JP2007145727A - 新規な有機リン化合物及びその製造方法、並びにポリトリメチレンテレフタレート - Google Patents

新規な有機リン化合物及びその製造方法、並びにポリトリメチレンテレフタレート Download PDF

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Abstract

【課題】新規な有機リン化合物、その製造方法及びそれを用いたポリトリメチレンテレフタレートを提供する。
【解決手段】式(1)で示される有機リン化合物。式(2)で示される化合物と、イタコン酸と、1,3−プロパンジオールとを反応せしめる式(1)で示される有機リン化合物の製造方法。式(1)で示される有機リン化合物に由来する構成単位を有するポリトリメチレンテレフタレート。式中、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基を表す。
[化1]
Figure 2007145727

【選択図】なし

Description

本発明は、新規な有機リン化合物及びその製造方法、並びにそれを用いて得られるポリトリメチレンテレフタレートに関する。
ポリトリメチレンテレフタレート(以下「PTT」と略記する。)は、ポリエステルの1種であり、低い弾性率、優れた柔軟性(ソフト性=風合い)、伸長回復性等の優れた特性を有することから、繊維として、衣類、カーペット、産業資材等の用途に使用されている。これらの用途のうち、カーペット、産業資材等の分野においては、火災予防の観点から、PTTに難燃性を付与する必要がある。
ポリマーに難燃性を付与する方法の1つとして、難燃剤を使用する方法がある。難燃剤は、従来、ポリエステル等の種々のポリマーの製造等において用いられている。
これまで使用されてきた難燃剤は、主として、ポリマーと溶融混合して用いる添加型のものであり、かかる添加型難燃剤としては、例えばトリス(2,6―ジメチルフェニル)ホスフェートが挙げられる。
しかし、添加型難燃剤は、その難燃性の耐久性に問題があった。例えばカーペット等は、長期間使用している間に汚れが生じるが、この汚れをとるべく水洗、ドライクリーニング等のクリーニングを行うと、難燃剤がポリマーから離脱してしまい、難燃効果が次第に低下するという問題がある。また、添加型難燃剤を用いた場合、ポリマーの特性、例えばPTTの柔軟性、伸長回復性等が損なわれてしまうという問題もある。
このような問題に対し、添加型難燃剤の代わりに、ポリマーを構成するモノマーと共重合可能な化合物である反応型難燃剤について種々の検討が行われている(例えば特許文献1参照)。
特開2004−35495号公報
かかる反応型難燃剤は、ポリマーの製造過程において共重合の原料として用いられ、ポリマー中に組み込まれることによって難燃性を付与することから、難燃性の耐久性が良好であると推測される。
したがって、現在、反応型難燃剤として有用な新規な化合物に対する要求がある。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、反応型難燃剤として有用な新規な有機リン化合物、その製造方法及びそれを用いて得られるPTTを提供することを目的とする。
上記課題を解決する本発明の第一の態様は、下記一般式(1)で示される有機リン化合物である。
Figure 2007145727
[一般式(1)中、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基を表す。]
上記課題を解決する本発明の第二の態様は、下記一般式(2)で示される化合物と、イタコン酸と、1,3−プロパンジオールとを反応せしめることを特徴とする下記式(1)で示される有機リン化合物の製造方法である。
Figure 2007145727
[一般式(2)中、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基を表す。]
Figure 2007145727
[一般式(1)中、R、R及びRは、それぞれ、前記一般式(2)中のR、R及びRと同じである。]
上記課題を解決する本発明の第三の態様は、下記一般式(1)で示される有機リン化合物に由来する構成単位を有することを特徴とするPTTである。
Figure 2007145727
[一般式(1)中、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基を表す。]
ここで、「構成単位」は、ポリマーを構成する繰り返し単位を意味し、「有機リン化合物に由来する構成単位を有する」とは、当該ポリマーを構成する重合原料(モノマー)の1つとして有機リン化合物が用いられていることを意味する。
本発明の有機リン化合物は、新規な反応型難燃剤として有用である。
そのため、本発明の有機リン化合物は、例えばポリエステル等の種々のポリマーを製造するための改質剤として使用でき、ポリマーに優れた難燃性を付与できる。特に、本発明の有機リン化合物をPTTの製造に用いることにより、優れた難燃性を有し、しかも柔軟性、伸長回復性等の特性が良好なPTTを得ることができる。
本発明の有機リン化合物の製造方法は、上記本発明の有機リン化合物の製造に好適に使用できる。
本発明のPTTは、上記本発明の有機リン化合物に由来する構成単位を有することを特徴とするものであり、優れた難燃性を有する。また、柔軟性、伸長回復性等の特性にも優れる。そのため、防炎衣類、カーペット等の繊維製品、産業資材用繊維等の材料としても有用である。
以下、本発明についての最良の実施態様例について説明する。
≪有機リン化合物≫
本発明の有機リン化合物は、上記一般式(1)で示される化合物(以下、有機リン化合物(1)という。)である。
一般式(1)中、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基である。
〜Rのハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等が挙げられる。
〜Rのアルキル基としては、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよく、炭素数が1〜4であることが好ましい。
〜Rのシクロアルキル基としては、具体的には、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、サンメチルシクロヘキシル等が挙げられる。
〜Rのアリール基としては、具体的には、フェニル基、トリル基、ナフチル基等が例示できる。
〜Rのアラルキル基としては、具体的には、ベンジル基、フェニチル基等が例示できる。
本発明において、有機リン化合物(1)としては、R〜Rが全て水素原子である化合物、すなわち下記式(1’)で示される化合物(10−[2,3−ジ(3−ヒドロキシプロポキシ)カルボニルプロピル]−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−フォスファフェナンスレン−10−オキシド)が最も好ましい。
Figure 2007145727
有機リン化合物(1)の製造方法に特に制限はなく、例えば後述する本発明の有機リン化合物の製造方法により製造することができる。
上述した本発明の有機リン化合物(1)は、工業上種々の点で有利であり、ポリエステル等の種々のポリマーを製造する場合の反応型難燃剤として有用である。
例えば、本発明の有機リン化合物(1)は、熱に対する安定性が高く、また、PTT等のポリマーの製造過程等に悪影響を与えることがない。
例えば後述する本発明の有機リン化合物(1)の製造方法において原料として用いられる化合物(2)は、本発明の有機リン化合物(1)と同様、反応型難燃剤としての利用が可能な化合物である。しかし、化合物(2)は、熱に対する安定性が充分とはいえず、例えばポリマーの製造過程において、熱により分解して充分な難燃性を付与できないおそれがある。また、PTTの製造時のいわゆるエステル交換前に反応系に添加された場合、触媒を失活させるおそれがある。
これに対し、本発明の有機リン化合物(1)は、化合物(2)に比べて熱的に安定な化合物である。そのため、PTT等のポリマーの製造過程において高温下での処理が行われた場合に、脱炭酸を起こすことなく反応する。
また、有機リン化合物(1)は、化合物(2)のように触媒を失活させる傾向も見られず、充分な速度でエステル交換反応をすすめることができる。
そのため、本発明の有機リン化合物(1)によれば、PTT等のポリマーに高い難燃性を付与できる。この難燃性は、製造直後の難燃性自体が優れることはもちろん、クリーニング等に対する耐久性にも優れたものである。そのため、例えば有機リン化合物(1)を用いて得られるポリマーを用いて製造される繊維製品、例えばカーペットのクリーニング後においてもその難燃性が維持される。
さらに、従来の添加型難燃剤の場合、上述したように、ポリマーの特性を損なう場合があるが、本発明の有機リン化合物(1)を用いて得られるポリマーは、そのような問題が生じにくい。
これは、添加型難燃剤は、繊維等の成型品とした際に、その表面に分布して表面を堅くし、そのポリマーが本来有する特性、例えばPTTの柔軟性、伸長回復性等を喪失させるのに対し、本発明の有機リン化合物(1)は、モノマーとして共重合し、ポリマー構造中に組み込まれ、成型品表面に悪影響を及ぼしにくいためと推測される。
本発明の有機リン化合物(1)は、特に、PTTに対して有用であり、優れた難燃性を付与し得るのみならず、その特性(柔軟性、伸長回復性等)を損なうこともない。
上記のような種々の効果が得られる理由としては、定かではないが、化合物(2)の末端の2つのカルボキシ基が特定の基(−CHCHCHOH)でエステル化された構造を有することにより、有機リン化合物(1)の熱等に対する安定性が向上しているためではないかと推測される。
特に、PTTは、モノマーとして、化合物(2)の末端の−CHCHCHOHと類似した構造を有する1,3−プロパンジオール(HOCHCHCHOH)が用いられている。そのため、有機リン化合物(1)が効率よくポリマー内に導入され、本発明の効果が特に良好に得られるのではないかと推測される。
≪有機リン化合物(1)の製造方法≫
本発明の有機リン化合物(1)の製造方法は、下記一般式(2)で示される化合物(以下、化合物(2)という。)と、イタコン酸と、1,3−プロパンジオールとを反応せしめることを特徴とする。
Figure 2007145727
[一般式(2)中、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基を表す。]
一般式(2)中、R、R及びRは、それぞれ、上述した一般式(1)中のR、R及びRと同じである。
化合物(2)としては、特に、R、R及びRが全て水素原子である化合物(9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−フォスファフェナンスレン−10−オキシド(以下、HCAと略記する。))が好ましく用いられる。
なお、R〜Rが水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基のいずれであっても、化合物(2)の反応性に対する影響はないか、あっても非常に小さいものであり、いずれの場合でも同様の方法で製造できる。
本発明において、化合物(2)とイタコン酸との使用量の比(モル比)は、反応効率、副反応の制御等を考慮すると、化合物(2):イタコン酸(モル比)がほぼ1:1であることが好ましいが、本発明はこれに限定されず、どちらか一方をやや過剰に用いてもよく、例えば化合物(2):イタコン酸(モル比)=1:0.9〜1:1.3の範囲内であれば化合物(2)とイタコン酸とが効率よく反応する。
また、1,3−プロパンジオールは、イタコン酸の約2モル倍以上用いることが好ましく、2モル倍以上20モル倍以下を用いることがより好ましく、4モル倍以上8モル倍以下がさらに好ましい。
これは、使用する1,3−プロパンジオールの量が2モル倍以上であると、1,3−プロパンジオールの2個のヒドロキシ基の一方のみが、イタコン酸のカルボキシ基と反応する傾向があるため、両方のヒドロキシ基が反応することによって生じる副生物(二量体、三量体などの縮合体)が副生しにくく、有機リン化合物(1)を収率良く得ることができるためである。
一方、使用する1,3−プロパンジオール量が20モル倍以下であると、イタコン酸のカルボキシ基に1,3−プロパンジオールが付加反応して生成した末端のヒドロキシ基にさらに1,3−プロパンジオールが付加反応してエーテル結合を生成する等の副反応が生じにくい。かかるエーテル結合の存在は、例えば当該有機リン化合物をPTT等のポリエステルの製造系に応用した場合に、当該ポリエステルの融点を下げる傾向がある。融点の低下は、難燃性を低下させるおそれがあるため、このようなエーテル結合は存在しないことが好ましい。
反応温度としては、各原料化合物(化合物(2)、イタコン酸、1,3−プロパンジオール)が反応する温度であれば特に制限はない。好ましくは100℃以上、より好ましくは120〜220℃である。反応温度が100℃以上であると、各原料化合物が良好な反応速度で効率よく反応する。また、反応温度が220℃以下であると、脱炭酸等の副反応が生じにくく、良好な収率で有機リン化合物(1)を得ることができる。
反応は、空気中で行ってもよく、窒素、等の不活性ガス雰囲気下で行ってもよい。副反応の抑制等を考慮すると、不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。
各原料化合物(化合物(2)、イタコン酸、1,3−プロパンジオール)を反応させる手順は、特に限定されず、3つの原料化合物を同時に反応させても良く、いずれか2つの原料化合物を反応させて中間体を形成し、この中間体と残りの1つの原料化合物とを反応させても良い。
より具体的には、例えば下記方法(I)〜(III)が挙げられる。
方法(I):化合物(2)と、イタコン酸と、1,3−プロパンジオールとを混合物として反応させる方法。
方法(II):化合物(2)とイタコン酸とを反応させて得られる下記一般式(3)で示される化合物(以下、化合物(3)という。)と、1,3−プロパンジオールとを反応させる方法。
方法(III):イタコン酸と1,3−プロパンジオールとを反応させて得られるエステル化合物と、化合物(2)とを反応させる方法。
Figure 2007145727
[一般式(3)中、R、R及びRは、それぞれ、前記一般式(2)中のR、R及びRと同じである。]
これらの方法のうち、方法(I)は、一段で反応を行うため、二段で反応を行う方法である方法(II)及び(III)に比べて短時間で製造を行うことができ便利である。
方法(I)の具体例としては、化合物(2)とイタコン酸と1,3−プロパンジオールとを同時に仕込み、加熱して反応させる方法等が挙げられる。
より好ましい具体例を挙げると、化合物(2)と、化合物(2)と等モル量のイタコン酸と、イタコン酸に対して2モル倍以上の1,3−プロパンジオールとを混合し、窒素等の不活性ガス雰囲気下、100℃以上、好ましくは120〜220℃の温度で加熱、撹拌して反応させる。このとき、反応は、生成した水を、過剰の1,3−プロパンジオールと共に留出(脱水)させながら行うことが好ましい。このようにして、有機リン化合物(1)を製造することができる。
方法(II)では、化合物(2)とイタコン酸とを反応させて化合物(3)を得、該化合物(3)に1,3−プロパンジオールを反応させることにより有機リン化合物(1)を得る。
方法(II)について好ましい具体例を挙げると、まず、等モル量の化合物(2)とイタコン酸とを、窒素等の不活性ガス雰囲気下、100℃以上、好ましくは120〜180℃の温度で加熱し、溶解させて撹拌することにより反応させて、化合物(3)を得る。
次いで、得られた化合物(3)と、上記で使用したイタコン酸の2モル倍以上の1,3−プロパンジオールとを混合し、100℃以上、好ましくは120〜220℃の温度で加熱・撹拌する。これにより、化合物(3)のカルボキシ基と1,3−プロパンジオールとが反応(脱水縮合)してエステル化される。このとき、反応は、生成した水を、過剰の1,3−プロパンジオールと共に留出させながら行う。このようにして、有機リン化合物(1)を製造することができる。
方法(III)では、イタコン酸と1,3−プロパンジオールとを予め反応させてエステル化し、このエステル化合物と化合物(2)とを反応させる。
方法(III)について好ましい具体例を挙げると、まず、イタコン酸と、イタコン酸の2モル倍以上の1,3−プロパンジオールとを混合し、100℃以上、好ましくは120〜190℃の温度で加熱・撹拌する。これにより、イタコン酸のカルボキシ基と1,3−プロパンジオールとが反応(脱水縮合)してエステル化される。このとき、反応は、生成した水を、過剰の1,3−プロパンジオールと共に留出させながら行う。イタコン酸と1,3−プロパンジオールとの反応は、減圧下で行ってもよく、常圧下で行ってもよく、特に、反応により生じる水が円滑に系外に出せることから、1000〜99000Pa程度の減圧下で行うことが好ましい。
次いで、上記反応を減圧下で行った場合は窒素等の不活性ガスで常圧に戻し、不活性ガス雰囲気下で、得られたエステル化合物と、上記で使用したイタコン酸と等モル量の化合物(2)とを混合し、100℃以上、好ましくは120〜190℃の温度で加熱することにより反応させる。このようにして、有機リン化合物(1)を製造することができる。
本発明の製造方法においては、上記反応を行う際に、反応系内に、化合物(2)の反応速度を大きくするための触媒として、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムエチレングリコキシドなどの金属アルコキシドや金属グリコキシドを添加してもよい。
また、反応速度のコントロール等のために、原料化合物と反応しない不活性溶剤(ジオキサン、ジエチレングリコールジメチルエーテル等)を用いても何等差支えはない。
このようにして得られた反応生成物中には、通常、原料化合物(化合物(2)、イタコン酸、1,3−プロパンジオール)、反応中間体などの不純物が含まれている。
本発明においては、これらの不純物を分離(精製)してもよく、しなくてもよい。
精製することにより、高純度の有機リン化合物(1)を得ることができ、例えば95%以上の純度(エステル化率)で有機リン化合物(1)を得ることができる。
精製手段としては、通常の精製手段を用いることができ、例えば分別法、蒸留法、再結晶法などを用いることができる。
本発明では、特に、反応生成物に水などの親水性溶媒を添加し、次いでクロロホルムなどの疎水性溶媒で抽出する分別法を用いることが、有機リン化合物(1)を高純度、例えば99%以上の純度(エステル化率)で単離できるため好ましい。
ただし、上記のようにして得られる反応生成物中の不純物(化合物(2)、イタコン酸、1,3−プロパンジオール、各種反応中間体など)は、非常に微量であり、実用的に殆ど差支えはないので、必ずしも分離する(精製する)必要はなく、そのままの状態で、PTTの製造等に用いることができる。例えば、有機リン化合物(1)をPTTに適用する場合、純粋なものが好ましいが、精製を行わない状態のものであっても実用的に殆ど差支えはない。
特に、1,3−プロパンジオールに関しては、過剰のモル数を使用することが好ましく、この場合、反応生成物中には、反応に寄与しなかった1,3−プロパンジオールが混在することになる。しかし、得られる反応生成物(有機リン化合物(1))は、1,3−プロパンジオールの混在により、低温領域における粘度が低くなるため、取扱い易さが向上する。つまり、1,3−プロパンジオールの混在は、取り扱い性という観点からは、むしろプラスに作用させ得るものと云える。
得られた有機リン化合物(1)の構造は、赤外吸収スペクトル法(IR)、磁気共鳴吸収法(NMR)、液体クロマトグラフ法などにより確認することができる。
≪PTT≫
本発明のPTTは、上述した有機リン化合物(1)に由来する構成単位を有するものである。
有機リン化合物(1)は、PTTの製造過程においてモノマーとして用いた場合、PTTのモノマーの1つである1,3−プロパンジオール(HO−CHCHCH−OH)と同様、その末端に−CHCHCH−OHという構造を有している。したがって、1,3−プロパンジオールと同様に反応してPTTを構成する構成単位となると推測される。
本発明のPTTは、モノマーとして、少なくとも、トリメチレングリコール(=1,3−プロパンジオール)とテレフタル酸と有機リン化合物(1)とを含む。
有機リン化合物(1)により付与される難燃性は、有機リン化合物(1)のリン原子に由来する。
したがって、本発明のPTTは、有機リン化合物(1)に由来する構成単位を、当該ポリマー中のリン原子としての含有量(リン含有率)が500〜50000ppmとなる割合で含有することが好ましく、1000〜10000ppmがより好ましい。当該PTTのリン含有率が500ppm以上であることにより、PTTに付与される難燃性が優れたものとなる。また、50000ppm以下であると、PTTの特性(柔軟性、伸長回復性等)が良好で、しかもコストを低減できる。
本発明のPTTの製造は、その製造過程において、モノマーとして有機リン化合物(1)を用いる以外は従来公知のPTTの製造方法により行うことができる。
従来公知のPTTの製造方法としては、例えば以下の方法が例示できる。まず、1,3−プロパンジオールとテレフタル酸とを反応(エステル化反応)させ、得られたエステル化物にさらに重縮合触媒を添加し、加熱・溶融させることにより重縮合反応を行ってプレポリマーを得る。次いで、該プレポリマーを、所望の特性となるよう重合させることによって、PTTを得る。
かかる製造方法において、有機リン化合物(1)を重合させるタイミングは、PTTを製造するための重合反応が完全に終了する前であればよく、いかなる段階で添加してもよい。本発明においては、上述したPTTの製造方法におけるエステル化反応の開始前、または重縮合の開始前(エステル化反応の終了後)に添加するのが好ましい。
以下に、本発明のPTTの好ましい製造方法の一例を示す。
まず、1,3−プロパンジオールとテレフタル酸とを反応(エステル化反応)させる。次いで、得られたエステル化物に、有機リン化合物(1)を添加し、さらに重縮合触媒を添加し、加熱・溶融させることにより重縮合反応を行ってプレポリマーを得る。次いで、該プレポリマーを、所望の特性(例えば後述する極限粘度、b値等)となるよう重合させることによって、PTTを得ることができる。
本発明において、1,3−プロパンジオールとテレフタル酸との使用量の比(モル比)は、反応効率等を考慮すると、1,3−プロパンジオール:テレフタル酸(モル比)=1.2:1〜2.2:1の範囲内であることが好ましい。
反応温度としては、150〜250℃が好ましい。
重縮合触媒としては、テトラブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート等が挙げられる。
重縮合反応は、減圧下で行うことが好ましく、特に133Pa以下の減圧下で行うことが好ましい。
反応温度としては、230℃以上が好ましく、235〜250℃の温度がより好ましい。
プレポリマーの重合方法は、特に限定されず、固相重合、溶融重合、溶液重合、及びこれらの組み合わせ等の従来公知の重合方法が利用できる。本発明においては、固相重合が好ましく用いられる。
重合は、減圧下で行うことが好ましく、特に5000Pa以下、例えば20〜130Pa程度の減圧下で行うことが好ましい。
反応温度としては、190〜210℃の範囲内が好ましい。
より具体的には、まず、1,3−プロパンジオールとテレフタル酸とをエステル化反応させる。これにより、通常、エステル化反応率92〜98%でエステル化物が得られる。次に、得られたエステル化物に、有機リン化合物(1)を加え、さらに重縮合触媒とを加えて、減圧下、235〜250℃の温度で1〜2時間重縮合反応を行う。これによりPTTのプレポリマーを得る。次に、得られたプレポリマーを50hPa以下の減圧下、190〜210℃の温度で固相重縮合を行うことにより、PTTを得ることができる。
本発明のPTTの難燃性の評価は、例えば、当該PTTを紡糸して得た繊維を用いて製造された繊維布帛について、繊維製品の燃焼性試験方法であるJIS L−1091 A−1(45°ミクロバーナー法)に準拠して行うことができる。
本発明のPTTは、上記評価を行った際に、試験回数4回の平均残炎時間が0〜3秒の範囲内となる難燃性を有することが好ましい。
このようにして得られる本発明のPTTは、常法に従って、例えばエクストルダー型紡糸機等の紡糸機を用いて紡糸を行い、繊維とすることができる。また、当該繊維を、織物、編物、不織布等の繊維布帛としてもよく、当該繊維布帛を各種繊維製品に用いることもできる。
このように、本発明のPTTを用いて得られる繊維製品は、優れた難燃性を有し、柔軟性、伸長回復性等の物性にも優れることから、防炎衣類、難燃性カーペット、産業資材等として有用である。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが本発明は必ずしもこれらの実施例により限定するものではない。
なお、以下の例において、各反応は、特に記載のない場合は常圧下で行った。
また、以下の例において、各反応生成物およびPTTの物性の測定および同定は、以下の手順で行った。
「リン含有率」:試料を硫酸、硝酸及び過塩素酸にて加熱分解し、モリブデン酸アンモニウム及びバナジン酸アンモニウムで発色させ比色測定した。
「元素分析:ICP(Inductively Coupled Plasma)分析法により測定した。
「酸価」:試料をエタノールに溶解させて、フェノールフタレイン液を指示薬に用い、1/10規定水酸化ナトリウム水溶液で滴定することにより測定した。
「IR」:臭化カリウム板上に試料を塗布し、液膜法を用いて測定した。
「NMR」:当該化合物の10質量%重水素クロロホルム溶液を用いて、テトラメチルシラン(TMS)を内部基準として測定した。
「極限粘度」:PTT樹脂の極限粘度[η]については、オストワルド粘度計を用い、35℃において、PTT樹脂をo−クロロフェノール中に、溶質(PTT樹脂)濃度[C]が1.00g/dLになるように溶解させ、不溶分(無機質充填材等)が沈殿した後、その上澄み液を用いて比粘度[ηSP]を測定し、下記式により求めた。
[η]=0.713×([ηSP]/[C])+0.1086
「b値」:b値はポリマーの色調を示す値であり、色差計(日本電色工業社製ND−Σ80型)を用いて測定した。
[実施例1]
撹拌機、温度計、窒素吹き込み口、及び玉入りコンデンサーを備えた500mL四つ口フラスコに、HCA216g(1.0モル)、イタコン酸130g(1.0モル)を仕込み、窒素雰囲気下、釜温を120℃まで上げて完全に溶解させて均一系にし、次いで6時間かけて180℃まで昇温し反応させた。
このHCAとイタコン酸による、マイケル付加反応による生成物(10−(2,3−ジカルボキシプロピル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−フォスファフェナンスレン−10−オキシド)を、以下、「M−acid」と略記する。
次に、撹拌機、温度計、窒素吹き込み口、ト字管、TOP温度計、リービッヒ冷却管、留出物受器を備えた1L四つ口フラスコに、前述操作によって合成したM−acid346g、及び1,3−プロパンジオール304g(4.0モル)を仕込み、窒素雰囲気下で反応温度215℃にて4時間反応させた。その間に生成した水を、1,3−プロパンジオールと共に留出させたところ、最終的に、水と1,3−プロパンジオールとの合計量で50g留出した。
得られた生成物は、微黄色の、室温(20℃)で粘性の有る液体であり、該生成物のリン含有率は5.17%、酸価は0.08eq/gであった。
この液体30gをエバポレーターに仕込み、減圧条件下(2700Pa)にて濃縮を施し、次いで30mLの水にて3回洗浄を施し、再びエバポレーターにて脱水することにより精製を行った。
精製後の化合物は無色透明の室温で高粘度の液体であった。また、精製後の化合物のリン含有率は6.7質量%、元素分析値はC=59.72質量%、H=5.91質量%であり、酸価は0.00eq/gであった。
IRは、図1に示すように、3400cm−1付近に−OH、1760cm−1にカルボン酸エステルのC=Oに基づく極大吸収が有った。
NMRのτ値は1.8〜2.9、5.6〜6.0、6.0〜6.2、6.2〜6.5、7.0〜7.3、7.3〜7.8に各々、ビフェニル、−COOCH−、−OH、−CHO−、P−CH−、−CH−に基づく吸収があり、それらの吸収比は8:4:2:4:2:2であった。
これらの分析値から、得られた化合物は、下記に示す構造を有する10−[2,3−ジ(3−ヒドロキシプロポキシカルボニル)プロピル]−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−フォスファフェナンスレン−10−オキシド(以下、MP−esterと略記する。)であることが判明した。
Figure 2007145727
撹拌機、温度計、窒素吹き込み口、ト字管、TOP温度計、リービッヒ冷却管、留出物受器を備えた1L四つ口フラスコに、1,3−プロパンジオール304g、テレフタル酸332gを仕込み、常圧下、釜温220℃にて4時間エステル化反応を行った。
得られたエステル化物と共に、前述のMP−ester76gを重縮合反応器に仕込み、テトラブチルチタネート0.7gを添加し、次いで27Paの減圧下、245℃で2時間重縮合反応を行い、極限粘度が0.7のPTTのプレポリマーを得た。
得られたプレポリマーを、130℃にて1時間予備乾燥した後、133Paの減圧下にて、200℃で3時間固相重合することにより、リン原子としての含有量が8000ppm、極限粘度が1.02、b値が6のPTT樹脂が得られた。
得られたPTT樹脂を、常法に従ってエクストルダー型紡糸機を用い、290℃で紡糸して得られたフィラメントを、ホットプレート上で3.3倍に延伸し、完成糸を得た。
この糸をメリアス編みにして作製した織物サンプルの難燃性について、繊維製品の燃焼性試験方法〔JIS L−1091 A−1(45°ミクロバーナー法)〕にて、4回試験を行ったところ、その平均残炎時間は0.6秒であった。平均残炎時間が短いほど優れた難燃性を有することを意味する。
[実施例2]
撹拌機、温度計、窒素吹き込み口、ト字管、TOP温度計、リービッヒ冷却管、留出物受器を備えた1L四つ口フラスコに、HCA216g(1.0モル)、イタコン酸130g(1.0モル)、1,3−プロパンジオール304g(4.0モル)を仕込み、窒素雰囲気下で撹拌しながら反応温度を120℃に設定し、次いで2時間かけて215℃まで昇温し、215℃にて4時間反応させた。その間に生成した水を、1,3−プロパンジオールと共に留出させたところ、最終的に、水と1,3−プロパンジオールとの合計量で45g留出した。
得られた生成物は、微黄色の室温で粘性の有る液体であり、該生成物のリン含有率は5.12%、酸価は0.10eq/grであった。
得られた生成物を、実施例1と同様の方法にて精製した。精製後の化合物は、無色透明の、室温で高粘度の液体であり、リン含有率は6.73質量%、元素分析値はC=59.78質量%、H=5.87質量%であり、酸価は0.00eq/gであった。また、IRは3400cm−1付近に−OH、1760cm−1にカルボン酸エステルのC=Oに基づく極大吸収が有り、NMRのτ値は1.8〜2.9、5.6〜6.0、6.0〜6.2、6.5〜7.0、7.0〜7.3、7.3〜7.8に各々、ビフェニル、−COOCH−、−OH、−CHO−、P−CH−、−CH−に基づく吸収があり、それらの吸収比は8:4:2:4:2:2であった。
これらの分析値より、実施例2で得られた化合物が、実施例1で得られた化合物と同様、MP−esterであることが確認された。
こうして得られたMP−esterを用いて、実施例1に記載の方法と同様の操作にて、PTT樹脂を得た。得られたPTT樹脂は、リン原子としての含有量が8000ppm、極限粘度が1.03、b値が4.8であった。
得られたPTT樹脂を、常法に従ってエクストルダー型紡糸機を用い、290℃で紡糸して得られたフィラメントを、ホットプレート上で3.3倍に延伸し、完成糸を得た。
この糸をメリアス編みにして作製した織物サンプルの難燃性について、繊維製品の燃焼性試験方法〔JIS L−1091 A−1(45°ミクロバーナー法)〕にて、4回試験を行ったところ、その平均残炎時間は0.7秒であった。
[実施例3]
撹拌機、温度計、窒素吹き込み口、ト字管、TOP温度計、リービッヒ冷却管、留出物受器を備えた1L四つ口フラスコに、イタコン酸130g(1.0モル)、1,3−プロパンジオール304g(4.0モル)を仕込み、2700Paの減圧条件下にて、反応温度を130℃に設定し、5時間反応させたところで、反応にて生成する水の留出が見られなくなったので、窒素にて常圧に戻し、HCA216g(1.0モル)を仕込んだ。
HCA添加後、窒素雰囲気下で、130℃から6時間かけて180℃まで昇温し反応させ、得られた生成物は、微黄色の、室温で粘性の有る液体であり、該生成物のリン含有率は5.15質量%、酸価は0.05eq/gであった。
得られた生成物を、実施例1と同様の方法にて精製した。精製後の化合物は、無色透明の、室温で高粘度の液体であり、リン含有率は6.71質量%、元素分析値はC=59.75質量%、H=5.86質量%であり、酸価は0.00eq/grであった。また、IRは3400cm−1付近に−OH、1760cm−1にカルボン酸エステルのC=Oに基づく極大吸収が有り、NMRのτ値は1.8〜2.9、5.6〜6.0、6.0〜6.2、6.5〜7.0、7.0〜7.3、7.3〜7.8に各々、ビフェニル、−COOCH−、−OH、−CHO−、P−CH−、−CH−に基づく吸収があり、それらの吸収比は8:4:2:4:2:2であった。
これらの分析値より、実施例3で得られた化合物が、実施例1で得られた化合物と同様、MP−esterであることが確認された。
こうして得られたMP−esterを用いて、実施例1に記載の方法と同様の操作にて、PTT樹脂を得た。得られたPTT樹脂は、リン原子としての含有量が8000ppm、極限粘度が1.01、b値が7であった。
得られたPTT樹脂を、常法に従ってエクストルダー型紡糸機を用い、290℃で紡糸して得られたフィラメントを、ホットプレート上で3.3倍に延伸し、完成糸を得た。
この糸をメリアス編みにして作製した織物サンプルの難燃性について、繊維製品の燃焼性試験方法〔JIS L−1091 A−1(45°ミクロバーナー法)〕にて、4回試験を行ったところ、その平均残炎時間は0.6秒であった。
[比較例1]
撹拌機、温度計、窒素吹き込み口、ト字管、TOP温度計、リービッヒ冷却管、留出物受器を備えた1L四つ口フラスコに、1,3−プロパンジオール304g、テレフタル酸332gを仕込み、常圧下、釜温220℃にて4時間エステル化反応を行った。
得られたエステル化物を重縮合反応器に仕込み、テトラブチルチタネート0.6gを添加し、次いで27Paの減圧下、245℃で2時間重縮合反応を行い、極限粘度が0.7のPTTのプレポリマーを得た。
得られたプレポリマーを、130℃にて1時間予備乾燥した後、133Paの減圧下にて、200℃で3時間固相重合することにより、極限粘度が1.00、b値が5.4のPTT樹脂が得られた。
得られたPTT樹脂を、常法に従ってエクストルダー型紡糸機を用い、290℃で紡糸して得られたフィラメントを、ホットプレート上で3.3倍に延伸し、完成糸を得た。
この糸をメリアス編みにして作製した織物サンプルの難燃性について、繊維製品の燃焼性試験方法〔JIS L−1091 A−1(45°ミクロバーナー法)〕にて、4回試験を行ったところ、その平均残炎時間は6.2秒であった。
[比較例2]
比較例1と同様の操作にて得られた極限粘度1.00のPTT樹脂に対し、トリス(2,6―ジメチルフェニル)ホスフェート50gを添加、ニーダーを用いて290℃にて溶融混合した後、常法に従ってエクストルダー型紡糸機を用い、290℃で紡糸して得られたフィラメントを、ホットプレート上で3.3倍に延伸し、完成糸を得た。
この糸をメリアス編みにして作製した織物サンプルの難燃性について、繊維製品の燃焼性試験方法〔JIS L−1091 A−1(45°ミクロバーナー法)〕にて、4回試験を行ったところ、その平均残炎時間は0.7秒であった。
試験例1〔物性(ソフト性、伸長回復性)評価〕
実施例1、実施例2及び実施例3で紡糸した糸と、比較例1及び比較例2で紡糸した糸のソフト性及び伸長回復性を下記の手順で比較した。
ソフト性は、2cm間隔に糸を張り、その間を1cm押し下げる時に必要な応力の平均値とした。応力が大きいほど、ソフト性に優れることを意味する。
伸長回復性は糸を20%伸ばした後の回復率の平均値を取った。伸長回復性が大きいほど、伸長回復性に優れることを意味する。
その結果を表1に示した。
Figure 2007145727
実施例1〜3と比較例1との間では、その物性(ソフト性、伸長回復性)には殆ど差異は見られないが、MP−ester以外の難燃剤(トリス(2,6―ジメチルフェニル)ホスフェート)を添加した比較例2は、物性(ソフト性、伸長回復性)が大幅に低下していた。
試験例2〔クリーニング後の難燃性評価〕
実施例1、実施例2、実施例3及び比較例2で作製した織物サンプルについて、クリーニング後の難燃性評価を行った。
(1)耐ドライクリーニング性
織物サンプル20g当たり1kgのパークロロエチレンを用いて、これらを30℃で30分撹拌後、織物サンプルを取り出し、40℃に設定した乾燥機で質量変化が無くなるまで乾燥した。同じ操作を5回繰り返し、ドライクリーニング後の評価サンプルとした。
この評価サンプルの難燃性について、繊維製品の燃焼性試験方法〔JIS L−1091 A−1(45°ミクロバーナー法)〕にて、4回試験を行ったところ、その平均残炎時間は実施例1〜3が0.7秒であったのに対し、比較例2は大きく値を崩し、4.3秒であった。
(2)耐水クリーニング性
織物サンプル20g当たり1kgの1%アルキルベンゼンスルホン酸ソーダ水溶液を用いて30℃で30分撹拌後、織物サンプルを取り出し、同量の水ですすいだ後、これを40℃に設定した乾燥機で質量変化が無くなるまで乾燥した。同じ操作を5回繰り返し、水洗後の評価サンプルとした。
この評価サンプルの難燃性について、繊維製品の燃焼性試験方法〔JIS L−1091 A−1(45°ミクロバーナー法)〕にて、4回試験を行ったところ、その平均残炎時間は、実施例1が0.7秒、実施例2及び実施例3が0.6秒であったのに対し、比較例2は5.8秒と難燃効果の著しい低下が見られた。
これらの結果より、PTTの製造過程においてMP−esterを共重合させることにより、柔軟性、弾性回復率を低下させること無く、高い難燃性を有するPTTが得られることは明らかである。また、その難燃性は、耐ドライクリーニング性及び耐水クリーニング性に優れる事が判明した。
本発明の有機リン化合物(1)は、新規な反応型難燃剤として有用なものである。
そのため、本発明の有機リン化合物(1)は、例えばポリエステル等の種々のポリマーを製造するための改質剤として、ポリマーに、安定した優れた難燃性を付与するために利用できる。
本発明の有機リン化合物(1)は、特にPTTに対して好適に用いることができ、本発明の有機リン化合物(1)を用いて得られるPTTは、優れた難燃性を有し、しかも柔軟性、伸長回復性等の特性も良好である。
したがって、本発明のPTTは、衣類、カーペット、産業資材用繊維等の用途に有効に利用することができる。
実施例1で合成した化合物(MP−ester)の赤外線吸収スペクトルを示す図である。

Claims (7)

  1. 下記一般式(1)で示される有機リン化合物。
    Figure 2007145727
    [一般式(1)中、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基を表す。]
  2. 下記一般式(2)で示される化合物と、イタコン酸と、1,3−プロパンジオールとを反応せしめることを特徴とする下記式(1)で示される有機リン化合物の製造方法。
    Figure 2007145727
    [一般式(2)中、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基を表す。]
    Figure 2007145727
    [一般式(1)中、R、R及びRは、それぞれ、前記一般式(2)中のR、R及びRと同じである。]
  3. 前記一般式(2)で示される化合物と、イタコン酸と、1,3−プロパンジオールとを混合物として反応させる請求項2記載の有機リン化合物の製造方法。
  4. 前記一般式(2)で示される化合物とイタコン酸とを反応させて得られる下記一般式(3)で示される化合物と、1,3−プロパンジオールとを反応させる請求項2記載の有機リン化合物の製造方法。
    Figure 2007145727
    [一般式(3)中、R、R及びRは、それぞれ、前記一般式(2)中のR、R及びRと同じである。]
  5. イタコン酸と1,3−プロパンジオールとを反応させて得られるエステル化合物と、前記一般式(2)で示される化合物とを反応させる請求項2記載の有機リン化合物の製造方法。
  6. 下記一般式(1)で示される有機リン化合物に由来する構成単位を有することを特徴とするポリトリメチレンテレフタレート。
    Figure 2007145727
    [一般式(1)中、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基を表す。]
  7. 前記一般式(1)で示される有機リン化合物に由来する構成単位を、当該ポリマー中のリン原子としての含有量が500〜50000ppmとなる割合で含有する請求項6記載のポリトリメチレンテレフタレート。

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