以下、本発明の第1実施形態を図1〜図11に従って説明する。
本実施形態に係る液体噴射装置は、図1に示すインクジェット式記録装置11である。図1に示すように、記録装置11は本体ケース12に収容されている。本体ケース12は略直方体形状の箱体であり、本体ケース12の上面にはカートリッジホルダ12aが設けられている。
本体ケース12内には、図2に示すガイド軸14、キャリッジ15、液体噴射ヘッドとしての記録ヘッド20、及びバルブユニット21、並びに、図1に示す液体カートリッジとしてのインクカートリッジ23、及び加圧ポンプ25が配置されている。
図2に示すように、ガイド軸14は棒状をなし、本体ケース12内のフレーム12b間に架設されている。キャリッジ15は、本体ケース12に支持されたキャリッジモータ(図示せず)に対し、タイミングベルト(図示せず)を介して駆動連結されている。キャリッジ15は、キャリッジモータの駆動に従ってガイド軸14の軸線方向に沿ってガイド軸14上を往復移動するように、ガイド軸14上に支持されている。以下、キャリッジ15の移動方向、すなわちガイド軸14の軸線方向を主走査方向ともいう。
記録ヘッド20は、キャリッジ15の下面に設けられており、液体としてのインクを噴射する複数のノズル(図示せず)を備えている。バルブユニット21は、キャリッジ15上に搭載されており、インクカートリッジ23から取り込まれるインクを一時貯留し、その貯留したインクを所定圧力に調整して記録ヘッド20に供給する。
図1の記録装置11が備えるバルブユニット21の数は3つであり、各バルブユニット21は、2種類のインクをそれぞれ所定圧力に調整して個別に記録ヘッド20に供給することが可能である。3つのバルブユニット21のそれぞれには、ブラック、イエロー、マゼンタ、シアン、ライトマゼンタ、及びライトシアンの6種のインクのうちの2つが割り当てられる。
ターゲットとしての記録媒体Pは、送り手段(図示せず)により、主走査方向と直交する方向(副走査方向)に沿って記録ヘッド20の下方に送出される。送出された記録媒体Pは、フレーム12b間に架設されたプラテン(図示せず)により支持される。
図1に示すように、記録装置11が備えるインクカートリッジ23の数は6つであり、各インクカートリッジ23はブラック、イエロー、マゼンタ、シアン、ライトマゼンタ、ライトシアンの6種のインクのうちの1つを貯留する。インクカートリッジ23は前記カートリッジホルダ12aに対して取り外し可能に装着されている。図3に示すように、インクカートリッジ23は、液体ケースとしてのインクケース31と液体収容部としてのインクパック32とを備えている。なお、図3に示すインクカートリッジ23は、6個のインクカートリッジ23のうちの1つであり、残りの5つのインクカートリッジ23も同一の構造を有する。インクケース31は、樹脂により略直方体形状に形成されている。インクパック32は、2枚の可撓性シートを重ね合わせることによって形成されている。インクパック32の内部には液体としてのインクが封入されている。
インクパック32はインク排出口32aを備える。インク排出口32aの一部はインクケース31の外部に露出し、それ以外のインクパック32の部分はインクケース31の内部に気密状態にて収納されている。インクケース31内において、インクケース31とインクパック32との間には隙間33が設けられている。
インクケース31には、インクケース31の外部と隙間33とを連通する図示しない連通孔が設けられている。この連通孔を介して隙間33に空気を流入させると、インクパック32が押し潰されてインクパック32内のインクがインク排出口を通じて排出される。インク排出口32aは、各インクカートリッジに対応するように設けられた液体流路としてのインク流路を構成する図2に示すインク供給チューブ35を介して前記バルブユニット21に接続されている。インクパック32から排出されたインクは、インク供給チューブ35を介してバルブユニット21に供給される。
図1に示すように、加圧ポンプ25は、本体ケース12の後部に固定されている。加圧ポンプ25は、空気供給チューブ(図示せず)を介して各インクカートリッジ23の前記連通孔に接続されている。加圧ポンプ25は、大気空気を吸引し、吸引した空気を加圧して空気供給チューブを介してインクカートリッジ23の前記隙間33に導入する。
インクカートリッジ23のインクパック32内のインクは、加圧ポンプ25から供給される加圧空気によって当該インクパック32が押し潰されることによりバルブユニット21に供給される。バルブユニット21に供給されたインクは、所定圧力に調整されてから記録ヘッド20に供給され、前記送り手段から送出される記録媒体Pに向かって噴射される。記録ヘッド20からインクを噴射させる際、記録装置11は、記録媒体P上に施されるべき印刷に関するデータ(画像データ)に基づいて、主走査方向に沿ってキャリッジ15を移動させると同時に、主走査方向と直交する方向(副走査方向)に沿って記録媒体Pを移動させる。
次に、前記カートリッジホルダ12aについて詳しく説明する。
図1及び図4に示すように、カートリッジホルダ12aは、インクカートリッジ23を平置きの状態で収容可能な6つの収容室39を備える。インクカートリッジ23を収容室39に収容させる際には、図4において矢印Lで示す方向にインクカートリッジ23をスライドさせる。つまり、矢印L方向は、インクカートリッジ23をカートリッジホルダ12aに取り付ける際にカートリッジホルダ12aに対しインクカートリッジ23が差し込まれる差込方向である。
図4に示すように、収容室39の底面中央付近には、レール部材40が設けられている。レール部材40は、略長方形形状の板部40aと、板部40aの両サイドに設けられた一対の係合片40b,40cとを備える。板部40aは、収容室39の底面に密着した状態で固定されている。係合片40b,40cは矢印L方向に沿って延びている。係合片40b,40cと収容室39の底面との間には隙間が設けられている。
各収容室39の奥に位置する壁面39aからは、液体供給針としてのインク供給針41と、空気導入管としての空気導入チューブ42とが突出している。インク供給針41は中空状であり、対応するインク供給チューブ35に接続されている。インクカートリッジ23が収容室39に正しく収容されているときには、インクパック32の内部がインク供給チューブ35の内部と連通するように、インク供給針41がインクカートリッジ23の前記インク排出口32aに差し込まれる。
空気導入チューブ42は、可撓性を有し、加圧ポンプから延びる前記空気供給チューブと接続されている。インクカートリッジ23が収容室39に正しく収容されているときには、インクカートリッジ23の隙間33が空気導入チューブ42の内部と連通するように、インクケース31の前記連通孔が空気導入チューブ42の下流端に当接する。空気導入チューブ42の下流端にはシール部材42aが設けられており、このシール部材42aにより、空気導入チューブ42とインクカートリッジ23の接続部分の気密性が確保される。
図4に示すように、収容室39の奥には、図5に示す接続部材43が配置されている。接続部材43は、スライド部材44と、固定手段を構成するラッチ爪部材45とを備える。
図6に示すように、スライド部材44は、本体部47と、回動部材としてのロック爪部材49とを備える。本体部47は、液体吸収手段としての箱体部51、屈曲規制手段としての円筒部53、及びラッチ溝部55を備える。箱体部51は、スライド部材44の図6における右側部分であり、内部に空洞を有している。箱体部51には、矢印L方向に沿って箱体部51を貫通する針貫通孔51aが形成されている。針貫通孔51aには前記インク供給針41が移動可能に挿入される。箱体部51の内部には、針貫通孔51aを囲むようにして、ベルイータなどからなる吸収材(図示せず)が収容されており、その吸収材は、インク供給針41から漏れ出たインクを吸収保持する。
円筒部53は、スライド部材44の図6における左側部分であり、円筒形状を有している。図4に示すように、円筒部53には、前記収容室39の壁面39aから突出する空気導入チューブ42が移動可能に挿通される。空気導入チューブ42は、円筒部53に挿入されることによって、矢印L方向に沿ってガイドされ、屈曲が防止されている。円筒部53には、図4に示すように、付勢手段を構成する第1のコイルばね53aの一端が当接している。第1のコイルばね53aの他端は、前記収容室39の壁面39aに当接している。第1のコイルばね53aは、円筒部53を壁面39aから離間する方向に付勢する。
ラッチ溝部55は、箱体部51と円筒部53との間のスライド部材44の部分であって、ラッチ溝部55の上面には固定手段を構成するラッチ溝55aが形成されている。図7に示すように、ラッチ溝55aは、第1〜第9の溝61〜69という9つの直線状溝部分を含む。本実施形態においては、第1の溝61は第1の溝部分に対応し、第5の溝65は第2の溝部分に対応し、第2〜第4の溝62〜64は第3の溝部分に対応し、第6〜第9の溝66〜69は第4の溝部分に対応する。
第1の溝61は、矢印L方向に対して斜めに延びている。第1の溝61の終端は、第1の溝61の始端よりも箱体部51寄り(図7においては右方)かつ手前側(図7においては下方)に位置している。
第2の溝62は矢印L方向に沿って延びている。第2の溝62の始端は第1の溝61の終端と連続している。第2の溝62の終端は、第2の溝62の始端よりも手前側(図7においては下方)に位置している。
第3の溝63は矢印L方向に直交して延びている。第3の溝63の始端は第2の溝62の終端と連続している。第3の溝63の終端は、第3の溝63の始端よりも円筒部53寄り(図7においては左方)に位置している。
第4の溝64は矢印L方向に沿って延びている。第4の溝64の始端は第3の溝63の終端と連続している。第4の溝64の終端は、第4の溝64の始端よりも奥側(図7においては上方)に位置している。
第5の溝65は矢印L方向に直交して延びている。第5の溝65の始端は第4の溝64の終端と連続している。第5の溝65の終端は、第5の溝65の始端よりも円筒部53寄り(図7においては左方)に位置している。
第6の溝66は矢印L方向に沿って延びている。第6の溝66の始端は第5の溝65の終端と連続している。第6の溝66の終端は、第6の溝66の始端よりも手前側(図7においては下方)に位置している。
第7の溝67は矢印L方向に直交して延びている。第7の溝67の始端は第6の溝66の終端と連続している。第7の溝67の終端は、第7の溝67の始端よりも円筒部53寄り(図7においては左方)に位置している。
第8の溝68は矢印L方向に沿って延びている。第8の溝68の始端は第7の溝67の終端と連続している。第8の溝68の終端は、第8の溝68の始端よりも奥側(図7においては上方)に位置している。
第9の溝69は、矢印L方向に対して斜めに延びている。第9の溝69の始端は第8の溝68の終端と連続している。第9の溝69の終端は、第9の溝69の始端よりも箱体部51寄り(図7においては右方)かつ奥側(図7においては上方)に位置し、第1の溝61の始端と連続している。
第1〜第9の溝61〜69の幅は互いにほぼ同じである。また第1〜第8の溝61〜68の深さも互いにほぼ同じである。第9の溝69の深さについては、始端における第9の溝69の深さは第1〜第8の溝61〜68の深さとほぼ同じであり、始端から終端に向かうに従って第9の溝69の深さは次第に浅くなっている。従って、第1の溝61の始端と第9の溝69の終端との境目には、段差71が形成されている。
図6に示すように、スライド部材44の本体部47の下面には、2本のスライド溝73,75が設けられている。スライド溝73,75は、矢印L方向に沿って延びている。図4に示すように、スライド溝73,75には前記レール部材40の係合片40b,40cがそれぞれ係合している。これにより、スライド部材44は、矢印L方向に沿って摺動可能となっている。
図6に示すように、本体部47は、矢印L方向に向かって突出する棒部材76を備える。図4に示すように、棒部材76には、付勢手段を構成する第2のコイルばね77が外嵌されている。第2のコイルばね77の一端は本体部47に当接し、第2のコイルばね77の他端は収容室39の奥側の壁面39aに当接している。本体部47は、第2のコイルばね77によって、収容室39の壁面39a(図4参照)から離間するように付勢されている。
図6に示すように、本体部47の下面には、前記スライド溝73,75に挟まれるようにして位置する凹部78が設けられている。さらに、図8に示すように、本体部47には、前記ラッチ溝部55の下面から、下方に突出するようにして円柱部79が形成されている。その円柱部79には、第3のコイルばね81の上端が外嵌されている。
ロック爪部材49は、平板状の部材を複数回屈曲させたような形状を有しており、その中心に支軸83を一体に備える。ロック爪部材49は、本体部47の前記凹部78内に位置しており、ロック爪部材49の支軸83は、その両端が、本体部47に対して、回動可能に取り付けられている。従って、ロック爪部材49は、支軸83を中心に図8に示す矢印R方向に沿って回動する正回転、及び、矢印R方向と逆方向に沿って回動する逆回転が可能となっている。
ロック爪部材49は、支軸83を間に挟んで位置する、インクカートリッジ23寄りの一側部85と壁面39a(図4参照)寄りの他側部87とを備える。一側部85は、矢印L方向に沿った断面形状が、上方に開口する略コの字(略U字)形状となっている。他側部87は、矢印L方向に沿った断面形状が下側に開口する略V字形状となっている。他側部87の上面は、前記第3のコイルばね81の下端に当接している。そのため、ロック爪部材49は、第3のコイルばね81により、逆回転方向に回動するように付勢されている。
インクカートリッジ23が収容室39に収容されたときに収容室39の奥側に位置するインクカートリッジ23の部分の下面には、係合部としての係合用凹部23aが形成されている。ロック爪部材49の一側部85が係合用凹部23aに対して係合したときには、インクカートリッジ23の矢印L方向に沿った移動が規制されるようになっている。
図5に示すように、ラッチ爪部材45は、略コの字(略U字)形状の平板状に形成されている。ラッチ爪部材45の一端には、下方に向かって突出する円筒状軸部89が形成されている。円筒状軸部89は、前記収容室39(図4参照)に設けられている嵌合孔(図示せず)に回動可能に嵌入されている。従って、ラッチ爪部材45は、円筒状軸部89を回転中心として矢印r方向に回動する正回転、及び、矢印r方向と逆方向に回動する逆回転が可能となるようにして、前記収容室39に対して支持されている。
図8に示すように、ラッチ爪部材45の他端には、下方に向かって突出する円柱形状のツメ部材91が設けられている。ツメ部材91は、前記スライド部材44のラッチ溝55aに対して係合しており、ラッチ溝55a内を移動可能となっている。ツメ部材91がラッチ溝55aの範囲内で移動することにより、前記スライド部材44の矢印L方向における位置が決まるようになっている。
詳しくは、ツメ部材91がラッチ溝55aに対して第1の溝61の始端、すなわち、図7に示す係合位置Aにおいて係合した場合には、スライド部材44は、図8及び図9に示すように、収容室39の壁面39aから離間して位置する。本実施形態においては、このときのスライド部材44の位置を、第1の位置(第1のスライド位置)としての抜き取り許容位置というものとする。
一方、ツメ部材91がラッチ溝55aに対して、第5の溝65の終端、すなわち、図7に示す係合位置Eにおいて係合した場合には、スライド部材44は、図10及び図11に示すように、収容室39の壁面39aに近接して位置する。本実施形態においては、このときのスライド部材44の位置を、第2の位置(第2のスライド位置)としての装着位置というものとする。
図4に示すように、ラッチ爪部材45には、第4のコイルばね93の一端が固定されている。第4のコイルばね93の他端は、前記収容室39の左側側面39bに固定されている。従って、第4のコイルばね93により、ラッチ爪部材45は、正回転方向に回動するように付勢されている。
図8に示すように、前記収容室39(図4参照)の底面からは、リブ95が上方に向かって突設されている。図8に示すように、スライド部材44が抜き取り許容位置に位置している場合には、リブ95は、前記ロック爪部材49の他側部87の壁面39a(図4参照)側の端部に対して当接する。従って、スライド部材44が抜き取り許容位置に位置している場合には、ロック爪部材49は、逆回転方向に変位されており、ロック爪部材49の一側部85が下方に位置する。この状態においては、ロック爪部材49の一側部85は、前記インクカートリッジ23の係合用凹部23aに対して係合不可能な位置に位置する。このときのロック爪部材49の位置は、第1の回動位置に対応する。
一方、図10に示すように、スライド部材44が装着位置に位置している場合には、リブ95は、他側部87における前記支軸83寄りの部分に対して当接する。従って、スライド部材44が装着位置に位置している場合には、ロック爪部材49は、正回転方向に変位されており、ロック爪部材49の一側部が上方に位置する。この状態においては、ロック爪部材49の一側部85は、前記インクカートリッジ23の係合用凹部23aに対して係合可能な位置に位置する。このときのロック爪部材49の位置は、第2の回動位置に対応する。
次に、以上のように構成されたインクジェット式記録装置11について、インクカートリッジ23を着脱するときの作用について説明する。
インクジェット式記録装置11の収容室39に、インクカートリッジ23が収容されていない状態においては、図8及び図9に示すように、スライド部材44は、抜き取り許容位置に位置している。この状態で、ユーザが、新しいインクカートリッジ23をカートリッジホルダ12aの収容室39内に矢印L方向に沿ってスライドさせることにより、インクカートリッジ23がスライド部材44に対して当接する。このとき、ロック爪部材49の一側部85は下方に位置しており、インクカートリッジ23の係合用凹部23aに対してロック爪部材49の一側部85が係合不可能な状態となっている。
ユーザが、インクカートリッジ23をさらに矢印L方向に押圧すると、スライド部材44が、第1のコイルばね53a及び第2のコイルばね77の付勢力に抗して、矢印L方向に移動する。すると、ラッチ爪部材45のツメ部材91は、図7に示すように、ラッチ溝55aの第1の溝61及び第2の溝62に沿って移動し、第2の溝62の終端、すなわち、係合位置Bに位置する。
ツメ部材91が係合位置Bに位置すると、ラッチ爪部材45は、第4のコイルばね93の付勢力によって正回転し、ツメ部材91がラッチ溝55aの第3の溝63に沿って移動する。この結果、ラッチ爪部材45は、第3の溝63の終端、すなわち、係合位置Cに位置する。
この状態において、ユーザが、インクカートリッジ23に対する押圧を停止すると、スライド部材44は、第2のコイルばね77と、第4のコイルばね93の付勢力によって、壁面39a(図4参照)から離間する方向に移動する。この結果、ラッチ爪部材45は、第4の溝64に沿って移動し、第4の溝64の終端、すなわち、係合位置Dに位置する。すると、ラッチ爪部材45は、第4のコイルばね93の付勢力によって正回転し、ツメ部材91がラッチ溝55aの第5の溝65に沿って移動する。この結果、ツメ部材91は、第5の溝65の終端、すなわち、係合位置Eに位置する。
ツメ部材91が係合位置Eに位置しているときには、図10及び図11に示すように、スライド部材44の位置は、装着位置に位置する。従って、ロック爪部材49は、正回転方向に変位されており、インクカートリッジ23の係合用凹部23aに対して係合した状態となる。この結果、インクカートリッジ23の矢印L方向の移動は、ロック爪部材49と係合用凹部23aとの間の強い係合によって規制される。
すなわち、カートリッジホルダ12aに対してインクカートリッジ23を収容しようとする場合には、ユーザは、インクカートリッジ23を収容室39内にてスライドさせて一旦奥まで押圧した後に、押圧を停止しさえすればよい。そうすることによって、インクカートリッジ23は容易にカートリッジホルダ12aに収容される。収容室39に収容された状態においては、インクカートリッジ23の矢印L方向の移動は、ロック爪部材49と係合用凹部23aとの間の係合によって規制されている。そのため、インクジェット式記録装置11に振動や落下が生じても、インク漏れや空気漏れの発生は起こりにくい。
上述したように、空気導入チューブ42(図4参照)は、屈曲が防止された状態でスライド部材44の円筒部53に支持されている。従って、カートリッジホルダ12aに対してインクカートリッジ23を収容するときには、空気導入チューブ42(図4参照)と、インクカートリッジ23の連通孔とを精度高く接続することができる。
収容室39に収容されたインクカートリッジ23を取り外すときには、ユーザは、インクカートリッジ23を矢印L方向に押圧する。すると、スライド部材44が、第1のコイルばね53a及び第2のコイルばね77の付勢力に抗して、矢印L方向に移動する。そして、ラッチ爪部材45のツメ部材91は、図7に示すように、ラッチ溝55aの第6の溝66に沿って移動し、第6の溝66の終端、すなわち係合位置Fに位置する。
ツメ部材91が係合位置Fに位置すると、第4のコイルばね93の付勢力によってラッチ爪部材45は正回転し、ツメ部材91がラッチ溝55aの第7の溝67に沿って移動する。この結果、ラッチ爪部材45は、第7の溝67の終端、すなわち、係合位置Gに位置する。
この状態において、ユーザが、インクカートリッジ23に対する押圧を停止すると、スライド部材44は、第2のコイルばね77と第4のコイルばね93の付勢力によって、壁面39a(図4参照)から離間する方向に移動する。この結果、ラッチ爪部材45は、第8及び第9の溝68,69に沿って移動し、第9の溝69の終端まで移動する。そして、ラッチ爪部材45は、段差71を超えて落下し、第1の溝61の始端、すなわち係合位置Aに位置する。
この結果、図8及び図9に示すように、スライド部材44は、抜き取り許容位置に位置する。従って、ロック爪部材49は、逆回転方向に変位され、インクカートリッジ23の係合用凹部23aと係合していない状態となる。この状態においては、ユーザは、インクカートリッジ23を掴んで軽く引っ張るのみで、簡単にインクカートリッジ23をカートリッジホルダ12aから引き抜くことができる。
第1実施形態は、以下の利点を備える。
(1)上記実施形態では、インクカートリッジ23をカートリッジホルダ12aの収容室39に挿入してスライド部材44を押圧することにより、スライド部材44が抜き取り許容位置から装着位置へと変位するようになっている。これにより、インクカートリッジ23は、収容室39から簡単に引き抜き可能な状態から、引き抜き不可能に固定される状態へと切り替わる。また、インクカートリッジ23を収容室39から引き抜き方向に移動させることにより、スライド部材44の位置が装着位置から抜き取り許容位置へと変位するようになっている。これにより、インクカートリッジ23は、収容室39から引き抜き不可能に固定されている状態から、簡単に引き抜き可能な状態へと切り替わる。
従って、スライド部材44が抜き取り許容位置に位置しているときに、インクカートリッジ23を収容室39から引き抜き及び差し込みすることで、ユーザは弱い力でインクカートリッジ23の着脱することができる。また、スライド部材44が装着位置に位置しているときには、ロック爪部材49と係合用凹部23aとの係合によりインクカートリッジ23の矢印L方向における移動が強固に規制される。従って、インクジェット式記録装置11における振動や落下等によってインクカートリッジ23とインク供給針41との接続部分からインクが漏れ出すことが効果的に防止される。
(2)上記実施形態では、スライド部材44は、第1のコイルばね53aと、第2のコイルばね77とによって、収容室39の壁面39aから離間される方向に付勢される。また、スライド部材44は、ラッチ溝55aとラッチ爪部材45との係合により装着位置に固定される。
従って、スライド部材44を抜き取り許容位置から装着位置に移動させる場合には、第1及び第2のコイルばね53a,77の付勢力に抗してスライド部材44をスライドさせて装着位置に位置させればよい。装着位置に位置されたスライド部材44は、ラッチ溝55aとラッチ爪部材45とによって、装着位置に維持される。一方、スライド部材44を装着位置から抜き取り許容位置に移動させる場合には、ラッチ溝55aとラッチ爪部材45との係合を解除することによって、スライド部材44は、第1及び第2のコイルばね53a,77の付勢力により抜き取り許容位置へと自然に移動する。
すなわち、スライド部材44を抜き取り許容位置又は装着位置に変位させるときには、スライド部材44をインクカートリッジ23の差込方向に押圧しさえすればよい。従って、スライド部材44の位置の切り替えは極めて容易である。
(3)上記実施形態では、スライド部材44にラッチ溝55aが設けられており、スライド部材44の位置は、ラッチ溝55aとラッチ爪部材45のツメ部材91との係合位置によって決められる。従って、スライド部材44の移動精度が向上し、スライド部材44の移動が安定する。
(4)上記実施形態では、スライド部材44が装着位置にあるとき、ツメ部材91がラッチ溝55aの係合位置Eに位置する。ツメ部材91が係合位置Eに位置しているときに、スライド部材44がインクカートリッジ23の差込方向に移動されることにより、ツメ部材を係合位置Eから、スライド部材44が抜き取り許容位置に位置する係合位置Aに移動する。
従って、スライド部材44の位置を抜き取り許容位置と装着位置との間で変位させるためには、スライド部材44を、インクカートリッジ23の差込方向に押圧しさえすればよい。従って、スライド部材44の位置の切り替えは極めて容易である。
(5)上記実施形態では、インクカートリッジ23に係合用凹部23aが設けられており、この係合用凹部23aがロック爪部材49に対して係合することで、インクカートリッジ23が装着位置にて固定される。従って、係合用凹部23aを設けるのみという少ない設計変更のみで、既存のインクカートリッジをロック爪部材49に係合可能な仕様に変更することができる。
(6)上記実施形態では、スライド部材44に、針貫通孔51aを有する箱体部51が設けられており箱体部51の内部には、吸収材が収容されている。従って、インクカートリッジ23を収容室39から引き抜くときなどにインク供給針41から漏れ出すインクは、箱体部51の内部の吸収材により吸収される。従って、収容室39の内部は清潔に保たれる。
(7)上記実施形態では、スライド部材44に円筒部53が設けられており、円筒部53により、空気導入チューブ42の屈曲が防止されている。従って、収容室39にインクカートリッジ23を収容させるときには、スライド部材44の移動に伴って、スライド部材44と―体となっている円筒部53により空気導入チューブ42の位置決めがなされる。従って、インクカートリッジ23の連通孔と空気導入チューブ42との接続精度が向上する。
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
上記実施形態においては、付勢手段として、第1及び第2のコイルばね53a,77が使用されるが、第1及び第2のコイルばね53a,77のうち、いずれか一方のみが使用されてもよい。あるいは、3つ以上のコイルばねが使用されてもよいし、第1及び第2のコイルばね53a,77の両方を省略してもよい。ただし、第1及び第2のコイルばね53a,77の両方を省略した場合には、インクカートリッジ23を引き抜くときに、ユーザは、インクカートリッジ23を指等で掴んで引き抜く必要がある。付勢手段は、コイルばねではなく、ゴム等の弾性部材であってもよい。
上記実施形態においては、スライド部材44を装着位置に維持する固定手段は、ラッチ溝55aとラッチ爪部材45とによって構成されるようにした。この固定手段は、スライド部材44を装着位置において維持するとともに必要に応じて装着位置から抜き取り許容位置への移動を許容するように切り替え可能でさえあれば、その他の固定手段に変更されてもよい。
上記実施形態においては、インクカートリッジ23には、係合部として係合用凹部23aを設けるようにし、ロック爪部材49の形状は、この係合用凹部23aと係合可能な形状となるようにした。これを、スライド部材44が抜き取り許容位置及び装着位置に位置したときに、インクカートリッジ23とロック爪部材49とが非係合及び係合となるのであれば、インクカートリッジ23の係合部とロック爪部材49の形状を他の形状となるようにしてもよい。
スライド部材44の箱体部51を省略してもよい。
スライド部材44の円筒部53を省略してもよい。
上記実施形態においては、液体カートリッジとしてのインクカートリッジ23は、液体収容部としてのインクパック32と、液体ケースとしてのインクケース31とによって構成されるが、液体収容部及び液体ケースはそれに限定されない。例えば、インクケース31の内部をフィルム等で仕切ることによって、液体収容部と隙間とを形成してもよい。
上記実施形態においては、インクジェット式記録装置11は、インクパック32とインクケース31との間の隙間33に空気を導入することによりインクパック32内のインクを記録ヘッド20へと移送させるようにした。これを、インクパック32の位置を記録ヘッド20よりも上方に位置させるようにして、インクパック32内のインクを重力によって記録ヘッド20へと移送させるようにしてもよい。この場合には、スライド部材44に円筒部53を設ける必要がない。
図1の記録装置11以外のインクジェット式記録装置、例えばファックスやコピアなどの印刷装置において本発明を具体化してもよい。あるいは、インク以外の液体を噴射する液体噴射装置において本発明を具体化してもよい。インク以外の液体を噴射する液体噴射装置は、例えば、液晶ディスプレイ、ELディスプレイ及び面発光ディスプレイの製造などに用いられる電極材や色材などの液体を噴射する液体噴射装置であってもよいし、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体噴射装置であってもよいし、精密ピペットとしての試料噴射装置であってもよい。
以下、本発明の第2実施形態を図12〜図23に従って説明する。
本実施形態に係る液体噴射装置は、図12に示すインクジェット式記録装置111(プリンタ111)である。図12に示すように、記録装置111は本体ケース112に収容されている。本体ケース112は略直方体形状の箱体であり、本体ケース112の上面にはカートリッジホルダ113が設けられている。
本体ケース112内には、図13に示すガイド軸114、キャリッジ115、液体噴射ヘッドとしての記録ヘッド116、及びバルブユニット117、並びに、図12に示す液体カートリッジとしてのインクカートリッジ118、及び加圧ポンプ119が配置されている。
図13に示すように、ガイド軸114は棒状をなし、本体ケース112内のフレーム112a間に架設されている。キャリッジ115は、本体ケース112に支持されたキャリッジモータ(図示せず)に対し、タイミングベルト(図示せず)を介して駆動連結されている。キャリッジ115は、キャリッジモータの駆動に従ってガイド軸114の軸線方向に沿ってガイド軸114上を往復移動するように、ガイド軸114上に支持されている。以下、キャリッジ115の移動方向、すなわちガイド軸114の軸線方向を主走査方向ともいう。
記録ヘッド116は、キャリッジ115の下面に設けられており、液体としてのインクを噴射する複数のノズル(図示せず)を備えている。バルブユニット117は、キャリッジ115上に搭載されており、インクカートリッジ118から取り込まれるインクを一時貯留し、貯留したインクを所定圧力に調整して記録ヘッド116に供給する。
図12の記録装置111が備えるバルブユニット117の数は3つであり、各バルブユニット117は、2種類のインクをそれぞれ所定圧力に調整して個別に記録ヘッド116に供給することが可能である。3つのバルブユニット117のそれぞれには、ブラック、イエロー、マゼンタ、シアン、ライトマゼンタ、及びライトシアンの6種のインクのうちの2つが割り当てられる。
ターゲットとしての記録媒体Tは、送り手段(図示せず)により、主走査方向と直交する方向(副走査方向)に沿って記録ヘッド116の下方に送出される。送出された記録媒体Tは、フレーム112a間に架設されたプラテン(図示せず)により支持される。
図12に示すように、記録装置111が備えるインクカートリッジ118の数は6つであり、各インクカートリッジ118はブラック、イエロー、マゼンタ、シアン、ライトマゼンタ、ライトシアンの6種のインクのうちの1つを貯留する。インクカートリッジ118は前記カートリッジホルダ113に対して取り外し可能に装着されている。図14に示すように、インクカートリッジ118は、液体ケースとしてのインクケース120と液体収容部としてのインクパック121とを備えている。なお、図14に示すインクカートリッジ118は、6個のインクカートリッジ118のうちの1つであり、残りの5つのインクカートリッジ118も同一の構造を有する。インクケース120は、樹脂により略直方体形状に形成されている。インクパック121は、2枚の可撓性シートを重ね合わせることによって形成されている。インクパック121の内部にはインクが封入されている。
インクパック121はインク排出口121aを備える。インク排出口121aの一部はインクケース120の外部に露出し、それ以外のインクパック121の部分はインクケース120の内部に気密状態にて収納されている。インクケース120内において、インクケース120とインクパック121との間には隙間122が設けられている。
インクケース120には、インクケース120の外部と隙間122とを連通する図示しない連通孔が設けられている。この連通孔を介して隙間122に空気を流入させると、インクパック121が押し潰されてインクパック121内のインクがインク排出口121aを通じて排出される。インク排出口121aは、各インクカートリッジ118に対応するように設けられた液体流路としてのインク流路を構成する図13に示すインク供給チューブ123を介して前記バルブユニット117に接続されている。インクパック121から排出されたインクは、インク供給チューブ123を介してバルブユニット117に供給される。
図19及び図20に示すように、インクケース120の上面120aには、インクケース120の一側において開口する両端部を有した溝163が形成されている。溝163は、図21に示すように、第1の案内溝166、第2の案内溝167、及び第3の案内溝168という三つの直線状溝部分を含む。溝163に囲まれたインクケース120の上面120aの部分は係止部164を構成する。
図12に示すように、加圧ポンプ119は、本体ケース112の後部に固定されている。加圧ポンプ119は、図示しない空気供給チューブを介して各インクカートリッジ118の前記連通孔に接続されている。加圧ポンプ119は、大気空気を吸引し、吸引した空気を加圧して空気供給チューブを介してインクカートリッジ118の前記隙間122に導入する。
インクカートリッジ118のインクパック121内のインクは、加圧ポンプ119から供給される加圧空気によって当該インクパック121が押し潰されることによりバルブユニット117に供給される。バルブユニット117に供給されたインクは、所定圧力に調整されてから記録ヘッド116に供給され、前記送り手段から送出される記録媒体Tに向かって噴射される。記録ヘッド116からインクを噴射させる際、記録装置111は、記録媒体T上に施されるべき印刷に関するデータ(画像データ)に基づいて、主走査方向に沿ってキャリッジ115を移動させると同時に、主走査方向と直交する方向(副走査方向)に沿って記録媒体Tを移動させる。
次に、前記カートリッジホルダ113について詳しく説明する。
図12に示すように、カートリッジホルダ113は、キャリッジ115の上方に配置されている。カートリッジホルダ113は、インクカートリッジ118を平置きの状態で収容可能な6つの収容室124を備える。図15に示すように、各収容室124は、底面124aと、3つの側面124b,124c,124dとにより画定されている。インクカートリッジ118を収容室124に収容させる際には、図15において矢印Yで示す方向にインクカートリッジ118をスライドさせる。つまり、矢印Yの方向は、インクカートリッジ118をカートリッジホルダ113に取り付ける際にカートリッジホルダ113に対しインクカートリッジが差し込まれる差込方向である。スライド時のインクカートリッジ118のX軸方向(図15参照)の移動は、収容室124の側面124c及び側面124dによって規制される。
図15に示すように、収容室124の底面124aの中央付近には、レール部材125が設けられている。レール部材125は、略長方形状の板部125aと、板部125aの両サイドに設けられた一対の係合片125b,125cとを備える。板部125aは、収容室124の底面124aに密着した状態で固定されている。係合片125b,125cはY軸に沿って延びている。係合片125b,125cと収容室124の底面124aとの間には隙間が設けられている。
各収容室124の奥に位置する側面124bからは、液体供給針としてのインク供給針126と、空気導入管としての空気導入チューブ127とが突出している。インク供給針126は中空状であり、対応するインク供給チューブ123に接続されている。インクカートリッジ118が収容室124に正しく収容されているときには、インクパック121の内部がインク供給チューブ123の内部と連通するように、インク供給針126がインクカートリッジ118の前記インク排出口121aに差し込まれる。
空気導入チューブ127は可撓性を有し、加圧ポンプ119から延びる前記空気供給チューブと接続されている。インクカートリッジ118が収容室124に正しく収容されているときには、インクカートリッジ118の隙間122が空気導入チューブ127の内部と連通するように、インクケース120の前記連通孔が空気導入チューブ127の下流端に当接する。空気導入チューブ127の下流端にはシール部材127aが設けられており、このシール部材127aにより、空気導入チューブ127とインクカートリッジ118の接続部分の気密性が確保される。
図15に示すように、収容室124の奥には、図16に示す接続部材131が配置されている。接続部材131は、スライド部材132、及び回動部材としてのラッチ爪部材133を備える。
図16及び図17に示すように、スライド部材132は、液体吸収手段としての箱体部134、屈曲規制手段としての円筒部135、及びラッチ溝部136を備える。箱体部134は、スライド部材132の図17における右側部分であり、内部に空洞を有している。箱体部134には、Y軸に沿って箱体部134を貫通する針貫通孔134aが形成されている。針貫通孔134aには前記インク供給針126が移動可能に挿入される。箱体部134の内部には、針貫通孔134aを囲むようにして、ベルイータなどの吸収材(図示せず)が収容されており、その吸収材は、インク供給針126から漏れ出たインクを吸収保持する。
円筒部135は、スライド部材132の図17における左側部分であり、円筒形状を有している。図15に示すように、円筒部135には、前記収容室124の側面124bから突出する空気導入チューブ127が移動可能に挿通される。空気導入チューブ127は、円筒部135に挿入されることによって、Y軸方向にガイドされ、屈曲が防止されている。円筒部135には、図15及び図20に示すように、第1の付勢手段を構成する第1のコイルばね137の一端が当接している。第1のコイルばね137の他端は、前記収容室124の側面124bに当接している。第1のコイルばね137は、円筒部135を側面124bから離間する方向に付勢する。
ラッチ溝部136は、箱体部134と円筒部135の間のスライド部材132の部分であって、ラッチ溝部136の上面にはガイド溝としてのラッチ溝136aが形成されている。図18に示すように、ラッチ溝136aは、第1〜第9の溝141〜149という9つの直線状溝部分を備える。本実施形態においては、第1の溝141は第1の溝部分であり、第5の溝145は第2の溝部分であり、第2〜第4の溝142〜144は第3の溝部分であり、第6〜第9の溝146〜149は第4の溝部分である。
第1の溝141はY軸に対して斜めに延びている。第1の溝141の終端は、第1の溝141の始端よりも箱体部134寄り(図18においては右方)かつ手前側(図18においては下方)に位置している。
第2の溝142はY軸と平行に延びている。第2の溝142の始端は第1の溝141の終端と連続している。第2の溝142の終端は、第2の溝142の始端よりも手前側(図18においては下方)に位置している。
第3の溝143はX軸と平行に延びている。第3の溝143の始端は第2の溝142の終端と連続している。第3の溝143の終端は、第3の溝143の始端よりも円筒部135寄り(図18においては左方)に位置している。
第4の溝144はY軸と平行に延びている。第4の溝144の始端は第3の溝143の終端と連続している。第4の溝144の終端は、第4の溝144の始端よりも奥側(図18においては上方)に位置している。
第5の溝145はX軸と平行に延びている。第5の溝145の始端は第4の溝144の終端と連続している。第5の溝145の終端は、第5の溝145の始端よりも円筒部135寄り(図18においては左方)に位置している。
第6の溝146はY軸と平行に延びている。第6の溝146の始端は第5の溝145の終端と連続している。第6の溝146の終端は、第6の溝146の始端よりも手前側(図18においては下方)に位置している。
第7の溝147はX軸と平行に延びている。第7の溝147の始端は第6の溝146の終端と連続している。第7の溝147の終端は、第7の溝147の始端よりも円筒部135寄り(図18においては左方)に位置している。
第8の溝148はY軸と平行に延びている。第8の溝148の始端は第7の溝147の終端と連続している。第8の溝148の終端は、第8の溝148の始端よりも奥側(図18においては上方)に位置している。
第9の溝149は、Y軸に対して斜めに延びている。第9の溝149の始端は第8の溝148の終端と連続している。第9の溝149の終端は、第9の溝149の始端よりも箱体部134寄り(図18においては右方)かつ奥側(図18においては上方)に位置し、第1の溝141の始端と連続している。
第1〜第9の溝141〜149の幅は互いにほぼ同じである。また第1〜第8の溝141〜148の深さも互いにほぼ同じである。始端における第9の溝149の深さは第1〜第8の溝の深さとほぼ同じであり、始端から終端に向かうに従って第9の溝149の深さは次第に浅くなっている。従って、第1の溝141の始端と第9の溝149の終端との境目には、段差150が形成されている。
図17に示すように、スライド部材132の下面には、Y軸と平行に延びるスライド溝151が設けられている。スライド溝151には前記レール部材125に嵌合し、スライド溝151の両側面が図15に示す前記レール部材125の係合片125b、125cにそれぞれ係合している。これにより、スライド部材132はレール部材125に沿って摺動可能となっている。
図17に示すように、スライド部材132は、Y軸方向に突出する棒部材153を備える。棒部材153の先端は、側面124bに形成された貫通孔(図示せず)に嵌挿支持されており、Y軸方向に沿って移動可能である。図15に示すように、棒部材153には、第1の付勢手段を構成する第2のコイルばね154が外嵌されている。第2のコイルばね154の一端は、スライド部材132に当接し、第2のコイルばね154の他端は収容室124の奥側の側面124bに当接している。スライド部材132は、第2のコイルばね154及び前記第1のコイルばね137によって、収容室124の側面124b(図15参照)から離間するように付勢されている。
ラッチ爪部材133は、図16及び図20に示すように、第1の支持部材155と、第1の支持部材155に一体に設けられた第2の支持部材156と、その第2の支持部材156に一体に設けられた第3の支持部材157と備える。第1の支持部材155、第2の支持部材156及び第3の支持部材157はいずれも平板状をなす。
第1の支持部材155の一端には、矢印Zの反対方向、つまり、下方に向かって突出する円筒状軸部158が形成されている。この円筒状軸部158は、図20に示すように、前記収容室124に設けられている図示しない軸受部材に回動可能に支持されている。従って、ラッチ爪部材133は、軸部158を回動中心としてZ軸周りを矢印方向に正回動可能、及び、矢印方向の逆方向に逆回動可能となるように、図示しない軸受部材に支持されている。
また、図19に示すように、第1の支持部材155の先端部から延出形成された第2の支持部材156は、その先端部下面に円柱形状の第1のツメ部材159が突出形成されている。第1のツメ部材159は、ツメ部材に対応する。第1のツメ部材159は、前記スライド部材132のラッチ溝136aに嵌合しており、ラッチ溝136a内を移動する。この第1のツメ部材159がラッチ溝136a内を移動するとき、軸部158は第1のツメ部材159の移動に伴い回動し、Z軸方向に沿って若干の移動が可能となっている。第1のツメ部材159がラッチ溝136a内を移動することにより、第2のツメ部材162は溝163上に位置決めされる。図20に示すように、第2の支持部材156の先端の側面124c側には、係止孔160が形成されている。この係止孔160と側面124cに形成された孔(図示せず)との間に第2の付勢手段としての第3のコイルばね161が張設されている。第3のコイルばね161によりラッチ爪部材133は側面124cに向かって付勢されている。
スライド部材132が第1及び第2のコイルばね137,154にて、側面124bから離間した位置に配置されているときには、ラッチ爪部材133の第1のツメ部材159は、図18に示すA位置(始端)に配置される。このときのスライド部材132の位置を、第1の位置(第1のスライド位置)としての抜き取り許容位置というものとする。
スライド部材132が第1及び第2のコイルばね137,154の弾性力に抗して奥側に押圧されて移動すると、第1のツメ部材159は第1の溝141を始端から終端に移動し、さらに第2の溝142の始端から終端(図18に示すC位置)まで移動する。なお、A位置に配置される第1のツメ部材159は、第1の溝141と第9の溝149との間に段差150があるため、A位置から第9の溝149に移動することはない。
第1のツメ部材159が第2の溝142の終端(C位置)まで到達すると、ラッチ爪部材133は、第3のコイルばね161の弾性力により第1のツメ部材159を第3の溝143を始端から終端(D位置)に移動させる。この状態で、スライド部材132に加えている押圧力を解除すると、スライド部材132は第1及び第2のコイルばね137,154の弾性力にて側面124bから離間する方向に移動する。このとき、第1のツメ部材159は、D位置から第4の溝144の終端(E位置)に移動する。第1のツメ部材159が第4の溝144の終端(E位置)まで到達すると、ラッチ爪部材133は、第3のコイルばね161の弾性力により第1のツメ部材159を第5の溝145を始端から終端(F位置)に移動させる。
再び、スライド部材132を第1及び第2のコイルばね137,154の弾性力に抗して奥側に押圧して移動させると、第1のツメ部材159はF位置から第6の溝146の終端(G位置)に移動する。第1のツメ部材159が第6の溝146の終端(F位置)まで到達すると、ラッチ爪部材133は、第3のコイルばね161の弾性力により第1のツメ部材159を第7の溝147を始端から終端(H位置)に移動させる。
第1のツメ部材159がH位置に到達し、スライド部材132に加えている押圧力を解除すると、スライド部材132は第1及び第2のコイルばね137,154の弾性力にて側面124bから離間する方向に移動する。すなわち、第1のツメ部材159は、第8の溝148、第9の溝149を移動して第1の溝141の始端(A位置)に復帰する。
従って、スライド部材132を2回に分けて側面124bに向かって押圧するように操作すると、第1のツメ部材159はラッチ溝136aを一周してA位置に復帰する。つまり、1回目の押圧操作で第1のツメ部材159はA位置からF位置まで案内され、2回目の押圧操作で第1のツメ部材159はF位置からA位置まで案内される。
第2の支持部材156の先端部に延出形成された第3の支持部材157は、図19に示すように、先端部下面に円柱形状の係合部材としての第2のツメ部材162が突出形成されている。第2のツメ部材162は、前記インクカートリッジ118のインクケース120に形成した溝163に嵌合されるようになっている。なお、本実施形態では、第2のツメ部材162を案内する溝163は、ラッチ爪部材133の軸部158からの距離に比例して、第1のツメ部材159が係合するラッチ溝136aのH位置からI位置を包絡する移動経路より大きく形成されている。
つまり、インクカートリッジ118をカートリッジホルダ113に装着するために、インクカートリッジ118をスライド部材132に当てて押圧すると、第1のツメ部材159が第1の溝141を移動して第2の溝142内のB位置に移動する。第2のツメ部材162は、第1のツメ部材159とともに移動し矢印Y方向の反対方向に変位し、インクケース120に形成した溝163の第1の案内溝166と対向する。従って、第1のツメ部材159が第2の溝142内のB位置からC位置に移動すると、第2のツメ部材162は、図21に示すように第1の案内溝166をK位置まで案内される。このときのスライド部材132の位置を、第2の位置(第2のスライド位置)としての装着位置というものとする。
第1のツメ部材159が第2の溝142のC位置から第3の溝143のD位置まで移動すると、第2のツメ部材162は、図21に示すようにK位置から第2の案内溝167をL位置まで案内される。第1のツメ部材159がD位置から第4の溝144のE位置まで移動すると、第2のツメ部材162は、図21に示すようにL位置から第2の案内溝167をM位置まで案内される。第1のツメ部材159がE位置から第5の溝145のF位置まで移動すると、第2のツメ部材162は、図21に示すようにM位置から第2の案内溝167をN位置まで案内される。
この時点で、インクカートリッジ118は、カートリッジホルダ113に装着された状態になる。この状態でインクカートリッジ118を引き抜こうとしても、第1のツメ部材159が第5の溝145の側面に係合するとともに第2のツメ部材162が係止部164に係合しているため、カートリッジホルダ113からインクカートリッジ118を取り出すことはできない。
続いて、インクカートリッジ118を介してスライド部材132を押圧すると、第1のツメ部材159は前記したようにF位置→G位置→H位置→I位置→A位置の順で移動する。このとき、第2のツメ部材162は、図21に示すように、N位置→O位置→P位置、そして第3の案内溝168のQ位置まで案内される。その結果、第2のツメ部材162が係止部164から外れるとともにインクケース120に形成した溝163から抜け出る。従って、インクカートリッジ118は、カートリッジホルダ113から取り出すことができる。
次に、上記のように構成したプリンタ111について、インクカートリッジ118を着脱するときの作用について説明する。
プリンタ111の収容室124に、インクカートリッジ118が装着されていない状態においては、図19及び図20に示すように、スライド部材132は、抜き取り許容位置に位置している。そして、この状態において、ユーザが、新しいインクカートリッジ118をカートリッジホルダ113の収容室124内にY軸方向に摺動させることにより、インクカートリッジ118の側面118bがスライド部材132に当接する。なお、このとき、第2のツメ部材162は、インクカートリッジ118の上面120aには位置せず、インクカートリッジ118の係止部164に対して係合不可能な状態となっている。
ユーザが、インクカートリッジ118をさらに矢印Y方向に押圧すると、スライド部材132が、第1のコイルばね137及び第2のコイルばね154の付勢力に抗して、矢印Y方向に移動する。すると、ラッチ爪部材133の第1のツメ部材159は、図18に示すように、ラッチ溝136aの第1の溝141及び第2の溝142に沿って移動し、第2のツメ部材162を溝163のJ位置からK位置へ案内する。そして、第1のツメ部材159は、第2の溝142の終端、すなわち、C位置に位置する。第1のツメ部材159が第1の溝141及び第2の溝142に沿って移動するとき、インク供給針126は箱体部134に設けられた針貫通孔134aを貫通し、インクカートリッジ118のインク排出口121aに差し込まれるようになっている。また、空気導入チューブ127は、スライド部材132の円筒部135に屈曲が防がれた状態で支持され、インクカートリッジ118の連通穴と接続するようになっている。従って、インクカートリッジ118の連通孔と空気導入チューブ127との接続時における精度を高めることができる。
第1のツメ部材159がC位置に位置すると、ラッチ爪部材133は、第3のコイルばね161の付勢力によって軸部158を回動中心としてZ軸周りで矢印方向に回動し、第1のツメ部材159がラッチ溝136aの第3の溝143に沿って移動する。この結果、第1のツメ部材159は、第3の溝143の終端、すなわち、D位置に位置する。また、第1のツメ部材159は、第2のツメ部材162をL位置に案内する。
この状態において、ユーザが、インクカートリッジ118に対する押圧を停止すると、スライド部材132は、第1のコイルばね137及び第2のコイルばね154の付勢力によって、側面124bから離間する方向に移動する。この結果、ラッチ爪部材133は、第4の溝144に沿って移動し、第4の溝144の終端、すなわち、E位置に位置する。すると、ラッチ爪部材133は、第3のコイルばね161の付勢力によって側面124cに近接する方向に移動されるので、軸部158を回動中心にしてZ軸周りで矢印方向に回動し、第1のツメ部材159がラッチ溝136aの第5の溝145に沿って移動する。この結果、第1のツメ部材159は、第5の溝145の終端、すなわち、F位置に位置する。第1のツメ部材159がF位置に位置しているときには、図22及び図23に示すように、スライド部材132は装着位置に位置し、第2のツメ部材162は、係止部164に係止する。この結果、Y軸に沿う方向のインクカートリッジ118の移動が規制される。また、第2のツメ部材162が溝163に係止されながら移動するので、係止部164の上面は第3の支持部材157に係止される。そのため、Z軸に沿う方向のインクカートリッジ118の移動が規制される。
つまり、カートリッジホルダ113に対してインクカートリッジ118を収容しようとする場合には、ユーザは、インクカートリッジ118を収容室124内に摺動させて一旦奥まで押圧した後に、押圧を停止しさえすればよい。そうすることによって、インクカートリッジ118は容易にカートリッジホルダ113に収容される。インクカートリッジ118をカートリッジホルダ113に固定する際には、第2のツメ部材162がインクカートリッジ118上の溝163に案内された状態を維持したままでインクカートリッジ118がスライド部材132に固定される。
インクカートリッジ118がカートリッジホルダ113に収容されるときには、インクカートリッジ118のX軸方向の移動は、収容室124の側面124c及び側面124dによって規制され、さらにラッチ爪部材133に案内される第2のツメ部材162によっても規制される。また、インクカートリッジ118の上面120aにラッチ爪部材133が係止することによって、インクカートリッジ118のZ軸の方向の移動も規制される。そのため、インクカートリッジ118がカートリッジホルダ113に収容された状態にあるとき、インクカートリッジ118はカートリッジホルダ113に対して案内された状態のまま固定されており揺動しない。したがって、搬送及び印刷駆動時における振動や落下が生じてもインク漏れや空気漏れが発生しない。
収容室124に収容されたインクカートリッジ118を取り外すときには、ユーザは、インクカートリッジ118を矢印Y方向に押圧する。すると、スライド部材132が、第1のコイルばね137及び第2のコイルばね154の付勢力に抗して、矢印Y方向に移動する。そして、ラッチ爪部材133の第1のツメ部材159は、図18に示すように、ラッチ溝136aの第6の溝146に沿って移動し、第6の溝146の終端、すなわちG位置に位置する。
第1のツメ部材159がG位置に位置すると、第3のコイルばね161の付勢力によって第2の支持部材156は側面124cに近接する方向に付勢される。このため、ラッチ爪部材133は軸部158を回動中心にしてZ軸周りで矢印方向に回動し、第2のツメ部材162がラッチ溝136aの第7の溝147に沿って移動する。この結果、第1のツメ部材159は、第7の溝147の終端、すなわち、H位置に位置する。
この状態において、ユーザが、インクカートリッジ118に対する押圧を停止すると、スライド部材132は、第1のコイルばね137と第2のコイルばね154の付勢力によって、側面124bから離間する方向に移動する。また、ラッチ爪部材133は軸部158を回動中心としてZ軸周りで矢印方向に逆回動する。この結果、第1のツメ部材159は、第8の溝148及び第9の溝149に沿って移動し、第9の溝149の終端まで移動する。そして、第1のツメ部材159は、段差150を超えて落下し、A位置に位置する。また、第1のツメ部材159は、第2のツメ部材162をP位置からQ位置へ案内し、再び、ラッチ溝136aの上方に位置させる。なお、第1のツメ部材159が第8の溝148から第9の溝149に沿って移動するとき、インク供給針126はインクカートリッジ118のインク排出口121aから抜き取られる。このとき、インク供給針126から漏れ出たインクは箱体部134の内部の吸収材によって吸収される。従って、収容室124の内部は清潔に保たれる。
この結果、図19及び図20に示すように、スライド部材132は、抜き取り許容位置に位置する。つまり、第2のツメ部材162は、インクカートリッジ118の係止部164と係止していない状態になる。従って、ユーザは、インクカートリッジ118を掴んで軽く引っ張るのみで、簡単にインクカートリッジ118をカートリッジホルダ113から引き抜くことができる。
第2実施形態は、以下の利点を備える。
(1)本実施形態では、スライド部材132が抜き取り許容位置に位置しているときに、ユーザがインクカートリッジ118を矢印Y方向に押圧することで、インクカートリッジ118の着脱を行うことができる。
さらに、スライド部材132が装着位置に位置しているときには、インクカートリッジ118の係止部164とラッチ爪部材133の第2のツメ部材162との係合により、インクカートリッジ118はカートリッジホルダ113に対して固定される。このとき、インクカートリッジ118のX軸方向の移動は、収容室124の側面124c,124dに加えて、ラッチ爪部材133に案内される第2のツメ部材162によって規制される。また、インクカートリッジ118の上面120aにおいては、第2のツメ部材162が溝163に係止されながら移動するので、インクカートリッジ118は第3の支持部材157によってZ軸に沿う方向の移動も規制される。つまり、インクカートリッジ118は、カートリッジホルダ113に対して案内された状態のまま固定されることになる。このため、インクカートリッジ118はカートリッジホルダ113に対して揺動することがない。従って、搬送及び印刷駆動時に振動や落下が生じても、インクカートリッジ118とインク供給針126との接続部分等からインクが漏れ出すことが効果的に防止される。
(2)本実施形態では、第1のコイルばね137と第2のコイルばね154によって収容室124の側面124bから離間される方向に付勢されている。スライド部材132はまた、第3のコイルばね161によって収容室124の側面124cに向かって付勢されている。加えて、スライド部材132は、ラッチ溝136aと第1のツメ部材159との係合、及び、溝163と第2のツメ部材162との係合により装着位置に固定される。
従って、スライド部材132を抜き取り許容位置から装着位置に移動させる場合には、第1のコイルばね137及び第2のコイルばね154の付勢力に抗してスライド部材132を摺動させて装着位置に位置させればよい。装着位置に位置されたスライド部材132は、係止部164と第2のツメ部材162とによって、装着位置に維持される。一方、スライド部材132を装着位置から抜き取り許容位置に移動させる場合には、係止部164と第2のツメ部材162との係合を解除することによって、付勢手段の付勢力によりスライド部材132は抜き取り許容位置へと自然に移動する。
つまり、スライド部材132を抜き取り許容位置又は装着位置に変位させるときには、スライド部材132をインクカートリッジ118の差込方向に押圧しさえすればよい。従って、スライド部材132の位置の切り替えは極めて容易である。
(3)本実施形態では、スライド部材132にラッチ溝136aが設けられており、スライド部材132の下面にはスライド溝151が設けられている。このため、スライド部材132の位置は、スライド溝151とレール部材125との係合及びラッチ溝136aとラッチ爪部材133の第1のツメ部材159との係合位置によって決められる。従って、スライド部材132の移動が安定し、スライド部材132の移動精度が向上する。
(4)本実施形態では、スライド部材132が装着位置にあるとき、第1のツメ部材159は、第2のツメ部材162をN位置まで案内し、第2のツメ部材162を係止部164に係止させる。この状態において、スライド部材132をインクカートリッジ118の差込方向に移動すると、第2のツメ部材162は、係止部164から外れるとともにインクケース120に形成した溝163から抜け出る。その結果、インクカートリッジ118は、カートリッジホルダ113から取り外し可能な状態となる。
従って、スライド部材132の位置を抜き取り許容位置と装着位置との間で変化させるためには、インクカートリッジ118の差込方向、すなわち矢印Y方向にスライド部材132を押圧しさえすればよい。従って、スライド部材132の位置の切り替えは極めて容易である。
(5)本実施形態では、インクカートリッジ118の上面120aには、溝163が設けられている。そして、その溝163によって囲まれた係止部164に第2のツメ部材162が係止することで、インクカートリッジ118は装着位置に固定される。従って、溝163を設けるのみという少ない設計変更のみで、既存のインクカートリッジを第2のツメ部材162に係合可能な仕様に変更することができる。
(6)本実施形態では、スライド部材132に、針貫通孔134aを有する箱体部134が設けられており、箱体部134の内部には、吸収材が収容されている。従って、インクカートリッジ118を収容室124から引き抜いたときなどにインク供給針126から漏れ出すインクは、箱体部134の内部の吸収材により吸収される。従って、収容室124の内部は清潔に保たれる。
(7)本実施形態では、スライド部材132に円筒部135が設けられており、円筒部135により、空気導入チューブ127の屈曲が防止されている。従って、収容室124にインクカートリッジ118を収容させるときには、スライド部材132の移動に伴って、スライド部材132と一体となっている円筒部135により空気導入チューブ127の位置決めがなされる。従って、インクカートリッジ118の連通孔と空気導入チューブ127との接続精度が向上する。
(8)本実施形態では、ラッチ爪部材133は、一体に形成された第1の支持部材155、第2の支持部材156及び第3の支持部材157にて構成される。このため、第2の支持部材156の第1のツメ部材159と、第3の支持部材157の第2のツメ部材162との間には、組立によるずれが生じない。そのため、ラッチ爪部材133の回動に伴う第1のツメ部材159の移動は、第2のツメ部材162に精度良く伝達される。従って、スライド部材132及びカートリッジホルダ113に対するインクカートリッジ118の位置決め精度が向上する。また、ラッチ爪部材133は一体形成にて構成したため、部品点数最小限に抑えることができる。
(9)インクカートリッジ118の上面120aに設けられた溝163の両端部分は、Y軸方向に沿って延びるとともにインクカートリッジ118の一側において開口する。そのため、第2のツメ部材162がY軸方向以外の方向に向かって溝163から抜けることはない。
なお、第2実施形態は、以下のように変更してもよい。
上記実施形態では、溝163及び係止部164は、インクカートリッジ118の上面120aでなくインクカートリッジ118の側面や底面に設けられてもよい。この場合、第1のツメ部材159及び第2のツメ部材162を、溝163及び係止部164と対向するように、ラッチ爪部材133に設けてもよい。
上記実施形態では、付勢手段として、第1のコイルばね137、第2のコイルばね154及び第3のコイルばね161の計3つのコイルばねが使用されるが、使用されるコイルばねの数量はこれに限られない。また、付勢手段は、コイルばねでなく、板ばね又はゴムであってもよい。
上記実施形態では、スライド部材132を装着位置に維持する固定手段は、ラッチ溝136a、第1のツメ部材159、第2のツメ部材162、係止部164とによって構成されるようにした。この固定手段は、スライド部材132を装着位置において固定するとともに必要に応じて装着位置から抜き取り許容位置への移動を許容するように切り替え可能でさえあれば、その他の固定手段に変更されてもよい。例えば、スライド部材132に突状の第1のツメ部材159を形成し、インクカートリッジ118上に突状の第2のツメ部材162を形成し、さらに、ラッチ爪部材133上に、第1のツメ部材に嵌合する溝163と、第2のツメ部材162が係止する係止部164とを形成してもよい。
上記実施形態では、係止部164の形状は変更されてもよい。例えば、第1のツメ部材159がF位置に係合するとき第2のツメ部材162を係止部164に案内するように、矢印Y方向に凹となる凹部やV字状の溝が係止部164に設けられてもよい。あるいは、矢印Y方向の反対方向に凸となる突部を形成してもよい。これにより、第1のツメ部材159がF位置に係合されると同時に、第2のツメ部材162は突部及び係止部164に係止されるため、X軸及びY軸に沿った方向への移動が規制される。
上記実施形態では、スライド部材132は、箱体部134及び円筒部135を備えるようにしたが、スライド部材132は箱体部134又は/及び円筒部135を備えなくてもよい。
上記実施形態では、インクカートリッジ118は、液体収容部としてのインクパック121と液体ケースとしてのインクケース120とによって構成されるが、液体収容部及び液体ケースはそれに限定されない。例えば、インクケース120の内部をフィルム等で仕切ることによって、液体収容部と隙間とを形成してもよい。
上記実施形態では、プリンタ111は、加圧ポンプ119にてインクケース120とインクパック121との隙間122に空気を導入することにより、インクパック121内のインクを記録ヘッド116へと移動させるようにした。それに代わり、インクパック121の位置を記録ヘッド116よりも上方に位置させるようにして、インクパック121内のインクを重力によって記録ヘッド116へと移送させるようにしてもよい。この場合には、スライド部材132に円筒部135を設ける必要がない。
図12のプリンタ111以外のインクジェット式記録装置、例えばファックスやコピアなどの印刷装置において本発明を具体化してもよい。あるいは、インク以外の液体を噴射する液体噴射装置において本発明を具体化してもよい。インク以外の液体を噴射する液体噴射装置は、例えば、液晶ディスプレイ、ELディスプレイ及び面発光ディスプレイの製造などに用いられる電極材や色材などの液体を噴射する液体噴射装置であってもよいし、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体噴射装置であってもよいし、精密ピペットとしての試料噴射装置であってもよい。
11,111…液体噴射装置としてのインクジェット式記録装置、12a,113…カートリッジホルダ、20,116…液体噴射ヘッドとしての記録ヘッド、23,118…液体カートリッジとしてのインクカートリッジ、35,123…液体流路を構成するインク供給チューブ、41,126…液体供給針としてのインク供給針、42,127…空気導入管としての空気導入チューブ、44,132…スライド部材、51,134…吸収手段としての箱体部、53,135…屈曲規制手段としての円筒部、P,T…ターゲットとしての記録媒体。