JP4246953B2 - 水性上塗り1コート塗料組成物及びこれを用いた塗膜形成方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、リコート付着性、耐水性、耐候性、耐チッピング性に優れた塗膜を形成できる水性上塗り1コート塗料組成物及びこれを用いた塗膜形成方法に関する。
【0002】
【従来技術及びその課題】
自動車外板部にカチオン電着塗料などの下塗塗料及び中塗り塗料を塗装し、ついでその塗面にソリッド系等の上塗り塗料を塗装して仕上げる塗装方法や、カチオン電着塗料などの下塗塗料の塗面に直接上塗り塗料を塗装して仕上げる塗装方法はすでに公知である。これらの方式は、上塗り塗膜を1コート方式で形成させるために工程が少なく、生産性が高いという利点を有する。
【0003】
従来、このような1コート仕上げ用の上塗り塗料としては有機溶剤系が主流であったが、省資源、公害対策上の観点から、水性の1コート仕上げ用の上塗り塗料の開発が望まれていた。これまでは水性の中塗り塗料は知られており、これを上塗り塗料に適用することも試みられたが、リコート付着性が十分でないという欠陥を有しており、自動車外板部用上塗り塗料としては不十分であった。ここでリコート付着性とは、塗装ラインにおいて自動車外板部に電着塗料、(中塗り塗料)及び上塗り塗料を塗装し、塗膜を硬化させた後、上塗り塗面にブツ、ヘコミなどの欠陥部が発見されると、リペアラインで補修のために該上塗り塗面に同一色の塗料が再度塗装された際の、この元の塗膜と補修のために塗装された塗膜との層間付着性のことである。また従来の水性中塗り塗料を上塗り塗料に適用すると、自動車外板部用の上塗り塗膜に要求される耐水性や耐候性等の性能レベルについても十分満足できるものではなかった。
【0004】
本発明の目的は、リコート付着性、耐水性、耐候性、耐チッピング性に優れた塗膜を形成できる水性上塗り1コート塗料組成物及びこれを用いた塗膜形成方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、
1.(A)多価アルコール及び多塩基酸の反応物であり、該多価アルコール及び多塩基酸が少なくともその一部に脂環構造を有する成分を、ポリエステル樹脂を構成する成分の固形分合計に対し20〜70重量%含むものであり、酸価10〜70mgKOH/g、水酸基価70〜170mgKOH/gで、且つベンゼン環濃度が1.25mol/kg(樹脂固形分)以下であるポリエステル樹脂であって、該樹脂中のカルボキシル基を中和剤で中和してなるポリエステル樹脂、(B)メチルエーテル/ブチルエーテル混合メラミン又はブロックポリイソシアネートである硬化剤、(C)着色顔料、及び(D)(a)3級アミノ基、4級アンモニウム塩基及びスルホン酸基から選ばれる少なくとも1種のイオン性官能基を含有する重合性不飽和モノマーを1〜40重量%、(b)分子量が200〜3,000であるポリオキシアルキレン鎖を有する非イオン性重合性不飽和モノマーを5〜40重量%、及び(c)前記モノマー(b)以外の水酸基含有重合性不飽和モノマーを含むその他のエチレン性不飽和モノマー20〜94重量%からなるモノマー混合物をラジカル重合開始剤の存在下に共重合して得られる顔料分散用アクリル樹脂を含有することを特徴とする水性上塗り1コート塗料組成物、
2.被塗物にカチオン電着塗料を塗装した後、その上に1項記載の水性上塗り1コート塗料組成物を塗装することを特徴とする塗膜形成方法、
3.被塗物にカチオン電着塗料を塗装し、次に中塗り塗料を塗装した後、さらにその上に1項記載の水性上塗り1コート塗料組成物を塗装することを特徴とする塗膜形成方法、
4.中塗り塗料が、ポリエステル樹脂及び硬化剤を含む水性中塗り塗料である3項記載の塗膜形成方法、
5.中塗り塗料が、多価アルコール及び多塩基酸の反応物であり、該多価アルコール及び多塩基酸が少なくともその一部に脂環構造を有する成分を含むポリエステル樹脂、及びブロックポリイソシアネートを含む水性中塗り塗料である3項記載の塗膜形成方法、に関する。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明においてポリエステル樹脂(A)は、酸価10〜70mgKOH/g、好ましくは20〜50mgKOH/g、水酸基価70〜170mgKOH/g、好ましくは90〜160mgKOH/gで、且つベンゼン環濃度が1.25mol/kg(樹脂固形分)以下、好ましくは1.22mol/kg(樹脂固形分)以下である。
【0007】
上記酸価が10より小さくなると塗料の貯蔵安定性、塗膜のリコート付着性、ツヤなどが低下し、70より大きくなると塗膜の耐水性などが低下するなどの欠陥が生じ、水酸基価が70より小さくなるとリコート付着性が低下し、一方、170より大きくなると塗膜の耐水性が低下するので、いずれも好ましくない。また上記ベンゼン環濃度が1.25mol/kg(樹脂固形分)を越えると耐候性が低下するので好ましくない。
【0008】
上記ポリエステル樹脂(A)は、通常、多塩基酸と多価アルコ−ルとをエステル化反応させることによって製造することができる。多塩基酸は1分子中に2個以上のカルボキシル基を有する化合物であり、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、ヘット酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸及びこれらの無水物などがあげられる。多価アルコ−ルは1分子中に2個以上の水酸基を有する化合物であり、例えば、エチレングリコ−ル、1,2−プロピレングリコ−ル、1,2−ブチレングリコ−ル、2,3−ブチレングリコ−ル、1,2−ヘキサンジオール、1,2−ジヒドロキシシクロヘキサン、3−エトキシプロパン−1,2−ジオール、3−フェノキシプロパン−1,2−ジオ−ルなどのα−グリコ−ル;ネオペンチルグリコ−ル、2−メチル−1,3−プロパンジオ−ル、2−メチル−2,4−ペンタンジオ−ル、3−メチル−1,3−ブタンジオ−ル、2−エチル−1,3−ヘキサンジオ−ル、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオ−ル、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオ−ル、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオ−ル、2−フェノキシプロパン−1,3−ジオ−ル、2−メチル−2−フェニルプロパン−1,3−ジオ−ル、1,3−プロピレングリコ−ル、1,3−ブチレングリコ−ル、2−エチル−1,3―オクタンジオ−ル、1,3−ジドロキシシクロヘキサン、1,4−ブタンジオ−ル、1,4−ジヒドロキシシクロヘキサン、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオ−ル、2,5−ヘキサンジオ−ル、3−メチル−1,5−ペンタンジオ−ル、1,4−ジメチロ−ルシクロヘキサン、トリシクロデカンジメタノ−ル、2,2−ジメチルー3−ヒドロキシプロピル−2,2−ジメチル−3−ヒドロキシプロピオネ−ト(これは、ヒドロキシピバリン酸とネオペンチルグリコールとのエステル化物である)、ビスフェノ−ルA、ビスフェノ−ルF、ビス(4−ヒドロキシヘキシル)−2,2−プロパン、ビス(4−ヒドロキシヘキシル)メタン、3,9−ビス(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、ジエチレングリコ−ル、トリエチレングリコ−ル、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、ペンタエリスリト−ル、ジペンタエリスリト−ル、ソルビト−ル、マンニット、トリメチロ−ルエタン、トリメチロ−ルプロパン、ジトリメチロ−ルプロパン、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレ−トなどがあげられる。これらは1種又は2種以上混合して使用することができる。
【0009】
これらのうち、本発明に使用される好適なポリエステル樹脂(A)としては、上記多価アルコール及び多塩基酸が少なくともその一部に脂環構造を有する成分を含むものであることが、得られる塗膜の耐チッピング性向上の点から好適である。
【0010】
該脂環構造を有する多塩基酸としては、例えば、シクロヘキサン−1,3−ジカルボン酸、シクロヘキサン−1,4−ジカルボン酸、ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロトリメリット酸、メチルヘキサヒドロフタル酸、及びこれらの無水物などが挙げられ、脂環構造を有する多価アルコールとしては、例えば、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールF、スピログリコール、ジヒドロキシメチルトリシクロデカンなどが挙げられる。これらは1種又は2種以上混合して使用することができる。
【0011】
上記脂環式構造を有する多塩基酸及び/又は脂環式多価アルコールの含有量は、ポリエステル樹脂(A)を構成する成分の固形分合計に対し20〜70重量%、好ましくは30〜60重量%の範囲がよい。この範囲を外れると耐チッピング性向上の効果が得られなかったり、耐候性が低下する場合があるので望ましくない。
【0012】
上記成分のエステル化反応は既知の方法により行なうことができ、又、ポリエステル樹脂骨格への水酸基及びカルボキシル基の導入は、例えば、エステル化反応において、二塩基酸及び2価アルコールと共に3個以上の水酸基又はカルボキシル基を有する多価アルコ−ル及び多塩基酸を併用することにより行なえる。さらにポリエステル樹脂の調製中又はエステル化反応後に、脂肪酸及びモノエポキシ化合物(例えば、合成高分岐脂肪酸のグリシジルエステル、「カージュラE10」シェル化学社製、商品名)などで変性することもできる。脂肪酸としては、ヤシ油脂肪酸、綿実油脂肪酸、麻実油脂肪酸、米ぬか油脂肪酸、魚油脂肪酸、トール油脂肪酸、大豆油脂肪酸、アマニ油脂肪酸、桐油脂肪酸、ナタネ油脂肪酸、ヒマシ油脂肪酸、脱水ヒマシ油脂肪酸、サフラワー油脂肪酸などがあげられる。
【0013】
上記ポリエステル樹脂(A)は、数平均分子量800〜50,000、好ましくは1,000〜30,000であることが望ましい。該分子量が800未満では、得られる塗膜の耐水性等の性能が低下し、50,000を越えるとワニスの水分散性、塗装時の作業性が低下するので望ましくない。
【0014】
上記の通り得られるポリエステル樹脂(A)は、水溶化又は水分散化を容易にするために、その分子中のカルボキシル基を中和することが好ましい。かかる中和剤として、例えば、アンモニア、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ブチルアミン、2−エチルヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、トリブチルアミン、エチレンジアミン、モルホリン、N−アルキルモルホリン、ピリジン、モノイソプロパノールアミン、メチルエタノールアミン、メチルイソプロパノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、トリエタノールアミンなどがあげられる。中和剤の使用量はポリエステル樹脂(A)中のカルボキシル基に対して通常0.1〜2当量、0.3〜1.2当量の範囲内が適している。
【0015】
本発明において硬化剤(B)としては、例えばアミノ樹脂、ブロック化されていてもよいポリイソシアネート化合物などを挙げることができ、これらは1種のみ又は2種以上組合せて使用することができる。該アミノ樹脂としては、メラミン樹脂が一般的で、なかでもメチロール化メラミン樹脂や該メチロール化メラミン樹脂のメチロール基の少なくとも一部を炭素数1〜10の1価アルコールでフルエーテル化又は部分エーテル化してなるアルキルエーテル化メラミン樹脂が挙げられ、その分子中にイミノ基が併存するメラミン樹脂も使用できる。これらの数平均分子量は3000以下、特に1500以下であることが適している。特に水溶性ないしは水分散性を有するものが適しているが水不溶性のものも使用できる。
【0016】
上記ブロック化されていてもよいポリイソシアネート化合物は、フリーのイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物及びイソシアネート基がブロック化されたブロック化ポリイソシアネート化合物の両者を包含する。
【0017】
フリーのイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物としては、例えばヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートの如き脂肪族ジイソシアネート類;水素添加キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートの如き環状脂肪族ジイソシアネート類;トリレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネートの如き芳香族ジイソシアネート類;トリフェニルメタン−4,4′,4″−トリイソシアネート、1,3,5−トリイソシアナトベンゼン、2,4,6−トリイソシアナトトルエン、4,4′−ジメチルジフェニルメタン−2,2′,5,5′−テトライソシアネートなどの3個以上のイソシアネ−ト基を有するポリイソシアネート化合物の如き有機ポリイソシアネートそれ自体、またはこれらの各有機ポリイソシアネートと多価アルコール、低分子量ポリエステル樹脂もしくは水等との付加物、あるいは上記した各有機ポリイソシアネート同志の環化重合体、更にはイソシアネート・ビウレット体等を挙げることができる。
【0018】
イソシアネート基がブロックされたポリイソシアネート化合物としては、上記したフリーのイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物のイソシアネート基を、オキシム、フェノール、アルコール、ラクタム、マロン酸ジエステル、アセト酢酸エステル又はメルカプタン等の公知のブロック剤でブロックしたものが挙げられる。
【0019】
上記硬化剤(B)としては、特にメチルエーテル/ブチルエーテル混合メラミン、ブロックポリイソシアネートが好適である。
【0020】
本発明において着色顔料(C)としては、例えばピンクEB、アゾ系やキナクリドン系、シアニンブルー、シアニングリーン、ベンゾイミダゾロン系、イソインドリン系及びキノフタロン系等の有機着色顔料;酸化チタン、チタンイエロー、ベンガラ、カーボンブラック、黄鉛、酸化鉄、及び各種焼成顔料等の無機着色顔料;アルミニウム粉、銅粉、ニッケル粉、ステンレス粉、クロム粉、雲母状酸化鉄、酸価チタン被覆マイカ粉、酸化鉄被覆マイカ粉及び光輝性グラファイト等の光輝性顔料等が挙げられる。また体質顔料を含んでもよい。これらの顔料は、夫々、公知の表面処理、例えば酸・塩基処理、カップリング剤処理、プラズマ処理、酸化/還元処理などが施されたものであってもよい。また、これらの顔料は1種のみ又は2種以上組合せて使用することができる。
【0021】
上記着色顔料(C)の配合量は、形成される単独塗膜により被塗面の色調がこの塗膜を透かして見えない程度に隠蔽する範囲であることが好ましく、具体的には、形成される硬化塗膜の重量を基準に0.1〜70重量%、特に1〜60重量%であることが適している。
【0022】
本発明において顔料分散用アクリル樹脂(D)には、高顔料濃度での濡れ性や分散安定性、さらに得られる塗膜の光沢や耐水性等の点から、3級アミノ基、4級アンモニウム塩基及びスルホン酸基から選ばれる少なくとも1種のイオン性官能基を含有する重合性不飽和モノマー(a)、ポリオキシアルキレン鎖を有する非イオン性重合性不飽和モノマー(b)、及びその他のエチレン性不飽和モノマー(c)からなるモノマー混合物をラジカル重合開始剤の存在下に共重合して得られるアクリル共重合体を用いる。
【0023】
上記モノマー(a)としては、例えばN,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N−t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノブチル(メタ)アクリレート等の第3級アミノ基を含有するアミノアルキル(メタ)アクリレート;N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドなどの第3級アミノ基を含有するアミノアルキル(メタ)アクリルアミド;2−(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムクロライド、2−(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムブロマイド、メタクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、メタクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウムブロマイド、テトラブチルアンモニウム(メタ)アクリレート、トリメチルベンジルアンモニウム(メタ)アクリレート、2−(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムジメチルホスフェート等の第4級アンモニウム塩基含有モノマー;2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸などの(メタ)アクリルアミド−アルカンスルホン酸、2−スルホエチル(メタ)アクリレートなどのスルホアルキル(メタ)アクリレート等のスルホン酸基含有重合性不飽和モノマー等が挙げられる。これらは1種のみ又は2種以上組み合わせて使用することができる。これらのうちモノマー(a)としては、特にN,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート2−(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムクロライド、2−アクリルアミド−2−メチルスルホン酸などが好適である。
【0024】
本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、「アクリレート又はメタクリレート」を意味し、「(メタ)アクリルアミド」は、「アクリルアミド又はメタクリルアミド」を意味するものとする。
【0025】
上記モノマー(a)が第3級アミノ基及び/又は第4級アンモニウム塩基を含有する重合性不飽和モノマーである場合には、これらの官能基が特に酸性顔料や中性顔料の顔料分散性に効果的に働き、また、上記モノマー(a)がスルホン酸基含有重合性不飽和モノマーである場合には、スルホン酸基が特に塩基性顔料の顔料分散性に効果的に働く。
【0026】
上記モノマー(b)は、ポリオキシアルキレン鎖と、重合性不飽和基を有するモノマーである。上記ポリオキシアルキレン鎖としては、ポリオキシエチレン鎖、ポリオキシプロピレン鎖、ポリオキシエチレンとポリオキシプロピレンとのブロック鎖などを挙げることができる。
【0027】
ポリオキシアルキレン鎖は、分子量が200〜3,000、好ましくは300〜2,500の範囲内にあることが好適である。分子量が200より小さい場合には親水基としての効果を十分発揮することができず、顔料分散液の安定性が不十分となり、一方、3,000より大きい場合には、室温において固形化し溶解性が悪くなるため取り扱いにくく、また塗膜性能(特に耐水性)にも悪影響を及ぼすため好ましくない。
【0028】
モノマー(b)の代表例としては、例えば、下記式(1)
CH2=C(R3)COO(CnH2nO)m−R4 (1)
(式中、R3は水素原子またはメチル基を表し、R4は水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表し、mは4〜60、好ましくは6〜50の整数を表し、nは2〜3の整数、好ましくは2である、ここでm個のオキシアルキレン単位(CnH2nO)は同じであっても又は互いに異なっていてもよい。)
で示される化合物を挙げることができる。
【0029】
上記モノマー(b)の具体例としては、例えばテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、n−ブトキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、テトラプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシテトラプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシテトラプロピレングリコール(メタ)アクリレート、n−ブトキシテトラプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートなどが挙げられ、これらは1種のみ又は2種以上組み合わせて使用することができる。これらのうち特にポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレートが好適である。
【0030】
モノマー(c)は、前記モノマー(a)、(b)と共重合可能なモノマーであって、前記モノマー(a)、(b)以外のモノマーであって、顔料分散用樹脂(D)に望まれる特性に応じて適宜選択して使用される。その具体例としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート等のC1〜24の直鎖状又は環状アルキル(メタ)アクリレートモノマー;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどの水酸基含有重合性不飽和モノマー;メタクリル酸、アクリル酸などのカルボキシル基含有重合性不飽和モノマー;アクリルアミド、メタクリルアミド;3−エチル−3−(メタ)アクリロイルオキシメチルオキセタン、3−メチル−3−(メタ)アクリロイルオキシメチルオキセタン、3−ブチル−3−(メタ)アクリロイルオキシメチルオキセタンなどのオキセタン環含有(メタ)アクリレート;2−(2'−ヒドロキシ−5'−メタクリロイルオキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾールなどの紫外線吸収性重合性不飽和モノマー;4−(メタ)アクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジンなどの紫外線安定性重合性不飽和モノマー;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエンなどの芳香族ビニル化合物;(メタ)アクリロニトリル、酢酸ビニルなどを挙げることができる。これらの重合性不飽和モノマーは、1種のみ又は2種以上を組合せて使用することができる。
【0031】
上記顔料分散用アクリル樹脂(D)は、前記硬化剤(B)と反応し、架橋塗膜中にとりこまれることが塗膜性能上望ましく、そのため上記モノマー(c)は、その成分の少なくとも一部として水酸基含有重合性不飽和モノマーを含有することが望ましい。
【0032】
上記水酸基含有重合性不飽和モノマーの具体例としては、上記した2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートのほかに、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2,3−ジヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート及びポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の、多価アルコールとアクリル酸又はメタクリル酸とのモノエステル化物;上記多価アルコールとアクリル酸又はメタクリル酸とのモノエステル化物にε−カプロラプトンを開環重合した化合物等を挙げることができる。なかでも、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート[前記モノマー(b)以外のもの]、及び多価アルコールとアクリル酸又はメタクリル酸とのモノエステル化物にε−カプロラプトンを開環重合した化合物が反応性などの点から好適である。これらは、1種のみ又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0033】
また顔料分散用アクリル樹脂(D)は水分散性を確保するため、親水性の前記(b)モノマーに加えて、さらに必要に応じて、上記のその他のエチレン性不飽和モノマー(c)の少なくとも一部としてカルボキシル基含有重合性不飽和モノマーを用いることができる。
【0034】
上記顔料分散用アクリル樹脂(D)は、上記モノマー(a)〜(c)を共重合することによって得られる。共重合に際してのこれらのモノマー混合物の組成は、モノマー(a)1〜40重量%、好ましくは1〜35重量%、モノマー(b)5〜40重量%、好ましくは7.5〜30重量%、及びモノマー(c)20〜94重量%、好ましくは35〜91.5重量%の範囲内が好適である。
【0035】
上記モノマー(a)〜(c)の共重合は、それ自体既知の方法、例えば有機溶剤中での溶液重合法、水中でのエマルション重合法などの方法により行なうことができるが、なかでも溶液重合法が好適である。溶液重合法による共重合法としては、例えば、前記モノマー成分とラジカル重合開始剤の混合物を、有機溶媒に溶解もしくは分散せしめ、通常、80℃〜200℃程度の温度で、通常1〜10時間程度撹拌しながら加熱して重合させる方法を挙げることができる。
【0036】
共重合時に使用し得る有機溶媒としては、例えば、ヘプタン、トルエン、キシレン、オクタン、ミネラルスピリット等の炭化水素系溶剤;酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のエステル系溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、イソブタノール等のアルコール系溶剤;n−ブチルエーテル、ジオキサン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等のエーテル系溶剤;コスモ石油社製のスワゾール310、スワゾール1000、スワゾール1500等の芳香族石油系溶剤等を挙げることができる。これらの有機溶剤は1種のみ又は2種以上を組合せて使用することができる。重合反応時において、上記有機溶剤は、モノマー成分の合計量に対して、通常、400重量部以下となる範囲で使用される。
【0037】
前記ラジカル重合開始剤としては、例えばシクロヘキサノンパーオキサイド、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド類;1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ビス(tert−ブチルパーオキシ)バレレート等のパーオキシケタール類;クメンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド類;1,3−ビス(tert−ブチルパーオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジイソプロピルベンゼンパーオキサイド、tert−ブチルクミルパーオキサイド等のジアルキルパーオキサイド類;デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド類;ビス(tert−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート等のパーオキシカーボネート類;tert−ブチルパーオキシベンゾエート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン等のパーオキシエステル類等の有機過酸化物系重合開始剤並びに2,2´−アゾビスイソブチロニトリル、1,1−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、アゾクメン2,2'−アゾビスメチルバレロニトリル、4,4´−アゾビス(4−シアノ吉草酸)等のアゾ系重合開始剤を挙げることができる。これらのラジカル重合開始剤の使用量は、特に限定されるものではないが、通常、重合性モノマーの合計量100重量部に基いて、0.1〜15重量部、特に0.3〜10重量部の範囲内であることが望ましい。
【0038】
上記重合反応において、モノマー成分や重合開始剤の添加方法は特に制約されるものではないが、重合開始剤は重合初期に一括仕込みするよりも重合初期から重合後期にわたって数回に分けて分割滴下することが、重合反応における温度制御、ゲル化物のような不良な架橋物の生成の抑制、などの点から好適である。
【0039】
このようにして得られる共重合体の分子量は、特に制限されるものではないが、水分散安定性、顔料分散性、粘度、VOC、樹脂の色数(着色度)などの面から、通常、重量平均分子量で500〜100,000、特に1,000〜50,000の範囲内にあることが好ましい。
【0040】
本発明においては上記着色顔料(C)と顔料分散用アクリル樹脂(D)、必要に応じて水、または水に水溶性有機溶媒などの有機溶媒を溶解してなる水-有機溶媒混合溶液などの水性媒体、塩基性中和剤、その他の顔料分散樹脂、分散助剤、及びその他の添加剤などを配合し、公知の分散機を用いて分散処理することにより水性顔料分散液を調製することができる。着色顔料(C)の配合割合は、特に制限されるものではないが、通常、顔料分散用樹脂100重量部に対して、10〜3,000重量部、特に15〜2,000重量部の範囲内にあることが、顔料分散性、分散安定性、及び得られる顔料分散体の着色力の面などから好ましい。
【0041】
本発明の水性上塗り1コート塗料組成物は、上記(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分を必須成分とするものであり、さらに必要に応じて、水、有機溶剤、ポリマー微粒子、硬化触媒、塩基性中和剤、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、沈降防止剤、塗面調整剤、酸化防止剤、流動性調整剤、シランカップリング剤等の添加剤等を含有することができる。
【0042】
本発明では、被塗物にカチオン電着塗料を塗装し、必要に応じて中塗り塗料を塗装した後、その上に上記の通り得られる本発明の水性上塗り1コート塗料組成物を塗装する。
【0043】
上記被塗物としては、化成処理した鋼板、各種プラスチック基材(必要に応じて、表面処理を行ったもの)、これらが組み合わさった複合部材等が挙げられる。また上記カチオン電着塗料としてはそれ自体既知のものを用いることができ、例えば樹脂成分として水酸基及びカチオン性基を有する基体樹脂とブロックポリイソシアネート化合物などの硬化剤を含むものなどを好適に使用することができる。
【0044】
上記中塗り塗料としてはそれ自体既知のものを用いることができ、有機溶剤系でも水系でもよいが、特にポリエステル樹脂及び硬化剤を含む水性中塗り塗料が好適である。さらに耐チッピング性などの点から、ポリエステル樹脂が多価アルコール及び多塩基酸の反応物で、該多価アルコール及び多塩基酸が少なくともその一部に脂環構造を有する成分を含むポリエステル樹脂で、硬化剤がブロックポリイソシアネートである水性中塗り塗料が特に好適である。
【0045】
本発明の水性上塗り1コート塗料組成物の塗装は、上記電着塗膜もしくは中塗り塗膜が硬化後もしくは未硬化の状態で行なわれ、塗装時における固形分含有率を30〜80重量%、好ましくは40〜60重量%、粘度を15〜50秒/フォードカップ#4/20℃、好ましくは20〜40秒/フォードカップ#4/20℃に調整し、エアレススプレー、エアスプレー、静電塗装などにより塗装することができる。塗装膜厚は硬化塗膜に基づいて10〜50μm、好ましくは20〜40μmの範囲内である。そして、この塗膜は120〜180℃、好ましくは130〜160で10〜40分間程度加熱することにより架橋硬化させることができる。
【0046】
【実施例】
以下、製造例、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。なお、特に断らない限り「部」及び「%」は、それぞれ「重量部」及び「重量%」を意味し、塗膜の膜厚は硬化塗膜についてである。
【0047】
ポリエステル樹脂(A)の水分散液の製造
製造例1
加熱装置、攪拌機、窒素導入管及び分留塔を有する反応装置に、ネオペンチルグリコール100.3部、トリメチロールプロパン195.5部、ブチルエチルプロパンジオール254.7部、イソフタル酸165.1部、無水ヘキサヒドロフタル酸165.5部、アジピン酸174.3部を仕込み、乾燥窒素化で加熱を開始し、230℃まで徐々に昇温してエステル化反応を行った。230℃を保持し樹脂酸価1以下までエステル化を行った後、170℃まで冷却し無水トリメリット酸42.8部を加え、樹脂酸価35、水酸基価150、ベンゼン環濃度1.22mol/kg、数平均分子量1,500のポリエステル樹脂を得た。得られたポリエステル樹脂に、ジプロピレングリコールメチルエーテル100部を加えた後、ジメチルエタノールアミン52.7部、イオン交換水1069.5部を加えて攪拌混合し、ポリエステル樹脂水分散液(A−1)を得た。
【0048】
製造例2〜4
製造例1において、配合成分組成を表1の通りとする以外は製造例1と同様に操作して各ポリエステル樹脂水分散液(A−2)〜(A−4)を得た。各ポリエステル樹脂の性状値を併せて示す。
【0049】
【表1】
【0050】
顔料分散用アクリル樹脂(D)の製造
製造例5
撹拌機、温度計、還流冷却管の備わった通常のアクリル樹脂反応槽に、エチレングリコールモノブチルエーテル37部を仕込み、加熱撹拌して110℃に保持した。この中に、スチレン10部、メチルメタクリレート35部、2−エチルヘキシルメタクリレート20部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート10部、「NFバイソマーS20W」(第一工業製薬(株)製、商品名、メトキシポリエチレングリコDールモノメタクリレートの50%水希釈品、分子量約2080)40部、アゾビスイソブチロニトリル1部及びイソブチルアルコール5部からなる混合物を3時間かけて滴下した。滴下終了後、110℃で30分間熟成し、次にエチレングリコールモノブチルエーテル20部及びアゾビスイソブチロニトリル0.5部からなる追加触媒混合液を1時間かけて滴下した。ついで110℃で1時間熟成したのち冷却し、固形分55%の顔料分散用アクリル樹脂(D−1)溶液を得た。
【0051】
製造例5〜8
製造例5において、配合成分組成を表2の通りとする以外は製造例5と同様に操作して各顔料分散用アクリル樹脂溶液(D−2)〜(D−4)を得た。各アクリル樹脂の性状値を併せて示す。また表2において「NFバイソマーS20W」の量は、固形分量で示す。さらに2−アクリルアミド−2−メチルスルホン酸は水5部に溶解して配合するものであり、表2においては固形分量で示す。
【0052】
【表2】
【0053】
水性顔料分散体の作成
上記で得た各顔料分散用アクリル樹脂溶液及び顔料を用いて、さらに中和剤(N,N−ジメチルエタノールアミン)と脱イオン水を、下記表3に示す組成配合にて容量225ccの広口ガラスビン中に入れ、分散メジアとして直径約1.3mmφのガラスビーズを加えて密封し、ペイントシェイカーにて4時間分散して各水性顔料分散体(P−1)〜(P−4)を得た。尚、下記表1における(注1)、(注2)は、それぞれ下記の意味を有する。
(注1)「チタン白JR903」:テイカ(株)社製、商品名、チタン白顔料
(注2)「Raven5000UIII」:コロンビアカーボン社製、商品名、カーボンブラック顔料
【0054】
【表3】
【0055】
水性上塗り1コート塗料の作成
実施例1〜9及び比較例1〜4
上記で得た水性顔料分散体に、表4に示す組成配合にて各成分を加えて攪拌混合して各水性塗料を作成し、さらに必要に応じてジメチルエタノールアミン、脱イオン水を加えて、粘度25秒(フォードカップ#4/20℃)、pH約8.5に調製した。尚、表4中の(注3)、(注4)は下記を意味する。
(注3)「MS−25」:三和ケミカル(株)製、商品名、メチル・n−ブチル混合エーテル化メラミン樹脂溶液
(注4)「LS2310」:住友バイエル社製、商品名、ブロックイソシアネート溶液
性能試験
金属板(大きさ100×80×0.8mm)にカチオン電着塗料(「エレクロン9200」、関西ペイント社製、商品名、エポキシ樹脂系)を膜厚20μmに電着塗装し170℃で30分加熱して硬化させてなる被塗物に、上記の各水性上塗り1コート塗料をエアスプレ−で膜厚35μmになるように塗装し、室温で5分放置後、140℃で30分加熱硬化させて試験塗板を作成した。
【0056】
上記の水性上塗り1コート塗料の貯蔵安定性試験、及び上記の通り作成した試験塗板の性能試験を行なった。結果を表4に併せて示す。
【0057】
試験方法は下記のとおりである。
(*1)塗料の貯蔵安定性:pH8.5、粘度25秒/フォードカップ#4/20℃に調製した各塗料を容器にいれ密閉した状態で、室温で3日間放置した後の塗料状態を観察した。○は全く異常なし、△は顔料の沈降が多く認められる、×は顔料の沈降が顕著に認められることを示す。
【0058】
(*2)光沢:60°光沢は、入射角60度で、受光角60度における光線反射率を各試験塗板について測定した。数値が大きいほど光沢がすぐれていることを示す。また、目視評価はツヤ感を目視で評価した。○はツヤ感良好、△はツヤ感やや劣る、×はツヤ感が非常に劣っていることを示す。
【0059】
(*3)耐水性:各試験塗板を80℃の温水に5時間浸漬した後の塗面を目視観察した。○は全く異常なし、△はブリスタ、チヂミが少し発生、×はブリスタ、チヂミが多く発生したことを示す。
【0060】
(*4)耐候性:各試験塗板を、JIS K 5400に規定する試験機によって促進耐候試験を行った。試験開始から1500時間経過後の60度光沢の保持率を調べた。数値が大きいほど耐候性が良好なことを示す。
【0061】
(*5)リコート付着性:金属板(大きさ100×80×0.8mm)にカチオン電着塗料(「エレクロン9200」、関西ペイント社製)を膜厚20μmに電着塗装し170℃で30分加熱して硬化させてなる被塗物に、実施例及び比較例で得た各水性上塗り塗料をエアスプレ−で膜厚35μmになるように塗装し、室温で5分放置後、140℃で30分加熱硬化させた後、その塗面に同一の塗料を同様にして膜厚35μmになるように塗装し、室温で5分放置後、120℃で30分加熱硬化してなる試験用塗板に、カッターナイフで素地に達するように切りこみ、大きさ2×2mmのゴバン目を100個作成し、その塗面に粘着セロハンテープを貼着し、20℃においてそれを急激に剥がしたあとの、残存ゴバン目塗膜数を調べた。○は100個残存、△は40〜60残存、×は20個以下残存していることを示す。
【0062】
(*6)耐チッピング性:米国 Q−PANEL社製、Q−G−Rグラベロメータ(チッピング試験装置)の試片保持台に試験板を設置し、−20℃において、4kgf/cm2の圧縮空気により粒度7号の花崗岩砕石100gを塗面に30度の角度で吹き付け、これによる塗膜のキズの発生程度などを目視で観察し評価した。
◎:上塗り塗面の一部にわずかなキズはみられるが、電着塗面の露出はない
○:上塗り塗面の一部にキズはみられ、電着塗面の露出もわずかにみられる
△:上塗り塗膜及び電着塗膜にかなりのキズがみられるが、素地の鋼板の露出はない
×:上塗り塗膜及び電着塗膜のキズが大きく、素地の鋼板も大きく露出している
【0063】
【表4】
【0064】
実施例10
金属板(大きさ100×80×0.8mm)にカチオン電着塗料(「エレクロン9200」、関西ペイント社製、商品名、エポキシ樹脂系)を膜厚20μmに電着塗装し170℃で30分加熱して硬化させた後、水性中塗り塗料(注6)を膜厚35μmに塗装し140℃で20分間加熱硬化させた被塗物に、上記の実施例1の水性上塗り1コート塗料をエアスプレ−で膜厚35μmになるように塗装し、室温で5分放置後、140℃で30分加熱硬化させて試験塗板を作成した。これについて上述(*6)の耐チッピング性試験を行なったところ、上塗り塗面の一部にわずかなキズはみられるが、中塗り塗面の露出はなく、良好であった。
【0065】
(注6)水性中塗り塗料:ネオペンチルグリコール24.2部、トリメチロールプロパン62.8部、1,4−シクロヘキサンジメタノール44.6部、1,3−シクロヘキサンカルボン酸61.9部、アジピン酸70.1部、無水トリメリット酸15.0部の組成の、酸価35、水酸基価150、数平均分子量2,000のポリエステル樹脂の固形分40%の溶液142.5部と、固形分90%のブロックイソシアネート硬化剤48部、チタン白64部、「カーボンMA−100」(三菱化学株式会社製、商品名、カーボンブラック)0.6部、脱イオン水156.4部を加えて固形分40%の水性中塗り塗料を得た。
【0066】
【発明の効果】
本発明の水性上塗り1コート塗料組成物によれば、リコート付着性、耐水性、耐候性、耐チッピング性に優れた塗膜を形成できる。
Claims (5)
- (A)多価アルコール及び多塩基酸の反応物であり、該多価アルコール及び多塩基酸が少なくともその一部に脂環構造を有する成分を、ポリエステル樹脂を構成する成分の固形分合計に対し20〜70重量%含むものであり、酸価10〜70mgKOH/g、水酸基価70〜170mgKOH/gで、且つベンゼン環濃度が1.25mol/kg(樹脂固形分)以下であるポリエステル樹脂であって、該樹脂中のカルボキシル基を中和剤で中和してなるポリエステル樹脂、(B)メチルエーテル/ブチルエーテル混合メラミン又はブロックポリイソシアネートである硬化剤、(C)着色顔料、及び(D)(a)3級アミノ基、4級アンモニウム塩基及びスルホン酸基から選ばれる少なくとも1種のイオン性官能基を含有する重合性不飽和モノマーを1〜40重量%、(b)分子量が200〜3,000であるポリオキシアルキレン鎖を有する非イオン性重合性不飽和モノマーを5〜40重量%、及び(c)前記モノマー(b)以外の水酸基含有重合性不飽和モノマーを含むその他のエチレン性不飽和モノマー20〜94重量%からなるモノマー混合物をラジカル重合開始剤の存在下に共重合して得られる顔料分散用アクリル樹脂を含有することを特徴とする水性上塗り1コート塗料組成物。
- 被塗物にカチオン電着塗料を塗装した後、その上に請求項1記載の水性上塗り1コート塗料組成物を塗装することを特徴とする塗膜形成方法。
- 被塗物にカチオン電着塗料を塗装し、次に中塗り塗料を塗装した後、さらにその上に請求項1記載の水性上塗り1コート塗料組成物を塗装することを特徴とする塗膜形成方法。
- 中塗り塗料が、ポリエステル樹脂及び硬化剤を含む水性中塗り塗料である請求項3記載の塗膜形成方法。
- 中塗り塗料が、多価アルコール及び多塩基酸の反応物であり、該多価アルコール及び多塩基酸が少なくともその一部に脂環構造を有する成分を含むポリエステル樹脂、及びブロックポリイソシアネートを含む水性中塗り塗料である請求項3記載の塗膜形成方法。
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