本発明のジェットインクは、その分散媒たる水性媒体中に分散状態となって存在する、「顔料微粒子(a)がカルボキシル基を有する皮膜形成性樹脂(b)で被覆されて成る着色微粒子(d)」が、0.5μm以下の体積平均粒径を有したものであるが、好ましくは、体積平均粒子径が0.01〜0.3μmの範囲のものである。
本発明において、着色微粒子(d)は、マイクロカプセル粒子、又は着色マイクロカプセル、或いは、単にマイクロカプセルと呼ばれる場合がある。
顔料を用いたインクジェットで安定して使用するには、インクがノズル端面で乾燥して生ずるノズル目詰まりを克服する必要がある。従来の水溶性樹脂を顔料分散剤として用いて、吸着により顔料微粒子を安定分散させるという手法によって得たインクは、水分蒸発に伴って顔料微粒子同士の凝集が生じやすい。一度、顔料微粒子の凝集が生じると、それに再度水や同じインクを加えて湿潤させても、二度と再分散することが出来なくなり、結果的にノズル目詰まりが生じる。インクの液媒体を蒸発させた後に、同じ液媒体に分散し直した分散液(再分散液)を調製した際に、顔料微粒子又は着色微粒子が、元々あったインクと同様なレベルに分散するかどうかは、ノズル目詰まりのし難さの一尺度とすることが出来る。
着色微粒子の凝集状態の評価方法としては、粒子径の経時的増大を調べればよく、例えば平均粒子径、メジアン(50%粒径)、粗大粒子部分の増大(例えば90%粒径)等が挙げられるが、中でも、平均粒子径、特に体積平均粒子径が最もノズル目詰まりとの相関関係を正確に反映していることを、本発明者らは見い出した。
この明細書で使用する「乾燥インクの再分散液中の着色微粒子(d)の体積平均粒径の増加率」なる用語は、〔(S2/S1)−1〕×100を意味する。S2およびS1の定義はそれぞれ次の通りである。即ち、ホール(直径14−16mm、最深部の深さ0.4−0.8mm)を表面上に設けたスライドガラス、或いは、ミニシャーレ(直径14−16mm、高さ10−15mmの円筒状のもの)にジェットインク10μlを入れ、これを温度25℃、相対湿度20%の雰囲気下に7日間放置してインクを乾燥させ、その後、前記ホール内に存在する乾燥したインクを10mlの純水に再分散させる(1000倍に希釈される。)。その希釈された再分散液(以下、単に「乾燥インクの再分散液」という)中に含まれる着色微粒子(d)の体積平均粒径を測定し、その測定値をS2とする。一方、ブランクとして、上記ジェットインクと同一のインク10μlを10mlの純水で希釈する(1000倍に希釈される。)。その希釈液中に含まれる着色微粒子(d)の体積平均粒径を測定し、その測定値をS1とする。
これら着色微粒子(d)の粒子径の測定には、公知慣用のものが使用できるが、本発明においては、リーズ アンド ノースラップ社製マイクロトラック粒度分析計(LEEDS AND NORTHRUP, MICRO ULTRAFINE ANALYZER)用いるのが好ましい。
本発明のジェットインクは、「乾燥インクの再分散液中の着色微粒子(d)の体積平均粒径の増加率」が、50パーセント以下であるものを言う。当該増加率は、40パーセント以下であるのが好ましく、中でも20パーセント以下であるのが、効果の上でも特に好ましい。
前記2つの試験を行うため各インクは同一容器からサンプリングすることが好ましい。本発明においては、インクを使用する際に初めて容器の開封を行って、直ちに測定したインクの着色微粒子(d)の体積平均粒径を、例えばブランクである前記S1とすることが出来る。体積平均粒径は、S2の場合でもS1の場合でも、いずれも0.3μm以下であるのが好ましい。
「乾燥インクの再分散液中の着色微粒子(d)の粒子径の度数分布」における、体積粒径の標準偏差(standerd deviation:sd)は、0.15以下、なかでも0.1以下とする様にするのが、好ましい。前記S1の条件下でも、この範囲であることが好ましいのは、勿論である。
この明細書で使用する「乾燥インクの再分散液中の着色微粒子(d)の粒子径の度数分布」なる用語は、既に定義した「乾燥インクの再分散液」中の着色微粒子(d)の粒子径の度数分布を意味する。好適には、体積粒径の度数分布が用いられる。
本発明では,単位系としてSI単位系を採用し,重量は質量として記載する。
インクは,本発明のものに限らず,例えば,「顔料を、分散媒に溶解しない皮膜形成性樹脂で被覆した着色マイクロカプセル」,「皮膜形成性樹脂で被覆されていない分散媒に溶解しないフリーの顔料微粒子」,「顔料を被覆していない、分散媒に溶解しないフリーの皮膜形成性樹脂分散粒子」,「分散媒に溶解した皮膜形成性樹脂」,及び分散媒,更に必要に応じて用いられる乾燥防止剤,浸透剤等とから構成され得る。
前記した課題を解決するために、本発明では、顔料微粒子(a)がカルボキシル基を有する皮膜形成性樹脂(b)で被覆されて成る着色微粒子(d)が水性媒体中に分散して成るジェットインクにおいて、(1)前記着色微粒子(d)がその表面に第4級化されたカルボキシル基を有し、且つ、0.5μm以下の体積平均粒径を有すること、(2)「乾燥インクの再分散液中の着色微粒子(d)の体積平均粒径の増加率」が50パーセント以下としなければならない。
本発明においては,より具体的な手段として、上記インク構成において,分散媒たる水性媒体に,溶解した皮膜形成性樹脂を不存在とさせるか、又は許容範囲内に存在させることが効果的である。
その手段として、分散媒たる水性媒体には、溶解した皮膜形成性樹脂が出来るだけ少なくなる様にすることが好ましく、その量はインク重量に対して、2質量%以下とするのが好ましい。
しかしながら,皮膜形成樹脂のうちインク中に溶解する樹脂成分を、0.01質量%未満とすることは比較的難しいし、そうなるとインクが記録紙に印刷された時に,記録紙表面上に形成されるインク層中のマイクロカプセル粒子の記録紙に対する固着能力やマイクロカプセル粒子同士の結合力が不足し,その結果,印刷物の摩擦等の耐久性が劣るという欠点が生じ易いことが推定される。
逆に,皮膜形成樹脂のうちインク中に溶解する樹脂成分が2質量%を越えると,インクが記録紙に印刷された時に,記録紙表面上に形成されるインク層中のマイクロカプセル粒子の記録紙に対する固着能力やマイクロカプセル粒子同士の結合力は増大するが,溶解した皮膜形成性樹脂が記録紙上で不溶化するまでの時間,即ち印刷直後の耐水性が発現するまでの時間が長くなるという欠点に加えて,皮膜形成樹脂は高分子分散剤等の水溶性樹脂と比較してノズル端面での水分蒸発に伴う目詰まりがより生じ易く,インクジェット噴射安定性がより悪くなるという欠点が生じ易い。
皮膜形成樹脂のうちインク中に溶解する樹脂成分が,例えば0.01〜2質量%,より好ましくは0.1〜1質量%にすることにより,インクが記録紙に印刷された時に,記録紙表面上に形成されるインク層中のマイクロカプセル粒子の記録紙に対する固着能力やマイクロカプセル粒子同士の結合力が増し,印刷物の摩擦等の耐久性が向上するとともに,ノズル端面での水分蒸発に伴う目詰まりもなくなり,インクジェット噴射安定性が大幅に向上する。
尚、インク中に溶解する皮膜形成性樹脂成分は、インク中に含まれる絶対量を含有率で表す(以下、絶対含有率という場合がある。)。
本発明において水性媒体とは,水のみか,水を主成分として必要に応じて有機溶剤やその他の添加剤を含む媒体を言う。本発明においては,インクの分散媒たる水性媒体として,皮膜形成性樹脂を極力溶解しない様,化学組成及び構成成分の質量割合等を選択するのが好ましい。
皮膜形成性樹脂は,皮膜を形成する樹脂であればよく,天然樹脂や合成樹脂に限定されず様々な皮膜形成性樹脂が用いることができ,例えばスチレン系樹脂,アクリル系樹脂,ポリエステル系樹脂,ポリウレタン系樹脂が挙げられる。当該樹脂は、常温では架橋しているが熱で非架橋状態となる可逆的性質の架橋を有するものであってもよい。
アイオノマー樹脂の様なものが、この可逆的性質の架橋の挙動を示す。しかしながら、皮膜形成性樹脂は、線状で実質的に熱可塑性を示す皮膜形成性樹脂が好ましく、熱依存性のない永久架橋されているものは好ましくない。
しかしながら,着色マイクロカプセルを水性媒体中に安定して分散させるには,皮膜形成性樹脂は親水性の高い性質を有している必要があり,そのためしばしば多量の皮膜形成性樹脂がインク中に溶解することになる。この場合,溶解している樹脂はマイクロカプセルを被覆している樹脂層への絡みつきに伴う粒子間架橋により,長期の保管によりマイクロカプセルの凝集を促進することがある。またインクジェット記録を行った場合には,ノズル端面での水分蒸発に伴うインクの粘度上昇やノズル周辺へのインク濃縮物の付着によって噴射異常を起こしやすくなる。
上記噴射異常としては、インクの吐出異常やノズル目詰まり等がある。
一方,皮膜形成性樹脂の親水性が低い場合には顔料を皮膜形成性樹脂で被覆した着色マイクロカプセルの水性媒体中での分散安定性はより低くなる。
そこで,皮膜形成性樹脂の水性媒体への溶解を最小限に押さえ,かつ当該水性媒体中での安定した分散を可能とすることが,好ましい。
着色マイクロカプセルを水性媒体中に安定に分散させるには,例えば界面活性剤や分散剤等を用いて,もともと親水性が無いかそれが乏しい皮膜形成性樹脂を用いるという方法もあり得るが,着色画像がより優れた耐水性を発現する点や吐出安定性が良好な点からすれば,界面活性剤や分散剤等を含まない様に調製するのが好ましい。
この界面活性剤や分散剤等を含まない様に調製する方法としては,例えば,中和により水性媒体に分散し得る樹脂を中和剤により中和して得た皮膜形成性樹脂を用いる様にするのが良い。中和により水性媒体に分散し得る樹脂を中和剤により中和して得た皮膜形成性樹脂としては,典型的には,塩基による中和により水性媒体に分散し得る樹脂を塩基で中和してなる皮膜形成性樹脂が挙げられる。本発明では,界面活性剤や分散剤等などの助けを借りずとも,それ自体のみで,水性媒体に安定に分散できるこの樹脂を,自己水分散性樹脂と呼ぶ場合がある。
本発明では,例えば酸価を有する樹脂を用いて,それを塩基で中和した自己水分散性樹脂を皮膜形成性樹脂として用いるのが好ましい。
酸基を有する皮膜形成性樹脂の典型は、カルボキシル基を有する皮膜形成性樹脂(b)である。顔料微粒子(a)がカルボキシル基を有する皮膜形成性樹脂(b)で被覆されて成る着色微粒子(d)は、顔料微粒子(a)を被覆している皮膜形成性樹脂(b)の水性媒体と接する表面のカルボキシル基が、主に第4級化され塩となることにより、水性媒体中に安定分散される。カルボキシル基を有する皮膜形成性樹脂(b)は、酸価で定められるそのカルボキシル基量の第4級化する程度により、水溶性樹脂にも自己水分散性樹脂にもなり得る。しかし、本発明の効果は、顔料微粒子(a)表面に存在する皮膜形成性樹脂(b)が水性媒体に実質的に溶解しないこと、即ち自己水分散性樹脂である場合に固有のものである。
好ましい樹脂の酸価は,10〜280である。
特に好ましくは、例えば酸価50〜180のものが用いられる。
尚,酸価とは,樹脂1gを中和するに必要な水酸化カリウム(KOH)のミリグラム(mg)数を言い,mg・KOH/gで表す(以下,単位は略記する。)。この様な樹脂は,例えば前記特定酸価の樹脂の酸価の全て又は一部を中和することにより得ることが出来る。
この際は,インクのpHが7.5〜9.0となる様にすることが好ましい。
酸価が50未満の場合はマイクロカプセル粒子の表面親水性が乏しく,分散安定性が不充分となり易く,酸価が180を越える場合には樹脂の親水性が著しく高まり,樹脂による顔料の被覆が膨潤等により不十分となり易く,マイクロカプセル粒子同士の凝集やノズル目詰まりを生じやすくなるために不適当である。
一方,インクのpHが7.5より低い場合には,着色マイクロカプセル粒子の分散安定性は低下し易く,pHが9.0を越える場合は着色マイクロカプセル粒子の顔料の被覆が膨潤等により不十分となり易く,マイクロカプセル粒子同士の凝集やノズル目詰まりを生じやすくなるために不適当である。
最適には,皮膜形成性樹脂成分を0.01〜2質量%溶解しているインクとするに当たって,酸価が50〜180の樹脂を用いて,それを塩基で中和した自己水分散性樹脂を皮膜形成性樹脂として用いるとともに,インクのpHが7.5〜9.0となる様にしたものが,本発明において著しい効果を示す。
皮膜形成性樹脂の分子量範囲は,特に制限はないが,重量平均分子量で,1000以上10万以下の分子量範囲が好ましい。皮膜形成性樹脂の分子量が,1万未満であると十分な皮膜形成がなされない場合が多く,マイクロカプセル粒子同士の凝集等によりノズル目詰まりを生じやすくなるために不適当である。
また、1万未満であると印刷物の耐水性も悪くなるために不適当である。
特に皮膜形成性樹脂で顔料を十分に被覆するには,樹脂の分子量が1万以上10万以下が好ましい。
スチレン系樹脂やアクリル系樹脂の場合は、1000以上10万以下の分子量のものがより好ましい。
樹脂の重量平均分子量が1万以上10万以下、中でも特に、3万以上10万以下であることは、より優れた耐水性を得る上でも好ましい。
本発明において,好ましい皮膜形成性樹脂は,スチレン系樹脂または(メタ)アクリル系樹脂である。
酸価を有する樹脂として、好ましいものとしては、例えばスチレン,置換スチレン,(メタ)アクリル酸エステルからなる群から選ばれる少なくとも一つのモノマーと,(メタ)アクリル酸との共重合体が挙げられる。
本発明で、酸価を有する樹脂を用いて、それを塩基で中和した自己水分散性樹脂からなる皮膜形成性樹脂としては、好ましくは、例えばスチレン,置換スチレン,(メタ)アクリル酸エステルからなる群から選ばれる少なくとも一つのモノマーと,(メタ)アクリル酸との共重合体を塩基で少なくとも一部中和した自己水分散性樹脂が挙げられる。
(メタ)アクリル酸は,アクリル酸とメタアクリル酸の総称であり,本発明ではいずれか一方が必須であればよいが,より好適な皮膜形成性樹脂は,アクリル酸およびメタアクリル酸の両方に由来する構造を有しているものである。
本発明においては,例えば皮膜形成性樹脂としての自己水分散性樹脂の水性媒体中への溶解をより少なくするには,全てのカルボキシル基を有する単量体成分のうちの,アクリル酸の比率をより少なく,メタアクリル酸の比率をより増せばよい。
即ち,最適な皮膜形成性樹脂としての自己水分散性樹脂は,スチレン,置換スチレン,(メタ)アクリル酸エステルからなる群から選ばれる少なくとも一つのモノマーを主成分とし,アクリル酸とメタアクリル酸との共重合体であって,メタアクリル酸がアクリル酸より多く共重合された,塩基で少なくとも一部中和した自己水分散性樹脂である。
インクのpHを塩基性にするには,中和により水性媒体に分散し得る樹脂に対して中和,即ち塩基を加えればよい。
より好ましい水性ジェットインクの製造方法(これについては、後に詳述する。)における懸濁工程においては塩基が用いられる。
塩基(本発明では、塩基性化合物という場合がある)としては,例えば水酸化ナトリウム,水酸化カリウム,水酸化リチウム等のアルカリ金属の水酸化物,アンモニア,トリエチルアミン,モルホリン等の塩基性物質の他,トリエタノールアミン,ジエタノールアミン,N−メチルジエタノールアミン等のアルコールアミンが使用可能である。
塩基としては,皮膜形成性樹脂が分解しない程度の高温で容易に揮発性する,揮発性塩基を採用するのが好ましい。
しかしながら,より高酸価の樹脂をより強い塩基を用いて中和を行うと,インク中での皮膜形成性樹脂の溶解度がより高まることから,塩基の強さや使用量(中和率)を調節することが好ましい。
高酸価樹脂の場合、塩基による中和率が高くなると懸濁液中への樹脂の溶解度が増すので、塩基の使用量は、液媒体への溶解程度や最終的に得る水分散液の分散粒子の意図する径の大小に基づき適宜調節する。
高酸価樹脂を強塩基を用いて中和を行うと、水に対する樹脂の溶解度が高まるが、より好ましい水性ジェットインクの製造方法における再沈殿工程において、顔料表面への樹脂の沈着が不充分となるため、懸濁液中での塩基の添加量は水溶性樹脂成分が多くならないように、塩基の強さや使用量(中和率)調節をすることが好ましい。
インクジェット記録用水性インクの場合は,ノズルの目詰まりや保存時の分散安定性,印刷物の耐水性に悪影響があるため、水溶性樹脂成分を最小限に押さえることが好ましい。
アルコールアミン,特にトリエタノールアミンは弱塩基で前記水溶性樹脂成分の発生が少なく、インクジェット記録用水性インクの調製には、最適な塩基である。
インクジェット記録においては,ノズルの目詰まりや保存時の分散安定性,印刷物の耐水性に悪影響が極めて少ないため,弱塩基であるアルコールアミン,特にトリエタノールアミンは最適な塩基である。
より好ましい水性ジェットインクの製造方法における懸濁工程の塩基による中和率は、樹脂着色工程の酸価を有する樹脂が懸濁液中に自己乳化する程度以上であればよく、例として樹脂の酸基の10モル%以上である。
本発明においては,皮膜形成性樹脂の酸基に対する中和率が100モル%相当量以下,好ましくは,60モル%相当量以下とする。特に好ましいのは,アルコールアミンを塩基として用いて,皮膜形成性樹脂の酸基に対する中和率が60モル%相当量以下となる様にするのが好ましい。
本発明では,酸価を有する皮膜形成性樹脂が、酸価50〜180mg・KOH/gの酸価を有する皮膜形成性樹脂であり、皮膜形成性樹脂の酸基に対する中和率を60モル%相当量以下とした、自己水分散性樹脂を用いるのが好ましい。
着色微粒子(d)としては、50〜180の酸価を有する、カルボキシル基を有した皮膜形成性樹脂(b)を用いた場合には、その一部又は全部が有機アミン化合物で第4級アンモニウム塩とされているものが好ましい。
本発明における、より好ましい水性ジェットインクの製造方法は、特に制限されるものではなく、公知慣用の着色剤がいずれも使用できるが。顔料を用いるほうが、染料を用いるよりかは、耐水性に優れた着色樹脂皮膜が得られやすい。
顔料を用いる本発明の着色マイクロカプセルの方が、染料を用いる着色樹脂粒子のよりも、耐水性にも耐光性にも優れた着色樹脂皮膜が得られる。
本発明の着色マイクロカプセル分散型水性ジェットインクに用いられる顔料は,特に限定されるものではなく,公知慣用のものがいずれも使用できる。この顔料は、本発明における着色微粒子(d)中では、顔料微粒子(a)として存在する。
顔料としては,例えばカーボンブラック,チタンブラック,チタンホワイト,硫化亜鉛,ベンガラ等の無機顔料や,フタロシアニン顔料,モノアゾ系,ジスアゾ系等のアゾ顔料,フタロシアニン顔料,キナクリドン顔料等の有機顔料等が用いられる。
後に詳述するが、インクを得るために用いる顔料としては,カーボンブラック,フタロシアニン顔料,ハロゲン化フタロシアン顔料,キナクリドン顔料,ベンズイミダゾロン顔料,ペリノン顔料,イソインドリノン顔料のいずれか1種を用いるのが好ましい。
無彩色着色微粒子とりわけ黒色着色微粒子を得る場合には、カーボンブラックのみ、またはそれを主体とした着色剤を用いる様にすればよいし、有彩色着色微粒子を得るには、有機顔料を用いることが好ましい。
カラー画像を得る場合には,有彩色顔料を用いるのが好ましい。
カラー画像形成,特にフルカラー画像形成を行うには,用いる顔料の色調はシアン色(青色),マゼンタ色(赤色),イエロー色の3色の組合せが最低限必要であり,好ましくは黒色を組み合わせた4色のインクによる画像形成や,前記3色あるいは4色に加えて更に補色関係にある色を加えて画像形成することが出来る。
シアン色顔料としては,色調及び耐候性の点からフタロシアニン顔料であることが好ましい。フタロシアニン顔料としては,具体的には無金属フタロシアニン,銅フタロシアニンあるいはクロル化銅フタロシアニン,その他各種金属フタロシアニン等が挙げられる。これらのなかでも銅フタロシアニンが好ましく,特に他のカラー顔料と組み合わせた時の色調及び分散性の点でC.I.ピグメントブルー15:4がより好ましい。
マゼンタ色顔料としては,色調及び耐候性の点からキナクリドン顔料であることが好ましい。キナクリドン顔料としては,具体的にはジメチルキナクリドン,ジクロルキナクリドン等が挙げられる。これらのなかでも,特に他のカラー顔料と組み合わせた時の色調及び分散性の点でC.I.ピグメントレッド122が好ましい。
イエロー色顔料としては,色調及び耐候性の点からベンズイミダゾロン顔料であることが好ましい。ベンズイミダゾロン顔料としては,具体的にはC.I.ピグメントイエロー120,C.I.ピグメントイエロー151,C.I.ピグメントイエロー154,C.I.ピグメントイエロー156,C.I.ピグメントイエロー175が挙げられる。これらのなかでも他のカラー顔料と組み合わせた時の色調及び分散性及び耐光性の点でC.I.ピグメントイエロー151が最も好ましい。
黒色顔料としては,特に制限はないが色調及び耐候性の点からカーボンブラックが好ましい。
カーボンブラックを着色剤とするインクと,フタロシアニン顔料とキナクリドン顔料とベンズイミダゾロン顔料からなる少なくとも3色の各インクを組み合わせてカラー画像形成を行って得た画像は,光退色に伴う色調変化がほとんどなく極めて高い画質安定性が得られる。
特にフタロシアニン顔料としてC.I.ピグメントブルー15:4,キナクリドン顔料としてC.I.ピグメントレッド122及びベンズイミダゾロン顔料としてC.I.ピグメントイエロー151との組合せ及び,必要に応じてこれにカーボンブラックを組み合わせてカラー画像形成を行って得た画像は,画質安定性が特に好ましい。
前記各色顔料は単独あるいは組み合わせて用いることが可能で,必要に応じて他の種類の顔料を併用してインクとし,カラー画像形成を行っても良い。
本発明では,上記した4種の好適な顔料を用いた各水性インクに加えて,更に中間色の各水性ジェットインクを用いて,被記録媒体上に,画像の形成を行うことが好ましい。中間色の顔料としては、上記した通り、ハロゲン化フタロシアニン顔料、イミダゾロン顔料,ペリノン顔料,イソインドリノン顔料を用いるのが良く、この様な顔料を用いた中間色の水性インクとしては,着色マイクロカプセル分散型でないものもあるが,以下のものが好適には挙げられる。
(A)ハロゲン化フタロシアニン顔料微粒子を皮膜形成性樹脂で被覆した着色マイクロカプセルを水性媒体中に含むマイクロカプセル分散型緑色水性ジェットインク,(B)イミダゾロン顔料,ペリノン顔料,イソインドリノン顔料から選ばれたいずれか1種の顔料の微粒子を皮膜形成性樹脂で被覆した着色マイクロカプセルを水性媒体中に含むマイクロカプセル分散型橙色水性ジェットインク。
これら(A)及び(B)のインクにおいても,皮膜形成性樹脂のうち,インク中に溶解する樹脂成分が,0.01〜2質量%の範囲のものが,上記の各水性インクと組み合わせる上で好ましい。
かかる顔料の使用量は,本発明における効果を達成すれば特に規定されないが,最終的に得られるインク中で,通常0.5〜20質量%となるような量となる様に調製するが好ましい。
これら顔料は被膜形成樹脂によってその表面が少なくとも一部出来れば全てが被覆されることが好ましく,その比率は顔料の比表面積および被覆樹脂の厚みによって異なるが,顔料1質量部に対して樹脂0.5〜2質量部が好ましい。本発明では,インク中に樹脂被覆されていない,フリーの顔料は極めて少ないので,用いたほとんど全ての顔料は,着色マイクロカプセルのみとして前記含有率で近似することが出来る。
顔料と酸価を有する皮膜形成性樹脂とが、ほとんど同じ質量となる様に両者を用いる様にすると、後述する好ましいインクジェット記録用水性インクの製造方法において、より好ましい結果が得られる。その範囲としては、両者が同一質量であるか、または顔料が当該樹脂の質量の±15%の範囲内である場合が挙げられる。
インクには,必要に応じて,皮膜形成性樹脂を溶解しない様な,或いは溶解し難い有機溶剤を含ませることが出来る。インクに用いられる有機溶剤は,一例として乾燥防止剤や浸透剤として用いられる。
乾燥防止剤は,インクジェットの噴射ノズル口でのインクの乾燥を防止する効果を与えるものであり,通常水の沸点以上の沸点を有するものが使用される。このような乾燥防止剤としては,従来知られている公知慣用のものがいずれも使用できるが,例えばエチレングリコール,プロピレングリコール,ジエチレングリコール,ジプロピレングリコール,ポリエチレングリコール,ポリプロピレングリコール,グリセリン等の多価アルコール類等がある。
グリセリンが乾燥防止剤の場合に、最も優れた乾燥防止効果を示す。
特にグリセリンは,マイクロカプセル粒子表面の皮膜形成樹脂に強い水素結合により結びついてマイクロカプセル粒子の分散安定性をより高めると同時に,仮にインク中に皮膜形成樹脂が少量溶解していたとしてもそれに対しても強い水素結合で結びつくことによって,ノズル端面での乾燥を防止するという点でより好ましい。
浸透剤は記録媒体へのインクの浸透や記録媒体上でのドット径の調整を行うものであり,浸透剤としては,例えばエタノール,イソプロピルアルコール等の低級アルコール,エチレングリコールヘキシルエーテルやジエチレングリコールブチルエーテル等のアルキルアルコールのエチレンオキシド付加物やプロピレングリコールプロピルエーテル等のアルキルアルコールのプロピレンオキシド付加物等がある。
記録媒体への浸透性に優れた有機溶剤は、しばしばマイクロカプセルを破壊してインクの安定性を損なうため,このうち特に、モノアルコールのプロピレンオキシド1モル単独付加体(k)、炭素原子数1〜6のモノアルコールのプロピレンオキシド10〜40モル単独付加重合体(l)、炭素原子数4〜8のモノアルコールのエチレンオキシド1モル単独付加体(m)の3種からなる群から選ばれる少なくとも1種以上を、インク中で適量使用することによってマイクロカプセルの安定性を保つことが可能である。中でも、(k)、(l)、(m)の各群の各2つの群の物質を選択して併用することが好ましい。
本発明のものに限らず水性ジェットインクには,被記録媒体上での滲みの抑制や,泡立ち抑制,更にはインクの吐出安定性向上のために,シリコーン系の乳化分散型消泡剤が添加できるが,前記シリコーン系の乳化分散型消泡剤に代えて,前記各群の各物質の使用が特に有効である。
モノアルコールのプロピレンオキシド1モル単独付加体(k)としては、例えばプロパノールのプロピレンオキシド(1モル)単独付加体等が挙げられる。
この炭素原子数1〜6のモノアルコールのプロピレンオキシド10〜40モル単独付加重合体(l)としては、例えばブタノールのプロピレンオキシド(17.7モル)付加重合体等が挙げられる。
モノアルコールのエチレンオキシド1モル単独付加体(m)としては、例えばブタノールのエチレンオキシド(1モル)単独付加体、ヘキサノールのエチレンオキシド(1モル)単独付加体等が挙げられる。
これら(l)、(m)、(n)のインク中での含有量はインクの泡立ちが最小になるように加えられることが好ましく,またインク表面に層分離しないレベルに添加量を押さえればよく,特に制限されないが,一般的には0.01〜10質量%程度の範囲である。
有機溶剤の添加量は,インク中,乾燥防止剤として用いる場合は1〜80質量%,浸透剤として用いる場合は0.01〜10質量%とするのが好適である。
有機溶剤は,皮膜形成性樹脂の種類や濃度,或いは水性媒体中での当該有機溶剤濃度等の組合せによっては,顔料に被覆している樹脂を2質量%を越えて溶解し噴射特性を悪くする場合があることから,有機溶剤の種類に応じてインク中での含有量を2質量%以下,さらに好ましくは1質量%以下になるように,前記インクのpH範囲を考慮した上で添加量を抑制する必要がある。
最終的に得られるインクの分散媒は、皮膜形成性樹脂を溶解する有機溶剤(e)を実質的に含まず、実質的に水のみからなる水性媒体とすることが好ましい。また、皮膜形成性樹脂を溶解する有機溶剤(e)をインク中に含ませる場合には、分散している着色微粒子(d)表面の、第4級化された塩構造を有する樹脂(b)が溶解しない様に、インク中に含ませる含有量を低く抑えることが好ましい。
本発明の皮膜形成性樹脂のインク中に溶解している成分を測定する方法は,当該樹脂以外の固形成分が少ない場合には,例えば超遠心分離機にてマイクロカプセル粒子を沈降させ,上澄み液を十分に乾燥して直接不揮発分として測定することが出来る。また当該樹脂以外の固形分や高沸点有機溶剤が多量にインク中に存在する場合には,遠心沈降物を十分に乾燥し,その後熱分析装置にて,熱分解温度の差異に基づいて,樹脂と顔料の比率を測定し,インクに仕込んだ当該樹脂と顔料の比率から換算して,インク中に溶解している樹脂成分量を求めることが出来る。後者の方法は,水性媒体中の分散物が着色マイクロカプセルのみからなり,皮膜形成性樹脂で被覆されていないフリーの顔料微粒子や,「顔料を含まない皮膜形成性樹脂のみの粒子」を含まない場合には,特に高精度で測定出来る。インク中に,乾燥防止剤,浸透剤等の添加剤などを含んでいる場合には,顔料と皮膜形成性樹脂が分解しない様な温度で前者添加剤を乾燥除去してから測定を行うことで,より測定精度を増すことが出来る。
本発明の着色マイクロカプセル分散型水性ジェットインクを得る具体的な方法として、特に酸価を有する皮膜形成樹脂を用いて顔料を被覆する場合には,以下の方法が好ましい。この方法によれば,水性媒体中に分散した樹脂と顔料に由来する成分が着色マイクロカプセルのみからなり,「皮膜形成性樹脂で被覆されていないフリーの顔料微粒子」や,「顔料を含まない皮膜形成性樹脂のみの粒子」や,「溶解した皮膜形成性樹脂」をいずれも全く含まないか含んでいても極めて極少量であるインクを容易に得ることが出来る。
以下の方法は、自己水分散性樹脂の有機溶剤溶液に顔料微粒子を分散させたものに対して,水性媒体を加えて転相乳化を行わせ当該有機溶剤を除去する転相乳化法による方法よりも、顔料を含まない皮膜形成性樹脂のみの粒子や,溶解した皮膜形成性樹脂を全く含まないか含んでいても更に極めて極少量であるインクを,より容易に得ることが出来る。
[1]酸価を有する皮膜形成性樹脂に少なくとも顔料を分散して固形着色コンパウンドを得る樹脂着色工程。
[2]少なくとも,水,皮膜形成性樹脂を溶解する有機溶媒,塩基,前記樹脂着色工程で得られた固形着色コンパウンドを混合し,分散によって少なくとも樹脂の一部が溶解している顔料懸濁液を得る懸濁工程。
[3]前記懸濁工程で得られた顔料懸濁液中の顔料表面に溶解樹脂成分を沈着させる再沈殿工程。
この方法は,具体的には,例えば次の〈1〉〜〈5〉をこの順に行うことが出来る。
〈1〉酸価を有する皮膜形成性樹脂に,顔料を分散して固形着色コンパウンドを得る。(混練工程)
この工程は,例えば従来知られているロールやニーダーやビーズミル等の混練装置を用いて,溶液や加熱溶融された状態で,顔料を当該樹脂に均一に分散させ,最終的に固体混練物(固形着色コンパウンド)として取り出すことにより行うことが出来る。
特に当該樹脂への顔料の微分散が必要な場合には,顔料を分散する手段として,従来知られている分散方法のうち,相対的に高せん断力のかかる状態が形成される分散手段,具体的には2本ロールを用いて高せん断力下で分散を行うことが好ましい。
〈2〉少なくとも,水,当該樹脂を溶解する有機溶剤,塩基,前記固形着色コンパウンドを混合し,分散によって少なくとも当該樹脂の一部が溶解している顔料懸濁液を得る。(懸濁工程)
当該樹脂を溶解する有機溶剤は当該樹脂に対して良溶媒として機能するものであり,当該樹脂に対して適宜選択することが出来,例えばアセトン,ジメチルケトン,メチルエチルケトン等のケトン系溶剤,メタノール,エタノール,イソプロピルアルコール等のアルコール系溶剤,クロロホルム,塩化メチレン等の塩素系溶剤,ベンゼン,トルエン等の芳香族系溶剤,酢酸エチルエステル等のエステル系溶剤,エチレングリコールモノメチルエーテル,エチレングリコールジメチルエーテル等のグリコールエーテル系溶剤,アミド類等樹脂を溶解させるものであれば使用可能である。
本工程に用いられる分散媒は,主体は皮膜形成性樹脂に対しては貧溶媒として機能する水であり,インクジェット記録用水性インクとして用いるため,イオン交換水以上の純度を有することが好ましい。
本工程では,水及び有機溶剤の混合液が均一であることが好ましく,均一でない場合は,必要に応じて,界面活性剤を用いるか,あるいは機械的にO/W型に乳化させるか,助溶剤を併用して均一化させて用いることが好ましい。
当該樹脂を溶解する有機溶剤と水と塩基のみで,分散安定性に優れた顔料懸濁液を得難い場合には,それらに,当該樹脂を溶解しない親水性有機溶剤を,助溶剤として一部併用してより良い乳化安定性を持たせる様にしてもよい。尚,当該樹脂を溶解する有機溶剤及び助溶剤は,いずれも1種又は2種以上を併用してもよい。
当該樹脂が,例えばスチレン,置換スチレン,(メタ)アクリル酸エステルからなる群から選ばれる少なくとも一つのモノマーと,(メタ)アクリル酸との共重合体の場合には,メチルエチルケトン等のケトン系溶剤を主として,助溶剤としてイソプロピルアルコール等のアルコール系溶剤から選ばれる少なくとも1種類以上の組み合わせが良い。
かかる水と有機溶剤の比率は,本発明における効果を達成すれば特に規定されないが,水/有機溶剤の重量比が10/1〜1/1となるような量が好ましい。
この工程により、固形着色コンパウンド表面から、顔料を包含する酸価を有する皮膜形成性樹脂が、有機溶剤と塩基の助けを借りて、自己乳化し、少なくとも一部が溶解している顔料懸濁液が得られる。
懸濁液中において当該樹脂が前記液媒体に完全に溶解している場合には顔料表面が露出しているが、樹脂が自己乳化している場合には、少なくとも顔料表面の一部は樹脂で被覆されていると考えられる。
この工程により,固形着色コンパウンドの表面に存在する,酸価を有する皮膜形成性樹脂は,塩基により,徐々に,その酸価の少なくとも一部又は全部が中和され,当該コンパウンドの固体形状から,混合物は懸濁状態となる。
懸濁液を得るための攪拌方法としては,公知慣用の手法がいずれも採用でき,例えば1軸のプロペラ型の攪拌翼の他,目的に応じた形状の攪拌翼や攪拌容器を用いて,容易に懸濁可能である。
懸濁液を得るに当たって,大きなせん断力が働かない単なる混合攪拌では微粒子化しない場合や,顔料が比較的凝集しやすい場合には,更に高せん断力を与えて微粒子の安定化を行っても良い。この場合の分散機として,例えば高圧ホモジナイザーや,商品名マイクロフルイダイザーやナノマイザーで知られるビーズレス分散装置等を用いるのが,顔料の再凝集が少なく好ましい。
例えば、コンパウンドとして、〈2〉の懸濁工程で、比較的小粒径に分散した顔料懸濁液が得られる場合には、次いで直ちに〈3〉の再沈殿工程を行うことが出来る。一方、コンパウンドとして、顔料として有機顔料を用いて得た固形着色コンパウンドを用いる場合やカーボンブラック等の無機顔料を用いた固形着色コンパウンドを用いる場合には、〈2〉の懸濁工程と〈3〉の再沈殿工程との間に、前者コンパウンドから得る懸濁液をより分散安定性を増すためや、後者コンパウンドから得る顔料懸濁液中の顔料微粒子をより小粒径化するために、高せん断力下に当該懸濁液をさらして分散する工程を設けることが好ましい。
〈3〉顔料懸濁液中に溶解している皮膜形成性樹脂成分を,顔料表面に沈着させる。(再沈殿工程)
こうすることにより、顔料懸濁液中に溶解している皮膜形成性樹脂成分を,顔料表面に沈着させてマイクロカプセルを得る。
本工程は,前記懸濁工程で得られた顔料懸濁液中の顔料表面に,当該懸濁液中に存在する溶解樹脂成分を沈着させる工程である。
本工程の「再沈殿」とは,顔料,或いは当該溶解樹脂が顔料表面に吸着した半カプセル状態の粒子を懸濁液の液媒体から,分離沈降させることを意味するものではない。従って,この工程で得られるものは,固形成分と液体成分とが明らかに分離した単なる混合物ではなく,当該溶解樹脂や分散樹脂が顔料表面に被覆したマイクロカプセルが懸濁液の液媒体に安定的に分散した着色微粒子(着色マイクロカプセル)水性分散液である。
すなわち、顔料懸濁液中のフリーの顔料表面及び/又は自己水分散性樹脂で表面が被覆された顔料微粒子表面への溶解樹脂の沈着は,フリーの顔料及び/又は自己水分散性樹脂で表面が被覆された顔料微粒子が、水性媒体中に分散された状態で行われる。
この懸濁工程の顔料懸濁液中のフリーの顔料表面及び/又は自己水分散性樹脂で表面が被覆された顔料微粒子表面への溶解樹脂の沈着は,溶解樹脂成分の水性媒体への樹脂成分の溶解度を低下させることにより行うことが出来る。
溶解樹脂成分の水性媒体への樹脂成分の溶解度を低下させる方法としては、樹脂成分を溶解している水性媒体に、当該樹脂に対する貧溶媒を必要量加えるか、当該水性媒体中に含まれる樹脂成分を溶解する化学成分を系内から必要量排除する方法が一般的である。こうすることにより、溶解している樹脂は、系内に分散している、フリーの顔料微粒子の表面及び/又は自己水分散性樹脂で表面が被覆された顔料微粒子の表面へ優先的に接近していき、当該各表面に堆積しそこに押しつけられるかの様に沈着する。
この懸濁工程の顔料懸濁液中の顔料表面への溶解樹脂の沈着は,例えば,少なくとも一部,当該皮膜形成性樹脂が溶解している顔料懸濁液に,当該樹脂に対して貧溶媒として機能する水性媒体を加えて行うか,及び/又は,顔料懸濁液から有機溶剤を除去して行うことによって容易に行うことが出来る。
着色マイクロカプセル表面への樹脂の沈着は,例えば,少なくとも一部,当該皮膜形成性樹脂が溶解及び/又は分散している顔料懸濁液に,当該樹脂に対して貧溶媒として機能する水性媒体を加えて行うか,及び/又は,顔料懸濁液から有機溶剤を除去して行うことによって容易に行うことが出来る。
しかしながら,顔料懸濁液に,当該樹脂に対して貧溶媒として機能する水性媒体を加えて行う方法が,凝集物も少なく好ましい。再沈殿は懸濁液を緩く攪拌しながら水性媒体を滴下することによって,凝集物の発生を防止しながら顔料表面に樹脂を確実に沈着(再沈殿)させることが可能となる。
上記沈着を行うに当たっては,上記少なくとも一部,当該皮膜形成性樹脂が溶解及び/又は分散している顔料懸濁液に,当該樹脂に対して貧溶媒として機能する水性媒体を加えた後に,顔料懸濁液から有機溶剤を除去して行う様にするのが好ましい。
また得られた分散液の乾燥を防止するために,乾燥防止剤を水性媒体中に前もって存在させておくか,再沈殿後に添加することが好ましい。
最終的に得られる着色微粒子分散液をジェットインクとして用いる場合には、ジェットインクとして、目詰まりがなく安定した噴射を実現する様にする。
こうして得られた分散液をインクジェット用記録液として用いる場合には、平均粒子径をサブミクロンオーダー(1μm未満)とする。
本発明の着色微粒子水分散液製造方法によって得られる、サブミクロンオーダーの着色微粒子水分散液は、インクジェット記録用水性インクとして用いると、分散安定性、噴射特性に優れたインクジェット適性を示す。後に詳述するが、本発明の着色微粒子水分散液製造方法をこれに適用する場合、(2)の懸濁工程における懸濁液が乾燥防止剤を含有させることにより、極めて分散安定性に優れた懸濁液や水分散液さらには、水性インクが得られる。
この様にして,上記〈1〉混練工程〈2〉懸濁工程〈3〉再沈殿工程によって,所望の粒子径の着色微粒子が得られるが,通常その平均粒子径範囲は,0.01以上〜1μm未満である。
〈4〉再沈殿工程で得られたマイクロカプセル分散液からの低沸点有機溶剤の除去及び/または濃縮(脱溶剤工程)
再沈殿工程で得られた着色微粒子水分散液はそのまま用いることもできるが,共存している有機溶剤の影響で着色微粒子が膨潤状態にある場合が多いため,保存安定性をより向上させるためや,より火災や公害に対する安全性を高めるために,脱溶剤を行うことが好ましい。
この様にして除去された有機溶剤は,例えば連続生産を目的とする場合には,焼却することなく,閉鎖系にてリサイクルして再利用することも出来る。
この〈1〉〜〈4〉の工程を経て得た,着色微粒子(着色マイクロカプセル)水性分散液は,それの調製に用いた樹脂と顔料に由来する全成分が,専ら
「着色マイクロカプセル」のみからなる水性分散液となり,「フリーの顔料微粒子」,「皮膜形成性樹脂のみの粒子」及び「溶解した皮膜形成性樹脂」の三者を実質的に含まないものである。しかしながら,溶解した皮膜形成性樹脂成分をゼロとするのは極めて困難なため,通常その含有率は分散液構成全成分中0.01質量%以上となるのが一般的である。
こうして得られた分散液は,通常,顔料が皮膜形成性樹脂で被覆された着色マイクロカプセルと,分散媒のみから実質的になる。分散液中の着色マイクロカプセルの含有率は,それと分散媒の合計に対して,通常,10〜40質量%とする。勿論,これまでの工程で各種添加剤を含めた場合には,分散液中にはそれも含まれる。
本発明では、顔料微粒子(a)がカルボキシル基を有する皮膜形成性樹脂(b)で被覆されて成る着色微粒子(d)が水性媒体中に分散して成るジェットインクにおいて、(1)前記着色微粒子(d)がその表面に第4級化されたカルボキシル基を有し、且つ、0.5μm以下の体積平均粒径を有すること、(2)「乾燥インクの再分散液中の着色微粒子(d)の体積平均粒径の増加率」が50パーセント以下であること、を特徴とするジェットインクを得るが、この様な特性のインクを容易に得ることが出来る点で、次の製造方法を採用するのが好適である。
(1)(i)顔料とカルボキシル基を有する皮膜形成性樹脂(b)とを混練して成る着色コンパウンド(V)と、(ii)水と、皮膜形成性樹脂(b)を溶解し得る有機溶媒(e)とから成る水性媒体(W)と、(iii)塩基性化合物(c)とを、均一に混合することによって、(2)顔料微粒子(a)がカルボキシル基を有する皮膜形成性樹脂(b)で被覆され、且つ、その被覆表面に第4級化されたカルボキシル基を有する着色微粒子(d)が、水性媒体(W)に分散して成る着色微粒子の分散液(X)を製造し、次いで、(3)この着色微粒子の分散液(X)に、皮膜形成性樹脂(b)の貧溶媒を加えることによって、着色微粒子の分散液(X)の水性媒体中に溶解した皮膜形成性樹脂(b)を、着色微粒子(d)の表面に析出させ、次いで、分散液(X)から有機溶媒(e)を除去する、ことを特徴とするジェットインク用着色微粒子の分散液の製造方法。
勿論、上記(3)の工程は、分散液(X)中に、第4級化されたカルボキシル基(即ち、塩構造)を形成して溶解した皮膜形成性樹脂が存在しない場合や、分散液(X)に分散している着色微粒子(d)の分散安定性が良好な場合には、敢えて皮膜形成性樹脂(b)の貧溶媒を加える必要はなく、有機溶媒(e)を除去してやるだけでもよい。
〈5〉インク工程
前記〈4〉工程によって得られる,水以外の液媒体を全く含まないか,或いはほとんど含まない,サブミクロンオーダーの着色微粒子水性分散液は,そのままでも基本的にインクジェット記録用水性インクとして用いることが出来る。
得られた分散液は,更に,分散安定性,噴射特性を考慮してインクの調整を行うことが好ましい。
通常は後述する様に、例えば所望の粒径のフィルターに通過させ濾過して、インクジェット記録装置のノズル径よりも小さい粒子のみが液媒体に分散したインクジェット記録用水性インクとして使用に供される。
インクの調整は,例えば,前記乾燥防止剤や浸透性有機溶剤の添加,濃度調整・粘度調整の他,pH調整剤,分散・消泡・紙への浸透のための界面活性剤,防腐剤,キレート剤,可塑剤,酸化防止剤,紫外線吸収剤等を必要に応じて添加することができる。但し,各種添加剤は,着色マイクロカプセルの表面に存在する皮膜形成性樹脂を溶解しないものを選択して専らその様な性質のもののみを用いるか,同樹脂を溶解しうるものであっても実質溶解しない様な濃度にその使用量を極力最小限に止める等の工夫が必要である。
また,被記録媒体がガラス・金属・フィルムの様な不浸透性以外のもの(浸透性被記録媒体)の場合には,噴射安定性に影響を及ぼさない程度に,皮膜形成性樹脂とは異なる,他の水溶性樹脂も添加することもできる。
また,粗大粒子によるノズル目詰まり等を回避するために,通常は,〈4〉の脱溶剤工程後に遠心分離やフィルターろ過により粗大粒子を除去するか,〈5〉のインク工程でインク調整後に所望の粒径のフィルターで濾過する。
本発明の着色マイクロカプセル分散型水性ジェットインクは,例えばピエゾ方式やオンデマンド方式等の公知慣用のインクジェット記録方式のプリンターに採用することが出来る。また,同インクは,公知慣用の被記録材料,例えば紙,樹脂コート紙,インクジェット記録用専用紙,ガラス,金属,フィルム,陶磁器等に画像を形成する際に使用することが出来る。
本発明の着色マイクロカプセル分散型水性ジェットインクは,透明性,発色性,分散安定性に優れており,インクジェット記録以外に,他のインク一般,塗料,カラーフィルターへの応用が可能である。
本発明は次の実施形態を含む。
1. 下記工程にて得られた、インクジェット記録装置のノズル径よりも小さい着色微粒子水分散液からなる、ノズルの目詰まりの無い安定した噴射を実現し、保存時の分散安定性、印刷物の耐水性の良好な、着色微粒子分散型水性ジェットインク。
[1]酸価を有する皮膜形成性樹脂に少なくとも顔料を分散して固形着色コンパウンドを得る樹脂着色工程。
[2]少なくとも,水,皮膜形成性樹脂を溶解する有機溶媒,水溶性樹脂成分が最小限となる量の塩基,前記樹脂着色工程で得られた固形着色コンパウンドを混合し,皮膜形成樹脂が自己水分散しかつ少なくとも樹脂の一部が溶解するように調整した顔料懸濁液を得る懸濁工程。
[3]樹脂に対して貧溶媒として機能する水性媒体を加えた後、樹脂を溶解する有機溶媒を前記懸濁液から脱溶媒して、前記懸濁工程で得られた顔料懸濁液中の顔料表面に,溶解樹脂成分を沈着させ、水溶性樹脂成分が最小限となる様にする再沈殿工程。
2. 顔料を自己水分散性の皮膜形成性樹脂で被覆した着色マイクロカプセルを水性媒体中に含むインクであって,インク中に溶解する皮膜形成性樹脂成分が、0.01〜2質量%であることを特徴とする着色マイクロカプセル分散型水性ジェットインク。
3. 顔料を自己水分散性の皮膜形成性樹脂で被覆した着色マイクロカプセルを水性媒体中に含むインクであって,インク中に溶解する皮膜形成性樹脂成分が、0.1〜1質量%であることを特徴とする着色マイクロカプセル分散型水性ジェットインク。
4. 顔料を自己水分散性の皮膜形成性樹脂で被覆した着色マイクロカプセルを水性媒体中に含むインクであって,インク中に溶解する皮膜形成性樹脂成分の絶対含有率が、0.01〜2質量%であることを特徴とする着色マイクロカプセル分散型水性ジェットインク。
5. 顔料を自己水分散性の皮膜形成性樹脂で被覆した着色マイクロカプセルを水性媒体中に含むインクであって,インク中に溶解する皮膜形成性樹脂成分の絶対含有率が、0.1〜1質量%であることを特徴とする着色マイクロカプセル分散型水性ジェットインク。
6. pHが7.5〜9.0である上記1、2、3、4及び5記載のインク。
7. 自己水分散性の皮膜形成性樹脂が、重量平均分子量が3万〜10万である上記1、2、3、4、5及び6記載のインク。
8. 着色マイクロカプセルが,下記工程を順に行って得たものである,上記2、3、4、5、6及び7記載のインク。
[1]酸価を有する皮膜形成性樹脂に少なくとも顔料を分散して固形着色コンパウンドを得る樹脂着色工程。
[2]少なくとも,水,皮膜形成性樹脂を溶解する有機溶媒,塩基,前記樹脂着色工程で得られた固形着色コンパウンドを混合し,皮膜形成樹脂が自己水分散しかつ少なくとも樹脂の一部が溶解するように調整した顔料懸濁液を得る懸濁工程。
[3]前記懸濁工程で得られた顔料懸濁液中の顔料表面に,溶解樹脂成分を沈着させる再沈殿工程。
9. 着色マイクロカプセルが,下記工程を順に行って得たものである,上記2、3、4、5、6及び7記載のインク。
[1]酸価を有する皮膜形成性樹脂に少なくとも顔料を分散して固形着色コンパウンドを得る樹脂着色工程。
[2]少なくとも,水,皮膜形成性樹脂を溶解する有機溶媒,塩基,前記樹脂着色工程で得られた固形着色コンパウンドを混合し,皮膜形成樹脂が自己水分散しかつ少なくとも樹脂の一部が溶解するように調整した顔料懸濁液を得る懸濁工程。
[3]前記懸濁工程で得られた顔料懸濁液中の顔料表面に,溶解樹脂成分の水性媒体への樹脂成分の溶解度を低下させることにより,溶解樹脂成分を沈着させる再沈殿工程。
10. 着色マイクロカプセルが,下記工程を順に行って得たものである,上記2、3、4、5、6及び7記載のインク。
〈1〉酸価を有する皮膜形成性樹脂に少なくとも顔料を分散して固形着色コンパウンドを得る樹脂着色工程。
〈2〉少なくとも,水,皮膜形成性樹脂を溶解する有機溶媒,塩基,前記樹脂着色工程で得られた固形着色コンパウンドを混合し,皮膜形成樹脂が自己水分散しかつ少なくとも樹脂の一部が溶解するように調整した顔料懸濁液を得る懸濁工程。
〈3〉前記懸濁工程で得られた顔料懸濁液中の顔料表面に,溶解樹脂に対して貧溶媒として機能する水性媒体を加え,有機溶剤を当該懸濁液から除去して,前記懸濁工程で得られた顔料懸濁液中の顔料表面に,溶解樹脂成分を沈着させる再沈殿工程。
11. 着色マイクロカプセルが,下記工程を順に行って得たものである,上記2、3、4、5、6及び7記載のインク。
〈1〉酸価を有する皮膜形成性樹脂に少なくとも顔料を分散して固形着色コンパウンドを得る樹脂着色工程。
〈2〉少なくとも,水,皮膜形成性樹脂を溶解する有機溶媒,塩基,前記樹脂着色工程で得られた固形着色コンパウンドを混合し,皮膜形成樹脂が自己水分散しかつ少なくとも樹脂の一部が溶解するように調整した顔料懸濁液を得る懸濁工程。
〈3〉前記懸濁工程で得られた顔料懸濁液中の顔料表面に,溶解樹脂に対して貧溶媒として機能する水性媒体を加えて被膜形成させた後,樹脂を溶解する有機溶媒を当該懸濁液から脱溶媒して,前記懸濁工程で得られた顔料懸濁液中の顔料表面に,溶解樹脂成分の水性媒体への樹脂成分の溶解度を低下させることにより溶解樹脂成分を沈着させる再沈殿工程。
12. 顔料と酸価を有する皮膜形成性樹脂とが、同一質量か、顔料質量が当該樹脂の質量の±15%の質量となる様に両者を用いる上記1、2、3、4、5、6、7、8、9、10及び11記載のインク。
13. 自己水分散性の皮膜形成性樹脂が、酸価50〜180mg・KOH/gの酸基を有する樹脂の、酸基の60モル%相当量以下の中和率で中和したものである上記2、3、4、5、6及び7記載のインク。
14. 酸価を有する皮膜形成性樹脂が、酸価50〜180mg・KOH/gの酸基を有する樹脂であり、塩基で、酸基の60モル%相当量以下の中和率となる様に中和する上記1、8、9、10及び11記載のインク。
15. 顔料微粒子(a)がカルボキシル基を有する皮膜形成性樹脂(b)で被覆されて成る着色微粒子(d)が水性媒体中に分散して成るジェットインクにおいて、(1)前記着色微粒子(d)がその表面に第4級化されたカルボキシル基を有し、且つ、0.5μm以下の体積平均粒径を有すること、(2)「乾燥インクの再分散液中の着色微粒子(d)の体積平均粒径の増加率」が50パーセント以下であること、を特徴とするジェットインク。
16. 水性媒体中に溶解した皮膜形成性樹脂(b)の量がインク重量に対して2%以下である上記15記載のジェットインク。
17. 「乾燥インクの再分散液中の着色微粒子(d)の粒子径の度数分布」における標準偏差値が0.15以下である、上記15及び16記載のジェットインク。
18. カルボキシル基を有する皮膜形成性樹脂(b)が50〜180の酸価を有し、その一部または全部が有機アミン化合物で第4級アンモニウム塩とされている、上記15、16、17記載のジェットインク。
19. (1)(i)顔料とカルボキシル基を有する皮膜形成性樹脂(b)とを混練して成る着色コンパウンド(V)と、(ii)水と、皮膜形成性樹脂(b)を溶解し得る有機溶媒(e)とから成る水性媒体(W)と、(iii)塩基性化合物(c)とを、均一に混合することによって、(2)顔料微粒子(a)がカルボキシル基を有する皮膜形成性樹脂(b)で被覆され、且つ、その被覆表面に第4級化されたカルボキシル基を有する着色微粒子(d)が、水性媒体(W)に分散して成る着色微粒子の分散液(X)を製造し、次いで、(3)分散液(X)から有機溶媒(e)を除去する、ことを特徴とするジェットインク用着色微粒子の分散液の製造方法。
20. 着色微粒子の分散液(X)に、皮膜形成性樹脂(b)の貧溶媒を加えることによって、着色微粒子の分散液(X)の水性媒体中に溶解した皮膜形成性樹脂(b)を、着色微粒子(d)の表面に析出させ、次いで、分散液(X)から有機溶媒(e)を除去する、上記19記載の製造方法。
21. モノアルコールのプロピレンオキシド1モル単独付加体を用いる上記1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19及び20記載のインク。
22. 炭素原子数1〜6のモノアルコールのプロピレンオキシド10〜40モル単独付加体を用いる上記1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20及び21記載のインク。
23. 炭素原子数4〜8のモノアルコールのエチレンオキシド1モル単独付加体を含有してなる上記1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21及び22記載のインク。
24. モノアルコールのプロピレンオキシド1モル単独付加体,炭素原子数1〜6のモノアルコールのプロピレンオキシド10〜40モル単独付加重合体,炭素原子数4〜8のモノアルコールのエチレンオキシド1モル単独付加体からなる群から選ばれる少なくとも2つ以上を含有してなる上記1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22及び23記載のインク。
25. 顔料が,カーボンブラック,フタロシアニン顔料,ハロゲン化フタロシアン顔料,キナクリドン顔料,ベンズイミダゾロン顔料,ペリノン顔料,イソインドリノン顔料のいずれか1種である上記1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23及び24記載のインク。
26. 0.5μmを越える粗大粒子を分散液から除去する工程を含む、19、20、21、22、23、24及び25記載のジェットインクの製造方法。
本発明の好適な実施の形態を,インクジェット記録用インクに適用した場合を例にして説明すると,以下の通りである。
(1)カルボキシル基に基づく酸価50〜180を有する,重量平均分子量1〜10万の皮膜形成性スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体樹脂に,顔料を二本ロールを用いて分散して,固形着色コンパウンドを得る。
(2)水,前記樹脂を溶解する低沸点の有機溶剤にメチルエチルケトンを主として,前記水とメチルエチルケトンに対して助溶剤として機能する低沸点の水溶性有機溶剤としてイソプロピルアルコールを併用して,塩基として前記皮膜形成性樹脂の酸基の60モル%相当量以下の中和率となる,前記皮膜形成性樹脂を自己水分散性とするに足る量のアルコールアミン,乾燥防止剤としてグリセリンを各々含む,水を主液媒体とする溶液を調製し,それに,前記(1)の固形着色コンパウンドのチップを混合し,攪拌によって顔料懸濁液を得る。より好適には懸濁液を,高せん断力を与えることが出来,より充分な懸濁状態が得られる分散機であるナノマイザー(商標)を用いて,再凝集が無い様に,さらに微粒子化を行う。
(3)顔料懸濁液を攪拌しながら,グリセリンを含む水溶液を滴下し,顔料と皮膜形成性樹脂に由来する成分が,実質的に平均粒子径0.01以上1μm未満の着色微粒子(着色マイクロカプセル)のみからなる水性分散液を得る。この分散液中に溶解している皮膜形成性樹脂成分の含有率を0.1〜1質量%とする。
(4)得られた着色微粒子水性分散液から,メチルエチルケトンとイソプロピルアルコールを留去し,インクベースとする。
(5)インクベースに,インク調整用薬剤を加え,濃度・物性を調整した後,ろ過を行い,当該着色マイクロカプセルが顔料換算で0.5〜20質量%,pH7.5〜11のインクジェット記録用水性インクとする。このインク中に溶解している皮膜形成性樹脂成分の含有率も0.1〜1質量%とする。