JP2007130664A - ハイドロフォーム加工用成形型及び加工方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】下型2と上型3とからなる成形型1の成形面2a・3aのうち、型締め過程または内圧による被加工物4の変形過程で被加工物4と接触して被加工物4の変形にともなう材料流動を抑制する部位に、成形面2a・3aの他の部分よりも相対的に摩擦係数の低い低摩擦部を設けた。
【選択図】図1
Description
ハイドロフォーム加工においては、被加工物がその変形の限界を超えることにより、所定の成形形状(成形型の成形空間の形状)に達する前に割れが生じることがあるという問題がある。このようなハイドロフォーム加工における割れの発生を防止するための技術は種々提案されており、例えば次に挙げる特許文献1〜3に示されているようなものがある。
また、特許文献2においては、被加工物である素材管に関し、従来の拡管率に代わる局所歪や局所拡管率などの新たな設計概念を導入し、これらが例えば素材管の有する限界よりも小さくなるように設計された予形状を用いる(予成形する)ことで割れを防止する技術が開示されている。
また、特許文献3においては、一般に成形型において中央部に存在する型の分割面を中央部から移動させることにより、型締め時における金型内面と素材管との接触状況により決定される局所拡管率のアンバランスを緩和することで、金型の内面形状が不均等である場合にも、割れを発生させることなくハイドロフォーム加工を完遂することができる方法が示されている。
特許文献1においては、確かに金属管の肉流れを改善させて割れの発生が防止できると考えられるが、金型の成形面に凹凸等が形成されるため、その成形面の形状が製品表面に転写されることとなる。これは製品形状への制約を大きくする原因となる。
また、特許文献2に示されている加工法おいても製品形状への制約が大きくなると考えられる。つまり、素材管における局所歪などが所定の範囲となるような予形状を用いるため、この予形状によって変形が比較的自由な部位を調整するには、製品形状を変える必要がある。また、予形状による製品形状の制約から偏平率が大きい部分を成形することが困難であり、フラットな面を有する部品が取り付けられる製品の成形には適さない。
また、特許文献3に示されている加工法は、確かに金型の内面形状が不均等である場合にも、金型の分割面を移動させることによって割れの発生を防止することができると考えられる。しかし、製品形状における適用部位に制約が大きい。つまり、金型の分割面を移動することができるのは、成形面の断面形状が直線部となる製品形状の平面部分などに限られることとなるため、例えば断面形状が円形状や楕円形状である部分を含む製品には適用することができない。
しかし、この軸押しによる増肉は、押し付けられる管端部から直線部分にかけてはその効果を十分に得ることができると考えられるが、例えば、金属管が成形型に合わせた形状に予成形(例えばプリベンド(予曲げ))される場合など、軸押しによる材料の供給が届かない部位(特に管の両端部に対する中央部付近)が生じることとなる。つまり、軸押しによる増肉効果が得られない部位においては、その部位が元々有する材料の量で膨張変形が行われることとなるので、変形の限界に達しやすく比較的割れが発生しやすくなる。
すなわち、成形面のうち型締め方向と略平行する面においては、型締めの力が成形面と被加工物との間に剪断方向の力として作用するので、材料が流動しやすくなる一方、成形面のうち型締め方向と略直交する面においては、型締めの力が成形面により被加工物を押し付ける方向の力として作用するので、摩擦力が大きくなり、材料の流動が抑制されやすくなる。このため、低摩擦部に、成形型の型締め方向に対して略直交する面を含ませ、この面に低摩擦部を設けることにより、その部分の材料流動を促進することができ、ハイドロフォーム加工における割れ等の発生をより効果的に防止することができる。
また、部分型を用いることにより、成形型における同一成形面においても、任意の部位に部分的に低摩擦部を設けることが可能となるので、成形型の成形空間が複雑な形状であっても対応することができる。
また、部分型に表面処理を施すことにより低摩擦部を設ける場合は、請求項4における効果に加え、部分型の材料特性のみに頼る必要がなく、部分型自体を成形型を構成する材料よりも摩擦係数の低い材料で構成する必要がないので、部分型への制約が少なくて済み、例えば部分型に比較的安価な材料を用いること等により、コストの低減を図ることができる。
また、表面処理を施すに際しても、成形型の型とは別体の部分型体を対象とすることができるので、良好な作業性を得つつ低コストで表面処理を施すことができる。
本発明に係るハイドロフォーム加工用成形型は、ハイドロフォーム加工装置に備えられて用いられるものであり、少なくとも二つの型により分割可能に構成され、型間に被加工物がセットされた状態で型締めされた後、被加工物に内圧を加えて該被加工物を成形面に沿って変形させることで成形を行うものである。
すなわち、本発明に係る成形型が備えられるハイドロフォーム加工装置においては、成形型の型間にセットされた金属管などの中空部材である被加工物が、成形型が型締めされることにより成形空間内に収められた状態で、中空内部に供給される液体により内圧が加えられるとともに軸押しによる管軸方向の圧縮荷重が加えられることで膨張し、成形型の成形面に沿って変形され成形される。
成形型1においては、その型締めされた状態で下型2の成形面2aと上型3の成形面3aとにより成形空間が構成される。本実施形態における成形型1の成形空間は、図1に示すように角の丸められた略長方形の断面形状を有している。
この成形型1は、ハイドロフォーム加工において次のようにして用いられる。
成形型1が型締めされた後、被加工物4の中空内部には水などの液体が供給されて充填され、これが加圧されることで被加工物4に内圧が加えられる。この際、被加工物4に液体による内圧が加えられると同時に、管状の被加工物4の開口端部において、液密性を保つとともに被加工物4内に供給される液体の経路を有する押圧部材(「パンチ」等と称される)などにより管軸方向の圧縮荷重が加えられる軸押しが行われる。
被加工物4は、前記のように液体による内圧と軸押しによる圧力とが加えられながら膨張し、成形型1の各成形面2a・3aに沿って変形され、所定の成形形状(成形空間の形状)に成形される(図1参照)。
ここでまず、ハイドロフォーム加工における割れ発生の原因となる現象について、図9に示す従来の成形型101を用いて説明する。
図9に示すように、従来の成形型101は、本発明に係る成形型1と同様、下型102と上型103とを備え、下型102の成形面102aと上型103の成形面103aとにより成形空間を構成する。
また、被加工物4の断面形状が、例えは成形空間の断面形状における上下型間の長さと略同一あるいは短い外径を有する円形状の場合には、内圧による被加工物4の膨張変形の初期の段階で接触部Lcが生じ、被加工物4は成形面102a・103aの偏平部に沿って変形することとなる。
被加工物4の表面において、摩擦力により材料流動が抑制される接触部Lc以外の部分、即ち成形面102a・103aのいずれにも接触していない部分Lf(以下、「非接触部Lf」とする)は、摩擦力の作用を受けることなく自由に変形できる。
つまり、成形型101の型締め過程、あるいは内圧による被加工物4の変形過程において、被加工物4には、その変形にともなう材料流動が抑制される接触部Lcと、摩擦力の影響を受けることなく自由に変形できる非接触部Lfとが存在することとなる。
そして、型締め後の内圧による被加工物4の変形過程においては、内圧の上昇にともない、被加工物4の変形は進んで接触部Lcの面積は増加する一方、接触部Lcにおける摩擦力は上昇することとなり、材料流動はさらに抑制される。
言い換えると、被加工物4の変形過程において、材料流動が抑制される部分(接触部Lc)が存在すると、材料が伸びる部分が不均一となり、伸びが大きくなる部分で割れが発生しやすくなるのである。
具体的には、図9に示す断面図において、被加工物4の断面形状における表面の全周の長さをLとすると、この全周Lに対する接触部Lcの割合(Lc/L)が大きくなるほど、自由に流動できる材料の割合が減る。このため、被加工物4の変形過程の終期段階において成形面102a・103aと接触することとなる局部の拡管度合い(膨張度合い)が大きくなり、その部分で割れが発生する確率が高まることとなる。
これらのうち、被加工物4に作用する内圧は、被加工物4の内面の全面に対して略同一の大きさで作用し、被加工物4を膨張変形させるための加工力であるため、接触部Lcのような所定の部分だけ小さく作用させることは難しい。
すなわち、本発明に係る成形型1においては、前記のとおり、成形面2a・3aのうち、被加工物4の変形にともなう材料流動を抑制する部位に、成形面2a・3aの他の部分よりも相対的に摩擦係数の低い低摩擦部10を設けている。
また、「n値」や「r値」や「伸び」等の材料特性値の必要以上に高い材料を用いるというように被加工物4の材料特性に頼ることなく、ハイドロフォーム加工における割れ等の発生を防止することができるので、材料コストの増加を招くことがない。
また、被加工物4の接触部Lcにおける材料流動を促進することにより効果を得るものでことから、軸押しによる増肉効果が十分に得られない部位であっても、被加工物4が元々有するその部分の材料が流動して成形面に沿って行き渡ることとなるので、その部位における割れ等の発生を防止することができる。
図1及び図2に示すように、成形型1において、成形面2a・3aの一部を構成する部分型20が設けられ、この部分型20により低摩擦部10が構成される。
すなわち、図3に示すように、成形型1を構成する下型2及び上型3それぞれの成形面2a・3aにおいて、低摩擦部10が設けられる位置に凹部21が形成される。凹部21は、部分型20の形状に合わせて形成される。この凹部21に部分型20が嵌合されることにより低摩擦部10が構成される。つまり、部分型20が凹部21に嵌合された状態で、該部分型20の一側の面(以下、「部分型成形面20a」とする)により、成形面2a・3aの一部(同一面)が構成される。したがって、凹部21の形状と、部分型20の部分型成形面20a以外の面により構成される形状とが略同一となるようにそれぞれが形成され、部分型20が凹部21に嵌合された状態で、その部分型成形面20aが成形面2a・3aにおける低摩擦部10となる。
なお、部分型20の形状は、成形面2a・3aにおける被加工物4の変形にともなう材料流動が抑制される部位が部分型成形面20aにより構成されるものであれば、図示のような略矩形状の断面形状を有するものに限定されない。つまり、部分型20において、その部分型成形面20aを成形面2a・3aに臨ませて凹部21に嵌合される部分の形状や大きさは特に限定されず、部分型20は、成形面2a・3aにおいて低摩擦部10を設ける位置や面積に応じて適宜構成される。
部分型20の固定方法として、例えば、ボルト等の締結具を用いて部分型20を凹部21に固着したり、凹部21に部分型20を圧入することによって固定したりする方法が考えられる。なお、ボルト等の締結具を用いて部分型20を凹部21に固定する場合は、例えば、凹部21に締結穴を設けるとともに部分型20に締結具挿通用の孔部を設けることとなるが、この場合、部分型20の部分型成形面20aに面することとなる孔部の大きさ(径)は、被加工物4に加える内圧や材料強度を考慮して設定する。つまり、ハイドロフォーム加工においては、被加工物4に加えられる内圧の大きさや材料強度により成形可能な曲率の限界があり、内圧による被加工物4の膨張によって部分型20に形成される孔部に材料が入り込むことにより成形形状に影響を与えないように孔部の大きさを設定する。
例えば、成形型1において下型2及び上型3を構成する材料がSKD材(ダイス鋼)である場合、部分型20の材料としては、超硬合金やサーメット等を主成分とする焼結体やセラミックス等が好適に用いられる。つまり、部分型20を構成する材料は、成形型1を構成する材料よりも摩擦係数が低く、ハイドロフォーム加工における成形型の成形面の機能を果たすことができるものであれば特に限定されず周知の材料を用いることができる。
また、部分型20を用いることにより、成形型1における同一成形面においても、任意の部位に部分的に低摩擦部10を設けることが可能となるので、成形型1の成形空間が複雑な形状であっても対応することができる。
すなわち、図4に示すように、成形型1の成形面2a・3aにおいて低摩擦部10を設ける部位に表面処理を施して表面処理部30(図中薄墨部分)を設け、これを低摩擦部10とする。
ここでの表面処理とは、研磨や鏡面仕上げやラップ仕上げ等の表面仕上げや、金属メッキや樹脂コーティング等のコーティング処理などを含む概念である。つまり、表面処理部30を設けるための表面処理は、成形面2a・3aに施すことによりその部分の摩擦係数を他の部分よりも低下させ、ハイドロフォーム加工において被加工物4との接触部における材料流動を促進することができれば、特に限定されず周知のものを用いることができる。
すなわち、図5に示すように、前記と同様、成形型1の成形面2a・3aに形成される凹部21に嵌合される部分型40を用い、この部分型40の部分型成形面40aに表面処理を施して表面処理部50(図中薄墨部分)を設け、これを低摩擦部10とする。この場合、部分型40を構成する材料としては、例えば成形型1において下型2や上型3を構成する材料(SKD材など)が用いられる。
すなわち、低摩擦部10を設けるに際し部分型40を用いる場合であっても部分型40の材料特性のみに頼る必要がなく、部分型40自体を成形型1(成形面2a・3a)を構成する材料よりも摩擦係数の低い材料で構成する必要がないので、部分型40への制約が少なくて済み、例えば部分型40に比較的安価な材料を用いること等により、コストの低減を図ることができる。
また、表面処理を施すに際しても、成形型1の下型2及び上型3とは別体の部分型40体を対象とすることができるので、良好な作業性を得つつ低コストで表面処理を施すことができる。
成形型1の型締め過程の初期段階で被加工物4と接触する部分について、図6に示すように、本実施形態における成形型1において、被加工物4が円形状の断面形状を有するものである場合を例に説明する。なお、図6においては、前記部分型20により低摩擦部10を構成した場合の成形型1を示している。
したがって、本実施形態において、成形型1の型締め過程の初期段階で被加工物4と接触している部位は、図6等に示す断面視で、下型2及び上型3の各成形面2a・3aにおける左右方向(成形空間の断面形状の長手方向)の略中央部近傍となる。
成形型1の型締めにおいては、成形型1の成形面2a・3aのうち、型締め方向に対して略直交する面により被加工物4が押し潰されることとなる。本実施形態においては、図示のごとく成形型1の型締め方向は上下方向であり、成形型1の型締め方向に対して略直交する面は略水平面となる。したがって、成形型1において、その型締め方向に対して略直交する面は、成形面2a・3aにおける略水平面となり、型締めの際に被加工物4を押圧する面となる(図6(b)、(c)参照)。
したがって、成形面2a・3aのうち、型締め方向に対して略直交する面に含まれる型締め後における被加工物4との接触面は、被加工物4の変形にともなう材料流動を抑制する原因となる摩擦力(材料流動の抑制力)が比較的大きくなりやすい部位となる。
要するに、型締め方向と成形面の方向とが略平行方向(略同一方向)であると、型締めの力が成形面と被加工物4との間に剪断方向の力として作用するので、成形面2a・3aのうち型締め方向と略平行する(略同一方向の)面においては材料が流動しやすくなる。一方、型締め方向と成形面の方向とが略直交方向であると、型締めの力が成形面により被加工物4を押し付ける方向の力として作用するので、成形面2a・3aのうち型締め方向と略直交する面においては、摩擦力が大きくなり材料の流動が抑制されやすくなる。
2 下型(型)
2a 成形面
3 上型(型)
3a 成形面
4 被加工物
10 低摩擦部
20 部分型
40 部分型
Claims (6)
- 少なくとも二つの型により分割可能に構成され、型間に被加工物がセットされた状態で型締めされた後、被加工物に内圧を加えて該被加工物を成形面に沿って変形させることで成形を行うハイドロフォーム加工用成形型であって、
前記成形面のうち、型締め過程または内圧による被加工物の変形過程で被加工物と接触して被加工物の変形にともなう材料流動を抑制する部位に、該成形面の他の部分よりも相対的に摩擦係数の低い低摩擦部を設けたことを特徴とするハイドロフォーム加工用成形型。 - 前記低摩擦部は、型締め過程の初期段階で被加工物と接触している部位を含むことを特徴とする請求項1に記載のハイドロフォーム加工用成形型。
- 前記低摩擦部は、型締め方向に対して略直交する面の部位を含むことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のハイドロフォーム加工用成形型。
- 前記成形面の一部を構成する部分型を設け、該部分型により前記低摩擦部を構成したことを特徴とする請求項1〜3のいずれかの項に記載のハイドロフォーム加工用成形型。
- 前記低摩擦部を、摩擦係数を低下させる表面処理を施すことにより構成したことを特徴とする請求項1〜4のいずれかの項に記載のハイドロフォーム加工用成形型。
- 被加工物を成形する成形型に被加工物をセットし、該成形型を型締めした後、被加工物に内圧を加えることにより、被加工物を前記成形型の成形面に沿って変形させることで成形を行うハイドロフォーム加工方法であって、
前記成形面に、他の部分よりも相対的に摩擦係数の低い低摩擦部を設け、
被加工物の、前記成形型の型締め過程または内圧による被加工物の変形過程で前記成形面と接触して変形にともなう材料流動が抑制される部分を、前記低摩擦部に接触させることを特徴とするハイドロフォーム加工方法。
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