JP2007130179A - 生体管路ステント - Google Patents
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Abstract
【解決手段】生体吸収性材料のステント基材2からなる生体管路ステント1とステント基材の外側及び又は内部を被覆する膜状構造物3からなる。ステント基材は生体吸収性材料からなる繊維の編物、織物、組紐であって、繊維の端部を有しない。また、その繊維は、モノフィラメントであり、直径は、0.02〜2.0mmの範囲にある。生体吸収材料としてグリコール酸、乳酸(D体、L体、DL体)、カプロラクトン、ジオキサン、エチレグリコール及びトリメチレンカーボネートからなる重合体が使用される。膜状構造物は、シート状の多孔体、フィルム又はこれらの複合体からなる。やはりコラーゲン、ゼラチンやその他生体吸収材料が使用される。
【選択図】図1
Description
例えば、早期の消化器癌においては、従来の開胸、開腹手術を必要とせず治療が終了する内視鏡的粘膜切除術が開発され、広く行われるようになってきている。しかし、病変の深さが粘膜内に限局していても病変の範囲が広いときには、広範に粘膜切除術を行わなければならない。広範に粘膜を切除してしまうと、粘膜のバリアーがないため過剰な炎症反応が起こり、管腔が狭窄し、再手術が必要になることがある。このため、ステントによって狭窄を機械的に防止することが望まれる。さらに、粘膜層の再生を促し、早期の粘膜バリアーの再建が行われるようなデバイスの開発が待たれていた。
本発明は、生体吸収性材料からなるステント基材と前記ステント基材の外側及び/又は内部を被覆する膜状構造物とからなる生体管路ステントである。
以下に本発明を詳述する。
なお、本明細書において「外側及び/又は内部を被覆」とは、膜状構造物がステント基材の外側を覆うように結合している場合、膜状構造物がステント基材の内部を覆うように結合している場合、及び、ステント基材が膜状構造物中に内包されるようにしてステント基材と膜状構造物とが一体化している場合等を意味する。
図1に本発明のステント基材と膜状構造物とからなる生体管路ステントの構成を表す模式図を示した。図1の生体管路ステント1は、ステント基材2の表面を膜状構造物3で被覆した構造を有する。膜状構造物3は、ステント基材2の全表面を被覆していてもよいし、ステント基材2の一部を被覆していてもよい。
上記バイオセラミックスとしては特に限定されず、例えば、ハイドロキシアパタイト(HAP)、ストロンチウムアパタイト(StAP)等のアパタイト;α−リン酸三カルシウム(α−TCP)、β−リン酸三カルシウム(β−TCP)等のリン酸カルシウム系化合物;A−W結晶化ガラス、アルミナ、ジルコニア、カーボン、バイオガラス等が挙げられる。なかでも、ハイドロキシアパタイト及び/又は三リン酸カルシウムが好適である。
本明細書において「繊維の端部を有しない」とは、組紐状織物のように、一本のつながった繊維からなり、かつ、該一本の繊維の末端をつなぎ合わせるか、あるいは複数の隣接する繊維の末端同士をつなぎ合わせることにより、繊維の末端をなくすることを意味し、また、組紐状織物が1本の繊維から構成されていることを意味する。
上記生体吸収性材料からなる繊維の直径は、本発明の生体管路ステントを適用する生体管路の種類や径によって更に適宜選択することが好ましい。例えば、冠動脈に適用する場合には直径0.02〜0.2mmのものを用いることが好ましく、胆管や尿道に適用する場合には直径0.04〜0.4mmのものを用いることが好ましく、直径が8mm程度の血管に適用する場合には直径0.08〜0.8mmのものを用いることが好ましく、腸管に適用する場合には直径0.1〜1.6mmのものを用いることが好ましく、食道や気管に適用する場合には直径0.1〜2.0mmのものを用いることが好ましい。
上記生体吸収性材料からなる繊維の断面としては特に限定されず、例えば、円、楕円、その他の異形(例えば星形)等のものを用いることができる。
上記生体吸収性材料からなる繊維は、表面をプラズマ放電、電子線処理、コロナ放電、紫外線照射、オゾン処理等により親水化処理されていてもよい。
該構成によるステントは、特に消化管用として適用したとき、これをそのまま用いて、前記した効果を奏する。
上記膜状構造物としては、管路を構成する細胞の侵入が容易で、管路の再生の足場となるものであれば特に限定されない。このような膜状構造物としては、例えば、生体吸収性材料からなる多孔体、フィルム、これらの複合体;自己又は同種の分層皮膚又は筋膜;凍結乾燥ブタ真皮、キチン不織布シート、SIS(Small intestine submucosa:小腸粘膜下組織)、BSM(Bladder submucosa:膀胱粘膜下組織)、GSM(Gastric submucosa:胃粘膜下組織)等の異種の生体由来材料等が挙げられる。
なお、コラーゲンやゼラチンを用いる場合には、生体吸収性を調整する目的で、熱架橋、紫外線架橋、グルタルアルデヒド架橋等の従来公知の架橋を施してもよい。
上記生体吸収性材料からなる繊維構造物としては特に限定されないが、例えば、グリコール酸、乳酸(D体、L体、DL体)、カプロラクトン、ジオキサノン、エチレングリコール及びトリメチレンカーボネートからなる群より選択される少なくとも1種の単量体を重合してなる重合体からなるものが好適である。
上記成長因子としては特に限定されないが、例えば、塩基性繊維芽細胞増殖因子(bFGF)等が挙げられる。
上記細胞としては、本発明の生体管路ステントの適用部位により適宜選択されるが、例えば、自家の骨髄細胞、繊維芽細胞、角化細胞、粘膜上皮細胞、内皮細胞等が挙げられる。
即ち、早期癌の病変が内視鏡下で切除可能な浅い層に限られていても範囲が広い場合には術後の狭窄の懸念から、手術療法を選択せざるを得なかったが、本発明の生体管路ステントにより、狭窄を防ぎ、広範囲の内視鏡視下切除術を施行することができる。また、内視鏡下切除術における偶発的穿孔症例においても、本発明の生体管路ステントにより治療可能となれば、内視鏡治療の安全性の向上に大きく寄与することになり、その社会的意義は大きい。重症例では手術で直接穿孔部を縫合しなければならなかったが、本発明の生体管路ステントの適用で内視鏡視下で穿孔部を閉鎖することができるため、患者の負担も激減する上、侵襲の大きな手術をする必要が無くなるため、医療経済上もきわめて有効である。本発明の生体管路ステントは、穿孔部閉鎖用のデバイスとしても極めて有効である。更に、本発明の生体管路ステントはその役割を果たした後、体内で吸収されることから、再手術により取り出す必要もなく、患者への負担がなく異物として残留することの弊害もない。
ポリ−L−乳酸からなる直径0.5mmのモノフィラメント糸を用い、直径3cm、長さ7.5cmの筒状に組紐状に編んだステント基材を作製した。
図2に、術後2週間後における、ステントを適用した場合(a)及びステントを適用しなかった場合(b)についての術部の状態を撮影した内視鏡写真を、また、図3に、術後2週間後における、ステントを適用した場合(a)及びステントを適用しなかった場合(b)についての術部を解剖した状態を撮影した写真を示した。なお、図2(a)には、ステント端を固定した内視鏡クリップも写っている。
図2、3より、ステントを適用した場合には、適用しなかった場合に比べて狭窄が軽度であり、早期の創傷治癒が認められた。
実施例1と同様の方法により得られたステント基材の両端部を1cm残してブタ分層皮膚を全周に被覆し、端部を縫合してステントを得た。
ブタの胸部食道に対して、全周性に内視鏡下粘膜切除術を行った。チューブ状のシース内に得られたステントを納めた状態で食道の粘膜を切除した位置まで挿入した後、シースを外してステントを患部にリリースした。また、比較対象として、全周性に内視鏡下粘膜切除術を行った後、ブタ分層皮膚を被覆しないステントを適用しない場合も行った。
図4に、術後2週間後における、ステントのみを適用した場合(a)及びステントとブタ分層皮膚とを適用した場合(b)についての術部のX線造影写真を示した。
図4より、何れの場合も狭窄が起っていないことが確認されたが、特に全層皮膚を被覆したものは更に狭窄の程度が少ないことが確認できた。
濃度3mg/mL、pH3.0のコラーゲン水溶液を調製し、これをポリグリコール酸からなる編み布に含浸させた。−40℃にて凍結し、真空減圧下30℃で凍結乾燥し、更に、真空減圧下105℃で24時間加熱処理して、熱架橋コラーゲンスポンジシートを得た。次いで、得られた熱架橋コラーゲンスポンジシートをグルタルアルデヒド水溶液中に浸漬して架橋し、その後−110℃で凍結し、真空減圧下30℃で凍結乾燥して、厚さ5mmの架橋コラーゲンスポンジシートを得た。
実施例1と同様の方法で得られたステント基材の両端部を1cm残して得られた架橋コラーゲンスポンジシートを全周に被覆し、端部を縫合してステントを得た。
ブタの胸部食道に対して、全周性に内視鏡下粘膜切除術を行った。チューブ状のシース内に得られたステントを納めた状態で食道の粘膜を切除した位置まで挿入した後、シースを外してステントを患部にリリースした。2週間後に内視鏡によって状況を確認したところ、狭窄が軽度であり、コラーゲンスポンジへの粘膜組織の進入がみられ、早期の創傷治癒が認められた。
実施例3と同様にコラーゲンスポンジシートを被覆したステントを作製し、その内面に1%ゼラチン水溶液をコートし、風乾した。さらに、紫外線を10時間照射し、架橋処理を行い、ステントを得た。
ブタの胸部食道に対して、内視鏡下粘膜切除術を行い、穿孔病変を形成した。チューブ状のシース内に得られたステントを納めた状態で食道の粘膜を切除した位置まで挿入した後、シースを外してステントを患部にリリースして穿孔部を閉鎖した。2週間後に内視鏡によって状況を確認したところ、ステントにより、穿孔部が閉鎖されていた。また、コラーゲンスポンジへの粘膜組織の進入がみられ、早期の創傷治癒が認められた。
L−ラクチド−ε−カプロラクトン共重合体(共重合比75:25)からなる直径0.5mmのモノフィラメント糸を用い、直径3cm、長さ5cmの筒状体に編んだステント基材を作製した。
ステントの表面に、厚さ0.1mmのL−ラクチド−ε−カプロラクトン共重合体(共重合比50:50)フィルムチューブを被覆して本発明ステントを得た。
ブタの胸部食道に対して、内視鏡下粘膜切除術を行い、穿孔病変を形成した。チューブ状のシース内に得られたステントを納めた状態で食道の粘膜を切除した位置まで挿入した後、シースを外してステントを患部にリリースして穿孔部を閉鎖した。2週間後に内視鏡によって状況を確認したところ、ステントにより、穿孔部が閉鎖されていた。
1%のゼラチン水溶液を調製し、これをポリグリコール酸からなる編み布に含浸させた。−40℃にて凍結し、真空減圧下30℃で凍結乾燥し、更に、真空減圧下135℃で14時間加熱処理して、架橋ゼラチンスポンジシートを得た。
実施例1と同様の方法で得られたステント基材の両端部を1cm残して得られた架橋ゼラチンスポンジシートを全周に被覆し、端部を縫合してステントを得た。
手術直前に100μg/mLのbFGF水溶液5mLをステント基材にしみ込ませた。
ブタの胸部食道に対して、全周性に内視鏡下粘膜切除術を行った。チューブ状のシース内に得られたステントを納めた状態で食道の粘膜を切除した位置まで挿入した後、シースを外してステントを患部にリリースした。2週間後に内視鏡によって状況を確認したところ、狭窄が軽度であり、コラーゲンスポンジへの粘膜組織の進入がみられ、早期の創傷治癒が認められた。
4%のL−ラクチド−ε−カプロラクトン共重合体(共重合比50:50)ジオキサン溶液中にポリグリコール酸からなる編み布を含浸させ、−20℃にて凍結し、真空減圧下40℃で凍結乾燥し、更に、真空減圧下70℃で12時間加熱処理しL−ラクチド−ε−カプロラクトン共重合体スポンジシートを得た。
L−ラクチド−ε−カプロラクトン共重合体(共重合比75:25)からなる直径0.5mmのモノフィラメント糸を用い、直径3cm、長さ5cmの筒状体に編んだステント基材を作製した。得られたステント基材の両端部を1cm残して得られたL−ラクチド−ε−カプロラクトン共重合体スポンジシートを全周に被覆し、端部を縫合してステントを得た。手術直前にブタの腸骨から約200mLの骨髄液を採取し、遠心分離法により、単核球成分を単離し、5mLの細胞懸濁液をステント基材にしみ込ませた。
ブタの胸部食道に対して、全周性に内視鏡下粘膜切除術を行った。チューブ状のシース内に得られたステントを納めた状態で食道の粘膜を切除した位置まで挿入した後、シースを外してステントを患部にリリースした。2週間後に内視鏡によって状況を確認したところ、狭窄が軽度であり、L−ラクチド−ε−カプロラクトン共重合体スポンジへの粘膜組織の進入がみられ、早期の創傷治癒が認められた。
2 ステント基材
3 膜状構造物
Claims (18)
- 生体吸収性材料のステント基材からなることを特徴とする生体管路ステント。
- 生体吸収性材料からなるステント基材と前記ステント基材の外側及び/又は内部を被覆する膜状構造物とからなることを特徴とする生体管路ステント。
- ステント基材が生体吸収性材料からなる繊維の編物、織物、組紐であって、前記繊維の端部を有しないものであることを特徴とする請求項1又は2記載の生体管路ステント。
- 繊維がモノフィラメント糸であり、その直径が0.02〜2.0mmの範囲にあることを特徴とする請求項3記載の生体管路ステント。
- ステント基材を構成する生体吸収性材料がグリコール酸、乳酸(D体、L体、DL体)、カプロラクトン、ジオキサノン、エチレングリコール及びトリメチレンカーボネートからなる群より選択される少なくとも1種の単量体を重合してなる重合体であることを特徴とする請求項3記載の生体管路ステント。
- ステント基材を構成する生体吸収性材料がグリコール酸、乳酸(D体、L体、DL体)、カプロラクトン、ジオキサノン、エチレングリコール及びトリメチレンカーボネートからなる群より選択される少なくとも1種の単量体を重合してなる重合体と、バイオセラミックとの複合体であることを特徴とする請求項3記載の生体管路ステント。
- バイオセラミックがハイドロキシアパタイト及び/又は三リン酸カルシウムであることを特徴とする請求項6記載の生体管路ステント。
- 膜状構造物が生体吸収性材料からなるシート状の多孔体、フィルム又はこれらの複合体から選択されたものであることを特徴とする請求項2記載の生体管路ステント。
- 膜状構造物がコラーゲン、ゼラチン、乳酸とカプロラクトンとの共重合体、又は、グリコール酸とカプロラクトンとの共重合体の何れかからなることを特徴とする請求項8記載の生体管路ステント。
- 膜状構造物が生体吸収性材料からなる繊維構造物で補強されたものであることを特徴とする請求項8記載の生体管路ステント。
- 生体吸収性材料からなる繊維構造物は、グリコール酸、乳酸(D体、L体、DL体)、カプロラクトン、ジオキサノン、エチレングリコール及びトリメチレンカーボネートからなる群より選択される少なくとも1種の単量体を重合してなる重合体からなるものであることを特徴とする請求項10記載の生体管路ステント。
- 膜状構造物は、成長因子を含有することを特徴とする請求項2記載の生体管路ステント。
- 膜状構造物は、細胞を含有することを特徴とする請求項2記載の生体管路ステント。
- 膜状構造物は、自家の骨髄細胞、繊維芽細胞、角化細胞、粘膜上皮細胞又は内皮細胞を含有することを特徴とする請求項2記載の生体管路ステント。
- 膜状構造物は、自己又は同種の分層皮膚、又は、筋膜であることを特徴とする請求項2記載の生体管路ステント。
- 膜状構造物は、異種の生体由来材料であることを特徴とする請求項2記載の生体管路ステント。
- 異種の生体由来材料が、凍結乾燥ブタ真皮、キチン不織布シート、SIS(Small intestine submucosa:小腸粘膜下組織)、BSM(Bladder submucosa:膀胱粘膜下組織)、GSM(Gastric submucosa:胃粘膜下組織)の何れかであることを特徴とする請求項16記載の生体管路ステント。
- 消化管用であることを特徴とする請求項1又は2記載の生体管路ステント。
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