JP2007125657A - 金属構造物の加工装置および加工方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】電解加工によって電解液の消費が少なくかつ加工速度の速い施工ができる金属構造物の除去切断加工装置および加工方法を提供する。
【解決手段】加工電極10を備え加工対象物である金属構造物5の表面に設置されて加工電極10と金属構造物5の間に電解液環境を形成する加工ヘッド101と、加工電極10と金属構造物5の間に直流電圧を印加する電源装置12と、加工ヘッド101に接続されて加工ヘッド101から電解液7を回収する電解液回収経路34と、加工ヘッド101に接続されて加工ヘッド101に電解液7を供給する電解液供給経路33と、電解液回収経路34および電解液供給経路33に接続されて回収された電解液7を再使用するための成分の調整を行うするための電解液再生システム22とを備えている構成とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、原子炉内構造物等の金属構造物に対して切断除去等の加工を行う金属構造物の加工装置および加工方法に関する。
大型の金属構造物の保全、補修、廃棄などのための追加工や切断の手段としては、回転刃または砥石などによる切削や研削、研磨剤を高圧で吹き付けるアブレイシブウォータジェット切断、ガスの燃焼やプラズマの熱による溶断などが一般的に用いられている(特許文献1参照)。これらの方法は加工速度が速いのが特徴であり、切断面の加工精度や粗さに対する要求が厳しくない場合には有効である。
ところで原子炉内構造物の加工の場合、水中かつ狭隘な箇所を遠隔操作で加工する必要があるため、上記の方法の内で加工反力の大きな方法は剛性を確保するために装置が大型化するので利用できないことが多い。また、大量の研磨剤が放射性廃棄物となることや、加工時に溶融し飛散した金属による空間線量上昇、膨大な入熱による材料の変質や引張応力の残留など、原子炉内で適用するためには回避しなければならない様々な制約が伴う。
このような条件下ではしばしば放電加工が利用される。放電加工はパルス放電の熱と衝撃力による除去加工で型彫り加工に用いられる。この方法は加工精度が良く、またパルス放電であるため溶断などの方法に比べると入熱量が少ないのが特徴である。しかし、放電加工は溶断などの方法に比べて加工速度が遅い上に、加工工具である電極の放電による磨耗のため交換作業などが必要となるため、施工時間が長くなるというデメリットもある。
一方、放電加工と同様に型彫り加工として一般的に知られる電解加工は、加工対象を電気化学的に溶解させる加工方法で加工速度が速く、かつ加工工具である電極の磨耗も殆どない加工方法である。また、他の加工方法に比べると発生する熱は無視できるほど小さく、加工後の加工面の状態も滑らかである(特許文献2参照)。
特開平8−285996号公報 特開2002−292523号公報
電解加工は、加工対象となる金属部材を陽極とし、加工工具を陰極として、両極間に常に電解液を供給しながら行われる。この加工は通常大気中で金属部材と加工工具全体を閉じ込めて行うため、電解液は周囲に殆ど拡散することなく回収することができ、濃度変化も無視できる程度である。しかし電解加工を大型の金属構造物の加工に適用する場合には、加工方法の都合に合わせて構造物を移動または姿勢変更することは望めないため加工対象全体を閉じ込めることはできない。また特に水中で行われることが多い原子炉内構造物を対象とした作業の場合に、大気中での漏洩と比較して水に拡散した電解液は回収することが困難である。電解液による金属材料や施工環境への影響、これらを回収するためのコスト、および漏洩した電解質の補充を考慮すると、漏洩量を極力少なくする必要がある。
本発明は上述した課題を解決するためになされたものであり、電解加工によって電解液の消費が少なくかつ加工速度の速い施工ができる金属構造物の加工装置および加工方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明の金属構造物の加工装置は、加工電極を備え加工対象物である金属構造物の表面に設置されて前記加工電極と前記金属構造物の間に電解液環境を形成する加工ヘッドと、前記加工電極と前記金属構造物の間に直流電圧を印加する電源装置と、前記加工ヘッドに接続されて前記加工ヘッドから電解液を回収する電解液回収配管と、前記加工ヘッドに接続されて前記加工ヘッドに電解液を供給する電解液供給配管と、前記電解液回収経路および前記電解液供給経路に接続されて回収された電解液を再使用するための成分の調整を行うするための電解液再生システムとを備えている構成とする。
また、本発明の金属構造物の加工方法は、加工対象物である金属構造物の表面に加工電極を備えた加工ヘッドを設置する加工ヘッド設置ステップと、この設置された加工ヘッド内に電解液を供給する電解液供給ステップと、この電解液を供給された加工ヘッド内の加工電極及び前記金属構造物に直流電圧を印加する直流電圧印加ステップと、前記加工ヘッド内の電解液を回収する電解液回収ステップと、この回収された電解液を再生して再使用する電解液再生ステップと、を有する加工方法とする。
本発明によれば、電解加工によって電解液の消費が少なくかつ加工速度の速い施工ができる金属構造物の加工装置および加工方法を提供することができる。
以下、本発明に係る金属構造物の加工装置および加工方法の第1ないし第9の実施の形態について、図面を参照して説明する。
(第1の実施の形態)
図1は本実施の形態の金属構造物の加工装置の全体構成を示している。すなわち、水槽1内に加工ヘッド101が設置され、加工対象である金属構造物5が陽極、加工電極10が陰極となるように陽極側リード線15と陰極側リード線16によって直流電源12が接続されている。加工電極10には中心に電解液ノズル20が設けら、供給ポンプ27によって送られる電解液7を電解液ノズル20によって両極間に供給する。電解液7が周囲に拡散しないように保持容器21が加工電極10を取り囲むように配置されており、電解液7は、両極間の通電による電解反応で生成される固体生成物および気体生成物とともに電解液回収経路34を通して回収ポンプ28によって吸引回収される。回収された電解液は電解液再生システム22によって再生され、電解液供給経路33を通して再度電解液ノズル20から供給される。これによって電解反応の起きる両極間には生成物が堆積することなく常に新しい電解液7が供給される。
電解液再生システム22は、電解液7が沈殿槽23、遠心分離装置24、蒸発濃縮装置25および貯蔵槽26の順に送られるよう構成されている。回収された電解液7はまず沈殿槽23で比重差によって気体生成物と固体生成物を分離され、遠心分離装置24で更に固体生成物を取り除いた後、蒸発濃縮装置25に送られる。ここで必要に応じて回収時より濃縮された電解液7は貯蔵槽26内で溶質、溶媒の追加によって濃度を調整されて蓄えられる。蒸発濃縮装置25で濃縮時に生成される水は保持容器21からの余剰回収分であり、回収余剰水戻し経路35から水槽1へ戻される。
貯蔵槽26には、保持容器21からの漏洩や蒸発濃縮装置25での過剰濃縮や濃縮不足などによって体積減少や濃度変化が生じた場合に、電解液7の溶質または溶媒の追加を行う調整槽としての役割も果たすため、図示しないが水位計、電気伝導度計、温度計、撹拌装置、溶質追加用配管、溶媒追加用配管などが備えられている。
沈殿槽23および貯蔵槽26で分離された気体生成物は、気体生成物排気経路36a,36bからHEPAフィルタ30によって更に固形分を除去した上で白金触媒31を用いて成分中の水素ガスを酸化させ、生成された水は生成水回収経路38から沈殿槽23に戻し、残りの気体成分は大気に放出する。沈殿槽23および遠心分離装置24によって分離された固体生成物は、固体生成物保管経路37から固体生成物保管槽29に移されて一時保管され、最終的には放射性廃棄物として廃棄される。一般に、HEPAフィルタは、高通気性防塵フィルタをいい、通気性に優れ、集塵性能に優れさらに経時による性能低下が小さい等の特徴をもつ。
加工ヘッド101は図2に示すように、加工電極10と保持容器21と金属構造物5に接触して陽極となすための陽極端子106とを備え、の他に、加工電極10を金属構造物5の肉厚方向に送るための電極送り機構102と、加工ヘッド101を鉛直方向に位置決めするための位置決め機構103等によって支持されている。保持容器21と陽極端子106はそれぞれ保持容器押し付け機構104および陽極押し付け機構105によって金属構造物5に押し付けられる。加工電極10および陽極端子106にはそれぞれ陰極側リード線16、陽極側リード線15が接続され、これらが直流電源12に接続することにより電力が供給される。
保持容器21は開放端107が金属構造物5に対して押し付けられるように配置されており、開放端107の反対側は加工電極10が自由に出入りできるように貫通穴が設けられているが、この貫通穴は電解液7を漏洩させず、かつ加工電極10の動作を阻害しないような材質でできたシール部材108によって境界が保たれている。開放端107の周囲には、金属構造物5とこれに押し付けられた保持容器21との間隙から電解液7が漏洩しないようにシール部材109が設けられている。電解液ノズル20に電解液7を供給するために、加工電極10には電解液供給経路33が接続されており、電解液7を回収するために保持容器21には電解液回収経路34aが接続されている。金属構造物5の任意の位置を加工できるように加工ヘッド101は移動装置110によって移動され位置決めされる。
本実施の形態の金属構造物の加工装置は、供給ポンプ27および回収ポンプ28の上流側または下流側には流量や吐出圧力をそれぞれコントロールするために図示しない圧力計、流量計、弁などが付属しているが、これらを用いて供給ポンプ27による供給流量と回収ポンプ28による回収流量をそれぞれ個別に制御することにより、保持容器21から貯留水3に漏洩する電解液7の量をコントロールする。この場合、回収ポンプ28による回収流量を供給ポンプ27による供給流量より多くすれば漏洩量は減少する。電解液7は水槽1中の貯留水3を余剰に回収する分希釈されて電解液再生システム22に送られが、蒸発濃縮装置25で設定された電解液濃度まで濃縮し、余剰回収分の水を取り除くことができることから、貯蔵槽26で必要以上に電解質を加えること無く再び供給ポンプ27によって供給する際の電解液7の濃度をコントロールする。このように電解液の供給・回収・再生のサイクルにより、全加工時間を通して使用する電解質の補充量を抑え、流量と濃度の安定した電解液を供給することができる。
加工ヘッド101では、陽極端子106が金属構造物5に押し付けられて接触し、電解液ノズル20から電解液7が供給された状態で、位置決め機構103で鉛直方向の位置決めされた後に、電極送り機構102によって加工電極10を金属構造物5に接近させると、電解反応を生じさせるための直流電源12を電源とする電気回路を形成される。電解加工が進行するにつれ金属構造物5が溶出することによって両極間の間隙が広くなるが、電極送り機構102により加工電極10を移動させることにより、両極の間隙を一定に保つ。
開放端107側にシール部材109が配置された保持容器21は、保持容器押し付け機構104によって金属構造物5に押し付けられると金属構造物5の形状に合わせてシール部材109が変形することにより隙間をうめることができるため、電解液7の漏洩と貯留水3の吸込みによる過剰な希釈回収を防止して部分的に電解液7を保持した空間を作り出すことができる。また保持容器押し付け機構104は電極送り機構102や陽極押し付け機構105の動作と独立しているため押し付け量を制御することができるので、必要に応じて金属構造物5と保持容器21との間に隙間を作り出すことも可能である。これらにより、加工ヘッド101は電解液7の漏洩量、回収時の希釈量を制御しつつ、電解加工を実施することができる。
以上のように本実施の形態の金属構造物の加工装置によれば、貯留水3で満たされた水槽1の中に設置されている金属構造物5を移動させることなく除去加工または切断することができる。また、電解液7を循環再利用し、貯留水3中への漏洩量を低減させ、かつ継続した電解加工を実施できるので、水中に設置された金属構造物5の電解加工による除去加工および切断を電解液7の漏洩量を抑えて効率良く行うことができる。
(第2の実施の形態)
次に、本発明の第2の実施の形態に係る金属構造物の加工装置を図3を用いて説明する。なお第1の実施の形態と同一の構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
本実施の形態は第1の実施の形態の構成に加えて、電解液回収補助ポンプ32および電解液回収経路39が保持容器21から漏洩し水槽1内に溜まった電解液7を回収するように設けられており、代わって電解液再生システム22の蒸発濃縮装置25が省略されている。加工ヘッド101の構成は図2に示したものと同様である。
このように構成された本実施の形態の金属構造物の加工装置においては、水槽1に満たされた貯留水3を排水した上で、水槽1内に設置されている金属構造物5を移動させることなく除去加工または切断加工する。まず水槽1内の貯留水3を排水してから電解液7の供給・回収を行うため、回収ポンプ28が保持容器21から回収する電解液7、および電解液回収補助ポンプ32が水槽1の底部から回収する電解液7は、希釈されることなく沈殿槽23に回収することができる。よって電解液7は沈殿槽23から遠心分離装置24、貯蔵槽26の順に送られ、電解液濃縮のための装置は不要となる。また、保持容器21から漏洩した電解液7は水槽1内の貯留水3に拡散希釈されないため、保持容器21の性能や供給ポンプ27と回収ポンプ28の運転条件に関係なく水槽1内から電解液7の溶質を回収することができる。
本実施の形態の金属構造物の加工装置によれば、加工のために移動することの出来ない金属構造物5を電解加工するために使用する電解液7を循環再利用するためのシステム規模を低減し、かつ電解質7の回収作業を軽減することができる。
(第3の実施の形態)
次に、本発明の第3の実施の形態に係る金属構造物の加工装置を図4および図5を用いて説明する。なお第1、第2の実施の形態と同一の構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
本実施の形態の金属構造物の加工装置は、沸騰水型の原子炉2の炉内構造物であるシュラウド6を除去加工または切断するための装置である。すなわち、オペレーションフロア8上には直流電源12、供給ポンプ27および電解液再生システム22が設置されている。炉水4中には加工ヘッド101がシュラウド6の周方向に移動させるための旋回装置111に搭載されている。旋回装置111は上部格子板や炉心支持板、CRD(制御防駆動機構)ハウジング17などいずれかの炉内構造物に固定設置することができるが、図4ではCRDハウジング17に設置されている。回収ポンプ28も炉水4中に設置してあり、また図示していないが、加工ヘッド101および旋回装置111に動力を供給し、かつ動作を制御するための制御盤などもオペレーションフロア8上に設置される。
図5は旋回装置111およびこれに搭載された加工ヘッド101のの要部を示す水平断面図である。ここでは加工電極10の形状およびシュラウド6の切断の様子が分かるように、不要な部品を省略して、また一部断面図としている。加工電極10の先端の陰極面11はシュラウド6の肉厚方向に対して垂直でない角度で対面するように構成されている。よって加工電極10の陰極面11は電極送り機構102の送り方向に対しても、また旋回装置111の旋回方向117に対しても常に斜めである。
このように構成された本実施の形態の金属構造物の加工装置において、まずシュラウド6に対する水平および垂直方向の位置関係が明確な構造物に旋回装置111を固定・位置決めすることにより旋回装置111の旋回軸はシュラウド6の中心軸と一致させることができ、加工中の旋回動作を加工電極10の送りや保持容器押し付け機構104や陽極押し付け機構105の押し付け量などと独立して行うことができる。更に、旋回方向117に対して加工電極10の陰極面11が常に斜めとなるため、電解加工に寄与する電極面積をより大きくすることができる。電解加工において供給する電流を多くすることにより加工速度を早くすることができるが、電流密度があまり高い条件では電流効率が低下し、かえって加工速度を落とす結果となる。よって電極面積が大きいということは電流密度を上げずに大きな電流を電解加工に用いることができることになり、加工速度を大きくすることができる。また、加工電極10がシュラウド6を貫通して外面に露出した際の加工溝9を小さくすることができることから、陰極面11がシュラウド6の肉厚方向に垂直で貫通時に陰極面11全体が外面に露出してしまう場合に比べて加工溝9からの電解液7の漏洩量を抑えることができる。
本実施の形態によれば、原子炉内構造物であるシュラウド6の電解加工による除去加工および切断において、加工速度が速く、かつ電解液の漏洩量の少ない施工を行うことができる。
(第4の実施の形態)
次に、本発明の第4の実施の形態に係る金属構造物の加工装置を図6を用いて説明する。なお第1、第2、第3の実施の形態と同一の構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。図6は旋回装置111およびこれに搭載された加工ヘッド101の要部を示す水平断面図である。
本実施の形態においては、旋回装置111が旋回することによって陰極面11の長さ当りにシュラウド6と交わる面積が内周近傍と外周近傍で同じとなるように陰極面11の長さ方向に湾曲を持たせてある。すなわち、陰極面11形状が平面ではなく陰極面11の長さ方向(旋回方向)に湾曲した凸曲面を持つ加工電極10によってシュラウド6を切断する。
このように構成された本実施の形態の金属構造物の加工装置においては、旋回装置111が旋回することによって単位面積当りの陰極面11が除去する金属の体積をシュラウド6の内周近傍と外周近傍で同じにすることができる。陰極単位面積当りの加工速度が一定である場合に、陰極面11が平面であると単位旋回角度で除去しなければならない金属の体積は外周近傍の方が内周近傍より多くなるため、旋回速度を内周近傍の加工速度に合わせると外周近傍で両極が短絡してしまう恐れがある。逆に外周近傍の加工速度に合わせると、内周近傍では余分な電流が流れることによって加工面形状に悪影響が出る場合がある。陰極面11を凸に湾曲させることにより旋回装置111を一定角速度で旋回させたときの単位面積当りの陰極面11が除去する金属の体積をシュラウド6の内周近傍と外周近傍で同じにすることができる。
本実施の形態によれば、原子炉内構造物であるシュラウド6の電解加工による除去加工および切断において、一定旋回速度で加工した場合に極間短絡のトラブルが少なく、かつ加工面形状に悪影響の出ない加工を行うことができる。
(第5の実施の形態)
次に、本発明の第5の実施の形態に係る金属構造物の加工方法を図7を用いて説明する。なお第1から第4の実施の形態と同一の構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。図7は加工電極10による加工溝9がシュラウド6を貫通した後に加工電極10が旋回し、シュラウド6の切断を進めている状態を示している。なお、図中には加工電極10と電解液7の保持に関わる部品のみを示し、これに関わらない駆動機構などは省略してある。
本実施の形態においては、図示しない駆動機構によって電解液漏洩抑制部材112が電解加工によってできたシュラウド6の加工溝9側の加工電極10と保持容器21の間に挿入される。この電解液漏洩抑制部材112は加工ヘッド101の旋回とともに常に加工電極10と共に移動する。このようにして、シュラウド6の除去あるいは切断加工において、既に加工したシュラウド6にできた加工溝9からの電解液7の漏洩を抑制する。
本実施の形態の金属構造物の加工方法においては、加工電極10はまずシュラウド6の肉厚方向に加工した後に、旋回して加工を進める際にできる加工溝9からの電解液7の漏洩を電解液漏洩抑制部材112の挿入によって抑制することができる。また、電解液漏洩抑制部材112は加工ヘッド101の一部となり、装置の旋回と共に移動するため、加工によってできる加工溝9全体に挿入する必要がない。
本実施の形態によれば、原子炉内構造物であるシュラウド6の電解加工による除去あるいは切断加工における電解液7の漏洩量を少なくすることができる。
(第6の実施の形態)
次に、本発明の第6の実施の形態に係る金属構造物の加工方法を図8を用いて説明する。なお第1から第5の実施の形態と同一の構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。図8は図7と同様に加工電極10による加工溝9がシュラウド6を貫通した後に加工電極10が旋回し、シュラウド6の切断を進めている状態を示している。
本実施の形態においては、電解液漏洩抑制部材112は加工溝9に挿入された後に、接続されたエアチューブ115によって空気が供給され、内部に組み込まれたエアバッグ113がシュラウド6の外面にて膨らむようになっている。このようにして、シュラウド6の除去あるいは切断加工において、加工電極10がシュラウド6を貫通することによってできる穴からの電解液7の漏洩を抑制する。
本実施の形態の金属構造物の加工方法においては、エアバッグ113が加工電極10による貫通部分で膨張することにより、電解液7の漏洩する流路をふさぐ。また供給ポンプ27と回収ポンプ28の運転バランスを変化させて回収量過剰の条件にした場合には、エアバッグ113が回収ポンプ28の吸引力により加工溝9の貫通穴に吸着され封止効果を高めることができる。
本実施の形態によれば、原子炉内構造物であるシュラウド6の電解加工による除去あるいは切断加工における電解液7の漏洩量を低減し、かつ炉水4の電解液再生システム22への混入量を少なくすることができる。
(第7の実施の形態)
次に、本発明の第7の実施の形態に係る金属構造物の加工方法を図9を用いて説明する。なお第1から第6の実施の形態と同一の構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。図9は図7、図8と同様に加工電極10による加工溝9がシュラウド6を貫通した後に加工電極10が旋回し、シュラウド6の切断を進めている状態を示している。なお、図中には加工電極10と電解液7の保持に関わる部品のみを示し、これに関わらない駆動機構などは省略してある。
本実施の形態においては、SUS304やSUS316Lなどのシュラウド6と同じ材料でできた帯状の電解液保持部材114を、シュラウド6を加工し貫通する部位と一致するように、あらかじめシュラウド6外周部に設置する。このようにしてシュラウド6の除去あるいは切断加工において、加工電極10がシュラウド6を貫通することによってできる加工溝9の穴からの電解液7の漏洩を抑制する。
本実施の形態の金属構造物の加工方法においては、電解液保持部材114は加工電極10がシュラウド6を貫通した後の貫通穴の蓋の役目を果たすため、ここからの電解液7の漏洩を抑制し、また炉水4の過剰な回収を抑制することができる。また、電解液保持部材114はシュラウド6と同じ材料でできていることから、シュラウド6と同様に電解加工によって除去加工される。よって加工電極10の貫通時、また旋回時に接触して加工ヘッド101の動作を阻害したり、加工電極10がこれをシュラウド6から押し剥がして電解液7が漏洩したりすることがない。
本実施の形態によれば、原子炉内構造物であるシュラウド6の電解加工による除去あるいは切断加工における電解液7の漏洩量を低減し、かつ炉水4の電解液再生システム22への混入量を少なくすることができる。
(第8の実施の形態)
次に、本発明の第8の実施の形態に係る金属構造物の加工方法を図10を用いて説明する。なお第1から第7の実施の形態と同一の構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。図10(a)および図10(b)は図7、8、9と同様に加工電極10による加工溝9がシュラウド6を貫通した後に加工電極10が旋回し、切断を進めている状態を示している。なお、図中には加工電極10と電解液7の保持に関わる部品のみを示し、これに関わらない駆動機構などは省略してある。
本実施の形態においては、図10(a)に示すようにSUS304やSUS316Lなどのシュラウド6と同じ材料でできた加工溝挿入部材116を加工溝9の加工開始位置に挿入する。図10(b)に示す加工が進行した最終段階では保持容器21の旋回進行方向側が加工溝9に接近する。加工溝挿入部材116がない状態で保持容器21が加工溝9の上まで達すると、旋回進行方向の反対側で回避した加工溝9からの電解液7の漏洩が旋回進行方向側で発生することになる。これを加工溝挿入部材116を加工溝9に挿入することで、図10(c)のようにシュラウド6の加工対象部位が完全に除去されるまで、保持容器21は加工溝9に挿入された加工溝挿入部材116によって開放部を作ることなく電解液7を保持することができる。こうしてシュラウド6の除去あるいは切断加工において、加工電極10がシュラウド6を旋回切断する最終過程において加工溝9からの電解液7の漏洩を抑制することができる。また炉水4の過剰な回収を抑制することができる。
本実施の形態によれば、原子炉内構造物であるシュラウド6の電解加工による除去あるいは切断加工における電解液7の漏洩量を低減し、かつ炉水4の回収量を少なくすることができる。
(第9の実施の形態)
次に、本発明の第9の実施の形態に係る金属構造物の加工装置を図11を用いて説明する。なお第1から第8の実施の形態と同一の構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
図11は本実施の形態の金属構造物の加工装置の全体構成を示している。第1の実施の形態の図1に示した構成に加えて、電解液供給配管である電解液供給経路33および電解液回収配管である電解液回収経路34にそれぞれ電解液・水切替弁41,42を備え、また電解加工用の直流電源12は放電加工用のパルス電源14と切り替え使用できるような電源装置13と置き換わっている。
このように構成された本実施の形態の金属構造物の加工装置においては、電源装置13を直流電源12からパルス電源14に切り替えることにより、電解加工から放電加工に加工方法を切り替えることができる。金属構造物5と加工電極10の両極間に電解液7を供給する電解液供給経路33に設けた電解液・水切替弁41を供給源が貯蔵槽26から水槽1なるよう水供給用経路43側に切り替えることにより貯留水3の供給に切り替えることができる。また、電解液回収経路34に設けた電解液・水切替弁42を回収先が沈殿槽23から水槽1となるよう水回収用経路44側に切り替えることにより、電解液再生システム22での処理を省略することができる。このようにして、水槽1を満たす貯留水3の電気伝導度が放電加工を行うために十分低い場合において、電解加工と放電加工を併用して金属構造物5を移動させることなく除去あるいは切断加工を行う。
本実施の形態によれば、電解加工と放電加工とを併用することによって金属構造物の除去加工または切断を精密かつ効率良く行うことができる。
本発明の第1の実施の形態の金属構造物の加工装置の構成および物質の流れを示す図。 本発明の第1の実施の形態の金属構造物の加工装置に備えられる加工ヘッドおよび加工ヘッドを保持し駆動する機構の構成を示す図。 本発明の第2の実施の形態の金属構造物の加工装置の構成および物質の流れを示す図。 本発明の第3の実施の形態の金属構造物の加工装置の構成および物質の流れを示す図。 本発明の第3の実施の形態の金属構造物の加工装置の動作を説明する要部断面図。 本発明の第4の実施の形態の金属構造物の加工装置の動作を説明する要部断面図。 本発明の第5の実施の形態の金属構造物の加工方法を説明する要部断面図。 本発明の第6の実施の形態の金属構造物の加工方法を説明する要部断面図。 本発明の第7の実施の形態の金属構造物の加工方法を説明する要部断面図。 本発明の第8の実施の形態の金属構造物の加工方法を示し、(a),(b),(c)の順に進行する工程を説明する要部断面図。 本発明の第9の実施の形態の金属構造物の加工装置の構成および物質の流れを示す図。
符号の説明
1…水槽、2…原子炉、3…貯留水、4…炉水、5…金属構造物、6…シュラウド、7…電解液、8…オペレーションフロア、9…加工溝、10…加工電極、11…陰極面、12…直流電源、13…電源装置、14…パルス電源、15…陽極側リード線、16…陰極側リード線、17…CRDハウジング、20…電解液ノズル、21…保持容器、22…電解液再生システム、23…沈殿槽、24…遠心分離装置、25…蒸発濃縮装置、26…貯蔵槽、27…供給ポンプ、28…回収ポンプ、29…固体生成物保管槽、30…HEPAフィルタ、31…白金触媒、32…電解液回収補助ポンプ、33…電解液供給回路、34,39…電解液回収経路、35…回収余剰水戻し経路、36a,36b…気体生成物排気経路、37…固体生成物保管経路、38…生成水回収経路、41,42…電解液・水切替弁、43…水供給用経路、44…水回収用経路、101…加工ヘッド、102…電極送り機構、103…位置決め機構、104…保持容器押し付け機構、105…陽極押し付け機構、106…陽極端子、107…開放端、108,109…シール部材、110…移動装置、111…旋回装置、112…電解液漏洩抑制部材、113…エアバッグ、114…電解液保持部材、115…エアチューブ、116…加工溝挿入部材、117…旋回方向。

Claims (14)

  1. 加工電極を備え加工対象物である金属構造物の表面に設置されて前記加工電極と前記金属構造物の間に電解液環境を形成する加工ヘッドと、前記加工電極と前記金属構造物の間に直流電圧を印加する電源装置と、前記加工ヘッドに接続されて前記加工ヘッドから電解液を回収する電解液回収配管と、前記加工ヘッドに接続されて前記加工ヘッドに電解液を供給する電解液供給配管と、前記電解液回収経路および前記電解液供給経路に接続されて回収された電解液を再使用するための成分の調整を行うするための電解液再生システムとを備えていることを特徴とする金属構造物の加工装置。
  2. 前記加工ヘッドは、開放端を有して内部に電解液を保持する保持容器を備え、前記開放端を前記金属構造物に接触または近接させることにより電解液の漏洩を防ぐように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の金属構造物の加工装置。
  3. 前記電解液再生システムは、前記電解液に含まれる金属イオンまたは固体成分を遠心分離、沈殿濃縮及び膜分離の少なくともいずれか一つの手段により電解液から分離する固体生成物分離機能を有することを特徴とする請求項1に記載の金属構造物の加工装置。
  4. 前記電解液再生システムは、前記回収された電解液に含まれる気体生成物を遠心分離、沈殿、膜分離、超音波振動、加熱及び減圧の少なくともいずれか一つの手段により電解液から分離する気体生成物分離機能を有することを特徴とする請求項1に記載の金属構造物の加工装置。
  5. 前記電解液再生システムは、逆浸透膜、イオン交換膜を用いる膜分離及び電解液の溶媒と溶質の沸点差を利用する蒸発濃縮の少なくともいずれか一つの手段により前記回収された電解液の濃度を調整する濃度調整機能を有することを特徴とする請求項1に記載の金属構造物の加工装置。
  6. 前記保持容器から漏洩した電解液を吸引して前記電解液再生システムに送る電解液回収補助ポンプを備えていることを特徴とする請求項1に記載の金属構造物の加工装置。
  7. 前記金属構造物は、円筒形であり前記加工電極を前記金属構造物の円周方向に旋回させる旋回機構と、前記加工電極を前記金属構造物の肉厚方向に送る電極送り機構とを備えていることを特徴とする請求項1に記載の金属構造物の加工装置。
  8. 前記加工電極と前記金属構造物に前記直流電源と切替え接続されるパルス電源を備えていることを特徴とする請求項1に記載の金属構造物の加工装置。
  9. 前記金属構造物と前記加工ヘッドは水の中に設置され、前記電解液回収経路は前記加工ヘッドから回収された電解液を前記水に戻す切替弁を備え、前記電解液供給経路は前記水を前記加工ヘッドに供給する切替弁を備えていることを特徴とする請求項1に記載の金属構造物の加工装置。
  10. 加工対象物である金属構造物の表面に加工電極を備えた加工ヘッドを設置する加工ヘッド設置ステップと、この設置された加工ヘッド内に電解液を供給する電解液供給ステップと、この電解液を供給された加工ヘッド内の加工電極及び前記金属構造物に直流電圧を印加する直流電圧印加ステップと、前記加工ヘッド内の電解液を回収する電解液回収ステップと、この回収された電解液を再生して再使用する電解液再生ステップと、を有することを特徴とする金属構造物の加工方法。
  11. 前記加工電極が前記金属構造物を貫通した後に前記貫通部に臨む前記保持容器と前記加工電極の間に電解液漏洩抑制部材を配置することを特徴とする請求項10記載の金属構造物の加工方法。
  12. 前記加工電極の反対側の前記金属構造物の表面に前記加工電極の軌道に沿って電解液保持部材を設置することを特徴とする請求項10記載の金属構造物の加工方法。
  13. 前記電解液保持部材は、電気化学反応において前記金属構造物と同様に加工可能な材料であることを特徴とする請求項10記載の金属構造物の加工方法。
  14. 請求項1に記載の金属構造物の加工装置を用い、前記加工電極が前記金属構造物を貫通した後に、電気化学反応において前記金属構造物と同様に加工可能な加工溝挿入部材を前記貫通部に挿入することを特徴とする請求項10記載の金属構造物の加工方法。
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