JP2007128850A - 燃料電池用燃料カートリッジの接続構造とそれを用いた燃料電池 - Google Patents
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Abstract
【課題】燃料電池用燃料カートリッジの接続構造において、燃料カートリッジのノズル部が破損することによる不具合の発生を抑制する。
【解決手段】燃料カートリッジに設けられたノズル部9を、燃料電池本体に設けられたソケット部6に挿入し、これらノズル部9とソケット部6とを接続する。ノズル部9は燃料電池本体に接続された燃料カートリッジに曲げ荷重が加わった際に、ソケット部6から離脱するように変形する樹脂部品を有する。燃料カートリッジの挿入を案内するキー部29と係合される案内溝18は、燃料電池本体に接続された燃料カートリッジに曲げ荷重が加わった際に、ノズル部9をソケット部6から離脱させるように変形する樹脂からなる。
【選択図】図2
【解決手段】燃料カートリッジに設けられたノズル部9を、燃料電池本体に設けられたソケット部6に挿入し、これらノズル部9とソケット部6とを接続する。ノズル部9は燃料電池本体に接続された燃料カートリッジに曲げ荷重が加わった際に、ソケット部6から離脱するように変形する樹脂部品を有する。燃料カートリッジの挿入を案内するキー部29と係合される案内溝18は、燃料電池本体に接続された燃料カートリッジに曲げ荷重が加わった際に、ノズル部9をソケット部6から離脱させるように変形する樹脂からなる。
【選択図】図2
Description
本発明は燃料電池用燃料カートリッジの接続構造とそれを用いた燃料電池に関する。
近年、ノートパソコンや携帯電話等の各種携帯用電子機器を長時間充電なしで使用可能とするために、これら携帯用電子機器の電源に燃料電池を用いる試みがなされている。燃料電池は燃料と空気を供給するだけで発電することができ、燃料のみを補給すれば連続して長時間発電することができるという特徴を有している。このため、燃料電池を小型化できれば、携帯用電子機器の電源として極めて有利なシステムといえる。
特に、直接メタノール型燃料電池(DMFC:direct methanol fuel cell)は、エネルギー密度の高いメタノールを燃料に用い、メタノールから電極触媒上で直接電流を取り出すことができるため、改質器が不要で小型化が可能であり、さらに燃料の取り扱いも水素ガス等に比べて容易であることから、携帯機器用の電源として有望視されている。DMFCにおける液体燃料の供給方式としては、液体燃料を気化させてブロア等で燃料電池セル内に送り込む気体供給型や液体燃料をそのままポンプ等で燃料電池セル内に送り込む液体供給型等のアクティブ方式、また燃料収容部内の液体燃料を電池内部で気化させて燃料極に供給する内部気化型等のパッシブ方式が知られている。
これらの燃料供給方式のうち、アクティブ方式はDMFCの高出力化(大電力化)が可能であるため、ノートパソコン等の電源として期待されている。一方、パッシブ方式は燃料ポンプ等の能動的な燃料移送手段を必要としないことから、特にDMFCの小型化に対して有利である。例えば、特許文献1や特許文献2には液体燃料を保持する燃料浸透層と、燃料浸透層中に保持された液体燃料の気化成分を拡散させて燃料極に供給する燃料気化層とを具備する内部気化型のDMFCが記載されている。パッシブ型DMFCは携帯用オーディオプレーヤや携帯電話等の小型携帯機器の電源として期待されている。
アクティブ型DMFCでは、液体燃料を収容した燃料カートリッジを燃料電池本体に接続し、この燃料カートリッジから直接もしくは燃料収容部(希釈調整槽等)を介して液体燃料を循環させることによって、燃料電池セルに液体燃料を供給している。一方、内部気化型等のパッシブ型DMFCは、燃料収容部と液体燃料を気化させる機構とを具備しており、この燃料収容部に対してアクティブ型と同様に燃料カートリッジを用いて液体燃料を供給する。サテライトタイプ(外部注入式)の燃料カートリッジでは、それぞれバルブ機構を内蔵するノズルとソケットとで構成されたカップラを用いて、液体燃料の遮断並びに注入を行うことが試みられている(例えば特許文献3参照)。
特許第3413111号公報
特開2004-171844号公報
特開2004-127824号公報
ところで、内部気化型等のパッシブ型DMFCは、例えば携帯用電子機器に搭載するために小型化が進められており、その結果としてDMFC側の燃料供給部(ソケット部)や燃料カートリッジ側の燃料吐出部(ノズル)も小径化される傾向にある。このようなノズル部とソケット部とを接続し、燃料カートリッジからDMFCの燃料収容部に液体燃料を注入する場合、小径化されたノズル部は燃料カートリッジに対して曲げ荷重のような力が加わった際に破損するおそれがある。
燃料カートリッジはノズル部に内蔵されたバルブ機構で液体燃料を遮断しているため、ノズル部が破損すると燃料カートリッジに収容された液体燃料が漏れ出すおそれがある。また、ノズル部が破損した際にバルブ機構自体は破損しないまでも、バルブ機構の構成部品が突出することで、誤ってバルブ機構を作動させて液体燃料が漏れ出すおそれがある。ノズル部が破損する可能性はその径が小径化するほど高まることになる。
特に、DMFC用燃料カートリッジのノズル部には、耐メタノール性を有するポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、液晶ポリマー(LCP)等のスーパーエンジニアプラスチックや、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリアセタール(POM)等の汎用エンジニアプラスチックを使用することが検討されているが、これらは硬く、靭性に劣ることから、曲げ加重に対して折れやすいという難点を有している。
本発明の目的は、燃料カートリッジのノズル部が破損することによる不具合の発生を抑制することを可能にした燃料電池用燃料カートリッジの接続構造、およびそのような燃料カートリッジの接続構造を適用した燃料電池を提供することを目的としている。
本発明の一態様に係る燃料電池用燃料カートリッジの接続構造は、燃料カートリッジに設けられ、バルブ機構を内蔵するノズル部を、燃料電池本体に設けられ、バルブ機構を内蔵するソケット部に挿入し、これらノズル部とソケット部とを接続する燃料電池用燃料カートリッジの接続構造において、前記ノズル部は前記燃料電池本体に接続された前記燃料カートリッジに曲げ荷重が加わった際に、前記ソケット部から離脱するように変形する樹脂部品を有することを特徴としている。
本発明の他の態様に係る燃料電池用燃料カートリッジの接続構造は、燃料カートリッジに設けられ、バルブ機構を内蔵するノズル部を、燃料電池本体に設けられ、バルブ機構を内蔵するソケット部に挿入し、これらノズル部とソケット部とを接続する燃料電池用燃料カートリッジの接続構造において、前記ノズル部またはソケット部のいずれか一方に前記燃料カートリッジの挿入方向に沿って形成された案内溝と、前記ノズル部またはソケット部のいずれか他方に突出するように形成され、前記案内溝と係合して前記燃料カートリッジの挿入を案内するキー部とを具備し、前記案内溝は前記燃料電池本体に接続された前記燃料カートリッジに曲げ荷重が加わった際に、前記ノズル部を前記ソケット部から離脱させるように変形する樹脂からなることを特徴としている。
本発明の一態様に係る燃料電池は、燃料電池用の液体燃料を収容するカートリッジ本体と、前記カートリッジ本体に設けられたノズル部とを備える燃料カートリッジと、前記燃料カートリッジのノズル部と着脱可能に接続されるソケット部を有する燃料収容部と、前記燃料収容部から前記液体燃料が供給されて発電動作する起電部とを備える燃料電池本体とを具備し、前記燃料カートリッジのノズル部と前記燃料電池本体のソケット部とは、本発明の態様に係る燃料カートリッジの接続構造を具備することを特徴としている。
本発明の態様に係る燃料電池用燃料カートリッジの接続構造によれば、燃料電池本体に接続された燃料カートリッジに曲げ荷重が加わった際に、ノズル部を変形させてソケット部から離脱させることができる。本発明の他の態様に係る燃料電池用燃料カートリッジの接続構造によれば、燃料電池本体に接続された燃料カートリッジに曲げ荷重が加わった際に、案内溝を変形させることでノズル部をソケット部から離脱させることができる。このような燃料カートリッジの接続構造を適用した燃料電池によれば、燃料カートリッジのノズル部が破損することによる不具合の発生を抑制することが可能となる。
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。なお、以下では本発明の実施形態を図面に基づいて説明するが、それらの図面は図解のために提供されるものであり、本発明はそれらの図面に限定されるものではない。
図1は本発明の第1の実施形態による燃料電池の構成を示す図である。図1に示す燃料電池1は、起電部となる燃料電池セル2と燃料収容部3とから主として構成される燃料電池本体4と、燃料収容部3に液体燃料を供給するサテライトタイプ(外部注入式)の燃料カートリッジ5とを具備している。燃料収容部3の下面側には、液体燃料の供給口となるソケット部6を有する燃料供給部7が設けられている。ソケット部6は後に詳述するようにバルブ機構を内蔵しており、液体燃料が供給されるとき以外は閉状態とされている。
一方、燃料カートリッジ5は、燃料電池用の液体燃料を収容するカートリッジ本体(容器)8を有している。カートリッジ本体8の先端には、その内部に収容された液体燃料を燃料電池本体4に供給する際の燃料吐出口となるノズル部9が設けられている。ノズル部9は後に詳述するようにバルブ機構を内蔵しており、液体燃料を供給するとき以外は閉状態とされている。このような燃料カートリッジ5は、例えば燃料収容部3に液体燃料を注入するときのみ燃料電池本体4に接続されるものである。
燃料カートリッジ5のカートリッジ本体8には、燃料電池本体4に応じた液体燃料、例えば直接メタノール型燃料電池(DMFC)であれば各種濃度のメタノール水溶液や純メタノール等のメタノール燃料が収容されている。カートリッジ本体8に収容する液体燃料はメタノール燃料に限られるものではなく、例えばエタノール水溶液や純エタノール等のエタノール燃料、プロパノール水溶液や純プロパノール等のプロパノール燃料、グリコール水溶液や純グリコール等のグリコール燃料、ジメチルエーテル、ギ酸、その他の液体燃料であってもよい。いずれにしても、燃料電池本体4に対応した液体燃料が収容される。
上述した燃料電池本体4の燃料収容部3に設けられたソケット部6と燃料カートリッジ5のカートリッジ本体8に設けられたノズル部9とは、一対の接続機構(カップラ)を構成するものである。ソケット部6とノズル部9とで構成された燃料電池用カップラの具体的な構成について、図2および図3を参照して説明する。図2および図3は本発明の燃料電池用燃料カートリッジの接続構造の一実施形態を示すものである。図2は燃料カートリッジ5のノズル部9と燃料電池本体4のソケット部6とを接続する前の状態、図3はノズル部9とソケット部6とを接続した後の状態を示している。
燃料電池本体4と燃料カートリッジ5とを接続するカップラにおいて、カートリッジ側接続機構としてのノズル部(オス側カップラ)9は、ノズルベース部11とノズル挿入部12とを有している。先端にノズル口を有する円筒状のノズル挿入部12は、カートリッジ本体8の先端開口部に固着されたノズルベース部11から突出するように形成されている。ここではノズルベース部11とノズル挿入部12とを一体成形した部品を示しているが、これらは異なる材料で個別に成形したものを組合せて使用してもよい。
カートリッジ本体8の先端側内部には、カップ状のバルブホルダ13が配置されている。バルブホルダ13はバルブ室を規定するものであり、その先端側外縁部がカートリッジ本体8とノズルベース部11とで挟み込まれて固定されている。バルブホルダ13で規定されたバルブ室内には、バルブ14が配置されている。バルブ14は、バルブヘッド14aを有するバルブ本体14bと、バルブ本体14bの先端側に設けられたバルブステム14cと、バルブ本体14bの後方側に設けられたガイドピン14dとを備えている。
バルブヘッド14aを有するバルブ本体14bは、バルブホルダ13で規定されたバルブ室内に配置されている。バルブステム14cは円筒状のノズル挿入部12内に収容されている。これらバルブ本体14bやバルブステム14cを有するバルブ14は、軸方向(ノズル部9の挿入方向)に進退可能とされている。バルブヘッド14aとノズルベース部11の内側に形成されたバルブシート15との間にはOリング16が配置されている。バルブ本体14bには、例えば圧縮スプリング17のような弾性部材によって、バルブヘッド14aをバルブシート15に押し付ける力が常時加えられており、これらによってOリング16は押圧されている。
通常状態(燃料カートリッジ5が燃料電池本体4から切り離された状態)においては、Oリング16を介してバルブヘッド14aをバルブシート15に押し付けることで、ノズル部9内の液体燃料流路を閉状態としている。一方、後述するように燃料カートリッジ5を燃料電池本体4に接続すると、バルブステム14cが後退してバルブヘッド14aがバルブシート15から離れることで、ノズル部9内の液体燃料流路が開状態とされる。バルブホルダ13の底部には液体燃料の流路となる連通孔13aが設けられている。バルブ本体14bの後方側に設けられたガイドピン14dは連通孔13a内に挿通されている。
一方、燃料電池側接続機構としてのソケット部(メス側カップラ)6は、円筒状のソケット本体21を有している。ソケット本体21は本体上部21a、本体中部21bおよび本体下部21cを有しており、これらは一体化されて燃料電池本体4の燃料供給部7内に埋め込まれている。ソケット本体21の本体中部21bは、その径方向内側に突出したリング状凸部22を有している。リング状凸部22上には弾性体ホルダとしてゴムホルダ23が設置されており、このゴムホルダ23は本体上部21a内に配置されている。ゴムホルダ23は形状(ジャバラ形状)と材料特性(ゴム弾性)に基づいて軸方向に弾性が付与されている。ゴムホルダ23はノズル部9のノズル挿入部12との間にシールを形成するシール部材であり、その内側は液体燃料流路とされている。
ソケット本体21内にはバルブ24が配置されている。バルブ24は、バルブヘッド24aを有するバルブ本体24bと、バルブ本体24bの先端側に設けられたバルブステム24cと、バルブ本体24bの後方側に設けられたガイドピン24dとを備えている。バルブヘッド24aを有するバルブ本体24bは、本体中部21bと本体下部21cとで規定されたバルブ室内に配置されている。バルブステム24cはゴムホルダ23内に収納されている。これらバルブ本体24bやバルブステム24cを有するバルブ24は、軸方向(ノズル部9の挿入方向)に進退可能とされている。
バルブヘッド24aとリング状凸部22の下面側に形成されたバルブシート25との間には、Oリング26が配置されている。バルブ本体24bには、例えば圧縮スプリング27のような弾性部材によって、バルブヘッド24aをバルブシート25に押し付ける力が常時加えられており、これらによってOリング26は押圧されている。通常状態(燃料電池本体4から燃料カートリッジ5が切り離された状態)においては、Oリング26を介してバルブヘッド24aがバルブシート25に押し付けられており、これによってソケット部6内の液体燃料流路は閉状態とされている。一方、後述するように燃料電池本体4に燃料カートリッジ5が接続されると、バルブステム24cが後退してバルブヘッド24aがバルブシート25から離れることで、ソケット部6内の液体燃料流路は開状態とされる。
ソケット本体21の本体下部21cには、燃料供給部7内を介して燃料収容部(燃料タンク等)3に接続された連通孔28が設けられている。なお、バルブ本体24bの後方側に設けられたガイドピン24dは連通孔28内に挿通されている。このように、ソケット部6はソケット本体21内に設けられた流路が本体下部21cに設けられた連通孔28を介して燃料収容部3に接続されている。そして、バルブ14、24を開状態としてノズル部9およびソケット部6内の流路をそれぞれ開くことによって、燃料カートリッジ5に収容された液体燃料をノズル部9およびソケット部6を介して燃料収容部3内に注入することが可能とされている。
燃料カートリッジ5に収容された液体燃料を燃料電池本体4の燃料収容部3に供給するにあたっては、図3に示すようにノズル部9をソケット部6に挿入して接続する。ここで、ノズル部9のノズル挿入部12の外周面には、燃料カートリッジ5の挿入方向(ノズル部9の軸方向)に沿って、例えば2条の案内溝18が形成されている。一方、ソケット部6のソケット本体21の内周面には、案内溝18と係合して燃料カートリッジ5の挿入を案内するキー部29が設けられている。キー部29は案内溝18の数に応じてソケット本体21の径方向内側に突出するように形成されている。
案内溝18の形状は、例えばノズル挿入部12の軸方向に沿った直線状のものが挙げられる。さらに、案内溝18はキー部29を軸方向に沿って案内すると共に、ノズル部9がソケット部6にロックされるように、途中から周方向に変位するものであってもよい。すなわち、案内溝18は直線形状に限らず、J形状を有するものであってもよい。このような形状を有する案内溝18をノズル挿入部12の外周面に形成してもよい。一方、案内溝18と係合するキー部29には、ソケット本体21の内周面にボスを一体的に形成したものや、ソケット本体21とは別部材のキーをソケット本体21に差し込んだもの等が適用される。キー部29は金属材料等で形成してもよい。
なお、ここではノズル部9に案内溝18を形成し、ソケット部6にキー部29を設けた例について説明したが、案内溝18とキー部29の形成部位はこれに限られるものではない。すなわち、ノズル部9のノズル挿入部12の外周面に突出させてキー部を設けると共に、このキー部と係合する案内溝をソケット部6のソケット本体21の内周面に設けてもよい。このような部位に形成されたキー部と案内溝との組合せによっても、燃料カートリッジ5の挿入を案内することができる。
案内溝18にキー部29を係合させながらノズル部9をソケット部6に挿入すると、まずノズル挿入部12の先端とゴムホルダ23の先端とが接触し、バルブ14、24が開状態となる前に液体燃料の流路周辺のシールが確立される。ノズル挿入部12の先端とゴムホルダ23とが接触した状態からノズル部9をソケット部6に差し込むと、ノズル部9のバルブステム14cとソケット部6のバルブステム24cの先端同士が突き当たる。この状態からさらにノズル部9を差し込むと、ソケット部6のバルブ24が後退して流路を開放した後、ノズル部9のバルブ14が後退して液体燃料流路が確立する。そして、燃料カートリッジ5に収容された液体燃料が燃料電池本体4の燃料収容部3に供給される。
前述したように、燃料カートリッジ5側のノズル部9は、燃料電池本体4の小型化等に伴って小径化される傾向にある。小径化されたノズル部9は、燃料カートリッジ5に対して曲げ荷重(燃料カートリッジ5の挿入方向に対して角度をもった方向からの力による荷重)が加わった際に破損するおそれがある。ノズル部9が破損する危険性はその径が小径化するほど高まり、特に内部気化型DMFCのような小型の燃料電池本体4に液体燃料を供給する燃料カートリッジ5は曲げ荷重でノズル部9が破損するおそれがある。
そこで、この実施形態では燃料電池本体4に接続された燃料カートリッジ5に曲げ荷重が加わった際に、ノズル部9(具体的にはノズル挿入部12)を変形させてソケット部6から離脱させるようにしている。すなわち、ノズル部9のノズル挿入部12(ノズルベース部11がノズル挿入部12と一体成形されている場合には、ノズルベース部11も含む)は、燃料電池本体4に接続された燃料カートリッジ5に曲げ荷重が加わった際に、ソケット部6から離脱するように弾性変形する樹脂で構成している。言い換えると、ノズル部9は曲げ荷重が加わった際に弾性変形する樹脂部品としてノズル挿入部12もしくはノズルベース部11とノズル挿入部12との一体部品を有している。このように、ノズル挿入部12もしくはノズルベース部11との一体部品の構成材料に変形しやすい軟質樹脂を適用することによって、ノズル部9の破損を抑制することが可能となる。
さらに、燃料カートリッジ5に加わる曲げ荷重の方向によっては、案内溝18とキー部29との係合状態、また案内溝18の形状(例えばJ形状)がノズル部9のソケット部6からの離脱を阻害するおそれがある。このような点に対しては、ノズル部9をソケット部6から離脱させるように、案内溝18を変形させることが有効である。すなわち、案内溝18が形成されたノズル部9のノズル挿入部12(およびノズルベース部11)は、燃料電池本体4に接続された燃料カートリッジ5に曲げ荷重が加わった際に、ノズル部9をソケット部6から離脱させるように塑性変形する軟質樹脂で構成することが好ましい。
案内溝18の塑性変形は、特にキー部29が金属材料や硬質樹脂で形成されている場合に有効である。すなわち、硬質のキー部29が案内溝18に係合されていると、ノズル部9の弾性変形だけではキー部29が障害となって、ノズル部9をソケット部6から容易に離脱させることができないおそれがある。また、例えばJ形状の案内溝18を適用した場合にも、キー部29が外れにくくなる可能性がある。このような場合には、案内溝18を塑性変形させることが有効である。
このように、燃料カートリッジ5に対する曲げ荷重に対してノズル部9の少なくとも一部(具体的にはノズル挿入部12)を弾性変形させると共に、キー部29が案内溝18から外れるように塑性変形させることによって、燃料電池本体4に接続された燃料カートリッジ5に曲げ荷重が加わった際に、ノズル部9を破損させることなくソケット部6から離脱させることができる。これによって、燃料カートリッジ5のノズル部9が破損することによる不具合の発生を抑制することが可能となる。
軟質樹脂部品(ノズル挿入部12等)を有するノズル部9は、燃料カートリッジ5に曲げ荷重等が加わって損傷を受けたとしてもソケット部6から離脱するため、ノズル部9の折れた部分がソケット部6側に残ってしまうというような不都合の発生を回避することができる。これによって、燃料カートリッジ5が損傷を受けたとしても、燃料電池本体4は安全に使い続けることができる。なお、ノズル部9の弾性変形と案内溝18の塑性変形は、燃料カートリッジ5に加わる力の大きさや方向、また案内溝18とキー部29との係合状態や案内溝18の形状等に基づいて、単独でもしくは複合的に生じるものである。
ノズル部9の弾性変形や案内溝18の塑性変形を実現する上で、ノズル部9の一部(ソケット部6に直接的に挿入されると共に、案内溝18の形成部位となるノズル挿入部12、さらに成形条件によってはノズルベース部11)を構成する樹脂部品は、JIS K7171に基づく曲げ弾性率が1800MPa以下の樹脂で形成することが好ましい。このような曲げ弾性率を有する樹脂を使用することによって、ノズル部9の弾性変形や案内溝18の塑性変形をより確実に実現することができる。言い換えると、燃料電池本体4に接続された燃料カートリッジ5に曲げ荷重が加わった際に、ノズル部9やその内部のバルブ機構を破損させることなく、より再現性よくソケット部6から離脱させることが可能となる。
上述した条件を満足する樹脂(ノズル部9の一部を構成する樹脂部品の材料)としては、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、架橋高密度ポリエチレン(XLPE)、高分子量ポリエチレン(HMWPE)、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、ポリプロピレン(PP)、プロピレン共重合体(PPCO)等が挙げられる。さらに、ノズル部9がメタノール燃料と接触する場合には、樹脂部品は耐メタノール性を有していることが好ましい。
ノズル部9の少なくとも一部を構成する樹脂部品の耐メタノール性に関しては、JIS K7114の「プラスチックの耐薬品性試験方法」に準拠する純メタノールの浸漬試験において、質量変化率が0.3%以下、長さ変化率が0.5%以下、厚さ変化率が0.5%以下を満足することが好ましい。各変化率の値が上記した値未満であると、燃料カートリッジ5にメタノール燃料を収容して実用に供した際に、ノズル部9に溶解やストレスクラッキング等が生じるおそれがあり、燃料カートリッジ5の実用的な耐久性や信頼性が低下する。
なお、樹脂の純メタノールの浸漬試験における質量変化率、長さ変化率および厚さ変化率は、以下のようにして測定するものとする。まず、試験片として30mm×30mm×厚さ2mmの板を用意する。このような試験片の試験前の質量(M1)、長さ(L1)、厚さ(T1)を測定する。次に、試験片を23±2℃の試験液(濃度99.8%の純メタノール)中に完全に浸漬し、上記温度を保持して7日間静置する。この後、試験片を試験液から取り出して水洗し、試験片の表面に付着した水分を拭い取った後に、試験後の質量(M2)、長さ(L2)、厚さ(T2)を測定する。長さ(L1,L2)は試験片の縦方向および横方向の長さの平均値とする。厚さ(T1,T2)は、試験片の中央部と各角部(エッジから5mm内側)の5箇所の厚さを測定し、それらの平均値とする。
上記した試験片の試験前の質量(M1)、長さ(L1)、厚さ(T1)、および試験後の質量(M2)、長さ(L2)、厚さ(T2)から、質量変化率M、長さ変化率Lおよび厚さ変化率Tを下記の(1)式、(2)式、(3)式に基づいて算出する。
M={(M2−M1)/M1}×100(%) …(1)
L={(L2−L1)/L1}×100(%) …(2)
T={(T2−T1)/T1}×100(%) …(3)
M={(M2−M1)/M1}×100(%) …(1)
L={(L2−L1)/L1}×100(%) …(2)
T={(T2−T1)/T1}×100(%) …(3)
表1に低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高分子量ポリエチレン(HMWPE)、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、ポリプロピレン(PP)の曲げ弾性率と耐メタノール性(純メタノールの浸漬試験における質量変化率、長さ変化率および厚さ変化率)を示す。
ここで、ノズル部9のノズル挿入部12以外の構成部品やソケット部6の構成部品については、前述したスーパーエンジニアプラスチック(PEEK、PPS、LCP等)や汎用エンジニアプラスチック(PET、PBT、POM)等で形成することができる。また、カップラとしての強度や接続強度等を維持することができれば、ノズル挿入部12以外の部品についても軟質の樹脂を適用してもよい。さらに、案内溝18をソケット部6のソケット本体21に形成する場合には、ソケット本体21をキー部が外れるように塑性変形し得る軟質な樹脂で形成する。
次に、上述したノズル挿入部12を低密度ポリエチレン(LDPE)、高分子量ポリエチレン(HMWPE)、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)で形成した場合について、ノズル部9の強度を測定、評価した結果について述べる。ノズル部9の強度は、以下のようにして測定した。なお、本発明との比較例として、ノズル挿入部12を従来の樹脂材料であるポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリアセタール(POM)で形成したノズル部9についても、実施例と同様にして強度を測定、評価した。
まず、容量100mlの空の燃料カートリッジ5を用意し、これに上述した各樹脂で形成したノズル挿入部12を有するノズル部(オス側カップラ)9を装着する。ノズル部9のフラット面から100mmのところに2箇所の穴を開け、ここにワイヤを通す。このような燃料カートリッジ5を、治具で固定したソケット部(メス側カップラ)6に接続する。ワイヤにフック付きのロードセルを装着し、燃料カートリッジ5に対して垂直に50mm/sの速度で引張る。その際のピーク荷重を測定した。引張り方向はキー部29の突出方向とそれに対して垂直方向の2方向とした。これらの測定結果を表2に示す。なお、比較例についてはノズル先端が破損するまで荷重を加えた際のピーク荷重を示す。
表2に示すノズル抜け力から明らかなように、実施例の各樹脂はいずれもノズル部9が破損することなく、ソケット部6から離脱した。さらに、ノズル部9の離脱時の荷重も比較的小さいことから、燃料カートリッジ5に対する曲げ荷重に対してノズル部9を容易にソケット部6から離脱させることが可能であることが分かる。また、バルブ機構が破損することもなく、シール状態は良好に保持されていた。これに対して、比較例の樹脂ではノズル部9に破損が生じた。このように、実施例の燃料カートリッジによれば、ノズル部が破損することによる不具合の発生を抑制することが可能となる。
ところで、上述したようにノズル部9の少なくとも一部を軟質樹脂部品で構成することによって、燃料カートリッジ5に曲げ荷重が加わった際にノズル部9をソケット部6から離脱させることができるものの、曲げ荷重の付加量や付加状態によってはノズル部9(例えばノズル挿入部12)が激しく塑性変形する可能性がある。例えばノズル挿入部12が激しく塑性変形するような曲げ荷重が加わった場合、バルブ14に過剰な力が作用してシール状態が損なわれるおそれがある。また、激しく塑性変形したノズル部9からバルブ14が突出し、誤ってバルブ機構を作動させて液体燃料が漏れ出すおそれがある。このような点に対してはバルブ機構を分割構造とすることが有効である。
次に、燃料カートリッジ5のノズル部9に分割構造を有するバルブ機構を適用した実施形態について、図4を参照して説明する。図4は本発明の第2の実施形態による燃料電池31の要部構成、すなわち燃料電池本体4の燃料収容部3に設けられたソケット部6と燃料カートリッジ5のカートリッジ本体8に設けられたノズル部9とによる接続機構(カップラ)を示す断面図である。なお、燃料電池31の全体構成は第1の実施形態と同様であり、図1に示した通りである。また、ソケット部6とノズル部9とによる接続構造についても、基本的な機構は第1の実施形態と同様であるため、図2および図3と同一部分には同一符号を付し、その説明を一部省略する。
この実施形態の燃料電池31において、バルブ14のバルブステム14cは分割構造を有している。具体的には、バルブステム14cは図5に示すように、バルブ本体14bと一体化されたステム基部32と、このステム基部32とは分割されたステム先端部33とを有している。すなわち、バルブステム14cはステム基部32とステム先端部33の2部品で構成されており、これらはそれぞれ独立した部品として分割されている。これらステム基部32とステム先端部33との接触面が、バルブステム14cの分割面となる。
ステム先端部33は、ノズル挿入部12から抜け落ちないように、ステム基部32側に設けられた大径部33aを有している。すなわち、ステム先端部33は大径部33aと小径部33bとを有しており、大径部33aをノズル挿入部12内の段付穴12aで押さえることによって、ノズル挿入部12からの抜け落ちを防止している。ステム基部32はステム先端部33の大径部33aと同一径を有している。そして、これらステム基部32とステム先端部33の大径部33aとを接触させてバルブ14を組み立て、この状態でノズルベース部11内に配置されている。
バルブステム14cとノズル挿入部12の内壁面との間に液体燃料の流路を設ける場合には、ステム基部32とステム先端部33とは周方向の位置関係を考慮することなく、単に接触させて組み立てることができる。一方、バルブステム14cの外周面に軸方向に溝を形成して液体燃料の流路を設ける場合がある。このような場合には、例えば図6に示すように、ステム先端部33の大径部33aとステム基部32(図6では図示せず)に周方向の位置を示すガイドキー34を設けることが好ましい。
このようなガイドキー34を適用することによって、ステム基部32とステム先端部33との周方向の位置を合せてバルブ14を組み立てることができる。ここでは2個のガイドキー34を有するステム先端部33を図示したが、ガイドキー34の個数は限定されるものではなく、例えば1個もしくは4個であってもよい。なお、ノズル挿入部12の内壁面には、バルブステム14c側に設けたガイドキー34に対応させてキー溝が設けられる。バルブステム14c側のガイドキー34をノズル挿入部12側のキー溝と係合させることによって、ステム基部32とステム先端部33の周方向の位置を合せる。
バルブステム14cのステム先端部33の構成材料やステム基部32が一体化されたバルブ本体14bの構成材料はメタノール燃料等と接触することから、耐メタノール性を有していることが好ましい。耐メタノール性については前述した通りである。バルブ14は前述した軟質樹脂で構成してもよいが、バルブ14に分割構造を適用した場合には、例えばスーパーエンジニアプラスチックや汎用エンジニアプラスチック等を用いてもよい。このような材料としては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリアセタール(POM)等の汎用エンジニアプラスチック、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、液晶ポリマー(LCP)等のスーパーエンジニアプラスチックが挙げられる。
燃料カートリッジ5に曲げ荷重が加わった際に、曲げ荷重の付加量や付加状態によっては図7に示すように、ノズル部9(具体的にはノズルベース部11から突出したノズル挿入部12)が激しく塑性変形する場合がある。このような場合においても、この実施形態ではバルブステム14cをステム基部32とステム先端部33とに分割した構造を適用しているため、ノズル挿入部12の変形時にステム先端部33のみが外れることによって、液体燃料を遮断するバルブ機構の損傷を防ぐことができる。言い換えると、バルブ14による液体燃料のシール状態を維持することが可能となる。
すなわち、バルブステム14cがバルブヘッド14aと一体化されている場合、ノズル挿入部12の塑性変形時にバルブステム14cにも過剰な力が加わって、シール状態が損傷するおそれがある。このような点に対して、バルブステム14cをステム基部32とステム先端部33とに分割することによって、バルブ機構やシール状態の損傷を防ぐことができる。さらに、ステム先端部33がノズル部9から外れることによって、バルブステム14cがノズルベース部11の平坦面11aから突出することがない。これによって、ノズルベース部11の平坦面11aから突出したバルブステム14cを誤って動作させて液体燃料が漏れ出すようなおそれがなくなる。
上述したように、ノズル挿入部12が激しく塑性変形した場合において、ステム先端部33はバルブステム14cの一部がノズルベース部11の平坦面11aから突出しないように外れることが好ましい。従って、ステム基部32とステム先端部33との分割面は、ノズルベース部11の平坦面11aと同一面上、もしくは平坦面11aよりバルブ本体14b側(カートリッジ本体8側)に位置していることが好ましい。これによって、ノズル挿入部12が損傷した際のバルブステム14cの突出をより確実に防ぐことができる。
バルブ14に適用する分割構造は、バルブステム14cをステム基部32とステム先端部33とに分割した構造に限られるものではない。例えば、図8に示すように、バルブ本体14bとバルブステム14cとを分割するようにしてもよい。すなわち、図8に示すバルブ14は、バルブヘッド14aを有するバルブ本体14bと、このバルブ本体14bの先端側に配置され、かつバルブ本体14bとは分割されたバルブステム14cとを有している。なお、他の構造については図4と同様とされている。
このように、バルブ14をバルブ本体14bとバルブステム14cとに分割した場合には、図9に示すように、ノズル挿入部12の損傷時にバルブステム14cが外れるため、バルブ機構やそれによるシール状態を維持することができる。また、ノズル挿入部12の損傷後にノズルベース部11の平坦面11aからバルブ14の一部が突出するようなこともない。バルブ本体14bとバルブステム14cとを分割した構造では、特にバルブ本体14bの表面(分割面)がノズル部9の内部に存在することになるため、バルブ機構の誤作動による漏液をより確実に防ぐことができる。
次に、上述した各実施形態の燃料電池1、31における燃料電池本体4の具体的な構造について説明する。燃料電池本体4は特に限定されるものではなく、例えばサテライトタイプの燃料カートリッジ5が必要時に接続されるパッシブ型やアクティブ型のDMFCを適用することができる。ここでは、燃料電池本体4に内部気化型のDMFCを適用した実施形態について、図10を参照して説明する。図10に示す内部気化型(パッシブ型)のDMFC4は、起電部を構成する燃料電池セル2と燃料収容部3に加えて、これらの間に介在された気体選択透過膜51を具備している。
燃料電池セル2は、アノード触媒層52およびアノードガス拡散層53からなるアノード(燃料極)と、カソード触媒層54およびカソードガス拡散層55からなるカソード(酸化剤極/空気極)と、アノード触媒層52とカソード触媒層54とで挟持されたプロトン(水素イオン)伝導性の電解質膜56とから構成される膜電極接合体(MEA:Membrane Electrode Assembly)を有している。アノード触媒層52およびカソード触媒層54に含有される触媒としては、例えば、Pt、Ru、Rh、Ir、Os、Pd等の白金族元素の単体、白金族元素を含有する合金等が挙げられる。
具体的には、アノード触媒層52にメタノールや一酸化炭素に対して強い耐性を有するPt−RuやPt−Mo等を、カソード触媒層54にPtやPt−Ni等を用いることが好ましい。また、炭素材料のような導電性担持体を使用する担持触媒、あるいは無担持触媒を使用してもよい。電解質膜56を構成するプロトン伝導性材料としては、例えばスルホン酸基を有するパーフルオロスルホン酸重合体のようなフッ素系樹脂(ナフィオン(商品名、デュポン社製)やフレミオン(商品名、旭硝子社製)等)、スルホン酸基を有する炭化水素系樹脂、タングステン酸やリンタングステン酸等の無機物等が挙げられる。ただし、これらに限られるものではない。
アノード触媒層52に積層されるアノードガス拡散層53は、アノード触媒層52に燃料を均一に供給する役割を果たすと同時に、アノード触媒層52の集電体も兼ねている。一方、カソード触媒層54に積層されるカソードガス拡散層55は、カソード触媒層54に酸化剤を均一に供給する役割を果たすと同時に、カソード触媒層54の集電体も兼ねている。アノードガス拡散層53にはアノード導電層57が積層され、カソードガス拡散層55にはカソード導電層58が積層されている。
アノード導電層57およびカソード導電層58は、例えば金のような導電性金属材料からなるメッシュや多孔質膜、あるいは薄膜等で構成されている。なお、電解質膜56とアノード導電層57との間、および電解質膜56とカソード導電層58との間には、ゴム製のOリング59、60が介在されており、これらによって燃料電池セル(膜電極接合体)2からの燃料漏れや酸化剤漏れを防止している。
燃料収容部3の内部には、液体燃料Fとしてメタノール燃料が充填されている。また、燃料収容部3は燃料電池セル2側が開口されており、この燃料収容部3の開口部と燃料電池セル2との間に気体選択透過膜51が設置されている。気体選択透過膜51は、液体燃料Fの気化成分のみを透過し、液体成分は透過させない気液分離膜である。このような気体選択透過膜51の構成材料としては、例えばポリテトラフルオロエチレンのようなフッ素樹脂が挙げられる。ここで、液体燃料Fの気化成分とは、液体燃料Fとしてメタノール水溶液を使用した場合にはメタノールの気化成分と水の気化成分からなる混合気、純メタノールを使用した場合にはメタノールの気化成分を意味する。
カソード導電層58上には保湿層61が積層されており、さらにその上には表面層62が積層されている。表面層62は酸化剤である空気の取入れ量を調整する機能を有し、その調整は表面層62に形成された空気導入口63の個数やサイズ等を変更することで行う。保湿層61はカソード触媒層54で生成された水の一部が含浸されて、水の蒸散を抑制する役割を果たすと共に、カソードガス拡散層55に酸化剤を均一に導入することで、カソード触媒層54への酸化剤の均一拡散を促進する機能も有している。保湿層61は例えば多孔質構造の部材で構成され、具体的な構成材料としてはポリエチレンやポリプロピレンの多孔質体等が挙げられる。
そして、燃料収容部3上に気体選択透過膜51、燃料電池セル2、保湿層61、表面層62を順に積層し、さらにその上から例えばステンレス製のカバー64を被せて全体を保持することによって、この実施形態の内部気化型DMFC(燃料電池本体)4が構成されている。カバー64には表面層62に形成された空気導入口63と対応する部分に開口が設けられている。また、燃料収容部3にはカバー64の爪64aを受けるテラス65が設けられており、このテラス65に爪64aをかしめることで燃料電池本体4全体をカバー64で一体的に保持している。なお、図10では図示を省略したが、図1に示したように燃料収容部3の下面側にはソケット部6を有する燃料供給部7が設けられている。
上述したような構成を有する内部気化型DMFC(燃料電池本体)4においては、燃料収容部3内の液体燃料F(例えばメタノール水溶液)が気化し、この気化成分が気体選択透過膜51を透過して燃料電池セル2に供給される。燃料電池セル2内において、液体燃料Fの気化成分はアノードガス拡散層53で拡散されてアノード触媒層52に供給される。アノード触媒層52に供給された気化成分は、下記の(1)式に示すメタノールの内部改質反応を生じさせる。
CH3OH+H2O → CO2+6H++6e- …(1)
CH3OH+H2O → CO2+6H++6e- …(1)
なお、液体燃料Fとして純メタノールを使用した場合には、燃料収容部3から水蒸気が供給されないため、カソード触媒層54で生成した水や電解質膜56中の水をメタノールと反応させて(1)の内部改質反応を生起するか、あるいは上記した(1)式の内部改質反応によらず、水を必要としない他の反応機構により内部改質反応を生じさせる。
内部改質反応で生成されたプロトン(H+)は電解質膜56を伝導し、カソード触媒層54に到達する。表面層62の空気導入口63から取り入れられた空気(酸化剤)は、保湿層61、カソード導電層58、カソードガス拡散層55を拡散して、カソード触媒層54に供給される。カソード触媒層54に供給された空気は、次の(2)式に示す反応を生じさせる。この反応によって、水の生成を伴う発電反応が生じる。
(3/2)O2+6H++6e- → 3H2O …(2)
(3/2)O2+6H++6e- → 3H2O …(2)
上述した反応に基づく発電反応が進行するにしたがって、燃料収容部3内の液体燃料F(例えばメタノール水溶液や純メタノール)は消費される。燃料収容部3内の液体燃料Fが空になると発電反応が停止するため、その時点でもしくはそれ以前の時点で燃料収容部3内に燃料カートリッジ5から液体燃料を供給する。燃料カートリッジ5からの液体燃料の供給は、前述したように燃料カートリッジ5側のノズル部9を燃料電池本体4側のソケット部6に挿入して接続することにより実施される。
なお、本発明は液体燃料を燃料カートリッジにより供給する燃料電池であれば、その方式や機構等に何等限定されるものではないが、特に小型化が進められている内部気化型等のパッシブ型DMFCに好適である。
1,31…燃料電池、2…燃料電池セル、3…燃料収容部、4…燃料電池本体、5…燃料カートリッジ、6…ソケット部(メス側カップラ)、8…カートリッジ本体、9…ノズル部(オス側カップラ)、12…ノズル挿入部、14,24…バルブ、14a,24a…バルブヘッド、14b,24b…バルブ本体、14c,24c…バルブステム、15,25…バルブシート、16,26…Oリング、17,27…圧縮スプリング、18…案内溝、21…ソケット本体、23…ゴムホルダ、29…キー部、32…ステム基部、33…ステム先端部、51…気体選択透過膜。
Claims (16)
- 燃料カートリッジに設けられ、バルブ機構を内蔵するノズル部を、燃料電池本体に設けられ、バルブ機構を内蔵するソケット部に挿入し、これらノズル部とソケット部とを接続する燃料電池用燃料カートリッジの接続構造において、
前記ノズル部は、前記燃料電池本体に接続された前記燃料カートリッジに曲げ荷重が加わった際に、前記ソケット部から離脱するように変形する樹脂部品を有することを特徴とする燃料電池用燃料カートリッジの接続構造。 - 請求項1記載の燃料電池用燃料カートリッジの接続構造において、
前記ノズル部は、その少なくとも一部が前記曲げ荷重に対して弾性変形することで、前記ソケット部から離脱することを特徴とする燃料電池用燃料カートリッジの接続構造。 - 請求項1または請求項2記載の燃料電池用燃料カートリッジの接続構造において、
前記樹脂部品はJIS K7171に基づく曲げ弾性率が1800MPa以下の樹脂からなることを特徴とする燃料電池用燃料カートリッジの接続構造。 - 請求項1ないし請求項3のいずれか1項記載の燃料電池用燃料カートリッジの接続構造において、
前記樹脂部品は、JIS K7114に準拠する純メタノールの浸漬試験において、質量変化率が0.3%以下、長さ変化率が0.5%以下、厚さ変化率が0.5%以下の樹脂からなることを特徴とする燃料電池用燃料カートリッジの接続構造。 - 請求項1ないし請求項4のいずれか1項記載の燃料電池用燃料カートリッジの接続構造において、
前記樹脂部品は、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、架橋高密度ポリエチレン、高分子量ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン、ポリプロピレンおよびプロピレン共重合体から選ばれる少なくとも1種の樹脂からなることを特徴とする燃料電池用燃料カートリッジの接続構造。 - 請求項1ないし請求項5のいずれか1項記載の燃料電池用燃料カートリッジの接続構造において、
前記ノズル部に内蔵された前記バルブ機構は分割構造を有することを特徴とする燃料電池用燃料カートリッジの接続構造。 - 請求項6記載の燃料電池用燃料カートリッジの接続構造において、
前記バルブ機構は、バルブヘッドを有するバルブ本体と、前記バルブ本体の先端側に設けられ、軸方向に分割されたバルブステムと、前記バルブヘッドを前記ノズル部内に設けられたバルブシートに押し付けて前記ノズル部内の液体燃料流路を閉状態に保つ弾性部材とを備えることを特徴とする燃料電池用燃料カートリッジの接続構造。 - 請求項6記載の燃料電池用燃料カートリッジの接続構造において、
前記バルブ機構は、バルブヘッドを有するバルブ本体と、前記バルブ本体の先端側に配置され、前記バルブ本体とは分割されたバルブステムと、前記バルブヘッドを前記ノズル部内に設けられたバルブシートに押し付けて前記ノズル部内の液体燃料流路を閉状態に保つ弾性部材とを備えることを特徴とする燃料電池用燃料カートリッジの接続構造。 - 燃料カートリッジに設けられ、バルブ機構を内蔵するノズル部を、燃料電池本体に設けられ、バルブ機構を内蔵するソケット部に挿入し、これらノズル部とソケット部とを接続する燃料電池用燃料カートリッジの接続構造において、
前記ノズル部またはソケット部のいずれか一方に前記燃料カートリッジの挿入方向に形成された案内溝と、前記ノズル部またはソケット部のいずれか他方に突出するように形成され、前記案内溝と係合して前記燃料カートリッジの挿入を案内するキー部とを具備し、前記案内溝は前記燃料電池本体に接続された前記燃料カートリッジに曲げ荷重が加わった際に、前記ノズル部を前記ソケット部から離脱させるように変形する樹脂からなることを特徴とする燃料電池用燃料カートリッジの接続構造。 - 請求項9記載の燃料電池用燃料カートリッジの接続構造において、
前記ノズル部は、前記曲げ荷重に対して前記キー部が外れるように前記案内溝が塑性変形することで、前記ソケット部から離脱することを特徴とする燃料電池用燃料カートリッジの接続構造。 - 請求項9または請求項10記載の燃料電池用燃料カートリッジの接続構造において、
前記案内溝が形成されたノズル部またはソケット部は、JIS K7171に基づく曲げ弾性率が1800MPa以下の樹脂からなることを特徴とする燃料電池用燃料カートリッジの接続構造。 - 請求項9ないし請求項11のいずれか1項記載の燃料電池用燃料カートリッジの接続構造において、
前記案内溝が形成されたノズル部またはソケット部は、JIS K7114に準拠する純メタノールの浸漬試験において、質量変化率が0.3%以下、長さ変化率が0.5%以下、厚さ変化率が0.5%以下の樹脂からなることを特徴とする燃料電池用燃料カートリッジの接続構造。 - 請求項9ないし請求項13のいずれか1項記載の燃料電池用燃料カートリッジの接続構造において、
前記案内溝が形成されたノズル部またはソケット部は、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、架橋高密度ポリエチレン、高分子量ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン、ポリプロピレンおよびプロピレン共重合体から選ばれる少なくとも1種の樹脂からなることを特徴とする燃料電池用燃料カートリッジの接続構造。 - 燃料電池用の液体燃料を収容するカートリッジ本体と、前記カートリッジ本体に設けられたノズル部とを備える燃料カートリッジと、
前記燃料カートリッジのノズル部と着脱可能に接続されるソケット部を有する燃料収容部と、前記燃料収容部から前記液体燃料が供給されて発電動作する起電部とを備える燃料電池本体とを具備し、
前記燃料カートリッジのノズル部と前記燃料電池本体のソケット部とは、請求項1ないし請求項13のいずれか1項記載の燃料電池用燃料カートリッジの接続構造を具備することを特徴とする燃料電池。 - 請求項14記載の燃料電池において、
前記起電部は、燃料極と、酸化剤極と、前記燃料極と前記酸化剤極とに挟持された電解質膜とを備えることを特徴とする燃料電池。 - 請求項15記載の燃料電池において、
さらに、前記燃料収容部と前記起電部との間に介在され、前記液体燃料の気化成分を前記燃料極に供給する気体選択透過膜を具備することを特徴とする燃料電池。
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