JP2007141603A - 透明導電膜の形成方法及び有機電界発光素子及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】透明基板に支持された透明電極、有機発光膜を含む有機薄膜と、電子注入性保護膜、透明電極とその順で成膜を行う透明有機電界発光素子の透明電極の透明導電膜の形成方法において、配線抵抗の低抵抗化、高い可視光透過性を実現する透明電極成膜技術の確立が重要な課題となる。
【解決手段】酸化インジウム(In2O3)と酸化錫(SnO2)、又は酸化インジウム(In2O3)と酸化亜鉛(ZnO)の成分の異なる2つの焼結体からなるターゲットを同一チャンバー内に配置した透明電極の透明導電膜の成膜方法であって、成分の異なる2つ以上のターゲットを用いて、共スパッタリングを行うことにより、配線抵抗の低抵抗化、高い可視光透過性を実現する有機電界発光素子の透明導電膜の形成方法。
【選択図】図1
【解決手段】酸化インジウム(In2O3)と酸化錫(SnO2)、又は酸化インジウム(In2O3)と酸化亜鉛(ZnO)の成分の異なる2つの焼結体からなるターゲットを同一チャンバー内に配置した透明電極の透明導電膜の成膜方法であって、成分の異なる2つ以上のターゲットを用いて、共スパッタリングを行うことにより、配線抵抗の低抵抗化、高い可視光透過性を実現する有機電界発光素子の透明導電膜の形成方法。
【選択図】図1
Description
本発明は、有機電界発光素子及びその製造方法に関し、特に透明導電膜の形成方法に関する。
トップエミッション型有機電界発光素子では、一般的な有機電界発光素子がガラス基板上に透明電極、有機薄膜、金属電極の順で成膜を行うのに対し、ガラス基板上に金属電極、有機薄膜、透明電極の順で成膜を行う。この方式により、カラーフィルターを封止基板側に作製し、発光素子基板と貼り合せることが可能となる。また、有機電界発光素子をアクティブマトリクス駆動ディスプレイとして応用する場合、基板と反対側の素子上部から光を取り出すトップエミッション方式により、基板上に配置した駆動回路に光が遮られず、開口率の増加が見込める。
透明導電膜の応用分野は光通信、半導体レーザー、各種ディスプレイ、記録メディア、民生用機器(デジタルカメラ、プロジェクター、携帯電話、レンズ、ミラー、ランプ等)など多様化しており、今後の透明導電膜の製造技術においては歩留まり向上などの量産時の安定性、また、多層膜形成時の膜性能について重要な要求項目となってきている。
透明導電膜の形成法には、従来から行われている蒸着法、並びに近年光通信関連で利用されているプラズマやイオンビームによるアシスト蒸着法やイオンプレーティング法、イオンビームスパッタ法などが主に使用されている。一方、半導体やフラットパネルディスプレイ、電子部品などの薄膜製造工程における量産装置に使用されている方式としてスパッタ法がある。スパッタ法は成膜速度や膜組成などが安定しており、また大面積基板への均一な成膜が可能であるため、量産化に適した方式として広く利用されている。ITO膜を形成するスパッタ法では、ITOの焼結体をターゲットとして、支持基板上に成膜する方法である。
ITOはIndium tin oxideと呼ばれているが、その母結晶はIn2O3である。Snを酸化物換算で5〜10wt%添加した組成のITO(In2O3:Sn比率)は絶縁体のように透明でありながら、導電性が高く(103S/cm)、吸収も少ない。透明性と導電性は互いに関係があるが、1対1の対応があるわけではない。透明性はIn2O3結晶の構造的な完全性が高く、バンドギャップ内の電子捕獲準位が非常に少ないということであるが、それは結晶内の原子が結晶系の座標点(格子点位置)に正しく、過不足なく位置しているか否かで決まることである。In2O3試薬は黄白色であり、酸素をわずかに含む(分圧で10-1Pa以下)雰囲気中で蒸着またはスパッタ成膜すれば透明導電膜を得る。しかし、化合物としては酸素を手放しやすく、真空中加熱や数%の水素を含むような還元雰囲気中での加熱によって容易に還元され、還元が進めば青黒から黒、更に茶褐色にまで変色していく。導電性は母結晶のIn原子やSn原子で置換してやるか、酸素原子を必要十分に与えない条件の下で成膜することで発現する。
ITOの透明性の物理的意味は半導体としてのバンドギャップが可視域の短波長限界400nm付近にあることに帰せられる。しかし、これだけでは不十分で、高い透明性を確保するにはバンドギャップ内に常温で電子が常駐するような準位が少ないか無視できるということである。このようなバンドギャップ内準位は酸素空孔や、In位置に置換したSn原子以外のIn、Sn原子または原子集団(クラスター)による格子欠陥に由来するものであり、母結晶自体が良質の結晶格子を形成しやすいものでなくてはならない。酸化性が極度に弱い雰囲気で成膜しない限り、In2O3はこの要件を満たす。実際、In2O3は
ガラス基板温度を300℃程度にしておけば、酸素がやや不足した雰囲気条件であっても、厚さ数十nmの段階から半値幅の狭い良く整ったX線回折パターンを示す。この結晶化しやすい特徴はSnを添加していっても、数十%程度までは失われない。SnO2膜やZnO膜とは大きく異なる特徴である。
ガラス基板温度を300℃程度にしておけば、酸素がやや不足した雰囲気条件であっても、厚さ数十nmの段階から半値幅の狭い良く整ったX線回折パターンを示す。この結晶化しやすい特徴はSnを添加していっても、数十%程度までは失われない。SnO2膜やZnO膜とは大きく異なる特徴である。
上述のように、成膜したITO膜の光透過率及び抵抗値を決める因子としては、In2O3(酸化インジウム)とSnO2(酸化錫)の組成比(In2O3:SnO2の比率)と、成膜条件である放電パワー、プロセスガスの流量等がある。In:Snの比率は、用いるターゲットの組成比であり、その比率を変更する場合は、ターゲットの組成比を変更する必要があり、コスト高の問題があり、その手間の負荷が増加する問題もある。また、透明電極用の透明導電膜の形成用のターゲットは、例えばインジウムと錫の酸化物であるITO、インジウムと亜鉛の酸化物であるIZO、アルミと亜鉛の酸化物であるAZO等の焼結体のターゲットあり、各々所定の組成比のターゲットに変更する方法であり、その際、無駄なコストが発生する問題がある。
以下に公知文献を記す。
特開2001−85163号公報
トップエミッション型有機電界発光素子作製において、配線抵抗の低抵抗化、高い可視光透過性を実現する透明電極成膜技術の確立が重要な課題となる。
本発明の請求項1に係る発明は、支持基板上に支持された電極、有機発光膜を含む有機薄膜と、電子注入性保護膜、透明電極とその順で成膜を行うトップエミッション型有機電界発光素子の透明電極の透明導電膜の形成方法において、
成分の異なる2つ以上のターゲットを用いた共スパッタリング法により透明導電膜を形成することを特徴とする有機電界発光素子の透明導電膜の形成方法である。
成分の異なる2つ以上のターゲットを用いた共スパッタリング法により透明導電膜を形成することを特徴とする有機電界発光素子の透明導電膜の形成方法である。
本発明の請求項2に係る発明は、透明基板に支持された透明電極、有機発光膜を含む有機薄膜と、電子注入性保護膜、透明電極とその順で成膜を行う透明有機電界発光素子の透明電極の透明導電膜の形成方法において、
成分の異なる2つ以上のターゲットを用いた共スパッタリング法により透明導電膜を形成することを特徴とする有機電界発光素子の透明導電膜の形成方法である。
成分の異なる2つ以上のターゲットを用いた共スパッタリング法により透明導電膜を形成することを特徴とする有機電界発光素子の透明導電膜の形成方法である。
本発明の請求項3に係る発明は、前記ターゲットは、酸化インジウム(In2O3)と、酸化錫(SnO2)、又は酸化亜鉛(ZnO)の焼結体からなるターゲットであって、該ターゲットを用いて共スパッタリングを行うことを特徴とする請求項1、又は2記載の有機電界発光素子の透明導電膜の形成方法である。
本発明の請求項4に係る発明は、前記透明導電膜は、ターゲットのIn2O3と、SnO2、又はZnOの組成比及びプロセスガスである酸素流量を制御することで、その抵抗値が20〜50Ω/□であり、該透明導電膜の可視光領域の光透過率が95%以上に形成することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の有機電界発光素子の透明導電膜の形成方法である。
本発明の透明電極成膜において、異なる組成の2つのターゲットを用いて、共スパッタを行うことにより、有機発光膜を含む有機薄膜に大きなダメージを与えず成膜され、配線
抵抗の低抵抗化、高い可視光透過性を実現する成膜方法であり、有機薄膜上に酸化インジウム(In2O3)と、酸化錫(SnO2)、又は酸化インジウム(In2O3)と、酸化亜鉛(ZnO)の焼結体からなるターゲットをそれぞれ用いて、各々ターゲットの成膜速度比にて、放電パワー、ガス流量、ガス圧力等各種パラメータを制御し、共スパッタリングを行うことで、酸化インジウムと酸化錫もしくは酸化亜鉛の組成比が最適な比率に変更することが容易に可能となり、プロセスガスである酸素流量を最適化させることで、膜の抵抗及び透過率を所望の値に制御することができる。
抵抗の低抵抗化、高い可視光透過性を実現する成膜方法であり、有機薄膜上に酸化インジウム(In2O3)と、酸化錫(SnO2)、又は酸化インジウム(In2O3)と、酸化亜鉛(ZnO)の焼結体からなるターゲットをそれぞれ用いて、各々ターゲットの成膜速度比にて、放電パワー、ガス流量、ガス圧力等各種パラメータを制御し、共スパッタリングを行うことで、酸化インジウムと酸化錫もしくは酸化亜鉛の組成比が最適な比率に変更することが容易に可能となり、プロセスガスである酸素流量を最適化させることで、膜の抵抗及び透過率を所望の値に制御することができる。
本発明の異なる組成の2つのターゲットを用いて、共スパッタを行うことにより、異なる組成の2つのターゲット、例えば酸化インジウム(In2O3)と、酸化錫(SnO2)、又は酸化インジウム(In2O3)と、酸化亜鉛(ZnO)を用いた成膜され、該成膜が酸化インジウムからなる酸化物焼結体(ITOもしくはIZO)と同一組成の膜を形成することができる。
本発明の請求項5に係る発明は、支持基板上に形成した電極と、有機発光膜を含む有機薄膜と、電子注入性保護層、透明電極とその順で成膜を行うトップエミッション型の有機電界発光素子の製造方法において、
前記請求項1乃至4のいずれか1項記載の有機電界発光素子の透明導電膜の形成方法を用いて透明電極を形成することを特徴とする有機電界発光素子の製造方法である。
前記請求項1乃至4のいずれか1項記載の有機電界発光素子の透明導電膜の形成方法を用いて透明電極を形成することを特徴とする有機電界発光素子の製造方法である。
本発明の請求項6に係る発明は、前記支持基板は、樹脂基板であることを特徴とする請求項5記載の有機電界発光素子の製造方法である。
本発明の請求項7に係る発明は、前記樹脂基板は、PET(ポリエチレンテレフタレート)若しくはPC(ポリカーボネイト)であることを特徴とする請求項5、又は6記載の有機電界発光素子の製造方法である。
本発明の請求項8に係る発明は、前記発光膜は、凸版オフセット印刷法により、有機発光材料を有機溶剤に溶解、又は分散させた有機発光媒体をインキとして用い、電極の上方にパターン形状に配置して形成することを特徴とする請求項5乃至7のいずれか1項記載の有機電界発光素子の製造方法である。
本発明の請求項9に係る発明は、前記パターン形状は、オフセット印刷法により、R(赤)色、G(緑)色、B(青)色の有機発光媒体の各色インキを用い、電極の上方にRパターン形状、Gパターン形状、Bパターン形状に有機発光媒体の各色インキを塗り分けて形成することを特徴とする請求項5乃至8のいずれか1項記載の有機電界発光素子の製造方法である。
本発明の請求項10に係る発明は、支持基板上に形成した電極と、有機発光膜を含む有機薄膜と、電子注入性保護層、透明電極とその順に積層した有機電界発光素子において、前記請求項5乃至9のいずれか1項記載の有機電界発光素子の製造方法を用いて有機電界発光素子を形成したことを特徴とする有機電界発光素子である。
本発明の請求項11に係る発明は、前記PET(ポリエチレンテレフタレート)若しくはPC(ポリカーボネイト)の樹脂基板と前記電極との間に、CVDで形成したSi3N4の窒化物やSiONのような三元化合物によるパッシベーション膜を形成したことを特徴とする請求項10記載の有機電界発光素子である。
本発明の組成の異なる2つ以上のターゲットを用いた共スパッタリング法により透明電
極を形成する有機電界発光素子の透明導電膜の形成方法によれば、ITOとIZO、すなわち酸化インジウム(In2O3)と酸化錫(SnO2)のターゲットと、酸化インジウム(In2O3)と酸化亜鉛(ZnO)のターゲットとの成膜速度を最適化して、ターゲットの組成比を変更せずに、最適な組成比を持つ透明導電膜を形成することができる。したがって、複数の異なる組成の透明導電膜を形成する際に、ターゲットの無駄が発生せずに低コストで透明導電膜を得ることができる。
極を形成する有機電界発光素子の透明導電膜の形成方法によれば、ITOとIZO、すなわち酸化インジウム(In2O3)と酸化錫(SnO2)のターゲットと、酸化インジウム(In2O3)と酸化亜鉛(ZnO)のターゲットとの成膜速度を最適化して、ターゲットの組成比を変更せずに、最適な組成比を持つ透明導電膜を形成することができる。したがって、複数の異なる組成の透明導電膜を形成する際に、ターゲットの無駄が発生せずに低コストで透明導電膜を得ることができる。
トップエミッション型有機電界発光素子はアクティブマトリクス駆動ディスプレイとして応用する場合、基板と反対側の素子上部から光を取り出す方式のため、基板上の駆動回路に光が遮られず、開口率の増加が見込める。透明有機電界発光素子は新しいコンセプトを有した有機デバイスであり、発光を素子両側から取り出すことができる点から、有機電界発光素子本来の情報表示機能の他に、通信技術との融合により、自動車などのフロントガラスに貼り付けることで前方から目をそらさずに運転者に必要な運転情報が提供できるなど、安全性向上への展開などが期待できる。フレキシブル有機電界発光素子は基板フィルム化により、素子に可とう性を持たせているのが特長で、ウェアラブルディスプレイや電子ポスター、貼付可能な薄型情報端末などのアプリケーションが期待できる。
本発明の透明導電膜の形成方法及び有機電界発光素子及びその製造方法を以下説明する。
図1は、本発明の透明導電膜形成のためのスパッタリング装置の内部構造の一例を示す模式図である。
図1を用いて、本発明の透明導電膜の形成するスパッタリング装置を説明する。図1のスパッタリング装置では、装置上側に基板搬送ロボット6が配置され、該基板搬送ロボット6上に載置したガラス基板7を所定速度で装置搬入側から搬出側へ搬送する。ガラス基板7は、被成膜基板であり、成膜側を下側にして載置されている。装置下側には、各々バッキングプレート1上に酸化インジウム(In2O3)のターゲット2と、酸化錫(SnO2)のターゲット3が配置され、ターゲットの背面に磁石を配置(図示せず)し、チャンバー内へのプロセスガス等の出入口(図示せず)が装備されている。ターゲット2、3とガラス基板7との間には、キャリアトラップ機構5が配置され、キャリアトラップ機構5と酸化インジウム(In2O3)のターゲット2の間及びキャリアトラップ機構5と酸化錫(SnO2)のターゲット3の間には、各々シャッター4が配置されている。
本発明の成分の異なる2つ以上のターゲットを用いた共スパッタリング法(以下共スパッタリング法と記す)のスパッタ蒸着の成膜方法を説明する。前記共スパッタリング法成膜法は、被蒸着基板のガラス基板7に一方のターゲットの装置部位で一方粒子薄膜、例えばSnO2粒子の膜を、次いで他方のターゲットの装置部位で残り厚のIn2O3粒子の膜を成膜して、所定厚のITO膜を形成する成膜方法である。前記異なる2つ以上のターゲットを用いた共スパッタリング法の装置部位は、同一の真空チャンバーに装着され、各々粒子を混合したターゲット粒子を成膜する方法である。
図1は、本発明の本発明のトップエミッション型及び透明の有機電界発光素子の作製における透明電極成膜を、低ダメージ、高透明、低抵抗にて行うことが可能なスパッタ装置に係る実施例を説明するための装置側断面図である。
本発明の透明導電膜の形成方法を説明する。図1では、図奥側より前側へ基板搬送ロボット6により、ガラス基板7を搬送する。ガラス基板7の下側に異なる2つ以上のターゲットを用いた共スパッタの装置部位があり、該部位で成膜する。ターゲット2、3の背面
に磁石を設置し、ターゲット2、3とキャリアトラップ機構5の間の空間にArプラズマ9を発生させ、各々スパッタ粒子8をArプラズマ空間とガラス基板7の電位差によりガラス基板7へ移動する。異なる2つ以上のターゲットを用いた共スパッタは同一の真空チャンバー内に配置され、プロセスガス(Ar、O2等)の入出口等が(図示せず)装備されている。ターゲット材料は異種のもので、例えばIn2O3ターゲット2とSnO2ターゲットが並列に配置され、Arプラズマ空間内でスパッタした各ターゲット粒子8を混合させ、ITOの薄膜を形成する。
に磁石を設置し、ターゲット2、3とキャリアトラップ機構5の間の空間にArプラズマ9を発生させ、各々スパッタ粒子8をArプラズマ空間とガラス基板7の電位差によりガラス基板7へ移動する。異なる2つ以上のターゲットを用いた共スパッタは同一の真空チャンバー内に配置され、プロセスガス(Ar、O2等)の入出口等が(図示せず)装備されている。ターゲット材料は異種のもので、例えばIn2O3ターゲット2とSnO2ターゲットが並列に配置され、Arプラズマ空間内でスパッタした各ターゲット粒子8を混合させ、ITOの薄膜を形成する。
成膜時では、各ターゲット2、3と、シャッター4との空間には、Arプラズマ9が形成され、該空間には各ターゲット粒子8が成生された状態を形成する。キャリアトラップ機構5において、各ターゲット粒子8は、所定の組成比で混合され、シャッター4及びキャリアトラップ機構5を回避し、所定の組成比からなるターゲット粒子8がガラス基板7へ拡散し、成膜する。
本発明は透明電極成膜において異なる組成の2つのターゲットを用いて、例えば酸化インジウム(In2O3)のターゲットと、酸化錫(SnO2)のターゲットの共スパッタを行うことにより、配線抵抗の低抵抗化、高い可視光透過性を実現する成膜方法である。酸化インジウム(In2O3)と酸化錫(SnO2)の組成比を例えば9:1とする場合には、酸化インジウム(In2O3)の成膜速度と、酸化錫(SnO2)の成膜速度を9:1となるように調整、すなわち放電パワー、ガス流量、ガス圧力等各種パラメータを制御し、共スパッタリングを行うことで、酸化インジウムからなる酸化物焼結体(ITO)と同一組成の膜を形成するというものである。
又は、異なる組成の2つのターゲットを用いて、例えば酸化インジウム(In2O3)と酸化亜鉛(ZnO)の組成比を例えば9:1とする場合には、酸化インジウム(In2O3)の成膜速度と酸化亜鉛(ZnO)の成膜速度を9:1となるように調整、すなわち放電パワー、ガス流量、ガス圧力等各種パラメータを制御し、共スパッタリングを行うことで、酸化インジウムからなる酸化物焼結体(ZnO)と同一組成の膜を形成することができる。
図1のスパッタリング装置では、酸化インジウムと酸化錫、又は酸化インジウムと酸化亜鉛の組成比を最適化するために、各々2つのターゲットの成膜速度及びプロセスガスである酸素流量を最適化させることで、膜の抵抗及び透過率を所望の値に制御することができる。
本発明の組成の異なる2つ以上のターゲットを用いた共スパッタリング法により透明電極を形成する有機電界発光素子の透明導電膜の形成方法によれば、ITOとIZO、すなわち酸化インジウム(In2O3)及び酸化錫(SnO2)のターゲットと、酸化インジウム(In2O3)及び酸化亜鉛(ZnO)のターゲットとの成膜速度を最適化して、ターゲットの組成比を変更せずに、最適な組成比を持つ透明導電膜を形成することができる。
本発明の有機電界発光素子の構造を説明する。図2は、本発明の有機電界発光素子の膜構成の一実施の側断面図であり、(a)は、トップエミッション有機電界発光素子で、(b)は、透明有機電界発光素子である。
図2(a)は、トップエミッション有機電界発光素子40である。トップエミッション有機電界発光素子40は、支持基板11上に陽極の金属電極12aが配置され、その上に有機発光膜を含む有機薄膜50と、電子注入性保護層13と、透明電極14をこの順に成膜した有機電界発光素子基板である。次いで、有機電界発光素子基板をガラス等の封止基板31で封止した層構成のトップエミッション有機電界発光素子40である。トップエミ
ッション有機電界発光素子は、封止基板側から光を取り出すことができる利点がある。
ッション有機電界発光素子は、封止基板側から光を取り出すことができる利点がある。
図2(b)は、透明有機電界発光素子30である。透明有機電界発光素子30は、支持基板11上に陰極の透明電極14bが配置され、その上に有機発光膜を含む有機薄膜50と、電子注入性保護層13と、透明電極14をこの順に成膜した有機電界発光素子基板である。次いで、有機電界発光素子基板をガラス等の封止基板31で封止した透明有機電界発光素子30である。透明有機電界発光素子は、支持基板がガラス基板とすることにより封止基板側及び支持基板側の両面から光を取り出すことができる利点がある。
前記有機発光膜を含む有機薄膜は、正孔注入膜/正孔輸送膜/有機発光膜/電子輸送膜/電子注入膜の順の層構成され、正孔注入膜側は陽極であり、電子注入膜側は陰極となる構成であり、正孔注入膜、正孔輸送膜、電子輸送膜、電子注入膜は、必要に応じて適宜に選択し形成する。また、透明有機電界発光素子は、ガラス基板側の透明電極が陽極に、透明電極が陰極となる場合と、又はガラス基板側の透明電極が陰極に、透明電極が陽極となる場合があり、これに対応して、正孔注入膜/正孔輸送膜/有機発光膜/電子輸送膜/電子注入膜の位置順番が反転する。
本発明の有機電界発光素子の製造方法について説明する。なお、説明にあたり各膜厚や層構成の具体例を示したが、本発明をなんら制限するものではない。
トップエミッション型有機電界発光素子の製造方法では、一方は、支持基板11上に陽極を形成する場合、正孔輸送膜への正孔注入効率を高めるため、仕事関数の高いAuやCrなどの金属材料を蒸着(100〜150nm)し、その上に有機薄膜の正孔輸送膜21、有機発光膜22、保護膜24の順に蒸着、またはスピンコート成膜(計100〜200nm)する。更に、これら有機発光膜を含む有機薄膜50上にIn2O3とSnO2の酸化物焼結体を共スパッタリング成膜(100〜200nm)し、透明電極14を形成する(図2(a)参照)。
他方は、支持基板11上に陰極の透明電極14bを形成する場合、有機発光膜への電子注入効率を高めるため、仕事関数の小さいMg−Ag(共蒸着)やAlなどの金属材料を蒸着(100〜150nm)し、該電子注入膜23上に有機発光膜22、正孔輸送膜21、保護膜24の順に有機薄膜を蒸着、またはスピンコート成膜(計100〜200nm)する。更に、これら有機発光膜を含む有機薄膜50上にIn2O3とSnO2の酸化物焼結体を共スパッタリング成膜(100〜200nm)し、透明電極14を形成する(図2(b)参照)。
透明有機電界発光素子30は、ガラス基板である支持基板11上にITOの透明電極14aを形成し、該基板上に正孔輸送膜21、有機発光膜22、保護膜24の順に蒸着またはスピンコート成膜(計100〜200nm)し、更にこれら有機発光膜を含む有機薄膜50上にIn2O3とZnOの酸化物焼結体を共スパッタリング成膜(ZnOターゲット粒子膜−10〜30nm、In2O3ターゲット粒子膜−120〜140nm合計150nm)し、透明電極14を形成する(図2(a)参照)。
前記各々に用いる有機薄膜材料としては、正孔輸送膜ではN,N'−ジフェニル−N,N'−ジ(3−メチルフェニル)−4,4'−ジアミノビフェニル(TPD)、4,4'−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(α−NPD)、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリスチレンスルフォン酸(PEDOT/PSS)などが挙げられる。
前記有機発光膜では、トリス(8−キノリノール)アルミニウム(Alq3)に代表さ
れるキノリノール錯体やπ共役系高分子であるポリパラフェニレンビニレン(PPV)、ポリフルオレン(PF)などが挙げられる。
れるキノリノール錯体やπ共役系高分子であるポリパラフェニレンビニレン(PPV)、ポリフルオレン(PF)などが挙げられる。
前記保護膜では、中心金属がアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属からなるアセチルアセトナト錯体、バソクプロイン(BCP)、バソフェナントロリン(Bphen)及びこれら誘導体などが挙げられる。
次いで、有機電界発光素子の支持基材上へパターン形状の発光媒体層(インキ)の形成方法について説明する。発光媒体層を設ける方法としては、凸版オフセット印刷法があり、メカニズムはダイノズル等の供給ユニットからインキを供給しシリコン樹脂製ブランケット(胴)の全面にインキを塗布、パターン形成されたネガ型凸版の凸部へブランケット(胴)からインキを転写する。即ち、ネガ型凸版に余分なインキを転写し、必要な部分のインキをそのままブランケット(胴)に残す方法である。最後にパターン形成されたインキをブランケット(胴)からガラス基板へ転写し、乾燥(焼成)する。
他の発光媒体層(インキ)のパターン形成は、オフセット印刷法により、R(赤)色、G(緑)色、B(青)の有機発光媒体の各色インキを用い、基板に支持された金属電極の上方にRパターン形状、Gパターン形状、Bパターンパターン形状に各色インキを塗り分けて形成した後、乾燥(焼成)する。
本発明の有機電界発光素子は、酸化インジウム、酸化錫又は酸化亜鉛からなる酸化物焼結体をターゲットとして用い、成分の異なる2つ以上のターゲットを用いた共スパッタリング法の成膜法で透明電極形成したトップエミッション型有機電界発光素子である。透明電極材料はITO(Indium−Tin−Oxide)、IZO(Indium−Zinc−Oxide)などの主として酸化インジウムと、酸化錫又は酸化亜鉛からなる酸化物で、金属電極材料はAl、Au、Cr、Mg、Agなどである。
本発明の有機電界発光素子は、酸化インジウムからなる酸化物焼結体をターゲットとして用い、成分の異なる2つ以上のターゲットを用いた共スパッタリング法の成膜法で陽極、又は陰極両透明電極を形成した透明有機電界発光素子である。透明電極材料はIn2O3、SnO2、ZnO、Al2O3などの酸化物である。
本発明の透明電極の成膜方法は、主として酸化インジウムからなる酸化物焼結体をターゲットとして用い、成分の異なる2つ以上のターゲットを用いた共スパッタリング法の成膜法で、プロセスガスであるArとO2の流量比を20/1〜300/1にし、ガス導入時の圧力を0.05〜3.0Paに設定したプロセス条件による成膜方法である。
本発明の透明電極の成膜方法は、インジウムと錫の入った各蒸発源を用い、合金膜/酸素プラズマ成膜法で透明電極膜を形成する。得られた透明電極膜の抵抗値は20〜50Ω/□であることが好ましい。抵抗値が50Ω/□を超える場合、配線抵抗上昇が素子の駆動特性及び寿命に影響を及ぼすことがある。また、抵抗値を20Ω/□未満とする場合には、透明電極の膜厚を厚くする必要があり、光透過率の低下、生産性の低下につながってしまう。また、可視光における光透過率は、光の取り出し効率を低下させないために95%以上であることが好ましい。また、イオン化ポテンシャルは、電子注入障壁最適化のために4.70〜5.20eVであることが好ましい。
本発明のフレキシブル有機電界発光素子は、基板にPET(ポリエチレンテレフタレート)やPC(ポリカーボネート)などの可とう性、透明性を有す樹脂基板を用い、有機電界発光素子の基板側の電極上にSi3N4の窒化物やSiONのような三元化合物によるパッシベーション膜を形成して、上部透明電極を成分の異なる2つ以上のターゲットを用い
た共スパッタリング法の成膜法で形成したフレキシブルな有機電界発光素子である。支持基板に求められる特性は、
(a)光学的に異方性がない、
(b)可視光領域(400〜700nm)において透明性が高い、
(c)表面の平坦性が良い、
(d)耐熱性が良い、
(e)可とう性が高い、
(f)UVカット処理がなされていない、
などでこれを満たす材料であればどれでも良い。
た共スパッタリング法の成膜法で形成したフレキシブルな有機電界発光素子である。支持基板に求められる特性は、
(a)光学的に異方性がない、
(b)可視光領域(400〜700nm)において透明性が高い、
(c)表面の平坦性が良い、
(d)耐熱性が良い、
(e)可とう性が高い、
(f)UVカット処理がなされていない、
などでこれを満たす材料であればどれでも良い。
本発明の有機電界発光素子の製造方法は、有機発光媒体のインキを支持基材上にパターン形成する方法において、平版印刷版による凸版オフセット印刷法で有機発光媒体を基板上にパターン形成する製造方法である。
本発明の有機電界発光素子の製造方法は、有機発光媒体のインキを支持基板上に各色に塗り分けるパターン形成する方法において、R、G、B各色インキを塗り分けにオフセット印刷法を用いて、各色の有機発光媒体のインキを塗り分けて、各色の有機発光膜のパターンを形成する製造方法である。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが本発明をなんら制限するものではない。
本発明の酸化インジウムと酸化錫、又は酸化インジウムと酸化亜鉛をターゲットとして用いた共スパッタリング方法により透明導電膜を成膜した。なお、このときの放電パワーはIn2O3で500〜800Wであり、SnO2で200〜500Wであった。また、ガス流量比(Ar/O2)はIn2O3で50/1〜100/1であり、SnO2で200/1〜400/1であった。得られた透明導電膜の組成はキャリア密度及び光学特性(BMシフト)から算出した結果、In2O3:SnO=9:1であった。
また、得られた透明導電膜の抵抗値は37Ω/□、光透過率は95%であり、市販のITO基板におけるITO膜の抵抗(20〜50Ω/□)、光透過率(可視光領域95%以上)とほぼ同等の値を示した。
1…バッキングプレート
2…In2O3ターゲット
3…SnO2ターゲット
4…シャッター
5…キャリアトラップ機構
6…基板搬送ロボット
7…ガラス基板
8…ターゲット粒子
9…Arプラズマ
11…支持基板
12…金属電極
12a…陽極の金属電極
13…電子注入性保護層
14…透明電極
14a…陽極の透明電極
14b…陰極の透明電極
21…正孔輸送膜
22…有機発光膜
23…電子注入膜
24…保護膜
30…透明有機電界発光素子
31…封止基板
50…有機発光膜を含む有機薄膜
40…トップエミッション有機電界発光素子
2…In2O3ターゲット
3…SnO2ターゲット
4…シャッター
5…キャリアトラップ機構
6…基板搬送ロボット
7…ガラス基板
8…ターゲット粒子
9…Arプラズマ
11…支持基板
12…金属電極
12a…陽極の金属電極
13…電子注入性保護層
14…透明電極
14a…陽極の透明電極
14b…陰極の透明電極
21…正孔輸送膜
22…有機発光膜
23…電子注入膜
24…保護膜
30…透明有機電界発光素子
31…封止基板
50…有機発光膜を含む有機薄膜
40…トップエミッション有機電界発光素子
Claims (11)
- 支持基板上に支持された電極、有機発光膜を含む有機薄膜と、電子注入性保護膜、透明電極とその順で成膜を行うトップエミッション型有機電界発光素子の透明電極の透明導電膜の形成方法において、
成分の異なる2つ以上のターゲットを用いた共スパッタリング法により透明導電膜を形成することを特徴とする有機電界発光素子の透明導電膜の形成方法。 - 透明基板に支持された透明電極、有機発光膜を含む有機薄膜と、電子注入性保護膜、透明電極とその順で成膜を行う透明有機電界発光素子の透明電極の透明導電膜の形成方法において、
成分の異なる2つ以上のターゲットを用いた共スパッタリング法により透明導電膜を形成することを特徴とする有機電界発光素子の透明導電膜の形成方法。 - 前記ターゲットは、酸化インジウム(In2O3)と、酸化錫(SnO2)、又は酸化亜鉛(ZnO)の焼結体からなるターゲットであって、該ターゲットを用いて共スパッタリングを行うことを特徴とする請求項1、又は2記載の有機電界発光素子の透明導電膜の形成方法。
- 前記透明導電膜は、ターゲットのIn2O3と、SnO2、又はZnOの組成比及びプロセスガスである酸素流量を制御することで、その抵抗値が20〜50Ω/□であり、該透明導電膜の可視光領域の光透過率が95%以上でかつ、イオン化ポテンシャルが4.70〜5.20eVに形成することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の有機電界発光素子の透明導電膜の形成方法。
- 支持基板上に形成した電極と、有機発光膜を含む有機薄膜と、電子注入性保護層、透明電極とその順で成膜を行うトップエミッション型の有機電界発光素子の製造方法において、
前記請求項1乃至4のいずれか1項記載の有機電界発光素子の透明導電膜の形成方法を用いて透明電極を形成することを特徴とする有機電界発光素子の製造方法。 - 前記支持基板は、樹脂基板であることを特徴とする請求項5記載の有機電界発光素子の製造方法。
- 前記樹脂基板は、PET(ポリエチレンテレフタレート)若しくはPC(ポリカーボネイト)であることを特徴とする請求項5、又は6記載の有機電界発光素子の製造方法。
- 前記発光膜は、凸版オフセット印刷法により、有機発光材料を有機溶剤に溶解、又は分散させた有機発光媒体をインキとして用い、電極の上方にパターン形状に配置して形成することを特徴とする請求項5乃至7のいずれか1項記載の有機電界発光素子の製造方法。
- 前記パターン形状は、オフセット印刷法により、R(赤)色、G(緑)色、B(青)色の有機発光媒体の各色インキを用い、電極の上方にRパターン形状、Gパターン形状、Bパターン形状に有機発光媒体の各色インキを塗り分けて形成することを特徴とする請求項5乃至8のいずれか1項記載の有機電界発光素子の製造方法。
- 支持基板上に形成した電極と、有機発光膜を含む有機薄膜と、電子注入性保護層、透明電極とその順に積層した有機電界発光素子において、
前記請求項5乃至9のいずれか1項記載の有機電界発光素子の製造方法を用いて有機電界発光素子を形成したことを特徴とする有機電界発光素子。 - 前記PET(ポリエチレンテレフタレート)若しくはPC(ポリカーボネイト)の樹脂基板と前記電極との間に、CVDで形成したSi3N4の窒化物やSiONのような三元化合物によるパッシベーション膜を形成したことを特徴とする請求項10記載の有機電界発光素子。
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JP2005332573A JP2007141603A (ja) | 2005-11-17 | 2005-11-17 | 透明導電膜の形成方法及び有機電界発光素子及びその製造方法 |
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WO2010143430A1 (ja) * | 2009-06-11 | 2010-12-16 | パナソニック株式会社 | 有機エレクトロルミネッセンス素子及びその製造方法 |
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WO2018010439A1 (zh) * | 2016-07-12 | 2018-01-18 | 京东方科技集团股份有限公司 | 氧化铟锡薄膜及其制备方法、含其的阵列基板和显示装置 |
CN114300631A (zh) * | 2021-12-29 | 2022-04-08 | 北京维信诺科技有限公司 | 显示基板、显示面板以及显示基板的制造方法 |
-
2005
- 2005-11-17 JP JP2005332573A patent/JP2007141603A/ja active Pending
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