JP2001219317A - 放電加工切断装置 - Google Patents

放電加工切断装置

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JP2001219317A JP2000032320A JP2000032320A JP2001219317A JP 2001219317 A JP2001219317 A JP 2001219317A JP 2000032320 A JP2000032320 A JP 2000032320A JP 2000032320 A JP2000032320 A JP 2000032320A JP 2001219317 A JP2001219317 A JP 2001219317A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 放射性物質の飛散を抑え、加工性能の維持が
充分に得られるようにした放射化材料の切断装置を提供
すること。 【解決手段】 水中放電加工装置の本体部2の加工電極
6による被加工物8の加工部分の近傍を、フード9によ
り囲み、スラッジSとガス気泡Gなどの放電加工による
二次生成物を含む水をフード9内に限定させるようにし
た上で、吸水パイプ10をフード9内に連通させ、水中
ポンプ11により吸引してフィルタ12と脱塩装置13
により浄化してから戻しパイプ14から水槽1内に戻す
ようにしたもの。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、放射化された金属
部材を放電加工により切断する装置に係り、特に原子力
プラントなどで使用された金属部材の処理に好適な切断
装置に関する。
【0002】
【従来の技術】原子力プラント内の炉内構造物など各種
の部材は、中性子の照射により放射化され、又は放射性
物質の付着により強い放射能を持っており、従って、例
えば新規部材との交換や補修、更には設備の廃棄などの
処理に際して、炉内構造物を切断する場合、放射線被曝
量低減の観点から、主として水中で処理される。
【0003】従って、水中での処理や操作性、原子炉圧
力容器内など狭隘部での作業環境などの見地から、遠隔
操作方式の水中放電加工による切断が有効な方法の一種
であると従来から認識されており、このため、例えば特
開平9−38831号公報や特開平10−43952号
公報では、水中での遠隔操作による加工や旋回式放電加
工方法について提案している。
【0004】そして、この放電加工のための電極材料と
しては、例えば特開平11−138349号公報に開示
されているように、一般的にはグラファイト製の電極が
使用されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】上記従来技術は、水を
加工液としたときの放射化された金属部材の放電加工に
ついて配慮がされているとは言えず、二次生成物による
作業領域の汚染と、加工中での性能低下に問題があっ
た。
【0006】すなわち、水中で放射化された金属部材の
放電加工を実行すると、二次生成物として、各種の放射
性物質を含むスラッジ(微粉状の加工屑)と、イオン及び
エアロゾルを含むガスが発生し、このため、環境が放射
能汚染されたり、加工液である水の純度が低下してしま
って、加工性能に影響が現われてしまうのである。
【0007】本発明の目的は、放射性物質の飛散を抑
え、加工性能の維持が充分に得られるようにした放射化
材料の切断装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記目的は、放射化され
た金属部材を水中放電加工により切断する方式の切断装
置において、放電加工用電極による加工部分の近傍を囲
うフードを設け、このフードの中から吸引した水を浄化
処理して循環させるようにして達成される。
【0009】このとき、前記加工用の電極が、タングス
テン−銀合金、タングステン−銅合金、タングステン−
金、タングステン−ニッケル合金のうちの少なくとも1
種類の合金を含む金属材料の複合体で作られているよう
にしてもよい。
【0010】また、ここで、前記放射化された物体が、
原子力プラントの構造部材又は原子炉容器内の機器の少
なくとも一方であり、前記水の浄化処理が、スラッジ回
収用のフィルタと、イオン性物質回収用の脱塩装置によ
り与えられるようにしてもよい。
【0011】また、前記フードの中から吸引した水の経
路に気水分離器が設けられ、この気水分離器で分離した
ガス分が粒子フィルタとチャコールフィルタで処理され
るようにしてもよい。
【0012】更に水平に回動する円板状の回転台を用
い、前記放電加工用電極が、この回転台の上面の周辺部
に設置されている水中放電加工装置の本体に取付けられ
ているようにしてもよい。
【0013】そして更に、前記放射化された金属部材
が、原子炉圧力容器内に水没されている円筒状構造物で
あり、この円筒状構造物の中に前記回転台が設置され、
前記回転台の回動により前記円筒状構造物が水中放電加
工され、切断されるようにしてもよい。
【0014】本発明では、フードがあるため、切断部近
傍から水が回収されるため、二次生成物の回収効率が高
くなり、炉水への拡散が抑制でき、このため炉水の濁り
による作業環境の悪化を防ぐことができる。
【0015】更に、この結果、二次生成物が炉壁などに
付着してしまう虞れが少なくなり、放射性エアロゾルの
作業エリアへの拡散が抑えられるので、炉水浄化時間の
短縮と除染作業の簡素化を得ることができる。
【0016】次に、本発明では、ポンプによりフード内
からガスと炉水を吸引する際、ポンプの前段に気液分離
装置を設置し、気液分離装置の水相の取り出し口を水処
理用フィルタに接続し、ガス相の取出し口を粒子フィル
タ及びチャコールフィルタに接続している。
【0017】ここで、気液分離装置により、スラッジを
含む水相とエアロゾルを含む気相とを分離すると、分離
した気相中には放射性のエアロゾル及び放射性カルボニ
ル化合物のガス成分が含まれている。
【0018】そこで、これらを粒子フィルタ及びチャコ
ールフィルタでそれぞれ回収し、作業エリアへの拡散と
作業員の被曝が防止されるようにする。このとき、水相
中での放射性のスラッジは水処理用フィルタで回収し、
炉水中に再放出されるのを防止する。
【0019】本発明では、放射化部材の放電加工用の電
極として、タングステン−銀合金などのタングステン系
金属電極を用いることができ、これにより、放射性二次
生成物の発生を抑制し、作業者の被曝が低減できる。
【0020】次に、本発明では、放電加工用の電極とし
て、旋回式の電極を用いることができる。ここで、旋回
式電極は、円盤状の電極を用い、これを回転させながら
加工するもので、生成されるスラッジが切断部から容易
に除去できる上、電極が均一に消耗するため、加工精度
が落ちず長時間の加工が可能となる。
【0021】また、本発明では、水相の一部を吸引し、
脱塩装置で処理することにより、水の導電率が20μS
/cm以下に維持されるようにしている。ここで、水の
導電率の上昇は放電状態に影響を与え、更に、この原子
炉の炉水中の導電率には規制値が設けられている。
【0022】そこで、電極を囲むフードの中から水を吸
引し、切断によって発生した電極成分と被切断材料から
発生したイオン成分を脱塩装置により回収し、炉水中の
導電率を維持するようにしてある。
【0023】
【発明の実施の形態】以下、本発明による放射化材料の
切断装置について、図示の実施の形態により詳細に説明
する。図1は、本発明の第1の実施形態で、図におい
て、1は放電加工用の水槽、2は水中放電加工装置の本
体部、3は制御部、4は保持部、5は支持台、6は加工
電極、7は水、8は被加工物、9はフード、10は吸水
パイプ、11は水浄化用の水中ポンプ、12は水浄化用
のフィルタ、13は水浄化用の脱塩装置、そして14は
戻しパイプであり、ここで、Sは水中に浮遊したスラッ
ジを、そして、Gは水中に浮遊したガスの気泡を夫々表
わす。
【0024】水槽1は、図示のように、所定の大きさの
ドラム状の容器で、放電加工液となる水7を貯え、後述
するように、この水7の中で水中放電加工装置による被
加工物8の切断が行えるようにする働きをする。
【0025】水中放電加工装置の本体部2は、保持部3
により支持台4の上に取付けられ、加工電極5を保持
し、この加工電極5の位置を変え、被加工物8の加工部
分に接触させながら放電加工用のパルス電圧を印加し、
放電加工を行う働きをする。
【0026】制御部3は、水中放電加工装置の本体部2
を制御し、加工電極5の位置を遠隔制御し、それに加工
用の電力を供給する働きをする。従って、これら本体部
2と制御部3、保持部4、それに支持台5により水中放
電加工装置全体が構成されていることになり、支持台5
により本体部2が水槽1内に設置されることになる。
【0027】そして、この実施形態では、加工電極1が
タングステンを主成分とする金属の一種であるタングス
テン−銀合金で作られており、これが水中放電加工装置
の本体部2に取付けられ、図示のように、水中で被加工
物8に対する放電加工に使用されるように構成してあ
る。
【0028】被加工物8は、切断加工の対象となる部材
で、原子力プラント内の各種炉内構造物など、放射線照
射により放射化され、又は放射性物質の付着により強い
放射能を持つ部材であり、図示のように、水槽1内の水
の中に沈められた状態で、支持台5に支持され、水7を
加工液として、加工電極6により放電加工され、切断さ
れるようになっている。
【0029】フード9は、加工電極6による被加工物8
の放電加工部分を、その近傍も含め所定の範囲にわたっ
て囲うようにして設けられた一種の覆いで、この中に放
電加工に伴って生成されたスラッジSとガスの気泡Gな
どの二次生成物を閉じ込め、周囲に拡散しないようにす
る働きをし、このフード9の中に水中ポンプ11の吸水
パイプ10が開口されている。
【0030】水中ポンプ11は、吸水パイプ10から、
吸水パイプ水槽1内の水7の内で、特にフード9により
囲われている部分にある水を吸い上げ、フィルタ12と
脱塩装置13を介して戻しパイプ14に送り、水槽1内
の戻す働きをする。
【0031】フィルタ12は、中に所定の濾過材が充填
してあり、これにより、水槽1内から取り込まれた水7
に含まれているスラッジSを回収する働きをする。脱塩
装置13は、中に陰イオン用と陽イオン用の各イオン交
換樹脂が充填されており、これにより、水槽1から取り
込まれた水7に含まれるイオン性の物質を回収する働き
をする。
【0032】次に、この実施形態の動作について説明す
る。まず、被加工物8を水槽1内に持込み、所定の位置
に据付けて固定し、次いで制御部3により水中放電加工
装置本体部2を制御し、加工電極6を動かして被加工物
8に接触させ、パルス電圧を印加して、放電加工による
被加工物8の切断を開始する。
【0033】そうすると、この放電加工に伴う二次生成
物として、各種の放射性物質を含むスラッジSと、イオ
ン及びエアロゾルを含むガス気泡Gが発生し、加工部の
近傍に浮遊するようになる。
【0034】そこで、放電加工の開始に際しては、水中
ポンプ11も一緒に動作させ、これにより、吸水パイプ
10によりフード9内から水7が吸引され、吸引された
水はフィルタ12と脱塩装置13を通った後、戻しパイ
プ14から水槽1内に戻されるという、水の循環が行わ
れるようになる。
【0035】そして、この水の循環過程において、まず
フィルタ12では、水中に浮遊しているスラッジSが回
収され、次いで脱塩装置13では、水に含まれているイ
オン性の物質が回収されるので、放電加工による水7の
純度低下が抑えられ、例えば導電率20μS/cm以下
に維持することができ、この結果、常に良好な放電加工
性能のもとで被加工物8の切断を行うことができる。
【0036】また、ガス気泡Gの中に含まれるエアロゾ
ルは、水中を移行中、フィルタ12と脱塩装置13を通
過することにより微細な気泡に分割されるため、ガス全
体としての表面積が増加するので、内包するエアロゾル
が水中に移行しやすくなり、この結果、水槽1内の水7
から放出されるエアロゾル量を低減できる。
【0037】このとき、この図1の実施形態によれば、
水中で加工電極6により放電加工されている部分がフー
ド9により囲われていて、このフード9内から直ちに水
中ポンプ11により水7が吸引されるようになってい
る。
【0038】従って、この実施形態によれば、二次生成
物として発生した各種の放射性物質を含むスラッジSと
イオン及びエアロゾルを含むガス気泡Gが水槽1内の水
7内に拡散されてしまうのを最小限に抑えることがで
き、放射能汚染と放射能被曝の虞れを充分に無くすこと
ができる。
【0039】また、このフード9により放電加工部が小
さな領域に区画されるので、放電加工部の近傍から水7
を強く吸引することができ、この結果、加工部からスラ
ッジが効率的に除去できるようになり、スラッジへの無
駄な放電が減少し切断効率が向上する。
【0040】従って、この実施形態によれば、二次生成
物を加工部分の近傍から効率よく回収できるため、水中
への二次生成物の拡散が抑制でき、機器や構造物への放
射性物質の付着が防止できると共に、作業に必要な水7
の透明度が確保できるという効果が得られ、更に、エア
ロゾルを含むガス分がフィルタ12と脱塩装置13を通
過することにより、作業エリアへの放射性エアロゾルの
拡散を低減できるという利点もある。
【0041】ところで、この図1に示した第1の実施形
態では、加工電極6として、タングステン−銀を主成分
とする金属の電極が使用されているので、スラッジSに
は、加工電極6を構成しているタングステンと銀の一部
もイオン化して含まれてしまうが、これも脱塩装置13
内でイオン交換樹脂により回収されるので、水7の純度
の保持に問題が生じることはない。
【0042】このように、加工電極6としてタングステ
ン−銀を主成分とする金属の電極を使用した場合は、電
極自体の加工が容易になり、厚さの薄い加工電極を使用
することができ、この結果、切断加工により発生するス
ラッジとエアロゾルの量を少なくすることができると共
に、加工電極の交換頻度が低くできるので、作業時間が
短縮され作業員の被曝量が低減できるという効果があ
る。
【0043】また、加工の際に、一酸化炭素やコバルト
カルボニルといった有害なガス成分の発生が抑制される
ので、人体への影響が少なく、被曝量も低減できるとい
う効果もある。
【0044】詳しく説明すると、グラファイトは放電加
工用の電極材料として広く用いられており、安価で、加
工も容易であるため、通常の放電加工においては適切な
材料といえる。しかし、比放射能の高い放射化材料の放
電加工に適用した場合には、放射能が飛散し易いという
特性があり、且つ、加工による消耗が著しいので、寿命
が短くなってしまう。
【0045】ここで、電極材料としてタングステン系の
材料、例えばタングステン−銀合金を用いた場合、グラ
ファイトに比較して機械的な強度が高いため、電極自体
を薄く加工することができるので、放電加工で切削すべ
き体積が減少し、放射性二次生成物の発生量を低減でき
る上、タングステン系金属は電極の加工性も良好で、通
常の押し切り型の電極や旋回式の回転電極として成形す
るのも容易である。
【0046】また、タングステン系の電極はグラファイ
ト電極に比較して放電による電極の消耗量も少なく、連
続した加工が可能になり、この結果、大型の炉内構造物
の切断など、長時間の使用に際しての電極の交換頻度が
抑えられ、メンテナンス作業に伴う作業員の被曝量を軽
減できる。
【0047】更に、気中でのメンテナンスのためには、
装置に付着した放射性のスラッジを洗浄し、除染する必
要があり、このための作業時間も必要となるが、メンテ
ナンス頻度の低減により作業行程全体の所用時間を短縮
できる。
【0048】なお、この第1実施形態では、水中放電加
工装置として、通常の電極固定式の装置が適用された場
合について説明したが、旋回式(円板状の電極を用い、
これを回転させながら放電加工する方式)の加工電極を
用いてもよい。
【0049】次に、本発明の第2の実施形態について、
図2により説明する。この図2に示した本発明の第2の
実施形態において、15は気水分離器、16は粒子フィ
ルタ、17はチャコールフィルタ、そして18はブロワ
てあり、その他の構成は、図1に示した第1の実施形態
と同じである。
【0050】気水分離器15は、水中ポンプ11により
吸引されたフード9内の水からガス分を分離し、ガス分
だけを粒子フィルタ16に供給する働きをする。粒子フ
ィルタ16は、例えばHEPA、ULPAなどと呼ばれ
ているフィルタで、ガス分から粒子成分を回収する働き
をする。
【0051】チャコールフィルタ17は、活性炭を吸着
材として用いたフィルタで、コバルトカルボニルのガス
分を回収する働きをする。ブロワ18は、気水分離器1
5で水から分離されたガス分を吸引して、大気中に放出
する働きをする。
【0052】次に、この第2の実施形態の動作について
説明する。なお、この第2の実施形態では、気水分離器
15でガス分が分離され、このガス分がブロワ18で吸
引され、粒子フィルタ16とチャコールフィルタ17を
介して大気中に放出されるようになっていること以外の
動作は、図1に示した第1の実施形態と同じなので、説
明は省略する。
【0053】この第2の実施形態では、放電加工により
被加工物8の切断を行っているときには、水中ポンプ1
1を動作させると共に、ブロワ18を動作させるように
なっている。この結果、気水分離器15で水からガス分
が分離されると、このガス分がブロワ18により吸引さ
れ、粒子フィルタ16とチャコールフィルタ17を介し
て大気中に放出される。
【0054】ここで、粒子フィルタ16に使用されてい
るHEPAフィルタは粒子成分捕収用のフィルタで、
0.3μmの微粒子に対して99.97%以上の捕収効
率を有しており、これでガス中に含まれるエアロゾルを
回収した後、チャコールフィルタ16によりコバルトカ
ルボニルのガス成分を回収しているので、放射能汚染や
被曝の虞れをもつことなく、このまま大気中に放出する
ことができる。
【0055】なお、この実施形態では、粒子性のエアロ
ゾル捕集のためにHEPAフィルタを用いたが、更に高
性能なULPAフィルタを用いてもよい。また、カルボ
ニル化合物のガス成分を捕収するのにチャコールフィル
タ17を用いているが、シリカゲルを用いたり、酸溶液
へバブリングすることによりカルボニル化合物のガス成
分を回収するようにしてもよい。
【0056】一方、気水分離器15でガス分が分離され
た水にはスラッジSとイオンが含まれているが、これら
はフィルタ12で回収され、続いて脱塩装置13に通液
されることにより、水中に含まれるイオン性の物質が回
収される。
【0057】このときの水には、電極成分であるタング
ステンと銀の一部が含まれてしまうが、これらはイオン
化しているので、脱塩装置13内にある陽イオン交換樹
脂と陰イオン交換樹脂により回収される。
【0058】従って、この図2の実施形態によれば、図
1に示した第1の実施形態により得られる効果に加え、
エアロゾルとガス成分が拡散するのを更に低減できると
いう効果が得られる。
【0059】ところで、この第2の実施形態でも、加工
電極6がタングステン−銀を主成分とする金属の電極が
使用されているので、上記した第1の実施形態と同様な
効果が得られるが、この第2の実施形態では、更に以下
に説明する効果も期待することができる。
【0060】放電加工用にグラファイト電極を使用した
場合には、電極が酸素と反応して有害なガスである一酸
化炭素が生成され、更に切断部近傍は放電により温度が
上昇しているため、生成された一酸化炭素と放射化材料
とが容易に反応し、例えばコバルトカルボニル化合物が
生成されてしまう。
【0061】そして、このカルボニル化合物は、低沸点
で低融点(融点51℃)であるため、室温下でも蒸気圧が
高く、気体としてふるまってしまうが、この場合、ガス
状成分は通常の粒子フィルタ(HEPA、ULPAなど)
では捕集できないので、ガス回収用のチャコールフィル
タ17にかかる負担が大きくなってしまう。また、この
とき、ニッケルが存在すると、ニッケルカルボニル化合
物(沸点42.3℃)を生成し、これもガス状で拡散性で
ある。
【0062】ここで、ニッケルは放射性核種ではないの
で、被曝管理上は問題無いが、被切断材であるSUSや
インコネル鋼中に数%〜70%程度含まれているため、
カルボニル化合物としての飛散量は多くなってしまう。
また、大量のニッケルカルボニルがチャコールフィルタ
17に捕収されると、相対的に放射性のコバルトカルボ
ニルの吸着容量が減少することになる。
【0063】これに対して、タングステン系の電極によ
る放電加工で発生するガスは、水素と酸素に限定される
ため、グラファイト電極使用時と異なり、一酸化炭素及
び一酸化炭素と金属との反応生成物であるカルボニル化
合物の生成が、以下に説明するように、大きく抑制でき
る。
【0064】すなわち、まずグラファイトとタングステ
ン−銀の2種の電極を用い、コバルトを主成分とする合
金であるステライトを被加工物として水中で放電加工
し、このとき発生するエアロゾルとガス状成分の定量的
な比較を行った結果、エアロゾル(粒子)となるコバルト
の総量は、2種の電極でほぼ同等であるのに対して、ガ
ス状成分となるコバルトの総量については、タングステ
ン−銀電極の方がグラファイト電極の1/4未満に減少
することが分っている。
【0065】このとき、ニッケルのガス成分は更に発生
量の差が大きく、タングステン−銀電極ではグラファイ
ト電極の1/40となる。また、一酸化炭素についてみ
ると、グラファイト電極では、生成されたガス中の22
%にも及ぶのに対して、タングステン−銀電極では、
0.2〜5.0%程度に抑制できる。
【0066】次に、本発明の第3の実施形態について、
図3により説明する。ここで、この図3の実施形態は、
沸騰水型原子炉圧力容器内で放射化した炉内構造物を当
該圧力容器内で放電加工して切断する場合に本発明を適
用したものであるが、ここでは、一例として、ステンレ
ス鋼製のシュラウドと呼ばれている炉内構造物の一種を
対象とした場合について説明する。
【0067】図3において、Aが沸騰水型原子炉圧力容
器で、内部に水7が満たしてあり、この中に炉心を囲ん
で設けられている円筒形の部材がシュラウドBであり、
従って、この実施形態では、このシュラウドBが被加工
物8になっており、これを加工電極6により放電加工し
て切断することになる。
【0068】ここで、まず、20は台座部で、厚みのあ
る円板状に作られ、図示のように、円筒形のシュラウド
Bの中に、図の上方から挿入して設置されている。次
に、21は回転台で、台座部20と同じく円板状に作ら
れ、台座部20の上に、水平に回動可能に取付けられて
いて、制御部3から遠隔制御して、任意に回動制御でき
るように構成してある。
【0069】そして、この回転台21の上の周辺部に放
電加工装置の本体部2が、その加工電極6が外側を向く
ようにして取り付けられている。従って、この回転台2
0を回動させることにより、放電加工装置の本体部2に
設けてある加工電極6の先端部を、被加工物8の円筒内
面に沿った円弧状の軌跡を辿って移動させることがで
き、このときの回動は制御部3により遠隔制御すること
ができる。
【0070】ここで、この図3には2台の本体部2が描
かれているが、この実施形態では、図には表れていない
が、回転台21の周辺部に等間隔で4台の本体部2が取
付けてある。但し、この本体部2の台数は1台でもよ
く、2台以上の任意の台数でもよい。
【0071】放電加工装置本体部2の加工電極6の近傍
には、図1と図2の実施形態と同じく、夫々フード9が
設けてあり、更に、これらのフード9の中に連通して吸
水パイプ10が夫々設けてあり、夫々可撓性の管路によ
り気水分離器15に連通されている。
【0072】そして、圧力容器Aの上方には、水中に没
した状態で、気水分離器15と共に水中ポンプ11とフ
ィルタ12、それに脱塩装置13が設けられ、水中ポン
プ11を動作させることにより、吸水パイプ10により
フード9内から水7が吸引されて水の循環が行われる点
は、上記した第1と第2の実施形態と同じである。
【0073】また、同じく圧力容器Aの上方には、粒子
フィルタ16とチャコールフィルタ17、それにブロワ
18が気中に設けてあり、気水分離器15で水からガス
分が分離されると、このガス分がブロワ18により吸引
され、粒子フィルタ16とチャコールフィルタ17を介
して大気中に放出される点は、上記した第2の実施形態
と同じである。
【0074】一方、この図3の実施形態では、更に圧力
容器Aの上方の水中に、水中ポンプ31とフィルタ3
2、それに脱塩装置33からなる炉水浄化システムが設
けてあり、これにより、フード9内の水とは別に、圧力
容器A内の水についての浄化が得られるように構成され
ている。
【0075】次に、この図3の実施形態の動作について
説明する。この実施形態では、被加工物8の切断加工
は、回転台21をゆっくりと回動させながら加工電極6
により放電加工することにより行われる。
【0076】そして、このとき発生した放射性核種を含
むスラッジや、イオン及びエアロゾルを含むガス気泡な
どの二次生成物は、加工電極6を囲むようにして設置し
てあるフード9の中から水中ポンプ11により吸引さ
れ、気水分離器15で水とガス分に分離される。
【0077】ここで、まず分離されたガスは、排気用の
ブロア18により吸引され、粒子フィルタ16とチャコ
ールフィルタ17を通って排気されるが、このとき粒子
フィルタ16でガス中に含まれるエアロゾルが回収さ
れ、その後、チャコールフィルタ17によりコバルトカ
ルボニルのガス成分が回収される。
【0078】一方、気水分離器15でガス分が分離され
た水はフィルタ12と脱塩装置13を介してから、戻し
パイプ14から圧力容器A内に戻され、フート9から圧
力容器Aを循環される◎このとき水中ポンプ11により
取込まれた水にはスラッジとイオン性の物質が含まれて
いるが、この内、スラッジはフィルタ12で回収され、
イオン性の物質は脱塩装置13で回収される。
【0079】また、このとき、加工電極6の成分である
タングステンと銀の一部もイオン化して水に含まれてい
るが、これらも脱塩装置13の中にある陽イオン交換樹
脂と陰イオン交換樹脂により回収される。
【0080】一方、このときは、炉水浄化システムの水
中ポンプ31を運転させ、炉水7を吸引させることによ
り、フード9内から回収しきれずに炉水7中に拡散して
しまったスラッジとイオンなどの二次生成物について
も、水浄化用のフィルタ32と水浄化用の脱塩装置13
により回収されるので、炉水の健全性も充分に確保する
ことができる。
【0081】この図3の実施形態によれば、第1の実施
形態及び第2の実施形態による効果に加え、原子炉圧力
容器A内にある被加工物8についても、当該容器Aから
外部に取り出すことなく、そのまま容器内で切断加工す
ることができるので、気中でのメンテナンスが不要にな
り、メンテナンス頻度の低減により作業行程全体の所用
時間を短縮できる。
【0082】また、この図3の実施形態でも、加工電極
6として、旋回式の電極を用いても良く、これにより、
電極の局所的な消耗が避けられ、長寿命化によるメンテ
ナンス頻度の低減を更に得ることができる。
【0083】ことろで、以上に説明した本発明の実施形
態では、いずれも加工電極6の材料としてはタングステ
ン−銀合金を用いているが、本発明の実施形態は、これ
に限らず、タングステン−銅合金、タングステン−金、
タングステン−ニッケル合金のうちの少なくとも1種類
の合金を含む金属材料の複合体を加工電極6として使用
してもよく、いずれによっても、タングステン−銀合金
の加工電極と同様な効果を得ることができる。
【0084】
【発明の効果】本発明によれば、水中での放電加工に伴
う二次生成物を加工部分の近傍に囲い込んだ状態から吸
引できるので、放射能の拡散と被曝を容易に最小限に抑
えることができる。そして、この結果、放電加工により
発生したスラッジが加工部分から効率良く除去されるの
で、切断効率の低下を抑え、効率的な切断加工を容易に
得ることができる。
【0085】また、本発明によれば、沸騰水型原子炉圧
力容器内で、放射化されている構造体の切断も、当該容
器内から取り出すこと無く切断加工することができるの
で、原子炉の部材交換や補修、廃止などに際しての放射
能の拡散と被曝を容易に最小限に抑えることができる。
そして、このときも、沸騰水型原子炉炉水の管理基準を
満たしたままで容易に作業を進めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による放射化材料の切断装置の第1の実
施形態を示す説明図である。
【図2】本発明による放射化材料の切断装置の第2の実
施形態を示す説明図である。
【図3】本発明による放射化材料の切断装置の第3の実
施形態を示す説明図である。
【符号の説明】
1 水槽 2 水中放電加工装置の本体部 3 制御部 4 保持部 5 支持台 6 加工電極 7 水 8 被加工物 9 フード 10 吸水パイプ 11 水中ポンプ 12 フィルタ 13 脱塩装置 14 戻しパイプ 15 気水分離器 16 粒子フィルタ 17 チャコールフィルタ 18 ブロワ 20 台座部 21 回転台 31 炉水浄化システムの水中ポンプ 32 炉水浄化システムのフィルタ 33 炉水浄化システムの脱塩装置 A 沸騰水型原子炉圧力容器 B 炉内構造物 G ガス気泡 S スラッジ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 植竹 直人 茨城県日立市大みか町七丁目2番1号 株 式会社日立製作所電力・電機開発研究所内 (72)発明者 武藤 寛 茨城県日立市幸町三丁目1番1号 株式会 社日立製作所原子力事業部内 Fターム(参考) 3C059 AA01 AB03 EA02 EB02 EB08 EC02 HA01 JA01 JA10

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 放射化された金属部材を水中放電加工に
    より切断する方式の切断装置において、 放電加工用電極による加工部分の近傍を囲うフードを設
    け、 このフードの中から吸引した水を浄化処理して循環させ
    るように構成したことを特徴とする放電加工切断装置。
  2. 【請求項2】 請求項1に記載の発明において、 前記加工用の電極が、タングステン−銀合金、タングス
    テン−銅合金、タングステン−金、タングステン−ニッ
    ケル合金のうちの少なくとも1種類の合金を含む金属材
    料の複合体で作られていることを特徴とする放電加工切
    断装置。
  3. 【請求項3】 請求項1又は請求項2に記載の発明にお
    いて、 前記放射化された物体が、原子力プラントの構造部材又
    は原子炉容器内の機器の少なくとも一方であることを特
    徴とする放電加工切断装置。
  4. 【請求項4】 請求項1乃至請求項3に記載の発明の何
    れかににおいて、 前記水の浄化処理が、スラッジ回収用のフィルタと、イ
    オン性物質回収用の脱塩装置により与えられるように構
    成されていることを特徴とする放電加工切断装置。
  5. 【請求項5】 請求項1乃至請求項4に記載の発明の何
    れかにおいて、 前記フードの中から吸引した水の経路に気水分離器が設
    けられ、 この気水分離器で分離したガス分が粒子フィルタとチャ
    コールフィルタで処理されるように構成したことを特徴
    とする切断装置。
  6. 【請求項6】 請求項1乃至請求項5に記載の発明の何
    れかにおいて、 水平に回動する円板状の回転台を用い、前記放電加工用
    電極が、この回転台の上面の周辺部に設置されている水
    中放電加工装置の本体に取付けられていることを特徴と
    する放電加工切断装置。
  7. 【請求項7】 請求項6に記載の発明において、 前記放射化された金属部材が、原子炉圧力容器内に水没
    されている円筒状構造物であり、 この円筒状構造物の中に前記回転台が設置され、 前記回転台の回動により前記円筒状構造物が水中放電加
    工され、切断されるように構成したことを特徴とする切
    断装置。
  8. 【請求項8】 請求項4に記載の発明において、 前記脱塩装置により処理された水の導電率が20μS/
    cm以下になるように構成されていることを特徴とする
    切断装置。
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