JP2007146100A - 水分散体及び該水分散体を含む水性塗料 - Google Patents

水分散体及び該水分散体を含む水性塗料 Download PDF

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Abstract

【課題】相溶性、安定性に優れた水分散体を見出し、常温乾燥にて、光沢、防食性及び耐候性に優れた塗膜性能が得られる水性塗料を提供する。
【解決手段】エポキシ当量2,000〜50,000のエポキシ樹脂(a)とラジカル重合性不飽和単量体(b)との合計が100質量部であり、エポキシ樹脂(a)50〜90質量部の存在下に、ラジカル重合性不飽和単量体(b)10〜50質量部をラジカル重合反応させて得られた酸価5〜150mgKOH/gのアクリル変性エポキシ樹脂(A1)を水性媒体に分散してなる平均粒子径が0.01〜0.5μmの水分散体。
【選択図】なし

Description

本発明は、水分散体及び常温で乾燥硬化しうる水性塗料に関し、詳しくは、相溶性、安定性に優れた水分散体及び該水分散体を含有した水性塗料に関する。
近年、環境上、作業環境の安全性等の問題から、有機溶剤系塗料から水性塗料への移行が大きな流れとなっている。
一方、ブルドーザー、油圧ショベル、ホイールローダ等の建設機械は、例えば、(1).熱容量が大きく乾燥炉の熱が十分に伝達しない;(2).プラスチックやゴムが組み込まれていて加熱することができない;(3).塗装後の塗膜を乾燥するに際しても、重量のある建設機械は自走によって乾燥炉へ投入されることがある為、燃料に引火の危険があることから高い温度にて塗膜を乾燥できない、等の課題があった。従って、常温にて乾燥が可能な水性塗料が求められている。
従来、常温乾燥型の電着塗装用水性塗料に関し、脂肪酸変性不飽和モノマーを含むアクリル樹脂を用いたアクリル変性エポキシ樹脂の水溶化物もしくは水分散化物の発明が開示されている(特許文献1参照)。
他に、平均官能基数が2.1個以上のグリシジル基を含むエポキシ樹脂とカルボキシル基含有アクリル樹脂とを反応させて得られるアクリル変性エポキシ樹脂を水性媒体中に分散してなる水性被覆用樹脂組成物の発明が開示されている(特許文献2参照)。
しかしながら、上記従来開示されている各発明に記載された水分散体のいずれも安定性に優れ、かつ塗膜が耐候性と防食性を両立していないという問題がある。
そこで、塗膜の耐候性と防食性の両立を目的として、上記従来開示されている各発明に記載された水分散体とアクリル樹脂分散体との混合を試みたが、相溶性が悪く、得られた塗膜の光沢や塗料安定性が不十分であった。また、エポキシ当量2,000未満のエポキシ樹脂の存在下で、アクリル系単量体を反応させて得られた樹脂は、水分散化が困難であり、塗料安定性を確保できなかった。このような背景から、その他の水分散体との相溶性に優れて塗料安定性を確保でき、かつ得られた塗膜においては、光沢、防食性及び耐候性において満足する水性塗料が求められていた。
特開昭62−241976号公報 特開平5−271610号公報
本発明の目的は、相溶性、塗料安定性に優れた水分散体を見出し、常温乾燥にて、光沢、防食性及び耐候性に優れた塗膜を得る水性塗料を提供することである。
本発明者らは鋭意検討した結果、下記に示す水性塗料によって上記課題を解決できることを見出した。
(1).エポキシ当量2,000〜50,000のエポキシ樹脂(a)とラジカル重合性不飽和単量体(b)との合計が100質量部であり、エポキシ樹脂(a)存在下に、ラジカル重合性不飽和単量体(b)をラジカル重合反応させて得られた酸価10〜150mgKOH/gのアクリル変性エポキシ樹脂(A1)を水性媒体に分散してなる平均粒子径が0.01〜0.5μmの水分散体、及び該水分散体を含む水性塗料
(2).エポキシ当量2,000〜50,000のエポキシ樹脂(a)とラジカル重合性不飽和単量体(b)との合計が100質量部に対して、エポキシ樹脂(a)とラジカル重合性不飽和単量体(b)の範囲であり、かつラジカル重合性不飽和単量体(b)がラジカル重合性不飽和単量体(b1)とラジカル重合性不飽和単量体(b2)からなり、第1段目としてエポキシ樹脂(a)の存在下で下記特徴のラジカル重合性不飽和単量体(b1)をラジカル重合反応させて反応物を得た後、該反応物中で、第2段目として特定のラジカル重合性不飽和単量体(b2)をラジカル重合反応させて得られた酸価10〜150mgKOH/gのアクリル変性エポキシ樹脂(A2)を水性媒体に分散してなる平均粒子径が0.01〜0.3μmの水分散体、及び該水分散体を含む水性塗料。
本発明の水分散体を含有してなる水性塗料は、安定性、特に、夏場の厳しい条件下での安定性にも優れ、また、その他の水分散体(例えば、アクリル樹脂の水溶化樹脂又は水分散体、ウレタン樹脂の水溶化樹脂又は水分散体、ポリオレフィン樹脂の水溶化樹脂又は水分散体、ポリエステル樹脂の水溶化樹脂又は水分散体)との相溶性に優れ、かつ常温の乾燥にて、光沢、耐候性及び防食性に優れた塗膜が得られる。
さらに、1.水性塗料であることから、揮発性有機化合物(VOC)対策にも有利である;2.常温にて硬化塗膜が得られることから、熱容量が大きい部材の塗装やプラスチックやゴムが組み込まれている部材の塗装に有利である;3.塗装後に、重量のある建設機械を自走によって乾燥炉へ投入しての塗膜乾燥が可能となる、等の効果が得られた。
本発明は、(1).エポキシ当量2,000〜50,000のエポキシ樹脂(a)とラジカル重合性不飽和単量体(b)との合計が100質量部であり、エポキシ樹脂(a)存在下に、ラジカル重合性不飽和単量体(b)をラジカル重合反応させて得られた酸価10〜150mgKOH/gのアクリル変性エポキシ樹脂(A1)を水性媒体に分散してなる平均粒子径が0.01〜0.5μmの水分散体及び該水分散体を含む水性塗料、
さらに、(2).エポキシ当量2,000〜50,000のエポキシ樹脂(a)とラジカル重合性不飽和単量体(b)との合計が100質量部に対して、エポキシ樹脂(a)とラジカル重合性不飽和単量体(b)の範囲であり、かつラジカル重合性不飽和単量体(b)がラジカル重合性不飽和単量体(b1)とラジカル重合性不飽和単量体(b2)からなり、第1段目としてエポキシ樹脂(a)の存在下で下記特徴のラジカル重合性不飽和単量体(b1)をラジカル重合反応させて反応物を得た後、該反応物中で、第2段目として特定のラジカル重合性不飽和単量体(b2)をラジカル重合反応させて得られた酸価10〜150mgKOH/gのアクリル変性エポキシ樹脂(A2)を水性媒体に分散してなる平均粒子径が0.01〜0.3μmの水分散体、及び該水分散体を含む水性塗料に関するものである。以下、詳細に説明する。
[水分散体]
エポキシ樹脂(a):
アクリル変性エポキシ樹脂(A1)又はアクリル変性エポキシ樹脂(A2)の製造に用いるエポキシ樹脂(a)は、エポキシ当量が2,000〜50,000、好ましくは3,000〜30,000、さらに好ましくは3,500〜25,000の範囲内が適している。また、数平均分子量(注1)は、360〜6,000、好ましくは960〜4,000、さらに好ましくは1,000〜3,000の範囲であることがよい。
(注1)数平均分子量:JIS K 0124−83に準じて行ない、分離カラムにTSK GEL4000HXL+G3000HXL+G2500HXL+G2000HXL(東ソー社製)を用いて40℃で流速1.0ml/分、溶離液にGPC用テトラヒドロフランを用いて、RI屈折計で得られたクロマトグラフとポリスチレンの検量線から計算により求めた。
エポキシ樹脂(a)のエポキシ当量が2,000より小さいと、得られたアクリル変性エポキシ樹脂は、水分散時に増粘して水分散化が困難である。また、エポキシ樹脂(a)の数平均分子量が360より小さくなると、造膜性が低下する為に防食性が低下し、エポキシ樹脂(a)の数平均分子量が6,000を越えると、他の水分散体との相溶性が低下する。エポキシ樹脂(a)としては、具体的に、ポリフェノール化合物をエピハロヒドリン、例えば、エピクロルヒドリンと反応させることによって得ることができるエポキシ樹脂を使用できる。
該エポキシ樹脂の形成のために用いるポリフェノール化合物としては、例えば、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2,2−プロパン(通称:ビスフェノールA)、4,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン(通称:ビスフェノールF)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1−エタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1−イソブタン、ビス(4−ヒドロキシ−tert−ブチル−フェニル)−2,2−プロパン、ビス(2−ヒドロキシナフチル)メタン、テトラ(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,2,2−エタン、4,4−ジヒドロキシジフェニルスルホン、フェノールノボラック、クレゾールノボラック等を挙げることができる。
さらに具体的には、エピハロヒドリン1モルに対してポリフェノール化合物0.3〜1.0モル、好ましくは0.4〜0.9モルを配合した混合物を、アルカリ金属系触媒又はアルカリ土類金属系触媒の存在下で反応させる。
また、上記ポリフェノール化合物とエピハロヒドリンとを上記触媒の存在下で反応させて得られる1分子中に2個のエポキシ基を有する低分子量縮合物を出発原料として、該低分子量縮合物1モルに対してポリフェノール化合物を0.5〜2.0モル、好ましくは0.8〜1.7モル配合した混合物を縮合触媒の存在下に反応を続けることによって得られるものが包含される。
上記アルカリ(土類)金属系触媒としては、たとえば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化バリウム、水酸化カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム等が挙げられ、また、上記縮合触媒としては、上記のアルカリ(土類)金属系触媒の他に、n−ブチルアミン、トリn−ブチルアミン、トリエタノールアミン、ピリジン、炭酸カルシウム、塩化カルシウム、第4級アンモニウム塩等が使用できる。
他に、エポキシ樹脂(a)として、具体的には、上記のポリフェノール化合物と下記式(1)で表されるビスフェノールジグリシジルエーテル系化合物とを反応して得られたエポキシ樹脂を使用することもできる。
Figure 2007146100
他に、エポキシ樹脂(a)として、具体的には、平均官能基数が2個以下のグリシジル基を含むエポキシ樹脂とカルボキシル基を有する化合物を反応させて得られたエポキシ樹脂(a1)を使用することもできる。
エポキシ樹脂(a1)としては、エポキシ当量が2,000〜50,000の範囲、特に3,000〜30,000の範囲のグリシジル基を有するものであって、数平均分子量が360〜6,000、好ましくは900〜4,000、さらに好ましくは 1,000〜3,000の範囲が適している。
エポキシ樹脂(a1)を得るための、上記カルボキシル基を有する化合物としては、例えば、安息香酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、12−ヒドロキシステアリル酸、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、アセトアミド変性脂肪酸、等の一塩基酸;テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸等の芳香族ジカルボン酸;アジピン酸、セバシン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、ダイマー酸等の脂肪族ジカルボン酸;が挙げられる。この中でも、低分子量のエポキシ樹脂(a1)を得るためには、一塩基酸が好ましい。
ラジカル重合性不飽和単量体(b):
アクリル変性エポキシ樹脂(A1)又はアクリル変性エポキシ樹脂(A2)の製造に用いるラジカル重合性不飽和単量体(b)としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、2−カルボキシエチル(メタ)アクリレート、2−カルボキシプロピル(メタ)アクリレート、5−カルボキシペンチル(メタ)アクリレートなどのカルボキシル基含有重合性単量体;
2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のアクリル酸又はメタクリル酸のC〜Cのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコ−ルモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の水酸基含有ラジカル重合性不飽和単量体;
また、これら水酸基含有ラジカル重合性不飽和単量体とβ−プロピオラクトン、ジメチルプロピオラクトン、ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、γ−カプロラクトン、γ−カプリロラクトン、γ−ラウリロラクトン、ε−カプロラクトン、δ−カプロラクトン等のラクトン類化合物との反応物等;
プラクセルFM−1、プラクセルFM−2、プラクセルFM−3、プラクセルFA−1、プラクセルFA−2、プラクセルFA−3(以上、商品名、ダイセル化学社製、カプロラクトン変性(メタ)アクリル酸ヒドロキシエステル類)等;
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸のC〜C18のアルキル又はシクロアルキルエステル類等;
スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−クロルスチレン、ビニルピリジン等のビニル芳香族化合物;
N−(2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド、N−(3−ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド、N−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N−エチル−N−(2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N−メチル−N−(2−ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド、N−メチル−N−(3−ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド、N−エチル−N−(2−ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド、N−エチル−N−(3−ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド、N,N−ジ−(2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N,N−ジ−(2−ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド等の窒素含有ラジカル重合性不飽和単量体;
ビニルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルジメチルメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシランビニルジメチルエトキシシラン、ビニルトリプロポキシシラン、ビニルメチルジプロポキシシラン、ビニルジメチルプロポキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルジメチルメトキシシラン等のアルコキシシリル基含有ラジカル重合性不飽和単量体;
ジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、グリセロールアリロキシジ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリス(ヒドロキシメチル)エタンジ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリス(ヒドロキシメチル)エタントリ(メタ)アクリレート等の1分子中に2個以上のラジカル重合性不飽和結合を有する単量体; 脂肪酸変性アクリル系単量体、を挙げることができる。
上記脂肪酸変性アクリル系単量体は、グリシジル基含有アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステル、例えば、グリシジルメタクリレートと不飽和脂肪酸とを反応させ、酸基によりエポキシ開環させることによって得ることができる。
該不飽和脂肪酸としては、相互に共役関係にない二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する脂肪族モノカルボン酸が包含され、特に、乾性油脂肪酸及び半乾性油脂肪酸が好適である。ここで、乾性油脂肪酸は、一般に、ヨウ素価が130を越える不飽和脂肪酸をいい、半乾性油脂肪酸はヨウ素価が100〜130の不飽和脂肪酸をいう。そのような不飽和脂肪酸としては、例えば、サフラワー油脂肪酸、アマニ油脂肪酸、ダイズ油脂肪酸、ゴマ油脂肪酸など、ケシ油脂肪酸、エノ油脂肪酸、麻実油脂肪酸、ブドウ核油脂肪酸、トウモロコシ油脂肪酸、トール油脂肪酸、ヒマワリ油脂肪酸、綿実油脂肪酸、クルミ油脂肪酸、ゴム種油脂肪酸等が挙げられ、これら脂肪酸はそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。上記列挙したる各種単量体は、単独もしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
ラジカル重合性不飽和単量体(b)における、カルボキシル基含有ラジカル重合性不飽和単量体の配合割合としては、ラジカル重合性不飽和単量体(b)の固形分合計に対して、カルボキシル基含有ラジカル重合性不飽和単量体が2〜70質量%、好ましくは5〜60質量%、さらに好ましくは8〜50質量%が、十分な水分散性と防食性の為に好ましい。
[アクリル変性エポキシ樹脂(A1)の製造]
アクリル変性エポキシ樹脂(A1)は、エポキシ当量2,000〜50,000のエポキシ樹脂(a)とラジカル重合性不飽和単量体(b)との合計を100質量部としたとき、エポキシ樹脂(a)50〜90質量部、好ましくは60〜85質量部の存在下に、ラジカル重合性不飽和単量体(b)10〜50質量部、好ましくは15〜40質量部を、ラジカル重合反応させて製造することができる。その際の反応温度は通常約60〜約200℃、好ましくは約70〜約160℃の範囲であり、そして反応時間は通常約10時間以下、好ましくは約0.5〜約6時間である。
上記の反応においては、適宜、重合開始剤を添加することが好ましい。このような重合開始剤としては、例えば、過硫酸カリウムまたはアンモニウム、過酸化水素、過炭酸塩のような無機のパーオキサイド化合物、アシルパーオキサイド(例えば、ベンゾイルパーオキサイド)、アルキルヒドロパーオキサイド(例えば、第3級ブチルヒドロパーオキサイド、p−メンタンヒドロパーオキサイド)、ジアルキルパーオキサイド(例えば、ジ−第3級ブチルパーオキサイド)、パーカーボネート(例えば、ジ−イソプロピルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート)のような有機パーオキサイド化合物、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系化合物が用いられる。これら重合触媒は2種以上併用してもよい。
重合開始剤の配合量としては、ラジカル重合性不飽和単量体(b)の固形分100質量部に基づいて0.01〜20質量部、好ましくは0.1〜15質量部、さらに好ましくは0.3〜10質量部の範囲が、樹脂及び該樹脂を用いてなる水分散体の安定性の面から好ましい。
このようにして得られたアクリル変性エポキシ樹脂(A1)の酸価は、10〜150mgKOH/g、好ましくは20〜150mgKOH/g、さらに好ましくは30〜120mgKOH/gの範囲内である。数平均分子量(注1参照)は、500〜100,000、好ましくは700〜50,000の範囲内がよい。酸価が10mgKOH/g未満の場合は、このアクリル樹脂により変性したエポキシ樹脂の水分散が困難であり、一方、150mgKOH/gを超える場合は、このアクリル樹脂により変性したエポキシ樹脂を用いた塗料を塗装してなる塗膜の耐食性が低下する。
[アクリル変性エポキシ樹脂(A2)の製造]
また、アクリル変性エポキシ樹脂(A2)は、アクリル変性エポキシ樹脂(A1)と同様のエポキシ樹脂(a)を用いることができる。さらにラジカル重合性不飽和単量体(b)の配合内容と製造を工夫する必要がある。ここでは、単量体(b)を単量体(b1)と(b2)に分け、エポキシ樹脂(a)との重合反応を2段階によって行う。
2段階で反応させることで、親水基をほどんど持たない疎水性のアクリル樹脂と疎水性のエポキシ樹脂とを1つの領域に併存できるので、親水部(極性の高いカルボキシル基含有アクリル樹脂)と疎水部(疎水性のアクリル樹脂・疎水性のエポキシ樹脂)との分極化が顕著となり、エマルションの分散性や立体性が向上できる。
まず、第1段目として、エポキシ樹脂(a)の存在下で、ラジカル重合性不飽和単量体(b1)を、反応温度が約60〜約200℃、好ましくは約70〜約160℃の範囲で、反応時間は通常約10時間以下、好ましくは約0.5〜約6時間反応させて反応生成物を得る。ここで、ラジカル重合性不飽和単量体(b1)とは、上述のビニル芳香族化合物とメチル(メタ)アクリレートから選択される少なくとも1種の化合物を10〜70質量%、好ましくは20〜68質量%、さらに好ましくは30〜66質量%、上述のカルボキシル基含有ラジカル重合性不飽和単量体を2質量%以下、好ましくは1質量%以下、さらに好ましくは0.5質量%以下で、かつその他のラジカル重合性不飽和単量体を28〜88質量%、好ましくは31〜79質量%、さらに好ましくは33.5〜69.5質量%の割合からなるものである(なお、各含有割合は、単量体(b2)の固形分合計中の値である)。
次いで、第2段目として、該反応生成物中に、ラジカル重合性不飽和単量体(b2)をラジカル重合反応させて製造することができる。その際の反応温度は約60〜約200℃、好ましくは約70〜約160℃の範囲、そして反応時間は約10時間以下、好ましくは約0.5〜約6時間である。ここで、ラジカル重合性不飽和単量体(b2)とは、上述のカルボキシル基含有ラジカル重合性不飽和単量体を15〜65質量%、好ましくは20〜60質量%、さらに好ましくは25〜50質量%、かつその他のラジカル重合性不飽和単量体を35〜85質量%、好ましくは40〜80質量%、さらに好ましくは50〜75質量%の割合からなるものである(なお、各含有割合は、単量体(b2)の固形分合計中の値である)。
また、エポキシ樹脂(a)とラジカル重合性不飽和単量体(b1)および(b2)との割合は、エポキシ樹脂(a)50〜90質量部、好ましくは60〜85質量部に対し、ラジカル重合性不飽和単量体(b1)および(b2)の合計が10〜50質量部、好ましくは15〜40質量部となるようにする。
さらに、ラジカル重合性不飽和単量体(b1)の合計量に対するラジカル重合性不飽和単量体(b2)の合計量の割合は、ラジカル重合性不飽和単量体(b1)/ラジカル重合性不飽和単量体(b2)=75/25(質量比)〜25/75(質量比)、好ましくは60/40〜40/60の範囲が好ましい。
なお、ラジカル重合性不飽和単量体(b1)とラジカル重合性不飽和単量体(b2)における各単量体は、アクリル変性エポキシ樹脂(A1)の製造に用いた単量体と同様の単量体を使用することができる。
ラジカル重合性不飽和単量体(b1)を構成するビニル芳香族化合物としてはスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエンが好ましく、その他のラジカル重合性不飽和単量体としては(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましい。
ラジカル重合性不飽和単量体(b2)を構成するカルボキシル基含有ラジカル重合性不飽和単量体としては(メタ)アクリル酸が好ましく、その他のラジカル重合性不飽和単量体としては(メタ)アクリル酸アルキルエステル;具体的にはブチルアクリレート、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル;具体的には2−ヒドロキシエチルメタクリレート、スチレン等が好ましい。
このようにして得られたアクリル変性エポキシ樹脂(A2)の酸価は、10〜150mgKOH/g、好ましくは20〜150mgKOH/g、さらに好ましくは30〜120mgKOH/gの範囲内であり、数平均分子量(注1参照)は、500〜100,000、好ましくは700〜50,000の範囲内がよい。酸価が10mgKOH未満の場合は、このアクリル樹脂により変性したエポキシ樹脂の水分散が困難であり、一方、150mgKOH/gを超える場合は、このアクリル樹脂により変性したエポキシ樹脂を用いた塗料を塗装してなる塗膜の耐食性が低下する。
[水分散体の調製]
上記のアクリル変性エポキシ樹脂(A1)又はアクリル変性エポキシ樹脂(A2)を水性媒体中にて、塩基性化合物で中和して水溶化ないし水分散化することにより、水分散体を調製することができる。
中和のための塩基性化合物は、アクリル変性エポキシ樹脂(A1)又はアクリル変性エポキシ樹脂(A2)のカルボキシル基に対し0.1〜1.1当量、好ましくは0.5〜1.1当量用いることが適当である。また、中和のための塩基性化合物としては、例えば、アンモニア、ジエチルアミン、エチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノエタノールアミン、モノプロパノールアミン、イソプロパノールアミン、エチルアミノエチルアミン、ヒドロキシエチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチレントリアミンなどの有機アミン;或いはカセイソーダ、カセイカリなどのアルカリ金属水酸化物等を用いることができる。この水分散体の調製は、アクリル変性エポキシ樹脂(A1)又はアクリル変性エポキシ樹脂(A2)に上記のような中和のための塩基性化合物を上記のような量で添加し、脱イオン水を加えてディスパーなどによって分散することによって容易に調製することができる。
本発明においては、アクリル変性エポキシ樹脂(A1)の水分散体は、平均粒子径(注2)が0.05〜0.5μm、好ましくは0.08〜0.4μm、さらに好ましくは0.1〜0.3μmの水分散体とすることができる。
アクリル変性エポキシ樹脂(A2)の水分散体は、平均粒子径(注2参照)が0.01〜0.3μm、好ましくは0.02〜0.25μm、さらに好ましくは0.05〜0.2μmの水分散体を得ることができる。概して、アクリル変性エポキシ樹脂(A2)は、アクリル変性エポキシ樹脂(A1)に比べて水分散性や安定性に優れた水分散体を得ることができる。
アクリル変性エポキシ樹脂(A2)がアクリル変性エポキシ樹脂(A1)に比べて水分散性に優れる理由としては、疎水部分に、親水基をほとんどもたない疎水性のアクリル樹脂と疎水性のエポキシ樹脂を併存したので、親水部分との分極化がより顕著となり、水分散性や安定性が向上したものと考えられる。
(注2)平均粒子径:サブミクロン粒子アナライザーN4(商品名、ベックマン・コールター株式会社製、粒度分布測定装置)にて、試料を脱イオン水にて測定に適した濃度に希釈して、常温(20℃程度)にて測定した。
[水性塗料]
本発明の水性塗料は、前記のアクリル変性エポキシ樹脂(A1)及び/又はアクリル変性エポキシ樹脂(A2)の水分散体に、適宜に、造膜助剤を配合することが好ましい。造膜助剤としては、塗膜の造膜性や耐水性の向上の為に、沸点が150〜300℃の範囲であることが好ましく、1種又は2種以上の有機溶剤が使用できる。
この有機溶剤としては、具体的には、エチレングリコールモノブチルエーテル(分子量118、沸点171℃)、ジエチレングリコ−ルモノブチルエーテル(分子量162、沸点230℃)、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(分子量206、沸点246℃)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(分子量90、沸点120℃)などが挙げられる。さらに、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート(分子量216、沸点248℃)も造膜助剤(C)として有効である。
また、さらに水性塗料には、アクリル樹脂の水溶化樹脂又は水分散体、ウレタン樹脂の水溶化樹脂又は水分散体、ポリオレフィン樹脂の水溶化樹脂又は水分散体、及びポリエステル樹脂の水分散体等のその他の水分散体を含有することができる。
これらのアクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂及びポリエステル樹脂の数平均分子量としては、1,000〜100,000、好ましくは1,500〜20,000、さらに好ましくは2,000〜12,000の範囲がよい。
また、適宜に、沈降防止剤、消泡剤、増粘剤、防錆剤、紫外線吸収剤、表面調整剤、顔料分散剤、並びに、顔料(例えば、酸化チタン、カーボンブラック、ベンガラ等の着色顔料;クレー、マイカ、バリタ、炭酸カルシウム、シリカなどの体質顔料;リンモリブデン酸アルミニウム、トリポリリン酸アルミニウムなどの防錆顔料)、さらに、オクチル酸亜鉛、ギ酸亜鉛、カルボン酸コバルトなどの硬化触媒、ビスマス、水酸化ビスマス、塩基性炭酸ビスマス、硝酸ビスマス、ケイ酸ビスマスなどのビスマス化合物、その他の有機溶剤(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、N−メチルピロリドン)等を要求される目的に応じて配合することができる。水性塗料の固形分調整は、脱イオン水を加えて、塗料固形分を5〜70質量%、好ましくは25〜60質量%に希釈することによって製造することができる。
本発明の水性塗料の被塗物は、少なくともその表面が導電性金属で構成されているものであればその大きさや形状等には特に制限はなく、どのようなものであってもよい。その材質としては、例えば、鉄、アルミニウム、めっき鋼及びこれらの表面に化成処理を施したものなどが包含される。また、熱容量が大きく塗膜を十分に加熱できない部材、プラスチックやゴムなどを組み込んだ部材、塗膜乾燥の為に燃料を入れたまま自走によって乾燥炉へ投入される建設機械等の塗装が可能である。
水性塗料の塗装は、それ自体既知の方法、例えば、エアースプレー、エアレススプレー、静電塗装などにより塗装することができ、塗装膜厚は、通常、乾燥塗膜で10〜100μm、好ましくは15〜40μmの範囲内とすることができる。
塗装後の塗膜の乾燥は、100〜200℃で10〜120分間、好ましくは120〜180℃で20〜90分間での焼付け乾燥や、又は100℃未満で1〜40分間強制乾燥を行った後、常温(50℃以下)で10時間以上放置、又は常温(50℃以下)で1日間〜7日間放置することにより、塗膜中の水や有機溶剤が揮散して塗膜が連続塗膜を形成する。
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれにのみに限定されるものではない。なお、「部」及び「%」は、特にことわらない限り、「質量部」及び「質量%」である。
製造例1:エポキシ樹脂Aの製造例
温度計、攪拌機、還流冷却管及び窒素導入口を備えたガラス製4つ口フラスコに、エピコート828(注3)550部、ビスフェノールA450部を入れ、攪拌しながら、窒素気流下で昇温した。ビスフェノールAが溶解し、混合物が透明になった時点(100℃付近)でトリ−n−ブチルアミン5.0部を混合物に添加し、150℃まで徐々に昇温した。次に、150℃で約4時間反応を行って、固形分100質量%のエポキシ樹脂Aを得た。エポキシ樹脂Aのエポキシ当量は25,000、数平均分子量2,500、溶液粘度(注4)Xであった。
(注3)エピコート828:ジャパンエポキシレジン株式会社製、エポキシ樹脂、エポキシ当量約190
(注4)溶液粘度:25℃における樹脂固形分40%のブチルカルビトール溶液のガードナー粘度
製造例2:脂肪酸変性アクリル単量体Aの製造例
温度計、攪拌機及び還流冷却管を備えたガラス製4つ口フラスコに、大豆油脂肪酸708部、グリシジルメタクリレート357部、ハイドロキノン1.2部、テトラエチルアンモニウムブロマイド0.6部を仕込み、攪拌しながら145℃まで昇温した。
その後、反応温度を145℃に保持し、エポキシ基とカルボキシル基との付加反応を進行させた。付加反応は、残存カルボキシル基の量を測定して追跡した。反応が完了するまで(酸価の低下が停止するまで)約4時間反応し、脂肪酸変性アクリルモノマーAを得た。脂肪酸変性アクリル単量体Aのガードナー粘度は、Uであった。
製造例3:アクリル樹脂溶液Aの製造例
温度計、攪拌機、還流冷却管及び窒素導入口を備えたガラス製4つ口フラスコに、エチレングリコールモノブチルエーテル900部を入れ、攪拌しながら、窒素気流下で120℃まで昇温した。昇温後、スチレン120部、メタクリル酸メチル120部、アクリル酸n−ブチル180部、メタクリル酸180部、過酸化ベンゾイル30部の混合溶液を、120℃で3時間掛けて滴下した。その後、120℃で1時間保持し、固形分40%、樹脂酸価196mgKOH/gのアクリル樹脂溶液Aを得た。
[アクリル変性エポキシエマルションの製造例]
実施例1:アクリル変性エポキシエマルションNo.1の製造
温度計、攪拌機、還流冷却管及び窒素導入口を備えたガラス製4ツ口フラスコに、エチレングリコールモノブチルエーテル25部、製造例1で得たエポキシ樹脂Aを80部入れ、攪拌しながら、窒素気流下で120℃まで昇温した。
エポキシ樹脂Aが溶解した後、スチレン4部、メタクリル酸メチル4部、アクリル酸n−ブチル6部、メタクリル酸6部、過酸化ベンゾイル1部の混合溶液を、120℃で1時間掛けて滴下し、滴下終了後、120℃で1時間保持し、アクリル変性エポキシ樹脂溶液を得た。
その後、アクリル変性エポキシ樹脂溶液を90℃まで冷却し、ジメチルエタノールアミン6.2部(1当量に相当)添加し、15分混合攪拌した。さらに、攪拌しながら、脱イオン水201部を1時間掛けて滴下して、樹脂固形分30質量%、樹脂酸価44mgKOH/g、平均粒子径0.3μmのアクリル変性エポキシエマルションNo.1を得た。
得られたエポキシエマルションの上記特数値を上記配合成分と共に表1に示した。
実施例2〜5
配合成分を表1の内容とする以外は、実施例1と同様にして、アクリル変性エポキシエマルションNo.2〜No.5を得た。得られたエポキシエマルションの特数値を表1に示した。
Figure 2007146100
(注5)エピコート#1007:ジャパンエポキシレジン(株)製、商品名、エポキシ当量2,100、数平均分子量約3,500のエポキシ樹脂
実施例6:アクリル変性エポキシエマルションNo.6の製造
温度計、攪拌機、還流冷却管及び窒素導入口を備えたガラス製4ツ口フラスコに、エチレングリコールモノブチルエーテル25部、製造例1で得たエポキシ樹脂A60部を入れ、攪拌しながら、窒素気流下で120℃まで昇温した。
エポキシ樹脂Aが溶解した後、スチレン7部、メタクリル酸メチル7部、アクリル酸n−ブチル6部及び過酸化ベンゾイル1部の混合溶液を120℃で1時間掛けて滴下し、滴下終了後、120℃で1時間保持し、反応生成物を得た。
次に、スチレン4部、メタクリル酸メチル4部、アクリル酸n−ブチル6部、メタクリル酸6部、過酸化ベンゾイル1部の混合溶液を、120℃で1時間掛けて滴下し、滴下終了後、120℃で1時間保持してアクリル変性エポキシ樹脂溶液を得た。
その後、この反応生成物に、アクリル変性エポキシ樹脂溶液を90℃まで冷却し、ジメチルエタノールアミン6.2部(1当量に相当)添加し、15分混合攪拌した。さらに、攪拌しながら、脱イオン水199.8部を1時間掛けて滴下して、樹脂固形分30質量%、樹脂酸価47mgKOH/g、平均粒子径0.28μmのアクリル変性エポキシエマルションNo.6を得た。
実施例7〜13
表2の内容とする以外は、実施例6と同様にして、アクリル変性エポキシエマルションNo.7〜No.13を得た。
Figure 2007146100
比較例1
温度計、攪拌機、還流冷却管及び窒素導入口を備えたガラス製4ツ口フラスコに、エチレングリコールモノブチルエーテル25部、製造例1で得たエポキシ樹脂A80部を入れ、攪拌しながら、窒素気流下で120℃まで昇温した。
エポキシ樹脂Aが溶解した後、スチレン4部、メタクリル酸メチル4部、アクリル酸n−ブチル6部、メタクリル酸6部、過酸化ベンゾイル1部の混合溶液を、120℃で1時間掛けて滴下し、滴下終了後、120℃で1時間保持し、アクリル変性エポキシ樹脂溶液を得た。その後、アクリル変性エポキシ樹脂溶液を90℃まで冷却し、ジメチルエタノールアミン5.4部添加し、15分混合攪拌した。
さらに、攪拌しながら、脱イオン水202.5部を1時間掛けて滴下して、樹脂固形分30%、樹脂酸価44mgKOH/g、平均粒子径0.6μmのアクリル変性エポキシエマルションNo.14を得た。
比較例2、5及び7
表3の内容とする以外は、比較例1と同様にして、アクリル変性エポキシエマルションNo.15、No.16及びNo.17を得た。
比較例3、4及び6
表3の内容とする以外は、比較例1と同様にしたが、水分散化が不可能であった。
Figure 2007146100
(注6)エピコート#1004:ジャパンエポキシレジン(株)製、商品名、エポキシ当量940、数平均分子量約1,900のエポキシ樹脂
比較例8:(特開平5−271610号公報の製造方法に準ずる)
温度計、攪拌機、還流冷却管及び窒素導入口を備えたガラス製4つ口フラスコに、製造例1で得た固形分100質量%のエポキシ樹脂A80部、製造例3で得た固形分40質量%のアクリル樹脂溶液Aを50部(固形分20部)を入れ、攪拌しながら90℃まで昇温してエポキシ樹脂が溶解するまで90℃で混合攪拌した。溶解を確認した後、ジメチルエタノールアミン6.2部を添加して、90℃で1時間保持した後、脱イオン水198部を1時間掛けて滴下して分散し、固形分30%のアクリル変性エポキシエマルションを調製しようと試みたが、分散不可能であった。
比較例9
表4の配合内容とする以外は、比較例8と同様にして、アクリル変性エポキシエマルションNo.18を得た。
比較例10
表4の内容とする以外は、比較例8と同様にしたが、水分散化が不可能であった。
Figure 2007146100
比較例11:アクリル変性エポキシエマルションNo.19の製造
温度計、攪拌機、還流冷却管及び窒素導入口を備えたガラス製4ツ口フラスコに、エチレングリコールモノブチルエーテル25部、エピコート#1004(注6)60部を入れ、攪拌しながら、窒素気流下で120℃まで昇温した。
エポキシ樹脂Aが溶解した後、スチレン4部、メタクリル酸メチル4部、メタクリル酸2ヒドロキシエチル6部、アクリル酸n−ブチル6部、過酸化ベンゾイル1部の混合溶液を120℃で1時間掛けて滴下し、滴下終了後、120℃で1時間保持し、反応生成物溶液を得た。
次に、スチレン4部、メタクリル酸メチル4部、アクリル酸n−ブチル6部、メタクリル酸6部、過酸化ベンゾイル1部の混合溶液を、120℃で1時間掛けて滴下し、滴下終了後、120℃で1時間保持してアクリル変性エポキシ樹脂溶液を得た。
その後、アクリル変性エポキシ樹脂溶液を90℃まで冷却し、ジメチルエタノールアミン6.2部(1当量に相当)添加し、15分混合攪拌した。さらに、攪拌しながら、脱イオン水202部を1時間掛けて滴下して樹脂を得た。該樹脂の水分散を試みたが分散不可であった。
比較例12、14
表5の内容とする以外は、比較例11と同様にして、アクリル変性エポキシエマルションNo.20、No.22を得た。
比較例13
表5の配合内容にて試みたが分散不可であった。
Figure 2007146100
製造例4(顔料分散ペーストの製造例)
60%アミン中和アクリル樹脂系顔料分散樹脂16.7部(固形分10部)、CR−97(注7)80部、トリポリリン酸二水素アルミニウム5部、脱イオン水56.3部を仕込み、ボールミルで20時間分散し、固形分60%の顔料分散ぺーストを得た。
(注7)CR−97:石原産業社製、商品名、チタン白
[水性塗料の製造例]
実施例14
固形分30質量%のアクリル変性エポキシエマルションNo.1を41.7部(固形分12.5部)、固形分52質量%のヨドゾールAD145(注8)を168部(固形分87.5部)に製造例4で得た60質量%の顔料分散ぺースト158部(固形分95部)及びテキサノール(注10)2部を加え、さらに脱イオン水63.3部を加えて撹拌し、固形分45質量%の水性塗料No.1を得た。
(注8)ヨドゾールAD145:日本NSC社製、商品名、アクリル樹脂水分散体、固形分52質量%、平均粒子径0.1μm
(注9)DICNAT3111:大日本インキ化学工業(株)、商品名、モノカルボン酸コバルト(触媒)
(注10)テキサノール:2,2,4−トリメチル1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート
実施例15〜18
実施例14と同様にして、表6の配合内容にて、水性塗料No.2〜No.5を得た。
Figure 2007146100
実施例19〜26
実施例14と同様にして、表7の配合内容にて、水性塗料No.6〜No.13を得た。
Figure 2007146100
比較例15
固形分30質量%のアクリル変性エポキシエマルションNo.1を41.7部(固形分12.5部)、固形分52質量%のヨドゾールAD145(注8)を168部(固形分87.5部)に製造例4で得た60質量%の顔料分散ぺースト158部(固形分95部)及びテキサノール2部を加え、さらに脱イオン水63.3部を加えて撹拌し、固形分45質量%の水性塗料No.14を得た。
比較例16〜19
比較例15と同様にして、表8の配合内容にて、水性塗料No.15〜No.18を得た。
Figure 2007146100
比較例20、21
比較例15と同様にして、表9の配合内容にて、水性塗料No.19、水性塗料No.20を得た。
Figure 2007146100
比較例22
レタンPG60(関西ペイント社製、商品名、アクリルポリオール・ポリイソシアネート硬化型の2液有機溶剤型塗料)を用いた。
[塗装試験]
実施例14〜26、比較例15〜21にて得た水性塗料No.1〜No.20、比較例23としてレタンPG60を用いて、リン酸亜鉛処理を施した冷延鋼板に乾燥膜厚が35μmとなるようにスプレー塗装した。
次に、電気熱風乾燥機を用いて70℃で20分間強制乾燥し、次いで室温(20℃)で7日間乾燥を行った。水性塗料No.1〜No.20及びレタンPG−60の塗膜性能を併せて表6〜9に示す。なお性能試験は、後記の方法に従って実施した。
(注11)塗料安定性:
水性塗料を容器に入れ密閉して40℃で4週間保管し、水性塗料の状態を評価した。
○は、粘度上昇及び相分離のいずれも認められず
△は、やや粘度上昇及び相分離の少なくとも一つがみられる
×は、著しい粘度上昇及び相分離の少なくとも一つが著しくみられる
(注12)塗膜の非粘着性:塗面の粘着性を指触で評価した。
◎は、粘着性はなく、キズ(爪あと)もつかない
〇は、粘着性はなく、キズ(爪あと)はつくが製品としては問題ない
△は、粘着性はあるが、指紋の跡は付かない
×は、粘着性があり、指紋の跡がつく。
(注13)鉛筆硬度:
JIS K 5600-5-4に準じて、試験塗板面に対し約45°の角度に鉛筆の芯を当て、芯が折れない程度に強く試験塗板面に押し付けながら前方に均一な速さで約10mm動かした。塗膜が破れなかったもっとも硬い鉛筆の硬度記号を鉛筆硬度とした。
(注14)仕上り性:
各試験板の塗面外観を目視で評価した。
○は、平滑性が良好で問題なし
△は、うねり、ツヤビケ、チリ肌などの仕上がり性の低下がやや見られる
×は、うねり、ツヤビケ、チリ肌などの仕上がり性の低下が大きい
(注15)60度鏡面光沢度:
塗膜の光沢の程度を、JIS K−5400 7.6(1990)の60度鏡面光沢度に従い、入射角と受光角とがそれぞれ60度のときの反射率を測定して、鏡面光沢度の基準面の光沢度を100としたときの百分率で表した。
(注16)耐候性:
各試験板を、JIS K5400に準拠し、カーボンアーク灯式促進耐候性試験機サンシャインウェザオメーターを使用して塗膜の光沢を測定し、暴露試験前の光沢に対する光沢保持率が80%を割る時間を測定した。
◎は、光沢保持率が80%を割る時間が1,000時間を越える
○は、光沢保持率が80%を割る時間が800時間以上、かつ1,000時間未満
△は、光沢保持率が80%を割る時間500時間以上、かつ800時間未満
×は、光沢保持率が80%を割る時間500時間未満
(注17)耐湿性:
各試験板を50℃で相対湿度95%のブリスターボックスに240時間放置し、塗面を評価した。
○は、良好で問題なし
△は、フクレ、色落ちがやや見られる
×は、フクレ、色落ちが大きい
(注18)耐ソルトスプレー性:
各試験板の塗膜にナイフでクロスカット傷を入れ、これをJIS Z−2371に準じて500時間耐塩水噴霧試験を行ない、ナイフ傷からの錆、フクレ幅によって以下の基準で評価した。
◎は、錆、フクレの最大幅が、カット部から2mm未満(片側)
○は、錆、フクレの最大幅が、カット部から2mm以上でかつ3mm未満(片側)
△は、錆、フクレの最大幅が、カット部から3mm以上でかつ4mm未満(片側)
×は、錆、フクレの最大幅が、カット部から4mm以上(片側)
本発明に係る水分散体および水性塗料は、熱容量が大きく乾燥炉の熱が十分に伝達しない被塗物や、プラスチックやゴムが組み込まれていて加熱することができない被塗物の塗装に有効である。

Claims (6)

  1. エポキシ当量2,000〜50,000のエポキシ樹脂(a)とラジカル重合性不飽和単量体(b)との合計が100質量部であり、このうちエポキシ樹脂(a)50〜90質量部の存在下に、ラジカル重合性不飽和単量体(b)10〜50質量部をラジカル重合反応させて得られる酸価10〜150mgKOH/gのアクリル変性エポキシ樹脂(A1)を水性媒体に分散してなる、平均粒子径が0.01〜0.5μmの水分散体。
  2. エポキシ当量2,000〜50,000のエポキシ樹脂(a)とラジカル重合性不飽和単量体(b)との合計が100質量部であり、このうちエポキシ樹脂(a)が50〜90質量部、ラジカル重合性不飽和単量体(b)が10〜50質量部の範囲であり、かつラジカル重合性不飽和単量体(b)が、
    固形分換算で、ビニル芳香族化合物またはメチル(メタ)アクリレートから選択される少なくとも1種の化合物10〜70質量%、カルボキシル基含有ラジカル重合性不飽和単量体2質量%以下、かつその他のラジカル重合性不飽和単量体28〜88質量%からなるラジカル重合性不飽和単量体(b1)と、
    固形分換算で、カルボキシル基含有ラジカル重合性不飽和単量体15〜65質量%、かつその他のラジカル重合性不飽和単量体35〜85質量%からなるラジカル重合性不飽和単量体(b2)とからなり、
    第1段目としてエポキシ樹脂(a)の存在下でラジカル重合性不飽和単量体(b1)をラジカル重合反応させて反応生成物を得た後、第2段目として、該反応生成物にラジカル重合性不飽和単量体(b2)をラジカル重合反応させて得られた酸価10〜150mgKOH/gのアクリル変性エポキシ樹脂(A2)を水性媒体に分散してなる、平均粒子径が0.01〜0.3μmの水分散体。
  3. エポキシ樹脂(a)が、平均官能基数が2個以下のグリシジル基を含むエポキシ樹脂とカルボキシル基を有する化合物を反応させて得られたエポキシ樹脂(A1)である請求項1又は2に記載の水分散体。
  4. ラジカル重合性不飽和単量体(b)が、グリシジル(メタ)アクリレートと不飽和脂肪酸を反応させて得られた脂肪酸変性アクリル系単量体を含有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の水分散体。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項で得られた水分散体を含む水性塗料。
  6. 請求項5に記載の水性塗料を塗装して得られた塗装物品。
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