JP2007133120A - カラーフィルター用インキ組成物、並びにこのインキ組成物を用いて得たカラーフィルター硬化膜及びカラーフィルター - Google Patents
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Abstract
Description
本発明は、印刷法によってカラーフィルターを作製するのに適したカラーフィルター用インキ組成物、並びにこのインキ組成物を用いて得たカラーフィルター硬化膜、及びカラーフィルターに関する。
カラー液晶表示装置に使われるカラーフィルターのこれまでの製造方法としては、感光性樹脂に光重合開始剤、各種添加剤、及び赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の各着色剤を加えた後、溶剤によって調製したカラーレジストを塗布し乾燥後、一連の工程により画素パターンをフォトリソ法により形成したものが主流である。しかしながら、近時のマザーガラスの大型化に伴い、従来のフォトリソ法によるカラーフィルターの製造方法では、塗布工程などの各工程に於いて技術的な問題点が生じ始めている。
例えば、これまでスピンコートを用いた塗工方法が主に用いられているが、ガラス基板であるマザーガラスが大きくなるにつれてスピンコートで塗布することは技術的に困難になりつつあり、代わりにスリットコータを用いた塗工方法が採用されている。ところが、スリットコータを用いた塗工方法でもマザーガラスの全面に均一な塗膜を形成することが難しく、特に次世代の8Gクラスといった大型化のマザーガラスではこの問題はより一層顕著になる。また、フォトリソ法では3色ごとの処理が必要となることから、工程数が嵩んでコスト高となってしまう問題がある。そのため、フォトリソ法とは別の画素形成手段が望まれている。
そこで、フォトリソ法に代わるカラーフィルターの製造方法として、例えば特許文献1に開示されているような印刷法を用いた画像形成が行われている。この印刷法によれば、大型化が進むマザーガラスにおける塗膜の均一性の問題やコスト面での問題等を解決することができる。そして、印刷法において使用されるインキについては、ガラス基板との密着性を改善させるために、樹脂主成分としてポリエステルアクリレート系樹脂を使用したもの(特許文献2参照)、印刷パターンの精度や形状を向上させるために、インキ組成物に炭化水素系溶剤を含有させて粘度を所定の値以下にしたもの(特許文献3参照)、印刷画像をより正確に形成するために、インキ組成物中に速乾性有機溶剤と遅乾性有機溶剤とを含有させたもの(特許文献4参照)等が提案されている。
ところで、ブラウン管よりも良好な画像を液晶表示装置で実現するためには、液晶表示装置のカラーフィルターがより大きなNTSC比を達成できることが求められているが、それにはカラーフィルター用のインキ組成物により多くの顔料を含有させる必要がある。しかしながら、インキ組成物における顔料の含有量が増加すると、相対的に樹脂の量が減少してしまうことから、樹脂の架橋度が不足して硬化膜を通して液晶の駆動を阻害する不純物が浸出し、液晶の電圧保持率が低下してしまうという問題が生じる。
特開平11−58921号公報
特開平5−320553号公報
特開2005−54104号公報
特開2005−128346号公報
本発明は、カラーフィルターの製造において、大型化が進むガラス基板に対して画素パターンを形成するのに適していると共に、低コスト化及び量産化が可能な印刷法に用いるインキ組成物について、硬化性に優れて、大きなNTSC比を達成すべく顔料を高濃度で含有しても液晶側への不純物の浸出を防いで高い電圧保持率を維持することができるカラーフィルター用インキ組成物、並びにこのインキ組成物を用いて得たカラーフィルター硬化膜及びカラーフィルターを提供することを目的とする。
本発明者らは、大きなNTSC比を達成すべく顔料を高濃度で含有しても、液晶側への不純物の浸出を阻止することが可能な硬化性に優れたインキ組成物について鋭意検討した結果、多官能エポキシ化合物と酸無水物系のエポキシ硬化剤とを用い、更に特定の不飽和化合物を含有させたインキ組成物とすることで、発達した硬化ネットワークを形成することができることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、溶剤中に、多官能エポキシ化合物(A)、下記一般式(1)で表される不飽和化合物(B)、酸無水物系エポキシ硬化剤(C)、及び顔料(D)を必須成分として含有して印刷法によりカラーフィルターを作製するために用いられるインキ組成物であって、上記(A)成分と(B)成分の重量の比率(A)/(B)が10/90〜90/10の範囲であり、多官能エポキシ化合物(A)は、(A)成分中の50重量%以上が一分子中に3以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物からなり、かつ、(A)成分100重量部に対して(C)成分が0.1〜100重量部の割合で配合されていることを特徴とするカラーフィルター用インキ組成物である。
〔式中、R1、R2、R3、及びR4は、独立に水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、ハロゲン原子又はフェニル基を示し、R5は水素原子又はメチル基を示す。また、Aは-CO-、-SO2-、-C(CF3)2-、-Si(CH3)2-、-CH2-、-C(CH3)2-、-O-、9,9-フルオレニル基又は直結合を示し、Xは4価のカルボン酸残基を示し、Y1、及びY2は独立に水素原子又は-OC-Z-(COOH)mであり、このうちZはカルボン酸残基(mは1〜3の数を示す)を示す。更にnは1〜200の数を示す。〕
本発明において、多官能エポキシ化合物(A)は、(A)成分中の50重量%以上が一分子中に3以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物からなる。ここで、多官能とは2以上のエポキシ基を有することを意味し、例えばフェノールノボラック型エポキシ、クレゾールノボラック型エポキシなどのノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ、ビスフェノールF型エポキシなどのビス型エポキシ樹脂やビフェニル型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂等を代表的なものとして例示することができる。本発明における多官能エポキシ化合物(A)は、これらの多官能のエポキシ化合物からなり、その50重量%以上が3以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物からなる必要がある。3以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物としては、好ましくはノボラック型エポキシ樹脂であるのがよい。3以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物が50重量%に満たないと硬化が不十分となって、液晶の駆動を阻害する不純物が液晶へ浸出して液晶の電圧保持率が低下するおそれがある。
また、本発明におけるインキ組成物は、上記一般式(1)で表される不飽和化合物(B)を樹脂の構成成分として含有する。この(B)成分は、ビスフェノール類から誘導される2個のグリシジルエーテル基を有するエポキシ化合物に(メタ)アクリル酸を反応させ、得られたヒドロキシ基を有する化合物に、多塩基酸であるジカルボン酸又はその酸無水物(以下、「ジカルボン酸類」と称することもある)とテトラカルボン酸又はその酸二無水物(以下、「テトラカルボン酸類」と称する場合もある)とのそれぞれ1種以上と反応させて得られたエポキシ(メタ)アクリレート酸付加物である。そのため、(メタ)アクリル酸に由来する不飽和基を備えていることから重合性を有する他、a)ジカルボン酸類及びb)テトラカルボン酸類に由来するカルボキシル基を備えて、これらカルボキシル基が(C)成分の酸無水物系硬化剤と共にエポキシ硬化を進行させる働きをする。なお、本明細書において、(メタ)アクリル酸は、アクリル酸、メタクリル酸又は両方を意味する。
また、上記(B)成分については、好ましくは下記一般式(2)で表されるエポキシ化合物から誘導されるのがよい。このエポキシ化合物はビスフェノール類から誘導されるが、ビスフェノール類をグリシジルエーテル化する際に、オリゴマー単位が混入することになるが、一般式(2)におけるlの平均値が0〜10の範囲であればインク組成物としての性能には問題はない。
上記一般式(2)において、R1、R2、R3、R4、及びAは、一般式(1)と同様の意味を表すが、R1、R2、R3、及びR4について好ましくは水素原子であり、Aについて好ましくは9,9-フルオレニル基であるのがよい。lについては0〜10の整数、好ましくは0又は0〜2の整数であるのがよい。ここで、9,9-フルオレニル基は、下記式一般式(3)で表される基をいう。
本発明において、(B)成分を得る際の上記エポキシ化合物と(メタ)アクリル酸との反応については、エポキシ化合物1モルに対し、約2モルの(メタ)アクリル酸を使用して行うのがよい。この反応で得られる反応物は、後述する一般式(5)で表されるようなエポキシ(メタ)アクリレート化合物である。そして、このエポキシ(メタ)アクリレート化合物分子中のヒドロキシ基にa)ジカルボン酸類及びb)テトラカルボン酸類を反応させ、エポキシ(メタ)アクリレートの酸付加体を得る。
上記a)ジカルボン酸類としては、鎖式炭化水素ジカルボン酸又はその酸無水物や脂環式ジカルボン酸又はその酸無水物、芳香族ジカルボン酸又はその酸無水物等を使用することができる。このうち、鎖式炭化水素ジカルボン酸又はその酸無水物として、例えばコハク酸、アセチルコハク酸、マレイン酸、アジピン酸、イタコン酸、アゼライン酸、シトラリンゴ酸、マロン酸、グルタル酸、クエン酸、酒石酸、オキソグルタル酸、ピメリン酸、セバシン酸、スベリン酸、ジグリコール酸等の化合物を挙げることができ、更には任意の置換基が導入されたジカルボン酸類又はその酸無水物であってもよい。また、脂環式ジカルボン酸又はその酸無水物として、例えばヘキサヒドロフタル酸、シクロブタンジカルボン酸、シクロペンタンジカルボン酸、ノルボルナンジカルボン酸等の化合物を挙げることができ、更には任意の置換基が導入されたジカルボン酸類又はその酸無水物であってもよい。更に、芳香族ジカルボン酸又はその酸無水物として、例えばフタル酸、イソフタル酸等の化合物を挙げることができ、更には任意の置換基が導入されたジカルボン酸類又はその酸無水物であってもよい。
また、b)テトラカルボン酸類としては、鎖式炭化水素テトラカルボン酸又はその酸二無水物、脂環式テトラカルボン酸又はその酸二無水物、芳香族多価カルボン酸又はその酸二無水物等を使用することができる。このうち、鎖式炭化水素テトラカルボン酸又はその酸無水物として、例えばブタンテトラカルボン酸、ペンタンテトラカルボン酸、ヘキサンテトラカルボン酸等を挙げることができ、更には置換基が導入されたテトラカルボン酸類又はその酸無水物であってもよい。また、脂環式テトラカルボン酸又はその酸無水物として、例えばシクロブタンテトラカルボン酸、シクロペンタンテトラカルボン酸、シクロヘキサンテトラカルボン酸、シクロへプタンテトラカルボン酸ノルボルナンテトラカルボン酸等を挙げることができ、更には置換基が導入されたテトラカルボン酸類又はその酸無水物であってもよい。更に、芳香族多価カルボン酸又はその酸無水物として、例えばピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ビフェニルテトラカルボン酸、ビフェニルエーテルテトラカルボン酸又はその酸無水物等を挙げることができ、更には置換基が導入されたテトラカルボン酸類又はその酸無水物であってもよい。
上記a)ジカルボン酸類とb)テトラカルボン酸類については、それぞれ1種以上を使用することができ、a)ジカルボン酸類とb)テトラカルボン酸類の使用割合としてはa/bのモル比で0.1〜10、好ましくは0.2〜1.0の範囲となるようにするのがよい。この使用割合については、(B)成分の最適分子量、硬化性、光透過性、耐熱性、対溶剤性などを考慮し適した割合を選択することができる。
また、(B)成分を得る際の上記エポキシ(メタ)アクリレート化合物とa)ジカルボン酸類及びb)テトラカルボン酸類を反応させるには、公知の方法を採用することができるが、好ましくはエポキシ(メタ)アクリレート化合物分子中のヒドロキシ基1モル当たり酸成分が3/4モルとなるように定量的に反応させるのがよい。また、反応温度としては90〜130℃、好ましくは95〜125℃である。
(B)成分を製造する方法の一例を9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレンを出発原料とする場合について示せば、次のようである。
先ず、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレンとエピクロロヒドリンとを反応させて下記一般式(4)で表されるビスフェノールフルオレン型エポキシ化合物を合成し、このビスフェノールフルオレン型エポキシ化合物とCH2=CR5-COOHで表される(メタ)アクリル酸とを反応させて下記一般式(5)で表されるビスフェノールフルオレン型エポキシアクリレート樹脂を合成し、次いでプロピレングリコールモノメチル溶剤中でビスフェノールフルオレン型エポキシアクリレート樹脂と上記酸成分とを加熱下に反応させ、(B)成分である前記式(1)で表されるフルオレン型のアルカリ可溶性樹脂を得ることができる。
先ず、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレンとエピクロロヒドリンとを反応させて下記一般式(4)で表されるビスフェノールフルオレン型エポキシ化合物を合成し、このビスフェノールフルオレン型エポキシ化合物とCH2=CR5-COOHで表される(メタ)アクリル酸とを反応させて下記一般式(5)で表されるビスフェノールフルオレン型エポキシアクリレート樹脂を合成し、次いでプロピレングリコールモノメチル溶剤中でビスフェノールフルオレン型エポキシアクリレート樹脂と上記酸成分とを加熱下に反応させ、(B)成分である前記式(1)で表されるフルオレン型のアルカリ可溶性樹脂を得ることができる。
ここで、一般式(4)及び(5)におけるR1、R2、R3、R4、及びR5は、一般式(1)と同様であり、Aは9,9-フルオレニル基を示す。
また、本発明において上記(A)成分と(B)成分の重量の比(A)/(B)については10/90〜90/10、好ましくは70/30〜40/60である。(A)/(B)が10/90〜90/10の範囲から外れると、インキ組成物が十分に硬化しなかったり、得られた硬化膜の光透過性が低下してしまい、液晶の発色性に影響を及ぼしたり液晶の電圧保持率が低下するおそれがある。ここで、(B)成分の重量平均分子量(Mw)は2000〜20000の範囲であるのがよい。なお、(A)成分と(B)成分の重量の比(A)/(B)とは、それぞれの固形分の重量比を表すものである。
一方、本発明における酸無水物系エポキシ硬化剤(C)については、マレイン酸、フタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ビフェニルテトラカルボン酸、ビフェニルエーテルテトラカルボン酸、ジフェニルスルホンテトラカルボン酸の酸無水物等を例示することができる。このうち、緻密な架橋構造の構築が可能となるといった観点から、好ましくは1分子中に2以上の無水物基を有するものであるのがよく、短波長の透過が良好であるなどの光学特性や液晶の電圧保持率を高く保持することができるといった観点から、更に好ましくはシクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物等の飽和炭化水素系の多官能酸無水物であるのがよい。
この酸無水物系エポキシ硬化剤(C)については、(A)成分100重量部に対して(C)成分が0.1〜100重量部、好ましくは0.5〜20重量部の範囲で配合するようにする。その使用量が0.1重量部に満たないと、十分に硬化せず液晶での電圧保持率の低下を招き、反対に100重量部を超えると、(D)成分である顔料の分散安定を阻害する。なお、一般にエポキシ硬化剤として、酸無水物系硬化剤の他にアミン系硬化剤が代表的なものとして知られているが、アミン系硬化剤は、反応速度が速く、一液系で安定させる事が難しいという欠点を有している点、及び液晶を汚染する悪影響が懸念される点から本発明では酸無水物系エポキシ硬化剤を使用する。
(D)成分の顔料については、有機顔料であってもよく、無機顔料であってもよい。有機顔料としては、例えばアゾレーキ系、不溶性アゾ(PY-150)系、フタロシアニン系(PG-7、PG-36&PB-15.6)を含むシアニン系、キノフタロン系(PY138)、キナクドリン系、ジオキサジン(PV-23)系、イソインドリノン(PY-139)系、ベリノン系、アントラキノン(PR-177)系、ピロロピロール系(PR-254)、ペリレン系等を挙げることができ、これの1種又は2種以上を併用することもできる。無機顔料としては、例えばミロリブルー、酸化鉄、コバルト系、マンガン系、群青、紺青、コバルトブルー、セルリアンブルー、ピリジアン、エメラルドグリーン、コバルトグリーン等を挙げることができ、これの1種又は2種以上を併用することもできる。これらの顔料については、塗膜の透明性を維持しつつ着色するために、可視光の波長の下限である0.4μm以下の平均粒子径に分散されることが好ましく、実用的に平均粒子径範囲が0.01〜0.25μmであるのが更に好ましい。また、インキ組成物における顔料(D)の比率については、インキ組成物における溶剤を除いた固形分の合計重量に対する顔料(D)の重量の比率で0.3以上であるのが好ましい。なお、この(D)成分については、顔料を微細分散し安定化させるのに必要な分散剤を含めて(場合によっては更に所定の溶剤を含めて)、顔料分散体を形成するようにしてもよい。
本発明のカラーフィルター用インキ組成物は、前記(A)、(B)、(C)及び(D)成分を必須成分とし、これらを溶剤に溶解又は分散してなる。溶剤としては、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン等のケトン類、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、セロソルブアセテート等のセロソルブ類、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールn-プロピルエーテル、プロピレングリコールn-ブチルエーテル等のプロピレングリコールモノアルキルエーテル類、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールn-プロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールn-ブチルエーテルアセテート等のプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル等のジエチレングリコールジアルキルエーテル類、乳酸メチル、乳酸エチル等の乳酸エステル類、酢酸n-ブチル等の酢酸エステル類の他、γ−ブチロラクトン、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド等の有機溶剤を例示することができる。
本発明においては、好ましくはこれら有機溶剤を2種以上使用した混合溶剤とするのがよい。この場合、使用される溶剤の沸点がいずれも120〜350℃の範囲であるのが更に好ましい。また、混合溶剤を使用する際には、(C)成分である酸無水物系エポキシ硬化剤の多くは固体であってこれらの溶解性を考慮する観点から、少なくとも1種の溶剤の双極子モーメントが1.5D以上、好ましくは2.0D以上、更に好ましくは2.5D以上の溶剤を使用するのがよい。
本発明におけるインキ組成物は、印刷法を用いてマザーガラス等のガラス基板に塗布した後、後述するように乾燥及び熱硬化させることで所定の画像を形成してカラーフィルター硬化膜を得ることができるが、これは本発明におけるインキ組成物を光硬化により画像形成することを排除するものではない。すなわち、所定の熱硬化工程の他に光硬化工程を含めて画像形成を行う場合には、多官能アクリレートモノマー又はオリゴマー(E)及び光重合開始剤(F)を更に含有せしめてインキ組成物としてもよい。
上記(E)成分の多官能アクリレートモノマー又はオリゴマーとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート等の水酸基を有するモノマーや、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類等を挙げることができる。これらはその1種のみを単独で用いてもよく、また、2種以上を併用することもできる。(E)成分の使用量については、(B)成分100重量部に対して50重量部以下であるのがよく、好ましくは1〜40重量部の範囲であるのがよい。
また、(E)成分を使用する場合の光重合開始剤(F)としては、アセトフェノン、p-tert-ブチルアセトフェノン等のアセトフェノン類、ベンゾフェノン、2-クロロベンゾフェノン、p,p'-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン等のベンゾフェノン類、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインブチルエーテル等のベンゾインエーテル類、2-メチル-1 [4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1等のα-アミノアルキルフェノン類、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニル-ホスファイン-オキサイド等のビスアシルフォスフィンオキサイド類、N-フェニルグリシン等のグリシン類、2,4-トリクロロメチル-(ピぺロニル)-6-トリアジン、2,4-トリクロロメチル-(4'-メトキシスチリル)-6-トリアジン等のトリアジン類が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、この光重合開始剤(F)は、p-ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、p-ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル等の公知の光重合促進剤(増感剤)と併用することもできる。(F)成分の使用量については、(E)成分と(B)成分の総量100重量部に対して0.1〜20重量部であることが好ましい。
更に、本発明では、カラーフィルター用インキ組成物の他の性能を阻害しない範囲であれば、印刷適正を調節する目的から粘度調整剤(G)を添加することもできる。粘度調整剤(G)には、粘度を低下させるものと、粘度を高くするものとがある。粘度を低下させるものには、一般的には、溶剤もこれに含まれるが、本発明では通常の溶剤は粘度調整剤ではなく溶剤と看做し、低分子の官能基を有する反応性希釈剤を粘度調整剤(G)とする。一方、粘度を高くするものには、シリカ粒子を分散させたシリカ系エアロジェルや、アマイド系ワックス、ベントナイト系の増粘剤がある。これらを必要に応じて添加する事で粘度調整を実施する。
更にまた、本発明のカラーフィルター用インキ組成物は、本発明の効果を損なわない範囲であれば、他の成分を含有してもよい。例えば、濡れ性を向上させるためには界面活性剤が使用されてもよく、密着性向上のためにはカップリング剤が好ましく使用される。この場合、界面活性剤は0.01〜0.2重量%の範囲で含有させることが好ましい。
本発明のカラーフィルター用インキ組成物における(A)〜(D)成分の好適な範囲は下記のとおりである。そして、本発明では、下記成分を含めた固形分100重量部に対して溶剤を5〜2000重量部、好ましくは50〜1000重量部の範囲で配合したインキ組成物であるのがよい。
(A)成分 0.5〜40重量% より好ましくは1〜30重量%
(B)成分 1〜40重量% より好ましくは1〜30重量%
(C)成分 0.01〜2重量% より好ましくは0.01〜1.5重量%
(D)成分 5〜95重量% より好ましくは30〜90重量%
(A)成分 0.5〜40重量% より好ましくは1〜30重量%
(B)成分 1〜40重量% より好ましくは1〜30重量%
(C)成分 0.01〜2重量% より好ましくは0.01〜1.5重量%
(D)成分 5〜95重量% より好ましくは30〜90重量%
本発明におけるインキ組成物については、印刷法によりガラス基板等の所定の領域に塗布した後、例えば50〜130℃で1〜10分の乾燥処理を施し、次いで200〜260℃で0.5〜2時間の熱硬化を行うことで所定の画像を形成することができる。この際の印刷法としては、一般に用いられる手段を採用することができ、例えば所定の着色パターン形状の凹部を備えた凹版にインキ組成物を塗布し、凹部に充填されたインキ組成物をブランケット等に一度転写した上でガラス基板等に転写するようにしてもよく、あるいはインクジェット〔バブルジェット(登録商標)、ピエゾ法等〕、凸版印刷法、平版印刷法、スクリーン印刷法等を採用してもよい。
本発明のカラーフィルター用インキ組成物は、大型化が進むガラス基板に対して画素パターンを形成するのに適していると共に、低コスト化及び量産化が可能な印刷法に用いるインキ組成物である。本発明のインキ組成物は、このように印刷特性を維持しつつも、架橋密度が高く硬化性に優れるため、電圧保持率を低下させるおそれのある不純物が液晶系内へ溶出するおそれを可及的に排除でき、高濃度顔料状態(薄膜)においても優れた電圧保持率を達成可能なカラーフィルター用インキ材料である。また、これを用いて形成したカラーフィルターについては電圧保持率に優れた液晶素子を形成することが可能となる。
以下、実施例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、実施例中、別段の断りがない限り、部は重量部を表し、%は重量%を表す。
[合成例1]
500ml四つ口フラスコ中に、フルオレンビスフェノール型エポキシ樹脂とアクリル酸との当量反応物(前記一般式(5)において、Aが9,9-フルオレニル基であり、R1〜R5が水素原子である化合物)の50%プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)溶液238.0g、シクロヘキサンカルボン酸二無水物33.0g、無水琥珀酸9.81g、PGMEA46g、及びトリフェニルホスフィン(TPP)0.46gをそれぞれ仕込み、120〜125℃の加熱下で1時間攪拌した後、更に75〜80℃にて6時間の加熱攪拌を行って樹脂を合成した。得られた樹脂溶液の固形分は50wt%、酸価(固形分換算)は152.9mgKOH/g、GPC分析による重量平均分子量Mwは10000であった。
500ml四つ口フラスコ中に、フルオレンビスフェノール型エポキシ樹脂とアクリル酸との当量反応物(前記一般式(5)において、Aが9,9-フルオレニル基であり、R1〜R5が水素原子である化合物)の50%プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)溶液238.0g、シクロヘキサンカルボン酸二無水物33.0g、無水琥珀酸9.81g、PGMEA46g、及びトリフェニルホスフィン(TPP)0.46gをそれぞれ仕込み、120〜125℃の加熱下で1時間攪拌した後、更に75〜80℃にて6時間の加熱攪拌を行って樹脂を合成した。得られた樹脂溶液の固形分は50wt%、酸価(固形分換算)は152.9mgKOH/g、GPC分析による重量平均分子量Mwは10000であった。
ビーカー(300ml)に回転子を入れ、マグネチックスターラーに設置した。溶剤としてN-メチル−2−ピロリジノン(NMP)を15.5g秤量し、攪拌しながら(C)成分としてシクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物(CHDA)を0.5g加えた。CHDAの溶解を確認した後、更に溶剤として乳酸エチル32.5g、及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)22gをそれぞれ添加して更に攪拌した。次に、(A)成分としてエポキシ樹脂のエピコート154(ジャパンエポキシレジン社製)7.5g、及びp-キシリル-ジグリシジルエーテル(PXG)3.7gを加えて更に攪拌した。エポキシ樹脂が溶解したのを確認後、合成例1で得た樹脂溶液を19.5g〔このうち50wt%が固形分であってこの固形分が(B)成分である〕加えて更に攪拌した。
全てが均一に溶解した事を確認後、PB-15:6〔12.6g:(D)成分〕を予めPGMEA溶剤と分散剤とで混合分散した顔料分散体(固形分19.5%)92.5gと、PV-23〔0.5g:(D)成分〕を予めPGMEA溶剤と分散剤とで混合分散した顔料分散体(固形分13.8%)4.9gを入れて混合し、十分に攪拌溶解した後に、シランカップリング剤1.0g、及び界面活性剤0.2gを加えて更に30分攪拌した。これをろ過して、カラーフィルター用青色インキ組成物を得た。
上記で得られたカラーフィルター用インキ組成物を用いて、印刷法により300mm×300mmのガラス基板上にインキ組成物を転写し、表1に示した乾燥温度(乾燥時間3分)及び硬化温度(硬化時間60分)にて硬化膜を形成した。得られた硬化膜について、所定の手順で試験用液晶に浸漬、密封して100℃で76時間エージング後、所定のガラスセルに液晶を注入して電圧保持率の測定を行った結果、その特性が良好であることが確認された。また、印刷法による製版性の評価については転写した画素パターンを目視にて確認し、○:良好なパターンが形成された、×:パターンがやや歪んだ、の2段階で評価した。結果を表1に示す。
実施例1で使用した酸無水物系エポキシ硬化剤であるCHDAの量を0.05gに変更した以外は実施例1と同様にしてインキ組成物を得て、各評価を行った。結果を表1に示す。
実施例1で使用した酸無水物系エポキシ硬化剤であるCHDAの量を1gに変更した以外は実施例1と同様にしてインキ組成物を得て、各評価を行った。結果を表1に示す。
ビーカー(300ml)に回転子を入れ、マグネチックスターラーに設置した。N-メチル-2-ピロリジノン(NMP)を9.4g秤量し、攪拌しながらCHDAを0.3g加えた。CHDAの溶解を確認後に乳酸エチル34g、PGMEA34.6gを添加して更に攪拌した。次に、エポキシ樹脂のエピコート154を3.6gとPXG1.8gを加えて更に攪拌した。エポキシ樹脂が溶解したのを確認後、合成例1で得た樹脂溶液を9.2g加えて更に攪拌した。
全てが均一に溶解した事を確認後、PR-254〔14.1g:(D)成分〕を予めPGMEA溶剤と分散剤とで混合分散した顔料分散体(固形分18.7%)107.4gを入れ混合し、十分に攪拌溶解した後に、シランカップリング剤1.0g、及び界面活性剤0.2gを加えて更に30分攪拌した。これをろ過して、カラーフィルター用赤色インク組成物を得た。各評価については実施例1と同様にした。結果を表1に示す。
全てが均一に溶解した事を確認後、PR-254〔14.1g:(D)成分〕を予めPGMEA溶剤と分散剤とで混合分散した顔料分散体(固形分18.7%)107.4gを入れ混合し、十分に攪拌溶解した後に、シランカップリング剤1.0g、及び界面活性剤0.2gを加えて更に30分攪拌した。これをろ過して、カラーフィルター用赤色インク組成物を得た。各評価については実施例1と同様にした。結果を表1に示す。
ビーカー(300ml)に回転子を入れ、マグネチックスターラーに設置した。N-メチル-2-ピロリジノン(NMP)を3.2g秤量し、攪拌しながらCHDAを0.1g加えた。CHDAの溶解を確認後に乳酸エチル34.g、PGMEA6.7gを添加して更に攪拌した。次に、エポキシ樹脂のエピコート154を1.4gとPXGを0.7g加えて更に攪拌した。エポキシ樹脂が溶解したのを確認後、合成例1で得た樹脂溶液を3.7g加えて更に攪拌した。
全てが均一に溶解した事を確認後、PG-36とPY-150を70/30で混合したもの〔合計17.9g:(D)成分〕を予めPGMEA溶剤と分散剤とで混合分散した顔料分散体(固形分18.5%)138gを入れ混合し、十分に攪拌溶解した後に、シランカップリング剤1.0g、及び界面活性剤0.2gを加えて更に30分攪拌した。これをろ過して、カラーフィルター用緑色インク組成物を得た。各評価については実施例1と同様にした。結果を表1に示す。
全てが均一に溶解した事を確認後、PG-36とPY-150を70/30で混合したもの〔合計17.9g:(D)成分〕を予めPGMEA溶剤と分散剤とで混合分散した顔料分散体(固形分18.5%)138gを入れ混合し、十分に攪拌溶解した後に、シランカップリング剤1.0g、及び界面活性剤0.2gを加えて更に30分攪拌した。これをろ過して、カラーフィルター用緑色インク組成物を得た。各評価については実施例1と同様にした。結果を表1に示す。
[比較例1]
酸無水物系エポキシ硬化剤であるCHDAを添加しない以外は実施例1と同様にしてインキ組成物を得て、各評価を行った。結果を表1に示す。
酸無水物系エポキシ硬化剤であるCHDAを添加しない以外は実施例1と同様にしてインキ組成物を得て、各評価を行った。結果を表1に示す。
[比較例2]
エポキシ樹脂成分のエピコート154の代わりにYX-4000H(ジャパンエポキシレジン社製)7.5gを用いた以外は実施例1と同様にしてインキ組成物を得て、各評価を行った。結果を表1に示す。
エポキシ樹脂成分のエピコート154の代わりにYX-4000H(ジャパンエポキシレジン社製)7.5gを用いた以外は実施例1と同様にしてインキ組成物を得て、各評価を行った。結果を表1に示す。
Claims (9)
- 溶剤中に、多官能エポキシ化合物(A)、下記一般式(1)で表される不飽和化合物(B)、酸無水物系エポキシ硬化剤(C)、及び顔料(D)を必須成分として含有して印刷法によりカラーフィルターを作製するために用いられるインキ組成物であって、
上記(A)成分と(B)成分の重量の比率(A)/(B)が10/90〜90/10の範囲であり、
多官能エポキシ化合物(A)は、(A)成分中の50重量%以上が一分子中に3以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物からなり、かつ、
(A)成分100重量部に対して(C)成分が0.1〜100重量部の割合で配合されていることを特徴とするカラーフィルター用インキ組成物。
- 請求項1記載のカラーフィルター用インキ組成物に、更に、多官能アクリレートモノマー又はオリゴマー(E)、光重合開始剤(F)、及び粘度調整剤(G)が配合されたカラーフィルター用インキ組成物。
- 溶剤が2種以上の混合溶剤からなっていずれの溶剤の沸点も120〜350℃の範囲であり、かつ、少なくとも1種の溶剤の双極子モーメントが1.5D以上である請求項1又は2に記載のカラーフィルター用インキ組成物。
- (A)〜(E)成分の合計100重量部に対する溶剤の使用量が、50〜1000重量部である請求項2に記載のカラーフィルター用インキ組成物。
- (B)成分と(E)成分の合計量に対する、光重合開始剤(F)の使用量が0.1〜20重量%である請求項2に記載のカラーフィルター用インキ組成物。
- インキ組成物における溶剤を除いた固形分の合計重量に対する顔料(D)の重量の比率が0.3以上である請求項1〜5のいずれかに記載のカラーフィルター用インキ組成物。
- 酸無水物系エポキシ硬化剤(C)が、1分子中に2以上の無水物基を有するものからなる請求項1〜6のいずれかに記載のカラーフィルター用インキ組成物。
- 請求項1〜7のいずれかに記載のカラーフィルター用インキ組成物を用いて、印刷法により形成した画素を乾燥及び硬化させて得たことを特徴とするカラーフィルター硬化膜。
- 請求項8に記載のカラーフィルター硬化膜を有することを特徴とするカラーフィルター。
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