以下図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明の一実施形態である画像形成装置の概略構成を示す図である。
本実施形態の画像形成装置1は、フルカラータンデム方式を採用した画像形成装置であって、イエロー、マゼンタ、シアンおよびブラックの4色のトナーそれぞれに対応した、4つのトナー像形成ユニットを用いて、中間転写ベルトの送りに同期させて各トナー像形成ユニットでそれぞれの色のトナー像を形成し、それらトナー像を中間媒体としての中間転写ベルト上に重ね合わせ(1次転写)、中間転写ベルト上に重ね合わせたトナー像を記録媒体である用紙に転写(2次転写)し、定着するものである。
図1に示す画像形成装置1は、4つのトナー像形成ユニット10、4つの1次転写ロール20、3つの支持ロール31に支持されて反時計回りの方向に循環移動する半導電性の中間転写ベルト30、2次転写を行う一括転写装置40、および未定着トナー像を用紙に定着させる定着装置50を備えている。
4つのトナー像形成ユニット10は、中間転写ベルト30の循環方向に並んで配置されており、各トナー像形成ユニット10には、時計回りに回転するドラム状の感光体11が備えられている。各感光体11は、ドラム状の導電性支持体の上に、下引層、電荷発生層、電荷輸送層を積層してなるものである。電荷輸送層は、この感光体11の最表層になる層であって、感光体11が回転軸を中心にして回転することで電荷輸送層(感光体11の表面)は回転軸の周りを循環移動する。感光体11の表面は、中間転写ベルト30に接している。中間転写ベルト30が感光体11の表面に接する領域には、中間転写ベルト30を感光体11と挟み込むように一次転写ロール20が配備されており、この領域が1次転写領域である。
ここで、図1とともに図2も用いて、本実施形態の画像形成装置の説明をさらに進める。
図2は、図1に示す4つのトナー像形成ユニットのうちの一つのトナー像形成ユニットを図1よりも詳しく示した図である。
図2に示すトナー像形成ユニット10は、感光体11の他、帯電器12、露光器13、現像装置14、クリーニング装置15、および除電器16も備えている。
帯電器12は、非接触帯電方式のコロトロン帯電器である。この帯電器12には帯電バイアスが印加される。なお、帯電器として、感光体表面11aに接触した状態で回転する帯電ロールや、ブレード状の帯電部材等を備えた接触帯電方式を採用した帯電器を用いてもよい。露光器13は、感光体表面11aに向けて、画像情報に基づく露光光を照射するものである。
現像装置14は、感光体11の周囲の、1次転写領域よりも上流側に配備されている。この現像装置14は、トナーを収容した現像剤収容体141と、現像剤収容体141に収容されたトナーを担持して感光体の表面11aに対向した状態で回転する現像ロール142を有する。現像剤収容体141に収容されたトナーは、トナー母粒子の表面にそのトナー母粒子よりも小さな外添剤粒子である、粒径が5nm以上50nm未満の無機酸化物粒子(以下、小粒径無機酸化物粒子と称する)や粒径が50nm以上200nm以下の無機酸化物粒子(以下、大粒径無機酸化物粒子と称する)が添加されたものであり、負極に帯電する帯電特性を有する。小粒径無機酸化物粒子の具体例としては、トナーの帯電性を制御したりトナーの流動性を高めるシリカ等の粒径が20nm以上30nm以下の無機酸化物粒子があげられる。
除電器16は、感光体11の周囲の、1次転写領域よりも下流側に配備されており、感光体11の、1次転写領域を通過した表面11aの残留電荷を除電する。
図1に示す画像形成装置1において画像形成が行われる際には、感光体11の表面11aが、帯電器12による放電現象によって一様に帯電された後、露光器13によって画像情報に基づく露光光が照射され、感光体表面11aに静電潜像が形成される。続いて、静電潜像が形成された感光体表面11aに現像ロール142からトナー供給が行われ静電潜像がトナーによって現像され、感光体表面11aにトナー像が形成される。感光体表面11aに形成されたトナー像は、1次転写領域において感光体表面11aから中間転写ベルト30の表面へ移行する。各トナー像形成ユニット10で形成されたトナー像は、中間転写ベルト30上で1つに重なり合ったトナー像となる。
また、一括転写装置40は、中間転写ベルト30のトナー像担持面側に圧接配置された二次転写ロール41と、中間転写ベルト30の裏面側に配置されたバックアップロール42を備えており、これら2つのロール41,42で中間転写ベルト30を挟みこんでいる。これら2つのロール41,42間が二次転写領域になる。
さらに、図1に示す画像形成装置1には、用紙トレイ60が配備されており、用紙トレイ60に収容された用紙Pは、フィードロール61によって用紙トレイ60から送り出され、所定のタイミングで二次転写領域へと送り込まれる。二次転写領域では、中間転写ベルト30上で1つに重なり合ったトナー像が、送り込まれてきた用紙P上に転写される。定着装置50は、加熱機構511を有する定着ロール51、および定着ロール51に対向するように設けられた圧力ロール52を備えている。互いに対向する定着ロール51と圧力ロール52との間には、2次転写領域を通過した用紙Pが搬送されてくる。用紙P上のトナー像を構成するトナーは、定着ロール51の加熱機構511により溶融され用紙Pに定着する。
また、一括転写装置40の下流側にはベルトクリーナ70が設けられている。中間転写ベルト30の、2次転写領域を通過した表面には、用紙Pへ移行することができなかった残留トナー等の残留物が存在するが、この残留物はベルトクリーナ70によって中間転写ベルト20から除去される。
さらに、図2に示す感光体11の、1次転写領域を通過した表面11aにも、1次転写領域において中間転写ベルト30の表面へ移行することができなかった残留トナー粒子や、トナー母粒子に付着していた小粒径無機酸化物粒子や大粒径無機酸化物粒子が存在する。図2に示すクリーニング装置15は、残留トナー粒子等を感光体表面11aから除去するための装置であり、1次転写領域よりも感光体回転方向下流側であって帯電器12よりも感光体回転方向上流側の位置に配備されたものである。このクリーニング装置15は、本発明のクリーニング装置の一実施形態に相当するものであり、大粒径ロール151、小粒径ロール152、クリーニングブラシ153、回収ロール154、スクレーパ部材155、および搬送オーガ156を備えている。
クリーニングブラシ153は、感光体10の回転軸110と平行に延びた中心軸1531から放射状に延びた毛1532を有する。この毛1532に用いる繊維としては、ナイロン、アクリル、ポリオレフィン、ポリエステル等の樹脂繊維が挙げられ、ベルトロン(カネボウ社製)、SA−7(東レ社製)、UUナイロン(ユニチカ社製)等の市販品を使用することができる。これらの毛の太さは、好ましくは30デニール以下、より好ましくは20デニール以下、さらに好ましくは0.5デニール以上10デニール以下である。クリーニングブラシ153は、例えば、中心軸1531であるシャフトにこれらの繊維からなるブラシ基布を螺旋状に巻き付けることで作成することができる。また、毛の密度は、好ましくは20,000本/6.45cm2以上、より好ましくは60,000本/6.45cm2以上である。
また、クリーニングブラシ153の毛1532は導電性のものである。この毛1532に導電性を付与する方法としては、繊維に導電性粉末やイオン導電材を配合する方法、繊維の内部又は外部に導電層を形成する方法等が挙げられる。また、導電性が付与された繊維の抵抗値は、繊維単体で102Ω・cm以上1011Ω・cm以下であることが好ましい。
クリーニングブラシ153は、毛1532の先端が感光体表面11aおよび回収ロール154の外周面の双方に食い込んだ状態で中心軸1531を中心にして回転し、その毛1532によって感光体表面11aを摺擦する。クリーニングブラシ153の、感光体表面11aへの食い込み量は、好ましくは0.3mm以上2.0mm以下、より好ましくは0.5mm以上1.8mm以下である。
クリーニングブラシ153の毛1532には、残留トナー粒子の帯電極性とは逆極性になる正極性のクリーニングバイアスが印加される。感光体表面11aに存在する負極性の残留トナー粒子は、正極性のクリーニングバイアスの作用によってその毛1532に静電的に吸着する。このクリーニングブラシ153は、本発明にいうクリーニング手段の一例に相当する。
なお、クリーニングブラシ153に代えて他の方式のクリーニング手段を設けてもよく、例えば、板状のクリーニングブレードを配備し、感光体表面11aに残留した残留物を、そのクリーニングブレードの先端の縁で機械的に掻き取るようにしてもよい。しかしながら、クリーニングブラシ153を利用した静電方式では、クリーニング性能の経時劣化が少なく、残留トナー粒子のクリーニング性が長期にわたって良好に維持される。特に、高速機においてはクリーニングブレードを用いるよりも有利である。また、球状トナーのクリーニングに対しても電気的作用を利用せず機械的に掻き取るクリーニングブレードに比べて優位性がある。さらに、先端の縁が圧接し続けるクリーニングブレードに比べて、回転するクリーニングブラシ153では感光体表面に接する毛1532が順次変わるため、残留トナー粒子が感光体表面11aに押し付けられることによって残留トナーが感光体表面11aに塊になって強固に付着するトナーフィルミングが生じることが大幅に抑えられる。
クリーニングブラシ153の毛1532に移行した残留トナー粒子はクリーニングバイアスの作用によってその毛1532に保持される。
回収ロール154は、感光体10の回転軸110と平行に延びた中心軸1541を中心にして回転するロール体1542を有する。この回収ロール154の外周面には、クリーニングブラシ153の毛1532から残留トナー粒子を静電的に引きはがす回収バイアスが印加される。クリーニングブラシ153の毛1532に保持された残留トナー粒子は、この回収バイアスの作用によって回収ロール154の外周面に回収される。回収バイアスの印加にあたっては、クリーニングバイアスよりも絶対値が大きな電圧を印加することが必要であり、クリーニングブラシ153の毛1532と回収ロール154の間の電位差が100V以上になるように印加することが好ましく、200V以上になるように印加することがより好ましい。
ロール体1542に用いる熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂等が挙げられる。中でもフェノール樹脂は、寸法精度が高く、成型が容易である。加えて、成形体の表面平滑性に優れ、安価である等の利点を有するので好ましい。ロール体1542の曲げ弾性率は700kPa以上であることが好ましい。曲げ弾性率が700kPa未満であると、回収ロール154に撓みが生じてクリーニングブラシ153やスクレーパ部材155との当接位置や食い込み量を所定値に保持することが困難になる。また、曲げ弾性率が700kPa未満の材料を用いてロール体1542の肉厚を増加させて剛性を保持しようとすると、成形収縮が大きくなって寸法精度が不十分になってしまう。さらには、重量が増加するばかりか、成形時間も増加し、後工程が必要となる等の問題も生じてコストが増大してしまう。なお、ここにいう曲げ弾性率は、JIS Z 2248:96に準拠して測定される値をいう。また、ロール体1542のロックウェル硬さ(Mスケール)は100以上であることが好ましい。ロックウェル硬さが100以上であると、寸法精度の高い成形が可能となり、また、削れに対して非常に強いロール体になる。なお、ここでいうロックウェル硬さとは、JIS Z 2245:98に準拠して測定される値をいう。
回収ロール154の電気抵抗を調整する方法としては、無機フィラー及び/又は有機フィラーを充填する方法等が挙げられる。無機フィラーや有機フィラーをロール体1542に充填すると、回収ロール154の剛性が増加するという利点もある。無機フィラーとしては、錫、鉄、銅、アルミ等の金属粉体や金属繊維、ガラス繊維等が挙げられる。有機フィラーとしては、カーボンブラック、炭素粉、グラファイト、磁性粉、酸化亜鉛、酸化すず、酸化チタン等の金属酸化物、硫化銅、硫化亜鉛等の金属硫化物、ストロンチウム、バリウム、希土類等の所謂ハードフェライト、マグネタイト、銅、亜鉛、ニッケル及びマンガン等のフェライト、またはこれらの表面を必要に応じ導電化処理したもの、銅、鉄、マンガン、ニッケル、亜鉛、コバルト、バリウム、アルミニウム、錫、リチウム、マグネシウム、シリコン、リン等の異なる金属元素を含んだ酸化物、水酸化物、炭酸塩又は金属化合物等から選ばれ高温中で焼成して得られる金属酸化物の固溶体、所謂複合金属酸化物等やポリアニリンが挙げられる。
回収ロール154に500Vの電圧を印加したときの抵抗値は、好ましくは1×105Ω・cm以上1×1010Ω・cm以下、より好ましくは1×106Ω・cm以上1×108Ω・cm以下である。抵抗値が1×105Ω未満の場合、回収ロール154への電荷注入が起こり、クリーニングブラシ153で掻き取った残留トナー粒子の極性が反転してしまい、クリーニングブラシ153から残留トナー粒子を静電的に引きはがすことが困難になる場合がある。他方、回収ロール154の抵抗値が1×1010Ω・cmを超えると、回収ロール154に電荷が蓄積される現象(チャージアップ)が起こりやすくなり、この場合もクリーニングブラシ153から残留トナー粒子を静電的に引きはがすことが困難になる場合がある。
スクレーパ部材155は、回収ロール154によって回収された残留トナー粒子を回収ロール154から掻き落とす。このスクレーパ部材155は金属薄板からなるもので、その一端のエッジ部分が回収ロール154の外周面に当接するように配置されている。スクレーパ部材155の具体的材質としては、高耐久性及び低コストの点から、ステンレス又はリン青銅が好ましい。スクレーパ部材155の厚みは、好ましくは0.02mm以上2mm以下、より好ましくは0.05mm以上1mm以下である。なお、スクレーパ部材155には、金属薄板の代わりにゴムブレードを用いてもよい。
スクレーパ部材155によって掻き落とされた残留トナー粒子は、廃トナー搬送オーガ156によってクリーニング装置15の外まで搬送される。
大粒径ロール151と小粒径ロール152は、感光体回転方向に並んで配置されたものであり、いずれのロールも、感光体10の回転軸110に平行な回転軸1511,1521を有する。大粒径ロール151は、クリーニングブラシ153よりも感光体回転方向上流側に配備されたものであり、回転軸1511の外周にロール体1512を有する。また、小粒径ロール152は、クリーニングブラシ153よりも感光体回転方向下流側に配備されたものであり、大粒径ロール151と同じく、回転軸1521の外周にロール体1522を有する。これらいずれのロール体1512,1522も、SBR(スチレンゴム)、CR(クロロプレンゴム)、NBR(ニトリルゴム)、U(ウレタンゴム)、EPDM(エチレン・プロピレンゴム)、SI(シリコンゴム)、天然ゴム(NR)などの弾性ゴム材料からなる発泡体、あるいはこれらのゴム材料からなるソリッド(中実)体である。なお、これらロール体1512,1522は6,6−ナイロンや6−ナイロンなどのスポンジ体やスチールウールなどの繊維集合体であってもよい。上流側の大粒径ロール151が有するロール体151は、弾性ゴム材料と、粒径が5μm以上25μm以下の粒子とを配合したものを金型成形もしくは押出成形し、成形品の周面に研磨加工を施したものである。一方、下流側の小粒径ロール152が有するロール体152は、弾性ゴム材料と粒径が0.5μm以上5μm未満の粒子とを配合したものを、同様に金型成形もしくは押出成形し、成形品の周面に研磨加工を施したものである。すなわち、いずれのロールも、周面151a,152aに粒子が分散配置されたものであり、上流側の大粒径ロール151は、下流側の小粒径ロール152の周面152aに分散配置された粒子よりも大きな粒径の粒子が、その周面151aに分散配置されたものである。
大粒径ロール151の周面151aや小粒径ロール152の周面152aに分散配置される粒子としては、シリカ、アルミナ、酸化セシウム、酸化チタン、炭化ケイ素、チタン酸ストロンチウム酸化鉄などの無機物粒子があげられる。なお、各ロールの周面151a,152aに2種以上の粒子を分散配置してもよい。
大粒径ロール151も小粒径ロール152も、粒子が分散配置されたそれぞれの周面151a,152aを、感光体11の、1次転写領域を通過した表面11aに接触させた状態で回転することによりその表面11aを研磨する。その結果、大粒径ロール151によって研磨された後の感光体表面11aの粗さと、小粒径ロール152によって研磨された後の感光体表面11aの粗さとは異なり、上流側の大粒径ロール151は相対的に粗削りを行うものであり、下流側の小粒径ロール152は相対的に細かな削りを行うものである。なお、これら2本のロール151,152は、感光体11に対して従動回転するものであり、感光体表面11aに接する領域で感光体11の回転方向と同方向に、感光体11の回転速度(周速)と等速で回転するが(図2中の矢印参照)、逆方向に回転するものであってもよいし、感光体11の回転速度(周速)と速度差をもって回転するものであってもよい。
ここで、クリーニングブラシ153の毛1532によって感光体表面11aが摺擦される際、感光体表面11aに残留していた、粒径が50nm以上200nm以下である大粒径無機酸化物粒子が感光体表面11aを傷つけることがある。大粒径無機酸化物粒子によって傷つけられた感光体表面11aには、やや大きめの傷(凹凸)が生じ、このやや大きめの凹凸の凹部に残留トナー粒子が入り込んでクリーニングブラシ153による残留トナー粒子の除去が困難になる。しかしながら、本実施形態においては、大粒径無機酸化物粒子によって生じた凹凸は、粒径が5μm以上25μm以下の粒子が分散配置された上流側の大粒径ロール151によってならされ、凹部に入り込んでいた残留トナー粒子がクリーニングブラシ153によって容易に除去される。ここで、この大粒径ロール151に分散配置された粒子の粒径が、5μm未満であると粒子が大粒径無機酸化物粒子によって生じた凹凸に対して小さすぎてしまい研磨能力が不足してその凹凸をならすことができず、25μmを超えると今度は粒子がその凹凸に対して大きすぎてしまいその凹凸を隈無くならすことができなくなってしまうことから、ここでの粒子の粒径は5μm以上25μm以下の範囲に抑えられている。
また、感光体表面11aには、大粒径無機酸化物粒子によって生じた凹凸の他、その凹凸よりも小さな凹凸も存在する。感光体表面11aに残留していた、粒径が5nm以上50nm未満である小粒径無機酸化物粒子は、感光体表面11aに存在するその小さな凹凸の凹部に入り込んでその凹部に付着する。下流側の小粒径ロール152に分散配置された、粒径が0.5μm以上5μm未満の粒子は、小粒径無機酸化物粒子が付着している凹部に入り込んで、小粒径無機酸化物粒子を感光体表面から剥がし取るとともに、感光体表面11aに存在する小さな凹凸をならす。粒子の粒径が、0.5μm未満であると小粒径無機酸化物粒子を十分に除去することができず、反対に5μm以上であると、小粒径無機酸化物粒子が付着した凹部に粒子が入り込めなくなり、小粒径無機酸化物粒子を剥がし取ることができなくなってしまうため、小粒径ロール151の周面151aに分散配置される粒子の粒径は、0.5μm以上5μm未満の範囲に抑えられている。小粒径ロール152によって剥がし取られた小粒径無機酸化物粒子は下方へ落下し、搬送オーガ156によってクリーニング装置15の外に向けて搬送される。したがって、図2に示すクリーニング装置15によれば、感光体表面11aの凹部に付着した小粒径無機酸化物粒子がその表面11aから除去されるとともにその表面11aに存在する残留トナーもその表面11aから除去される。
以上、大粒径ロール151と小粒径ロール152について説明したが、これら2つのロール151,152に加え、これら2つのロール周面151a,152aに分散配置された粒子の粒径とは異なる粒径の粒子が周面に分散配置されたロールを1又は複数本追加してもよい。また、大粒径ロール151と小粒径ロール152を入れ替え、クリーニングブラシ153よりも上流側に相対的に細かな削りを行う小粒径ロール152を配置し、下流側に相対的に粗削りを行う大粒径ロール151を配置してもよい。さらに、大粒径ロール151と小粒径ロール152との双方を、クリーニングブラシ153よりも感光体回転方向上流側に配置してもよいし、あるいは、これらのロール151,152の双方をクリーニングブラシ153よりも下流側に配置してもよい。
なお、ここでは4つのトナー像形成ユニットが配備されたフルカラータンデム方式を採用した画像形成装置を例にあげて説明したが、本発明の画像形成装置は、1つのトナー像形成ユニットにおいてロータリ式のフルカラー現像器を用いて4色のトナー像を形成する方式を採用した画像形成装置にも適用することができる。また、中間転写ベルトに代えて中間転写ドラムを備えた画像形成装置に適用することもでき、さらには、用紙を静電的に吸着して搬送し、感光体に形成されたトナー像を、搬送されてきた用紙に、転写コロトロンや転写ロール等を用いて直接転写する直接転写方式を採用した画像形成装置にも適用することができる。
また、ここでは感光体表面11aから残留物を除去するクリーニング装置15について詳細に説明したが、本発明のクリーニング装置は、中間転写ベルト30から残留物を除去する図1に示すベルトクリーナ70に適用することもできる。中間転写ベルト30にも、大粒径無機酸化物粒子による傷が生じ、その傷の凹部に残留トナー粒子が入り込んでベルトクリーナ70によって除去することが困難になったり、中間転写ベルト表面の小さな凹部に小粒径無機酸化物粒子が入り込んでその凹部に付着する。そのため、図2に示す大粒径ロール151と小粒径ロール152とを備えたクリーニング装置が有効である。
続いて、図1に示す画像形成装置の変形例について説明する。この変形例における画像形成装置は、図1に示す画像形成装置における現像装置の現像剤収容体を取り換えるとともに、図2に示すクリーニング装置に配備された上流側の大粒径ロールを取り換えた以外は、図1に示す画像形成装置と同じである。以下、重複する説明は省略し、図1に示す画像形成装置の構成要素の名称と同じ名称の構成要素には、これまで用いた符号と同じ符号を付して説明する。
この変形例における画像形成装置1の現像装置14は、キャリアと上記小粒径無機酸化物粒子が添加されたトナーとを含むいわゆる二成分現像剤を収容した現像剤収容体141を備えている。この現像剤収容体141に収容されたキャリアは、トナー粒子よりも大きなものであって、粒径が20μm以上100μm以下のものである。このキャリアは、トナー粒子に対して逆極(正極)側に帯電することでトナー粒子を負極側に帯電させ、現像ロール142の表面に磁気ブラシを形成して現像を行う働きを担っている。
また、この変形例におけるクリーニング装置15には、図2に示す大粒径ロールに代えて、粒径が20μm以上60μm以下の粒子が周面151aに分散配置された大粒径ロール151が配備されている。
ここで、現像剤収容体141に収容された現像剤中のキャリアは、トナーに対して逆極性に帯電するものであるため、キャリア自身が感光体表面11aへ付着することはないはずであるが、例えば、感光体上の非画像領域(トナー像が形成されていない領域)における電位が通常に比べて高くなったりすると、マイナスの電界が強くなり、結果として正電荷を帯びたキャリアが静電的に感光体へ移行してしまう。また、現像バイアスによる現像電界が非常に大きくなった場合にも、キャリアへの電荷注入という現象が起こり、キャリアがトナーとともに感光体11へ移行してしまう。感光体11へ移行してしまったキャリアは砕けて小さくなる。砕けたキャリアの中には、粒径が200nmの大粒径外添剤粒子よりも小さなものもあるが、そのほとんどはその大粒径外添剤粒子よりも大きい。砕けたキャリアは、クリーニングブラシ153の毛1532によって感光体表面11aが摺擦される際、感光体表面を傷つけることがある。キャリアによって傷つけられた感光体表面11aには、特有の大きさの凹凸(例えば、凹部の深さおよび感光体回転軸方向の幅が10μm以上50μm以下)が生じ、この凹部に残留トナー粒子が入り込んでクリーニングブラシ153による残留トナー粒子の除去が困難になる。しかしながら、この変形例におけるクリーニング装置15によれば、キャリアによって生じた凹凸は、粒径が20μm以上60μm以下の粒子が分散配置された上流側の大粒径ロール151によってならされ、凹部に入り込んでいた残留トナー粒子がクリーニングブラシ153によって容易に除去される。ここで、この大粒径ロール151に分散配置された粒子の粒径が、20μm未満であると粒子がキャリアによって生じた凹凸に対して小さすぎてしまい研磨能力が不足してその凹凸をならすことができず、60μmを超えると今度は粒子がその凹凸に対して大きすぎてしまいその凹凸を隈無くならすことができなくなってしまうことから、ここでの粒子の粒径は20μm以上60μm以下の範囲に抑えられている。
なお、上記小粒径無機酸化物粒子が付着した凹部には、上流側の大粒径ロール151に分散配置された粒子は入り込むことができず、その凹部に付着した小粒径無機酸化物粒子は、下流側の、粒径が0.5μm以上5μm未満の粒子が分散配置された小粒径ロール152によって感光体表面11aから剥がし取られる。
したがって、この変形例においても、感光体表面11aの凹部に付着した小粒径無機酸化物粒子がその表面11aから除去されるとともにその表面11aに存在する残留トナーもその表面11aから除去される。
次に、本発明の画像形成装置の第2実施形態について説明する。この第2実施形態の画像形成装置も、図1に示す画像形成装置と同じく、フルカラータンデム方式を採用し、4つのトナー像形成ユニットを備えるものである。以下、これまでの説明と重複する説明は省略し、図1に示す画像形成装置の構成要素の名称と同じ名称の構成要素にはこれまで用いた符号と同じ符号を付して説明する。
図3は、第2実施形態の画像形成装置に備えられた4つのトナー像形成ユニットのうちの一つのトナー像形成ユニットを詳しく示した図である。
第2実施形態の画像形成装置に備えられたトナー像形成ユニットに配備された感光体は、電荷輸送層の上に保護層を積層してなるものである。図3には、その保護層111が模式的に示されており、この保護層111は、感光体11の最表層になる層である。図3に示す保護層111は、電荷輸送機能を有する構造単位を持ち、かつ架橋構造を有する樹脂を含有した高強度表面層である。最表面に保護層111が設けられた感光体11では、上記大粒径無機酸化物粒子やキャリアによって表面11aが傷つけられることが大幅に抑えられる。
また、第2実施形態におけるクリーニング装置15には、図2に示すクリーニングブラシ153に代えてクリーニングブレード157が配備されており、回収ロール154やスクレーパ部材155は省略されている。図3に示すクリーニングブレード157は、ゴム材料からなる板状部材である。クリーニングブレード157に用いるゴム材料の種類としては、公知のものを用いることが可能であり、例えばウレタンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、クロロプレンゴム、ブタジエンゴム等を用いることができる。その中で耐磨耗性に優れていることからポリウレタン弾性体を用いることが好ましい。図3に示すクリーニングブレード157は、図3の紙面に対して垂直な方向(感光体11の回転軸110の延在方向)に長尺な矩形状のものであるが、以下、短尺方向の一端を先端と称することがある。このクリーニングブレード157は、感光体11の、中間転写ベルト30にトナー像が転写された後の表面11aから垂直に立ち上がる垂線に対して感光体回転方向下流側に傾くドクター方式によって配備されたものであり、先端の縁(先端エッジ部)1571は、その表面11aに圧接している。回転する感光体11の表面11aに存在する残留トナー粒子等は、この先端エッジ部1571によって掻き取られ、感光体表面11aから除去される。なお、クリーニングブレード157は、感光体表面11aから垂直に立ち上がる垂線に対して感光体回転方向上流側に傾くワイパー方式によって配備されたものであってもよい。
さらに、第2実施形態におけるクリーニング装置15には、図2に示す大粒径ロールに代えて、粒径が50μm以上150μm以下の粒子が周面151aに分散配置された大粒径ロール151が配備されている。
図3に示すクリーニングブレード157は、先端エッジ部1571が感光体表面11aに常時圧接していることから、残留物の除去能力は高いが、その先端エッジ部1571と感光体表面11aの間に入り込んだ残留トナー粒子を感光体表面11aに押し付けてしまい、残留トナーが感光体表面11aに塊になって強固に付着するトナーフィルミングが生じることがある。このトナーフィルミングの大きさは、数十μmから数百μmの大きさである。第2実施形態のクリーニング装置15に配備された、粒径が50μm以上150μm以下の粒子が分散配置された上流側の大粒径ロール151によって、このトナーフィルミングが感光体表面11aから剥がし取られ、その場で落下するか、あるいは感光体表面11aに残ってもクリーニングブレード157によって除去される。ここで、この大粒径ロール151に分散配置された粒子の粒径が、50μm未満であると感光体表面11aから数十μmから数百μmの大きさのトナーフィルミングを剥がし取ることができず、反対に、150μmを超えると感光体表面11aを必要以上に粗く研磨してしまい転写性が損なわれる恐れがあることから、ここでの粒子の粒径は50μm以上150μm以下の範囲に抑えられている。
なお、上述した変形例と同じく、上記小粒径無機酸化物粒子が付着した凹部には、上流側の大粒径ロール151に分散配置された粒子は入り込むことができず、その凹部に付着した小粒径無機酸化物粒子は、下流側の、粒径が0.5μm以上5μm未満の粒子が分散配置された小粒径ロール152によって感光体表面11aから剥がし取られる。
したがって、この第2実施形態においても、感光体表面11aの凹部に付着した小粒径無機酸化物粒子がその表面11aから除去されるとともにその表面11aに存在する残留トナーもその表面11aから除去される。
続いて、図3に示す感光体に使用することができる感光体について詳述する。
ここで用いることができる感光体としては、有機感光体や、アモルファスシリコン感光体やセレン系感光体などの無機系の感光体など公知の感光体を用いる事ができるが、コスト、製造性および廃棄性等の点で優れた利点を有する有機感光体が好適に用いられる。更に、感光体には、揺動摺擦による感光体表面の傷などに対する耐性を持たせたるため、上述の如く、電荷輸送層の上に高強度表面層として保護層が設けられている。この保護層を構成する材料としては、電荷輸送能を有する構造単位と架橋構造とを有する樹脂を含有することが好ましい。
以下、保護層について詳しく説明する。この保護層としては、バインダー樹脂中に導電性粒子を分散したもの、通常の電荷輸送層材料にフッ素樹脂、アクリル樹脂などの潤滑性粒子を分散させたもの、シリコンや、アクリルなどのハードコート剤を使用することができるが、強度、電気特性、画質維持性などの観点から、電荷輸送性を有し、架橋構造を有するものが好ましい。保護層が架橋構造を有する樹脂を含むことで感光体表面の硬度が高まり耐摩耗性が向上し、クリーニングブレードとの摺擦による感光体表面の傷を抑制することができる。
架橋構造を形成するものとしては種々の材料を用いることが出来るが、特性上フェノール樹脂、シロキサン樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂などが好ましく、特にフェノール樹脂またはシロキサン系樹脂からなるものが好ましい。なお、保護層には、架橋構造を有する樹脂以外にも必要に応じて、架橋構造を有さないバインダー樹脂や、導電性粒子、また、フッ素樹脂やアクリル樹脂などからなる潤滑性粒子が含まれていてもよく、保護層の形成に際しては、必要に応じてシリコンや、アクリルなどのハードコート剤を使用することができる。また、保護層の形成には架橋構造を有する樹脂を構成する前駆体を少なくとも含む保護層形成用溶液が用いられる。
さらに電気特性や画質維持性などの観点からは、架橋構造を有する樹脂は、電荷輸送性を持ったものである(電荷輸送能を有する構造単位を含む)ことが好ましい。なお、保護層が電荷輸送層の一部として機能するものであってもよい。
電荷輸送能を有する構造単位を含み、且つ、架橋構造を有する樹脂としては、架橋構造を有する樹脂としてメチロール基を有するフェノール誘導体またはシロキサン系樹脂と、水酸基、カルボキシル基、アルコキシシリル基、エポキシ基、チオール基及びアミノ基から選択される少なくとも1種を有する電荷輸送材料とを含有するものがより好ましい。さらに当該フェノール誘導体含有層の赤外吸収スペクトルが下記式で示される条件を満たすことで電気特性に優れ高画質化が図れる為より好ましい。
(P2/P1)≦0.2
[式中、P1は1560cm−1〜1640cm−1に存在する最大吸収ピークの吸光度を示し、P2は1645cm−1〜1700cm−1に存在する最大吸収ピークの吸光度を示す。]
上記式で上述の効果が得られる理由は必ずしも明確ではないが、本発明者らは以下のように推察する。すなわち、メチロール基を有するフェノール誘導体を用いて塗膜を形成する過程において、フェノール誘導体のメチロール基のうちの一部は、ホルミル基等の酸化物になると考えられる。このようなホルミル基等の酸化物は、感光体中の電荷輸送を妨げるキャリアトラップとして作用し、感光体の電気特性を低下させると考えられる。ここで、赤外吸収スペクトルにおいて、1560cm−1〜1640cm−1に存在する最大吸収ピーク(P1)は、フェノール誘導体の芳香族C−C伸縮振動に相当する。また、1645cm−1〜1700cm−1に存在する最大吸収ピーク(P2)は、ホルミル基等の酸化物に由来すると考えられる。つまり、吸光度比(P2/P1)が小さい感光体は、感光体中のホルミル基等の酸化物が少なく、キャリア輸送性に優れると考えられる。したがって、上記特定の材料を用い且つ吸光度比(P2/P1)を0.2以下することで、電気特性に優れ、高画質化が達成できる。なお、吸光度比(P2/P1)は、0.18以下が好ましく、0.17以下がより好ましい。吸光度比(P2/P1)が0.2を超えると、キャリア輸送性が低下し、感光体の電気特性が不十分となり、画質が低下する。
上記メチロール基を有するフェノール誘導体としては、モノメチロールフェノール類、ジメチロールフェノール類若しくはトリメチロールフェノール類のモノマー、それらの混合物、それらがオリゴマー化されたもの、又はそれらモノマーとオリゴマーの混合物が挙げられる。このようなメチロール基を有するフェノール誘導体は、レゾルシン、ビスフェノール等、フェノール、クレゾール、キシレノール、パラアルキルフェノール、パラフェニルフェノール等の水酸基を1個含む置換フェノール類、カテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン等の水酸基を2個含む置換フェノール類、ビスフェノールA、ビスフェノールZ等のビスフェノール類、ビフェノール類等、フェノール構造を有する化合物と、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド等とを、酸触媒又はアルカリ触媒下で反応させることで得られるもので、一般にフェノール樹脂として市販されているものも使用できる。なお、本明細書では、分子の構造単位の繰り返しが2〜20程度の比較的大きな分子をオリゴマーといい、それ以下のものをモノマーという。
上記酸触媒としては、硫酸、パラトルエンスルホン酸、リン酸等が用いられる。また、アルカリ触媒としては、NaOH、KOH、Ca(OH)2、Ba(OH)2等のアルカリ金属及びアルカリ土類金属の水酸化物やアミン系触媒が用いられる。
アミン系触媒としては、アンモニア、ヘキサメチレンテトラミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。塩基性触媒を使用した場合には、残留する触媒によりキャリアが著しくトラップされ、電子写真特性を悪化させる傾向がある。そのため、酸で中和するか、シリカゲル等の吸着剤や、イオン交換樹脂等と接触させることにより不活性化又は除去することが好ましい。
また、メチロール基を有するフェノール誘導体としては、フェノール樹脂が好ましく、レゾール型フェノール樹脂がより好ましい。
水酸基、カルボキシル基、アルコキシシリル基、エポキシ基、チオール基及びアミノ基から選択される少なくとも1種を有する電荷輸送材料としては、下記一般式(I)、(II)、(III)又は(IV)で示される化合物であることが好ましい。
F−[(X1)m1−(R1)m2−Y]m3 (I)
上記一般式(I)中、Fは正孔輸送能を有する化合物から誘導される有機基を、X1は酸素原子又は硫黄原子を、R1はアルキレン基(炭素数は1〜15が好ましく、1〜10がより好ましい)を、Yは水酸基、カルボキシル基(−COOH)、チオール基(−SH)又はアミノ基(−NH2)を示し、m1及びm2はそれぞれ独立に0又は1を、m3は1〜4の整数を示す。
F−[(X2)n1−(R2)n2−(Z)n3G]n4 (II)
上記一般式(II)中、Fは正孔輸送能を有する化合物から誘導される有機基を、X2は酸素原子又は硫黄原子を、R2はアルキレン基(炭素数は1〜15が好ましく、1〜10がより好ましい)を、Zはアルキレン基、酸素原子、硫黄原子、NH又はCOOを、Gはエポキシ基を、n1、n2及びn3はそれぞれ独立に0又は1を、n4は1〜4の整数を示す。
F−[D−Si(R3)(3−a)Qa]b (III)
上記一般式(III)中、Fは正孔輸送能を有する化合物から誘導される有機基を、Dは可とう性を有する2価の基を、R3は水素原子、置換若しくは未置換のアルキル基(炭素数は1〜15が好ましく、1〜10がより好ましい)又は置換若しくは未置換のアリール基(炭素数は6〜20が好ましく、6〜15がより好ましい)を、Qは加水分解性基を、aは1〜3の整数を、bは1〜4の整数を示す。
また、上記可とう性を有する2価の基Dは、具体的には、光電特性を付与するためのFの部位と3次元的な無機ガラス質ネットワークの構築に寄与する置換ケイ素基とを結びつける働きを担う2価の基である。また、Dは、堅い反面もろさも有する無機ガラス質ネットワークの部分に適度な可とう性を付与し、膜としての機械的強靱さを向上させる働きを担う有機基構造を表す。Dとして具体的には、−CαH2α−、−CβH2β−2−、−CγH2γ−4−で表わされる2価の炭化水素基(ここで、αは1〜15の整数を表し、βは2〜15の整数を表し、γは3〜15の整数を表す)、−COO−、−S−、−O−、−CH2−C6H4−、−N=CH−、−(C6H4)−(C6H4)−、及び、これらの特性基を任意に組み合わせた構造を有する特性基、更にはこれらの特性基の構成原子を他の置換基と置換したもの等が挙げられる。また、上記加水分解性基Qとしては、アルコキシ基が好ましく、炭素数1〜15のアルコキシ基がより好ましい。
上記一般式(I)〜(III)で示される化合物における正孔輸送能を有する化合物から誘導される有機基Fとしては、下記一般式(IV)で示される化合物が好ましい。
上記一般式(IV)中、Ar1、Ar2、Ar3及びAr4はそれぞれ独立に置換又は未置換のアリール基を示し、Ar5は置換若しくは未置換のアリール基又はアリーレン基を示し、且つAr1〜Ar5のうち1〜4個は、上記一般式(I)〜(III)で示される化合物における−[(X1)m1−(R1)m2−Y]、−[(X2)n1−(R2)n2−(Z)n3G]、又は、−[D−Si(R3)(3−a)Qa]で示される部位と結合手を有し、kは0又は1である。
また、保護層には、残留電位を下げるために導電性粒子を添加してもよい。導電性粒子としては、金属、金属酸化物及びカーボンブラック等が挙げられる。これらの中でも、金属又は金属酸化物がより好ましい。金属としては、アルミニウム、亜鉛、銅、クロム、ニッケル、銀及びステンレス等、又はこれらの金属をプラスチックの粒子の表面に蒸着したもの等が挙げられる。金属酸化物としては、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化ビスマス、スズをドープした酸化インジウム、アンチモンやタンタルをドープした酸化スズ、及びアンチモンをドープした酸化ジルコニウム等が挙げられる。これらは単独で用いることも、2種以上を組み合わせて用いることもできる。2種以上を組み合わせて用いる場合は、単に混合しても、固溶体や融着の形にしてもよい。導電性粒子の平均粒径は保護層の透明性の観点から、0.3μm以下が好ましく、0.1μm以下が特に好ましい。
また、保護層には、保護層の強度、膜抵抗等の種々の物性をコントロールするために、下記一般式(V−1)で示される化合物を添加することもできる。
Si(R30)(4−c)Qc (V−1)
上記一般式(V−1)中、R30は水素原子、アルキル基又は置換若しくは未置換のアリール基を、Qは加水分解性基を、cは1〜4の整数を示す。
上記一般式(V−1)で示される化合物の具体例としては以下のようなシランカップリング剤が挙げられる。シランカップリング剤としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等の四官能性アルコキシシラン(c=4);メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、(トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチル)トリエトキシシラン、(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリメトキシシラン、3−(ヘプタフルオロイソプロポキシ)プロピルトリエトキシシラン、1H,1H,2H,2H−パーフルオロアルキルトリエトキシシラン、1H,1H,2H,2H−パーフルオロデシルトリエトキシシラン、1H,1H,2H,2H−パーフルオロオクチルトリエトシキシラン等の三官能性アルコキシシラン(c=3);ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン等の二官能性アルコキシシラン(c=2);トリメチルメトキシシラン等の1官能アルコキシシラン(c=1)等を挙げることができる。膜の強度を向上させるためには3及び4官能のアルコキシシランが好ましく、可とう性、成膜性を向上させるためには1及び2官能のアルコキシシランが好ましい。
また、主にこれらのカップリング剤より作製されるシリコン系ハードコート剤も用いることができる。市販のハードコート剤としては、KP−85、X−40−9740、X−40−2239(以上、信越シリコーン社製)、及びAY42−440、AY42−441、AY49−208(以上、東レダウコーニング社製)等を用いることができる。
また、保護層には、その強度を高めるために、下記一般式(V−2)に示すような2つ以上のケイ素原子を有する化合物を用いることも好ましい。
B−(Si(R31)(3−d)Qd)2 (V−2)
上記式(V−2)中、Bは2価の有機基を、R31は水素原子、アルキル基又は置換若しくは未置換のアリール基を、Qは加水分解性基を、dは1〜3の整数を示す。
また、保護層には、ポットライフの延長、膜特性のコントロール、トルク低減、塗布膜表面の均一性向上のため、下記一般式(V−3)で示される繰り返し構造単位を持つ環状化合物、若しくはその化合物からの誘導体を含有させることもできる。
上記一般式(V−3)中、A1及びA2は、それぞれ独立に一価の有機基を示す。
一般式(V−3)で示される繰り返し構造単位を持つ環状化合物としては、市販の環状シロキサンを挙げることができる。具体的には、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等の環状ジメチルシクロシロキサン類、1,3,5−トリメチル−1,3,5−トリフェニルシクロトリシロキサン、1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラフェニルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタメチル−1,3,5,7,9−ペンタフェニルシクロペンタシロキサン等の環状メチルフェニルシクロシロキサン類、ヘキサフェニルシクロトリシロキサン等の環状フェニルシクロシロキサン類、3−(3,3,3−トリフルオロプロピル)メチルシクロトリシロキサン等のフッ素原子含有シクロシロキサン類、メチルヒドロシロキサン混合物、ペンタメチルシクロペンタシロキサン、フェニルヒドロシクロシロキサン等のヒドロシリル基含有シクロシロキサン類、ペンタビニルペンタメチルシクロペンタシロキサン等のビニル基含有シクロシロキサン類等の環状のシロキサン等を挙げることができる。これらの環状シロキサン化合物は1種を単独で用いてもよいが、2種以上を混合して用いてもよい。
さらに、感光体表面の耐汚染物付着性、潤滑性、硬度等を制御するために、各種粒子を添加することもできる。それらは、単独で用いることもできるが、2種以上を併用してもよい。
粒子の一例として、ケイ素原子含有粒子を挙げることができる。ケイ素原子含有粒子とは、構成元素にケイ素を含む粒子であり、具体的には、コロイダルシリカ及びシリコーン粒子等が挙げられる。ケイ素原子含有粒子として用いられるコロイダルシリカは、平均粒子径が好ましくは1〜100nm、より好ましくは10〜30nmであり、酸性若しくはアルカリ性の水分散液、或いはアルコール、ケトン、エステル等の有機溶媒中に分散させたものから選ばれ、一般に市販されているものを使用することができる。保護層中のコロイダルシリカの固形分含有量は、特に限定されるものではないが、成膜性、電気特性、強度の面から保護層の固形分全量を基準として好ましくは0.1〜50質量%の範囲、より好ましくは0.1〜30質量%の範囲で用いられる。
ケイ素原子含有粒子として用いられるシリコーン粒子は、球状で、平均粒子径が好ましくは1〜500nm、より好ましくは10〜100nmであり、シリコーン樹脂粒子、シリコーンゴム粒子及びシリコーン表面処理シリカ粒子から選ばれ、一般に市販されているものを使用することができる。シリコーン粒子は、化学的に不活性で、樹脂への分散性に優れる小径粒子であり、さらに十分な特性を得るために必要とされる含有量が低いため、架橋反応を阻害することなく、感光体の表面性状を改善することができる。即ち、強固な架橋構造中に均一に取り込まれた状態で、感光体表面の潤滑性、撥水性を向上させ、長期間にわたって良好な耐磨耗性、耐汚染物付着性を維持することができる。保護層中のシリコーン粒子の含有量は、保護層の固形分全量を基準として好ましくは0.1〜30質量%の範囲であり、より好ましくは0.5〜10質量%の範囲である。
また、その他の粒子としては、4弗化エチレン、3弗化エチレン、6弗化プロピレン、弗化ビニル、弗化ビニリデン等のフッ素系粒子や”第8回ポリマー材料フォーラム講演予稿集 p89”に示される様な、フッ素樹脂と水酸基を有するモノマーを共重合させた樹脂からなる粒子、ZnO−Al2O3、SnO2−Sb2O3、In2O3−SnO2、ZnO−TiO2、ZnO−TiO2、MgO−Al2O3、FeO−TiO2、TiO2、SnO2、In2O3、ZnO、MgO等の半導電性金属酸化物を挙げることができる。また、同様な目的でシリコーンオイル等のオイルを添加することもできる。
シリコーンオイルとしては、例えば、ジメチルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン、フェニルメチルシロキサン等のシリコーンオイル、アミノ変性ポリシロキサン、エポキシ変性ポリシロキサン、カルボキシル変性ポリシロキサン、カルビノール変性ポリシロキサン、メタクリル変性ポリシロキサン、メルカプト変性ポリシロキサン、フェノール変性ポリシロキサン等の反応性シリコーンオイル等を挙げることができる。これらは、保護層形成用塗布液に予め添加してもよいし、感光体を作製後、減圧、或いは加圧下等で含浸処理してもよい。
また、可塑剤、表面改質剤、酸化防止剤、光劣化防止剤等の添加剤を使用することもできる。可塑剤としては、例えば、ビフェニル、塩化ビフェニル、ターフェニル、ジブチルフタレート、ジエチレングリコールフタレート、ジオクチルフタレート、トリフェニル燐酸、メチルナフタレン、ベンゾフェノン、塩素化パラフィン、ポリプロピレン、ポリスチレン、各種フルオロ炭化水素等が挙げられる。保護層にはヒンダートフェノール、ヒンダートアミン、チオエーテル又はホスファイト部分構造を持つ酸化防止剤を添加することができ、環境変動時の電位安定性・画質の向上に効果的である。
酸化防止剤としては以下のような化合物が挙げられる。例えば、ヒンダートフェノール系としては、「Sumilizer BHT−R」、「Sumilizer MDP−S」、「Sumilizer BBM−S」、「Sumilizer WX−R」、「Sumilizer NW」、「Sumilizer BP−76」、「Sumilizer BP−101」、「Sumilizer GA−80」、「Sumilizer GM」、「Sumilizer GS」以上住友化学社製、「IRGANOX1010」、「IRGANOX1035」、「IRGANOX1076」、「IRGANOX1098」、「IRGANOX1135」、「IRGANOX1141」、「IRGANOX1222」、「IRGANOX1330」、「IRGANOX1425WL」、「IRGANOX1520L」、「IRGANOX245」、「IRGANOX259」、「IRGANOX3114」、「IRGANOX3790」、「IRGANOX5057」、「IRGANOX565」以上チバスペシャリティーケミカルズ社製、「アデカスタブAO−20」、「アデカスタブAO−30」、「アデカスタブAO−40」、「アデカスタブAO−50」、「アデカスタブAO−60」、「アデカスタブAO−70」、「アデカスタブAO−80」、「アデカスタブAO−330」以上旭電化製。ヒンダートアミン系としては、「サノールLS2626」、「サノールLS765」、「サノールLS770」、「サノールLS744」、「チヌビン144」、「チヌビン622LD」、「マークLA57」、「マークLA67」、「マークLA62」、「マークLA68」、「マークLA63」、「スミライザーTPS」、チオエーテル系としては、「スミライザーTP−D」、ホスファイト系としては、「マーク2112」、「マークPEP・8」、「マークPEP・24G」、「マークPEP・36」、「マーク329K」、「マークHP・10」が挙げられ、特にヒンダートフェノール、ヒンダートアミン系酸化防止剤が好ましい。さらに、これらは架橋膜を形成する材料と架橋反応可能な例えばアルコキシシリル基等の置換基で変性してもよい。
また、保護層には、ポリビニルブチラール樹脂、ポリアリレート樹脂(ビスフェノールAとフタル酸の重縮合体等)、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリビニルピリジン樹脂、セルロース樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、カゼイン、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂等の絶縁性樹脂を含有させてもよい。この場合、絶縁性樹脂は、所望の割合で添加することができ、これにより、電荷輸送層との接着性、熱収縮やハジキによる塗布膜欠陥等を抑制することができる。
保護層は、上記電荷輸送性構造単位を有する化合物、及び上記メチロール基を有するフェノール誘導体又はシロキサン誘導体等の構成材料を含有する保護層形成用塗布液を、電荷輸送層上に塗布して硬化させることで形成される。
保護層は、上述した電荷輸送材料を用いて形成されることから、保護層形成用塗布液に触媒を添加すること、又は保護層形成用塗布液作製時に触媒を用いることが好ましい。用いられる触媒としては、塩酸、酢酸、リン酸、硫酸等の無機酸、蟻酸、プロピオン酸、シュウ酸、パラトルエンスルホン酸、安息香酸、フタル酸、マレイン酸等の有機酸、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、アンモニア、トリエチルアミン等のアルカリ触媒、さらに系に不溶な固体触媒を用いることもできる。
また、メチロール基を有するフェノール誘導体またはシロキサン誘導体から、合成時の触媒を除去するために、フェノール誘導体をメタノール、エタノール、トルエン、酢酸エチル等の適当な溶剤に溶解させ、水洗、貧溶剤を用いた再沈殿等の処理を行うか、イオン交換樹脂、又は無機固体を用いて処理を行うことが好ましい。
例えば、イオン交換樹脂としては、アンバーライト15、アンバーライト200C、アンバーリスト15E(以上、ローム・アンド・ハース社製);ダウエックスMWC−1−H、ダウエックス88、ダウエックスHCR−W2(以上、ダウ・ケミカル社製);レバチットSPC−108、レバチットSPC−118(以上、バイエル社製);ダイヤイオンRCP−150H(三菱化成社製);スミカイオンKC−470、デュオライトC26−C、デュオライトC−433、デュオライト−464(以上、住友化学工業社製);ナフィオン−H(デュポン社製)等の陽イオン交換樹脂;アンバーライトIRA−400、アンバーライトIRA−45(以上、ローム・アンド・ハース社製)等の陰イオン交換樹脂が挙げられる。
また、無機固体としては、Zr(O3PCH2CH2SO3H)2,Th(O3PCH2CH2COOH)2等のプロトン酸基を含有する基が表面に結合されている無機固体;スルホン酸基を有するポリオルガノシロキサン等のプロトン酸基を含有するポリオルガノシロキサン;コバルトタングステン酸、リンモリブデン酸等のヘテロポリ酸;ニオブ酸、タンタル酸、モリブデン酸等のイソポリ酸;シリカゲル、アルミナ、クロミア、ジルコニア、CaO、MgO等の単元系金属酸化物;シリカ−アルミナ、シリカ−マグネシア、シリカ−ジルコニア、ゼオライト類等複合系金属酸化物;酸性白土、活性白土、モンモリロナイト、カオリナイト等の粘土鉱物;LiSO4,MgSO4等の金属硫酸塩;リン酸ジルコニア、リン酸ランタン等の金属リン酸塩;LiNO3,Mn(NO3)2等の金属硝酸塩;シリカゲル上にアミノプロピルトリエトキシシランを反応させて得られた固体等のアミノ基を含有する基が表面に結合されている無機固体;アミノ変性シリコーン樹脂等のアミノ基を含有するポリオルガノシロキサン等が挙げられる。
保護層形成用塗布液には、必要に応じてメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;テトラヒドロフラン;ジエチルエーテル、ジオキサン等のエーテル類等の他、種々の溶媒が使用できる。なお、感光体の生産に一般的に使用されるディップコーティング法を適用するためには、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、又はそれらの混合系溶剤が好ましい。また、使用される溶媒の沸点は50〜150℃のものが好ましく、それら任意に混合して使用することができる。
なお、溶剤としてアルコール系溶剤、ケトン系溶剤、又はそれらの混合系溶剤が好ましいことから、使用される保護層の形成に使用される電荷輸送性構造単位を有する化合物としては、それらの溶剤に可溶であることが好ましい。
また、溶媒量は任意に設定できるが、少なすぎると構成材料が析出しやすくなるため、保護層形成用塗布液中に含まれる固形分の合計1質量部に対し好ましくは0.5〜30質量部、より好ましくは1〜20質量部とすることが好ましい。
保護層形成用塗布液を用いて保護層を形成する際の塗布方法としては、ブレードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等の通常の方法を用いることができる。ただし、1回の塗布により必要な膜厚が得られない場合、複数回重ね塗布することにより必要な膜厚を得ることができる。なお、複数回の重ね塗布を行なう場合、加熱処理は塗布の度に行なってもよいし、複数回重ね塗布した後でもよい。
電荷輸送層上に保護層形成用塗布液を塗布後には、硬化処理を行う。通常、硬化処理の際には、フェノール誘導体またはシロキサン誘導体の架橋反応を促進し、保護層の機械強度を上げるためには硬化温度は高く、硬化時間長いほど好ましい。しかし、そうした場合には、フェノール系樹脂の場合は吸光度比(P2/P1)が0.2を超えやすく、電気特性が著しく悪化してしまう。そこで、フェノール系樹脂の場合は保護層のIRスペクトルが上記条件を満たすように、硬化温度、硬化時間、架橋雰囲気又は硬化触媒で制御することが好ましい。すなわち、フェノール系樹脂の場合は保護層のIRスペクトルが(P2/P1)≦0.2で示される条件を満たすようにするために、硬化処理の際の硬化温度は100〜170℃が好ましく、100〜150℃が、さらに100〜140℃がより好ましい。また、硬化時間は、30分〜2時間が好ましく、30分〜1時間がより好ましい。シロキサン系樹脂の場合は、硬化処理の際の硬化温度は100〜170℃の範囲が好ましく、100〜150℃の範囲がより好ましく、さらに100〜140℃の範囲がより一段と好ましい。また、硬化時間は、30分〜2時間が好ましく、30分〜1時間がより好ましい。
また、硬化処理(架橋反応)を行う雰囲気としては、窒素、ヘリウム、アルゴン等の、いわゆる酸化に対して不活性なガス雰囲気(不活性ガス雰囲気)下が吸光度比(P2/P1)を小さくするのに効果的である。不活性ガス雰囲気下で架橋反応を行う場合には、空気雰囲気(酸素含有雰囲気)下よりも硬化温度を高く設定することができ、硬化温度は100〜160℃(好ましくは110〜150℃)とすることが可能である。また、硬化時間は30分〜2時間(好ましくは30分〜1時間)とすることが可能である。また、上記一般式(I)で示される化合物において、(−(X1)m1−(R1)m2−Y)で示される部位が−CH2−OHの場合が最も硬化温度による電気特性の影響が大きい傾向があり、酸化に対して敏感であるので、上記好ましい温度範囲で硬化処理を行うことが好ましい。
さらに、硬化処理の際には、硬化触媒を使用することが好ましい。硬化触媒としては、例えば、ビス(イソプロピルスルホニル)ジアゾメタンのようなビススルホニルジアゾメタン類、メチルスルホニルp−トルエンスルホニルメタンのようなビススルホニルメタン類、シクロヘキシルスルホニルシクロヘキシルカルボニルジアゾメタンのようなスルホニルカルボニルジアゾメタン類、2−メチル−2−(4−メチルフェニルスルホニル)プロピオフェノンのようなスルホニルカルボニルアルカン類、2−ニトロベンジルp−トルエンスルホネートのようなニトロベンジルスルホネート類、ピロガロールトリスメタンスルホネートのようなアルキル及びアリールスルホネート類(g)ベンゾイントシレートのようなベンゾインスルホネート類、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)フタルイミドのようなN−スルホニルオキシイミド類、(4−フルオロベンゼンスルホニルオキシ)−3,4,6−トリメチル−2−ピリドンのようなピリドン類、2,2,2−トリフルオロ−1−トリフルオロメチル−1−(3−ビニルフェニル)−エチル−4−クロロベンゼンスルホネートのようなスルホン酸エステル類、トリフェニルスルホニウムメタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネートのようなオニウム塩類等の光酸発生剤や、プロトン酸或いはルイス酸をルイス塩基で中和した化合物、ルイス酸とトリアルキルホスフェートの混合物、スルホン酸エステル類、リン酸エステル類、オニウム化合物、無水カルボン酸化合物等が挙げられる。
プロトン酸或いはルイス酸をルイス塩基で中和した化合物としては、ハロゲノカルボン酸類、スルホン酸類、硫酸モノエステル類、リン酸モノ及びジエステル類、ポリリン酸エステル類、ホウ酸モノ及びジエステル類等を、アンモニア、モノエチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、ピペリジン、アニリン、モルホリン、シクロヘキシルアミン、n−ブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の各種アミン若しくはトリアルキルホスフィン、トリアリールホスフィン、トリアルキルホスファイト、トリアリールホスファイトで中和した化合物、さらには酸−塩基ブロック化触媒として市販されているネイキュア2500X、4167、X−47−110、3525、5225(商品名、キングインダストリー社製)等が挙げられる。また、ルイス酸をルイス塩基で中和した化合物としては、例えば、BF3、FeCl3、SnCl4、AlCl3、ZnCl2等のルイス酸を上記のルイス塩基で中和した化合物が挙げられる。
オニウム化合物としては、トリフェニルスルホニウムメタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート等が挙げられる。
無水カルボン酸化合物としては、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸、無水イソ酪酸、無水ラウリン酸、無水オレイン酸、無水ステアリン酸、無水n−カプロン酸、無水n−カプリル酸、無水n−カプリン酸、無水パルミチン酸、無水ミリスチン酸、無水トリクロロ酢酸、無水ジクロロ酢酸、無水モノクロロ酢酸、無水トリフルオロ酢酸、無水ヘプタフルオロ酪酸等が挙げられる。
ルイス酸の具体例としては、例えば、三フッ化ホウ素、三塩化アルミニウム、塩化第一チタン、塩化第二チタン、塩化第一鉄、塩化第二鉄、塩化亜鉛、臭化亜鉛、塩化第一スズ、塩化第二スズ、臭化第一スズ、臭化第二スズ等の金属ハロゲン化物、トリアルキルホウ素、トリアルキルアルミニウム、ジアルキルハロゲン化アルミニウム、モノアルキルハロゲン化アルミニウム、テトラアルキルスズ等の有機金属化合物、ジイソプロポキシエチルアセトアセテートアルミニウム、トリス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、トリス(アセチルアセトナト)アルミニウム、ジイソプロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタニウム、ジイソプロポキシ・ビス(アセチルアセトナト)チタニウム、テトラキス(n−プロピルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(アセチルアセトナト)ジルコニウム、テトラキス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、ジブチル・ビス(アセチルアセトナト)スズ、トリス(アセチルアセトナト)鉄、トリス(アセチルアセトナト)ロジウム、ビス(アセチルアセトナト)亜鉛、トリス(アセチルアセトナト)コバルト等の金属キレート化合物、ジブチルスズジラウレート、ジオクチルスズエステルマレート、ナフテン酸マグネシウム、ナフテン酸カルシウム、ナフテン酸マンガン、ナフテン酸鉄、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸銅、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸ジルコニウム、ナフテン酸鉛、オクチル酸カルシウム、オクチル酸マンガン、オクチル酸鉄、オクチル酸コバルト、オクチル酸亜鉛、オクチル酸ジルコニウム、オクチル酸スズ、オクチル酸鉛、ラウリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸コバルト、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸鉛等の金属石鹸が挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これら硬化触媒の使用量は特に制限されないが、保護層形成用塗布液に含まれる固形分の合計100質量部に対して0.1〜20質量部が好ましく、0.3〜10質量部が特に好ましい。
また、保護層を形成する際に、有機金属化合物を触媒として用いる場合には、ポットライフ、硬化効率の面から、多座配位子を添加することが好ましい。このような多座配位子としては、以下に示すようなもの及びそれらから誘導されるものを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
具体的には、アセチルアセトン、トリフルオロアセチルアセトン、ヘキサフルオロアセチルアセトン、ジピバロイルメチルアセトン等のβ−ジケトン類;アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル等のアセト酢酸エステル類;ビピリジン及びその誘導体;グリシン及びその誘導体;エチレンジアミン及びその誘導体;8−オキシキノリン及びその誘導体;サリチルアルデヒド及びその誘導体;カテコール及びその誘導体;2−オキシアゾ化合物等の2座配位子;ジエチルトリアミン及びその誘導体;ニトリロトリ酢酸及びその誘導体等の3座配位子;エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)及びその誘導体等の6座配位子;等を挙げることができる。さらに、上記のような有機系配位子の他、ピロリン酸、トリリン酸等の無機系の配位子を挙げることができる。多座配位子としては、特に2座配位子が好ましく、具体例としては、上記の他、下記一般式(V−4)で示される2座配位子が挙げられる。
上記式(V−4)中、R32及びR33はそれぞれ独立に炭素数1〜10のアルキル基、フッ化アルキル基、又は炭素数1〜10のアルコキシ基を示す。
2座配位子としては、上記一般式(V−4)中のR32とR33とが同一のものが特に好ましい。R32とR33とを同一にすることで、室温付近での配位子の配位力が強くなり、保護層形成用塗布液のさらなる安定化を図ることができる。
多座配位子の配合量は、任意に設定することができるが、有機金属化合物の使用量1モルに対し、好ましくは0.01モル以上、より好ましくは0.1モル以上、さらに好ましくは1モル以上である。
保護層の25℃における酸素透過係数は、4×1012fm/s・Pa以下であることが好ましく、3.5×1012fm/s・Pa以下であることがより好ましく、3×1012fm/s・Pa以下であることがさらに好ましい。
ここで、酸素透過係数は層の酸素ガス透過のし易さを表す尺度であるが、見方を変えると、層の物理的な隙間率の代用特性と捕らえることもできる。なお、ガスの種類が変われば透過率の絶対値は変わるものの、検体となる層間で大小関係の逆転は殆どない。したがって、酸素透過係数は、一般的なガス透過のし易さを表現する尺度と解釈して良い。
つまり、保護層の25℃における酸素透過係数が上記条件を満たす場合には、保護層においてガスが浸透しにくい。したがって、保護層に含有される化合物の劣化が抑制され、電気特性を高水準に維持することができ、高画質化、長寿命化に有効である。
また、フェノール樹脂の場合、赤外吸収スペクトルの吸光度比(P2/P1)が上記条件を満たすように保護層を形成しようとする場合には、空気雰囲気下では硬化温度を比較的低く設定することが必要である。そのため、保護層の25℃における酸素透過係数を下げることは困難であるが、吸光度比(P2/P1)が上記条件を満たすようにすると共に、保護層の25℃における酸素透過係数が上記条件を満たすようにすることで、電気特性がさらに向上し、さらに高画質を達成できる感光体が得られる。
保護層の膜厚は、0.5〜15μmが好ましく、1〜10μmがさらに好ましく、1〜5μmがより好ましい。
上記保護層を感光体最表面に設けることで、クリーニングブレードからの感光体に作用する力で発生する感光体傷や摩耗性が著しく改善される。
続いて、第2実施形態における現像装置14の現像剤収容体141について詳述する。この現像剤収容体141にはトナーとキャリアを含む、いわゆる二成分現像剤が収容されている。現像剤収容体141に収容された現像剤中のトナーは、トナー母粒子の表面にそのトナー母粒子よりも小さな種々の外添剤粒子が添加されたものであり、特に製造方法により限定されるものではない。このトナーとしては、例えば、結着樹脂と着色剤、離型剤、転写助剤必要に応じて帯電制御剤等を混練、粉砕、分級する混練粉砕法、混練粉砕法にて得られた粒子を機械的衝撃力または熱エネルギーにて形状を変化させる方法、結着樹脂の重合性単量体を乳化重合させ、形成された分散液と、着色剤、離型剤、転写助剤、必要に応じて帯電制御剤等の分散液とを混合し、凝集、加熱融着させ、トナー粒子を得る乳化重合凝集法、結着樹脂を得るための重合性単量体と着色剤、離型剤、必要に応じて帯電制御剤等の溶液を水系溶媒に懸濁させて重合する懸濁重合法、結着樹脂と着色剤、離型剤、転写助剤、必要に応じて帯電制御剤等の溶液を水系溶媒に懸濁させて造粒する溶解懸濁法等により得られるものを使用することができる。また上記方法で得られたトナーをコアにして、さらに凝集粒子を付着、加熱融合してコアシェル構造をもたせる製造方法など、公知の方法によって製造されたトナーも使用することができるが、形状制御、粒度分布制御の観点から水系溶媒にて製造する懸濁重合法、乳化重合凝集法、溶解懸濁法が好ましく、乳化重合凝集法が特に好ましい。
また、トナーは、磁性材料を内包する磁性トナー、および磁性材料を含有しない非磁性トナーのいずれであってもよい。
トナーは結着樹脂と着色剤、離型剤等とからなるものである。トナーの体積平均粒径は2μm以上12μm以下の範囲が好ましく、3μm以上9μm以下の範囲がより好ましい。また、トナー母粒子の平均球状係数(ML2/A)×(100π/4):MLはトナー母粒子の絶対最大長、Aはトナー母粒子の投影面積を各々示す)が100以上140以下の範囲のもの、さらに好ましくは100以上130以下のものを用いることにより、高い現像、転写性、及び高画質の画像を得ることができる。
使用される結着樹脂としては、スチレン、クロロスチレン等のスチレン類;エチレン、プロピレン、ブチレン、イソプレン等のモノオレフィン類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル類;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ドデシル等のα−メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルブチルエーテル等のビニルエーテル類;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、ビニルイソプロペニルケトン等のビニルケトン類;等の単独重合体および共重合体を例示することができ、特に代表的な結着樹脂としては、ポリスチレン、スチレン−アクリル酸アルキル共重合体、スチレン−メタクリル酸アルキル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン等を挙げることができる。さらに、ポリエステル、ポリウレタン、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリアミド、変性ロジン、パラフィンワックス等を挙げることができる。
また、トナーの着色剤としては、マグネタイト、フェライト等の磁性粉、カーボンブラック、アニリンブルー、カルイルブルー、クロムイエロー、ウルトラマリンブルー、デュポンオイルレッド、キノリンイエロー、メチレンブルークロリド、フタロシアニンブルー、マラカイトグリーンオキサレート、ランプブラック、ローズベンガル、C.I.ピグメント・レッド48:1、C.I.ピグメント・レッド122、C.I.ピグメント・レッド57:1、C.I.ピグメント・イエロー97、C.I.ピグメント・イエロー17、C.I.ピグメント・ブルー15:1、C.I.ピグメント・ブルー15:3等を代表的なものとして例示することができる。
離型剤としては、低分子ポリエチレン、低分子ポリプロピレン、フィッシャートロプシュワックス、モンタンワックス、カルナバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス等を代表的なものとして例示することができる。
さらに、トナーには種々の外添剤粒子が添加される。すなわち、トナーには、感光体11の表面11aの付着物、劣化物除去の目的等で、無機粒子、有機粒子、該有機粒子に無機粒子を付着させた複合粒子などを加えることができるが、研磨性に優れる無機粒子が特に好ましい。無機粒子としては、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、チタン酸バリウム、チタン酸アルミニウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸マグネシウム、酸化亜鉛、酸化クロム、酸化セリウム、酸化アンチモン、酸化タングステン、酸化スズ、酸化テルル、酸化マンガン、酸化ホウ素、炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化チタン、窒化ケイ素、窒化チタン、窒化ホウ素等の各種無機酸化物、窒化物、ホウ化物等が好適に使用される。また、上記無機粒子にテトラブチルチタネート、テトラオクチルチタネート、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリデシルベンゼンスルフォニルチタネート、ビス(ジオクチルパイロフォスフェート)オキシアセテートチタネートなどのチタンカップリング剤、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩、ヘキサメチルジシラザン、メチルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ヘキシルトエリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、o−メチルフェニルトリメトキシシラン、p−メチルフェニルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤などで処理を行っても良い。また、シリコーンオイル、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の高級脂肪酸金属塩による疎水化処理も好ましく行うことができる。
有機粒子としては、スチレン樹脂粒子、スチレンアクリル樹脂粒子、ポリエステル樹脂粒子、ウレタン樹脂粒子等を挙げることができる。これらの粒子径としては、小さすぎると研磨能力に欠け、また、大きすぎると感光体表面11aに傷を発生しやすくなるため、平均粒子径で5〜1000nmの範囲、好ましくは5〜800nmの範囲、より好ましくは5〜700nmの範囲のものが使用される。また、前記潤滑剤の添加量との和が、0.6質量%以上であることが好ましい。
また、トナーに添加されるその他の外添剤粒子としては、粒径が5nm以上50nm未満の小粒径外添剤粒子や、粒径が50nm以上200nm以下の大粒径外添剤粒子があげられる。小粒径外添剤粒子の具体例としては、上述した、トナーの帯電性を制御したりトナーの流動性を高めるシリカ等の粒径が20nm以上30nm以下の小粒径無機酸化物粒子(例えば、日本アエロジル(株)製RY50)があげられる。大粒径外添剤粒子の具体例としては、同じく上述した、トナーの転写性を向上させるために真球の形状に近づけた粒径が100nm以上150nm以下であるシリカ等の大粒径無機酸化物粒子(例えば、信越化学工業(株)製X24)があげられる。
さらに、感光体表面11およびクリーニングブレード157の先端エッジ部1571の双方に潤滑剤被膜を形成し先端エッジ部1571の磨耗を抑えるため、トナーに潤滑剤を添加してもよい。この潤滑剤としては、脂肪酸金属塩および高級アルコールのうちの少なくともいずれか一方を含んだものがあげられる。
脂肪酸金属塩としてはステアリン酸のカドミウム、バリウム、鉛、鉄、ニッケル、コバルト、銅、アルミニウム、マグネシウム等の金属塩;二塩基性ステアリン酸鉛;オレイン酸の亜鉛、マグネシウム、鉄、コバルト、銅、鉛、カルシウム等の金属塩;パルミチン酸とアルミニウム、カルシウム等の金属塩;カプリル酸鉛;カプロン酸鉛;リノール酸亜鉛;リノール酸コバルト;リシノール酸カルシウム;リシノレイン酸と亜鉛、カドミウム等の金属塩;及びこれらの混合物等が挙げられるが、中でもステアリン酸亜鉛が潤滑効果が高く好ましい。
また、現像剤収容体141に収容された現像剤中のキャリアとしては、鉄粉、ガラスビーズ、フェライト粉、ニッケル粉、またはそれ等の表面に樹脂コーテイングを施した、粒径が20μm以上100μm以下のものが使用される。また、キャリアとトナーとの混合割合は、適宜設定することができる。
(実施例)
以下、実施例および比較例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は全て「質量部」を意味する。
[感光体Aの作製]
酸化亜鉛(SMZ−017N:テイカ製)100部をトルエン500部と攪拌混合し、シランカップリング剤(A1100:日本ユニカー社製)2部を添加し、5時間攪拌した。その後トルエンを減圧蒸留にて留去し、120℃で2時間焼き付けを行った。得られた表面処理酸化亜鉛を蛍光X線により分析した結果、Si元素強度は亜鉛元素強度の1.8×10−4であった。
前記表面処理を施した酸化亜鉛35重量部と硬化剤よして用意したブロック化イソシアネート スミジュール3175(住友バイエルンウレタン社製)15部と、ブチラール樹脂 BM−1 (積水化学社製)6部と、メチルエチルケトン44部とを混合し、1mmφのガラスビーズを用いてサンドミルにて2時間の分散を行い分散液を得た。得られた分散液に触媒としてジオクチルスズジラウレート0.005部、トスパール130(GE東芝シリコン社製)17部を添加し、下引層塗布用液を得た。この塗布液を浸漬塗布法にてAl基材上に塗布し、160℃、100分の乾燥硬化を行い厚さ20μmの下引層を得た。表面粗さRzは、東京精密社製表面粗さ形状測定器サーフコム570Aを使用し、測定距離2.5mm、走査速度0.3mm/secで測定し、Rz値0.24であった。
次いで、X線回折スペクトルにおけるブラッグ角(2θ±0.2°)が、7.5°、9.9°、12.5°、16.3°、18.6°、25.1°、28.3°に強い回折ピークを持つヒドロキシガリウムフタロシアニン1部を、ポリビニルブチラール(エスレックBM−S、積水化学)1部および酢酸n−ブチル100部と混合し、ガラスビーズとともにペイントシェーカーで1時間分散処理することで塗布液を得た。得られた塗布液を上記下引層上に浸漬コートし、100℃で10分間加熱乾燥して膜厚約0.15μmの電荷発生層を形成した。
次に、下記構造の、電荷輸送性化合物(1) 2部および高分子化合物(粘度平均分子量 39,000) 3部をクロロベンゼン20部に溶解させた塗布液を上記電荷発生層上に浸漬コーティング法で塗布し、110℃、40分の加熱を行なって膜厚22μmの電荷輸送層を形成した。こうして電荷輸送層まで形成した感光体を感光体Aとする。
[感光体Bの作製]
下記化合物(1)を5部、レゾール型フェノール樹脂(PL−4852、群栄化学社製)を7部、メチルフェニルポリシロキサンを0.03部、及びイソプロパノ−ルを20部混合して溶解し、保護層形成用塗布液を得た。感光体Aと同様に作製した感光体の電荷輸送層上に、この保護層形成用塗布液を浸漬コーティング法で塗布し、130℃で40分乾燥させ、メチロール基を有するフェノール誘導体を架橋したフェノール系樹脂を含む膜厚3μmの保護層を形成した。こうして保護層まで形成した感光体を感光体Bとする。
[感光体Cの作製]
下記に示す構成材料に、メチルアルコール5部、イオン交換樹脂(アンバーリスト15E)0.3部を加え、室温で攪拌することにより24時間保護基の交換反応を行った。
構成材料
下記構造の化合物(2) 2部
下記構造の化合物(3) 1部
コロイダルシリカ 0.3部
Me(MeO)2−Si−(CH2)4−Si−Me(OMe)2 2部
(ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシル)メチルジメトキシシラン 0.1部
ヘキサメチルシクロトリシロキサン 0.3部
ZX−022(富士化成工業社製) 0.25部
その後、n−ブタノール10部、蒸留水0.25部を添加し、加水分解を5分間行なった。加水分解したものからイオン交換樹脂を濾過分離した液に対し、アルミニウムトリスアセチルアセトナート(Al(aqaq)3)を0.1部、アセチルアセトン0.1部、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシトルエン(BHT)0.4部を加え、このコーティング液を、感光体Aと同様に作製した感光体の電荷輸送層上に、リング型浸漬塗布法により塗布し、室温で30分風乾した後、130℃で1時間加熱処理して硬化し、シロキサン誘導体を架橋したシロキサン系樹脂を含む膜厚3μmの保護層を形成した。こうして保護層まで形成した感光体を感光体Cとする。
(実施例1)
試験機として、図1に示す画像形成装置の基本構成と同じ基本構成の画像形成装置を用いた。すなわち、ここで用いた画像形成装置には、高強度表面層である保護層を省略し最表面が電荷輸送層で構成された上記感光体Aを組み込んだ。また、現像装置としては、キャリアを含まずに、粒径が20nm以上30nm以下の無機酸化物粒子である日本アエロジル(株)製RY50と粒径が100nm以上150nm以下の無機酸化物粒子である信越化学工業(株)製X24との双方が添加されたトナーを含む一成分系現像剤を収容した現像剤収容体を有する現像装置を用いた。
さらに、ここでは、発泡ゴムに対して、粒径が5μmの粒子を5wt%添加して直径が16mmのロール体を作製し、この5μmの粒子が分散配置されたロール体を上流側の大粒径ロールのロール体として用いた。また、発泡ゴムに対して粒径が0.5μmの粒子を5wt%添加して直径が16mmのロール体も作製し、この0.5μmの粒子が分散配置されたロール体を下流側の小粒径ロールのロール体として用いた。
なお、クリーニング手段としては図2に示すクリーニングブラシを用いた。
表1に、ここで用いた画像形成装置の特徴的構成を示す。
この表1では、‘無機酸化物粒子’の欄に示す「大」は、トナーに信越化学工業(株)製X24が添加されていることを表し、「小」は、トナーに日本アエロジル(株)製RY50が添加されていることを表す(以下、同じ)。また、‘キャリア’の欄に示す「無」は、一成分現像剤を用いたことを表す(以下、同じ)。さらに、‘大粒径ロール’の欄は、大粒径ロールのロール体に分散配置されている粒子の粒径を表し、‘小粒径ロール’の欄は、小粒径ロールのロール体に分散配置されている粒子の粒径を表す(以下、同じ)。
試験では、各色エリアカバレッジ10%であるプロセス方向の筋チャートを20秒おきに5枚連続して採取することを繰り返す走行試験を、常温常湿(20℃、55%RH)の環境下で1万枚実施した後、高温高湿(28℃、80%)の環境下でも1万枚実施し、最後に低温低湿(10℃、20%RH)の環境下で1万枚実施した。
評価は、合計3万枚の走行試験を実施した後、20%ハーフトーンのサンプル画像と、文字サンプル画像それぞれを採取し、得られたそれぞれの形成画像について、走行試験で用いた筋チャートの筋に当たる箇所に画質欠陥が生じているか否かを観察するとともに感光体表面も観察した。結果を上記表1に併せて示す。
上記表1に示すように、20%ハーフトーンのサンプル画像の形成画像にも、文字サンプル画像の形成画像にも画質欠陥が生じておらず、いずれの形成画像も良好な画質であった。また、感光体表面にトナーフィルミングや大きな凹凸が生じていなかった。
(実施例2)
大粒径ロールを、粒径が25μmの粒子を5wt%添加したロール体を有するものに代えるとともに、小粒径ロールを、粒径が4μmの粒子を5wt%添加したロール体を有するものに代えた以外は、実施例1で用いた画像形成装置の構成と同じ構成の画像形成装置を用い、実施例1と同様な試験を行い、実施例1と同様にして評価を行った。実施例2で用いた画像形成装置の特徴的構成とともに結果を上記表1に示す。
ここでの結果も、実施例1における結果と同じく良好な結果であった。
(実施例3)
現像装置を、日本アエロジル(株)製RY50は添加されているが信越化学工業(株)製X24は無添加のトナー、および粒径が20μm以上100μm以下のキャリアを含む二成分現像剤を収容した現像剤収容体を有するものに代えた。また、大粒径ロールを、粒径が20μmの粒子を5wt%添加したロール体を有するものに代えた。これらの変更を行った以外は、実施例1で用いた画像形成装置の構成と同じ構成の画像形成装置を用い、実施例1と同様な試験を行い、実施例1と同様にして評価を行った。ここで用いた画像形成装置の特徴的構成とともに結果を表1に示す。なお、‘キャリア’の欄に示す「有」は、二成分現像剤を用いたことを表す(以下、同じ)。
この実施例3における結果も、実施例1における結果と同じく良好な結果であった。
(実施例4)
大粒径ロールを、粒径が60μmの粒子を5wt%添加したロール体を有するものに代えるとともに、小粒径ロールを、粒径が4μmの粒子を5wt%添加したロール体を有するものに代えた以外は、実施例3で用いた画像形成装置の構成と同じ構成の画像形成装置を用い、実施例1と同様な試験を行い、実施例1と同様にして評価を行った。実施例4で用いた画像形成装置の特徴的構成とともに結果を上記表1に示す。
ここでの結果も、実施例1における結果と同じく良好な結果であった。
(実施例5)
感光体を、最表面に高強度表面層である、フェノール誘導体を架橋したフェノール系樹脂を含む保護層が設けられた感光体Bに代えるとともに、現像装置を、キャリアを含まずに、日本アエロジル(株)製RY50は添加されているが信越化学工業(株)製X24は無添加のトナーを含む一成分系現像剤を収容した現像剤収容体を有する現像装置に代えた。また、大粒径ロールを、粒径が50μmの粒子を5wt%添加したロール体を有するものに代えた。さらに、クリーニングブラシを、図3に示すクリーニングブレードに代えた。これらの変更を行った以外は、実施例1で用いた画像形成装置の構成と同じ構成の画像形成装置を用い、実施例1と同様な試験を行い、実施例1と同様にして評価を行った。ここで用いた画像形成装置の特徴的構成とともに結果を表1に示す。
この実施例5における結果も、実施例1における結果と同じく良好な結果であった。
(実施例6)
感光体を、最表面に高強度表面層である、シロキサン誘導体を架橋したシロキサン系樹脂を含む保護層が設けられた上記感光体Cに代えた。また、大粒径ロールを、粒径が150μmの粒子を5wt%添加したロール体を有するものに代えるとともに、小粒径ロールを、粒径が29nmの粒子を5wt%添加したロール体を有するものに代えた。これらの変更を行った以外は、実施例5で用いた画像形成装置の構成と同じ構成の画像形成装置を用い、実施例1と同様な試験を行い、実施例1と同様にして評価を行った。実施例6で用いた画像形成装置の特徴的構成とともに結果を表1に示す。
ここでの結果も、実施例1における結果と同じく良好な結果であった。
(比較例1)
大粒径ロールを、粒径が4μmの粒子を5wt%添加したロール体を有するものに代えた以外は、実施例1で用いた画像形成装置の構成と同じ構成の画像形成装置を用い、実施例1と同様な試験を行い、実施例1と同様にして評価を行った。ここで用いた画像形成装置の特徴的構成とともに結果を表1に示す。
この比較例1における結果では、20%ハーフトーンのサンプル画像の形成画像にも、文字サンプル画像の形成画像にも、感光体回転方向(プロセス方向)の色筋が確認された。
(比較例2)
大粒径ロールを、粒径が151μmの粒子を5wt%添加したロール体を有するものに代えた以外は、実施例6で用いた画像形成装置の構成と同じ構成の画像形成装置を用い、実施例1と同様な試験を行い、実施例1と同様にして評価を行った。この比較例2で用いた画像形成装置の特徴的構成とともに結果を表1に示す。
ここでの結果は、感光体表面に大きな凹凸が生じており、ハーフトーンのサンプル画像の形成画像にも文字サンプル画像の形成画像にも、プロセス方向に筋状の画像抜けが確認された。
(比較例3)
小粒径ロールを、粒径が0.4μmの粒子を5wt%添加したロール体を有するものに代えた以外は、実施例5で用いた画像形成装置の構成と同じ構成の画像形成装置を用い、実施例1と同様な試験を行い、実施例1と同様にして評価を行った。ここで用いた画像形成装置の特徴的構成とともに結果を表1に示す。
この比較例3では、ハーフトーンのサンプル画像の形成画像にも、文字サンプル画像の形成画像にも、プロセス方向に筋状の濃度ムラが確認された。
(比較例4)
小粒径ロールを、粒径が5μmの粒子を5wt%添加したロール体を有するものに代えた以外は、実施例6で用いた画像形成装置の構成と同じ構成の画像形成装置を用い、実施例1と同様な試験を行い、実施例1と同様にして評価を行った。この比較例4で用いた画像形成装置の特徴的構成とともに結果を表1に示す。
ここでの結果も、比較例3における結果と同じく、いずれの形成画像にもプロセス方向に筋状の濃度ムラが確認された。
比較例1における色筋は、残留トナー粒子による画質欠陥であると考える。これに対して、粒径が5μmの粒子を分散配置した大粒径ロールを用いた実施例1では、比較例1で生じた色筋が発生していないことから、比較例1で用いた、粒径が4μmの粒子を分散配置した大粒径ロールでは、大粒径無機酸化物粒子である信越化学工業(株)製X24によって生じた傷(凹凸)が十分にならされず、その凹凸の凹部に入り込んだ残留トナー粒子を除去しきれなかったといえる。
比較例2におけるプロセス方向の筋状の画像抜けは、感光体表面に大きな凹凸が生じていたことから、転写ニップ圧が感光体回転軸方向に不均一になって生じた画質欠陥であると考える。これに対して、粒径が150μmの粒子を分散配置した大粒径ロールを用いた実施例6では、比較例2で生じた筋状の画像抜けが発生していないことから、比較例2で用いた、粒径が151μmの粒子を分散配置した大粒径ロールでは、感光体表面が必要以上に粗く研磨されてしまうといえる。
比較例3および比較例4における濃度ムラは、小粒径無機酸化物粒子である日本アエロジル(株)製RY50が感光体表面から除去されずその表面に付着したまま感光体が帯電を受けたことにより、付着した日本アエロジル(株)製RY50によって異常帯電が生じて発生した画質欠陥であると考える。これに対して、粒径が0.5μmの粒子を分散配置した小粒径ロールを用いた実施例5では、比較例3で生じた濃度ムラが発生していないことから、比較例3で用いた、粒径が0.4μmの粒子を分散配置した大粒径ロールでは、日本アエロジル(株)製RY50を感光体表面から十分に剥がし取ることができなかったといえる。また、粒径が4μmの粒子を分散配置した小粒径ロールを用いた実施例6では、比較例4で生じた濃度ムラが発生していないことから、比較例4で用いた、粒径が5μmの粒子を分散配置した大粒径ロールでは、日本アエロジル(株)製RY50が付着した小さな凹部に粒子が入り込めず、日本アエロジル(株)製RY50を感光体表面から剥がし取ることができなかったと考える。
以上の結果から、粒径が5μm以上150μm以下の粒子を分散配置した大粒径ロールを用いるとともに、粒径が0.5μm以上5μm未満の粒子を分散配置した小粒径ロールを用いることで、感光体表面の凹部に付着した外添剤粒子をその表面から除去するとともにその表面に存在する残留トナーもその表面から除去することができることが確認された。