JP2007154337A - 合成繊維用紡糸油剤 - Google Patents

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義幸 若原
Hirokazu Mihashi
弘和 三橋
Satoshi Utsui
智 宇津井
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Abstract

【課題】 耐熱性が良好で、合成繊維の製糸工程における毛羽発生が少なく繊維の品質に優れる合成繊維用紡糸油剤を提供すること。
【解決手段】 スルホン酸基担持無機多孔体(α)の存在下に、カルボン酸(a1)及び/又はカルボン酸誘導体(a2)とアルコール類(b)とを反応させて得られるエステル化合物(A)を含有することを特徴とする合成繊維用紡糸油剤である。
【選択図】なし

Description

本発明は、合成繊維用紡糸油剤に関する。更に詳しくは、エステル化合物を含有する紡糸油剤に関する。
合成繊維製造工程において、繊維に平滑性、集束性、帯電防止性などを付与し、紡糸、延伸工程および後加工工程を円滑に進める目的で合成繊維用紡糸油剤(以下単に油剤という)が用いられている。合成繊維の製糸工程においては、繊維は油剤を塗布された後、高温の熱ローラーで延伸、熱固定され巻き取られる。この際、糸切れの主な原因となる毛羽の発生のより少ない油剤が求められている。油剤には、脂肪酸エステル等のエステル化合物からなる潤滑剤、集束剤、帯電防止剤とともに、上記の毛羽の発生を防止するため、耐熱性向上を目的に酸化防止剤等を添加した油剤などが提案されている(例えば特許文献1,2)。
特開昭54−147214号公報 特開2005−042208号公報
これらの酸化防止剤等の添加により、油剤の耐熱性が向上し、毛羽の発生が減少し改善効果は見られるものの、なお十分ではなく、さらなる改善が求められている。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、潤滑剤である脂肪酸エステル等のエステル化合物を製造する際に、そのエステル化触媒として一般的に用いられる強酸(硫酸及びパラトルエンスルホン酸など)の代わりに、スルホン酸基担持無機多孔体を用いて製造したエステル化合物を使用することにより、上記毛羽の発生が大幅に減少することを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、スルホン酸基担持無機多孔体(α)の存在下に、カルボン酸(a1)及び/又はカルボン酸誘導体(a2)とアルコール類(b)とを反応させて得られるエステル化合物(A)を含有することを特徴とする合成繊維用紡糸油剤;該合成繊維用紡糸油剤を用いる合成繊維の処理方法;該処理方法で処理された合成繊維である。
本発明の油剤は、従来の油剤に比べて、耐熱性が良好で製糸工程における毛羽が少なく繊維の品質に優れる。
本発明において、カルボン酸(a1)もしくはカルボン酸誘導体(a2)の具体的な例としては、以下のようなものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。なお、カルボン酸誘導体(a2)とは、エステル形成性誘導体[酸ハロゲン化物、酸無水物又は低級(炭素数1〜4)アルコールエステル等]のことである。
これら(a1)及び(a2)の具体例としては以下のものが挙げられるが、これに限定されるものではない。
(a11)炭素数2〜32の脂肪族モノカルボン酸
ブタン酸、ヘキサン酸、オクタン酸、2−エチルヘキサン酸、デカン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、イソアラキン酸、アクリル酸、オレイイン酸、エルシン酸等。
(a12)炭素数2〜40脂肪族ジカルボン酸
マロン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸、3,3−ジメチルペンタン二酸等。
(a13)炭素数4〜42脂肪族多価カルボン酸
3,3−ジメチル−5−エチルオクタン−1,2,8−トリカルボン酸等。
(a14)炭素数7〜36芳香族カルボン酸
安息香酸、フェニル酢酸、γ−フェニル酪酸、m−トルイル酸、3−フェニルブタン酸、フタル酸、アニス酸、トリメリット酸等。
(a15)その他のカルボン酸類
シクロヘキサンカルボン酸、チオジプロピオン酸、チオジヘキサン酸、オキシピバリン酸等。
(a21)(a11)の誘導体
オクタン酸メチル、ラウリン酸メチル、ステアリン酸メチル、オレイン酸メチル、ラウリン酸クロライド、ステアリン酸クロライド等。
(a22)(a12)の誘導体
アジピン酸ジメチル、無水コハク酸、無水マレイン酸等。
(a23)(a13)の誘導体
3,3−ジメチル−5−エチルオクタン−1,2,8−トリカルボン酸トリメチル等。
(a24)(a14)の誘導体
安息香酸メチル、無水フタル酸等。
(a25)(a15)の誘導体
チオジプロピオン酸ジメチル等。
アルコール類(b)としては、以下のようなものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
(b1)炭素数4〜32の脂肪族1価アルコール
オクチルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール、ラウリルアルコール、パルミチルアルコール、t−ブチルアルコール、イソステアリルアルコール、アリルアルコール、メチルビニルカルビノール、オレイルアルコール等。
(b2)炭素数3〜40の脂肪族多価(2〜6価)アルコール
1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等。
(b3)炭素数6〜36の脂環式アルコール
シクロペンタノール、シクロヘキサノール、3−ブチル−5−オクチルシクロオクタノール、3−エチルシクロヘキサノール、cis−1,2−シクロヘキサンジオール等。
(b4)炭素数7〜36の芳香族アルコール
ベンジルアルコール、2−フェニルエタノール、α−フェニルエチルアルコール、トリフェニルカルビノール、シナミルアルコール等。
(b5)上記(b1)〜(b4)及びフェノール類の炭素数2〜12のアルキレンオキサイド付加物(付加モル数1〜100)
ラウリルアルコールのエチレンオキサイド10モル付加物、オレイルアルコールのプロピレンオキサイド5モル付加物、グリセリンのエチレンオキサイド3モル付加物、ベンジルアルコールのプロピレンオキサイド50モル付加物、ステアリン酸のエチレンオキサイド5モル、プロピレンオキサイド5モル付加物、フェノールのエチレンオキサイド20モル付加物、ビスフェノールAのエチレンオキサイド4モル付加物等。
スルホン酸基担持無機多孔体(α)(以下、単に(α)と表記する場合がある)は、無機多孔体にスルホン酸基含有化合物を固定化して担持させたものであり、(a1)及び/又は(a2)と(b)のエステル化反応の触媒となるものである。
無機多孔体としては、公知の無機多孔体が使用でき、例えば、シリカ、アルミナ、チタニア、マグネシア及びジルコニアからなる群から選ばれる1種以上の無機物からなる無機多孔体が挙げられる。
具体的には、シリカからなる無機多孔体としてはシリカゲル;アルミナからなる無機多孔体としてはアルミナゲルなど;シリカ及びアルミナからなる無機多孔体としてはゼオライトなど;その他の無機多孔体としては吸着剤として市販されている「キョーワード」(協和化学(株)製)及び珪藻土など;が挙げられる。これらのうち触媒活性の観点から好ましいものは、シリカ、アルミナ、ゼオライト及び「キョーワード」であり、特に好ましいものはシリカゲル及び「キョーワード」である。
無機多孔体は通常は粒状物であり、その形状としては、不定形粒子、球状粒子又はペレット状などが挙げられる。
これらのうち球状粒子及びペレット状、特に球状粒子が、後述する流通法で反応させる際の圧力損失が小さい点で好ましい。
無機多孔体の粒径は、d50(平均粒子径)として、好ましくは1〜8,000μm、さらに好ましくは10〜6,000μm、特に好ましくは40〜500μmである。1μm以上にすることで取り扱いが容易になり、8,000μm以下が触媒活性の面で好ましい。本発明においてd50はJIS K1150に規定される粒度分布測定法において測定できる。
無機多孔体の比表面積は、BET比表面積として、好ましくは30m2/g以上、さらに好ましくは50〜1,500m2/g、特に好ましくは100〜800m2/gである。30m2/g以上であることが、触媒活性が高くなりかつ副反応が少なくなる点で好ましい。本発明においてBET比表面積はJIS K1150に規定される比表面積測定法により測定できる。
無機多孔体のアスペクト比は、0.8以上が好ましく、さらに好ましくは0.85〜1.0、特に好ましくは0.9〜1.0である。なお、アスペクト比とは粒子の最長直径と最短直径の比であり、1.0に近いほど真球状であることを表す。アスペクト比が0.8以上であれば、後述する流通法で反応させる際の圧力損失が小さい点で好ましい。
本発明においてアスペクト比は、粒子を顕微鏡観察し、その最長直径と最短直径を計測し、100個の粒子について平均することにより測定できる。
無機多孔体にスルホン酸基を担持させる方法としては、無機多孔体を、スルホン酸基に変換可能なスルホン酸前駆体基含有化合物(s)(以下、単に(s)と表記する場合がある)と反応させ、その後スルホン酸前駆体基をスルホン酸基に変換する方法などが挙げられる。
(s)は、その分子中に、無機多孔体の表面の官能基と反応する基及びスルホン酸基に変換可能な基を有する化合物である。
無機多孔体の表面の官能基としては水酸基、アミノ基及びカルボキシル基などが挙げられる。好ましいのは無機多孔体の表面を修飾しやすいという観点から水酸基である。
一方、(s)が含有する、無機多孔体の表面の官能基と反応する基としては、表面の官能基が水酸基又はアミノ基の場合はトリアルコキシシリル基、グリシジル基及びカルボキシル基などが挙げられ、表面の官能基がカルボキシル基の場合はトリアルコキシシリル基、グリシジル基及びアミノ基などが挙げられる。
これらのうち好ましいのは表面の官能基との反応が進行し易いという観点からトリアルコキシシリル基及びグリシジル基、特にトリアルコキシシリル基である。
(s)が含有するスルホン酸基に変換可能なスルホン酸前駆体基としては、メルカプト基(酸化してスルホン酸基に変換)及びフェニル基(スルホン化してスルホフェニル基に変換)などが挙げられる。
(s)の具体例としては、メルカプト基含有シランカップリング剤(メルカプトプロピルトリメトキシシラン及びメルカプトプロピルトリエトキシシランなど)、フェニル基含有シランカップリング剤(フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシランなど)及びフェニル基含有グリシジル化合物(フェニルグリシジルエーテル、ノニルフェニルグリシジルエーテルなど)が挙げられる。これらのうち好ましいものはメルカプト基含有シランカップリング剤である。
シランカップリング剤と無機多孔体との反応は、種々の反応条件で行うことができる。例えば、シランカップリング剤を無機多孔体の重量に基づいて30〜60重量%の割合で仕込み、溶剤の存在下に加熱撹拌し、シランカップリング剤中のトリアルコキシシリル基と無機多孔体の表面の官能基(水酸基など)を反応させた後、精製して得ることができる。
反応溶剤としては有機溶剤(トルエン、キシレン、酢酸エチル、メチルエチルケトン、アセトン及び/又は低級アルコール等)を使用することができ、水とこれらの有機溶剤との混合溶剤でもよい。
水は無機多孔体表面の水酸基及びシランカップリング剤の活性を促進させるため少量使用する方が好ましく、水の割合はシランカップリング剤に対して3倍モル以下が特に好ましい。
また反応溶剤の使用量は無機多孔体の重量に基づいて、通常80〜300%(以下において、%は特に限定しない限り重量%を表す)、好ましくは100〜250%である。
反応温度は通常60〜150℃であり、生成するアルコキシ基由来物質(例えばメタノール、エタノール等の低級アルコール)を除去しながら反応してもよい。
反応後は粒状物をろ過もしくは遠心分離機等を用いて分離・回収し、未反応物質(未反応シランカップリング剤など)除去のために、上記の有機溶剤で数回洗浄した後、減圧乾燥(通常100〜120℃、10〜20mmHgで3〜5時間)させる。
メルカプト基含有シランカップリング剤を反応させた後、メルカプト基をスルホン酸基に変換するには、反応溶剤の存在下に酸化反応を行う。用いる酸化剤としては種々の酸化剤、例えば硝酸、過酸化水素、次亜塩素酸塩、過マンガン酸カリウム、クロム酸又は過酸化物などが挙げられ、好ましいのは過酸化水素である。反応溶剤としてはアセトン、低級アルコール、アセトニトリル、ピリジン、クロロホルム及び/又はジクロロメタンなどが通常使用される。反応温度は通常0〜100℃である。過酸化水素による酸化反応は米国特許5912385号明細書記載の反応条件でも行うことができる。
フェニル基含有シランカップリング剤を反応させた後、フェニル基をスルホン化するには、種々のスルホン化方法が適用できる。スルホン化剤としては例えば濃硫酸、発煙硫酸、三酸化硫黄、クロロ硫酸、フルオロ硫酸又はアミド硫酸等を用いる方法が挙げられる。この場合の反応溶剤としては酢酸、無水酢酸、酢酸エチル、アセトニトリル、ジクロロエタン及び/又は四塩化炭素などが使用できる。反応温度は通常−10〜180℃である。
酸化反応又はスルホン化反応のいずれの場合でも反応後の精製処理操作として前述と同様の操作(分離・回収、洗浄及び乾燥)を行うことによりスルホン酸基担持無機多孔体(α)が得られる。
(α)の製造方法のうち好ましいのは、メルカプト基含有シランカップリング剤を無機多孔体に反応させた後、スルホン酸基に変換する方法である。
(α)は、好ましくは5〜250mgKOH/g、さらに好ましくは10〜150mgKOH/g、特に好ましくは15〜100mgKOH/gの酸価を有する。
酸価が5mgKOH/g以上であることで触媒活性が向上し、少量の触媒でエステル化反応が進行し、酸価を100mgKOH/g以下であることで副反応が起こりにくくなる。
(α)の酸価の測定はイオン交換水に(α)を浸し、過剰の水酸化ナトリウムを加えて攪拌し、0.1N塩酸水溶液で中和滴定するという方法で測定できる。
(α)は、スルホン酸基を担持する前の無機多孔体と実質的に同じ形状であり、そのd50、BET比表面積及びアスペクト比の好ましい範囲も同様である。
(α)は、好ましくは1〜8,000μm、さらに好ましくは10〜6,000μm、特に好ましくは40〜500μmのd50を有する。1μm以上であることで取り扱いが容易になり、8,000μm以下であることが触媒活性の面で好ましい。
(α)は、好ましくは30m2/g以上、さらに好ましくは50〜1,500m2/g、特に好ましくは100〜800m2/gのBET比表面積を有する。30m2/g以上であることが、触媒活性が高くなりかつ副反応が少なくなる点で好ましい。
(α)は、好ましくは0.8以上、さらに好ましくは0.85〜1.0、特に好ましくは0.9〜1.0のアスペクト比を有する球状粒子である。
アスペクト比が0.8以上であれば、後述する流通法で反応させる際の圧力損失が小さい点で好ましい。
本発明のエステルの製造方法において、(a1)及び/又は(a2)と(b)の仕込み当量比は、通常1:3〜3:1、好ましくは1:2〜2:1、さらに好ましくは1:1.5〜1.5:1、特に好ましくは1:1.3〜1.3:1である。
(α)の使用量は(a1)及び/又は(a2)と(b)の総重量に対して、通常0.1〜70%、好ましくは1〜60%、さらに好ましくは2〜50%、特に好ましくは3〜40%である。
0.1%以上用いることで効率的にエステル化反応が進行し、70%以下が経済面から好ましい。
また、(α)の使用量は、(a1)及び/又は(a2)の仕込み当量に対する(α)中のスルホン酸基の当量の比が好ましくは0.005〜0.3、さらに好ましくは0.01〜0.2となる添加量である。0.005以上であれば反応速度の観点から好ましく、0.3以下であれば副反応が抑制されるという観点から好ましい。
エステル化反応の形態としては、バッチ法又は流通法のいずれの方法でも実施することができる。
バッチ法の場合は、(α)、(a1)及び/又は(a2)、(b)及び必要により反応溶剤を反応槽の中に仕込み、加熱撹拌し、生成する水又は低級アルコールを除去しながら反応を進行させる。反応完了後、反応生成物と(α)をデカンテーション、ろ過、遠心分離などによって分離することで、エステルを得ることができる。
エステル化反応温度は、通常60〜180℃、好ましくは80〜160℃、さらに好ましくは100〜140℃である。60℃以上が反応速度の観点から好ましく、180℃以下が副反応を抑制する観点から好ましい。
反応時間は、通常10分〜24時間、好ましくは30分〜10時間、特に好ましくは1〜5時間である。
反応溶剤としては、炭化水素系溶剤(トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素など)、ケトン系溶剤(メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなど)、及びエーテル系溶剤(テトラヒドロフランなど)などが使用できる。これらの反応溶剤のうち、反応生成水を分離して除去し易いという観点から炭化水素系溶剤が好ましい。
生成する水又は低級アルコールを除去する方法としては、常圧又は減圧下に溜去させる方法、分液や遠心分離する方法、モレキュラシーブス、硫酸マグネシウムなどの脱水剤と接触させる方法、水分離膜などの選択膜により膜分離する方法などが挙げられる。上記バッチ法の場合は、常圧又は減圧下に溜去させる方法が好ましい。
流通法の場合は、(α)を充填したカラム、固定床又は流動床などに、所定の温度に温調した(a1)及び/又は(a2)と(b)の混合物を通液することでエステル化反応させることができる。
1パス後の反応混合物を蒸留することによりエステルを得ることもできるが、反応率を高くすることができるという観点から、(α)の存在下に(a1)及び/又は(a2)と(b)とを反応させる工程(1)と、(a1)及び/又は(a2)と(b)との反応によって生成した水又は低級アルコールを反応混合物から除去する工程(2)とからなる製造方法が好ましい。
特に、工程(1)と工程(2)とを繰り返すことで反応率をさらに高めることができる。 工程(1)において通液する(a1)及び/又は(a2)と(b)の混合物の温度は、通常60〜180℃、好ましくは80〜160℃、さらに好ましくは100〜140℃である。60℃以上が反応速度の観点から好ましく、180℃以下が副反応を抑制する観点から好ましい。
工程(1)における1パスあたりの平均通液時間(触媒と反応液の平均接触時間)は、通常0.1〜60分、好ましくは0.2〜10分、さらに好ましくは0.5〜5分である。
工程(2)における水又は低級アルコールを除去する方法としては、連続式エバポレーターで留去する方法、コンデンサーを付した反応槽などを用いて常圧又は減圧下に溜去させる方法、並びに水分離膜、遠心分離もしくは脱水剤によって脱水する方法などが挙げられる。これらのうち、連続式エバポレーター、コンデンサーを付した反応槽及びそれらの併用が生産効率の観点から好ましい。
工程(1)と工程(2)の繰り返し回数は、通常1〜500回、好ましくは3〜200回、さらに好ましくは5〜100回である。
エステル化合物(A)の具体的な化合物例としては、以下のようなものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
(A1)一価エステル化合物
2−エチルヘキシルステアレート、イソデシルステアレート、ラウリルイソステアレート、イソステアリルオレート、イソエイコシルステアレート、イソエイコシルオレート、イソテトラコシルオレート、イソアラキジルオレート、イソステアリルパルミテート、オレイルオレート、ラウリルアルコールEO2モル付加物のラウリン酸エステル、オレイルアルコールPO2モル付加物のステアリン酸エステル等。
(A2)二価エステル化合物
グリセリンジオレート、ジオレイルアジペート、ジイソトリデシルアジペート、ステアリルアルコールEO10モル付加物のアジピン酸ジエステル、ビスフェノールEO5モル付加物のジオレイン酸エステル等。
(A3)多価エステル化合物
グリセリントリオレート、ペンタエリスリトールテトラオレート、ソルビトールテトラステアレート、トリメリット酸トリラウレート等。
(A4)その他のエステル類
ジラウリルチオジプロピオネート、ジオレイルチオジプロピオネート、ジイソステアリルチオジプロピオネート等
本発明の油剤は、上記に述べた(A)を必須成分として含有するが、さらに乳化剤成分(B)および湿潤成分(C)を含有することが好ましい。
乳化剤成分(B)は、乳化機能を有する界面活性剤であって、非イオン界面活性剤(高級アルコールのAO付加物等)、アニオン界面活性剤(高級アルコールの硫酸化物Na塩、アルキルスルホネートNa塩等)、カチオン界面活性剤(アルキルアミン及びその無機酸塩もしくは有機酸塩、第四級アンモニウム塩等)及び両性界面活性剤(ベタイン型両性界面活性剤、アミノ酸型両性界面活性剤等)等が挙げられる。これらのうち、好ましいのは非イオン界面活性剤であり、分子内にポリアルキレングリコール(以下PAGと略す)鎖を有する重量平均分子量(以下Mwと略す)1,000以上のPAG型非イオン界面活性剤(B1)であることがより好ましい。(B1)が有するPAGは、活性水素を有する化合物にAOを付加することにより得られる。PAGを形成するAOは、特に限定されないが、好ましいのはEO単独又はEOとPOの併用である。EOとPOを併用する場合は、その付加様式(ランダム又はブロック)、EOとPOの構成重量比は、特に限定されないが、EOの重量割合が50%以上であることが好ましい。
(B1)のMwは、油剤配合後の安定性や平滑性の観点から、1,000〜30,000であって、好ましくは1,200〜25,000、より好ましくは1,500〜20,000である。
(B1)の具体例としては、以下のものが挙げられる。
(B11)炭素数4〜36の脂肪族アルコールのAO付加物
ブタノールEO20モル、PO10モルブロック付加物、オクチルアルコールEO30モル付加物、オレイルアルコールEO20モル付加物、オクチルアルコールEO/POランダム付加物(モル比:EO/PO=3/2)(Mw=2,000)、ネオペンチルグリコールEO30モル付加物、ソルビトールEO40モル付加物等。
(B12)炭素数6〜42の脂環式アルコールのAO付加物
シクロヘキサノールEO25モル付加物、3−エチルシクロヘキサノールEO/POランダム付加物(モル比:EO/PO=3/2)(Mw=1,500)、trans−1,2−シクロヘキサノールEO45モル付加物等。
(B13)炭素数7〜40の芳香族アルコールのAO付加物
ベンジルアルコールEO25モル付加物、オクチルフェノールEO20モル付加物、ノニルフェノールEO25モル付加物、ドデシルフェノールEO100モル付加物等。
(B14)炭素数4〜40の脂肪酸のAO付加物
オレイン酸EO20モル付加物、ステアリン酸EO/POランダム付加物(モル比:EO/PO=3/2)(Mw=3,000)等。
(B15)フェノール及びフェノール誘導体のAO付加物
フェノールのEO20モル付加物、ビスフェノールAのPO10モル、EO30モルブロック付加物等。
(B16)多価(2〜8価)アルコール脂肪酸エステルのAO付加物
グリセリンモノステアレートのEO40モル付加物、ヒマシ油EO20モル付加物、ヒマシ油EO/POランダム付加物(モル比:EO/PO=3/2)(Mw=3,000)、硬化ヒマシ油EO40モル付加物、硬化ヒマシ油EO10モル、PO25モル付加物、ソルビトールジラウレートEO40モル付加物、ソルビタンモノオレートのEO20モル付加物等。
湿潤成分(C)は、油剤に合成繊維への湿潤性を付与する機能剤であって、湿潤性を付与する非イオン界面活性剤、アニオン界面活性剤等が使用できるが、非イオン界面活性剤であることが好ましく、Mw=1,000未満の脂肪族アルコールのAO付加物(C1)であることがより好ましい。AOとしては、炭素数2〜12のものが使用でき、AOを付加する方法等は前述と同様である。AOとしては、EO単独又はEOとPO併用が好ましく、EO単独であることがより好ましい。EOとPOを併用する場合は、その付加様式(ランダム付加又はブロック付加)は特に限定されないが、ブロック付加物であることが好ましく、また、EOとPOの構成重量比の特に限定されないが、EOの重量割合が70%以上であることがより好ましい。
(C1)として、具体的には下記のようなものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
(C11)炭素数8〜22の直鎖脂肪族アルコールAO付加物
オクチルアルコールEO8モル付加物、デシルアルコールEO10モル、PO2モル付加物、ラウリルアルコールEO10モル付加物、オレイルアルコールEO5モル付加物、ステアリルアルコールPO2モル、EO2モル付加物等。
(C12)炭素数8〜22の分岐脂肪族アルコールAO付加物
2−エチルヘキシルアルコールPO5モル、EO5モル付加物、イソデシルアルコールEO2モル付加物、イソトリデシルアルコールEO10モル付加物、2−ヘキシルヘキサノールEO3モル付加物、2−ヘキシルデカノールEO7モル付加物、イソステアリルアルコールPO4モル、EO1モル付加物等。
これらのうち、好ましいものは炭素数8〜22の分岐脂肪族アルコールAO付加物であり、炭素数10〜18の分岐脂肪族アルコールAO付加物であることがより好ましく、炭素数12〜16の分岐脂肪族アルコールAO付加物であることが最も好ましい。
なお、(C)は2種以上を併用して使用しても良い。
本発明の油剤は、上記に述べた(A)、(B)及び(C)を特定の割合で含有することが好ましい。
すなわち、前記(A)と(B)及び(C)の合計重量の比((A)/[(B)+(C)])が3/1〜1/3、かつ(B)と(C)の重量比((B)/(C))が4/1〜1/6、かつ(A)の重量が、油剤の全重量((A)+(B)+(C)+後述のその他の成分(D))に基づいて5〜80重量%であることが好ましい。さらに好ましくは、(A)と(B)及び(C)の合計重量の比((A)/[(B)+(C)])が2.5/1〜1/2.5、かつ(B)と(C)の重量比((B)/(C))が3.5/1〜1/5、かつ(A)の重量が、油剤の全重量に基づいて7〜78重量%である。(A)、(B)及び(C)がそれぞれこの範囲にあると、平滑性が良好となり、製糸性がさらに向上する傾向がある。
本発明の油剤には、さらにその他の成分(D)を含有することができる。(D)としては、以下のようなものが挙げられる。(D)は2種以上を併用して使用しても良い。
(D1)(A)以外の潤滑剤
25℃における動粘度が10〜3,000cStである鉱物油(例えば、25℃における動粘度が200cStである精製スピンドル油、25℃における動粘度が100cStである流動パラフィン等)、動植物油(例えば、牛脂、マッコウ鯨油、菜種油、ヤシ油、ヒマシ油等)、シリコーン化合物(例えば、ポリジメチルシロキサン、アミノ変性シリコーン、フェニル変性シリコーン等)、天然及び合成ワックス(例えば、カルナバワックス、ミツロウ、融点30℃〜100℃のパラフィンワックス及びポリオレフィンワックス[オレフィンの炭素数2〜18、Mw=1,000〜10,000のワックス、例えばポリエチレンワックス])等。
(D2)(B)及び(C)以外の界面活性剤
脂肪酸アルカノールアミド(オレイン酸ジエタノールアミド、ステアリン酸ジエタノールアミド、ステアリン酸モノイソプロパノールアミド等)、炭素数6〜32のアルキルアミン及びこれらの炭素数2〜4のAO付加物(例えば、付加モル数1〜40)(例えば、デシルアミンのEO4モル付加物、ラウリルアミンのEO6モル付加物、ステアリルアミンのEO8モル付加物等)等。
(D3)帯電防止剤
炭素数8〜32のアルコール及びこれらの炭素数2〜4のAO付加物(例えば、付加モル数1〜20)のホスフェート(例えば、ラウリルアルコールのリン酸エステルカリウム塩、ステアリルアルコールのEO2モル付加物のリン酸エステルナトリウム塩、イソステアリルアルコールのEO7モル付加物のリン酸エステルカリウム塩等)、炭素数9〜90の(チオ)ホスファイト(例えば、トリフェニルホスファイト、トリラウリルトリチオホスファイト等)、炭素数8〜32の脂肪酸石鹸(対イオンは、例えばアンモニウム、ナトリウム、カリウム、アンモニア等)(例えば、ラウリン酸アンモニウム石鹸、オレイン酸カリウム石鹸、ヒマシ油ナトリウム石鹸等)、炭素数8〜32のイミダゾリン系化合物(例えば、ラウリルイミダゾリン、オレイルイミダゾリン等)、炭素数8〜32の硫酸エステル類及びその塩(例えば、ラウリルアルコール硫酸エステルナトリウム塩、オレイルアルコール硫酸エステルアンモニウム塩等)、炭素数8〜32のスルホン酸及びその塩(例えば、ラウリルスルホネートナトリウム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸及びそのナトリウム塩、スルホコハク酸ジ−2−エチルヘキシルエステルナトリウム塩等)等。
(D4)酸化防止剤
ヒンダードフェノール系酸化防止剤(例えば、2,6−ジ−t−ブチルフェノール、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)]プロピオネート、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル]プロピオネート等)、アミン系酸化防止剤(例えば、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン等)等。
(D5)紫外線吸収剤
ベンゾトリアゾール系(2−(3,5−ジ−t−アミル)ヒドロキシフェニル等)、ヒンダードアミン系(ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート等)等。
(D6)フッ素化合物
パーフルオロエタン、パーフルオロオクタン等。
(D7)pH調整剤
塩酸、次亜リン酸、リン酸、硫酸、低級脂肪酸(炭素数2〜8)及びその誘導体(例えば、酢酸、乳酸、リンゴ酸、酢酸ナトリウム等)、アンモニア及びアルカリ金属の水酸化物(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等)、高級脂肪酸類(例えば、ラウリン酸、オレイン酸、ステアリン酸、サリチル酸、ペンタデセニルコハク酸等)等。
(D8)その他
外観調整剤(エチレングリコール、プロピレングリコール、オレイルアルコール等)、水等。
(D)の配合量(重量%)は、処理剤の全重量に対して50重量%以下であることが好ましい。
本発明の油剤は、(A)、(B)、(C)及び(D)を配合することによって得ることができる。配合の方法については、特に限定されず公知の方法が適用可能である。例えば、攪拌羽を備えた配合槽に各成分を所定量仕込み、必要により加温し、攪拌、均一とする方法等が使用できる。
本発明の油剤の使用形態は特に限定されないが、通常、エマルション又は低粘度鉱物油(25℃における動粘度が1〜10cStの流動パラフィン等)や溶剤(メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルエーテル、ベンゼン、トルエン、キシレン等)等による希釈品として、又はそのまま使用される。これらのうち、エマルションとして使用されることがより好ましい。エマルションとして使用される場合、エマルションの調整方法に特に限定はなく、例えば、乳化槽に所定量のイオン交換水を入れ、攪拌下で徐々に本発明の油剤を投入し、乳化するといった方法が適用できる。エマルションの濃度は、通常、5〜40重量%、好ましくは8〜30重量%である。乳化温度は、通常、10〜60℃である。
本発明の油剤は、紡糸工程の任意の位置で給油できるが、通常、紡糸直後の未延伸の繊維に所定量給油される。給油方法は、ローラー、ノズル等、任意の公知の方法が適用できる。繊維は給油処理された後、延伸され、巻き取られる。本発明の油剤の繊維に対する付着量は、特に限定されないが、通常、繊維に対し油剤純分として0.05〜8重量%、好ましくは0.1〜5重量%である。
本発明の油剤が適用できる合成繊維は特に限定されず、ポリエステル、ポリアミド、ポリアクリル、ポリ乳酸、レーヨン、アセテート等に適用でき、優れた効果を発揮する。
本発明の油剤で処理された合成繊維の用途は特に限定されず、織物、編物等、種々の形態で各種衣料用や産業資材用等に広く使用することができる。
以下に実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。実施例中の部は重量部を示す。
<スルホン酸基担持無機多孔体(α)の製造例>
製造例1
攪拌装置、加熱冷却装置、温度計及び還流管を備えた反応容器に、あらかじめイオン交換水で洗浄後乾燥させたシリカ−アルミナ系多孔体(「キョーワード700SN」:協和化学工業株式会社製)200部並びに溶剤としてのトルエン400部及び水10部を仕込んだ後、100〜110℃に昇温した。次いで3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン100部加え、環流下に8時間撹拌反応させた。その後さらに水15部を加えて8時間反応させた。反応混合物から固形分をろ別し、トルエン400部で3回、イソプロピルアルコール400部で3回の順で洗浄した後、120℃にて5時間減圧乾燥し、シランカップリング剤担持無機多孔体190部を得た。
シランカップリング剤担持無機多孔体のうちの150部、溶剤としてのメタノール450部、及び30%過酸化水素水150部を上記と同様の反応容器に仕込み、環流下に70℃で8時間反応させた。反応混合物から固形分をろ別し、メタノール400部で3回、0.1N硫酸400部で1回及びイオン交換水400部で3回の順で洗浄した後、120℃にて5時間減圧乾燥して、スルホン酸基担持無機多孔体からなる触媒(α−1)を140部得た。(α−1)は、シリカ−アルミナがスルホプロピル基を担時した構造であり、そのd50は216μm、BET比表面積は197m2/g、酸価は85mgKOH/g、アスペクト比は0.89であった。
製造例2
触媒の担体としてシリカゲル(CARiACT Q−6 75−500μm:富士シリシア化学株式会社製)を200部使用した以外は製造例1と同様の方法で触媒(α−2)を140部得た。(α−2)は、シリカゲルがスルホプロピル基を担時した構造であり、そのd50は220μm、BET比表面積は287m2/g、酸価は43mgKOH/g、アスペクト比は0.98であった。
<エステル化合物(A)の製造例>
製造例3
攪拌装置、加熱冷却装置、温度計、分水管を備えた反応容器に、オレイルアルコール270部とオレイン酸280部を仕込み(モル比1:1)、これに製造例1で製造した触媒(α−1)101部を加えた。反応温度115〜125℃にて生成水を分水管により連続的に系外へ除去しながら2時間エステル化反応させた。さらに250〜300mmHgの減圧下に115〜125℃で1時間反応させた後、冷却し、触媒をデカンテーションで除去することで、エステル化合物(A−1)オレイルオレートを510部得た。
製造例4
攪拌装置、加熱冷却装置、温度計、気体吹き込み口、コンデンサー、ピットを付したステンレス製反応槽に、オレイルアルコール700部、アジピン酸183部(モル比2:1)を仕込み、空気−窒素の混合気(1:2)を500ml/分で通気した。反応温度の115〜125℃まで昇温した後、ダイヤフラムポンプにて反応槽内の反応液を、製造例2で製造した触媒(α−2)177部を充填したステンレス製固定床へ流速1.1L/分で連続的に通液し、吐出液を元の反応槽へと循環させ、反応槽では115〜125℃で常圧で脱水することで、反応液を循環しながら、反応と脱水工程を同時に連続的に1時間行った。
その後、反応槽内を250〜300mmHgの減圧にして、さらに2時間、同様の反応と脱水を行い、エステル化反応を完結させた。次いで、反応液の全量を反応槽に戻し、エステル化合物(A−2)ジオレイルアジペートを836部得た。
<比較エステル化合物(E)の製造例>
比較製造例1
攪拌装置、加熱冷却装置、温度計、分水管を備えた反応容器に、オレイルアルコール270部とオレイン酸280部を仕込み(モル比1:1)、これにエステル化触媒としてパラトルエンスルホン酸0.2部を加えた。反応温度140〜150℃にて生成水を分水管により連続的に系外へ除去しながら6時間反応させた後、水酸化カリウムで中和、吸着剤による処理濾過を行い、比較エステル化合物(E−1)オレイルオレート510部を得た。
比較製造例2
攪拌装置、加熱冷却装置、温度計、分水管を備えた反応容器に、オレイルアルコール700部とアジピン酸183部を仕込み(モル比2:1)、これにエステル化触媒としてパラトルエンスルホン酸0.3部を加えた。反応温度140〜150℃にて生成水を分水管により連続的に系外へ除去しながら8時間反応させた後、水酸化カリウムで中和、吸着剤による処理濾過を行い、比較エステル化合物(E−2)ジオレイルアジペートを836部得た。
実施例
上記エステル化合物(製造例1,2、比較製造例1,2)及び下記成分を使用し、本発明の油剤(実施例1〜5)及び比較油剤(比較例1〜4)を表1のように配合した。
(B−1)オレイルアルコールEO20モル付加物
(B−2)オクチルアルコールEO/PO{モル比(EO/PO)=3/2}ランダム付加物(Mw=2,000)
(B−3)ソルビトールジラウレートEO40モル付加物
(B−4)ヒマシ油EO20モル付加物
(C−1)2−ヘキシルヘキサノールEO3モル付加物
(C−2)2−ヘキシルデカノールEO7モル付加物
(D1−1)流動パラフィン(25℃における動粘度:100cSt)
(D1−2)菜種油
(D2−1)ステアリン酸ジエタノールアミド
(D2−2)ラウリルアミンEO10モル付加物
(D3−1)ラウリルアルコールのリン酸エステルカリウム塩
(D3−2)オレイン酸カリウム石鹸
(D3−3)ラウリルスルホネートナトリウム塩
これらを用いて下記評価を行った。その結果を表2に示す。
<評価項目及び評価方法>
<耐熱性>
各油剤1.0gをステンレス製シャーレ(直径5cm)に取り、150℃の乾燥機中に8時間放置した。放置後のシャーレ内での処理剤の状態を目視で観察し、耐熱性を判断した。
○・・・耐熱性良好(着色少ない。タールの発生なし。)
△・・・耐熱性やや不良(着色ややあり。タールの発生少しあり。)
×・・・耐熱性不良(着色強い。タールの発生多い。)
さらに、表1に示す本発明の油剤及び比較油剤を用い、有効成分12%エマルションを作成し、下記条件で6ナイロン原糸(840デニール)を生産した。各油剤について、24時間後の巻き取りチーズの毛羽状態を観察した結果を表3に示す。
○・・・毛羽数 3以下
△・・・毛羽数 4〜6
×・・・毛羽数 7以上
<生産条件>
油剤付着量; 1.0重量 %
巻取り速度; 3,500m/分
延伸ローラー温度; 210℃
表2及び表3から、本発明の油剤は、耐熱性が良く、製糸性が良好で得られる糸の品質も極めて優れていることが明らかである。
本発明の油剤は、耐熱性に優れているため、製糸工程において、毛羽発生を減らすことができ、極めて良好な製糸性を与える。また、得られる繊維の品質も優れており、合成繊維用紡糸油剤として好適である。


Claims (9)

  1. スルホン酸基担持無機多孔体(α)の存在下に、カルボン酸(a1)及び/又はカルボン酸誘導体(a2)とアルコール類(b)とを反応させて得られるエステル化合物(A)を含有することを特徴とする合成繊維用紡糸油剤。
  2. (α)が、シリカ、アルミナ、チタニア、マグネシア及びジルコニアからなる群から選ばれる1種以上の無機物からなる無機多孔体にスルホン酸基を担持させた粒状物である請求項1記載の合成繊維用紡糸油剤。
  3. (α)が、無機多孔体をスルホン酸前駆体基含有化合物(s)と反応させてスルホン酸前駆体基担持無機多孔体を得た後、スルホン酸前駆体基をスルホン酸基に変換して得られるスルホン酸基担持無機多孔体である請求項1又は2記載の合成繊維用紡糸油剤。
  4. (α)が、1〜8,000μmの平均粒径を有する粒状物である請求項1〜3のいずれか記載の合成繊維用紡糸油剤。
  5. (α)が、30m2/g以上のBET比表面積を有する請求項1〜4のいずれか記載の合成繊維用紡糸油剤。
  6. (α)が5〜250mgKOH/gの酸価を有する請求項1〜5のいずれか記載の合成繊維用紡糸油剤。
  7. (α)が、0.8以上のアスペクト比を有する球状粒子である請求項1〜6のいずれか記載の合成繊維用紡糸油剤。
  8. 合成繊維の紡糸工程において、請求項1〜7のいずれかに記載の合成繊維用紡糸油剤を用いて、繊維を処理した後、延伸、巻き取りする合成繊維の処理方法。
  9. 請求項8記載の方法で処理された合成繊維。


























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