JP2007145902A - 酸化物蛍光体、放射線検出器およびx線ct装置 - Google Patents

酸化物蛍光体、放射線検出器およびx線ct装置 Download PDF

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Abstract

【課題】シンチレータとしての機能に優れ、且つ加工性がよく、精密加工が容易な酸化物蛍光体およびそれを用いた放射線検出器および医用撮像装置を提供する。
【解決手段】Ceを発光元素とし、少なくともGd、Al、Ga、Oを含んだ、主にガーネット構造の母体結晶からなる酸化物蛍光体であり、Naを酸化物蛍光体重量に対して500wtppm以下含有する。この酸化物蛍光体は、例えば、原料粉末を混合し、仮焼きし、仮焼き粉末を焼結することによって製造することができ、その際、原料粉末または仮焼き粉末にNa2B4O7等のNa化合物を添加することによってNaを含有させることができる。
【選択図】なし

Description

本発明はX線、γ線などを検出する放射線検出器、特にX線CT装置等の撮像装置に好適な放射線検出器に関する。また本発明は前記放射線検出器を用いたX線CT装置に関する。
近年、X線CT装置等の撮像装置に用いられる固体検出器は、セラミックシンチレータとフォトダイオードを組み合わせたものが主流となっており、複数個のシンチレータ素子とフォトダイオードが並んだ検出器素子アレイ基板を、X線管焦点を中心とした円弧上に複数個並べた構造が、多く採用されている。撮像装置の検出器に求められる特性としては、高出力であること、残光が短いことなどがあり、優れた特性が得られるシンチレータ材が開発されている。例えば本出願人は、Ceを発光元素とし、Gd、Al、Ga、Oを含んだガーネット構造の母体結晶からなる酸化物蛍光体を提案している(特許文献1、特許文献2など)。この酸化物蛍光体では、従来のCdWO4などの単結晶シンチレータの1.5倍以上の発光出力が得られる。
一方、シンチレータの加工精度や検出器素子アレイの組み立て精度が検出器の特性に与える影響も大きい。検出器素子アレイの組み立て方法としては、フォトダイオードアレイ基板にシンチレータ板を接着した後、フォトダイオードアレイに対応してシンチレータ板に溝加工を施し、溝に金属製のセパレータ板や樹脂状のチャンネル分離材を挿入する方法や、あるいはシンチレータ材、チャンネル分離材を交互に貼り合わせ、シンチレータアレイとしたものを、フォトダイオードアレイ基板に接着する方法などが用いられている。いずれの組み立て方法においても、シンチレータ材に対する高精度な加工が要求される。例えば溝加工方式においては、溝が曲がって加工された場合には、チャンネル形状が理想的な幾何学位置からずれることになる。このような場合、検出器素子アレイと散乱線除去コリメータとの幾何学的位置関係にずれが生じ、アーチファクトの原因となる。また、シンチレータアレイをフォトダイオードアレイ基板に接着する方式においても、各々のシンチレータ材には高精度な加工精度が要求される。
ところで一般に、セラミックス材料の製造工程においては、種々の焼結助剤が用いられる。焼結助剤を用いる目的は、焼結中の結晶粒成長を抑制し、気孔生成を抑止する、結晶粒を成長させる、焼結対象材料の光学特性を向上するなど様々である。例えば特許文献3には、YAGセラミックスの焼成助剤としてアルカリ金属の酸化物を用いることにより光学特性を向上させることが記載され、また特許文献4には、YAGセラミックスの焼成温度を低温化させる焼結助剤として窒化アルミニウムを使用することが提案されている。
前記酸化物蛍光体の加工性や特性についても、焼結助剤によって改良する可能性があるが、上述したように焼結助剤の機能は様々であり、また焼結対象となる材料によってその機能も変化しうるので、夫々の目的に適した焼結助剤を探索することは困難である。さらに焼結助剤は、目的とするセラミックス材料の特性を阻害しないものでなければならない。
特開2001−4753号公報 特開2002−189080号公報 特開平5−286761号公報 特開2005−154155号公報
本発明の目的は、シンチレータとしての機能に優れ、且つ加工性がよく、精密加工が容易な酸化物蛍光体を提供することである。また、この酸化物蛍光体を備え、高精度に加工された、安価な放射線検出器を提供することである。また、前記放射線検出器を備え、高性能かつ安価なX線CT装置などの撮像装置を提供することである。
本発明者らは、前述の、Ceを発光元素とし、Gd、Al、Ga、Oを含んだガーネット構造の母体結晶からなる酸化物蛍光体の合成過程で加えられる添加物について、研究を積み重ねた結果、この蛍光体粉末を焼結する際に、焼結助剤としてNa化合物を添加して焼結することにより、結晶粒径を大きく成長させることができ、しかも蛍光体自体の特性、特に残光を向上させることができることを見出し、本発明に至ったものである。
すなわち本発明の酸化物蛍光体は、Ceを発光元素とし、少なくともGd、Al、Ga、Oを含んだ、主にガーネット構造の母体結晶からなる酸化物蛍光体であって、Naを含有することを特徴とする。
本発明の酸化物蛍光体において、Naの含有量は、好適には酸化物蛍光体重量に対して500wtppm以下である。また本発明の酸化物蛍光体において、母体結晶は第二相として、ペロブスカイト構造を有するものでもよい。
また本発明の酸化物蛍光体を製造する方法は、上記Ceを発光元素とし、少なくともGd、Al、Ga、Oを含んだ、主にガーネット構造の母体結晶からなる酸化物蛍光体を製造する方法であって、原料粉末を混合し、仮焼きする工程と、仮焼き粉末を焼結する工程とを含み、原料粉末または仮焼き粉末にNa化合物を添加することを特徴とする。
Na化合物は、例えばNa2B4O7、NaCl、NaBrおよびNa2CO3からなる群から選ばれる1種又は2種以上の化合物である。
本発明の放射線検出器は、放射線により発光する蛍光体素子と、前記蛍光体素子による発光を検出する光電変換素子とを備え、蛍光体素子として、本発明の酸化物蛍光体を用いたことを特徴とする。
本発明のX線CT装置は、放射線源と、この放射線源に対向して配置された放射線検出器と、これら放射線源及び放射線検出器を保持し、被検体の周りで回転駆動される回転円板と、前記放射線検出器で検出された放射線の強度に基づき前記被検体の断層像を画像再構成する画像再構成手段とを備え、放射線検出器として本発明の放射線検出器を用いたことを特徴とする。
本発明の撮像装置は、放射線源と、被検体を挟んで前記放射線源と対向配置された放射線検出器と、前記放射線検出器で検出された放射線の強度に基づき前記被検体の画像を作成する画像作成手段とを備え、放射線検出器として本発明の放射線検出器を用いたことを特徴とする。
なお本発明の酸化物蛍光体は、放射線検出器のシンチレータ材料であり、本明細書において酸化物蛍光体を放射線検出器のシンチレータ材料として説明する場合には、セラミックシンチレータともいう。
本発明によれば、加工性がよく、精密加工が容易なセラミックシンチレータを提供することができる。また、前記セラミックシンチレータを用いることにより、高精度に加工された放射線検出器を、加工歩留まりよく、安価に、生産性よく提供することができる。また、前記放射線検出器を備え、高性能かつ安価なX線CT装置などの医用撮像装置を提供することができる。
以下、本発明の実施の形態を説明する。
まず本発明の酸化物蛍光体について説明する。本発明の対象となる酸化物蛍光体は、Ceを発光元素とし、少なくともGd、Al、Ga、Oを含んだ、主にガーネット構造の母体結晶からなる酸化物蛍光体であり、例えば、国際公開WO99/33934号記載の、一般式(Gd1-z-xLzCex)3Al5-yGayO12(式中、LはLa又はY、0≦z<0.2、xは0.0005≦x≦0.02、yは0<y<5の範囲の値である)で表される蛍光体、特開2001-4753号公報に記載の、ガーネット構造の結晶構造を有し、Gd/(Al+Ga+Gd)の原子比が0.33以上、0.42以下で、(Gd+Ce)/(Al+Ga+Gd+Ce)=0.375を除く蛍光体などを主成分とする蛍光体、特開2002-189080公報に記載の、Ceを発光元素とし、少なくともGd、Al、Ga、Oを含んだガーネット構造を第一相とし、第二相としてペロブスカイト構造を有する母体結晶を有する蛍光体などである。
Naは、上記蛍光体を製造する際に、Na化合物として上記蛍光体に添加される。Na化合物は、原料粉末にフラックスとして添加してもよいし、焼結助剤として添加してもよい。Na化合物としては、Na2B4O7、NaCl、NaBr、Na2CO3、(Na3PO4、Na2SO4)などが挙げられるが、特にNa2B4O7、NaCl、NaBr、Na2CO3が好ましい。Naを添加することにより、上記蛍光体の発光出力を低下させることなく、結晶粒径を大きく成長させ、しかも残光を低減できる。
Na化合物の機能については、次のように考えられる。Na化合物は、焼結助剤として結晶粒成長を促進させる働きをし、結晶粒界に主に残留するとともに、結晶内にも入り込む。Na化合物によって粒成長した本発明の蛍光体においては、結晶粒界での格子欠陥が減少し、これに起因した残光を低減できる。また、結晶内に入り込んだNaにより、これまで残光の原因となっていた電子のトラップ準位から、無輻射のエネルギー失括過程ができたものと推察される。逆に、助剤の添加によって残光が増大する場合もある。これは、添加物が結晶内に入り込み、残光の原因となる電子のトラップ準位を新たに生成してしまったためと思われる。すなわちNa化合物は、焼結助剤であると共に、残光を低減させる添加物としても働いているものと考えられる。
上記蛍光体におけるNaの含有量は、5wtppm以上、好ましくは10wtppm以上、さらに好ましくは50wtppm以上とする。蛍光体に不可避的に含まれる不純物元素の含有量は数wtppmであるので、5wtppm未満では添加の効果が不明確である。一方、Naの含有量が多いほど、残光は低減するが発光強度は低下する傾向があり、500wtppmを超えると残光は殆ど低下しないが発光強度はさらに低下する。従ってNaの含有量は500wtppm以下であることが好ましい。
本発明の酸化物蛍光体は、Na化合物を添加すること以外は、上述したCeを発光元素とし、少なくともGd、Al、Ga、Oを含む酸化物蛍光体の製造方法と同じ製造方法により製造することができる。例えば、一般的なセラミックス材料と同様に、(1)原料粉末の混合、仮焼き工程と、(2)仮焼き粉末の焼結工程とからなる製造方法を採用することができる。本発明のセラミックシンチレータを得るための製造方法の一例を、以下に説明する。
まず、高純度のGd2O3、Al2O3、Ga2O3、CeO2などの原料粉末を所定量秤量後、例えばボールミル混合により、10時間程度湿式混合する。この混合粉末を乾燥した後、アルミナるつぼに入れ、1400〜1800℃の酸素を含む雰囲気中で数時間仮焼きし、仮焼き粉末を得る。原料粉末としては、ミクロンオーダーの微細な粉末がよく、好ましくはサブミクロンの粉末がよい。また原料粉末は、酸化物や水酸化物、しゅう酸塩などのほか、共沈法、ゾルゲル法などによって合成した微細粉末を使用してもよい。粉末純度は99.99%以上が望ましい。粉末純度が低いと、発光強度、残光などの発光特性が劣化するためである。
このようにして作製したシンチレータ仮焼き粉末に、所定量秤量したNa化合物を添加し、例えばボールミルで10時間程度湿式混合した後に、乾燥させる。このように作製した添加剤混合粉末を、焼結する。焼結方法としては、特に限定する必要はなく、ホットプレス法、熱間静水圧プレス(HIP)法、常圧焼結法、常圧焼結法とHIP法との併用法などで焼結が可能である。
ホットプレス法では、前述の添加剤混合粉末を300〜600kgf/cm2程度の圧力で金型成型して成型体とした後、ホットプレス型にセットし、真空中、大気中、あるいは酸素中の雰囲気下で、1400〜1800℃の温度で数時間、300〜600kgf/cm2程度の圧力にて焼結する。これによって、相対密度99%以上の焼結体を、容易に得ることができる。
HIP法では、FeあるいはW、Moなどの金属製カプセル中に添加剤混合粉末を入れ、真空封止して、1200〜1800℃の温度で数時間、1000〜2000
kgf/cm2程度の圧力にて焼結する。
常圧焼結では、添加剤混合粉末を3000kgf/cm2程度の圧力で冷間静水圧プレス(CIP)を行った後、1400〜1800℃の酸素を含む雰囲気中で数〜数十時間の焼結を行う。
このようにして得られたセラミックシンチレータは、Naを含有し、結晶粒径が1〜500μmと大きく粒成長したものとなる。結晶粒径が大きく成長したことにより、加工性が向上し、精密加工が容易になる。また、Na化合物を用いない従来のセラミックシンチレータと比較して、残光は小さくなっており、発光強度の悪化は少ない。
なおこの製造方法は、本発明のセラミックシンチレータを得るための製造方法を限定するものではなく、その他の製造方法によっても本発明のセラミックシンチレータを製造することは可能である。例えば、原料粉末を混合する際にNa化合物を併せて混合し、仮焼きを行い、これを焼結することによっても本発明のセラミックシンチレータを製造することができ、同様の効果が得られる。また、仮焼き工程を省略し、原料粉末とNa化合物を混合したものを直接焼結させることによっても、本発明のセラミックシンチレータを得ることが可能である。
本発明の酸化物蛍光体は、発光波長が可視光から近赤外領域にあり、光出力がCdWO4の1.5倍以上の高出力が得られる。また残光が極めて短く、X線を断ってから約300msで残光が1×10-3%未満となる。従って放射線検出器のシンチレータとして極めて有用である。また本発明の酸化物蛍光体は、Naを含有しないものに比べ粒径が大きい。具体的にはNaを含有しない同組成の酸化物蛍光体の10倍以上(20μm以上)である。従って加工性に優れ、高精度の加工を効率よく行うことが可能である。
次に本発明の放射線検出器の実施の形態について説明する。図2に、本発明の放射線検出器の一実施の形態を示す。図2は、本発明の放射線検出器の断面図を示しており、複数のフォトダイオード23を有するフォトダイオードアレイ基板24の上に、各々のフォトダイオード位置に対応して、シンチレータ素子21が配置されている。各シンチレータ素子のフォトダイオードに面していない面は、光反射層22に覆われている。
シンチレータ素子21には、上述した本発明のセラミックシンチレータを用いる。フォトダイオード23には、PINフォトダイオードを用いるのが望ましい。PINフォトダイオードは感度が高く、応答速度が速く、かつ波長感度が可視光から近赤外領域にあるので、本発明のシンチレータの発光波長とのマッチングがよい。光反射層22は、X線の吸収が少なく、光反射率の高い材料からなる。例えば、TiO2粉末を混合した有機樹脂などが用いられる。
図中の矢印で示した方向から入射したX線は、光反射層22を透過して、シンチレータ素子21で吸収される。X線を吸収したシンチレータ素子21は、可視光を発光する。シンチレータ素子21が発光した可視光は、光反射層22で反射され、フォトダイオード23で電気信号に変換される。
本発明の放射線検出器の製造方法は、特に限定されないが、例えば、シンチレータ材料(バルク)を加工し、所定の厚さのシンチレータ板を作成する。このシンチレータ板を複数のフォトダイオード23が形成されたフォトダイオードアレイ基板24に接着した後、フォトダイオードアレイに対応してシンチレータ板に溝加工を施す。作成された溝に必要に応じて金属製のセパレータ板や樹脂状のチャンネル分離材を挿入する。最後に溝加工されたシンチレータ21全体を光反射層22を構成する材料で覆い放射線検出器を得る。あるいはフォトダイオード23の大きさに対応する厚さのシンチレータ板とチャンネル分離材を交互に貼り合わせた後、所定の厚さに切り出し、シンチレータアレイを作製する。これのシンチレータアレイを、フォトダイオード23が形成されたフォトダイオードアレイ基板24に接着し、シンチレータアレイ全体を光反射層22用材料で覆い放射線検出器を得る。
このような放射線検出器の製造工程において、シンチレータとして加工性に優れた本発明のセラミックシンチレータを用いることにより、容易に高い加工精度のシンチレータ素子を作製することができる。そのため、高精度に組み立てられた放射線検出器を、容易かつ安価に製造することができる。
次に本発明の撮像装置の実施の形態を説明する。図3は、本発明の撮像装置の一実施の形態としてX線CT装置の概略を示す図である。
この装置はスキャンガントリ部310と画像再構成部320とを備え、スキャンガントリ部310には、被検体が搬入される開口部314を備えた回転円板311と、この回転円板311に搭載されたX線管312と、X線管312に取り付けられ、X線束の放射方向を制御するコリメータ313と、X線管312と対向して回転円板311に搭載されたX線検出器315と、X線検出器315で検出されたX線を所定の信号に変換する検出器回路316と、回転円板311の回転及びX線束の幅を制御するスキャン制御回路317とが備えられている。
画像再構成部320は、被検者氏名、検査日時、検査条件などを入力する入力装置321、検出器回路316から送出される計測データS1を演算処理してCT画像再構成を行う画像演算回路322、画像演算回路322で作成されたCT画像に、入力装置321から入力された被検者氏名、検査日時、検査条件などの情報を付加する画像情報付加部323と、画像情報を付加されたCT画像信号S2の表示ゲインを調整してディスプレイモニタ330へ出力するディスプレイ回路324とを備えている。
このX線CT装置では、スキャンガントリ部310の開口部314に、設置された寝台(図示せず)に被検者を寝かせた状態で、X線管312からX線が照射される。このX線はコリメータ313により指向性を得、X線検出器315により検出されるが、この際、回転円板311を被検者の周りに回転させることにより、X線を照射する方向を変えながら、被検者を透過したX線を検出する。この計測データをもとに画像再構成部320で作成された断層像は、ディスプレイモニタ330に表示される。
ここでX線検出器315は、散乱線除去コリメータと、シンチレータとフォトダイオードとを組み合わせた検出器素子を多数(例えば960個)円弧状に配列したもので、本発明の放射線検出器を用いている。このため、本発明のX線CT装置は、高精度に組み立てられた放射線検出器を有し、高画質なCT断層像を提供することができる。
以下、本発明の実施例を説明する。
[実施例1]
出発原料粉末として、純度99.99%で、粒径が0.1〜5μm程度のGd2O3、Al2O3、Ga2O3、CeO2粉末を用い、Gd2.982Ce0.018Al2.8Ga2.2O12の組成になるように、各々秤量した。これをポリエチレン容器にアルミナボール、イオン交換水と共に入れ、約16時間ボールミルで混合した。混合後、蒸発皿に移して混合粉末を乾燥し、ナイロンふるいを通して整粒した。整粒粉末をアルミナるつぼに入れ、1500℃の酸素中にて4時間仮焼きした。このシンチレータ仮焼き粉末に、シンチレータ粉末1モルに対して0.0005〜0.01モルのNa2B4O7を添加し、ボールミルで約16時間湿式混合し、乾燥させた。この添加剤混合粉末を、500kgf/cm2の圧力で金型成形した後、真空中で1500℃、500kgf/cm2にてホットプレス焼結した。焼結体を、30mm×24mm×2mmの試験片に加工し、1300℃の酸素中にて4時間アニール処理し、セラミックシンチレータ板として完成させた。
得られたシンチレータ板のNa残留量、結晶粒径および発光特性を測定した。結果を表1に示す。なおNa残留量はICP発光分析により測定した。結晶粒径は走査型電子顕微鏡にて試験片表面を観察し、計測した。発光強度は、管電圧120kV、管電流100mAのX線を照射した時の発光強度を測定した。表1では、発光強度をCdWO4シンチレータの発光強度に対する割合で表してある。また残光は、X線照射後300msにおける出力の、照射中出力に対する割合で表した。
さらに加工性を評価するために、各試験片を荷重100gでラップ研磨し、試験片の重量の減少速度を測定した。結果を表1に示す。加工速度が速いほど、材料の加工性が良いことを表している。Na2B4O7添加量を変えた時の結晶粒径および加工速度の変化を図1に示す。
Figure 2007145902
表1および図1より、Na2B4O7添加量の増加と共に、結晶粒径が成長し、それに伴って加工性も向上しているのが分かる。また、助剤添加量を増やしていくと、残光が小さくなっている。しかし、助剤添加量の増加と共に、発光強度もやや低下している。試料番号1の助剤を添加しない試料と比較して、添加量0.002モルまでは、発光強度の低下が10%程度に収まっており、本発明の効果が十分に得られる範囲である。この時のNa残留量は、500wtppmである。これ以上Na2B4O7を添加すると、発光強度はさらに低下していき、残光は殆ど低下しなくなる。従って本発明のシンチレータにおいてNa含有量は500wtppm以下が望ましいと言える。
[実施例2]
実施例1と同様にシンチレータ仮焼き粉末を作製し、このシンチレータ仮焼き粉末に実施例1と種類の異なるNa化合物(NaCl、NaBr、Na2CO3、Na3PO4・12H2O、Na2SO4)を添加し、それ以外は実施例1と同様にシンチレータ板を作製した。Na化合物の添加量は、それぞれシンチレータ粉末1モルに対して、Naイオンが0.001モルとなる量とした。得られたシンチレータ板について実施例1と同様に、Na残留量、結晶粒径、発光特性および加工速度を測定した。その結果を表2に示す。表2には、参考のため、実施例1の試料番号1、2の結果を併せて示してある。
[比較例1]
実施例1と同様にシンチレータ仮焼き粉末を作製し、このシンチレータ仮焼き粉末に表2に示すLi化合物を添加し、実施例1と同様の工程にてシンチレータ試料を作製した。Li化合物の添加量は、シンチレータ粉末1モルに対して、Liイオンが0.001モルとなる量とした。得られたシンチレータ試料について実施例1と同様に、Li残留量、結晶粒径、発光特性および加工速度を測定した。その結果を表2に併せて示す。
Figure 2007145902
表2の結果からわかるように、Na化合物としてNaCl、NaBr、Na2CO3を用いた場合(試料番号6〜8)にも、試料番号2と同様に、結晶粒成長、加工性向上、残光低減の効果があり、発光強度の低下は10%以下に収まっている。一方、Na3PO4・12H2O、Na2SO4を用いた場合(試料番号9、10)には、加工性は向上しているが、Na化合物を添加しなかった試料番号1よりも残光が大きくなっているか、または発光強度が低下した。またLi化合物を用いた場合(試料番号11、12)にも、試料番号1よりも残光が大きく、LiClの場合には粒径が大きくなっておらず、加工性が向上しなかった。
Na含有量と結晶粒径および加工速度の関係を示す図 本発明の放射線検出器の断面を示す図 本発明のX線CT装置の構成を示す図
符号の説明
21 シンチレータ素子、22 反射層、23 フォトダイオード、24 フォトダイオードアレイ基板、310 スキャンガントリ部、311 回転円板、312 X線管、313 コリメータ、314 開口部、315 X線検出器、316 検出器回路、317 スキャン制御回路、320 画像再構成部、321 入力装置、322 画像演算回路、323 画像情報付加部、324 ディスプレイ回路、330 ディスプレイモニタ

Claims (3)

  1. Ceを発光元素とし、少なくともGd、Al、Ga、Oを含んだ、主にガーネット構造の母体結晶からなる酸化物蛍光体であって、Naを含有することを特徴とする酸化物蛍光体。
  2. 放射線により発光する蛍光体素子と、前記蛍光体素子による発光を検出する光電変換素子とを備えた放射線検出器において、前記蛍光体素子として、請求項1記載の酸化物蛍光体を用いたことを特徴とする放射線検出器。
  3. 放射線源と、この放射線源に対向して配置された放射線検出器と、これら放射線源及び放射線検出器を保持し、被検体の周りで回転駆動される回転円板と、前記放射線検出器で検出された放射線の強度に基づき前記被検体の断層像を画像再構成する画像再構成手段とを備えたX線CT装置において、前記放射線検出器として請求項2に記載の放射線検出器を用いたことを特徴とするX線CT装置。
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