多層配線構造の半導体装置の製造方法では、配線間を電気的に絶縁する絶縁膜を2種類以上の絶縁膜を積層した構造に形成している。特に、絶縁膜の誘電率(k)の値を小さくするために、従来から使用されていた酸化シリコン膜や窒化シリコン膜に比べ、密着性の弱い種々の絶縁膜が使われている。
上記多層配線構造を製造する技術としては、絶縁層に形成した溝および穴に導電材料となる銅を埋め込んで形成する、いわゆるデュアルダマシン方法について開示されている(例えば、特許文献1参照。)。この特許文献1に開示されている絶縁層は積層構造であり、特許文献1の図3および段落番号0032に「誘電絶縁層2、3および4を付着させて高導電率の相互接続を形成するプロセスを開始する。1対の絶縁層はECR、スパッタリング、プラズマCVD、CVD、スピンコーティング、またはこれらの方法の任意の組み合わせによって付着させることができる。たとえば、これらの絶縁層はポリイミド、窒化シリコン、酸化アルミニウム(アルミナ)、二酸化シリコン、リンケイ酸ガラス、酸化イットリウム、酸化マグネシウム、エアロゲル、またはこれらの材料の任意の組み合わせで作ることができる。」ことが記載されている。
また、配線(ライン)層の絶縁膜とビア層の絶縁膜との積層構造を有し、ビア層の絶縁膜がTEOS酸化膜/有機ポリマー系スピンオン材料膜の積層膜であり、配線層の絶縁膜がTEOS酸化膜/有機ポリマー系スピンオン材料膜の積層膜である半導体装置が開示されている(例えば、非特許文献1参照。)。
また、配線(ライン)層の絶縁膜とビア層の絶縁膜との積層構造を有し、さらに配線層の絶縁膜が積層構造である半導体装置が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。具体的には、ビア層の絶縁膜として、パッシベーション膜111を窒化シリコン膜で形成し、その上に第1の層間絶縁膜112を酸化シリコン膜で形成すること、および配線層の絶縁膜として、第2の層間絶縁膜114を有機ポリマーで形成することおよびマスク層115を酸化シリコン膜で形成することが開示されている。
このような密着性の弱い膜を積層して用いた場合、半導体装置製造工程における機械的な力、または熱工程において、剥がれが発生する問題が生じていた。密着性が問題となる工程としては、具体的には、酸化膜を平坦化するためのCMP工程、配線を溝に埋め込んで形成する溝配線構造を形成するためのCMP工程、低誘電率膜(半導体プロセス技術の当業者間ではLow−k膜ともいう)を架橋するためのアニール工程、銅膜をアニールする工程、パッケージング工程などが上げられる。
中でもCMP工程では、機械的な力がかかるため、剥がれを回避することが困難であり、絶縁膜のlow−k化がk<3.0の領域に入ってくるに伴って大きな問題となってきた。このような剥がれを抑制する方法として、以下に示す解決方法が提案されている。
その解決方法は、SiO2からなる絶縁膜とSiOCHからなる絶縁膜との密着性を改善する方法であって、SiO2膜とSiOCH膜の間に、膜中の炭素(C)濃度と水素(H)濃度が低く、酸素(O)濃度が高いSiOCH膜を有することで密着性を改善しているものである(例えば、特許文献3参照。)。
しかしながら、一般的に膜中の炭素(C)濃度と水素(H)濃度が低く、酸素(O)濃度が高いSiOCH膜は、通常のSiOCH膜に比べ誘電率(k)値が上昇することが知られている。特許文献3の第11頁の段落0041および図4(a)、(b)、(c)に、一酸化二窒素(N2O)、アンモニア(NH3)、水素(H2)等のプラズマを用いて下地SiOCH膜を改質することによって上記SiOCH膜を形成した場合には、誘電率(k)値の上昇があることが記載されている。
また特許文献3の請求項25には、上記SiOCHを形成する方法として、ヘリウム(He)またはアルゴン(Ar)を含み、酸素(O)、水素(H)、窒素(N)を含まないガスを用いたプラズマ雰囲気で処理する工程と、その後酸素(O)を含むガスを用いた雰囲気で熱処理を行う工程を用いて、下地のSiOCHを変質させることが記載されている。この効果として特許文献3の第8頁の段落0024、および第11頁の段落0041に記載されているように、改質の反応を、下地SiOCHの20nm程度のみに抑えることによって、深さ方向の制御を容易に行うことができるため、誘電率(k)値の上昇が抑えられるとしている。
このように、上記特許文献3に開示された技術は、プラズマ処理によって誘電率(k)値の上昇を引き起こさないようプラズマのガス種を選択する必要があった。したがって、絶縁膜の選択によっては、十分な密着性が確保できないこともあり得る。また、改質層が20nmであっても、改質層で誘電率(k)値は上昇しており、今後半導体装置の微細化にともなう縦構造寸法の微細化、さらなるlow−k化の際には、問題となってくることが予想される。
また、上記とは別に、SiO2膜とSiOCH膜との密着性改善方法が開示されている。その方法は、上記特許文献3とほぼ同様に、SiO2膜とSiOC膜との間に、下地SiOCに比べて炭素(C)濃度が10〜90%の中間層を挿入する方法である(例えば、特許文献4参照。)。
中間層(=改質層)の膜厚については、特許文献4の第6頁の段落番号0029−0030に記載があるように、10nm以上で十分な膜剥がれを抑制でき、50nm以下であればリーク電流の増加が抑制されるとされている。また、中間層の形成方法として、特許文献4の第6頁の段落番号0033に、ヘリウム(He)ガスまたはアルゴン(Ar)ガス等の希ガスを用いたプラズマ処理が記載されている。また、酸素および窒素の活性種(イオン、ラジカル)、例えば、酸素(O2)、一酸化二窒素(N2O)を含むプラズマ処理により処理した場合は、改質層が増加し、リーク電流が増加することが示唆されている。
このように、特許文献4で開示された技術は、プラズマ処理によってリーク電流の増大を引き起こさないようプラズマのガス種を選択する必要があった。また、今後の半導体装置の微細化にともなう配線間距離の縮小、低誘電率(low−k)化にともなう絶縁膜のプラズマ耐性の悪化にともなって、十分な効果が得られなくなってくることが予想される。
また、上記とは別に、有機系材料を使った場合のCMP時の膜剥がれを改善する方法が開示されている。この方法では、ウエハ周辺部における有機絶縁材料を硬化させることで、CMP時の膜剥がれを改善する。有機絶縁材料を硬化させる方法としては、紫外線照射が開示されている(例えば、特許文献4参照。)。
しかしながら、無機絶縁材料の場合には、紫外線照射では密着性を向上させる効果は発生しない。
特許第3057054号公報
特開2001−44189号公報
特開2004−253790号公報
特開2004−207604号公報
特開2000−100944号公報
西岡康隆著「CD制御に基づいた有機Low−k/Cuインテグレーション技術」、グローバルネット株式会社主催"k<2.5に向けたLow−k膜ダマシンプロセスの基礎理論と配線応用技術"p.4−1−1〜4−1−8、2002年2月20日
本発明の第1の半導体装置に係る一実施の形態の実施例を、図1の概略構成断面図によって説明する。
図1に示すように、図示はしないトランジスタ、配線等が形成された基板(ウエハ)11上に絶縁膜12が形成されている。上記基板11には、例えばシリコン基板が用いられる。また上記絶縁膜12は、酸化シリコン膜からなり、例えば500nmの厚さに形成されている。上記絶縁膜12上には配線層間の絶縁膜を構成する第1絶縁膜21が形成されている。ここでは第1絶縁膜21は炭化酸化シリコン(SiOC)膜で形成する。また、SiOC膜中に窒素もしくは水素が含まれた膜であってもよい。上記第1絶縁膜21は、例えばプラズマCVD法により成膜され、例えば1000nmの厚さを有する。
上記第1絶縁膜21の周辺部(例えばウエハ外周から5mm以内の範囲)上は研磨処理が施されていて、第1絶縁膜21が削られた除去部33が形成されている。この除去部33は、第1絶縁膜21の主表面より200nm程度研磨して形成される。そして、除去部33の被研磨面の表面粗さは、中心線平均粗さRaで、5nm以上100nm以下に形成されている。
さらに上記第1絶縁膜21を被覆するように第2絶縁膜22が形成されている。この第2絶縁膜22は、例えば酸化シリコン(SiO2)膜で形成されている。この第2絶縁膜21の膜厚は、例えば300nmに形成されている。
上記第1の半導体装置では、基板11の製品となるチップが存在しない領域上における第1絶縁膜21表面に、研磨により形成された除去部33が形成されていることから、除去部33を形成しないで第2絶縁膜22が形成されているものよりも、除去部33での第2絶縁膜22の面内方向の固定力が高められるので、第1絶縁膜21に対する第2絶縁膜22の剥がれが抑制される。しかも、除去部33が第1絶縁膜21の膜厚方向にみると途中まで形成されている、すなわち、除去部33底部(被研磨面)には第1絶縁膜21が残されているので、第1絶縁膜21の主表面に対して除去部33の段差が大きくなりすぎることはない。そのため、除去部33上における第2絶縁膜22表面の段差形成が抑えられ、第2絶縁膜22表面を研磨した際にかかる除去部33の角部における圧力集中が第1絶縁膜21を膜厚方向に完全にカットした状態よりも少なくなっているので第2絶縁膜22の剥がれが抑制されている。
さらに研磨によって除去部33が形成されていることから、第1絶縁膜21の主表面よりも除去部33の被研磨面のほうが表面粗さを粗く形成することができる。上記の場合、中心線平均粗さRaで、5nm以上100nm以下に形成されていることが好ましい。これによっても、第1絶縁膜21と第2絶縁膜22との接触面積を大きくとることができるとともに、表面粗さによるアンカー効果によって、第1絶縁膜21に対する第2絶縁膜22の密着性を高めることができる。したがって、第1絶縁膜21に対する第2絶縁膜2の剥がれが抑制される。
さらに、研磨により被研磨面が活性化されるので、第1絶縁膜21の除去部33に対する第2絶縁膜22の密着性が高められる。例えば、上記研磨によって形成される除去部33は、SiOC系の膜では膜表面のダングリングボンドを研磨液の水酸基(OH基)に置換してダングリングボンドを水酸基(OH基)で終端させることができる。このような状態で、水酸基(OH基)の水素(H)をシリコン(Si)に置換して酸化シリコン系の第2絶縁膜22を成膜することで、第1絶縁膜21と第2絶縁膜22との密着性が強固になる。この結果、第1絶縁膜21に対する第2絶縁膜22の密着性を周辺部において高めることができる。したがって、第1絶縁膜21に対する第2絶縁膜22の剥がれが抑制される。
以上のような理由から、第2絶縁膜22を形成した後に、例えばCMP工程を行って、第1、第2絶縁膜21、22間に第1絶縁膜21表面と略平行な方向の荷重がかかったとしても、第1絶縁膜21より第2絶縁膜22が剥がれるということが防止できるという利点がある。特に、膜剥がれが発生しやすい膜周辺部の密着性が高められているので、膜剥がれの防止には効果的である。したがって、歩留りの向上が図れるとともに、絶縁膜の信頼性の向上が図れる。
また、上記除去部33は、チップが存在しない領域に形成されるので、チップ特性の劣化は生じないという利点もある。
さらに、上記半導体装置では、除去部33の被研磨面を傾斜面で形成することも可能である。
次に、本発明の半導体装置の製造方法(第1の製造方法)に係る一実施の形態の実施例を、図2の製造工程断面図によって説明する。この製造方法は、前記図1によって説明した半導体装置を製造する方法の一例である。
図2(1)に示すように、基板11上に絶縁膜12を形成する。上記基板11には、例えばシリコン基板が用いられる。また上記絶縁膜12は、酸化シリコン膜からなり、例えば500nmの厚さに形成されている。その成膜方法は、例えばプラズマCVD法による。次に、上記絶縁膜12上に第1絶縁膜21を形成する。ここでは第1絶縁膜21は炭化酸化シリコン(SiOC)膜で形成する。なお、SiOC膜の他に、SiOC膜中に窒素もしくは水素が含まれた膜で形成することも可能である。上記第1絶縁膜21は、例えば1000nmの厚さに成膜する。上記絶縁膜12および第1絶縁膜21の成膜には、一例として、平行平板型プラズマCVD装置を用い、その際使用するガスとしては、どちらもシリコン源としてメチルシランを用いた。また成膜条件としては基板温度を300℃〜400℃に設定し、プラズマパワーを150W〜350W、成膜雰囲気の圧力を100Pa〜1000Pa程度に設定する。
次に、上記第1絶縁膜21の周辺部(例えばウエハ外周から5mm以内の範囲)上に研磨処理を施す。この研磨処理方法は、上記基板11を回転させながら、上記第1絶縁膜21の周辺部上を研磨して、除去部33を形成する。
このような研磨を行う研磨装置としては、回転するウエハの周辺部に研磨パッドを押圧するとともにウエハの被研磨面にスラリーを供給する構成の研磨装置を用いた。このような研磨装置の一例として、特開2004-142031号公報に開示された研磨装置がある。
上記研磨の研磨条件の一例としては、研磨圧力を20.7kPa、ウエハ回転数を200rpmに設定し、スラリーとして水酸化カリウム(KOH)ベースのシリカスラリーを単独で用いた。このようなスラリーの一例としては、Cabot社製のSS−25が挙げられる。もしくは、スラリーとして水酸化カリウム(KOH)ベースのシリカスラリーに平均粒径が0.3μmのアルミナ(Al2O3)粉末を水酸化カリウム(KOH)水溶液に混合して懸濁させたものを用いて研磨を行った。
研磨面の粗さは上記シリカスラリーとアルミナ粉末との混合比を変えることで制御することができる。例えば、シリカスラリーを多くすると表面粗さは小さくなり、アルミナ粉末を多くすると表面粗さは大きくなる傾向にある。また、研磨面の粗さ(中心線平均粗さ:Ra)は、AFM装置(原子間力顕微鏡:Atomic Force Microscope)により100μm四方の領域を測定して求めた。この研磨では、研磨量がほぼ200nmとなるように、エッジカットそれぞれの研磨による表面粗さRaについて、研磨時間を最適化した。この研磨量は深くなりすぎると、研磨によって形成された除去部33の段差が大きくなりすぎて好ましくない。したがって、この研磨量は第2絶縁膜22表面に段差を生じない程度とすることが好ましい。そのような研磨量としては、例えば200nm以内とすることが好ましい。また研磨幅は、研磨パッドをウエハの半径方向に往復させることで制御した。
さらに、上記研磨では、上記第1絶縁膜21の周辺部における被研磨面の中心線平均粗さRaを5nm以上100nm以下になるように、研磨条件を制御した。上記中心線平均粗さが5nmよりも小さいと表面を荒らしたことによるアンカー効果が十分に得られない。また上記中心線平均粗さが100nmよりも大きくなると、上層に形成される第2絶縁膜21の表面にその粗さが転写されやすくなり、好ましくない。したがって、中心線平均粗さが5nm以上100nm以下になるようにした。これによって、ウエハ周辺部の第1絶縁膜21表面の研磨効果とともに、CMP時の剥がれ抑制効果を増すことができる。
そして、研磨後、純水を用いたブラシ洗浄によりウエハ周辺部を洗浄し、除去部33のスラリー残りを除去した。
この結果、上記第1絶縁膜21の周辺部には第1絶縁膜21主表面より活性化されかつ表面粗さが粗くなっている除去部33が環状に形成される。上記活性化は、例えば、SiOC系の膜では膜表面のダングリングボンドを研磨液中の水酸基(OH基)に置換してダングリングボンドを水酸基(OH基)で終端することでなされる。
次に、図2(2)に示すように、第1絶縁膜21を被覆するように第2絶縁膜22を形成する。この第2絶縁膜22は、例えば酸化シリコン(SiO2)膜で形成され、その成膜方法としては、プラズマCVD法を採用することができる。その際、研磨により除去部33が活性化されていることから、水酸基(OH基)の水素(H)がシリコン(Si)に置換されて酸化シリコン系の第2絶縁膜22を成膜することになるので、第1絶縁膜21と第2絶縁膜22との密着性が強固になる。このことから、第1絶縁膜21に対する第2絶縁膜22の密着性を周辺部において高めることができる。
上記第1〜第2絶縁膜21〜22に溝配線およびビアを形成する場合には、上記第1絶縁膜21の周辺部分の研磨を行い、第2絶縁膜22を形成した後に、例えば配線溝、ビアホール等のパターニングを行えばよい。また、溝配線とビアとを同時形成する、いわゆるデュアルダマシン構造の絶縁膜についても、本発明の構成を用いることができる。例えば、第1絶縁膜21に配線間の接続を行う接続部(ビア)が形成され、第2絶縁膜22に溝配線が形成される。溝配線とビアとを同時形成する技術については、多くの公知例があり、例えば特開2001−44189号公報などに詳細な記述がある。これらの公知技術の絶縁膜についても、本発明の如く、ビアが形成される第1絶縁膜21の周辺部に対する研磨処理を実施して除去部33を形成し、溝配線が形成される第2絶縁膜22を形成する構成を採用することができる。
上記第1の製造方法では、基板11の製品となるチップが存在しない領域上における第1絶縁膜21表面に、研磨により除去部33を形成することから、除去部33を形成しないで第2絶縁膜22が形成されているものよりも、除去部33での第2絶縁膜22の面内方向の固定力が高められるので、第1絶縁膜21に対する第2絶縁膜22の剥がれが抑制される。しかも、除去部33を第1絶縁膜21の膜厚方向にみると途中まで形成する、すなわち、除去部33底部(被研磨面)には第1絶縁膜21が残されているので、第1絶縁膜21表面に対して除去部33の段差が大きくなりすぎることはない。そのため、除去部33上における第2絶縁膜22表面の段差形成が抑えられ、第2絶縁膜22表面を研磨した際にかかる除去部33の角部における圧力集中が第1絶縁膜21を膜厚方向に完全にカットした状態よりも少なくなり第2絶縁膜22の剥がれが抑制される。しかも研磨によって除去部33を形成することから、第1絶縁膜21表面よりも除去部33の被研磨面のほうが表面粗さを粗く形成することができる。これによっても、第1絶縁膜21と第2絶縁膜22との接触面積を大きくとることができるので、第1絶縁膜21に対する第2絶縁膜22の剥がれが抑制される。さらに、研磨により形成された除去部33の被研磨面が活性化されるので、第1絶縁膜21の除去部33に対する第2絶縁膜22の密着性が高められる。これによっても第1絶縁膜21に対する第2絶縁膜22の剥がれが抑制される。また、上記除去部33を、チップが存在しない領域に形成するので、チップ特性の劣化は生じない。
次に、本発明の効果を確認した。その方法は、前記図1に示したように、基板11上に上記第1〜第2絶縁膜21〜22を形成した発明サンプルを用意し、発明サンプルの第2絶縁膜22に対してCMPを行った。また、発明サンプルと比較するものとして、図3に示すように、基板11上に形成された絶縁膜12上に第1絶縁膜21を形成し、その第1絶縁膜21に研磨処理を施さない(除去部を形成しない)で第1絶縁膜21上に第2絶縁膜22を形成した比較サンプルを用意した。
次に、上記発明サンプルおよび比較サンプルのそれぞれの第2絶縁膜22をCMPした。このCMPでは、研磨パッドに、例えば上層が発泡ポリウレタン製で下層がPET(ポリエチレンテレフタレート)製のものを用いた。このような研磨パッドとしては、一例として、上層がロデール社製の厚さ1.2mmのIC1000で下層が同社製の厚さ1.2mmのSUBA400よりなる積層された研磨パッドがある。研磨液(研磨スラリー)には、一例として、アルカリ溶媒に分散したコロイダルシリカに酸化剤として過酸化水素水(H2O2)を添加したものを用いる。例えばJSR社製のCMS8301がある。上記研磨液の供給流量を例えば150ml/minとして、研磨パッドの回転数を例えば100rpm、ウエハ(基板)回転数を例えば110rpm、研磨圧力を例えば300g/cm2、研磨時間を例えば60secとした。これにより、第2絶縁膜22のSiO2膜の表層およそ70nmの厚さが除去された。
上記研磨は、発明サンプルおよび比較サンプルの両方に対して同条件にて行った。発明サンプルについては、被研磨面の中心線平均粗さを変化させた複数のサンプルを用意した。
研磨後、絶縁膜の周辺部を顕微鏡により観察し、第1絶縁膜21に対する第2絶縁膜の剥がれ状態を観察した。上記発明サンプルの結果を実施例1、上記比較サンプルの結果を比較例1とする。
剥がれの検査は顕微鏡により実施した。結果を表1に示す。表1に示す、◎印が剥がれ無し,○印が0.%以上〜2%未満の領域で剥がれあり、△印が2%以上〜20%未満の領域で剥がれあり、×印が20%以上の領域で剥がれあり、の4段階で評価した。今回、20%を境界にした理由は、経験的に20%以上の剥がれは、剥がれの再現性が良く、本質的なものであると考えられるためである。実際に剥がれを観察すると、「剥がれ無し」、「ほぼ剥がれないが、1%程度剥がれる」、「5%〜10%程度で剥がれる」、「ほぼすべての領域で剥がれる」の4段階にはっきりと分かれて観察され、◎、○、△、×の差は、はっきりした違いとして認められた。
表1に示すように、研磨幅が1mmで研磨による表面粗さRaが5nm以上100nm以下であれば、剥がれは発生していなかった。一方、研磨幅が1mmで研磨による表面粗さRaが3nmでは、ほぼ剥がれないが、1%程度の剥がれが発生していた。このように、表面粗さRaが3nmで、1%程度ではあるが剥がれが発生したのは、研磨による密着性改善効果が十分に発揮できていないためと考えられる。また、研磨幅が1mmで表面粗さRaが200nmでも、ほぼ剥がれないが、1%程度の剥がれが発生していた。このように、研磨による表面粗さRaが200nmで、1%程度ではあるが剥がれが発生したのは、第2絶縁膜22の表面にこの表面粗さが転写され、その部分が研磨パッドの横方向(研磨面に平行な方向)の圧力を受け易くなったためと考えられる。また、さらに研磨による表面粗さRaが20nmで研磨幅が0.1mm、0.3mmでは、ほぼ剥がれないが、1%程度の剥がれが発生していた。このように、研磨幅が0.1mm、0.3mmで、1%程度ではあるが剥がれが発生したのは、研磨面積が少ないために密着性改善効果が十分に発揮できていないためと考えられる。さらに研磨による表面粗さRaが20nmで研磨幅が0.5mm以上であれば、剥がれは発生していなかった。ここで研磨幅は10mmでも密着性改善効果は十分に得られるが、チップ作製可能領域を広く取るためには研磨幅は5mm以下が望ましい。
一方、比較例についてみると、ウエハ周辺部から5mmよりも内側(ウエハの中心側)に剥がれが及んでいた。これに対し、本実施例では、研磨を実施していないウエハ周辺部から内側の部分での剥がれも見つからなかった。このように、密着性を改善したウエハ周辺部より外側だけでなく、密着性改善処理を行っていないウエハ周辺部より内側の部分に対しても、剥がれが効果的に抑制されることがわかった。これは、元々密着性が弱かったSiO2/SiOC界面において、研磨により、ウエハ周辺部のSiO2/SiOC界面の密着性が高められ、CMP時に圧力が集中するウエハ周辺部が剥がれにくくなり、それによってウエハ面内が保護されたものと考えられる。
以上の研磨結果より、研磨による表面粗さRaは5nm以上100nm以下が好ましく、研磨幅は0.5mm以上5.0mm以下が好ましいことがわかる。
なお、上記半導体装置では、除去部33の被研磨面を傾斜面で形成することも可能である。
次に、本発明の第2の半導体装置に係る一実施の形態の実施例を、図4の概略構成断面図によって説明する。
図4に示すように、図示はしないトランジスタ、配線等が形成された基板(ウエハ)11上に絶縁膜12が形成されている。上記基板11には、例えばシリコン基板が用いられる。また上記絶縁膜12は、酸化シリコン膜からなり、例えば500nmの厚さに形成されている。上記絶縁膜12上には配線層間の絶縁膜を構成する第1絶縁膜21が形成されている。ここでは第1絶縁膜21は炭化酸化シリコン(SiOC)膜で形成されている。また、SiOC膜中に窒素もしくは水素が含まれた膜であってもよい。上記第1絶縁膜21は、例えばプラズマCVD法により成膜され、例えば1000nmの厚さを有する。
そして製品となるチップが形成されていない領域内の上記第1絶縁膜21の周辺部は除去されている。いわゆる、第1絶縁膜21のエッジカットが施されている。そして製品となるチップが形成されていない領域内で上記第1絶縁膜21の周辺部上は傾斜面34に形成されている。この傾斜面34は、ウエハ中心より半径方向にウエハ周辺部に向かってウエハ厚が薄くなるように形成されている。その傾斜は、50nm/mm以上5μm/mm以下となっている。上記傾斜面34は、一例として研磨処理により形成されている。
上記研磨処理領域における傾斜面34について説明する。この傾斜面34は、50nm/mm以上5μm/mm以下となっている。上記傾斜が5μm/mmよりも小さいと傾斜を形成した効果が十分に得られない。すなわち、CMP時のウエハ周辺部への圧力集中が抑制される効果が十分に得られない。また上記傾斜が50μm/mmよりも大きくなると、CMP時のウエハ周辺部への圧力集中が傾斜部に集中しやすくなり、好ましくない。したがって、上記傾斜は5μm/mm以上50μm/mm以下となるようにした。これによって、ウエハ周辺部の第1絶縁膜21表面の研磨効果とともに、CMP時の剥がれ抑制効果を増すことができる。なお、傾斜面34の端辺は、研磨の特性上、丸みが形成されることがあるが、本発明の作用効果を考慮すると、丸みが形成されたほうが圧力集中を避ける点でさらに好ましい。
また、上記第1絶縁膜21を被覆するように第2絶縁膜22が形成されている。この第2絶縁膜22は、例えば酸化シリコン(SiO2)膜で形成されている。この第2絶縁膜21の膜厚は、例えば300nmに形成されている。
上記第2の半導体装置2では、傾斜面34が第1絶縁膜21の膜厚が外周側に向かって薄くなるように形成されているので、エッジカットがなされた第1絶縁膜21の角部における圧力集中が緩和されるため、第2絶縁膜22の剥がれが抑制される。また、第1絶縁膜21に傾斜面34が形成されることで第2絶縁膜22との接触面積が増大し、密着性が高められる。さらに第2絶縁膜22表面を研磨したときの第1絶縁膜21表面の面内方向に働く力が分散され、第1絶縁膜21に対する第2絶縁膜22の剥がれの抑制に繋がる。また、上記傾斜面34が研磨によって形成されることにより、第1絶縁膜21表面よりも傾斜面34のほうが表面粗さを粗く形成することができる。これによっても、第1絶縁膜21と第2絶縁膜22との接触面積を大きくとることができるので、第1絶縁膜21に対する第2絶縁膜22の剥がれが抑制される。さらに、研磨により被研磨面が活性化されるので、第1絶縁膜21に対する第2絶縁膜22の密着性が高められる。これによっても第1絶縁膜21に対する第2絶縁膜22の剥がれが抑制される。また、上記傾斜面34は、チップが存在しない領域に形成されるので、チップ特性の劣化は生じない。
さらに研磨によって傾斜面34が形成されていることから、第1絶縁膜21の主表面よりも傾斜面34の被研磨面のほうが表面粗さを粗く形成することができる。上記の場合、中心線平均粗さRaで、5nm以上100nm以下に形成されている。これによっても、第1絶縁膜21と第2絶縁膜22との接触面積を大きくとることができるとともに、表面粗さによるアンカー効果によって、第1絶縁膜21に対する第2絶縁膜22の密着性を高めることができる。これによって第1絶縁膜21に対する第2絶縁膜2の剥がれが抑制される。
さらに、研磨により被研磨面が活性化されるので、第1絶縁膜21の傾斜面34に対する第2絶縁膜22の密着性が高められる。例えば、上記研磨によって形成される傾斜面34は、SiOC系の膜では膜表面のダングリングボンドを研磨液の水酸基(OH基)に置換してダングリングボンドを水酸基(OH基)で終端することができる。このような状態で、水酸基(OH基)の水素(H)をシリコン(Si)に置換して酸化シリコン系の第2絶縁膜22を成膜することで、第1絶縁膜21と第2絶縁膜22との密着性が強固になる。したがって、第1絶縁膜21に対する第2絶縁膜22の密着性を周辺部において高めることができる。これによっても第1絶縁膜21に対する第2絶縁膜22の剥がれが抑制される。
以上のような理由から、第2絶縁膜22を形成した後に、例えばCMP工程を行って、第1、第2絶縁膜21、22間に第1絶縁膜21表面と略平行な方向の荷重がかかったとしても、第1絶縁膜21より第2絶縁膜22が剥がれるということが防止できるという利点がある。特に、膜剥がれが発生しやすい膜周辺部の密着性が高められているので、膜剥がれの防止には効果的である。したがって、歩留りの向上が図れるとともに、絶縁膜の信頼性の向上が図れる。
また、上記傾斜面34は、チップが存在しない領域に形成されるので、チップ特性の劣化は生じないという利点もある。
次に、本発明の半導体装置の製造方法(第2の製造方法)に係る一実施の形態の実施例を、図5の製造工程断面図によって説明する。この製造方法は、前記図4によって説明した半導体装置を製造する方法の一例である。
図5(1)に示すように、基板11上に絶縁膜12を形成する。上記基板11には、例えばシリコン基板が用いられる。また上記絶縁膜12は、酸化シリコン膜からなり、例えば500nmの厚さに形成されている。その成膜方法は、例えばプラズマCVD法による。
次に、図5(2)に示すように、上記絶縁膜12上に第1絶縁膜21を形成する。ここでは第1絶縁膜21はSiOC膜で形成する。なお、SiOC膜の他に、SiOC膜中に窒素もしくは水素が含まれた膜で形成することも可能である。上記第1絶縁膜21は、例えば1000nmの厚さに成膜する。上記絶縁膜12および第1絶縁膜21の成膜には、一例として、平行平板型プラズマCVD装置を用い、その際使用するガスとしては、どちらもシリコン源としてメチルシランを用いた。また成膜条件としては基板温度を300℃〜400℃に設定し、プラズマパワーを150W〜350W、成膜雰囲気の圧力を100Pa〜1000Pa程度に設定する。
次に、図6(3)に示すように、上記第1絶縁膜21の周辺部(例えばウエハ外周から5mm以内の範囲)を除去する。いわゆる、エッジカットを行う。このエッジカット方法は、図示はしないが、第1絶縁膜21上にレジスト膜を形成した後、そのレジスト膜の周辺部(エッジカットする領域上)を露光し、現像した後、そのレジスト膜をエッチングマスクに用いてエッチング加工により第1絶縁膜21のエッジカットを行う方法を採用することができる。または、上記第1絶縁膜21が薬液により選択的に溶解することが可能な材料で形成されている場合には、ウエハを回転させながら薬液を第1絶縁膜21のエッジカットする領域上に供給することで除去加工する、いわゆるエッジリンス法を採用することができる。今回は、第1絶縁膜21がSiOC膜で形成されているので、前者の方法を用いた。なお、第1絶縁膜21が有機系の塗布膜で形成されている場合には、後者のエッジリンス法を用いる方が工程を削減できるという利点がある。
次に、図6(4)に示すように、上記第1絶縁膜21の周辺部(例えばウエハ外周から5mm以内の範囲)上に傾斜を形成する処理を施す。この傾斜面の形成方法は、上記基板11を回転させながら、上記第1絶縁膜21の周辺部上を研磨することによる。
このような研磨を行う研磨装置としては、回転するウエハの周辺部に所定の傾斜面を形成するように研磨パッドを傾斜させ、かつ所定の研磨幅が得られるように研磨パッドを揺動させながら被加工物側に押圧するとともにウエハの被研磨面にスラリーを供給する構成の研磨装置を用いた。このような研磨装置の一例として、特開2004-142031号公報に開示された研磨装置がある。
上記研磨の研磨条件の一例としては、研磨圧力を20.7kPa、ウエハ回転数を200rpmに設定し、スラリーとして水酸化カリウム(KOH)ベースのシリカスラリーを単独で用いた。このようなスラリーの一例としては、Cabot社製のSS−25が挙げられる。もしくは、スラリーとして水酸化カリウム(KOH)ベースのシリカスラリーに平均粒径が0.3μmのアルミナ(Al2O3)粉末を水酸化カリウム(KOH)水溶液に混合して懸濁させたものを用いることもできる。要するに、上記スラリーは、第1絶縁膜21を研磨することができるスラリーであればよい。
研磨面に形成された傾斜面の測定には、AFM装置(原子間力顕微鏡:Atomic Force Microscope)を用いた。AFM装置では、エッジカット位置から1.000mm内側までのプロファイルを測定し、1.000mmでの傾きを基準として、エッジカット位置から100μm内側の平均傾きを計算して求めた。研磨パッドの揺動幅は研磨後の傾斜面34の傾きを見ながら研磨条件で所望の値になるように調整した。
そして、研磨後、純水を用いたブラシ洗浄によりウエハ周辺部を洗浄し、傾斜面34のスラリー残りを除去した。
この結果、上記第1絶縁膜21の周辺部においては、第1絶縁膜21の周辺部にウエハ中心より半径方向にウエハ周辺部に向かうにしたがって第1絶縁膜21の膜厚が薄くなるような傾斜面34が形成され、この傾斜面34は、第1絶縁膜21主表面より活性化されかつ表面粗さが粗くなっている状態で環状に形成される。上記活性化は、例えば、SiOC系の膜では膜表面のダングリングボンドを研磨液の水酸基(OH基)に置換してダングリングボンドを水酸基(OH基)で終端することでなされる。
次に、図7(5)に示すように、第1絶縁膜21を被覆するように第2絶縁膜22を形成する。この第2絶縁膜22は、例えば酸化シリコン(SiO2)膜で形成され、その成膜方法としては、プラズマCVD法を採用することができる。
なお、エッジカットの形成工程と傾斜面を形成する研磨工程との順序は逆にしてもよいが、エッジカット工程後に研磨工程を行うほうが、エッジカット部がなだらかに形成される利点がある。
上記第1〜第2絶縁膜21〜22に溝配線およびビアを形成する場合には、上記第1絶縁膜21の周辺部分の研磨を行い、第2絶縁膜22を形成した後に、例えば配線溝、ビアホール等のパターニングを行えばよい。また、溝配線とビアとを同時形成する、いわゆるデュアルダマシン構造の絶縁膜についても、本発明の構成を用いることができる。例えば、第1絶縁膜21に配線間の接続を行う接続部(ビア)が形成され、第2絶縁膜22に溝配線が形成される。溝配線とビアとを同時形成する技術については、多くの公知例があり、例えば特開2001−44189号公報などに詳細な記述がある。これらの公知技術の絶縁膜についても、本発明の如く、ビアが形成される第1絶縁膜21の周辺部に対する研磨処理を実施して、溝配線が形成される第2絶縁膜22を形成する構成を採用することができる。
本発明の半導体装置の第2の製造方法は、傾斜面34を第1絶縁膜21の膜厚が外周側に向かって薄くなるように形成するので、エッジカットがなされた第1絶縁膜21の角部における圧力集中が緩和できるため、第2絶縁膜22の剥がれを抑制することができる。また、第1絶縁膜21に傾斜面34を形成することで第2絶縁膜22との接触面積を増大させることができ、密着性を高めることができる。さらに第2絶縁膜22表面を研磨したときの第1絶縁膜21表面の面内方向に働く力が分散され、第1絶縁膜21に対する第2絶縁膜22の剥がれの抑制に繋がる。また、上記傾斜面34を研磨によって形成することによって、前記第1の製造方法と同様に、被研磨面の表面積の増加により、また活性化により、第1絶縁膜21に対する第2絶縁膜22の密着性を高めることができるので、この点からも第2絶縁膜22の剥がれを抑制することができる。また、上記傾斜面34をチップが存在しない領域に形成するので、チップ特性の劣化は生じないという利点がある。したがって、チップ特性を劣化させずに第2絶縁膜22の剥がれを抑制できるので、配線信頼性の向上、半導体装置の歩留りの向上が図れるという利点がある。
次に、本発明の効果を確認した。その方法は、前記図4に示したように、基板11上に上記第1〜第2絶縁膜21〜22を形成した発明サンプルを用意し、発明サンプルの第2絶縁膜22に対してCMPを行った。また、発明サンプルと比較するものとして、図8に示すように、基板11上に形成された絶縁膜12上に第1絶縁膜21を形成し、第1絶縁膜21の周辺部をエッジカットし、その第1絶縁膜21に研磨処理を施さないで第1絶縁膜21上に第2絶縁膜22を形成した比較サンプルを用意した。
次に、上記発明サンプルおよび比較サンプルのそれぞれの第2絶縁膜22をCMPした。このCMPでは、研磨パッドに、例えば上層が発泡ポリウレタン製で下層がPET(ポリエチレンテレフタレート)製のものを用いた。このような研磨パッドとしては、一例として、上層がロデール社製の厚さ1.2mmのIC1000で下層が同社製の厚さ1.2mmのSUBA400よりなる積層された研磨パッドがある。研磨液(研磨スラリー)には、一例として、アルカリ溶媒に分散したコロイダルシリカに酸化剤として過酸化水素水(H2O2)を添加したものを用いる。例えばJSR社製のCMS8301がある。上記研磨液の供給流量を例えば150ml/minとして、研磨パッドの回転数を例えば100rpm、ウエハ(基板)回転数を例えば110rpm、研磨圧力を例えば300g/cm2、研磨時間を例えば60secとした。これにより、第2絶縁膜22のSiO2膜の表層およそ70nmの厚さが除去された。
上記研磨は、発明サンプルおよび比較サンプルの両方に対して同条件にて行った。発明サンプルについては、被研磨面の中心線平均粗さを変化させた複数のサンプルを用意した。
研磨後、絶縁膜の周辺部を顕微鏡により観察し、第1絶縁膜21に対する第2絶縁膜の剥がれ状態を観察した。上記発明サンプルの結果を実施例2、上記比較サンプルの結果を比較例2とする。
剥がれの検査は顕微鏡により実施した。結果を表1に示す。表1に示す、◎印が剥がれ無し,○印が0.%以上〜2%未満の領域で剥がれあり、△印が2%以上〜20%未満の領域で剥がれあり、×印が20%以上の領域で剥がれあり、の4段階で評価した。今回、20%を境界にした理由は、経験的に20%以上の剥がれは、剥がれの再現性が良く、本質的なものであると考えられるためである。実際に剥がれを観察すると、「剥がれ無し」、「ほぼ剥がれないが、1%程度剥がれる」、「5%〜10%程度で剥がれる」、「ほぼすべての領域で剥がれる」の4段階にはっきりと分かれて観察され、◎、○、△、×の差は、はっきりした違いとして認められた。
表2に示すように、研磨幅が1mm、研磨による表面粗さRaが3nmで、研磨後の傾斜面の傾きが50nm/mm以上5000nm/mm以下であれば、剥がれは発生していなかった。一方、研磨幅が1mm、研磨による表面粗さRaが3nmで、研磨後の傾斜面の傾きが50nm/mm未満もしくは、研磨幅が1mm、研磨による表面粗さRaが3nmで、研磨後の傾斜面の傾きが5000nm/mmよりも大きい場合には、ほぼ剥がれないが、1%程度の剥がれが発生していた。このように、研磨後の傾斜面の傾きが50nm/mm未満の場合に、1%程度ではあるが剥がれが発生したのは、傾斜面による密着性改善効果が十分に発揮できていないためと考えられる。また、研磨後の傾斜面の傾きが5000nm/mm=5μm/mmよりも大きい場合でも、ほぼ剥がれないが、研磨後の傾斜面の傾きが10000nm/mmの場合に、1%程度ではあるが剥がれが発生したのは、傾斜面が急峻なために、研磨パッドの変形が追随できず、結果として、第2絶縁膜の上面から傾斜面となる境界部に圧力が集中する結果となり、傾斜面による密着性改善効果が十分に発揮できていないためと考えられる。また、さらに研磨による表面粗さRaが3nmで研磨幅が0.3mmでは、ほぼ剥がれないが、1%程度の剥がれが発生していた。このように、研磨幅が0.3mmで、1%程度ではあるが剥がれが発生したのは、研磨面積が少ないために密着性改善効果が十分に発揮できていないためと考えられる。さらに研磨による表面粗さRaが3nmで研磨幅が0.5mm以上であれば、剥がれは発生していなかった。ここで研磨幅は大きいほど密着性改善効果は十分に得られるが、チップ作製可能領域を広く取るためには、研磨幅はエッジカット幅と合わせて5mm以下とすることが望ましい。
一方、比較例についてみると、ウエハ周辺部から5mmよりも内側(ウエハの中心側)に剥がれが及んでいた。これに対し、本実施例では、研磨を実施していないウエハ周辺部から内側の部分での剥がれも見つからなかった。このように、密着性を改善したウエハ周辺部より外側だけでなく、密着性改善処理を行っていないウエハ周辺部より内側の部分に対しても、剥がれが効果的に抑制されることがわかった。これは、元々密着性が弱かったSiO2/SiOC界面において、研磨により、ウエハ周辺部のSiO2/SiOC界面の密着性が高められ、CMP時に圧力が集中するウエハ周辺部が剥がれにくくなり、それによってウエハ面内が保護されたものと考えられる。
以上の研磨結果より、第1絶縁膜21に形成される傾斜面34は50nm/mm以上5μm/mm以下の傾斜を持つように形成することが好ましい。
以上、説明したように、本発明の半導体装置およびその製造方法によれば、第1絶縁膜21と第2絶縁膜22との密着性が高められるので、その第2絶縁膜22および第1絶縁膜21に形成される配線構造(例えば配線と配線に接続されて形成されたプラグ)の信頼性が向上するので、半導体装置の信頼性の向上が図れる。
また、本発明の半導体装置およびその製造方法では、第2絶縁膜22が有機膜であっても上記無機膜を用いた場合と同様なる効果が期待できる。
さらに、本発明の半導体装置およびその製造方法では、第1絶縁膜21の周辺部に除去部33もしくは傾斜面34を形成すること、研磨により所定の表面粗さを創生すること、活性化を行うこと等による複合的な効果により、第1絶縁膜21の周辺部における第2絶縁膜22との密着性を高めていることに特徴がある。