図1は、本発明の実施の一形態の通信改善用シート体(以下、シート体という)10の断面図である。シート体10は、通信妨害部材の近傍で、アンテナ素子を用いて好適に無線通信するためのシートであって、アンテナ素子と通信妨害部材との間に設けられる。
このシート体10は、シート状であり、パターン層15と、第1貯蔵体層14と、反射域形成層12と、貼付層11とを有する。シート体10は、さらに第2貯蔵体層13を有する。各層11〜15は、図1においては上方側となる厚み方向(積層方向)一方側の電磁波入射側から、パターン層15、第1貯蔵体層14、第2貯蔵体層13、反射域形成層12、貼付層11の順序で積層され、このような積層構成でシート体10が構成される。パターン層15の電磁波入射側(図1の上方)には、さらに電磁波を反射する層でない表面層16が形成されてもよい。以下、理解を容易にするために、各貯蔵体層14,13を貯蔵体層という場合がある。
本実施の形態で、シート体10の必要な構成要素は、パターン層15、貯蔵体層、及び反射域形成層12である。ただし、反射域形成層12はその機能を有する電磁波反射材(例えば金属)に接して使用する場合は、シート体10に含まれてなくてもよい。パターン層15は、アンテナとして機能する導電性パターン22が形成される。貯蔵体層は、非導電性である誘電体層および/または磁性体層からなる層であり、複素比誘電率の実数部ε’および/または複素比透磁率の実数部μ’を有するが、それぞれの損失成分である複素比誘電率の虚数部ε”および/または複素比透磁率の虚数部μ”はできるだけ低く抑えられた材料から構成される。貯蔵体層はパターン層15の近傍に位置し、その複素比誘電率の実数部ε’および/または複素比透磁率の実数部μ’によりシート体10に入った電磁波の伝播経路を曲げることが可能となり、さらに波長短縮効果により導電性パターン11及びシート体10の厚さを小型化及び薄型化することができる。シート体10の複素比誘電率の実数部ε’の範囲は、通信周波数帯にて1〜200であり、複素比透磁率の実数部μ’の範囲は、通信周波数帯にて1〜100である。好適には、導電性パターン11に近いところに高ε’および/または高μ’の材料を位置させるのが、波長短縮効果を得やすくなる。この貯蔵体層は、単層でも多層でもよく、空気層を含有する構成も可能である。例えば、貯蔵体層(誘電体層)として発泡体、樹脂、紙、接着剤、粘着剤などを用いることができ、シート体10としてパターン層15、接着剤層(高誘電率)、発泡体層(低損失)、反射域形成層12の様に積層した構成を例示することができる。これはパターン層15の近傍ほど貯蔵体層からの波長短縮効果を与え易いため誘電材料等を配合した接着材を用い、導電性パターン22と反射域形成層12の距離を確保するには低損失の誘電材料を使用し、軽量化、低価格化を得ながら通信改善を行う構成である。この接着材層や発泡体層が本発明でいう貯蔵体層になる。もちろん、この構成に限定されることはなく、種々の材料を組み合わせることができる。
図1に示す構成は、貯蔵体層として第1および第2貯蔵体層14,13を有する構成である。貯蔵材は、誘電性材料から成る誘電性材(以下「誘電材」という場合がある)および磁性材料から成る磁性材を含む。第1および第2貯蔵体層14,13は、複素比透磁率(μ’、μ”)を有する磁性材および複素比誘電率(ε’、ε”)を有する誘電材の少なくともいずれか一方である材料から成り、ともに磁性材であってもよいし、ともに誘電材であってもよいし、いずれか一方が誘電性材でありかついずれか他方が磁性材であってもよい。また誘電材でも磁性材でもよい第1貯蔵体層14のみを用いて、第2貯蔵体層13を設けない構成も本発明に含まれる。本実施の形態では、第1貯蔵体層14は、磁性材であり、第2貯蔵体層13は、誘電材である。
反射域形成層12は、第2貯蔵体層13の電磁波入射側とは反対側の表面上に、全面にわたって導電性膜が形成されて構成され、シート体10に積層される後述するタグ本体54による無線通信に用いられる電磁波を反射する。貼付層11は、粘着性または接着性を有し、シート体10を物品に貼着するための貼着材から成る層である。貼着材は、粘着剤および接着剤の少なくとも1種類を含み、粘着性または接着性による結合力を有している。貼付層11は必須ではなく、なくてもよい。一体になるのであればどのような構成でもよい。
アンテナ素子を介して無線通信を好適に行うために本シート体10が対象とする電磁波は、用途によって決定されるものであるが、たとえば高MHz帯に含まれる周波数の電磁波であって、さらに具体的には、日本国内では950MHz以上956MHz以下の範囲に含まれる周波数の電磁波である。前記対象とする電磁波の周波数は例示であり、例示の周波数以外の周波数の電磁波を対象とする構成でも本発明に含まれる。
また本シート体10は、2.4GHz帯の周波数の電磁波による無線通信を好適に行うために用いられることがある。2.4GHz帯は、2400MHz以上2500MHz未満の周波数範囲である。RFIDシステムで用いられる電磁波は、2400MHz以上2483.5MHz以下の範囲に含まれる。
前記対象とする電磁波の周波数は、特に限定されるものではないが、300MHz以上300GHz以下の範囲を含み、任意の単数または複数の周波数を選択することができる。この300MHz以上300GHz以下の範囲には、UHF帯(300MHz〜3GHz)、SHF帯(3GHz〜30GHz)およびEHF帯(30GHz〜300GHz)が含まれる。
各層11〜15の厚み寸法およびシート体10全の厚み寸法は、特に限定されるものではないが、例を挙げるならば、本実施の形態では、パターン層15の厚み寸法は、100Å(1×10−8m)以上500μm以下であり、第1貯蔵体層14の厚み寸法は、1μm以上5mm以下であり、第2貯蔵体層13の厚み寸法は、1μm以上45mm以下であり、反射域形成層12の厚み寸法は、100Å(1×10−8m)以上500μm以下であり、貼着層11は、1μm以上1mm以下であり、シート体10の全体の厚み寸法は、3μm以上50mm以下であり、単位面積あたりの質量が、0.1kg/m2以上40kg/m2以下であるシート状に形成される。シート体10は、全体の厚み寸法が、前述のように小さく、かつ各層13〜16が前述のような材料から成っており、可撓性を有している。したがってシート体10は、自在に変形させることができる。
高MHz帯の無線通信に用いられる場合には、シート体10全体の厚さが、0.1mm以上15mm以下であり、2.4GHz帯の無線通信に用いられる場合には、シート体10全体の厚さが、0.1mm以上8mm以下に形成される。このような構成とすることによって、周波数が高MHz帯または2.4GHz帯に含まれる周波数の電磁波を用いて好適に無線通信することができるようにするためのシート体10の厚さを可及的に小さくすることでき、薄型化することができる。
本実施の形態では第1貯蔵体層14は、複素比透磁率μおよび複素比誘電率εを含む材料特性値を選択することによって、無線通信に用いられる電磁波を集めている。複素比透磁率の実数部μ’が大きいほど、磁力線が集中して通過するようになり、電磁波の伝搬経路を曲げることが可能となる。複素比透磁率の虚数部μ”および透磁率損失項tanδμ(=μ”/μ’)が小さいほど、磁界エネルギの損失が小さくなる。したがって複素比透磁率の実数部μ’は、大きいほど好ましく、複素比透磁率の虚数部μ”および透磁率損失項tanδμは、小さいほど好ましい。磁性体による波長短縮効果により、導電性パターンの寸法およびパターン層と反射域形成層の距離を縮小化している。また誘電体による波長短縮効果、およびパターンに沿った電磁波の経路で、λ/4(2.4GHzの場合は約3cm)に相当する距離を約1mm〜約8mm(2.4GHz帯の場合)に短縮している。この場合も、空間中でのλ/4と実質同じであり、本発明でいうλ/4に含むことができる。また複素比誘電率の実数部ε’が大きいほど、電気力線が集中して通過するようになって電磁波の伝搬経路を曲げることが可能となり、複素比誘電率の虚数部ε”が小さいほど、電界エネルギの損失が小さくなる。したがって複素比誘電率の実数部ε’は大きいほど好ましく、また複素比誘電率の虚数部ε”は、小さいほど好ましい。貯蔵体層は、エネルギ損失を意図するのではなく、エネルギを集中して集め、損失しない態様で通過させることを意図している。この貯蔵体層における損失が小さい方が好ましいという性質が、本発明のシート体10が電磁波吸収体と異なるところである。
また本発明において、複素比透磁率の実数部μ’および虚数部μ”ならびに複素比誘電率の実数部ε’および虚数部ε”の数値は、無線通信に用いられる電磁波の周波数に対応する数値である。無線通信に用いられる電磁波の周波数は、前述したようにUHF帯、SHF帯およびEHF帯を含む300MHz以上300GHz以下の範囲であってもよく、たとえば高MHz帯または2.4GHz帯であってもよい。
図2は、第1貯蔵体層14の内部構造を拡大して示す断面図である。図2には、理解を容易にするために、磁性粉末18および磁性微粒子19のハッチングを省略して示す。第1貯蔵体層14は、前述のような材料特性値を得るために、結合材17に、磁性を有する材料から成る粉末(以下「磁性粉末」という)18と、磁性を有する材料から成る微粒子(以下「磁性微粒子」という)19とが混合されて形成される。第1貯蔵体層14は、磁性材料として、磁性粉末18および磁性微粒子19を含有している。図2は例示であり、これに限定されるものではない。本実施の形態では、結合材17は、ポリマーから成り、たとえばノンハロゲン系ポリマー、またはノンハロゲン系ポリマーと他のポリマーなどの材料とを混合したノンハロゲン系混合材料から成る。
結合材17として、ハロゲン系ポリマーを用いることも可能である。結合材17に関しては、ポリマー(樹脂、TPE、ゴム)ジェル、オリゴマーなど、有機系および無機系を問わず、また重合度などに依存することなく、あらゆる材質の材料を用いることができる。ノンハロゲン系の材料は、環境面で好ましく用いることができるものである。シート化するためにはポリマー材料が適し、たとえば以下に例示するものを好ましく用いることができるが、例に挙げていない種類の材料およびブレンド材料、アロイ化した材料など、シート化できる材料は全て用いることが可能である。
結合剤20の材料としては、各種の有機重合体材料を用いることが可能であり、たとえばゴム、熱可塑性エラストマー、各種プラスチックを含む高分子材料などが挙げられる。前記ゴムとしては、たとえば天然ゴムのほか、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−酢酸ビニル系ゴム、ブチルゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、アクリルゴム、エチレンアクリル系ゴム、エピクロロヒドリンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、塩素化ポリエチレンゴム、水素添加ニトリルゴム(HNBR)などの合成ゴム単独、それらの誘導体、もしくはこれらを各種変性処理にて改質したものなどが挙げられる。
これらのゴムは、単独で用いるほか、複数をブレンドして用いることができる。ゴムには、加硫剤のほか、加硫促進剤、老化防止剤、軟化剤、可塑剤、充填剤、着色剤などの従来からゴムの配合剤として用いられていたものを適宜配合することができる。これら以外にも、任意の添加剤を用いることができる。たとえば、誘電率および導電率を制御するために所定量の誘電体(カーボンブラック、黒鉛、酸化チタンなど)を、材料設計して添加することができる。さらに加工助剤(滑剤、分散剤)も適宜選択して添加してもよい。
熱可塑性エラストマーとしては、たとえば塩素化ポリエチレンのような塩素系、エチレン系共重合体、アクリル系、エチレンアクリル共重合体系、ウレタン系、エステル系、シリコーン系、スチレン系、アミド系などの各種熱可塑性エラストマーおよびそれらの誘導体が挙げられる。
さらに、各種プラスチックとしては、たとえばポリエチレン、ポリプロピレン、AS樹脂、ABS樹脂、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンなどの塩素系樹脂、ポリ酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、アクリル系樹脂、ナイロン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、アルキド樹脂、不飽和ポリエステル、ポリスルホン、ポリフェニレンサルファイド樹脂、液晶ポリマー、ポリアミドイミド樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、などの熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂およびこれらの誘導体が挙げられる。これらの結合剤として、低分子量のオリゴマータイプおよび液状タイプを用いることができる。熱、圧力、紫外線、硬化剤などにより成型後にシート状になるものであれば、任意の材料を選択することができる。これら以外にセラミックス、紙、粘土、等の有機物質、無機物質の一切の材料を使用することができる。
磁性粉末18は、扁平な軟磁性金属粉末であり、互いに接触しないように分散され、かつ第1貯蔵体層14の厚み方向に対して垂直に延びるように配向されている。磁性粉末18は、略円板状であり、平均厚み寸法は、2μmであり、厚み方向に垂直な方向の平均外径は、55μmである。磁性微粒子19は、金属粉末の厚み寸法よりも小さい微粒子であり、少なくとも外表面部が全体にわたって非導電性を有し、導電性が低くなるように構成されている。磁性微粒子19の平均外径は、1μmである。
第1貯蔵体層14を形成する結合材17は、たとえば水素添加したNBRゴムであるHNBRが用いられる。また磁性粉末18は、たとえば鉄、珪素およびアルミニウムの合金(Fe−Si−Al)であるセンダストから成る。また磁性微粒子は、全体の導電性を抑えて耐食性を有する、たとえば酸化鉄(マグネタイト)から成る。前述の寸法および材料は、例示に過ぎず、これに限定されるものではない。
第1貯蔵体層14は、適切な複素比透磁率および複素比誘電率を有するものであるなら、その材料構成はとくに限定されない。本実施例の様に結合材17に軟磁性粉末18および/または磁性微粒子19を分散させたものでもいいし、磁性体(金属酸化物、セラミックス、グラニュラ薄膜、フェライトメッキなど)をそのまま第1貯蔵体層14として使うことも可能である。軟磁性粉末18および/または磁性微粒子19である軟磁性粉末としては、センダスト(Fe−Si−Al合金)、パーマロイ(Fe−Ni合金)、ケイ素鋼(Fe−Cu−Si合金)、Fe−Si合金、Fe−Si−B(−Cu−Nb)合金、Fe−Ni−Cr−Si合金、Fe−Cr−Si合金、Fe−Al−Ni−Cr合金、Fe−Ni−Cr合金、Fe−Cr−Al−Si合金などが挙げられる。またフェライト若しくは純鉄粒子を用いても良い。フェライトとしてはたとえばMn−Znフェライト、Ni−Znフェライト、Mn−Mgフェライト、Mnフェライト、Cu−Znフェライト、Cu−Mg−Znフェライトなどのソフトフェライト、あるいは永久磁石材料であるハードフェライトが挙げられる。純鉄粒子としてはたとえばカルボニル鉄などが挙げられる。好ましくは透磁率の高い扁平軟磁性粉末を用いることがよい。これら磁性材料を単体で用いるほか、複数をブレンドしても構わない。軟磁性粉末としては、扁平軟磁性粉末と非扁平軟磁性粉末(針状、繊維状、球状、塊状など)との組合せを用いても良いが、組合せの少なくとも1種類は扁平状であることが好ましい。軟磁性粉末の粒径は0.1μm以上1000μm以下、好ましくは10μm以上300μm以下であるのがよい。また扁平軟磁性粉末のアスペクト比は2以上500以下、好ましくは10以上100以下であることがよい。軟磁性粉末はその表面に耐食性を向上させるために酸化被膜を有していても良い。磁性粉末の表面は、表面処理が施されていることが好ましい。表面処理剤はカップリング剤および界面活性剤などによる一般的な処理法を用いることができる。また磁性粉末と結合材の濡れ性を向上させる全ての手段(樹脂被覆、分散剤など)を用いることができる。
第1貯蔵体層14は、磁性材として、軟磁性金属、軟磁性酸化金属、磁性金属および磁性酸化金属のうちの少なくともいずれか1つから成る材料である、またはそれを含有する材料から成る。第1貯蔵体層14は、軟磁性金属、軟磁性酸化金属、磁性金属および磁性酸化金属のうちの少なくともいずれか1つから成る粉末および微粒子の少なくとも一方を、前述のように結合材17に、分散させる構成でもよいし、軟磁性金属、軟磁性酸化金属、磁性金属および磁性酸化金属のうちの少なくともいずれか1つによって薄膜を含む膜に形成されてもよい。第1貯蔵体層14には、例えば、磁性を有するセラミックス(フェライトなど)をそのまま使用してもよい。
磁性材料を結合材17に分散させる構成の第1貯蔵体層14は、結合材17としての有機重合体100重量部に対して、磁性材料として、フェライト、鉄合金および鉄粒子の群から選ばれる1または複数の材料を、1重量部以上1500重量部以下の配合量で含む材料から形成される。有機重合体100重量部に対する磁性材料の配合量は、好ましくは10重量部以上1000重量部以下である。有機重合体100重量部に対する磁性材料の配合量が、1重量部未満である場合、十分な透磁率が得られず、1500重量部を超えると加工性が劣り、シート体10を製造できなくなるか、または製造が困難になる。
第1貯蔵体層14の構成が同一である場合、複素比透磁率の実数部μ’および虚数部μ”は、対象となる電磁波の周波数によって異なり、対象となる電磁波の周波数が高くなるにつれて、小さくなる傾向を有している。本実施の形態において、対象とする電磁波は、高MHz帯および2.4GHz帯の電磁波を含んでいる。複素比透磁率の実数部μ’および虚数部μ”は、対象となる電磁波の周波数が高くなるにつれて、小さくなる傾向を有している。したがって高MHz帯および2.4GHz帯の電磁波を含めて集めて通す構成とするためには、たとえば1以上10MHz帯以下程度の低い周波数の電磁波を集めて通す目的とする構成と比べて、全体的に複素比透磁率の実数部μ’および虚数部μ”が、特に実数部μ’が小さくなってしまう。
第1貯蔵体層14における複素比透磁率の実数部μ’を大きくするためには、第1貯蔵体層14における磁性を有する材料から成る部分の量を多くする必要がある。また複素比透磁率の虚数部μ”を小さくするためには、磁力線の経路20における非磁性材料から成る部分を少なくすればよい。単純に考えると、第1貯蔵体層14における磁性粉末18の配合量を多くすれば、磁性を有する材料から成る部分の量を多くし、磁力線の経路における非磁性材料から成る部分を少なくすることができるが、磁性粉末18の配合量を多くしすぎて、例えば導電性磁性粉末18同士が接触してしまうと、第1貯蔵体層14が導電性を有してしまい、第1貯蔵体層14内に電流を生じ、結果として導電性パターンと反射域形成層の導通が生じることから電磁波受信するアンテナとしての性能が損なわれてしまう。したがって単純に磁性粉末18の配合量を多くすることはできない。
本実施の形態では、磁性粉末18とともに、磁性微粒子19を混合することによって、磁性粉末18が互いに接触してしまうことを防ぎ、かつ各磁性粉末18間に磁性微粒子19を介在させ、磁性を有する材料から成る部分の量を多くするとともに、磁力線の経路25における非磁性材料から成る部分を少なくすることができる。したがって高MHz帯および2.4GHz帯の電磁波に対して、前述のような複素比透磁率μが得られる。
また本発明の実施の他の形態の第1貯蔵体層14として、磁性材料の充填率を高くするために、平均粒子径比が約4:1の大きさのことなる2種類の磁性粒子を、前述と同様の結合材17に混合し、磁性微粒子および軟磁性金属繊維を混合する。さらに電気絶縁性を確保するために、電気絶縁性微粒子を混合する。前記2種類の磁性粒子は、前記磁性粉末18と同一の材料から成り、大きい方の平均粒子径は約20μmであり、小さい方の平均粒子径は約5μmである。また磁性微粒子および軟磁性金属繊維は、鉄系材料から成り、磁性微粒子の平均粒径および軟磁性金属繊維の平均繊維径は、約1μmである。電気絶縁性微粒子は、酸化ケイ素(SiO2)から成り、平均粒子径は約10nmである。さらに第1貯蔵体層14内の空隙をできるだけなくすために、第1貯蔵体層14の実測比重値が、配合からの理論比重値になるべく近い値を取るように設計、製造している。図2に示す構成に変えて、前述のような構成であっても、同様に、複素比透磁率の虚数部μ”がピーク値となる共鳴周波数が高周波数側にシフトし、さらに5GHzおよび10GHzと上げることで、300MHz以上、特に高MHz帯および2.4GHz帯での複素比透磁率の実数部μ’が大きくかつ複素比透磁率の虚数部μ”が大きすぎることのない、第1貯蔵体層14を実現することが可能となる。
第2貯蔵体層13についても、第1貯蔵体層14と同様の材料を用いることができ、用途に合わせ、塩化ビニル樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、木材、石膏、セメント、セラミックス、不織布、発泡樹脂、発泡体、断熱材、難燃紙を含む紙、ガラスクロス等の導電性を有さない誘電材料であれば使用できる。もちろん誘電材や磁性材を適宜配合することもできる。第2貯蔵体層13の複素比誘電率の実部ε’は1以上50以下の範囲に選ばれる。このような構成にすれば、第2貯蔵体層13およびシート体10の誘電率を任意に制御することができ、導電性パターン22の小型化や、シート体10の薄型化に寄与することができる。
シート体10は、少なくとも一方の表面部が、粘着性または接着性を有している。本実施の形態では、前述のように貼着層11を有しており、これによって厚み方向他方側の表面部が粘着性または接着性を有している。シート体10は、貼着層11の粘着性または接着性による結合力によって、物品に貼着することができる。したがってシート体10は、たとえば通信妨害部材12に貼着することによって、アンテナ素子51と通信妨害部材12との間に、容易に設けることができる。シート体10は、厚み方向一方側がアンテナ素子51側に配置され、厚み方向他方側が通信妨害部材57側に配置されて設けられる。貼着層11を実現する貼着材としては、たとえば日東電工社製No.5000NSが用いられる。
反射域形成層12は、金、白金、銀、ニッケル、クロム、アルミニウム、銅、亜鉛、鉛、タングステン、鉄などの金属であってもよく、樹脂に上記金属の粉末、導電性カーボンブラックの混入された樹脂混合物、公知の導電性インクあるいは導電性樹脂のフィルムなどであってもよい。上記金属等が、板、シート、フィルム、不織布、クロスなどに加工されたものであってもよい。ITOやZnOなどの導電性酸化物でもよい。また金属箔とガラスクロスを組み合わせた形態でもよい。あるいはまた合成樹脂性フィルム上に、膜厚たとえば600Åの金属層が形成された構成を有してもよい。また、導電インク(導電率が5,000S/m以上)を基板上に塗布した構成であってもよい。特定周波数の電磁波を反射するメッシュ、パターン状の構成でもよい。
上述の反射域形成層12の構成材料を用いて、パターン層15の導電性パターン22を形成することができる。各導電性パターン22は、たとえば銀、アルミニウムなどの金属から成り、導電率が5,000S/m以上である。板状基材31は、たとえばポリエチレンテレフタレートから成り、前記金属が蒸着されて、導電性パターン22が形成される。これらの導電性パターン22の近傍に、貯蔵体層14,13が設けられる。
各導電性パターン22は、寸法が対象とする電磁波の周波数に応じて最適化されて、前述の寸法に決定されている。したがって前記寸法は、一例であり、対象とする電磁波の周波数に基づいて適宜決定される。また各導電性パターン22の間隔もまた、対象とする電磁波の周波数に基づいて、受信効率が高くなるように決定されている。また貯蔵体層の特性、具体的には材質などに基づく複素比誘電率または複素比透磁率、厚みなどは、対象とする電磁波の周波数に基づいて、受信効率が高くなるように決定されている。このように導電性パターン22の寸法および間隔寸法が決定され、また貯蔵体層が構成され、電磁波を効率良く受信することができる。
また本発明の実施のさらに他の形態として、シート体10は、たとえば難燃剤または難燃助剤が、パターン層15、貯蔵体層の少なくともいずれかに添加されて、難燃性、準不燃性または不燃性が付与されている。パターン層15、貯蔵体層には、たとえば難燃剤または難燃助剤が添加されている。これによってシート体10に、難燃性が付与されている。またシート体10の少なくとも外周の一部に難燃性または不燃性を有する材料で被覆することも可能である。たとえば携帯電話などのエレクトロニクス機器も、内装するポリマー材料に難燃性を要求されることがある。
このような難燃性を得るための難燃剤としては、特に限定されることはないが、たとえばリン化合物、ホウ素化合物、臭素系難燃剤、亜鉛系難燃剤、窒素系難燃剤、水酸化物系難燃剤、金属化合物系難燃剤などを適宜用いることができる。リン化合物としては、リン酸エステル、リン酸チタンなどが挙げられる。ほう素化合物としては、ホウ酸亜鉛などが挙げられる。臭素系難燃剤としては、ヘキサブロモベンゼン、ヘキサブロモシクロドデカン、デカブロモベンジルフェニルエーテル、デカブロモベンジルフェニルオキサイド、テトラブロモビスフェノール、臭化アンモニウムなどが挙げられる。亜鉛系難燃剤としては、炭酸亜鉛、酸化亜鉛若しくはホウ酸亜鉛などが挙げられる。窒素系難燃剤としては、たとえばトリアジン化合物、ヒンダードアミン化合物、若しくはメラミンシアヌレート、メラミングアニジン化合物といったようなメラミン系化合物などが挙げられる。水酸化物系難燃剤としては、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムなどが挙げられる。金属化合物系難燃剤としては、たとえば三酸化アンチモン、酸化モリブデン、酸化マンガン、酸化クロム、酸化鉄などが挙げられる 。
本実施の形態では、重量比において、結合材を100として、臭素系難燃剤を20、三酸化アンチモンを10、リン酸エステルを14の比で、それぞれ添加することによって、UL94難燃試験においてV0相当の難燃性を得ることができる。シート体10は、このような物品を構成する素材として、または物品に装着して好適に用いることができる。たとえば航空機、船舶および車両内の装置など、燃焼およびこれに伴うガスの発生を防止したい空間などで用いられる物品に装着するなどして、好適に用いることができる。
またシート体10は、電気絶縁性を有している。具体的には、各層14,13が前述のような材料から成ることによって、シート体10の表面抵抗率(JIS K6911)が102Ω/□以上である。貯蔵体層の表面抵抗率は、大きいほど好ましい。したがって実現可能な最大値が、表面抵抗率の上限値となる。このように高い表面抵抗率を有し、電気絶縁性を有している。
またシート体10は、耐熱性を有している。具体的には、ゴムあるいは樹脂材料に架橋剤を添加した場合のシート体10の耐熱温度は、150℃であり、シート体10は、少なくとも150℃を超える温度になるまでは、特性に変化を生じない。耐熱性に関しては、タグ54、シート体10、アンテナ素子およびICチップの少なくとも一部をセラミックスまたは耐熱性樹脂(例えばポリフェニレンサルファイド樹脂にSiO2フィラーを添加したもの)で被覆することで150℃以上にも耐性を持たせることが可能になる。セラミックス被覆の場合、完全焼結でも部分焼結でも未焼結でもよい。
また本発明の他の実施の形態では、図1に示す実施の形態のシート体10において反射域形成層12を設けない構成としてもよい。反射域形成層12を設けない構成であっても、導電性材料から成る部分を有する物体の面上に設置するよう構成することによって、同様の効果を得ることができる。また反射域形成層12を用いる構成では、各シート体10の設置場所の影響を受けて、すなわち通信妨害部材を構成する材料の種類等によって、導電性パターン22の共振周波数が変化してしまうことが防がれ、シート体10の受信特性が変化することが防がれる。これによってアンテナ素子51による通信条件が変ってしまうことを防止することができ、アンテナ素子51による通信条件を安定化することができる。たとえばシート体10を、建物内装材に設けても、その内装材の複素比誘電率などの影響を受けて、受信可能な周波数が変化してしまうことを防ぐことができる。
本発明で用いる導電性パターンとしては、導電性を持つパターンを不連続な態様で配列する場合と、導電性を有する層からスロット(空孔)状に抜く態様で形成される場合がある。パターンの形状には制限がない。円状、方形状、線状、多角形状、紐状、不定形状、それらを単独あるいは複数用いたもの、組み合わせて用いるもの、等アンテナとして機能し得る形状の全てを取ることができる。
図3は、本発明の実施の一形態のシート体10を構成するパターン層15を示す正面図である。図4および図5は、図3に示される実施の形態におけるパターン層15の一部の拡大した正面図である。パターン層15は、板状基材21の電磁波入射側の表面上に、導電性パターン22が形成される。板状基材21は、たとえば合成樹脂である誘電体から成っており、この板状基材21もまた誘電材である。導電性パターン22は、放射形パターン30と、矩形パターン31とを有する。板状基材21は、各導電性パターン22を電気的に絶縁する。図3、図4および図5には、理解を容易にするために導電性パターン22を斜線のハッチングを付して示す。
放射形パターン30は、放射形状に形成され、複数の放射形パターン形状30aが、相互に間隔(以下「放射形パターン間隔」という)c2x,c2yをあけて設けられる。さらに具体的に述べると、たとえばこの実施の形態では、放射形パターン形状30aは、相互に垂直なx方向およびy方向に沿う放射状である十文字状に形成され、x方向に放射形パターン間隔c2xをあけ、y方向に放射形パターン間隔c2yをあけて、行列状に規則正しく配置される。
放射形パターン形状30aは、図5に仮想線で示す十文字40を基礎として、交差部分36における4つの角部41を曲線状、具体的には円弧状にした形状である。基礎となる十文字(以下、基礎十文字という)40は、x方向に細長く延びる長方形の形状部分34と、y方向に細長く延びる長方形の形状部分35とが、それらの各形状部分34,35の図心を重ねて、交差部分36で直角に交差する形状である。各形状部分34,35は、交差部分36において垂直な軸線まわりに90度ずれており、同一形状を有する。このような基礎十文字40に、直角二等辺三角形であり、直角の角部に対向する斜辺が直角の角部に向けて凹となる円弧状である4つの略三角形42を、直角の角部が基礎十文字40の各交差部分36の角部41に収まるように設けた形状である。
対象とする電磁波の周波数が2.4GHz帯である場合、放射形パターン形状30aの寸法の一例を挙げると、各形状部分34,35の幅a1x,a1yは、等しく、たとえば1.0mmであり、各形状部分34,35の長さa2x,a2yは、等しく、たとえば25.0mmである。弧状に形成される角部の円弧状となる寸法、したがって略三角形42の斜辺を除く辺の長さ、具体的にはx方向の辺の長さa3xおよびy方向の辺の長さa3yは、等しく、たとえば11.5mmであり、斜辺の曲率半径R1は、11.5mmである。放射形パターン間隔は、x方向の間隔c2xとy方向の間隔c2yが、等しく、たとえば4.0mmである。
矩形パターン形状31aは、放射形パターン形状30aに囲まれる領域に、放射形パターン形状30aから間隔(以下「放射−方形間隔」という)c1をあけて配置され、放射形パターン形状30aに囲まれる領域を塗潰すように設けられる。さらに詳細には、放射形パターン部に囲まれる領域に対応する形状に形成される。さらに具体的に述べると、たとえばこの実施の形態では、放射形パターン部30が前述のような十字状であり、放射形パターン形状30aに囲まれる領域は長方形を基礎とする略長方形であり、これに対応する形状、つまり放射−方形間隔c1が全周にわたって同一となる形状に形成される。各形状部分34,35が前述のように同一形状である場合、放射形パターン形状30aに囲まれる領域は、正方形を基礎とする略正方形となり、矩形パターン形状31aは、正方形25を基礎とする略正方形となる。矩形パターン形状31aは、基礎と成る正方形(以下、基礎正方形という)25の辺部が、x方向およびy方向のいずれかに延びるように配置されている。
矩形パターン形状31aは、略矩形状であって、基礎正方形25を基礎として、4つの角部26を曲線状、具体的には円弧状にした形状である。具体的には、基礎正方形25から、直角二等辺三角形であり、直角の角部に対向する斜辺が直角の角部に向けて凹となる円弧状である4つの略三角形27を、直角の角部が正方形の各角部26に収まるよう位置関係で取り除いた形状である。
対象とする電磁波の周波数が2.4GHz帯である場合、矩形パターン形状31aの寸法の一例を挙げると、基礎正方形25のx方向の寸法b1xとy方向の寸法b1yとが、等しく、たとえば25.0mmである。弧状に形成される角部の円弧状となる寸法、したがって略三角形27の斜辺を除く辺の長さ、具体的にはx方向の辺の長さb2xおよびy方向の辺の長さb2yは、等しく、たとえば10.0mmであり、角部の曲率半径R2は10.0mmである。放射−方形間隔は、x方向の間隔c1xとy方向の間隔c1yとが、等しく、たとえば4.0mmである。
このように放射形パターン形状30aおよび矩形パターン形状31aは、略多角形を基礎とし、少なくとも1つの角部が曲線状である略多角形の外郭形状を有する導電性パターンである。このようなパターンでは、電磁波を受信したときの共振電流が、曲線状に形成される角部でスムーズに流れるようになる。
また放射形パターン形状30aおよび矩形パターン形状31aは、前述の形状の外周縁に沿って延びる閉ループの線状(帯状)ではなく、内周部も塗潰される面状のパターンである。したがって反射域形成層12との間にコンデンサを形成することができる。
このようなシート体10では、パターン層15によって、導電性パターン22の共振周波数の電磁波を、効率よく受信することができる。シート体10の共振周波数は、まず導電性パターン22の長さや周囲長にて特定される。これは特定周波数の電磁波と共振する形で電磁波を受信するため、その特定周波数の電磁波の波長の1/2や1/4の長さ等に応じて共振長さが決まる。ただし、最終的な共振周波数はパターン寸法だけでなく、導電性パターン22同士の結合特性、第1および第2貯蔵体層14,13の複素比誘電率の実部ε’もしくは複素比透磁率の実部μ’による波長短縮効果、加えて表面層16が設けられる場合は、その表面層16の複素比誘電率の実部ε’による波長短縮効果、第1および第2貯蔵体層14,13から決定される入力インピーダンスの影響を受けて決まる。この共振周波数は、後述するアンテナ素子51における無線通信に用いられる周波数とほぼ等しい。
さてシート体10を後述するタグ本体54に合わせた大きさで用いると、放射形パターン形状30aおよび略矩形パターン形状31aの少なくともいずれか一方は、その一部だけしか導電性パターン22に含まれない場合が生じることがある。この場合、共振周波数はパターン形状の短縮に応じて、すなわち導電性パターン22に含まれる放射形パターン形状30aの一部の形状および略矩形パターン形状31aの一部の形状に応じて、高周波数側にシフトしてしまう。
図6は、導電性パターン22の切断の影響によって変化する共振周波数をシミュレーションで計算した結果を示すグラフである。図7は、シミュレーションに用いたシート体10の導電性パターン22のパターン形状を示す正面図である。図7において、横軸は、周波数を示し、縦軸は反射損失を示す。反射損失は、シート体10に入射した電磁波がシート体10で反射するという視点で見た場合の損失であって、シート体10における電磁波の受信量に対応する値である。反射損失は、負の値で表わされており、反射損失の絶対値が電磁波の受信量となる。つまりアンテナとしての特性評価の指針となる。反射損失は、値が小さくなるほど、シート体10による電磁波の受信効率が高いことを示す。本発明の反射損失量の計算は、コンピュータシミュレーションで行っている。シミュレーションは、TLM法を用い、Flomerics社製「Micro−Stripes」を使用している。その計算に当たり、第1貯蔵体層14のたとえば2.4GHz帯の材料定数は、複素比誘電率の実部ε’=12.3、複素比誘電率の虚部ε”=1.3、複素比透磁率の実部μ’=1.3、複素比透磁率の虚部μ”=0.5であり、厚みは0.5mmとした。第2貯蔵体層13のたとえば2.4GHz帯の材料定数はε’=4.6、ε”=0.1であり、厚みは2.0mmとした。シミュレーションでは、金属板にシート体10を積層した状態での、周波数および反射損失との関係を計算した。
シミュレーションに用いたパターン層15の基本となる導電性パターン22は、a1x=a1y=1.0mmであり、a2x=a2y=17.5mmであり、a3x=a3y=7.5mmであり、c1x=c1y=1.5mmであり、c2x=c2y=7.0mmであり、b1x=b1y=20.5mmであり、c1x=c1y=1.5mmであり、R1=7.5、R2=7.0mmである。またシート体10の積層方向に垂直な長手方向(x方向)の寸法L1および短手方向(y方向)の寸法L2は、L1=80mmとし、L2=20mmとした。
シミュレーションに用いたシート体10の導電性パターン22の一部を切り出すことによって形成される2種類のパターン形状を、それぞれ第1パターン形状22Aおよび第2パターン形状22Bとし、第1パターン形状22Aが形成されたシート体10を第1シート体10Aとし、第2パターン形状22Bが形成されたシート体10を第2シート体10Bとする。
図7は、第1シート体10Aの正面図である。第1パターン形状22Aは、導電性パターン22のうち、放射形パターン形状30aの図心を通りx方向に平行な2つの辺と、放射形パターン形状30aの図心を通りy方向に平行な2つの辺とで規定される長方形によって囲まれた部分の略矩形パターン形状31aと放射形パターン形状30aの一部とを含んでいる。第1パターン形状22Aは、x方向に沿って1列に配列され、それぞれの図心がy方向の中央に設けられる4つの略矩形パターン形状31aと、略矩形パターン形状31aの周囲に配列される放射形パターン形状30aの一部とを含んでいる。
図6において、実線38は、第1シート体10Aの周波数−反射損失特性を示す。シート体10の導電性パターン22は、反射損失のピーク値となる周波数(共振周波数)を2.4GHz帯に合わせて設計したものであるが、サンプル切り出し後の第1シート体10Aでは、その共振周波数が2.4GHz帯よりも高周波側にシフトしている。ここでの共振周波数は、アンテナ素子51を取り付ける前段階におけるシート体10単体でのものである。
図6では、第1シート体10Aは2.4GHz帯に共振周波数は合致していないものの、反射損失が大きくなる共振ピーク38Aの裾野部分に2.4GHz帯があり、すなわち2.4GHz帯における反射損失が大きくなるので、2.4GHz帯の周波数の電磁波を集める能力(集めて供給する能力)があることが判明する。このことは、シート体10としては対象となる2.4GHz帯に共振周波数が完全には合っていないものの、リアクタンス整合等により共振周波数を調整すれば、シート体10を、金属面などの影響を抑えた送受信アンテナとして、そして電磁波をアンテナ素子51に供給する意味でのブースターアンテナとして機能できることを示している。
シート体10にアンテナ素子51を載せることによって、共振周波数がさらにシフトする可能性はあるが、アンテナ素子51とシート体10間の距離調整、誘電率や透磁率調整、導電性パターン22の切断の仕方およびアンテナ素子51の寸法を調整することによって対応可能である。アンテナ素子51とシート体10の間には、例えば適当な厚さの発泡体、樹脂、紙などを接着材もしくは粘着材を使用して介在させることができる。
シート体10は、前述のような積層構成とすることによって、電磁波の受信効率を高くすることができるので、アンテナの機能として大きな利得を得ることができ、薄型化および軽量化を図ることができる。
また導電性パターン32において、放射形パターン形状30aは、前述のように放射状に延びる部分を相互に突合せるように配置され、矩形パターン形状31aは、放射形パターン形状30aに囲まれる領域に対応する形状に形成される。このような配置は、受信原理の異なる(放射形パターンがダイポールアンテナ、矩形パターンがパッチアンテナとなる。)、放射形パターン30と矩形パターン31を組み合わせることで、受信効率が最適(高くなる)となる。したがって受信効率の高い、シート体10を実現することができる。また放射形パターン形状30aがx方向およびy方向に沿って放射する配置であるとともに矩形パターン形状31aの基礎となる正方形の辺部がx方向およびy方向に延びるように配置されており、x方向およびy方向に電界の方向が存在するように偏波する電磁波の受信効率を高くすることができる。
シート体10では、電磁波を受信する導電性パターン22が、基本的に多角形である略多角形の外郭形状を有しており、利得のピーク値を、導電性パターン22の外郭形状が円形の場合と比べて、高くすることができる。このように基本的には多角形であり、少なくとも1つの角部が曲線状に形成される。これによって電磁波の偏波方向によって利得がピークとなる周波数のずれを小さく抑えることができる。したがって利得のピーク値が高く、かつ電磁波の偏波方向によって利得がピーク値となる周波数のずれが小さい優れた受信特性を得ることができる。
シート体10は、パターン層15の導電性パターン22によって、アンテナの共振原理に従って特定周波数の電磁波を受信する。言い換えれば、本発明のシート体10は、導電性パターン22が受信アンテナとしても有効に動作する機能を有している。ここで特定周波数は、導電性パターン22の形状および寸法などの諸元によって決定される周波数である。電磁波を導電性パターン22で受信すると、導電性パターン22の端部に共振電流が流れることになり、導電性パターン22の周縁部の周囲に電磁界が発生する。シート体10は、共振により特定周波数の電磁波がシート体内部に集中する。
さらにシート体10をパターン層15と導電性の層の間に貯蔵体層を介した積層状態で用いることによって、パターン層15の導電性パターン22と、導電性の層の間にコンデンサやインダクタを構成することができる。導電性の層は、本実施の形態では反射域形成層12であり、反射域形成層12を設けない他の実施の形態では、導電性材料から成る物体の表面層である。導電性パターン22と導電性の層との距離を短くすると、コンデンサの容量を大きくすることができる。また導電性パターン22相互間にもコンデンサを形成することができる。コンデンサとして特定周波数の電磁エネルギを貯めることが可能となる。また、コンデンサ等を利用することによりリアクタンス調整機能が付与されることで薄型化を達成することができる。これによってシート体10に特定周波数に対応する電磁エネルギを蓄えることが可能となる。電磁エネルギは見かけ上は蓄えられるが、シート体10は、実際は捉えた電磁エネルギを絶えず通過させている。シート体10は、特定周波数の電磁波を高性能の小型アンテナとして機能する導電性パターン22にて高効率に再放射し、入射波と干渉させて電界強度の強い領域をつくり、後述するアンテナ素子51に電磁結合によりそれらのエネルギを渡す役割を果たしている。
図8は、シート体10を備えるタグ50を分解して示す斜視図である。タグ50は、無線通信によって情報を伝達する電子情報伝達装置の1つであり、たとえば固体の自動認識に利用されるRFID(Radio Frequency IDentification)システムのトランスポンダとして用いられる。タグ50は、アンテナ素子51と、アンテナ素子51に電気的に接続され、アンテナ素子51を用いて通信する通信手段である集積回路(以下「IC」という)52と、シート体10とを備えている。タグ50は、リーダからの要求信号をアンテナ素子51によって受信すると、IC52内に記憶されている情報を表す信号をアンテナ素子51によって送信するように構成されている。したがってリーダは、タグ50に保持されている情報を読取ることができる。タグ50は、たとえば商品に貼着して設けられ、商品の盗難防止および在庫状況の把握など、商品管理に利用されている。アンテナ素子51とシート体10とを含んでアンテナ装置が構成される。タグ50は、アンテナ素子11によって電磁波信号を送受信する電子情報伝達装置であり、受信した電磁波信号のエネルギを利用して電磁波信号を返信するバッテリレスタグである。タグ50は、バッテリレスタグであってもよいし、バッテリ内蔵のバッテリタグでもよい。
アンテナ手段であるアンテナ素子51は、少なくとも電界型のアンテナ素子であって、ダイポールアンテナまたはループアンテナあるいはモノポールアンテナであって、本実施の形態ではダイポールアンテナによって実現される。本発明の他の実施の形態において、アンテナ素子51は他のアンテナによって実現されてもよい。ダイポールアンテナとシート体10とを組合わせることによって、アンテナ素子51の小型化が実現できる。シート体10の複素比透磁率の実数部μ’および複素比誘電率の実数部ε’の高さにより相まって、波長短縮効果が加わり、アンテナ素子51の小型化を達成することができる。ダイポールアンテナは線状で、カーブおよび折曲がりがあってもよく、全長がλ/2あれば良い。たとえば950MHzでは、約15.8cm長であるが、これにシート体10による波長短縮効果が加わり、約3〜10cmの線状素子が可能となり、さらに曲折を加えることで2〜3cmのラベルにも収まるサイズが可能となる。さらに小型化することもでき、貼れる対象は広範囲に及ぶことになる。モノポールアンテナはダイポールアンテナの片側の素子とグラウンド板との間に給電するので、素子全長はλ/4とさらに小型化できる。ループアンテナの場合、全周が1波長に近いとき、半波長ダイポールアンテナを2個並べた構造に近似することができ、電界型のアンテナ素子とみることができる。完全に磁界型でなければ、電界型と磁界型が切り替わるものや電界型と磁界型の機能が並存するものであれば、本発明のアンテナ素子に含まれる。また本発明のアンテナ素子にはリアクタンス構造部を装荷したものも含まれる。
アンテナ素子51は、ポリエチレンテレフタレート(PET)から成る基材53の厚み方向一方側の表面部に形成されるパターン導体によって実現される。IC52は、アンテナ素子51のたとえば中央部に配置され、アンテナ素子51と電気的に接続されている。IC52は、少なくとも記憶部と制御部とを有している。記憶部には情報を記憶することが可能であり、制御部は、記憶部に情報を記憶させ、または記憶部から情報を読出すことができる。このIC52は、アンテナ素子51によって受信される電磁波信号が表す指令に応答して、情報を記憶部に記憶し、または記憶部に記憶される情報を読出して、その情報を表す信号をアンテナ素子51に与える。基材53は、長方形板状であり、アンテナ素子51は、基材53の中央部に長手方向に延びて設けられる。アンテナ素子51およびIC52の層の厚み寸法は、1nm以上500μm以下であり、基材53の層の厚み寸法は、0.1μm以上2mm以下である。シート体10に直接アンテナ素子51を印刷、加工することで基材を用いない構成であってもよい。
アンテナ素子51、IC52および基材53によって、タグ本体54が構成される。タグ本体54は、可撓性を有する接着テープに搭載されるなどしてパッケージングされている。タグ本体54とシート体10とによって、タグ50が構成されている。図8には、タグ本体54とシート体10とを分解して示しているが、タグ本体54は、アンテナ素子51が形成される表面部を、シート体10の一表面(本実施の形態ではパターン層15の一表面)に対向させて積層される。アンテナ素子51の表面は、厚みが25μmのポリエチレンテレフタレートから成る絶縁膜によって覆われており、これによってアンテナ素子51は導電性パターン22と絶縁される。図8には示されていないが、タグ本体54(基材53が含まれない構成もある)とシート体10との間には粘着剤および接着剤を用いられるか、タグ本体54かシート体10のどちらかまたは双方が粘着性および接着性を有することにより貼付けられる場合もある。シート体10は、長方形板状に形成され、タグ本体50と積層されて構成されるタグ50が長方形板状となる。
シート体10とタグ本体54との結合構造は、特に限定されるものではないが、粘着剤および接着剤を含む結着剤を用いて結合してもよい。シート体10の表面付近に形成される電界の強いエリアにて、シート体10とアンテナ素子51とは導通しない状態で積層され、すなわち電気絶縁性を有する非導通層(誘電体層や磁性体層であってもよい。)を介して積層される。このシート体10とアンテナ素子51の距離は、アンテナ素子51の通信特性から最適位置を決定することができる。図8には、シート体10とタグ本体54とを結合するための構成は省略して示す。タグ50は、厚み方向一方側から他方側に、基材53の層、アンテナ素子51およびIC52の層、タグ本体接着層、パターン層15、第1貯蔵体層14、第2貯蔵体層13、反射域形成層12、貼付層11がこの順で積層されている。
アンテナ素子51は、アンテナ素子51が延びる方向と交差する方向へ向けて電磁波信号を送信し、アンテナ素子51が延びる方向と交差する方向から到来する電磁波信号を受信することができる。本実施の形態では、アンテナ素子51を基準にして、シート体10とは反対側に向かう送受信方向Aへ電磁波信号を送信し、送受信方向Aから到来する電磁波信号を受信することができる。
タグ50は、たとえばリーダライタである情報管理装置から、予め定める記憶すべき情報(以下「主情報」という)と、その主情報を記憶するように指令する情報(以下「記憶指令情報」という)とを表す電磁波信号が、アンテナ素子51によって受信されると、主情報および記憶指令情報を表す電気信号がアンテナ素子51からIC52に与えられる。ICタグ51は、制御部が、記憶指令情報に基づいて、主情報を記憶部に記憶させる。
また情報管理装置から、記憶部に記憶される情報(以下「記憶情報」という)を送信するように指令する情報(以下「送信指令情報」という)を表す電磁波信号が、アンテナ素子51によって受信されると、送信指令情報を表す電気信号がアンテナ素子51からIC52に与えられる。ICタグ52は、制御部が、送信指令情報に基づいて、記憶部に記憶される情報(記憶情報)を読出し、その記憶情報を表す電気信号をアンテナ素子51に与える。これによってアンテナ素子51から、記憶情報を表す電磁波信号が送信される。
図9は、タグ50を通信妨害部材57に貼着した状態を示す図である。タグ50は、通信妨害部材である通信妨害部材57の近傍で用いることができるようにするために、シート体10を備えている。本発明でいう通信妨害材料の1つである導電性材料とは、たとえば金属、Si系材料、黒鉛シートなどの炭素系材料、ITOおよびZnOなどの酸化物ならびに水などの液体を含み、アンテナ素子との間で高周波数的に短絡を引き起こす可能性のあるレベルの導電率を有する材料をいう。導電性材料は、導電性を有する材料であり、金属など、抵抗率が10−6Ωcm以上10−1Ωcm未満である比較的抵抗率が低い材料と、水および海水などの液体ならびに半導体など、抵抗率が10−1Ωcm以上106Ωcm以下である比較的抵抗率が高い材料とを含む。
シート体10は、アンテナ素子51に対して、送受信方向Aと反対側に設けられる。シート体10は、貼付層11によって通信妨害部材57に貼着して用いられる。このタグ50は、アンテナ素子51よりもシート体10を通信妨害部材57側に配置して、アンテナ素子51と通信妨害部材57との間にシート体10が介在されるように設けられる。
図10は、アンテナ素子51とパターン層15との電磁気的結合およびパターン層15と電波反射層12との電磁的結合を示す断面図である。なお図10は、理解を容易にするために、タグ50の構成のうち、アンテナ素子51、IC52およびシート体10以外の構成を省略して示す。アンテナ素子51の近傍に通信妨害部材12が存在しない自由空間では、アンテナ素子51の両端部51a,51bの電位差によって生じる電界が、そのまま空間に広がり、電界の強度変化によって磁界が形成され、さらにその磁界の強度の変化によって電界が形成される。アンテナ素子51は、このような電界および磁界の形成現象が順次連続的に繰返される原理を利用して、電磁波を送信することができる。またアンテナ素子51は、送信原理と逆の原理によって、共振周波数の電磁波を受信することができる。
図13にて、タグ50に電磁波が入射すると、パターン層15の導電性パターン22はアンテナとして働き、シート体10の各層12〜15によって決定される共振周波数である特定周波数の電磁波が入射すると共振現象を発現してシート体10内にその周波数の電磁波が集中する。パターン層15と反射域形成層12との間には誘電性および磁性を有する第1貯蔵体層14が介在されており、この第1貯蔵体層14の透磁率の実数部(μ’)が前述したように選ばれることによって、シート体10に入った電磁波を、第1貯蔵体層14に沿って伝搬させることで、アンテナ素子51の通信妨害を最小限に抑えることが可能となる。図13では、進行波はシート体10に入った後、第1貯蔵体層14のみを通過しているが、これは一例であり、シート体10内の全層が関係して通信改善効果が生じている。
導電性パターン22の周辺部分に電磁界が発生すると、パターン層15を挟んで第1貯蔵体層14とは反対側にも電磁界が発生する。パターン層15の近傍には、アンテナ素子51が設置されており、導電性パターン22の周囲に電磁界が発生すると、導電性パターン22とアンテナ素子51とが電磁的な結合を起こし、電磁エネルギが導電性パターン22からアンテナ素子51へ移行する。導電性パターン22から共振周波数の電磁エネルギがアンテナ素子51に供給される結果、パターン層15を設けない場合と比較して、アンテナ素子51の受信電力を増加させることができる。タグ50は、受信した電磁波信号のエネルギを利用して電磁波信号を返信するので、受信電力が増加することによって、通信距離を延ばすことができる。この電磁波の増強効果は、導電性パターン22と反射域形成層12間の距離効果からも説明できる。導電性パターン22と反射域形成層12との間隔は((2n−1)/4)λ(nは正の整数)が理想であるが、貯蔵体層の透磁率や誘電率により空気中の((2n−1)/4)λによる干渉と相当の効果が得られる距離を短縮している。nは、0が好ましい。
さらにシート体10は、取り込んだ電磁波をシート体内部で位相を調整することで、電磁波の波長をλとしたときに、反射域形成層から電気的長さが((2n−1)/4)λ離れた電界強度が強くなるエリアを、パターン層15の位置に生じさせる設計としている。本発明では導電性パターン22の中央付近と反射域形成層を仮想的に結ぶ合成電界が0(ゼロ)の場所(後述する図11および図13中に仮想線で示す仮想の電磁波反射面201)を生じさせ、反射域を形成する仮想電磁波反射面201で電磁波が反射することによって直線的な((2n−1)/4)λの距離よりも、導電性パターン22を回り込むことを利用してパターン層15から反射域までの電気的長さを稼ぐことによりシート体10の厚さをλ/4より大きく薄型化している。本発明のパターン層15から反射域までの電気的長さが((2n−1)/4)λとなる部分を、図13において矢符202で示す。以上より導電性パターンの位置で電界強度も干渉して増加することになる。これらの増強効果により、シート体10はブースターアンテナとして機能するともいえる。したがって通信妨害部材12の近傍であっても、好適に無線通信することができ、また十分な通信距離を確保することができる。このように導電性パターン22を備え、シート体10に独自にアンテナ機能を持たすことによって、アンテナ素子51の通信改善効果を得ることができる。
アンテナ素子51の両端部51a,51bに電位差が生じる状態では、アンテナ素子51の両端部51a,51bが、正または負にそれぞれ帯電された状態となり、これによってアンテナ素子51の両端部51a,51bと、反射域形成層12におけるアンテナ素子51の両端部51a,51bとそれぞれ対向する部分12a,12bとの間に電界が形成され、アンテナ素子51の両端部51a,51bと正負反対に帯電された状態となる。アンテナ素子51には、IC52によって交番電圧が印加され、両端部51a,51bは、正または負が交互に入替わるように帯電される。シート体10が、電界型のアンテナ素子51と通信妨害部材57との間に設けられると、アンテナ素子51と通信妨害部材57との距離を離反させることができるので、アンテナ素子51の両端部51a,51bが帯電されることによって発生し、通信妨害部材57との間に形成される電界の強度が小さくなる。本実施の形態では、シート体10に反射域形成層12が形成されており、アンテナ素子51と反射域形成層12との間に貯蔵体層が形成されることによって、アンテナ素子51と反射域形成層12との電気的長さを離反させることができるので、アンテナ素子51の両端部51a,51bが帯電されることによって発生し、反射域形成層12との間に形成される電気的な短絡度合いが小さくなる。
以上の現象は、アンテナ素子51と導電性パターン22の間においても発生することになるはずである。しかし、導電性パターン22は対応するアンテナ素子51よりも小さく、また不連続であるため、アンテナ素子のインピーダンス低下に及ぼす影響は小さいものであった。
したがってアンテナ素子51と通信妨害部材57または反射域形成層12との間における高周波的な短絡回路の形成が弱まる。つまりコンデンサに高周波の電圧を印加した場合に、通電しているのと同様の状態になることと同じように高周波的に短絡する現象によって、アンテナ素子51と通信妨害部材57または反射域形成層12との間に流れる高周波電流を抑制することができ、アンテナ素子51の入力インピーダンスの低下が抑制される。入力インピーダンスの低下抑制は、アンテナ素子51に生じる電流の電流値が、通信妨害部材12が存在しない場合に近い小さい値となることから確認されている。このようにシート体10を用いることによって入力インピーダンスの低下を抑制することができる。入力インピーダンスが小さくなると、アンテナ素子51を用いて通信する通信手段(IC52)のインピーダンスと乖離し、アンテナ素子51と通信手段との間で、信号を受渡しすることができなくなってしまうが、シート体10によってアンテナ素子51の入力インピーダンスの低下を抑制することができるので、通信妨害部材57の近傍であっても、好適に無線通信することができる。この入力インピーダンスの低下抑制のため、導電性パターン22にスリット、凸凹、傾斜、濃淡等を加え、導通の抵抗とすることも可能である。
図11は、シート体10に入射する電磁波(進行波という)およびシート体10によって反射される電磁波(反射波という)を模式的に示す図であり、図12は電磁波の反射について説明する図であり、図13は図11に示すシート体10の一部分を拡大して模式的に示す図である。図11および図13には、理解を容易にするために、タグ50の構成のうち、アンテナ素子51、IC52およびシート体10以外の構成を省略して示す。パターン層15に進行波が入射すると、この進行波は導電性パターン22によって受信され、貯蔵体層によって進行波のエネルギが見かけ上集められる。また図13にはシート体10内部において電磁波によって生じる電界の向きを点線で示している。
シート体10は、前述したパターン層15を最適に設計することにより、貯蔵体層の薄型化が可能となり、電磁波を効率良く受信することができる。さらに複数種類の導電性パターンが形成されるパターン層15を用いるので、導体性パターン22における受信動作の特性を生かして効率良く受信することができるとともに、これらが互いに電気的に絶縁されることによって周波数帯域の広域化を図ることができ、広帯域の電磁波を効率良く受信することができる。
このように広い周波数帯域に対する電磁波の受信効率を高くすることができるので、広くかつ高い電磁波受信性能を得ることができ、薄型化および軽量化を図ることができ、さらに貯蔵体層の材質の選択の自由度が高くなって、柔軟性を持たせることができ、製作性に優れたシート体10を得ることができる。
電磁波の進行波と反射波とは干渉して定在波が生じ、反射域形成層12によって形成され、電磁波が反射する反射面(反射域)からの距離によって図12に示すように電界および磁界は、強め合ったり、弱め合ったりする。このとき反射波(電界)の位相は、進行波の位相とは180°ずれることになる。図12および図13に定在波を示す。図12では、電界の定在波を実線で示し、磁界の定在波を破線で示す。また図13では、電界の定在波を破線で示している。定在波ができるメカニズムは省くが、図12および図13はあくまで強度のみ(振幅のみを表しても同じ図になる)を表している。反射面から((2n−1)/4)λ(nは正の整数)離れた位置で電界強度が最も高く、同時に磁界強度は0(ゼロ)になる。図12に示す反射面は、合成電界が0(ゼロ)となる面と等価であり、金属面と等価である。
パターン層15との間に貯蔵体層を挟み、パターン層15および第1および第2貯蔵体層14,13に対してアンテナ素子51とは反対側に、アンテナ素子51およびパターン層15のうち、導電性パターン22間の部分との少なくともいずれか一方と電気的長さが((2n−1)/4)λ(nは正の整数)となるように間隔をあけて、前述した仮想の電磁波反射面201が導電性パターン22と反射域形成層12とを結ぶように形成される。仮想の電磁波反射面201は、導電性パターン22の中央部分と反射域形成層12の間に生じる電界強度が0(ゼロ)のエリアである。電界強度が0(ゼロ)であることから、あたかも電磁波の反射板として機能し、導電性パターン22からシート体10に入った電磁波はこの仮想の電磁波反射面201で反射して戻ってくる。すなわちアンテナ素子51およびパターン層15のうち、導電性パターン22間の部分との少なくともいずれか一方と、仮想の電磁波反射面201とは、パターン層15および貯蔵体層を進行する電磁波の波長の((2n−1)/4)倍の距離だけ離間して設けられる。電磁波の波長は、パターン層15および貯蔵体層の各効果により、空気中における波長よりも短くなるため、パターン層15の入射部から仮想の電磁波反射面201までが電磁波の波長の((2n−1)/4)倍相当(n=0とすると実質λ/4)を、薄型シートの中で実現している。またアンテナ素子51およびパターン層15のうち、導電性パターン22間の部分との少なくともいずれか一方から仮想の電磁波反射面201までを電気的に((2n−1)/4)λ(nは正の整数)の距離としたことで、シート体10内での複素比誘電率の実数部ε’および/または複素比透磁率の実数部μ’による電磁波の伝搬経路の曲がりを利用して距離を稼ぐことができ、n=0とすれば、パターン層15から反射域形成層12までの距離(シート体10の厚さ)をλ/4より大幅に薄型化することができている。この様な薄型化技術はこれまで提案されていなかった。
電界については、電磁波の波長をλとすると、反射域形成層12の反射面からn×(λ/2)(nは、正の整数)離反した位置では進行波が反射波によってキャンセルされてしまうが、反射域(仮想の電磁波反射面201)からの電気的長さが波長の((2n−1)/4)倍の間隔をあけた位置では、進行波と反射波とが干渉して強め合う。反射する電磁波と、到来する電磁波とが強め合って干渉する位置にアンテナ素子51が設けられることによって、通信妨害部材57の近傍であっても、好適に無線通信することができる。
図14は、タグ50の一部を拡大して示す斜視図であり、シート体10に積層されるタグ本体54の一部を切欠いて示される。図15は図14に示される仮想線48で示される領域についてシミュレーションした電界の強度を示す図である。図15において電界の強度はグレースケールで表され、白色の部分において電界が強く、白色から黒色に近くなるに連れて、電界が弱くなるように表されている。シミュレーションした結果から、矩形パターン形状31a部分に電界の強いエリアがみられている。計算に用いた電界ベクトルが図15において横向き、磁界ベクトルが縦向きであり、図15の矩形パターン形状31aの右側部分には黒い電界が0(ゼロ)のエリアもでてきている。このエリアが前述の仮想の電磁波反射面201である。
また電磁波を受信する導電性パターン22が、基本的に多角形である略多角形の外郭形状を有しており、導電性パターン22の外郭形状が円形の場合と比べて、利得のピーク値を高くすることができる。
この理由は、多角形パターンの場合、Q値が円形パターンよりも高くなるためである。まずQ値について説明すると、共振のQ値は帯域幅で表すことができる。両者の関係は、Q=共振周波数/帯域幅となる。したがって、Q値が高いということは、帯域幅が狭いことになる。
この関係は、パターンを用いる利得のピーク値に当てはめて表現される。つまり多角形パターンのQ値が高いとは、狭い受信帯域ながら高い利得を持つことであり、Q値が低いとは、広い受信帯域を示すものの利得は低いことを表している。
多角形パターンのQ値が高い裏返しとして受信帯域が狭くなり、偏波の影響により共振周波数のズレが発生してしまうことになる。これは方形(四角形)パターンに0°の電界(偏波がない状態)がかかると、矩形パターンの辺に沿って強い電流が流れ、その部分で共振が起こるのに対し、矩形パターンで電界を45°傾けた場合や、円形パターンの場合は、強い電流が流れる経路が、矩形パターンの0°のときほど細く縁に集中しなくなる現象が起きることにより説明できる。いいかえれば、電流の経路が広がることで、共振に関わる半波長の波の分布する領域が広がり、共振する条件が多くなるといえる。この結果として帯域幅が稼げると考えている。たとえば矩形パターンの場合、電磁波(TE波)を受けると辺に平行にまっすぐに電界ができるが、方形を45°回転させた場合は、電磁波(TE波)を受けた場合のパターン内の電界は円弧を描く様に生じるため、明らかに分布が異なっている。つまり方形(多角形)パターンは共振が集中して起きる結果、受信が高くなるものの、偏波依存性を発現しやすい欠点があった。
この欠点を改善するために、パターン形状は基本的には多角形であるが、少なくとも1つの角部が曲線状に形成されるものとする。ここで角部にRを付与する、つまり曲面状とする効果は、共振電流が角部で滞ることなく流れやすくなることであり、さらに共振する領域が広くなることであり、結果Q値は若干落ちるものの広帯域性能を示すことにより、偏波特性が改善されることになる。これによって電磁波の偏波方向によって利得がピークとなる周波数のずれを小さく抑えることができる。したがって利得のピーク値が高く、かつ電磁波の偏波方向によって利得がピークとなる周波数のずれが小さい(偏波損の小さい)優れた受信特性のシート体を実現することができる。
導電性パターン22は、基本的に多角形であり、少なくとも一部の角部を曲線状とすることによって、利得のピーク値が高く、かつ電磁波の偏波方向によって利得がピークとなる周波数のずれが小さい優れた受信特性のシート体を実現することができる。
図16は、図1に示される実施の形態におけるシート体10を構成する他の実施形態であるパターン層15の一部を拡大して示す斜視図である。この場合の導電性パターン22は、導電性パターン12は、2種類の幾何学模様の放射形パターン30と、矩形パターン31とを有する。図16には、理解を容易にするために導電性パターン22を斜線のハッチングを付して示す。
放射形パターン形状30aは、図16に仮想線で示す基礎十文字40を基礎として、交差部分36における4つの角部41およびこの角部41を除く残余の角部58を曲線状、具体的には円弧状にした形状である。角部58は、外方に凸となる円弧状に形成される。
放射形パターン形状30aの寸法の一例を挙げると、各形状部分34,35の幅a1x,a1yは、等しく、たとえば1.0mmであり、各形状部分34,35の長さa2x,a2yは、等しく、たとえば17.5mmである。弧状に形成される角部の円弧状となる寸法、したがって略三角形42の斜辺を除く辺の長さ、具体的にはx方向の辺の長さa3xおよびy方向の辺の長さa3yは、等しく、たとえば7.5mmであり、斜辺の曲率半径R1は、7.5mmである。また角部58の外周辺の曲率半径R3は、7.0mmである。放射形パターン間隔は、x方向の間隔c2xとy方向の間隔c2yが、等しく、たとえば7.0mmである。また矩形パターン形状31aは、x方向の寸法b1xとy方向の寸法b1yとが、等しく、たとえば20.5mmである。放射形パターン形状30aと矩形パターン形状31aとの放射−方形間隔は、x方向の間隔c1xとy方向の間隔c1yとが、等しく、たとえば1.5mmである。このような構成であっても同様の効果を達成することができる。
図17は、図1に示される実施の形態におけるシート体10を構成する他の実施形態であるパターン層15の一部を拡大して示す斜視図である。この場合の導電性パターン22は、導電性パターン12は、放射形パターン30と、矩形パターン31とを有する。図17には、理解を容易にするために導電性パターン22を斜線のハッチングを付して示す。
放射形パターン形状30aは、図17に仮想線で示す基礎十文字40を基礎として、交差部分36における4つの角部41およびこの角部41を除く残余の角部58を曲線状、具体的には円弧状にした形状である。角部58は、外方に凸となる円弧状に形成される。
放射形パターン形状30aの寸法の一例を挙げると、各形状部分34,35の幅a1x,a1yは、等しく、たとえば2mmであり、各形状部分34,35の長さa2x,a2yは、等しく、たとえば10mmである。弧状に形成される角部の円弧状となる寸法、したがって略三角形42の斜辺を除く辺の長さ、具体的にはx方向の辺の長さa3xおよびy方向の辺の長さa3yは、等しく、たとえば3mmであり、斜辺の曲率半径R1は、0.5mmである。また角部58の外周辺の曲率半径R3は、0.5mmである。放射形パターン間隔は、x方向の間隔c2xとy方向の間隔c2yが、等しく、たとえば2mmである。また矩形パターン形状31aは、x方向の寸法b1xとy方向の寸法b1yとが、等しく、たとえば6mmである。放射形パターン形状30aと矩形パターン形状31aとの放射−方形間隔は、x方向の間隔c1xとy方向の間隔c1yとが、等しく、たとえば2mmである。このような構成であっても同様の効果を達成することができる。
図18は、図1に示される実施の形態におけるシート体10を構成する他の実施形態であるパターン層15の一部を拡大して示す斜視図である。この場合の導電性パターン22は、放射形パターン30と、矩形パターン31とを有する。図18には、理解を容易にするために導電性パターン22を斜線のハッチングを付して示す。本実施の形態における矩形パターン形状31aは、図17に示される導電性パターン12の矩形パターン形状31aを、図心を中心にして90°各変位させて配置した形状であり、その他は図17に示される導電性パターン22と同様である。このような構成であっても同様の効果を達成することができる。
図19は、図1に示される実施の形態におけるシート体10を構成する他の実施形態であるパターン層15の正面図であり、図20は図19のパターン層15の一部を拡大して示す斜視図である。この場合の導電性パターン22は、角部41,58における外形線が直角に形成される放射形パターン30と、角部における外形線が直角に形成される矩形パターン31とを有する。矩形パターン形状31aは、放射形パターン形状30aに囲まれる領域に、放射形パターン形状30aからx方向およびy方向にそれぞれ放射−方形間隔c1x,c1yをあけて配置される。図20には、理解を容易にするために導電性パターン22を斜線のハッチングを付して示す。
放射形パターン形状30aの寸法の一例を挙げると、各形状部分34,35の幅a1x,a1yは、等しく、たとえば2.5mmであり、各形状部分34,35の長さa2x,a2yは、等しく、たとえば16.0mmである。放射−方形間隔c1x,c1yは、等しく、たとえば1.0mmである。放射形パターン間隔は、x方向の間隔c2xとy方向の間隔c2yが、等しく、たとえば1.0mmである。また矩形パターン形状31aは、x方向の寸法b1xとy方向の寸法b1yとが、等しく、たとえば12.5mmである。放射形パターン形状30aと矩形パターン形状31aとの放射−方形間隔は、x方向の間隔c1xとy方向の間隔c1yとが、等しく、たとえば1.0mmである。このような構成であっても同様の効果を達成することができる。
図21は、図1に示される実施の形態におけるシート体10を構成する他の実施形態である双峰特性を示すパターン層15の正面図である。図22は、図21に示される実施の形態におけるパターン層15の一部の拡大した斜視図である。このパターン層15は、板状基材31の電波入射側の表面上に、導電性パターン22が形成される。図22には、理解を容易にするために導電性パターン22を斜線のハッチングを付して示す。
導電性パターン22は、たとえばこの実施の形態では単一種類の幾何学模様の+字状のパターン形状が、直交座標系のx方向およびy方向から図21の紙面に垂直な軸線まわりに45度角変位した直交座標系のx1方向およびy1方向に間隔c1,c2をあけて行列状に規則正しく配置されたパターンであってもよい。こうして導電性パターン22を構成するパターン形状61は、×字状に形成される。×字状のパターン形状61は、x1方向に細長く延びる長方形の形状部分62と、y1方向に細長く延びる長方形の形状部分63とが、それらの各形状部分62,63の図心を重ねて、交差部分64で直角に交差して形成される。各形状部分62,63は、交差部分64において垂直な軸線まわりに90度ずれており、同一形状を有する。各形状部分62,63は、たとえば幅a2=b1=2.5mm、長さa1=b2=17mmであり、各形状61のx1方向およびy1方向の相互の間隔c1=c2=1mmであってもよい。これらのパターン形状61は、線状で両端部を有する構造を有し、これらのパターン形状61は、互いに連結しない態様で複数個、配列される。さらにこのようなパターン形状61を構成する形状部分62,63は、線状で両端部を有する構造を有し、このような形状部分62,63を単位として、その両端部を除いた箇所で、2つ以上(この実施の形態では2)の単位である形状部分62,63が直角に交差する。このような構成であっても同様の効果を達成することができる。双峰特性を示すことは、1つのシート体10にて2つ以上の周波数で動作するタグを提案できる。もちろんタグ上にアンテナを複数設けたり、共用出来ない場合はチップも複数設けなければならないが、たとえば高MHz帯と2.4GHz帯との両周波数で、通信を行なうことによって通信妨害部材が存在しても通信特性を改善したタグが提案可能である。
図23は、図1に示される実施の形態におけるシート体10を構成する他の実施形態である双峰特性を示すパターン層15の正面図である。図24は、図23に示される実施の形態におけるパターン層15の一部の拡大した斜視図である。このパターン層15は、板状基材31の電波入射側の表面上に、導電性パターン22が形成される。図24には、理解を容易にするために導電性パターン22を斜線のハッチングを付して示す。導電性パターン22は、たとえばこの実施の形態では単一種類の幾何学模様の方形状のループパターン形状(閉ループ状)が、直交座標系のx方向およびy方向に間隔c5=c6をあけて行列状に規則正しく配置されたパターンであってもよい。これらのパターン形状は、互いに連結しない態様で複数個、配列される。間隔c5=c6=12mmとし、各寸法は、たとえば線幅a6=b5=1mm、外周部の一辺a5=b6=10mmであってもよい。
図25は、図1に示される実施の形態におけるシート体10を構成する他の実施形態であるパターン層15の正面図である。図26は、図25に示されるパターン層15の一部を拡大して示す斜視図である。図25および図26には、理解を容易にするために導電性パターン22を斜線のハッチングを付して示す。この場合の導電性パターン22は、単一種類の幾何学模様の矩形パターン31が、x方向およびy方向に間隔(以下「パターン間隔」という)d1x,d1yをあけて行列状に規則正しく配置されて構成される。図1に示すパターン層15の導電性パターン22は、放射形パターン30と、矩形パターン31とを有していたが、図25のパターン層15の導電性パターン22は、矩形パターン31だけを有する。
矩形パターン形状31aは、正方形状であり、x方向の長さb1xとy方向の長さb1yとは等しく、たとえば21.0mmであり、またx方向およびy方向に隣接する各パターン形状59の相互の間隔である第2のパターン間隔は、x方向の間隔d1xとy方向の間隔d1yとが、等しく、たとえば1.5mmである。このような構成であっても同様の効果を達成することができる。
図27は、図1に示される実施の形態におけるシート体10を構成する他の実施形態であるパターン層15を示す正面図である。図27には、理解を容易にするために導電性パターン22を斜線のハッチングを付して示す。この場合の導電性パターン22は、単一種類の幾何学模様の矩形パターン形状31aが、x方向およびy方向にパターン間隔d1x,d1yをあけて行列状に規則正しく配置されて構成される。図1に示すパターン層15の導電性パターン22は、放射形パターン30と、矩形パターン31とを有していたが、図25のパターン層15の導電性パターン22は、矩形パターン31だけを有する。
矩形パターン形状31aは、正方形状であり、x方向の長さb1xとy方向の長さb1yとは等しく、たとえば21.0mmであり、角部の曲率半径R2は、10.0mmに選ばれる。またx方向およびy方向に隣接する各パターン形状59の相互の間隔である第2のパターン間隔は、x方向の間隔d1xとy方向の間隔d1yとが、等しく、たとえば1.5mmである。
図28は、図1に示される実施の形態におけるシート体10を構成する他の実施形態であるパターン層15を示す正面図である。図29は、図28に示されるパターン層15の一部を拡大して示す斜視図である。図28および図29には、理解を容易にするために導電性パターン22を斜線のハッチングを付して示す。この場合の導電性パターン22は、2種類の幾何学模様の矩形パターン形状31A,31Bが、x方向およびy方向にパターン間隔d1x,d1yをあけて行列状に規則正しく配置されて構成される。第1および第2矩形パターン31A,31Bは、x方向に交互に配列される。また第1および第2矩形パターン形状31A,31Bは、y方向に交互に配置される。
第1および第2矩形パターン形状31A,31Bは、略正方形状であり、第1矩形パターン形状31Aと第2矩形パターン形状31Bとは角部の曲率半径が異なる。第1矩形パターン31Aの角部の曲率半径R2aは、第2矩形パターン31Bの角部の曲率半径よりも小さく選ばれる。x方向の長さb1xとy方向の長さb1yとは等しく、たとえば21.0mmであり、角部の曲率半径R2a,R2bは、4.0mm,7.0mmにそれぞれ選ばれる。またx方向およびy方向に隣接する各パターン形状59の相互の間隔である第2のパターン間隔は、x方向の間隔d1xとy方向の間隔d1yとが、等しく、たとえば1.5mmである。このような構成であっても同様の効果を達成することができる。
図30は、図1に示される実施の形態におけるシート体10を構成するさらに他の実施形態であるパターン層15の正面図である。図30には、理解を容易にするために導電性パターン22を斜線のハッチングを付して示す。この場合の導電性パターン22は、単一種類の幾何学模様のパターン形状66が、x方向およびy方向にパターン間隔d1x,d1yをあけて行列状に規則正しく配置されて構成される。
パターン形状66は、円形状であり、半径rは、たとえば13mmである。またx方向およびy方向に隣接する各パターン形状66の相互の間隔であるパターン間隔は、x方向の間隔d1xとy方向の間隔d1yとが、等しく、たとえば8mmである。このような構成であっても同様の効果を達成することができる。
図31は、図1に示される実施の形態におけるシート体10を構成するさらに他の実施形態であるパターン層15の正面図である。図31には、理解を容易にするために導電性パターン22を斜線のハッチングを付して示す。図4に示すパターン層15の導電性パターン22は、放射形パターン30と、矩形パターン31とを有していたが、図31のパターン層15の導電性パターン22は、放射形パターン30だけを有する。このような構成であっても同様の効果を達成することができる。
図32は、他の形態の矩形パターン形状71を示す正面図である。本実施の形態では、図4、図16,図17,図18,図19,図25,図27,図28の矩形パターン形状31aに代えて、図32に示す矩形パターン形状71を用いる。その他の構成は、図1に示す実施の形態の構成と同様である。図4、図16,図17,図18,図19,図25,図27,図28に示す矩形パターン形状31aは、面状パターンであったけれども、図32の矩形パターン形状71は、外周縁に沿うって延びる閉ループの線状(帯状)のパターンである。このような構成であっても、同様の効果を達成することができる。
図33は、本発明の実施のさらに他の形態の放射形パターン形状70を示す正面図である。本実施の形態では、図4、図16,図17,図18,図19および図31に示す放射形パターン形状30aに代えて、図33に示す放射形パターン形状70を用いる。その他の構成は、図1に示す実施の形態の構成と同様である。図4、図16,図17,図18,図19および図31に示す放射形パターン形状30aは、面状パターンであったけれども、図33の放射形パターン形状70は、外周縁に沿って延びる閉ループの線状(帯状)のパターンである。このような構成であっても、同様の効果を達成することができる。
図34は、図1に示される実施の形態におけるシート体10を構成するさらに他の実施形態であるパターン層15の正面図である。図34には、理解を容易にするために、導電性パターン22を斜線のハッチングを付して示す。パターン層15は、板状基材21の電磁波入射側の表面上に、金属製の導電性パターン22が形成される。
導電性パターン22は、電磁波入射方向と交差する方向に、具体的には、厚み方向に垂直であり、かつ相互に垂直なx方向およびy方向に、シート体10の広範囲に、具体的には全体にわたって、電気的に連なって連続的に形成される。連続導体素子である導電性パターン22には、複数の空孔80,81が形成される。各空孔80,81は、四角形の1つである方形を含む多角形、円形、角部における外形線が曲線である略多角形、紐状に延びる形状およびそれらの組合せから選ばれる形状を有する。紐状に延びる形状は、細長く延びる形状であり、直線状に延びてもよいし、たとえば渦巻きのように曲線状に延びてもよいし、中途部で屈曲していてもよい。
さらに詳細に述べると、導電性パターン22には、形状および寸法のうち少なくともいずれか一方が異なる複数種類の空孔、具体的には、十文字空孔80と、方形空孔81とが形成されている。
十文字空孔80は、十文字形状に形成され、複数の十文字空孔80が、相互に間隔(以下「十文字空孔間隔」という)c2x,c2yをあけて設けられる。さらに詳細には、十文字空孔80は、放射状に延びる部分82を、相互に突合せるようにし、互いに突合わされる放射状に延びる部分82が、十文字空孔間隔c2x,c2yあけている。さらに具体的に述べると、たとえばこの実施の形態では、十文字空孔80は、相互に垂直なx方向およびy方向に沿う放射状である+字状に形成され、x方向に十文字空孔間隔c2xをあけ、y方向に十文字空孔間隔c2yをあけて、行列状に規則正しく配置されてもよい。
十文字空孔80は、x方向に細長く延びる長方形の形状部分84と、y方向に細長く延びる長方形の形状部分85とが、それらの各形状部分84,85の図心を重ねて、交差部分86で直角に交差する形状である。各形状部分84,85は、交差部分86において垂直な軸線まわりに90度ずれており、同一形状を有する。各形状部分84,85の幅a1y,a1xは、等しく、たとえば8mmである。各形状部分84,85の長さa2x,a2yは、等しく、たとえば38mmである。十文字空孔80の十文字空孔間隔は、x方向の間隔c2xとy方向の間隔c2yが、等しく、たとえば32mmである。
方形空孔81は、十文字空孔80に囲まれる領域に、十文字空孔80から間隔(以下「十文字方形間隔」という)c1x,c1yをあけて配置され、十文字空孔80に囲まれる領域を塗潰すように設けられる。さらに詳細には、方形空孔81は、十文字空孔80に囲まれる領域を、4分割し、各分割されて領域にそれぞれ配置される。したがって十文字空孔80によって囲まれる1つの領域には、4つの方形空孔81が形成される。
方形空孔81は、十文字空孔80に囲まれる領域に対応する形状であり、たとえばこの実施の形態では、十文字空孔80が前述のような+字状であり、十文字空孔80に囲まれる領域は長方形であり、これに対応する形状である長方形である。各形状部分84,85が前述のように同一形状である場合、十文字空孔80に囲まれる領域は、正方形となり、方形空孔81は、正方形となる。
十文字空孔80に囲まれる1つの領域内の4つの方形空孔80は、縁辺部がx方向およびy方向のいずれかに延びるように配置され、x方向およびy方向に行列状に並べられている。これら4つの方形空孔が並べられる領域は、四角形、具体的には正方形となり、この領域と十文字空孔80との距離でもある十文字方形間隔c1x,c1yは、全周にわたって同一となる形状に形成される。
このような各空孔80,81の配置は、視点を変えて見た場合、4つの方形空孔81と1つの十文字空孔80とを有する空孔群を1つの単位として、複数の単位空孔群が、電磁波入射方向と交差する方向に整列して、具体的にはx方向およびy方向に行列状に並べられる配置である。1つの空孔群においては、4つの方形空孔81がx方向およびy方向に行列状に並べられ、これら4つの方形空孔81間に形成される十文字形状の領域に十文字空孔80が配置される。
方形空孔81は、x方向の寸法b1xとy方向の寸法b1yとが、等しく、たとえば27mmであり、十文字空孔30と方形空孔31との十文字方形間隔は、x方向の間隔c1xとy方向の間隔c1yとが、等しく、たとえば2mmである。また十文字空孔30に囲まれる領域内の4つの方形空孔31の間隔(以下「方形空孔間隔」という)c3x,c3yは、x方向の間隔c3xとy方向の間隔c3yとが、等しく、たとえば4mmである。
したがって導電性パターン22は、x方向に平行な2つの辺とy方向に平行な2つの辺とで規定される正方形から、前記単位空孔群を切抜いた形状の素子部分を、1つの単位素子部分101として有している。単位素子部分101は、その中心点P101に関して点対称であるとともに、中心点P101まわりに90度回転させる毎に同一形状となる回転対称である。また中心点P101を通るx方向に平行な直線に関して線対称であるとともに、中心点P101を通るy方向に平行な直線に関して線対称である。導電性パターン22は、複数の単位素子部分101が、x方向およびy方向に平行移動させて行列状に並べられる形状である。この形状は、単位素子部分101と、単位素子部分101とはx方向およびy方向に関して対称形である対称単位素子部分とを、市松模様状に交互に配置する形状でもある。前記単位素子部分101の配置ピッチでもあるx方向の寸法f1xおよびy方向の寸法f1yは、たとえば70mmである。十文字空孔80および方形空孔81は、多角形状であり、全ての角部分が、先鋭状、つまり角を成してエッジ状に形成される。このような構成であっても同様の効果を達成することができる。
図35は、本発明の実施のさらに他の形態として、図34のパターン層15とは寸法的な構成の異なる他のパターン層15を示す正面図である。図34には、理解を容易にするために、導電性パターン22を斜線のハッチングを付して示す。寸法的な構成以外は、図33を参照して説明した構成と同様の構成であるので、対応する部分に同一の符号を付して、異なる点となる寸法についてだけ説明する。このパターン層15は、図3に示すパターン層15に代えて、シート体10に用いることができる。各形状部分84,85の幅a1y,a1xは、たとえば6mmであり、各形状部分84,85の長さa2x,a2yは、たとえば132mmである。十文字空孔間隔c2x,c2yは、たとえば8mmである。また方形空孔81の寸法b1x,b1yは、たとえば50mmである。十文字方形間隔c1x,c1yは、たとえば7mmである。また方形空孔間隔c3x,c3yは、たとえば20mmである。さらに前記単位素子部分101の寸法f1x,f1yは、たとえば140mmである。この図35に示す導電性パターン22においても、方形空孔81が、等寸法部分に相当する。以下、等寸法部分に方形空孔と同一の符号81を用いる場合がある。
図36は、本発明の実施のさらに他の形態として用いることできる他のパターン層15を示す正面図である。図36には、理解を容易にするために、導電性パターン22を斜線のハッチングを付して示す。図34に示すパターン層15と対応する部分に同一の符号を付して、異なる構成についてだけ説明する。このパターン層15は、図3に示すパターン層15に代えて、シート体10に用いることができる。図36に示すパターン層15は、導電性パターン22が、図34に示す導電性パターン22とは、異なる形状を有している。図36に示す導電性パターン22は、複数の空孔120が形成される。
各空孔120は、全ての内角が180度未満である多角形であり、正多角形であってもよい。本実施の形態では、各空孔120は、四角形であり、具体的には長方形である。長方形には、正方形が含まれる。さらに詳細に説明すると、各空孔120は、x方向に平行な2つの辺とy方向に平行な2つの辺とで規定される正方形であり、この長方形の各空孔120が、行列状とは異なる所定の規則性に従って配置されている。
さらに具体的には、導電性パターン22は、x方向に平行な2つの辺とy方向に平行な2つの辺とで規定される正方形から、4つの長方形(各空孔120をその1辺に平行な直線で半分にした長方形)の切抜きを形成した形状の単位素子部分101を有している。この単位素子部分101は、前記4つの切抜きが、単位素子部分101の各辺部分に1つずつ、切抜きの一辺を単位素子部分101の辺に一致させる状態で配置され、外方に開放するようにそれぞれ形成される形状である。さらに4つの切抜きは、中心位置が、単位素子部分101の各辺の中点から、単位素子部分101の中心位置P101まわりの周方向一方へ、同一のずれ量で、ずれた位置に配置されている。4つの切抜きは、単位素子部分101の辺と一致する辺の寸法が、空孔120の隣接する2つの辺のうちの一方の辺の寸法と等しく、単位素子部分101の辺に対して垂直な辺の寸法が、空孔120の前記隣接する2つの辺のうちの他方の辺の寸法の1/2の寸法である。
この単位素子部分101は、その中心点P101に関して点対称であるとともに、中心点P101まわりに90度回転させる毎に同一形状となる回転対称である。導電性パターン22は、複数の単位素子部分101と、単位素子部分101とはx方向およびy方向に関して対称形である複数の対称単位素子部分101aとを、市松模様状に交互に並べて形成される形状を有している。このような形状の導電性パターン22を有するパターン層15は、図3に示すパターン層15に代えて同様に用いることが可能であり、このような図35に示すパターン層15を含んでシート体10を構成することができる。単位素子部分101のx方向の寸法f1xおよびy方向の寸法f1yは、たとえば70mmである。
図36に示すパターン層15のさらに具体的構成を説明すると、各空孔120は、正方形である。単位素子部分101に形成される各切抜きは、長辺が空孔120の一辺と同一寸法であり、短辺が空孔120の一辺の1/2の寸法の長方形となる。各切抜きが、長辺を単位素子部分101の辺と一致させて配置される。このような各切抜きが形成される単位素子部分101と、対称な対称単位素子部分101aとを、前述のような市松模様状に並べる形状とすることによって、正方形状の複数の空孔120が形成されるパターン層15を得ることができる。各空孔120のx方向の寸法g1xおよびy方向の寸法g1yは同一であり、たとえば40mmである。本実施の形態では、各空孔120が等寸法部分に相当する。以下、等寸法部分に空孔120と同一の符号を用いる場合がある。
図37は、本発明の実施のさらに他の形態として用いることできる他のパターン層15を示す正面図である。図37には、理解を容易にするために、導電性パターン22を斜線のハッチングを付して示す。図34に示すパターン層15と対応する部分に同一の符号を付して、異なる構成についてだけ説明する。このパターン層15は、図3に示すパターン層15に代えて、シート体10に用いることができる。図37に示すパターン層15は、導電性パターン22が、図34に示す導電性パターン22とは、異なる形状を有している。
図37に示す導電性パターン22は、複数の空孔121が形成される。各空孔121は、複数の線分状部分が垂直に屈曲して連なって大略的にC字状を成す2つのC字状部125が、凹となる側を対向させて配置され、各C字状部の中央部が直線状の連結部126で連結される形状である。このような形状の各空孔121は、一方のC字状部125が、他の空孔121の連結部126に関して一方側の凹部に嵌まり込むような状態で、互いに絡み合うような、所定の規則性に従う配置で、形成されている。各C字状部125の各線分状部分および各連結部126は、x方向またはy方向に平行である。
さらに具体的には、導電性パターン22は、x方向に平行な2つの辺とy方向に平行な2つの辺とで規定される正方形から、4つの鉤状の部分を周方向へ並べて渦巻き状に切抜いた形状の単位素子部分101を有している。各鉤の部分は、5つの線分状部分が4つの屈曲部で連結され、単位素子部分102の内方に成るにつれて線分状部分の寸法が小さくなる形状であり、最も外側の線分状部分は、単位素子部分101の辺に沿って配置され、単位素子部分101において外方に開放している。単位素子部分101は、中心点P10に交差部を一体させた卍状の部分が形成されるように、x方向またはy方向に平行な複数(本実施の形態では5つ)の線分状部分を垂直に屈曲するように連結させ、周方向一方へ旋回しながら半径方向外方へ拡がる渦巻き状に形成される。
この単位素子部分101は、その中心点P101に関して点対称であるとともに、中心点P101まわりに90度回転させる毎に同一形状となる回転対称である。導電性パターン22は、複数の単位素子部分101と、単位素子部分101とはx方向およびy方向に関して対称形である複数の対称単位素子部分101aとを、市松模様状に交互に並べて形成される形状を有している。このように導電性パターン22は、互いに連なる複数の渦巻き状の部分を有する形状である。このような形状の導電性パターン22を有するパターン15は、図3に示すパターン層15に代えて同様に用いることが可能であり、このような図37に示すパターン層15を含んでシート体10を構成することができる。単位素子部分101のx方向の寸法f1xおよびy方向の寸法f1yは、たとえば63mmである。
また異なる視点で見ると、図37に示す導電性パターン22は、たとえば仮想線で囲って示す領域S1に着目して、一方向に延びる複数の異寸法部分127が一方向と交差する方向へ並ぶように、各空孔121が形成されている。領域S1では、各異寸法部分127は、x方向へ延び、y方向へ並んでいる。導電性パターン22には、この領域S1と同様の形状の領域が複数存在するとともに、領域S1が90度回転した形状を有する領域が複数存在する。
このように図37に示す導電性パターン22は、電磁波の入射方向と交差する面に沿って電気的に連なって連続的に形成される連続導体素子であって、複数の空孔121が形成される。各空孔121は、導電性パターン22が平面に沿うように配置される状態で、互いに直交する2方向の寸法が異なる異寸法部分127を有する。各異寸法部分127が前記2方向の寸法のうち小さい寸法の方向へ並べて配置される。ここで前記2方向は、x方向およびy方向である。各異寸法部分127の前記2方向の寸法のうち小さい方の寸法である各異寸法部分127の幅寸法w127は、たとえば4mmであり、前記異寸法部分127の前記2方向の寸法のうち大きい方の寸法である各異寸法部分127の長さ寸法は、前記幅寸法w127の2倍以上である。
図38は、本発明の実施のさらに他の形態として用いることできる他のパターン層15を示す正面図である。図38には、理解を容易にするために、導電性パターン22を斜線のハッチングを付して示す。図34に示すパターン層15と対応する部分に同一の符号を付して、異なる構成についてだけ説明する。このパターン層15は、図3に示すパターン層15に代えて、シート体10に用いることができる。図38に示すパターン層15は、導電性パターン22が、図34に示す導電性パターン22とは、異なる形状を有している。
図38に示す導電性パターン22は、複数の空孔130が形成される。各空孔130は、互いに間隔をあけて平行に延びる2つの直線状の端壁部131が、各中央部で直線状の連結部132によって連結され、全体で、I字状の形状を有している。このような形状の各空孔130は、一方の端壁部131が、他の空孔130の連結部132に関して一方側の凹部に嵌まり込むような状態で、所定の規則性に従う配置で、形成されている。各端壁部131および各連結部132は、x方向またはy方向に平行である。
さらに具体的には、導電性パターン22は、x方向に平行な2つの辺とy方向に平行な2つの辺とで規定される正方形から、4つのL字状の部分を一方の直線部分が前記正方形の各辺に沿って配置され外方に開放する状態で、周方向へ並べて渦巻き状に切抜いた形状の単位素子部分101を有している。単位素子部分101は、中心点P101にその中心が一致する正方形の基部から複数(本実施の形態では2つ)の線分を垂直に屈曲するように連結させて、周方向一方へ旋回しながら半径方向外方へ拡がる渦巻き状に形成される。
この単位素子部分101は、その中心点P101に関して点対称であるとともに、中心点P101まわりに90度回転させる毎に同一形状となる回転対称である。導電性パターン22は、複数の単位素子部分101と、単位素子部分101とはx方向およびy方向に関して対称形である複数の対称単位素子部分101aとを、市松模様状に交互に並べて形成される形状を有している。このように導電性パターン22は、互いに連なる複数の渦巻き状の部分を有する形状である。このような形状の導電性パターン22を有するパターン層15は、図3に示すパターン層15に代えて同様に用いることが可能であり、このような図38に示すパターン層15を含んで素子受信手段100を構成することができる。単位素子部分101のx方向の寸法f1xおよびy方向の寸法f1yは、たとえば41mmである。
また異なる視点で見ると、図38に示す導電性パターン22は、たとえば仮想線で囲って示す領域S2に着目して、一方向に延びる複数の異寸法部分137が一方向と交差する方向へ並ぶように、各空孔130が形成されている。領域S2では、各異寸法部分137は、x方向へ延び、y方向へ並んでいる。導電性パターン22には、この領域S2と同様の形状の領域が複数存在するとともに、領域S2が90度回転した形状を有する領域が複数存在する。
このように図38に示す導電性パターン22は、電磁波の入射方向と交差する面に沿って電気的に連なって連続的に形成される連続導体素子であって、複数の空孔130が形成される。各空孔130は、導電性パターン22が平面に沿うように配置される状態で、互いに直交する2方向の寸法が異なる異寸法部分137を有する。各異寸法部分137が前記2方向の寸法のうち小さい寸法の方向へ並べて配置される。ここで前記2方向は、x方向およびy方向である。各異寸法部分137の前記2方向の寸法のうち小さい方の寸法である各異寸法部分137の幅寸法w137は、たとえば3mmであり、前記異寸法部分137の前記2方向の寸法のうち大きい方の寸法である各異寸法部分137の長さ寸法は、前記幅寸法w137の2倍以上である。
図39は、本発明の実施のさらに他の形態として用いることできる他のパターン層15を示す正面図である。図39には、理解を容易にするために、導電性パターン22を斜線のハッチングを付して示す。図34に示すパターン層15と対応する部分に同一の符号を付して、異なる構成についてだけ説明する。このパターン層15は、図3に示すパターン層15に代えて、シート体10に用いることができる。図39に示すパターン層15は、導電性パターン22が、図34に示す導電性パターン22とは、異なる形状を有している。
図39に示す導電性パターン22は、複数の空孔135が形成される。各空孔135は、細長い長方形状であり、ストライプ状、したがって縞状を成す、所定の規則性に従う配置で、形成されている。各空孔135は、x方向またはy方向に平行である。さらに具体的には、導電性パターン22は、x方向に平行な2つの辺とy方向に平行な2つの辺とで規定される正方形から、ストライプ状に配置された複数の空孔135を切抜いた形状の単位素子部分101を有している。単位素子部分101には、単位素子部分101を中心点P101で直交するx方向に平行な直線とy方向に平行な直線とで4つの領域に分割して、一方の対角線方向に配置される2つの領域に、複数(本実施の形態では6つ)の空孔135がx方向に平行にストライプ状に略均等に配置されて形成され、他方の対角線方向に配置される2つの領域に、複数(本実施の形態では6つ)の空孔135がy方向に平行にストライプ状に略均等に配置されて形成される。
この単位素子部分101は、その中心点P101に関して点対称であるとともに、中心点P101まわりに90度回転させる毎に同一形状となる回転対称である。導電性パターン22は、複数の単位素子部分101を行列状に並べて形成される形状を有している。この形状は、単位素子部分101と、単位素子部分101とはx方向およびy方向に関して対称形である対称単位素子部分とを、市松模様状に交互に配置する形状でもある。また導電性パターン22は、x方向に平行な2つの辺とy方向に平行な2つの辺とで規定される正方形の領域に、x方向に延びる6つの空孔135をy方向に並べて形成した部分と、同様の正方形の領域に、y方向に延びる6つの空孔135をx方向に並べて形成した部分とを、一松模様状に、交互に並べて配置した形状でもある。このような形状の導電性パターン22を有するパターン層15は、図4に示すパターン層15に代えて同様に用いることが可能であり、このような図14に示すパターン層15を含んで素子受信手段100を構成することができる。単位素子部分101のx方向の寸法f1xおよびy方向の寸法f1yは、たとえば129mmである。
また異なる視点で見ると、図39に示す導電性パターン22は、たとえば仮想線で囲って示す領域S3に着目して、一方向に延びる複数の異寸法部分が一方向と交差する方向へ並ぶように、各空孔135が形成されている。図39の構成では、各空孔135が、異寸法部分にそれぞれ相当する。領域S3では、各異寸法部分である各空孔135は、x方向へ延び、y方向へ並んでいる。導電性パターン22には、この領域S3と同様の形状の領域が複数存在するとともに、領域S3が90度回転した形状を有する領域が複数存在する。
このように図39に示す導電性パターン22は、電磁波の入射方向と交差する面に沿って電気的に連なって連続的に形成される連続導体素子であって、複数の空孔135が形成される。各空孔135は、導電性パターン22が平面に沿うように配置される状態で、互いに直交する2方向の寸法が異なる異寸法部分に相当する。以下、異寸法部分に各空孔135と同一の符号135を用いる場合がある。各異寸法部分である各空孔135は前記2方向の寸法のうち小さい寸法の方向へ並べて配置される。ここで前記2方向は、x方向およびy方向である。各空孔135の前記2方向の寸法のうち小さい方の寸法である各空孔135の幅寸法w135は、たとえば6mmであり、空孔135の前記2方向の寸法のうち大きい方の寸法である空孔135の長さ寸法は、前記幅寸法w135の2倍以上である。
図40は、図1に示される実施の形態におけるシート体10を構成する他の実施形態であるパターン層15の一部を拡大して示す正面図である。図41は、図40の一部を拡大して示すパターン層15の正面図である。図40および図41では、理解を容易にするために導電性パターン22を斜線のハッチングを付して示す。このパターン層5は、図1に示す前述のパターン層15に代えて用いられるパターン層であって、図1に示す前述のパターン層15と類似し、対応する部分には同様の参照符を付し、重複する説明を省略する場合がある。図40のパターン層15は、図1のパターン層15とは、各導電性パターン22の形状および寸法が異なる。図40の導電性パターン22は、複数の放射形パターン30と、複数の略方形パターン31とを有する。
各放射形パターン30は、放射形状にそれぞれ形成され、複数の放射形パターン30が、相互に間隔をあけて設けられる。各放射形パターン30は、相互に仮想一平面上で直交するx方向およびy方向に沿う放射状である略十文字形に形成され、x方向およびy方向に行列状に規則正しく整列配置される。各放射形パターン30は、図41に仮想線で示す基礎となる十文字(以下「基礎十文字」という)40の交差部分36における4つの角部41を曲線状、具体的には円弧状にした形状である。基礎十文字40は、x方向に細長く延びる第1長方形部分34と、y方向に細長く延びる第2長方形部分35とが、それら各長方形部分34,35の中心を重ねて、交差部分36で直角に交差する形状である。各長方形部分34,35は、交差部分36において垂直な軸線まわりに90度ずれており、同一形状を有する。このような基礎十文字40に、4つの第1略直角三角形42を、交差部分36の4つの角部41に、各第1略直角三角形42の角部がそれぞれ収まるように設けた形状である。各第1略直角三角形42は、大略的に直角二等辺三角形であり、直角の角部に対向する斜辺が直角の角部に向けて凹となるように円弧状に湾曲する形状である。各放射形パターン30は、4回回転対称であり、各長方形部分34,35の中心に関して点対称であり、各長方形部分34,35の中心を通り各長方形部分の長辺に平行な2つの直線に関してそれぞれ線対称であり、各長方形部分34,35の中心を通り各長方形部分の長辺に平行な2つの直線に関して45度ずれた2つの直線に関して線対称である。
各略方形パターン31は、放射形パターン30に囲まれる領域に、放射形パターン30から間隔をあけて配置され、放射形パターン30に囲まれる領域を塗潰すようにそれぞれ配置される。x方向に隣接する2つの放射形パターン31と、これら2つの放射形パターン31にy方向のいずれか一方に隣接する2つの放射形パターン31とを組合わせた4つの放射形パターン31によって囲まれる領域は、大略的に正方形である。この領域に1つの略方形パターン31が嵌まり込むように配置されている。各略方形パターン31は、前記4つの放射形パターン31に囲まれる領域の形状と類似する形状に形成される。
各放射形パターン30が前述のような略十文字形であり、各放射形パターン30に囲まれる各領域は、長方形の各角部を円弧状にした隅丸四角形である。この隅丸四角形の基礎となる長方形は、長辺と短辺の寸法が異なる矩形および長辺と短辺の寸法が同一である正方形を含む。この実施の形態では、各放射形パターン30に囲まれる各領域は、略正方形の隅丸四角形であり、各略方形パターン31は、略正方形の隅丸四角形である。
各略方形パターン31は、基礎正方形25の4つの角部26を円弧状に変更した形状である。各略方形パターン31は、基礎正方形25から、直角の角部が基礎正方形25の角部に収まるように配置される4つの第2略直角三角形27を取除いた形状である。各第2略直角三角形27は、大略的に直角二等辺三角形であり、直角の角部に対向する斜辺が直角の角部に向けて凹となるように円弧状に湾曲する形状である。各略方形パターン31は、基礎正方形25の中心が、その周囲の4つの放射形パターン31の基礎十文字の中心を結んで形成される正方形の中心と一致し、かつ基礎正方形25の各辺が、x方向およびy方向のいずれかに延びるように配置されている。各略方形パターン12は、4回回転対称であり、基礎正方形25の中心に関して点対称であり、基礎正方形25の2つの対角線に関してそれぞれ線対称であり、基礎正方形25の中心を通りいずれかの辺に平行な2つの直線に関してそれぞれ線対称である。
このような放射形パターン30と略方形パターン31とを有する各パターン12が形成されるパターン層15は、パターン層15全領域の面積を1とした場合、各導電性パターン22が形成される領域の面積(以下「パターン面積」という)が0.6以上となる面積比を有する。
第1長方形部分34の幅a1yと第2長方形部分35の幅a1xは、互いに等しく、たとえば0.05mm以上10mm以下であり、第1長方形部分34の長さa2xと第2長方形部分35の長さa2yは、互いに等しく、たとえば1mm以上100mm以下である。第1略直角三角形42の直角を挟む2辺の長さ、したがって2辺のうちのx方向に延びる辺の長さa3xとy方向に延びる辺の長さa3yとは、互いに等しく、たとえば0.1mm以上50mm以下であり、第1略直角三角形42の斜辺の曲率半径R1は、たとえば1mm以上100mm以下である。第1略直角三角形42の斜辺の円弧の中心点と、第1略直角三角形42の斜辺の両端をそれぞれ結ぶ2つの直線の成す角度θ3は、5度以上45度以下である。x方向に隣接2つの放射形パターン30の各第1長方形部分34間の距離c2xと、y方向に隣接2つの放射形パターン30の各第2長方形部分35間の距離c2yとは、互いに等しく、たとえば0.1mm以上100mm以下である。
また基礎正方形25のx方向の寸法b1xとy方向の寸法b1yとは、互いに等しく、たとえば1mm以上100mm以下である。これら基礎正方形25の各寸法b1x,b1yは、略方形パターン31のx方向寸法およびy方向寸法である。第2略直角三角形27の直角を挟む2辺の長さ、したがって2辺のうちのx方向に延びる辺の長さb2xとy方向に延びる辺の長さb2yとは、互いに等しく、たとえば0.1mm以上50mm以下であり、第2略直角三角形27の斜辺の曲率半径R2は、1mm以上100mm以下である。
また放射形パターン30と略方形パターン31間の隙間(以下「放射方形間隙間」という)の幅寸法c1は、最小幅寸法c1minから最大幅寸法c1maxの間で、隙間の延在方向に連続的に変化する。放射方形間隙間の最小幅寸法c1minは、放射形パターン30の各長方形部分34,35の長手方向の端における略方形パターン31までの寸法であり、たとえば0.1mm以上20mm以下である。放射方形間隙間の最大幅寸法c1maxは、各略直角三角形42,27の直角を2等分する直線に沿う位置の寸法であり、たとえば0.5mm以上50mm以下である。
このように放射方形間隙間の幅寸法c1は、その隙間の延在方向に連続的に変化している。放射方形間隙間の幅寸法c1の変化率Δc1は、たとえば0.001以上10以下である。放射方形間隙間の幅寸法c1の変化率Δc1は、放射形パターン30の縁辺に沿う単位寸法当たりの放射方形間隙間の幅寸法c1の変化量である。また本実施の形態では、変化率Δc1は、一様ではなく、最小幅寸法c1minの位置から最大幅寸法c1maxの位置に向かうにつれて、小さくなる。
変化率Δc1は、式(1)で表される。式(1)における係数kは、式(2)で表される。
シート体10の吸収対象とする電磁波の周波数がUHF帯である場合、各長方形部分34,35の幅a1x,a1yは、たとえば1mmであり、各長方形部分34,35の長さa2x,a2yは、たとえば20mmであり、第1略直角三角形42の直角を挟む2辺の長さa3x,a3yは、たとえば6.5mmであり、斜辺の曲率半径R1は、6.5mmである。シート体10の吸収対象とする電磁波の周波数がUHF帯である場合、基礎正方形25の寸法b1x,b1yは、たとえば25mmであり、第2略直角三角形27の直角を挟む2辺の長さb2x,b2yは、たとえば10.5mmであり、斜辺の曲率半径R2は、10.5mmである。シート体10の吸収対象とする電磁波の周波数がUHF帯である場合、放射方形間隙間の幅寸法c1の最小幅寸法c1minは、たとえば0.5mmであり、最大幅寸法c1maxは、たとえば2mmであり、変化率Δc1は、たとえば0.15である。シート体10の吸収対象とする電磁波の周波数がUHF帯である場合、放射形パターン間の間隔c2x,c2yは、たとえば7mmである。
シート体10の吸収対象とする電磁波の周波数が2.4GHz帯である場合、各長方形部分34,35の幅a1x,a1yは、たとえば0.5mmであり、各長方形部分34,35の長さa2x,a2yは、たとえば17.5mmであり、第1略直角三角形42の直角を挟む2辺の長さa3x,a3yは、たとえば5mmであり、斜辺の曲率半径R1は、5mmである。シート体10の吸収対象とする電磁波の周波数が2.4GHz帯である場合、基礎正方形25の寸法b1x,b1yは、たとえば20.5mmであり、第2略直角三角形27の直角を挟む2辺の長さb2x,b2yは、たとえば8mmであり、斜辺の曲率半径R2は、8mmである。シート体10の吸収対象とする電磁波の周波数が2.4GHz帯である場合、放射方形間隙間の幅寸法c1の最小幅寸法c1minは、たとえば0.5mmであり、最大幅寸法c1maxは、たとえば約1.7mmであり、変化率Δc1は、たとえば0.14である。シート体10の吸収対象とする電磁波の周波数が2.4GHz帯である場合、放射形パターン間の間隔c2x,c2yは、たとえば2.5mmである。
このような放射形パターン30と略方形パターン31とを有する各導電性パターン22が形成されるパターン層15を備えるシート体10は、前述の図3のパターン層15を備えるシート体10と同様の効果を達成することができる。また図40および図41のパターン層15では、各導電性パターン22のうち少なくとも一部のパターンは、曲線部分を含む外形形状を有する。本実施の形態では、全ての導電性パターン22は、曲線部分を含む外形形状を有している。このような導電性パターン22では、電磁波を受信したときの共振電流が、曲線状部分でスムーズに流れるようになる。
また本発明の実施の他の形態として、シート体10の積層構成は、図1以外の積層構成であってもよい。
図42は、本発明のさらに他の実施の形態のシート体10aを示す断面図である。シート体10aとして、図42に示すように、電磁波入射側から、第1貯蔵体層14、パターン層15、第2貯蔵体層13、反射域形成層12、貼付層11の順に積層する構成とすることができる。第1貯蔵体層14、パターン層15、第2貯蔵体層13、反射域形成層12および貼付層11の各層は、前述した構成と同様である。このような構成であっても、同様な効果を達成することができる。図42の形態において、図1と対応する構成に同一の符号を付す。本実施の形態では、第1および第2貯蔵体層14,13は、同様の貯蔵体層を用いることができ、同一の貯蔵体層であってもよいし、異なる貯蔵体層であってもよい。貯蔵体層は第1、第2に留まらず、何層の積層であってもよい。誘電体層であることも磁性体層であることも、それらを複合したものでもよい。単層でもよいことは後述の図44に示す通りである。
図43は、本発明のさらに他の実施の形態のシート体10bを示す断面図である。シート体10bとして、図43に示すように、1つ目の貯蔵体層(たとえば第3貯蔵体層130)、パターン層15、2つ目の貯蔵体層(たとえば第1貯蔵体層14)、3つ目の貯蔵体層(たとえば第2貯蔵体層13)、反射域形成層12、貼付層11の順に積層する構成とすることができる。第3貯蔵体層130は、第1および第2貯蔵体層14,13と同様に、貯蔵体層であり、誘電材であってもよいし、磁性材であってもよい。パターン層15、第1貯蔵体層14、第2貯蔵体層13、反射域形成層12および貼付層11の各層は、前述した実施の形態と同様である。図43の形態において、図1と対応する構成に同一の符号を付す。本実施の形態では、第1および第2貯蔵体層14,13ならびに第3貯蔵体層130は、同様の貯蔵体層を用いることができ、同一の貯蔵体層であってもよいし、異なる貯蔵体層であってもよい。
図44は、本発明のさらに他の実施の形態のシート体10cを示す断面図である。シート体10cとして、図44に示すように、電磁波入射側から、パターン層15、貯蔵体層208、反射域形成層12の順に積層する構成とすることができる。パターン層15および反射域形成層12の各層は、前述した構成と同様であり、また貯蔵体層208は、前述したように、非導電性である誘電体層および/または磁性体層からなる層であり、このような構成であっても、同様な効果を達成することができる。図44の形態において、図1と対応する構成に同一の符号を付す。本実施の形態では、貯蔵体層208は、前述した各貯蔵体層14,13などによって実現される。
また前述した各形態の構成において、各貯蔵体層14,13,20,208をそれぞれ多層化することもできる。また各形態の構成において、各層12〜16,20は,208、接着剤層および支持体(PETフィルムなど)を介して積層されるものであってもよいし、このような構成では、各層の間に設けられる接着剤層に誘電材料および磁性材料のいずれか一方を配合して、貯蔵効果を有するように構成することもできる。特に反射域形成層12の近傍は磁界が強くなる領域であり、磁性材料から成る層または磁性材料が配合される層を配置することが有効である。
本発明の実施の他の形態として、シート体は、前述した各実施の形態における反射域形成層12を含まず、このような反射域形成層12を含まないシート体が、第2貯蔵体層13または貯蔵体層208の電磁波入射側(図1,図42、図43および図44の上方)とは反対側(図1,図42、図43および図44の下方)の表面部で、電磁波遮蔽性能を有する通信妨害部材57の面上に設置されるように構成されてもよい。通信妨害部材57は、たとえば反射域形成層12と同様な構成を有してもよく、たとえば金属板などによって実現されてもよく、この場合には反射域形成層12が設けられる構成と同様の効果を達成する。
本発明の説明は、無線タグとして用いる場合を主に説明したが、無線通信に用いられるデータキャリア装置であるなら、タグ、リーダ、リーダ/ライタに関係なく、アンテナ体に付加あるいは一体化して、通信妨害部材の影響を最大限に排除して、通信改善効果を得ることができる。
以下に実施例および比較例の構成および性能評価結果を述べる。ここに述べるのは本発明の具体的な例示であるが、本発明がこれに限定されることはない。
表1は、実施例1〜6および比較例1および2の各構成ならびに評価結果をまとめて示している。表1は、シート体の有無、パターン形状、シート体の厚みおよび通信することができたか否か(通信可否)を表す。
表2は、各実施例1〜6における第1および第2貯蔵体層13,14の構成をまとめて示している。第1貯蔵体層13を貯蔵体層とし、第2貯蔵体層14を誘電体層としている。表2は、第1および第2貯蔵体層13,14の各層の厚み、複素比誘電率の実数部ε’および虚数部ε”、ならびに複素比透磁率の実数部μ’および虚数部μ”を示している。
性能評価としてリーダライタ111とタグとの通信試験を行った。図45および図46は、通信試験の様子を模式的に示す図である。実施例では、ステンレス鋼板である金属板110の厚み方向の一表面上にシート体10を有するタグ50を貼り付け、比較例では、同じ金属板110の厚み方向の一表面上に直接タグ本体54を貼り付けた。金属板110の一表面は、タグ50およびタグ本体54の厚み方向の一表面よりも十分に大きく選ばれ、1辺が150mmの正方形とした。金属板110の一表面の中央部にタグ50またはタグ本体54を貼り付けた。通信試験において、通信可能であれば表1の通信可否の欄に記号「○」を示し、通信不可能であれば表1の通信可否の欄に記号「×」を示した。
タグ本体54に臨んでリーダライタ111による無線通信を行い、通信可否の実験を行った。リーダライタ111とタグ本体54との距離Lは、実使用においてタグ本体54とリーダライタ111とが無線通信するにあたって最低限必要とされる距離(必要最低距離)Lとした。無線通信に利用した電磁波の周波数は、2.4GHz帯である。またリーダライト111とタグ本体54との間には、空気が介在される。
(実施例1)
パターン層15および反射域形成層12は、厚みが100μmのアルミニウム蒸着ポリエチレンテレフタレート(Polyethylene Telephthalate:略称PET)を使用した。パターン層15および反射域形成層12におけるアルミニウム層の層厚は、100μmである。パターン層15は、PETにアルミニウムを蒸着してアルミニウム層を形成し、このアルミニウム層をエッチング処理によってパターン化させて、図19に示されるパターン形状を形成して作製した。第1貯蔵体層14は、SBS(スチレン・ブタジエン・スチレン共重合体)樹脂100重量部に誘電材料にカーボンブラック35重量部、磁性材料にフェライト205重量部、および他の分散剤(磁性材は使用しない)を添加して混練し、シート状に押出成形した1mm厚のシートによって形成した。第2貯蔵体層13は、SBSに赤燐および水酸化マグネシウムを混練して難燃化させた1.75mm厚のシートによって形成した。貼付層11は、厚さ0.15mmであり、アクリル共重合樹脂によって形成した。これらをパターン層15、第1貯蔵体層14、第2貯蔵体層13、反射域形成層12の順に接着剤を介して積層し、反射域形成層12に貼付層11を積層して、これらの各層を、20mm×80mmの寸法に裁断して、総厚3mmの直方体形状のシート体10を作製した。パターン層15の導電性パターン22は、x方向を長手方向に合わせ、y方向を短手方向に合わせたときに、矩形パターン形状31aが短手方向の中央にそれぞれ図心を合わせて長手方向に配列され、放射形パターン形状40aの一部が矩形パターン形状31aの周囲に配置される。作製したシート体10とタグ本体54とを張り合わせて、タグ50を作製した。
なおパターン層15の導電性パターン22は、a1x=a1y=2.5mmであり、a2x=a2y=16mmであり、c1x=c1y=1.0mmであり、c2x=c2y=1.0mmであり、b1x=b1y=12.5mmであり、c1x=c1y=1.0mmである。
(実施例2)
パターン層15および反射域形成層12は、厚みが100μmのアルミニウム蒸着ポリエチレンテレフタレート(PET)を使用した。パターン層15および反射域形成層12におけるアルミニウム層の層厚は、0.05μmである。パターン層15は、PETにアルミニウムを蒸着してアルミニウム層を形成し、このアルミニウム層をエッチング処理によってパターン化させて、図28に示されるパターン形状を形成することによって作製した。第1貯蔵体層14は、PVC(株式会社カネカ、KS1700)樹脂100重量部、DOP[ジオクチルフタレート(フタル酸ジ2−エチルヘキシル)1,2
Benzenedicarboxylic acid bis(2-ethylhexyl)ester]80重量部、誘電材料にグラファイト43重量部、磁性材料にフェライト125重量部、および他に炭酸カルシウムを添加して混練して、シート状に押出成形した0.3mm厚のシートによって形成した。第2貯蔵体層13はSBSに赤燐および水酸化マグネシウムを混練し、難燃化させた1.8mm厚のシートによって形成した。貼付層11は、厚さ0.15mmであり、アクリル共重合樹脂によって形成した。これらをパターン層15、第1貯蔵体層14、第2貯蔵体層13、反射域形成層12の順に接着剤を介して積層して、反射域形成層12に貼付層11を積層して、これらの各層を、20mm×80mmの寸法に裁断して、総厚2.1mmの直方体形状のシート体10を作製した。
なおパターン層15の導電性パターン22は、b1x=b1y=21.0mmであり、R2a=7.0mmであり、R2b=4.0mmであり、d1x=d1y=1.5mmである。パターン層15の導電性パターン22は、x方向を長手方向に合わせ、y方向を短手方向に合わせたときに、矩形パターン形状31aが短手方向の中央にそれぞれ図心を合わせて長手方向に配列される。
(実施例3)
パターン層15は、図22に示されるパターン形状とし、その他の作製方法は実施例1と同様とした。
なおパターン層15の導電性パターン22は、b1x=b1y=21.0mmであり、d1x=d1y=1.5mmである。パターン層15の導電性パターン22は、x方向を長手方向に合わせ、y方向を短手方向に合わせたときに、矩形パターン形状31aが短手方向の中央にそれぞれ図心を合わせて長手方向に配列される。
(実施例4)
パターン層15は、図3に示されるパターン形状とし、その他の作製方法は実施例1と同様とした。
なおパターン層15の導電性パターン22は、a1x=a1y=1.0mmであり、a2x=a2y=17.5mmであり、a3x=a3y=7.5mmであり、c1x=c1y=1.5mmであり、c2x=c2y=7.0mmであり、b1x=b1y=20.5mmであり、c1x=c1y=1.5mmであり、R1=7.5mm、R2=7.0mmである。パターン層15の導電性パターン22は、x方向を長手方向に合わせ、y方向を短手方向に合わせたときに、矩形パターン形状31aが短手方向の中央にそれぞれ図心を合わせて長手方向に配列され、放射形パターン形状40aの一部が矩形パターン形状31aの周囲に配置される。
(実施例5)
パターン層15および反射域形成層12は、厚みが100μmのアルミニウム蒸着ポリエチレンテレフタレート(PET)を使用した。パターン層15および反射域形成層12におけるアルミニウム層の層厚は、0.05μmである。パターン層15は、PETにアルミニウムを蒸着してアルミニウム層を形成し、このアルミニウム層をエッチング処理によってパターン化させて、図3に示されるパターン形状を形成して作製した。第1貯蔵体層14は、SBS樹脂100重量部に誘電材料にグラファイト55重量部、磁性材料にフェライト213重量部、および他に分散剤を添加して混練してシート状に押出成形した0.5mm厚のシートによって形成した。第2貯蔵体層13は、SBSに赤燐および水酸化マグネシウムを混練し、難燃化させた2.0mmのシートによって形成した。貼付層11は、厚さ0.15mmであり、アクリル共重合樹脂によって形成した。これらをパターン層15、第1貯蔵体層14、第2貯蔵体層13、反射域形成層12の順に接着剤を介して積層し、反射域形成層12に貼付層11を積層して、これらの各層を、20mm×80mmの寸法に裁断して、総厚2.7mmの直方体形状のシート体10を作製した。
なおパターン層15の導電性パターン22は、実施例4と同様の寸法である。
(実施例6)
パターン層15および反射域形成層12は、厚みが100μmのアルミニウム蒸着ポリエチレンテレフタレート(PET)を使用した。パターン層15および反射域形成層12におけるアルミニウム層の層厚は、0.05μmである。パターン層15は、PETにアルミニウムを蒸着してアルミニウム層を形成し、このアルミニウム層をエッチング処理によってパターン化させて、図3に示されるパターン形状を形成して作製した。第1貯蔵体層14は、PVC樹脂100重量部、DOP80重量部、誘電材料にグラファイト48重量部、磁性材料にフェライト130重量部、および他に増量材の炭酸カルシウムを添加して混練し、シート状に押出成形した0.4mm厚のシートによって形成した。第2貯蔵体層13はSBSに赤燐および水酸化マグネシウムを混練し、難燃化させた1.7mmのシートによって形成した。貼付層11は、厚さ0.15mmであり、アクリル共重合樹脂によって形成した。これらをパターン層15、第1貯蔵体層14、第2貯蔵体層13、反射域形成層12の順に接着剤を介して積層し、反射域形成層12に貼付層11を積層して、これらの各層を、20mm×80mmの寸法に裁断して、総厚2.1mmの直方体形状のシート体10を作製した。
なおパターン層15の導電性パターン22は、実施例4と同様の寸法である。
(比較例1)
実施例1〜6と同じタグ本体54を、金属板110に直接貼り付けて通信測定を行った。
表1に示される試験結果から判るように、比較例では、タグ本体54とリーダライタ111との通信はできなかったが、実施例1〜7については、ともにタグ50とリーダライタ111とが通信可能であり、通信妨害部材57である金属板110の近傍であっても、好適に無線通信を行うことができ、金属板110に貼り付けたときの通信距離の低下を抑制することができた。
(比較例2)
ゴムフェライト(2mm厚)からなる磁性シートを20mm×80mmの寸法に裁断したものを、タグ本体54と金属板110の間に挿入して通信測定を行った。通信改善効果は低く、本発明のシート体10に比べて、明らかに劣るものであった。
(実施例7)
パターン形状はほぼ図40および図41に示すものであり、放射形パターン30と略方形パターン31との各曲率に差を付け、2つのパターン30,31の間隔c1を連続的にその差を変化させている。導電性パターン22の寸法は、a1x=a1y=1.0mm、a2x=a2y=20.0mm、b1x=b1y=25mm、c2x=c2y=7.0mm、c1=0.5mm以上2.5mm以下、放射形パターン30における略三角形22の曲率半径R1=6.5mm、略方形パターン31における角部の曲率半径R2=10.5mmとした。放射形パターン30と略方形パターン31との間隔c1は、これらパターン30、31間の隙間が延びる方向の両端部に比べて、中間部が大きくなるように、連続的に変化している。
第1貯蔵体層14の配合は、塩素化ポリエチレン(昭和電工株式会社、エラスレン301NA)100(phr)、カルボニル鉄(BASF製EW−1)800(phr)をベースに可塑剤、分散剤、炭酸カルシウム等を添加した。第2貯蔵体層13の配合は、第1貯蔵体層14に用いたものと同じ塩素化ポリエチレン100(phr)に黒鉛16(phr)をベースに可塑剤、分散剤等を添加している。構成は、パターン層15(アルミ蒸着PETフィルム)、第1貯蔵体層14(2.1mm)、第2貯蔵体層13(2.5mm)、反射域形成層(アルミ蒸着PETフィルム)の積層とした。950MHz帯における材料定数は、第1貯蔵体層14が、ε’=19.0、ε”=0.90(tanδε=0.047)、μ’=5.33、μ”=1.43(tanδμ=0.268)であり、第2貯蔵体層13が、ε’=7.9、ε”=0.13(tanδε=0.017)、μ’=1、μ”=0であり、共に損失を抑えた配合とした。シート体10として、UHF帯用として約4.6mm厚であった。
図47は、実施例7のシート体10の反射損失をシミュレーションで計算した結果を示すグラフである。図47において、横軸は、周波数を示し、縦軸は反射損失を示す。本発明の反射損失量の計算は、前述したようにコンピュータシミュレーションで行っている。本実施例のパターン構造は、前述したように隣接する導電性パターン22の角部の曲率半径を変え、導電性パターン22間の間隔を連続的に変化する態様としたことで、共振の調整(周波数およびQ)を行った。
この実施例7のシート体10を、放射形パターン30上にタグ本体54が配置されようにタグ本体54よりも一回り大きいサイズに切り抜き、シート体10の上にALIEN社製のUHF帯用ミドルレンジタグ(ALIEN2004、89mm×19mm)を積層し、それをALIEN社製リーダ(ALR−7610−75L、直線偏波使用)を用いて読み取り試験を行った。なお前記ミドルレンジタグを自由空間で評価した場合の通信距離は2800mmである。読み取り試験の結果(通信距離測定結果)を表3に示す。表3には、比較例3および4としてシート体10の代わりに発泡体である発砲スチロールを用いて同様の読取試験を行った結果も示している。表3には、シート体10の厚さ(シート厚)と、通信距離と、対自由空間通信距離比を示している。本読み取り試験では、通信妨害部材としてアルミニウム板を用いて、アルミニウム板にシート体10、または発砲体を取り付けている。したがってシート厚は、アルミニウム板からタグ本体54までの距離(Gap間隔)に等しい。
約5mm厚の比較例7のシート体10を使用した場合、2130mmの通信距離を示し、自由空間の場合の約76%の通信距離を得た。比較として発泡体を用いて読み取り試験を行った場合の通信距離は自由空間の場合の21%であり、本発明のシート体10の大幅な通信距離改善効果が明らかになった。
(実施例8)
図48は、実施例8のシート体10を示す断面図であり、図49は実施例8のシート体10に取り付けられるタグ本体54を示す平面図であり、図50は、実施例8のシート体10を構成するパターン層15を示す平面図である。なお図48には、タグ本体54を取り付けて示している。実施例8のシート体10は、反射域形成層12に、第2貯蔵体層13と、第1貯蔵体層14と、フィルム層/接着層207と、パターン層15とがこの順番で積層されて構成される。パターン層15は、導電性パターン22とスペーサ(基材)21とから成る。反射域形成層12およびパターン層15は、アルミ蒸着PETフィルムから成る。パターン層15は、導電性パターン22をフィルム層/接着層207に対向させて設けられる。なお、フィルム層/接着層およびスペーサ(基材)等も本発明でいう貯蔵体層である。
本実施例では、導電性パターン22は図25に示すパターン形状であって、辺長W1=45mmの正方形の矩形パターン形状31aを間隔W2=1mmで4個並べたサイズに切り取り、図48〜図50に示す構成で、シート体10に取り付けたタグ本体54の金属対応通信改善効果を計算した。試作したタグ本体54およびシート体10を含んだ厚さは、約3mmであり、薄型化を達成した。試作したタグ本体54は、図49に示すように略長手形状(長さ147mm、幅10mm)で、IC52であるタグチップのインピーダンスは950MHz帯において30−j250(Ω)としたUHF帯用である。タグ本体54は、4つの矩形パターン形状31aが並ぶ方向に、長手方向を揃えて、4つの矩形パターン形状31aから成る導電性パターン22の中央部に重ねて配置される。
表4は、実施例8のシート体10の構成材料の材料定数を示している。表4には、スペーサ(基材)21、フィルム層/接着層207、第1貯蔵体層14および第2貯蔵体層13の層厚、複素比誘電率の実数部ε’、誘電損失tanδ(ε)、複素比透磁率の実数部μ’、磁性損失tanδ(μ)および導電率σを示している。
表5に、実施例8のシート体10を用いたときのタグ本体54のアンテナ特性の評価結果を示す。表5には、950MHz帯の電磁波における、測定反射係数S11、インピーダンスの実数部Z11の実部、インピーダンスの虚数部Z11の虚部および絶対利得と、自由空間でタグ本体54を用いたときとの相対的な比較とを示している。自由空間でタグ本体54を用いたときとの相対的な比較には、アンテナ素子51への給電、アンテナ素子51からの放射、total、推定通信距離が示される。ここで表中の「給電」は、チップからアンテナ素子への整合度合いを表し、数値が大きいほど整合(マッチング)がとれていることを示す。自由空間を1とした場合の比較を示す。「放射」は、整合をとってチップからアンテナ素子に同じ大きさの電力を供給した際の放射電力を表す。これも自由空間を1とした場合の比較を示す。「total」は、整合をとらずにチップからアンテナ素子に同じ大きさの電力を供給した際の放射電力を表す。同じく自由空間を1とした場合の比較を示す。この「total」の比較がアンテナ特性の比較を表している。表5には、比較例として、通信妨害部材57から3.15mmの間隔をあけてタグ本体54を配置したときのアンテナ特性も示している。
推定通信距離についての基本推定式を式(3)に示す。
タグの送信電力は一定とし、偏波損は考慮せず、タグの空中線利得(真値)の平方根(√)に比例するとして、推定した。また空中線利得は、動作利得(整合損および材料損失を含む利得)と同様であるとした。
結果、表5に示す通り、本実施例のシート体10を用いた場合の推定通信距離は、自由空間に比べ51%となるが、通信妨害部材57から相当厚み(3.15mm)分の空間を設けた比較例では、自由空間に比べ約23%となり、比較例に比べても倍以上の通信距離を示したことから、本実施例のシート体10をUHF帯用薄型金属対応アンテナ体として使用できる可能性を見出した。
また、試作したタグ本体54の放射効率を表6に示す。ここで、放射効率η=10(利得−指向性利得)/10と表すことができる。指向性利得は、金属などの損失を含まない利得である。利得(通常Gainとだけ書かれている場合はこちらを指す。)は、損失を含んだ「いわば真の利得」といえる。また、アンテナの放射抵抗をRrad、損失抵抗をRlossとすると、放射効率η=Rrad/(Rrad+Rloss)である。Rradは無損失アンテナの入力インピーダンスのレジスタンスに相当する。実施例8で用いたタグ本体54では、指向性利得が7.44dBi、利得(絶対利得)が−3.53dBiであり、放射効率が約8%となった。