ところで、特許文献1に開示されたリニアモータを用いる従来のフロートガラス製造装置は、リニアモータの移動磁界を溶融金属に作用させるが、浴槽の炉床を煉瓦(以下、ボトム煉瓦と称する)で構成し、また、気密性を高めるためにボトム煉瓦の下面を覆うケーシング(以下、ボトムケーシングと称する)を金属によって構成する必要がある。
しかしながら、フロートガラス製造装置を上述の如く構成した場合、浴槽内の溶融金属がボトムケーシングから漏出するという虞があった。この漏出原因について説明すると、当該製造装置は、リニアモータの移動磁界をボトムケーシング及びボトム煉瓦を介して溶融金属に与える装置のため、このときに金属製のボトムケーシングに誘導電流が発生し、ボトムケーシングがジュール熱により発熱し昇温する。そして、ボトムケーシングの昇温により、ボトム煉瓦の目地に浸透していた前記溶融金属が加熱されて溶け出し、ボトムケーシングと接触して反応し、ボトムケーシングを浸食する。
以上の理由により、浴槽内の溶融金属がボトム煉瓦の目地を伝わってボトムケーシングの浸食部から漏出する。例えば、溶融金属として溶融錫を使用した場合、錫の融点は約232℃である。これがボトムケーシングのジュール熱によって更に加熱されると、ボトムケーシングを浸食することとなる。
なお、ボトムケーシングを非磁性体製とすることにより、磁性体製のものと比較して誘導電流を抑えることができるが、前述したジュール熱の発生を大幅に解決するものではない。また、誘導電流を抑えるために、リニアモータに流す電流を小さくした場合には、溶融金属に与える移動磁界が低下するので、溶融金属に与える駆動力が低下し、溶融金属の浴面に好適な凹部を形成することができなくなる問題が生じる。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、ボトムケーシングの昇温を抑制することにより、ボトムケーシングの浸食を阻止することができるフロートガラスの製造装置及びその方法を提供することを目的とする。
請求項1に記載の発明は、前記目的を達成するために、溶融金属が湛えられた浴槽、浴槽の炉床のボトム煉瓦、ボトム煉瓦の下面にボトム煉瓦を覆うボトムケーシング、ボトムケーシングの下部に溶融金属を磁界により駆動するためのリニアモータが設けられたフロートガラスの製造装置であって、前記ボトムケーシングの少なくともリニアモータの移動磁界の作用するエリアは、非磁性体製のボトムケーシングであり、該ボトムケーシングは冷却構造を有することを特徴とするフロートガラスの製造装置を提供する。
請求項1に記載の発明によれば、少なくともリニアモータの移動磁界の作用するエリアの非磁性体製のボトムケーシングに冷却構造を付与し、この冷却構造を利用してボトムケーシングを冷却するので、リニアモータのパワーを落とすことなく、ジュール熱によるボトムケーシングの昇温を抑制できる。これにより、ボトム煉瓦の目地に浸透していた金属の溶融を阻止でき、溶け出した溶融金属との反応によるボトムケーシングの浸食を阻止できる。冷却構造としては、冷却空気をボトムケーシングに直接吹き付けて冷却する空冷によるもの、水冷によるもの等、冷却手段全般を含む。
請求項2に記載の発明は、請求項1において、前記冷却構造は、水冷管構造であることを特徴としている。
冷却構造は、請求項2の如くボトムケーシングに水路を形成した水冷管構造であり、これらの水路に、例えば加圧水循環方式により冷却水を流すことによって実現できる。この冷却構造によれば、ボトムケーシングを直接冷却できるので、高い冷却効率を得ることができる。また、ボトムケーシングの壁面にウォータジャケットを装着することによっても冷却構造を実現できる。
請求項3に記載の発明は、前記目的を達成するために、溶融金属が湛えられた浴槽、浴槽の炉床のボトム煉瓦、ボトム煉瓦の下面にボトム煉瓦を覆うボトムケーシング、ボトムケーシングの下部に溶融金属を磁界により駆動するためのリニアモータが設けられたフロートガラスの製造装置であって、前記ボトムケーシングの少なくともリニアモータの移動磁界の作用するエリアが、絶縁材により電気的に相互に絶縁された複数の非磁性体製のケーシング片によって構成されていることを特徴としている。
請求項3に記載の発明によれば、少なくともリニアモータの移動磁界の作用するエリアのボトムケーシングを、例えば錫と親和性のないシリカガラス製不織布等の絶縁材により、電気的に相互に絶縁された複数の非磁性体製のケーシング片によって構成したので、一体構造のケーシング部材によってボトムケーシングを構成したものと比較し、誘導電流を抑制できる。よって、リニアモータのパワーを落とすことなく、ボトムケーシングの昇温を抑制できる。これにより、ボトム煉瓦の目地に浸透していた金属の溶融を阻止でき、溶け出した溶融金属との反応によるボトムケーシングの浸食を阻止できる。また、本発明では、ボトムケーシングの誘導電流によるロスが減少するため、溶融金属への移動磁界が増加し、溶融金属に与える駆動力も向上する。これにより、溶融金属の浴面に、好適な凹部を形成することが可能となる。
従来装置では、ボトムケーシングに大きな誘導電流が発生していたため、リニアモータに与える電流に制限があったが、本発明のボトムケーシングの誘導電流低減により、リニアモータに与える電流を増加させることができ、溶融金属の駆動力を更に増大させることができる。これにより、溶融金属の浴面に、更に好適な凹部を形成することが可能となる。
請求項4に記載の発明は、請求項3において、前記ケーシング片は、短冊状であり、その短辺寸法をW(mm)とし、前記リニアモータのポールピッチをτ(mm)とした際に、W≦2τであり、前記リニアモータによる磁界移動方向に対し前記ケーシング片の長辺を略平行に並べて配置されていることを特徴としている。なお、前記リニアモータのポールピッチとは、リニアモータに交流電流を流した際の磁束密度の半波長(半周期の長さ)をいう(産業用リニアモータ(56頁)、著者:山田一、発行所:株式会社工業調査会)。
ケーシング片の短辺寸法(W)とケーシング片の発熱量(kW)とは略比例関係にあるため、短辺寸法を小さくすることにより発熱量を抑えることができる。
そこで、請求項4に記載の発明によれば、短冊状のケーシング片の短辺寸法をW(mm)とし、リニアモータのポールピッチをτ(mm)とした際に、W≦2τであり、かつ複数のケーシング片をリニアモータによる磁界移動方向に対して長辺を略平行に並べて配置したので、ボトムケーシングの誘導電流を十分に抑えることが可能となる。なお、ボトムケーシングの強度を確保し、また、施工性を考慮すると、W≧80mmに設定することが好ましい。
請求項5に記載の発明は、前記目的を達成するために、溶融金属が湛えられた浴槽、浴槽の炉床のボトム煉瓦、ボトム煉瓦の下面にボトム煉瓦を覆うボトムケーシング、ボトムケーシングの下部に溶融金属を磁界により駆動するためのリニアモータが設けられたフロートガラスの製造装置であって、前記ボトムケーシングの少なくともリニアモータの移動磁界の作用するエリアは、水冷管を有する冷却構造を備えるとともに、絶縁材により電気的に相互に絶縁された複数の非磁性のステンレス製のケーシング片によって構成されていることを特徴としている。
請求項5に記載の発明によれば、少なくともリニアモータの移動磁界の作用するエリアのボトムケーシングを、水冷管を有する冷却構造により直接冷却するとともに、錫と親和性のないシリカクロスを主材とした絶縁材により電気的に相互に絶縁された非磁性のステンレス製の複数のケーシング片によって構成することでボトムケーシングに発生する誘導電流を抑えたので、ボトム煉瓦の目地に浸透していた金属の溶融を阻止でき、溶け出した溶融金属との反応によるボトムケーシングの浸食を阻止できる。
請求項6に記載の発明は、前記目的を達成するために、請求項1、2、3、4又は5のうちいずれか一つに記載のフロートガラスの製造装置を用いてフロートガラスを製造するフロートガラスの製造方法を提供する。
本発明に係るフロートガラスの製造装置及びその方法によれば、リニアモータのパワーを落とすことなく、ジュール熱によるボトムケーシングの昇温を抑制できるので、ボトム煉瓦の目地に浸透していた金属の溶融を阻止でき、溶け出した溶融金属との反応によるボトムケーシングの浸食を阻止できる。
以下添付図面に従って、本発明に係るフロートガラスの製造装置及びその方法の好ましい実施の形態について詳説する。
図1は、フロート法により板ガラスを製造する板ガラス製造装置10の平面図が示されている。FPD用の板ガラス、例えば液晶用板ガラスは、一般に約0.1〜1.1mmの板厚が要求され、また、平坦度も高精度に要求される。この板ガラス製造装置10は、樋状体12を利用した装置が適用され、この板ガラス製造装置10によれば、FPD用板ガラスとして要求される板厚、平坦度を満足する板ガラスを製造することができる。
板ガラス製造装置10の樋状体12は、浴槽14の内部に配設され、浴槽14に湛えられた溶融錫(溶融金属)16に浸漬配置されるとともに、溶融ガラス炉から浴槽14の供給口18へ連続供給された溶融ガラスリボン20の両側エッジ22、22に沿って配置されている。また、溶融ガラスリボン20は、溶融錫16の浴面上を徐冷レヤーの方向(図1のX方向)に引っ張られながら進行し、エッジ22、22が浴面24の凹部26に保持され、溶融ガラスリボン20の幅方向に狭まろうとする力が補償される。また、凹部26によってエッジ22が保持された溶融ガラスリボン20は、板厚、幅が調整され、その後、安定した状態で浴槽後段に送られながら冷却されて徐冷レヤーへ送られる。
実施の形態のガラスは、無アルカリガラス又はソーダライムガラス等であり、溶融錫16及びガラスリボン20は、電気ヒータ(不図示)によって800〜1300℃に加熱されている。
図2は、図1のF−F断面図であり、図3は図1のG−G断面図である。これらの図に示すように、樋状体12は断面略L字状に形成されるとともに、入口28が形成された縦方向流路30及び、出口32が形成された横方向流路34(図2)と、縦方向流路30に相当する位置に貫通孔36が形成された循環用流路38(図3)とからなる。
また、浴槽14の底部で樋状体12の横方向流路34の下方にはリニアモータ40が設置され、このリニアモータ40から与えられる移動磁界によって横方向流路34内の溶融錫16に駆動力が与えられ、溶融錫16が樋状体12の縦方向流路30と横方向流路34とにおいて矢印Hで示す方向に流動される。
この動作により、浴面24に対して略垂直な方向であって、浴槽14の底に向かう溶融錫16の流れが発生するので、溶融ガラスリボン20のエッジ22の下方に負圧が発生し、この負圧によって、エッジ22近傍の溶融錫16の浴面レベルがその周囲の浴面レベルよりも低くなる。そして、この低くなった浴面24の凹部26に溶融ガラスリボン20のエッジ22が流入する。これにより、溶融ガラスリボン20のエッジ22が凹部26に保持されるので、溶融ガラスリボン20の幅広化が達成でき、幅方向に保持されながら徐冷レヤーの方向に引っ張られることにより、平衡厚さよりも薄い板厚(0.1〜1.1mmの板厚)の板ガラスに製造される。
樋状体12の材質は、溶融錫16に対して反応性の低いもの、又は反応がないもの、及び高温耐性のあるものであればよく、アルミナ、シリマナイト(珪線石)、粘土質などの煉瓦並びにカーボンを例示できる。実施の形態ではリニアモータ40を用い、樋状体12に磁界を作用させるため、樋状体12の材質は非磁性体であることを要し、また、大型であるが故に加工性がよいことを要するので、カーボンが適用されている。
リニアモータ40は、溶融錫16を非接触で直接駆動でき、流量制御が容易である利点がある。リニアモータ40は、櫛歯状の一次鉄心にコイルを形成し、このコイルに三相交流電圧を印加し、コイルを順次磁化することにより、一定の方向に移動する磁界を発生する。このリニアモータ40は、樋状体12の浴槽14を構成するボトム煉瓦50、50…及びボトム煉瓦50、50…を覆うボトムケーシング52の下方に設置され、樋状体12の横方向流路34内にある溶融錫16に対して駆動力(付勢力)が作用するような位置に配置されている。これにより、縦方向流路30及び横方向流路34内の溶融錫16は、リニアモータ40の駆動力によって、矢印Hの如く溶融ガラスリボン20のエッジ22の直下から浴槽14の側壁15に向かって流動する。ボトムケーシング52については後述する。
樋状体12は、縦方向流路30及び横方向流路34の他、循環用流路38を有している。この循環用流路38は、縦方向流路30に相当する位置に形成された貫通孔36を介して溶融ガラスリボン20のエッジ22の浴槽中央側部14Bに連通されているため、浴槽縁部14Aと浴槽中央側部14Bとが、循環用流路38及び貫通孔36を介して連通されている。したがって、図2、図3の如く横方向流路34の出口32から流出し、浴槽14の側壁15によって流動方向が変えられた溶融錫16は、その一部が矢印Iの如く循環用流路38に導入され、貫通孔36を介して浴槽中央側部14Bに導かれる。また、残り溶融錫16は矢印Jの如く浴槽縁部14Aに流出し、縦方向流路30の入口28に吸引される。
また、循環用流路38は、図1の破線で示すように溶融ガラスリボン20の流動方向に所定の間隔をもって複数形成されている。循環用流路38の形成間隔は、縦方向流路30の入口28において、吸引される溶融錫に乱れを発生させない間隔、凹部26の凹形状に影響を与えない間隔に設定されているとともに、浴槽縁部14Aと浴槽中央側部14Bとから縦方向流路30の入口28に流入する双方の流量のバランスが、入口の全長にわたって略均一で且つエッジ保持に関して最適になる間隔に設定されている。循環流路は例えば、0.3〜1mごとに設けることができる。
溶融錫16の流出の制御は、板ガラス製造装置10の稼働前に、予め制御し設定しておいてもよし、板ガラス製造装置10の稼働後に、ガラス生産を行いながら制御し設定してもよい。
このように構成された樋状体12によれば、樋状体12の横方向流路34の出口32から浴槽縁部14Aに流出した溶融錫16のうちの一部の溶融錫16は、入口28にて発生している吸引力により、循環用流路38及び貫通孔36を介して浴槽中央側部14Bに導かれ、入口28に吸引される。これにより、図4の如く浴槽縁部14Aから入口28に流入する溶融錫16の流量q1と、浴槽中央側部14Bから入口28に流入する溶融錫16の流量q2とがバランスが取れ、溶融ガラスリボン20の進行方向に沿う双方の流量q1、q2の流量が略均一となり、浴面24にエッジ保持に好適な形状の凹部26が樋状体12の全長にわたって且つ溶融ガラスリボン20の進行方向に沿って略均一に形成されるので、エッジ22の全長が凹部26に安定して保持される。したがって、FPD用板ガラスとして要求される板厚、平坦度を満足する板ガラスを製造できる。
また、溶融ガラスリボン20の流動方向に所定のブロック毎に温度が設定されている場合には、前記ブロックに相当する位置に循環用流路38が少なくとも一つ設けられていれば、前記ブロック毎の温度分布を一定に保つことができ、安定したガラス品質が得られる。
実施の形態のボトムケーシング52は、リニアモータ40の移動磁界を溶融錫16に与えるために、少なくともリニアモータ40の移動磁界の作用するエリアが、非磁性体であるオーステナイト系のステンレスによって構成されている。また、このエリアのボトムケーシング52に、冷却構造である水路54、54…(図6参照)が形成されている。
したがって、ボトムケーシング52は、これらの水路54、54…に、例えば加圧水循環方式により冷却水を流すことによって冷却される。このようにボトムケーシング52に冷却構造を付与することにより、ボトムケーシング52を容易に冷却することができるので、リニアモータ40のパワーを落とすことなく、ジュール熱によるボトムケーシング52の昇温を抑制できる。これにより、ボトム煉瓦50、50…の目地に浸透していた錫の溶融を阻止でき、溶け出した溶融錫との反応によるボトムケーシング52の浸食を阻止できる。また、この冷却構造によれば、ボトムケーシング52を直接冷却できるので、高い冷却効率を得ることができる。なお、この冷却構造は、ボトムケーシング52内に設けてもよいし、ボトムケーシング52の表面に接するように設けてもよい。
ところで、実施の形態のボトムケーシング52の少なくともリニアモータ40の移動磁界の作用するエリアは、図5、図6の如く錫と親和性のないシリカガラス繊維を主材とした不織布(絶縁材)56により電気的に相互に絶縁された複数のオーステナイト系のステンレス製のケーシング片58、58…を配列して構成されている。したがって、図7の如く、一体構造のケーシング部材によってボトムケーシング100を構成したものと比較し、誘導電流を抑制できるので、図6に示したボトムケーシング52では昇温温度を抑制できる。これにより、ボトム煉瓦50の目地に浸透していた錫の溶融を阻止でき、溶け出した溶融錫との反応によるボトムケーシング52の浸食を阻止できる。また、本発明では、誘導電流によるロスが減少されるため、溶融錫16への駆動力も向上する。なお、水路54は、リニアモータ40の上方に位置するケーシング片58毎に形成されている。
図7の一体構造のケーシング部材によって構成されたボトムケーシング100では、大きな誘導電流が発生するため、リニアモータ102に与える電流に制限があったが、実施の形態のボトムケーシング52(図5、図6参照)の誘導電流低減により、リニアモータ40に与える電流を増加させることができ、溶融錫16への駆動力を更に増大させることができる。また、リニアモータ40のパワーをある程度落としても、従来同様の駆動力を得ることができるので、省エネルギ化も図ることができる。
更にまた、短冊状のケーシング片58は図5に示すように、その短辺寸法をW(mm)とし、リニアモータ40のポールピッチをτ(mm)とした際に、誘導電流を十分抑えるためにW≦2τとなる短辺寸法に形成される。また、ケーシング片58は全体形状が短冊状に形成され、図5の太矢印のリニアモータ40による移動磁界の移動方向に対して長辺を略平行に並べて配置されている。
ケーシング片58の短辺寸法(W)と、リニアモータ40によるケーシング片58の発熱量(kW)とは略比例関係にある。このため、短辺寸法(W)を小さくすればするほど発熱量(kW)を抑えることができるので有利であるが、短辺寸法(W)を小さくするに従ってボトムケーシング52の強度及び施工性が低下する。このため、ケーシング片58の短辺寸法は、W≧80mmが好ましい。
図8は、短辺寸法(W)/ポールピッチ(τ)に対する発熱比の関係を示したグラフであり、この発熱比は、従来の一体型のボトムケーシングでの発熱量を1とした場合における比である。
図8のグラフによりW/τ≦2とすると、従来と比較し発熱量を70%以下に抑えることが可能となる。好ましくはW/τ≦1、より好ましくはW/τ≦0.5、更に好ましくはW/τ≦0.3である。ここで、ボトムケーシング52の強度及び施工性を考慮すると、Wは80〜150mm、より好ましくは90〜110mmが好適である。例えばW=100mm、τ=348mmの場合、発熱比は従来の一体型のボトムケーシングと比較して約6%となり、またW=100mm、τ=261mmの場合、約10%となる。以上の結果により、ボトムケーシング52の発熱量を大幅に抑えることができる。ケーシング片58の板自体の板厚は3〜10mmが好適である。
なお、実施の形態の板ガラス製造装置10では、ボトムケーシング52に水路54が形成された冷却構造を付与し、かつボトムケーシング52を複数のケーシング片58、58…によって構成したが、冷却構造とケーシング片58による分割構造とを個別に構成しても、ボトム煉瓦の目地に浸透していた金属の溶融を阻止でき、溶け出した溶融錫との反応によるボトムケーシングの浸食を阻止できる、と言う同様の効果を達成できる。
また、実施の形態では、リニアモータ40の磁界により溶融錫16の浴面24に凹部26を形成し、凹部26に溶融ガラスリボン20の両側エッジ22、22を流入させて板ガラスを製造する製造装置10を例示したが、これに限定されるものではない。すなわち、本発明のフロートガラスの製造装置は、溶融錫が湛えられたフロート法において、ボトムケーシングの下部にリニアモータが設けられた製造装置であれば適用できる。なお、FPD用板ガラスとして要求される板厚、平坦度のガラスを安定して生産するためには、前述した凹部26に両側エッジ22、22を流入させて保持する製造装置10を採択することが好ましい。
10…板ガラス製造装置、12…樋状体、14…浴槽、16…溶融錫、18…供給口、20…溶融ガラスリボン、22…エッジ、24…浴面、26…凹部、28…入口、30…縦方向流路、32…出口、34…横方向流路、36…貫通孔、38…循環用流路、40…リニアモータ、50…ボトム煉瓦、52…ボトムケーシング、54…水路、56…不織布、58…ケーシング片