する。樹脂を充填後、樹脂温度が安定するまで約5分間保持する。溶融粘度は、ピストン速度5mm/分における粘度の安定点で測定する。この時のせん断速度は60sec-1である。溶融張力は、同温度にてピストン速度15mm/分、ドロー速度15m/分におけるテンションを測定して求められる。測定結果はN=3の平均値とした。
弾性繊維を構成する樹脂の溶融時の粘度指標として、当該技術分野において一般的な指標であるメルトインデックス(ASTM D1238、190℃、2.16kg)を採用することもできる。メルトインデックスが好ましくは4〜50g/10min、より好ましくは6〜20g/10minであると、通常成形温度よりも低い温度(例えば成形温度よりも50〜100℃低め)に設定される押出機の温度範囲において、成形時の押出機樹脂圧を低く抑えることができる。なお、メルトインデックスは、ある特定の温度での粘度指標に過ぎず、樹脂は温度を上げていくにつれてその粘度が低下していき、その低下具合は樹脂によって異なる。そのため、メルトインデックスは成形性の良さを示す一つの目安となるが、必ずしもすべての場合にあてはまるとは限らない。
弾性繊維に含まれる前記スチレン系エラストマーは、そのガラス転移点温度Tgが−40〜−15℃、特に−30〜−20℃であることが、伸縮特性の一層の向上の点、及び弾性繊維がべたつき感を呈することを抑える点から好ましい。
また前記スチレン系エラストマーは、その示差走査熱量分析(DSC)による変曲点温度が200〜250℃、特に215〜250℃であることが好ましい。この理由は、物理架橋点(スチレン系エラストマーの場合はスチレンブロックどうし)の結合力が比較的低い温度で弱くなるので、温度を上げた際に粘度の低下が大きくなるからである。
スチレン系エラストマーのガラス転移点温度及びDSCによる変曲点温度は、何れもDSCによる測定で求められる。測定条件は、3〜5mgの試料を窒素雰囲気中で、−60℃から昇温速度10℃/分にて加熱して測定して求めることができる。
以上の諸物性を満たす限りスチレン系エラストマーの種類に特に制限はない。例えばモノマー成分として(1)スチレン、エチレン及びブチレンを含むもの(例えば主鎖骨格がSEBS)、(2)スチレン、エチレン及びプロピレンを含むもの(例えば主鎖骨格がSEPS)、(3)スチレン及びブチレンを含むもの(例えば主鎖骨格がSBS)、(4)スチレン及びイソプレンを含むもの(例えば主鎖骨格がSIS)などが挙げられる。これらのうち、(1)スチレン、エチレン及びブチレンを含むもの、(2)スチレン、エチレン及びプロピレンを含むもの、又は(1)及び(2)の双方を用いると、前記の諸物性を容易に満たすスチレン系エラストマーが得られるので好ましい。
前記(1)及び(2)のスチレン系エラストマーは、その重量平均分子量が30,000〜200,000、特に50,000〜150,000であることが好ましい。
先に述べた通り、前記スチレン系エラストマーを含有する弾性繊維は、樹脂成分として該スチレン系エラストマーのみから構成されていてもよく、或いは該スチレン系エラストマーと他の1種又は2種以上の樹脂とを含有して構成されていてもよい。弾性繊維が前記のスチレン系エラストマー及び他の樹脂を含有する場合、弾性繊維におけるスチレン系エラストマーの含有量は20〜99重量%、特に50〜80重量%であることが好ましい。前記スチレン系エラストマーを含有する弾性繊維が該スチレン系エラストマーのみから構成されている場合には、前述の溶融粘度及び溶融張力は、該スチレン系エラストマーそのものの溶融粘度及び溶融張力と同じになる。
弾性繊維が前記のスチレン系エラストマー及び他の樹脂を含有する場合、当該他の樹脂としては、例えば、ゴム、またはポリオレフィン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリウレタン系エラストマーなどの熱可塑性エラストマーなどを用いることができる。また、熱可塑性エラストマー以外の樹脂、例えばポリエチレン、ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂などを用いることができる。これらは2種以上を組み合わせて用いることもできる。
弾性繊維が前記のスチレン系エラストマー及び他の樹脂を含有する場合、該弾性繊維の繊維形態としては、(イ)該スチレン系エラストマーと他の樹脂とのブレンドポリマーからなる単一繊維、(ロ)該スチレン系エラストマーと他の樹脂とを含有する複合繊維の形態が挙げられる。該複合繊維としては、芯鞘型複合繊維、サイド・バイ・サイド型複合繊維、分割繊維などが挙げられる。
前記のスチレン系エラストマーは、それ単独で溶融紡糸しても紡糸性が非常に良好である。これに対して従来のスチレン系エラストマーは、それ単独での紡糸性が低いので、他の樹脂を併用して紡糸性を高めていた。しかしその分、スチレン系エラストマーが本来的に有する伸縮特性が損なわれていた。従って、単独で溶融紡糸可能な前記のスチレン系エラストマーは、それが本来的に有する伸縮性が損なわれない観点から極めて有利である。つまり、弾性繊維は、樹脂成分として、前記のスチレン系エラストマーのみから構成されていることが特に好ましい。
また従来、スチレン系エラストマーの溶融粘度を下げる目的で、パラフィンオイルなどのオイル成分を含有させて繊維化する試みが行われてきた。オイル成分は繊維の表面にブリードアウトする場合があり、それに起因して他の樹脂との融着性が低下することがある。これに対して前記のスチレン系エラストマーにオイル成分を添加する必要はない。オイル成分が含まれていない弾性繊維は、弾性繊維どうしの融着性、及び非弾性繊維との融着性が高くなる。その結果、後述する図1に示す実施形態においては、弾性繊維層1と、非弾性繊維層2,3との接合が良好になり、層間剥離が起こりづらくなる。また伸縮性不織布10の表面の毛羽立ちも抑えられる。更に、オイル成分が含まれていないことで、弾性繊維の溶融紡糸時に、揮発成分の発生が少なくなり、環境負荷が小さくなる。これらの観点から、本発明におけるスチレン系エラストマーを含む弾性繊維はオイル成分を実質的に含んでいないことが好ましい。実質的に含んでいないとは、オイル成分を全く含まないことを意味せず、弾性繊維の製造時に不可避的に混入するオイル成分は許容する趣旨である。
弾性繊維は、長繊維及び短繊維の何れの形態であってもよい。長繊維とは50mm以上の長さのものをいい、連続繊維も含むものである。弾性繊維は好ましくは連続繊維の形態である。弾性繊維が連続繊維であると、ノズルリップからの熱風によって連続して伸長されるので、繊維径が細くなるばかりでなく、繊維径のバラツキが少なくなるという利点があるからである。また、冷風にて延伸する場合も同様の傾向となる。これによって、不織布を透かして見たときの地合いが良好となり、また、不織布の伸縮特性のバラツキが小さくなる。繊維径の細いものが得られるということは、熱風及び冷風の容量を小さくでき、製造コストの点でもメリットがある。
先に述べた通り、伸縮特性を高める、低コスト化、生産性を高める点で、弾性繊維層には、前記のスチレン系エラストマーを含有する弾性繊維に加えて、該弾性繊維と異なる他の弾性繊維が含まれていてもよい。他の弾性繊維としては、前記のスチレン系エラストマーを含有する弾性繊維と共に不織布を形成し得るものであればその種類に特に制限はない。他の弾性繊維としては、例えば前記のスチレン系エラストマーとは異なる種類のスチレン系エラストマー、ポリオレフィン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリウレタン系エラストマーなどの熱可塑性エラストマーを含有する弾性繊維が挙げられる。弾性繊維全体の重量に対する当該他の弾性繊維の配合割合は5〜80重量%、特に10〜50重量%であることが好ましい。
また弾性繊維層には、肌触り、風合いを良くする点、強度を高める点で、前記のスチレン系エラストマーを含有する弾性繊維に加えて非弾性繊維が含まれていてもよい。或いは、前記のスチレン系エラストマーを含有する弾性繊維及び該弾性繊維と異なる他の弾性繊維に加えて、非弾性繊維が含まれていてもよい。非弾性繊維としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエステル(PETやPBT)、ポリアミド等からなる繊維等が挙げられる。非弾性繊維は、短繊維でも長繊維でも良く、親水性でも撥水性でも良い。また、芯鞘型又はサイド・バイ・サイド型の複合繊維、分割繊維、異形断面繊維、捲縮繊維、熱収縮繊維等を用いることもできる。これらの繊維は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。弾性繊維層が、弾性繊維と非弾性繊維とを含んで構成されている場合、前者/後者の重量比は、20/80〜80/20、特に30/70〜70/30であることが、良好な伸縮特性を有し、高い強度を実現させ、肌触りが良好で、風合いが向上する点から好ましい。
先に述べた通り、本発明の伸縮性不織布は、弾性繊維層のみから構成されていてもよく、或いはその少なくとも一方の面に実質的に非弾性の非弾性繊維層が積層されていてもよい。図1には本発明の伸縮性不織布の好ましい一実施形態における断面構造の模式図が示されている。本実施形態の伸縮性不織布10は、弾性繊維層1の両面に、同一の又は異なる、実質的に非弾性の非弾性繊維層2,3が積層されて構成されている。
弾性繊維層1は弾性繊維を含む集合体である。弾性繊維層1は、伸ばすことができ且つ伸ばした力から解放したときに収縮する性質を有するものである。弾性繊維層1は、少なくとも面と平行な一方向において、100%伸長後に収縮させたときの残留歪みが20%以下、特に10%以下であることが好ましい。この値は、少なくとも、MD方向及びCD方向の何れか一方において満足することが好ましく、両方向において満足することがより好ましい。
弾性繊維層1に含まれる弾性繊維は、例えば溶融した樹脂をノズル孔より押し出し、この押し出された溶融状態の樹脂を熱風により伸長させることによって繊維を細くするメルトブローン法や、半溶融状態の樹脂を冷風や機械的ドロー比によって延伸するスパンボンド法によって製造される。また、溶融紡糸法の一種であるピニングブローン法によって弾性繊維を製造することもできる。
弾性繊維層1は、弾性繊維を含むウエブや不織布の形態であり得る。例えば、スピニングブローン法、スパンボンド法、メルトブローン法等によって形成されたウエブや不織布であり得る。特に好ましくは、スピニングブローン法で得られたウエブである。
スピニングブローン法においては、溶融ポリマーの吐出ノズルの先端近辺に、一対の熱風吐出部を、前記ノズルを中心に対向配置し、その下流に一対の冷風吐出部を、前記ノズルを中心に対向配置した紡糸ダイを用いる。スピニングブローン法によれば、溶融繊維の熱風による伸長と、冷風による冷延伸とが連続的に行われるので、伸縮性繊維の成形を容易に行えるという利点がある。また、繊維が緻密になりすぎず、短繊維に類した太さの伸縮性繊維を成形できるので、通気性の高い不織布が得られるという利点もある。更にスピニングブローン法によれば、連続フィラメントのウエブを得ることができる。連続フィラメントのウエブは、短繊維のウエブに比較して高伸張時の破断が起こりにくく、弾性を発現させやすいことから、本実施形態において極めて有利である。
スピニングブローン法に用いられる紡糸ダイとしては、例えば特公昭43−30017号公報の図1に記載されているもの、特開昭62−90361公報の図2に記載されているもの、特開平3−174008号公報の図2に記載されているものを用いることができる。更に、特開平3−174008号公報の図2に示されるものや、特許第3335949号公報の図1ないし図3に示されるものを用いることができる。紡糸ダイより紡出された繊維は捕集ネットからなるコンベア上に堆積される。
非弾性繊維層2,3は、伸長性を有するが、実質的に非弾性のものである。ここでいう、伸長性は、構成繊維自体が伸長する場合と、構成繊維自体は伸長しなくても、繊維どうしの交点において熱融着していた両繊維どうしが離れたり、繊維どうしの熱融着等により複数本の繊維で形成された立体構造が構造的に変化したり、構成繊維がちぎれたりして、繊維層全体として伸長する場合の何れであっても良い。
非弾性繊維層2,3を構成する繊維としては、弾性繊維層1に含まれ得る非弾性繊維として先に説明したものと同様のものを用いることができる。非弾性繊維層2,3は、連続フィラメント又は短繊維のウエブ又は不織布であり得る。特に、短繊維のウエブであることが、厚みのある嵩高な非弾性繊維層2,3を形成し得る点から好ましい。2つの非弾性繊維層2,3は、構成繊維の材料、坪量、厚み等に関して同じであっても良く、或いは異なっていてもよい。芯鞘型の複合繊維の場合、芯がPET、PP、鞘が低融点PET、PP、PEが好ましい。特にこれらの複合繊維を用いると、弾性繊維層の構成繊維との熱融着が強くなり、層剥離が起こりにくい点で好ましい。
2つの非弾性繊維層2,3のうち少なくとも一方は、その厚みが弾性繊維層1の厚みの1.2〜20倍、特に1.5〜5倍になっていることが好ましい。一方、坪量に関しては、2つの非弾性繊維層2,3のうち少なくとも一方は、その坪量よりも弾性繊維層の坪量の方が高くなっていることが好ましい。換言すれば、非弾性繊維層は、弾性繊維層よりも厚く且つ坪量が小さいことが好ましい。厚みと坪量とがこのような関係になっていることで、非弾性繊維層は、弾性繊維層に比較して厚みのある嵩高なものとなる。その結果、伸縮性不織布10は柔らかで風合いの良好なものとなる。
非弾性繊維層2,3の厚みそのものに関しては、0.05〜5mm、特に0.1〜1mmであることが好ましい。一方、弾性繊維層1の厚みそのものに関しては、非弾性繊維層2,3の厚みよりも小さいことが好ましく、具体的には0.01〜2mm、特に0.1〜0.5mmであることが好ましい。厚みの測定は、伸縮性不織布を20±2℃、65±2%RHの環境下に無荷重にて、2日以上放置した後、下記方法にて求めた。伸縮性不織布を0.5cN/cm2の荷重にて平板間に挟み、その状態下にマイクロスコープにて断面を25倍から200倍の倍率で観察し、各視野において平均厚みをそれぞれ求め、3視野の厚みの平均値として求めることができる。
非弾性繊維層2,3の坪量そのものに関しては、弾性繊維層の表面を均一に覆う観点及び残留歪みの観点から、それぞれ1〜60g/m2、特に5〜15g/m2であることが好ましい。一方、弾性繊維層1の坪量そのものに関しては、伸縮特性及び残留歪みの観点から、非弾性繊維層2,3の坪量よりも大きいことが好ましい。具体的には5〜80g/m2、特に10〜40g/m2であることが好ましい。
構成繊維の繊維径に関し、弾性繊維層1の構成繊維の繊維径は、少なくとも一方の非弾性繊維層2,3の構成繊維の繊維径の1.2〜5倍、特に1.2〜2.5倍であることが好ましい。これに加えて弾性繊維層1の構成繊維は、通気性及び伸縮特性の観点から、その繊維径が5μm以上、特に10μm以上が好ましく、100μm以下、特に40μm以下であることが好ましい。一方、非弾性繊維層2,3の構成繊維は、その繊維径が1〜30μm、特に10〜20μmであることが好ましい。つまり、非弾性繊維層2,3の構成繊維としては、弾性繊維層1の構成繊維よりも細めのものを用いることが好ましい。これによって、表層に位置する非弾性繊維層2,3の構成繊維の融着点が増加する。融着点の増加は、伸縮性不織布10の毛羽立ち発生の防止に有効である。さらに、細めの繊維を用いることで肌触りの良い伸縮性不織布10が得られる。
図1に示すように、弾性繊維層1と、非弾性繊維層2,3とは、弾性繊維層1の構成繊維が繊維形態を保った状態で、繊維交点の熱融着によって全面で接合されている。つまり、部分接合されている従来の伸縮性不織布とは、接合状態が異なっている。弾性繊維層1と、非弾性繊維層2,3とが全面接合されている本実施形態の伸縮性不織布10においては、弾性繊維層1と、非弾性繊維層2,3との界面及びその近傍において、弾性繊維層1の構成繊維と、非弾性繊維層2,3の構成繊維との交点が熱融着しており、実質的に全面で均一に接合されている。全面で接合されていることによって、弾性繊維層1と、非弾性繊維層2,3との間に浮きが生じること、つまり、両層が離間して空間が形成されることが防止される。両層間に浮きが生じると、弾性繊維層と非弾性繊維層との一体感がなくなり伸縮性不織布10の風合いが低下する傾向にある。本実施形態によれば、あたかも一層の不織布ごとき一体感のある多層構造の伸縮性不織布が提供される。
「弾性繊維層1の構成繊維が繊維形態を保った状態」とは、弾性繊維層1の構成繊維のほとんどが、熱や圧力等を付与された場合であっても、フィルム状、又はフィルム−繊維構造に変形していない状態をいう。弾性繊維層1の構成繊維が繊維形態を保った状態にあることで、本実施形態の伸縮性不織布10には十分な通気性が付与されるという利点がある。
弾性繊維層1は、その層内において、構成繊維の交点が熱融着している。同様に、非弾性繊維層2,3も、その層内において、構成繊維の交点が熱融着している。
2つの非弾性繊維層2,3のうちの少なくとも一方においては、その構成繊維の一部が弾性繊維層1に入り込んだ状態、及び/又は、弾性繊維層の構成繊維の一部が少なくとも一方の非弾性繊維層2,3に入り込んだ状態になっている。このような状態になっていることで、弾性繊維層1と、非弾性繊維層2,3との一体化が促進され、両層間に浮きが生じることが一層効果的に防止される。結果としてそれぞれの層の表面に追従した形で層と層が組み合わさっている状態となる。非弾性繊維層の構成繊維は、その一部が弾性繊維層1に入り込み、そこにとどまっているか、或いは弾性繊維層1を突き抜けて、他方の非弾性繊維層にまで到達している。それぞれの各層において表面繊維間を結ぶ面をマクロ的に想定したとき、この面から層の内側に形成される繊維空間に、他の層の構成繊維の一部が前記層の断面厚み方向へ入り込んでいる。非弾性繊維層の構成繊維が弾性繊維層1に入り込み、そこにとどまっている場合、該構成繊維は、更に弾性繊維層1の構成繊維と交絡していることが好ましい。同様に、非弾性繊維層の構成繊維が弾性繊維層1を突き抜けて、他方の非弾性繊維層にまで到達している場合には、該構成繊維は、他方の非弾性繊維層の構成繊維と交絡していることが好ましい。これは伸縮性不織布の厚み方向断面をSEMやマイクロスコープなどで観察した際に、層間において実質的に空間が形成されていないことで確認される。また、ここで言う「交絡」とは、繊維どうしが十分に絡み合っている状態を意味し、繊維層を単に重ね合わせただけの状態は交絡に含まれない。交絡しているか否かは、例えば、繊維層を単に重ね合わせた状態から、繊維層を剥離するときに要する力と、繊維層を重ね合わせ、それに熱融着を伴わないエアスルー法を適用した後に、繊維層を剥離する力とを比較して、両者間に実質的に差異が認められる場合には、交絡していると判断できる。
非弾性繊維層の構成繊維を、弾性繊維層に入り込ませる、及び/又は、弾性繊維層の構成繊維を非弾性繊維層に入り込ませるには、非弾性繊維層の構成繊維と非弾性繊維層の構成繊維を熱融着させる処理前において非弾性繊維または弾性繊維の少なくともどちらかがウエブ状態(熱融着していない状態)であることが好ましい。構成繊維を他の層に入り込ませる観点から、ウエブ状態である繊維層は、短繊維の方が長繊維に比べ自由度が高いことから好ましい。
また、非弾性繊維層の構成繊維を、弾性繊維層1に入り込ませる、及び/又は、弾性繊維層の構成繊維を非弾性繊維層に入り込ませるには、エアスルー法を用いることが好ましい。エアスルー法を用いることで、相対する繊維層に構成繊維を入り込ませ、また、相対する繊維層から構成繊維を入り込ませることが容易となる。またエアスルー法を用いることで、非弾性繊維層の嵩高さを維持しつつ、非弾性繊維層の構成繊維を、弾性繊維層1に入り込ませることが容易となる。非弾性繊維層の構成繊維を、弾性繊維層1を突き抜けさせて他方の非弾性繊維層にまで到達させる場合にも、同様にエアスルー法を用いることが好ましい。特に、ウエブ状態の非弾性繊維層を、弾性繊維層と積層して、エアスルー法を用いることが好ましい。この場合、弾性繊維層はその構成繊維同士が熱融着をしていてもよい。さらに、後述する製造方法において説明するように、特定の条件下でエアスルー法を行うことで、また、熱風の通りをよくするため伸縮性不織布の通気性、特に弾性繊維層の通気度を高いものとすることで、繊維をより均一に入り込ませることができる。エアスルー法以外の方法、例えばスチームを吹きかける方法も使用することができる。また、スパンレース法、ニードルパンチ法などを用いることも可能であるが、その場合には非弾性繊維層の嵩高さが損なわれたり、表面に弾性繊維層の構成繊維が表面にでてきてしまい、得られる伸縮性不織布の風合いが低下する傾向にある。
特に、非弾性繊維層の構成繊維が、弾性繊維層1の構成繊維と交絡している場合には、エアスルー法のみによって交絡していることが好ましい。
エアスルー法によって繊維を交絡させるためには、気体の吹きつけ圧、吹きつけ速度、繊維層の坪量や厚み、繊維層の搬送速度等を適切に調整すればよい。通常のエアスルー不織布を製造するための条件を採用しただけでは、非弾性繊維層の構成繊維と弾性繊維層1の構成繊維とを交絡させることはできない。後述する製造方法において説明するように、特定の条件下でエアスルー法を行うことによって、本発明において目的とする伸縮性不織布が得られる。
エアスルー法では一般に、所定温度に加熱された気体を、繊維層の厚み方向に貫通させている。その場合には、繊維の交絡及び繊維交点の融着が同時に起こる。しかし本実施形態においては、エアスルー法によって各層内の構成繊維間で繊維交点を融着させることは必須ではない。換言すれば、エアスルー法は、非弾性繊維層の構成繊維を、弾性繊維層1に入り込ませるために、或いは、該構成繊維を弾性繊維層1の構成繊維と交絡させ、そして、非弾性繊維層の構成繊維と弾性繊維層の構成繊維とを熱融着させるために必要な操作である。また、繊維が入り込む方向は、加熱された気体の通過方向と非弾性繊維層と弾性繊維層との位置関係によって変わる。非弾性繊維層は、エアスルー法によって、その構成繊維内で繊維交点が融着されたエアスルー不織布となることが好ましい。
以上の説明から明らかなように、本実施形態の伸縮性不織布の好ましい形態においては、実質的に非弾性の非弾性エアスルー不織布の厚み方向内部に、構成繊維が繊維形態を保った状態の弾性繊維層1が含まれており、該エアスルー不織布の構成繊維の一部が弾性繊維層1に入り込んだ状態、及び/又は、弾性繊維層の構成繊維の一部が非弾性繊維層に入り込んだ状態になっている。更に好ましい形態においては、エアスルー不織布の構成繊維の一部が弾性繊維層1の構成繊維とエアスルー法によってのみ交絡している。弾性繊維層1がエアスルー不織布の内部に含まれていることによって、弾性繊維層1の構成繊維は、実質的に伸縮性不織布の表面には存在しないことになる。このことは、弾性繊維に特有のべたつき感が生じない点から好ましいものである。
本実施形態の伸縮性不織布10には、図1に示すように、非弾性繊維層2,3に、微小な凹部が形成されている。これによって、伸縮性不織布10は、その断面が、微視的には波形形状になっている。この波形形状は、後述する製造方法において説明するように、伸縮性不織布の10の延伸加工によって生じるものである。この波形形状は、不織布10の風合いそのものに大きな悪影響を及ぼすものではない。むしろ、より柔らかで良好な不織布が得られる点から有利である。
図1には示していないが、本実施形態の伸縮性不織布10にはエンボス加工が施されていてもよい。エンボス加工は、弾性繊維層1と非弾性繊維層2,3との接合強度を一層高める目的で行われる。従って、エアスルー法によって弾性繊維層1と非弾性繊維層2,3とを十分に接合できれば、エンボス加工を行う必要はない。なお、エンボス加工は、構成繊維どうしを接合させるが、エアスルー法と異なり、エンボス加工によっては構成繊維どうしは交絡しない。
本実施形態の伸縮性不織布10は、その面内方向の少なくとも一方向に伸縮性を有する。面内のすべての方向に伸縮性を有していてもよい。その場合には、方向によって伸縮性の程度が異なることは妨げられない。最も伸縮する方向に関し、伸縮性の程度は、100%伸長時の荷重が20〜500cN/25mm、特に40〜150cN/25mmであることが好ましい。また100%伸長状態から収縮させたときの残留歪みが15%以下、特に10%以下であることが好ましい。
本実施形態の伸縮性不織布10は、その良好な風合いや、毛羽立ち防止性、伸縮性、通気性の点から、外科用衣類や清掃シート等の各種の用途に用いることができる。特に生理用ナプキンや使い捨ておむつなどの吸収性物品の構成材料として好ましく用いられる。例えば、使い捨ておむつの外面を構成するシート、胴回り部やウエスト部、脚周り部等に弾性伸縮性を付与するためのシート等として用いることができる。また、ナプキンの伸縮性ウイングを形成するシート等として用いることができる。また、それ以外の部位であっても、伸縮性を付与したい部位等に用いることができる。伸縮性不織布の坪量や厚みは、その具体的な用途に応じて適切に調整できる。例えば吸収性物品の構成材料として用いる場合には、坪量20〜160g/m2程度、厚み0.1〜5mm程度とすることが望ましい。また、本発明の伸縮性不織布は、弾性繊維層の構成繊維が繊維形態を保っていることに起因して、柔軟であり、また通気性が高くなっている。柔軟性の尺度である曲げ剛性に関し、本発明の伸縮性不織布は、曲げ剛性値が10cN/30mm以下と低いものとなっていることが好ましい。通気性に関しては、通気度が16m/(kPa・s)以上となっていることが好ましい。また、伸度は100%以上であることが望ましい。
曲げ剛性は、JIS L−1096に準拠して測定され、ハンドルオメーターによる押し込み量8mm、スリット幅10mmの条件において、それぞれ流れ方向とそれに対して直角方向に曲げた際の平均値として得られる。通気度は、カトーテック製AUTOMATIC AIR−PERMEABILITY TESTER KES-F8-AP1により通気抵抗を測定し、その逆数として求められる。
次に、本実施形態の伸縮性不織布10の好ましい製造方法を、図2を参照しながら説明する。図2には、本実施形態の伸縮性不織布10の製造方法に用いられる好ましい製造装置が模式的に示されている。図2に示す装置は、製造工程の上流側から下流側に向けて、ウエブ形成部100、熱風処理部200及び延伸部300をこの順で備えている。
ウエブ形成部100には、第1ウエブ形成装置21、第2ウエブ形成装置22及び第3ウエブの形成装置23が備えられている。第1ウエブの形成装置21及び第3ウエブの形成装置23としては、カード機が用いられている。カード機としては、当該技術分野において通常用いられているものと同様のものを特に制限なく用いることができる。一方、第2ウエブ形成装置22としては、スピニングブローン紡糸装置が用いられている。スピニングブローン紡糸装置においては、溶融ポリマーの吐出ノズルの先端近辺に、一対の熱風吐出部が、前記ノズルを中心に対向配置されており、その下流に一対の冷風吐出部が、前記ノズルを中心に対向配置された紡糸ダイが備えられている。スピニングブローン法に用いられる紡糸ダイとしては、例えば特開平3−174008号公報の図2に示されるものや、特許第3335949号公報の図1ないし図4に示されるものを用いることができる。
熱風処理部200は熱風炉24を備えている。熱風炉24内では、所定温度に加熱された加熱ガス、特に加熱空気が吹き出すようになっている。互いに重ね合わされた3層のウエブが熱風炉内に導入されると、該ウエブの上方から下方に向けて、若しくはその逆方向に、又は両方向に加熱ガスが強制的に貫通する。
延伸部300は、弱接合装置25及び延伸装置30を備えている。弱接合装置25は、一対のエンボスロール26,27を備えている。弱接合装置25は、熱風処理部200によって形成された繊維シートにおける各層のウエブの接合を確実にするためのものである。弱接合装置25の下流には、これに隣接して延伸装置30が配置されている。延伸装置30は、大径部31,32と小径部(図示せず)とが軸線方向に交互に形成されてなり、互いに噛み合いが可能になっている一対の凹凸ロール33,34を備えている。両凹凸ロール33,34間に繊維シートが噛み込まれることで該繊維シートがロールの軸線方向(即ちシートの幅方向)へ延伸される。
以上の構成を有する装置を用いた伸縮性不織布の製造方法について説明すると、先ず、弾性繊維からなるウエブの各面に、同一の又は異なる非弾性繊維からなる一対のウエブを配する。なお「弾性繊維からなるウエブ」とは、弾性繊維のみからなるウエブだけでなく、該ウエブから形成される弾性繊維層(図1符号1で示される層)の伸縮弾性を損なわない範囲において、弾性繊維に加えて少量の非弾性繊維が含まれているウエブも包含する。
図2に示すように、ウエブ形成部100においては、非弾性の短繊維を原料として用い、第1ウエブ形成装置21であるカード機によって非弾性繊維ウエブ3’を製造し、一方向に連続搬送させる。スチレン系エラストマー等からなる弾性樹脂を原料として用い、第2ウエブ形成装置22であるスピニングブローン紡糸装置によって紡出された繊維は捕集ネットからなるコンベア上に堆積され、弾性繊維の連続フィラメントを含む弾性繊維ウエブ1’が製造される。これをコンベアから剥離させ第1ウエブ形成装置21より形成され一方向に連続搬送されている非弾性繊維ウエブ3’上に積層させる。この弾性繊維ウエブ1’上には、更に、第3ウエブ形成装置23であるカード機によって製造された非弾性繊維ウエブ2’が積層される。
また、非弾性繊維ウエブ3’を熱処理により仮融着させた後、又は仮交絡させた後に、その上に直接紡糸された弾性繊維を、直接堆積させることが好ましい。このようにすることで、弾性繊維の自由度が高くなり、風等によってお互いの繊維を一層入り込ませやすくなるので好ましい。熱処理による仮融着としては、ヒートロール法、加圧カレンダーロール法、スチーム法、エアスルー法などが挙げられ、仮交絡としては、ニードルパンチ法、ウオータージェット法などが挙げられる。特にヒートロールおよびエアスルー法を用いると、不織布の風合いを損ねることがない点、及び設備スペースを小さくできる点で好ましい。非弾性繊維ウエブ3’は仮融着後、又は仮交絡後に巻き取らず、インラインにてその上に弾性繊維を直接堆積させることが好ましい。一旦巻き取ってしまうと、巻き付き圧によって非弾性繊維ウエブ3’が潰れてしまう場合がある。仮融着、仮交絡させる目的は、ウエブ上に弾性繊維を直接溶融紡糸して堆積させるとき、該ウエブが風等で吹き飛ばされないようにすることにある。
弾性繊維ウエブ1’の形成にスピニングブローン法を用いると、溶融繊維の熱風による伸長と、冷風による冷延伸とが連続的に行われるので、伸縮性繊維の成形を容易に行えるという利点がある。また、繊維が緻密になりすぎず、短繊維に類した太さの伸縮性繊維を成形できるので、通気性の高い不織布が得られるという利点もある。更にスピニングブローン法によれば、連続フィラメントのウエブを得ることができる。連続フィラメントのウエブは、短繊維のウエブに比較して高伸張時の破断が起こりにくく、弾性を発現させやすいことから、本実施形態において極めて有利である。
弾性繊維ウエブ1’が例えば2種の繊維から構成されている場合、具体的には弾性繊維ウエブ1’が前記のスチレン系エラストマーを含有する弾性繊維、及び該弾性繊維と異なる他の弾性繊維から構成されている場合や、前記のスチレン系エラストマーを含有する弾性繊維、及び非弾性繊維から構成されている場合には、図2に示すスピニングブローン紡糸装置の紡糸ダイとして、図3に示すものを用いることができる。図3に示す紡糸ダイは、紡糸ノズルAと、紡糸ノズルBとが交互に配列された構造になっている。紡糸ノズルAからは前記のスチレン系エラストマーを含有する樹脂が吐出される。一方、紡糸ノズルBからは、他の熱可塑性エラストマー又は非弾性の樹脂が吐出される。
3つのウエブの積層体は、エアスルー方式の熱風炉24に送られ、そこで熱風処理が施される。熱風処理によって、繊維どうしの交点が熱融着し、弾性繊維ウエブ1’はその全面において非弾性繊維ウエブ2’,3’と接合する。熱風処理に際しては、各層のウエブが一体化していないことが好ましい。これによって各ウエブが有する嵩高で厚みのある状態が熱風処理後も維持されて、風合いの良好な伸縮性不織布が得られる。
熱風処理によって、繊維どうしの交点を熱融着させ、各層のウエブを全面接合することに加えて、主として熱風の吹き付け面側に位置する非弾性繊維ウエブ2’の構成繊維の一部を、弾性繊維ウエブ1’に入り込ませることが好ましい。また、熱風処理の条件を制御することによって、非弾性繊維ウエブ2’の構成繊維の一部を、弾性繊維ウエブ1’に入り込ませ、更に、該ウエブ1’の構成繊維と交絡させることが好ましい。或いは、非弾性繊維ウエブ2’の構成繊維の一部を、弾性繊維ウエブ1’を突き抜けさせて、非弾性繊維ウエブ3’にまで到達させ、該ウエブ3’の構成繊維と交絡させることが好ましい。
非弾性繊維ウエブ2’の構成繊維の一部を、弾性繊維ウエブ1’に入り込ませる、及び/又は、弾性繊維ウエブ1’の構成繊維の一部を非弾性繊維ウエブ2’に入り込ませるための条件は、熱風風量0.4〜3m/秒、温度80〜160℃、搬送速度5〜200m/分、熱処理時間0.5〜10秒であることが好ましい。特に、エアスルー法として一般的に行われる熱風風量よりも高いことが好ましく、特に好ましくは熱風風量1〜2m/秒である。エアスルー熱処理に用いるネットに通気度の高いものを用いると、エアの通りによって繊維が一層入り込みやすくなる。同様に非弾性繊維ウエブ3’上に弾性繊維ウエブ1’を直接紡糸する場合も、紡糸時の風によって弾性繊維ウエブ1’の構成繊維が非弾性繊維ウエブ3’に入り込み易くなる。熱風処理に用いるネット、及び弾性繊維の直接紡糸に用いるネットは、それらの通気度が250〜800cm3/(cm2・s)、特に400〜750cm3/(cm2・s)であることが好ましい。上記条件は繊維を軟化させて均一に入り込ませる点と繊維を融着させる点においても好ましい。更に、繊維を交絡させるためには、熱風風量を3〜5m/秒とし、吹きつけ圧を0.1〜0.3kPaとすることで可能となる。弾性繊維ウエブ1’の通気度が8m/(kPa・s)以上、更に好ましくは24m/(kPa・s)以上であると、熱風の通りがよくなり、繊維をより均一に入り込ませることができるので好ましい。また、繊維の融着が良好で最大強度が高くなる。更に毛羽立ちも防止される。
熱風処理においては、非弾性繊維ウエブ2’の構成繊維の一部が、弾性繊維ウエブ1’に入り込むのと同時に、非弾性繊維ウエブ2’の構成繊維及び/又は非弾性繊維ウエブ3’の構成繊維と、弾性繊維ウエブ1’の構成繊維とが、それらの交点で熱融着することが好ましい。この場合、熱風処理を、該熱風処理後の弾性繊維が繊維形態を維持するような条件下に行うことが好ましい。即ち、熱風処理によって弾性繊維ウエブ1’の構成繊維がフィルム状、或いはフィルム−繊維構造にならないようにすることが好ましい。そして、熱風処理においては、非弾性繊維ウエブ2’の構成繊維どうしが交点において熱融着し、同様に弾性繊維ウエブ1’の構成繊維どうし、及び非弾性繊維ウエブ3’の構成繊維どうしが交点において熱融着する。
エアスルー方式の熱風処理によって、3つのウエブが一体化された繊維シート10Bが得られる。繊維シート10Bは、一定幅を有して一方向に延びる長尺帯状のものである。繊維シート10Bは、次いで延伸部300へ搬送される。延伸部300においては、繊維シート10Bは先ず弱接合装置25に搬送される。弱接合装置25は、周面にエンボス用凸部が規則的に配置された金属製のエンボスロール26及びそれに対向配置された金属製又は樹脂製の受けロール27を備えたエンボス装置からなる。弱接合装置25によって繊維シート10Bには熱エンボス加工が施される。これによって、エンボス加工が施された繊維シート10Aが得られる。なお弱接合装置25による熱エンボス加工に先立って熱風処理部200により行われる熱融着によって、各層のウエブは互いに接合して一体化しているので、弱接合装置25による熱エンボス加工は、本発明において必須のものではない。各層のウエブの接合一体化を確実にしたい場合は、弱接合装置25による熱エンボス加工は有効である。また、弱接合装置25によれば、各層のウエブの接合一体化に加えて、繊維シート10Aの毛羽立ちが抑えられるという利点がある。
弱接合装置25による熱エンボス加工は、熱風処理部200によって行われる熱融着に対して補助的に行われるものであるから、その加工条件は比較的穏やかでよい。逆に、熱エンボス加工の条件を過酷にすると、繊維シート10Aの嵩高さが損なわれ、また繊維のフィルム化が起こり、最終的に得られる伸縮性不織布の風合いや通気性にマイナスに作用する。このような観点から熱エンボス加工の線圧及びエンボスロールの加熱温度を設定する。
熱エンボス加工によって得られた繊維シート10Aは、図4に示すように、個々独立した散点状の接合部4を多数有する。接合部4は規則的な配置パターンで形成されている。接合部4は、例えば、繊維シート10Aの流れ方向(MD)及びその直交方向(CD)の両方向に不連続に形成されていることが好ましい。
弱接合装置25において熱エンボス加工が施された繊維シート10Aは、引き続き延伸装置30へ送られる。図2ないし図5に示すように、繊維シート10Aは、大径部31,32と小径部(図示せず)が軸長方向に交互に形成された一対の凹凸ロール33,34を備えた延伸装置30によって、搬送方向(MD)と直交する方向(CD)へ延伸される。
延伸装置30は、一方又は双方の凹凸ロール33,34の枢支部を公知の昇降機構により上下に変位させ、両者の間隔が調節可能に構成されている。図1並びに図5(b)及び(d)に示されるように、各凹凸ロール33,34は、一方の凹凸ロール33の大径部31が、他方の凹凸ロール34の大径部32間に遊挿され、他方の凹凸ロール34の大径部32が一方の凹凸ロール33の大径部31間に遊挿されるように組み合わされる。この状態の両ロール33,34間に、繊維シート10Aを噛み込ませて、繊維シート10Aを延伸させる。
この延伸工程においては、図4及び図5に示すように、繊維シート10Aの幅方向における、接合部4の位置と、凹凸ロール33,34の大径部31,32の位置とを一致させることが好ましい。具体的には、図4に示すように、繊維シート10Aには、MDに沿って接合部4が一直線状に複数個並んで形成されている接合部列が、複数列形成されており(図4では10列図示)、図4において、最も左側に位置する接合部列R1を始めとして、そこから一つ置きの接合部列R1のそれぞれに含まれる接合部4については、一方の凹凸ロール33の大径部31の位置が一致し、左から2つ目の接合部列R2を始めとして、そこから一つ置きの接合部列R2のそれぞれに含まれる接合部については、他方の凹凸ロール34の大径部32の位置が一致するようにしてある。図4中、符号31,32で示す範囲は、繊維シート10Aが、両凹凸ロール33,34間に噛み込まれている状態の一時点において、各ロールの大径部31,32の周面と重なる範囲を示したものである。
繊維シート10Aが、凹凸ロール33,34間に噛み込まれた状態で両ロール33,34間を通過する際には、図5(b)及び(d)に示すように、接合部4と、何れかの凹凸ロールの大径部31,32とが重なる一方、大径部31,32と重ならない大径部同士間の領域、即ち上述した接合部列R間の領域が幅方向へ積極的に引き伸ばされる。従って、接合部4の破壊や各層のウエブ間の剥離が生じるのを防止しつつ、繊維シート10Aの接合部以外の部分を効率的に延伸させることができる。また、この延伸により、非弾性繊維ウエブ2,3が十分に伸長され、それによって非弾性繊維ウエブ2,3が、弾性繊維ウエブ1’の自由な伸縮を阻害する程度が大きく低下する。その結果、本製造方法によれば、高伸縮性であり、また、破れや毛羽立ちの少ない外観の良好な伸縮性不織布を効率的に製造することができる。
前記の延伸加工によって、繊維シート10Aの厚みは、延伸加工前後で1.1倍〜4倍、特に1.3倍〜3倍に増すことが好ましい。これによって、非弾性繊維層2,3の繊維が塑性変形して伸びることで繊維が細くなる。これと同時に、非弾性繊維層2,3が一層嵩高となり肌触りが良くクッション性が良好になる。
延伸加工される前の繊維シート10Aの厚みが薄いと、繊維シート10Aのロール原反を運搬及び保管するスペースを小さくできるメリットがある。
更に、前記の延伸加工によって、繊維シート10Aの曲げ剛性は、延伸加工前に比較して30〜80%、特に40〜70%に変化することが好ましい。これによって、ドレープ性が良く柔らかな不織布が得られる。また、延伸加工される前の繊維シート10Aの曲げ剛性が高いことで、搬送ラインで繊維シート10Aに皺が入りにくくなるので好ましい。その上、延伸加工時にも繊維シート10Aに皺が入らず加工しやすいものとなるので好ましい。
延伸加工前後での繊維シート10Aの厚みや曲げ剛性は、非弾性繊維層2,3に用いられる繊維の伸度、エンボスロールのエンボスパターン、凹凸ロール33,34のピッチや先端部の厚み、噛み合わせ量によって制御することができる。
厚みは、伸縮性不織布を20±2℃、65±2%RHの環境下に無荷重にて、2日以上放置した後、下記方法にて求めた。伸縮性不織布を0.5cN/cm2の荷重にて平板間に挟み、その状態下にマイクロスコープにて断面を25倍から200倍の倍率で観察し、各層の平均厚みを求めた。また平板間の距離から全体の厚みを求めた。繊維の入り込みについては相互の入り込みの中間点を厚みとした。
凹凸ロール33,34の大径部31,32の周面は、繊維シート10Aに損傷を与えないようにするために、先鋭でないことが好ましい。例えば図5(b)及び(d)に示すように、所定幅の平坦面となっていることが好ましい。大径部31,32の先端面の幅W〔図5(b)参照〕は、0.3〜1mmであることが好ましく、接合部4のCD方向の寸法の0.7〜2倍、特に0.9〜1.3倍であることが好ましい。これにより、非弾性繊維の繊維形態が破壊されにくくなり、高強度の伸縮性不織布が得られる。
大径部間のピッチP〔図5(b)参照〕は、0.7〜2.5mmであることが好ましい。このピッチPは、接合部4のCD方向の寸法の1.2〜5倍、特に2〜3倍であることが好ましい。これによって布様の外観を呈し、肌触りの良い伸縮性不織布が得られる。また、接合部4のCD方向のピッチ(CD方向に隣合う接合部列R1同士の間隔、またはCD方向に隣合う接合部列R2同士の間隔)は、大径部間のピッチPに対し、位置関係を一致させるため基本的には2倍であるが、繊維シート10AのCD方向の伸びやネックインのため1.6倍〜2.4倍の範囲内であれば位置を一致させることが可能である。
延伸装置30から送り出された繊維シート10Aは、その幅方向への延伸状態が解放される。即ち伸長が緩和される。その結果、繊維シート10Aに伸縮性が発現し、該シート10Aはその幅方向へ収縮する。これによって目的とする伸縮性不織布10が得られる。なお、延伸状態を解放する場合、延伸状態が完全に解放されるようにしてもよく、或いは伸縮性が発現する限度において、延伸状態が或る程度維持された状態で延伸状態を解放してもよい。
本発明は、前記実施形態に制限されない。例えば、本発明の伸縮性不織布は、不織布全体としてみたときに、スチレン系エラストマーを含有する弾性繊維、並びに該弾性繊維と異なる他の弾性繊維及び/又は非弾性繊維を含んでいればよい。従って、例えば弾性繊維層を2層有する伸縮性不織布は本発明の範囲内である。この場合には、一方の弾性繊維層はスチレン系エラストマーを含有する弾性繊維、又は該弾性繊維に加えて非弾性繊維を含み、他方の弾性繊維層はスチレン系エラストマーを含有する弾性繊維と異なる他の弾性繊維、又は該弾性繊維に加えて非弾性繊維を含む。この不織布は、弾性繊維層を2層有することに加えて、1層以上の非弾性繊維層を有してもよい。更に、スチレン系エラストマーを含有する繊維のみからなる弾性繊維層と、1層以上の非弾性繊維層とを有する伸縮性不織布も、本発明の範囲内である。
また、前記実施形態の伸縮性不織布10は、弾性繊維層1の両面に、同一の又は異なる、実質的に非弾性の非弾性繊維層2,3が積層された形態のものであったが、これに代えて、弾性繊維層の一面に非弾性繊維層が積層された2層構造の形態であってもよい。或いは弾性繊維層のみからなる単層構造の形態であってもよい。これら単層又は2層構造の形態の伸縮性不織布の詳細については、3層構造に係る前記実施形態の伸縮性不織布10に関する説明が適宜適用される。なお2層構造の伸縮性不織布を、吸収性物品の構成材料として用いる場合、特に使用者の肌に触れる箇所に使用する場合には、非弾性繊維層を着用者の肌側に向くように使用することが、肌触りやべたつき防止等の観点から好ましい。
また本発明の不織布が、弾性繊維層の少なくとも一面に非弾性繊維層を配してなる構成の場合、弾性繊維層と非弾性繊維層の構造は図1に示すものに制限されない。
また図5に示す方法においては、一方の凹凸ロールの大径部と他方の凹凸ロールの小径部とによって繊維シート10Aが挟まれていない状態で延伸が行われたが、両者間の間隔を狭くして、両者間に繊維シート10Aを挟んだ状態で延伸を行うこともできる。つまり、繊維シートを介して底つきした状態で延伸することもできる。また、延伸工程は、特開平6−133998号公報に記載の方法を用いることもできる。
また前記の製造方法においては、繊維シート10AをCD方向に延伸させたが、これに代えてMD方向に延伸させることもできる。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら、本発明の範囲はかかる実施例に制限されるものではない。
〔実施例1〕
弾性繊維ウエブを次の方法で形成した。弾性繊維に用いる樹脂として、230℃における溶融粘度300Pa・s、溶融張力1.3cNのSEBSを用いた。また、これと異なる他の非弾性繊維の樹脂として、MFR60g/10min(230℃、2.16kg)、のポリプロピレン樹脂(ホモ)を用いた。これらの樹脂を用いて2種の樹脂の混合繊維からなる弾性繊維ウエブを成形した。ウエブ1の形成には2台の押出機を用い、各樹脂をダイス温度290℃にてそれぞれの押出機で溶融させ紡糸ノズルから押し出し、スピニングブローン法によってネット上に繊維を堆積させた。紡糸ノズルは図3に示すように、それぞれの樹脂を交互に押し出す形状のものであった。SEBSとポリプロピレンの重量比率は50/50とした。弾性繊維の繊維径は25μmであった。非弾性繊維の繊維径は18μmであった。ウエブの坪量は40g/m2であった。
このウエブを熱処理機に導入し、エアスルー方式で熱風を吹き付け、熱処理を行った。熱処理の条件は、ネット上温度140℃、熱風風量2m/秒、吹き付け圧10kPa、吹き付け時間15秒であった。この熱処理によって2種の繊維を含むウエブが一体化された繊維シートが得られた。
次いで繊維シートに熱エンボス加工を施した。熱エンボス加工は、エンボス凸ロールとフラット金属ロールとを備えたエンボス装置を用いて行った。エンボス凸ロールとしてMDのピッチ2mm、CDのピッチ2mmである多数の凸部を有するドット状凸ロールを用いた。各ロールの温度は130℃、線圧は300N/cmとした。このエンボス加工によって接合部が規則的なパターンで形成された繊維シートを得た。
繊維シートに対して延伸加工を施した。延伸加工は、大径部と小径部が軸長方向に交互に形成された一対の凹凸ロールを備えた延伸装置を用いて行った。大径部間のピッチPは1.0mmであった。延伸処理によって繊維シートをCDに延伸させた。これによりCDに伸縮する坪量40g/m2の不織布が得られた。なお、各工程の搬送速度は何れも10m/分であった。
〔実施例2〕
弾性繊維に用いる樹脂として、230℃における溶融粘度600Pa・s、溶融張力0.2cNのSEBSを用いた。これ以外は実施例1と同様にして伸縮性不織布を作製した。弾性繊維の繊維径は30μmであった。非弾性繊維の繊維径は18μmであった。弾性繊維ウエブの坪量は40g/m2であった。
〔実施例3〕
図1に示す伸縮性不織布を、図2で示す装置を用いて製造した。先ず直径17μm、繊維長51mmの短繊維(芯:PET、鞘:PE)をカード機に供給し、カードウェブからなる非弾性繊維ウエブ3’を形成した。ウエブ3’の坪量は10g/m2であった。この非弾性繊維ウエブ3’上に弾性繊維ウエブ1’を積層した。
弾性繊維ウエブ1’を次の方法で形成した。弾性繊維に用いる樹脂として、230℃における溶融粘度300Pa・s、溶融張力1.3cNのSEBS(第1のSEBS)を用いた。また、これと異なる他の弾性繊維の樹脂として、230℃における溶融粘度1500Pa・s、溶融張力1.0cNのSEBS(第2のSEBS)を用いた。これらの樹脂を用いて2種の樹脂の混合繊維からなる弾性繊維ウエブ1’を成形した。ウエブ1’の形成には2台の押出機を用い、各樹脂をダイス温度290℃にてそれぞれの押出機で溶融させ紡糸ノズルから押し出し、スピニングブローン法によってネット上に繊維を堆積させた。紡糸ノズルは図3に示すように、それぞれの樹脂を交互に押し出す形状のものであった。第1のSEBSと第2のSEBSの重量比率は80/20とした。第1のSEBSからなる弾性繊維の繊維径は25μmであった。第2のSEBSからなる弾性繊維の繊維径は35μmであった。ウエブ1’の坪量は20g/m2であった。
弾性繊維ウエブ1’上に、前述と同様の短繊維からなる非弾性繊維ウエブ2’を積層した。ウエブ2’の坪量は10g/m2であった。
これら3層のウエブの積層体を熱処理機に導入し、エアスルー方式で熱風を吹き付け熱処理を行った。熱処理の条件は、ネット上温度140℃、熱風風量2m/秒、吹き付け圧10kPa、吹き付け時間15秒であった。この熱処理によって3層のウエブが一体化された繊維シート10Bが得られた。
次いで繊維シート10Bに熱エンボス加工を施した。熱エンボス加工は、エンボス凸ロールとフラット金属ロールとを備えたエンボス装置を用いて行った。エンボス凸ロールとしてMDのピッチ2mm、CDのピッチ2mmである多数の凸部を有するドット状凸ロールを用いた。各ロールの温度は120℃、線圧は300N/cmとした。このエンボス加工によって接合部が規則的なパターンで形成された繊維シート10Aを得た。
繊維シート10Aに対して延伸加工を施した。延伸加工は、大径部と小径部が軸長方向に交互に形成された一対の凹凸ロールを備えた延伸装置を用いて行った。大径部間のピッチPは1.0mmであった。延伸処理によって繊維シート10AをCDに延伸させた。これによりCDに伸縮する坪量40g/m2の不織布が得られた。なお、各工程の搬送速度は何れも10m/分であった。
〔比較例1〕
弾性繊維に用いる樹脂として、230℃における溶融粘度870Pa・s、溶融張力0.2cNのSEBS樹脂を用いた。また、これと異なる他の非弾性繊維の樹脂として、MFR60g/10min(230℃、2.16kg)、のポリプロピレン樹脂(ホモ)を用いた。SEBSとポリプロピレンの重量比率を50/50に設定して実施例1と同様にダイス温度290℃にてスピニングブローン法で弾性繊維ウエブ1’を成形したところ、繊維が太く地合いの点で均一なものが得られなかった。そこでダイス温度を320℃に上げて再び成形した。その結果得られたウエブ1’における弾性繊維の繊維径は32μmであった。非弾性繊維の繊維径は15μmであった。ウエブ1’の坪量は40g/m2であった。これら以外は実施例1と同様にして伸縮性不織布を作製した。ダイス温度を320℃での成形では、成形温度が高いことに起因して樹脂分解による臭いが発生した。
〔比較例2〕
弾性繊維に用いる樹脂として、230℃における溶融粘度200Pa・s、溶融張力0.1cNのSEBS樹脂を用いた。また、これと異なる他の非弾性繊維の樹脂として、MFR60g/10min(230℃、2.16kg)、のポリプロピレン樹脂(ホモ)を用いた。これらの樹脂を用い実施例1と同様にダイス温度290℃にてスピニングブローン法で弾性繊維ウエブ1’を成形したところ、弾性繊維の引きちぎれにより繊維ウエブ化できず、伸縮性不織布が得られなかった。
〔比較例3〕
弾性繊維に用いる樹脂として、230℃における溶融粘度1500Pa・s、溶融張力1.0cNのSEBS樹脂を用いた。また、これと異なる他の非弾性繊維の樹脂として、MFR60g/10min(230℃、2.16kg)、のポリプロピレン樹脂(ホモ)を用いた。これらの樹脂を用い実施例1と同様にダイス温度290℃にてスピニングブローン法で弾性繊維ウエブ1’を成形したところ、弾性繊維は細くならず、地合いが悪く均一なものとならず、伸縮性不織布が得られなかった。ダイス温度を320℃まで上げても、やはり弾性繊維は細くならず、地合いが悪く均一なものとならず、伸縮性不織布が得られなかった。
〔評価〕
実施例及び比較例で得られた伸縮性不織布の特性を以下の表1に示す。表中の各項目の測定方法は次の通りである。
<強度、伸度及び残留歪み>
伸縮性不織布の伸縮方向へ50mm、それと直交する方向へ25mmの大きさで矩形の試験片を切り出した。オリエンテック製テンシロンRTC1210Aに試験片を装着した。チャック間距離は25mmであった。試験片を不織布の伸縮方向へ300mm/分の速度で伸長させ、そのときの荷重を測定した。そのときの最大点の荷重を最大強度とした。またそのときの試験片の長さをBとし、もとの試験片の長さをAとしたとき、{(B−A)/A}×100を最大伸度(%)とした。また、100%伸長サイクル試験を行い、100%伸長時強度を100%伸長時の荷重から求めた。更に、100%伸長後、同速にて原点に戻して行ったときの戻らない長さ割合を測定し、その値を残留歪とした。
<曲げ剛性>
大栄科学精機製作所製HOM−3を用いて測定した。
表1及び2に示す結果から明らかなように、実施例の不織布は、比較例の不織布に比べて伸縮特性が良好である。
なお、実施例の不織布の断面をSEM観察したところ、何れの不織布においても弾性繊維層の構成繊維と非弾性繊維層の構成繊維とが熱融着しており、これらの繊維層は全面接合されていた。また、非弾性繊維層の構成繊維の一部が弾性繊維層の厚み方向に入り込んでいることが確認された。弾性繊維層の構成繊維は繊維形態を保っていた。