JP2007119810A - 被覆部材 - Google Patents

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Abstract

【課題】Al含有量がリッチな組成範囲において、耐摩耗性に優れ、且つ高温での強度、靭性が高い硬質皮膜を被覆した被覆部材を提供する。
【解決手段】基材表面に硬質皮膜を少なくとも1層以上被覆した被覆部材であって、該硬質皮膜は、(AlxMe1−x)の窒化物、炭化物、硼化物、酸化物、硫化物から選択される1種以上もしくはこれらの固溶体からなり、但し、MeはNb、Cr、Ti、Siから選択される1種以上、xは原子比で0.60以上、0.95未満からなり、該硬質皮膜の結晶粒子内部のAl含有量をA、結晶粒子界面領域のAl含有量をBとしたとき、B/A値が、B/A>1を満足することを特徴とする被覆部材である。
【選択図】図1

Description

本願発明は、超硬合金工具、サーメット工具、高速度鋼工具、ダイス鋼工具等の耐摩耗性を向上させる硬質皮膜を被覆した被覆部材に関する。
Al量が金属元素のみの原子%で60%以上含有するの硬質皮膜は、以下の特許文献1から3に開示されている。特許文献1は、硬質皮膜の組成式が(Al100−cで示され、M成分の選択肢から、Nb、Cr、Tiが存在することが開示されている。特許文献2は、皮膜組成が(AlSi)(NB)、0.5≦Al<1、0.5≦Si≦1、で示されるA層を少なくとも一層被覆された被覆工具が開示されている。A層は相対的にSiに富む相と、相対的にSiの少ない相からなり、A層にはアモルファス微細結晶(AlSi)(NB)が介在する。特許文献3は、(TiAl)(C1−d)からなる硬質皮膜で、Mは1種又は2種以上の金属および半金属元素、Al含有量であるbが0.8≦b≦0.95から構成される硬質皮膜を有する被覆工具が開示されている。
特許第3027502号公報 特開2002−337003号公報 特開2005−186166号公報
しかし、上記に開示されている技術には、Alの組成比を増加させて硬度を高めるにも限界がある。そのため硬度と耐酸化性を同時に高めていくことができず、結果として耐摩耗性の向上にも限界がある。即ち、軟質とされるZnS型のAlNは耐摩耗性を阻害し、ZnS型のAlNを含む硬質皮膜はそれ単体では耐摩耗性を発揮しない。これらを避けるために硬質皮膜のAl含有量が比較的少ない硬質皮膜と積層膜としており、いわゆる機能皮膜として使用されるに留まっている。本願発明の課題は、Al含有量がリッチな組成範囲において、耐摩耗性に優れ、且つ高温での強度、靭性が高い硬質皮膜を被覆した被覆部材を提供することにある。ZnS型のAlNを硬質皮膜内に存在しても、優れた耐摩耗性を発揮することができる被覆部材を提供することである。
本願発明の被覆部材は、基材表面に硬質皮膜を少なくとも1層以上被覆した被覆部材であって、該硬質皮膜は、(AlMe1−x)の窒化物、炭化物、硼化物、酸化物、硫化物から選択される1種以上もしくはこれらの固溶体からなり、但し、MeはNb、Cr、Ti、Siから選択される1種以上、xは原子比で0.60以上、0.95未満からなり、該硬質皮膜の結晶粒子内部のAl含有量をA、結晶粒子界面領域のAl含有量をBとしたとき、B/A値が、B/A>1を満足することを特徴とする被覆部材である。以下、該硬質皮膜を、Al必須硬質皮膜と記す。上記の構成を採用することにより、上記課題を解決することができる。
本願発明のAl必須硬質皮膜の結晶粒子径が15nm未満であり、少なくとも六方晶のB4構造に対応した制限視野回折パターンを示すことが好ましい。ZnS型のAlNが硬質皮膜内に存在する組成範囲の場合、同一組成の従来の皮膜に比べてもその効果が顕著に確認でき好適である。Al必須硬質皮膜のB/A値が、1<B/A<20であることが好ましい。更に、Al必須硬質皮膜が、硬質皮膜の総厚に対して、30%以上、99%未満からなり、残部が、(SiyMe1−y)の窒化物、炭化物、硼化物、酸化物、硫化物から選択される1種以上もしくはこれらの固溶体からなり、但し、MeはCr、Ti、Al、Nbから選択される1種以上、yは0.05以上、1未満であることが好ましい。以下、これをSi必須硬質皮膜と記す。Al必須硬質皮膜を単独又は、Si必須硬質皮膜と組み合わせ、切削工具に被覆した場合、優れた耐摩耗性を発揮することができ、切削工具としてはボールエンドミルが好適である。
本願発明によって、耐摩耗性に優れ、且つ高温での強度、靭性が高い硬質皮膜を被覆した被覆部材を提供することが可能となった。ZnS型のAlNを硬質皮膜内に存在する組成範囲においても、優れた耐摩耗性を発揮することができる被覆部材を提供することができた。本願発明により、耐摩耗性の要求される部材の寿命延長や切削加工をより高速化することができた。
本願発明のAl必須硬質皮膜は、Al含有量が金属元素のみの原子%で60%以上の組成範囲において、特に結晶粒子内部よりも結晶粒子界面領域にAl含有量を多く含有させることにより、硬質皮膜の耐摩耗性を著しく改善することを可能にした。金属元素のみの原子%で60%以上のAl含有量となる範囲では、Al含有量の増加に伴って硬質皮膜全体がZnS型のAlN相として成長する傾向にある。そのため硬度が低下する。しかし、本願発明のAl必須硬質皮膜は、結晶粒子に隣接した結晶粒子界面領域が結晶粒子とは結晶性が異なり、Alが濃化した結晶粒子界面領域として存在する。このことから、結晶粒子界面領域は、隣接する結晶粒子と夫々不連続な状態で存在し、結晶内部で発生した転移が結晶粒子粒界領域で阻害されるため、硬度低下を抑制することができる。これら結晶粒子界面領域は、結晶粒子内部よりも結晶性が悪いかもしくは非晶質として存在する場合、より耐摩耗性に優れ好ましい。これらは結晶粒子界面領域において転移の固着効果がより顕著であることを示唆している。これらの現象は、本願発明の中でも重要であり、結晶粒子内部のAl含有量をA、該結晶粒子界面領域のAl含有量をBとしたとき、B/A値が、B/A>1を満足することにより達成される。一方、B/A≦1の場合、転移の固着効果が十分ではなく、硬度低下は避けられない。本願発明のAl必須硬質皮膜のB/A値は、1<B/A<20であることが好ましい。より好ましい範囲は、1<B/A<4である。B/Aが20以上の場合、硬質皮膜が軟化する傾向を示し耐摩耗性に乏しくなる。B/A値は主に硬質皮膜の硬度や結晶構造を決定するパラメータであり、上記範囲に規定することが好ましい。
本願発明のAl必須硬質皮膜のx値は、原子比で0.60以上、0.95未満とする。x値が0.60未満の場合、耐摩耗性の効果的な改善は認められない。x値が0.95以上の場合、皮膜硬度の軟化が著しく耐摩耗性に乏しくなる。Al必須硬質皮膜を、(AlMe1−x)としたときのMe成分は、Nb、Cr、Ti、Siのうち少なくとも1種以上を含有することが重要である。Nbの添加効果は、ZnS型のAlNの析出を抑制することができる。皮膜硬度及びヤング率を向上させることが可能となり、優れた密着強度が得られる。Al及びSi含有量を向上させることができるため、耐酸化性に関しても良好となる。Nb添加は、酸化後に皮膜表面に形成される表面酸化物が、従来の(AlCr)N系及び/又は(AlCrSi)N系皮膜よりも微細構造を示し、酸素の内向拡散を抑制することができる。Cr及び/又はNbを添加した場合、硬度並びに耐熱性の改善が顕著である。例えばNb、Cr、Mo、W等のうちの2種以上とSiとの化合物質は、いずれも耐酸化性を有する高融点の金属間化合物であり、被膜材料として好適である。Tiを添加した場合は、特に高硬度に有効であり、何れの元素も本発明を達成することができる。上記の元素添加は同時に行うこともでき、ZnS型のAlN相はSi、Ti、Nb、Crの順に形成され易い傾向にあることから、被覆部材の使用環境に適する様に、皮膜の結晶性を最適化することが必要である。
更に、Nbは融点が2500℃以上と高く、密度が小さく、高温における強度と靭性とのバランスに優れている。即ち、Nbは他の高融点金属と広い濃度領域で固溶体、化合物相をもつことができるため、これらの固溶体、化合物相とを複合化させることで高温強度と靭性に優れた特性を有することができる。例えば、析出強化型のNb基合金材料のNb−Si系、Nb−Ti系等や、金属間化合物のNb−Al系等、この他にもMo、W、Ta、Zr等を固溶した固溶強化型Nb基合金材料等のNb系耐熱材料を硬質皮膜に存在させることが好適である。窒化Nbも高温域で安定な材料として硬質皮膜に存在させることが好適である。窒化Nbには、種々の元素比を有する材料が存在し、NbN、Nb、NbN等がある。この中でもNbNは高温環境における安定性が優れている。この理由は、NbとNの原子間の結合力が高いことによるものと考えられ、高温強度と靭性に優れた特性に影響を及ぼす。或は、Nb以外の合金元素や、拡散防止に有効な他の元素である、例えばB等を含有するものであってもよい。
本願発明のAl必須硬質皮膜は、結晶粒子径が15nm未満の場合、硬度と耐摩耗性に好適である。15nm以上の場合、硬度が低下する場合もある。より好ましい結晶粒子径としては、2nm以上、10nm未満である。
ZnS型のAlN相が存在する場合、特にZnS型のAlN相が結晶粒子界面領域に存在する場合、より高い硬度を示すことから好適である。ここで言う六方晶のB4構造に対応した制限視野回折パターンを示すこととはZnS型のAlN相が存在することを示すことを意味する。この場合、(100)であることが好ましい。
本願発明の硬質皮膜の好ましい層構造は、Al必須硬質皮膜が硬質皮膜全体の総厚に対して、30%以上、99%未満とし、残部を(SiMe1−y)の窒化物、炭化物、硼化物、酸化物、硫化物から選択される1種以上もしくはこれらの固溶体とし、但し、MeはNb、Cr、Ti、Alから選択される1種以上、yは0.05以上、1未満から構成されるSi必須硬質皮膜との積層構造にすることが好ましい。ここで、Si必須硬質皮膜のy値は、Al、Si必須硬質皮膜のy値と共通である。y値が0.05未満の場合は、その効果が確認できない場合がある。これら積層化により耐摩耗性、耐熱性、耐熱クラック性を改善することができ好ましい。Al必須硬質皮膜を硬質皮膜全体の総厚に対して、30%未満の場合、耐摩耗性の改善が認められない場合があり、99%以上の場合、硬質皮膜の耐剥離性が要求される湿式摩耗環境や、被加工材がHRC60以上の高硬度材において、耐摩耗性に乏しい場合がある。そこで、Al必須硬質皮膜を硬質皮膜全体の総厚に対して、30%以上、99%未満を好ましい範囲とする。Al必須硬質皮膜とSi必須硬質皮膜の積層構造は、2層以上、2000層未満が好ましい積層構造である。本願発明のAl必須硬質皮膜は、特にSi必須硬質皮膜との密着性にも優れる。Si必須硬質皮膜以外に他の硬質皮膜をAl必須硬質皮膜と積層しても本願発明の効果が得られ、適宜変更を施すことができる。例えば、密着強化層には、TiN、CrN、(TiAl)N、(AlCr)Nが挙げられる。最表層の摩擦を低減するために硬質炭素膜を被覆するとも可能である。
本願発明の硬質皮膜を被覆した被覆部材は、切削工具が最適である。特に耐熱性、耐摩耗性に優れることから切削工具へ被覆することにより、その効果が顕著である。ボールエンドミルに被覆することにより、優れた耐摩耗性を発揮することができる。この理由は、3次元形状を加工するボールエンドミルのチゼルエッジ近傍では切り屑厚さが薄く、常に被加工物と接触しながら加工するため、優れた耐熱性が要求されるからである。本願発明の硬質皮膜は、耐熱性に優れ、微細な結晶粒子と結晶性が異なる結晶粒子界面領域で構成されるため、熱拡散の防止に特に有効である。一方、チゼル近傍に比べ、高速度であるボール刃では断続加工となり、熱クラックが発生し易く、このような環境において、本願発明の硬質皮膜は、結晶粒子界面領域にAl高濃度領域が存在するためマイクロクラックの進展を抑制する効果に優れ、切れ刃若しくは硬質皮膜の欠損を防止することができる。
本願発明の硬質皮膜の被覆方法は、特に限定するものではないが物理蒸着法による被覆が好ましい。物理蒸着法の中でも特にアーク放電式イオンプレーティング(以下、AIPと記す。)法、スパッタリング(以下、SPと記す。)法が好適である。以下、本願発明を実施例に基づいて説明する。
本願発明の硬質皮膜をSP法により被覆した場合を述べる。基体は、Co及びV含有量の合計が8重量%の超微粒子超硬合金製のテストピース及び耐摩耗性の評価に用いる2枚刃ボールエンドミルを用いた。脱脂洗浄を十分に実施し、真空装置の容器内の冶具に配置した。冶具は1回転/分で自公転する。基体の温度は500℃となるよう加熱及び排気を行った。Arを容器内に導入し、容器内に設けられた電極間で放電することによりArのイオン化を行った。同時に基体にパルス状のバイアス電圧を印加し、イオン化されたArは基体に衝突することにより、基体のクリーニング及び活性化処理を行った。スパッタ放電を発生させる数種の希ガスと反応ガスとして窒素等を容器内に導入し、全体の圧力を0.35Pa、バイアス電圧を−120Vに設定した。容器内に複数配置したターゲット1及びターゲット2にターゲット全体の組成比がTi:0.7、Al:0.3となる金属ターゲットを設置し、夫々9kWの電力を供給した。ターゲット上で放電を開始し、AlTi窒化物を約3μm被覆した。硬質皮膜形成後、被覆基体の温度が200℃以下になるまで冷却し、容器から取り出した。得られた硬質皮膜を本発明例1とした。本願発明の硬質皮膜を得るための好ましい被覆条件は、特に限定するものではないが、印加バイアス値を−75Vから−220Vの範囲の高バイアス側に設定し、且つ周期的に変化させながら被覆を行うことである。従来、硬質皮膜の被覆条件のバイアス値が、−30Vから−60Vの低バイアス値であることに対して、本願発明は高バイアス側とした。
本発明例1の組成及び組織構造を以下の条件で実施した。硬質皮膜全体の組成はEPMA分析及びXPS分析により決定した。硬質皮膜の組織観察を透過電子顕微鏡(以下、TEMと記す。)により実施した。組織観察に用いる試料準備の方法は、試料とダミー基板とをエポキシ樹脂を用いて接着し、切断、補強リング接着、研磨、ディンプリング、Arイオンミーリングを行い、試料厚さが原子層厚さになる領域において、格子像観察、制限視野回折、微小部電子線回折、微小部EDX分析等を行い、組織構造を確認した。分析装置は、日本電子製JEM−2010F型の電解放射型TEMを用い、加速電圧200kVで組織観察を行った。制限視野回折像の撮影には、カメラ長を50cm、制限視野回折領域を1250nm及び140nmとした。微小部電子線回折は、カメラ長を50cm、ビーム径を1nmに収束させ、硬質皮膜の結晶性を同定した。微小部EDX分析は、ノーラン製UTW型Si(Li)半導体検出器を用い、1nm領域を分析した。微小部EDX分析の分析領域は、試料厚さが数原子層であるため1nmのビームが1.5nmまで広がっていないと考えられる。同様に微小部電子線回折の領域に関しても、1.5nmまでの広がりはなくX線の発生領域も同程度である。
本発明例1の硬質皮膜の金属成分をEPMA分析により測定した結果、組成が原子比でAl:0.68、Ti:0.32であった。TEMによる観察結果を説明する。本発明例1の1250nmφの制限視野回折像を図1に示す。図1より、本発明例1の硬質皮膜はFCC相と、(*)印部に示すHCP相に対応したリング状の回折斑を示した。図2に本発明例1の140nmφの制限視野回折像を示す。図2より、約100nmφ程度の広い範囲で結晶方位がほぼ揃っていることが確認され、基材に対して垂直方向に成長した柱状断面を示した。一方、TEM像から約10nm程度のドメイン毎にコントラストが変化していることから、100nm程度の幅を有した柱状に成長した柱状晶内に10nm程度の結晶粒子で構成されていることが確認された。図3にTEMによる格子像観察結果を示す。図3中の(1)が結晶粒子内部を示し、(2)がその結晶粒子界面領域を示す。図3中の(1)(2)に対応した微小部電子線回折像を図4、5に示す。微小部EDX分析結果を表1と図6、7に示す。
図4より、図3中の(1)は結晶粒子内部であることがわかる。図5より、結晶粒子界面領域である(2)は(1)に比べ結晶性が異なり、結晶性が悪いことがわかる。表1から、(1)のAl含有量は61.63原子%、(2)は67.69原子%であった。B/A値は1.098であり、本発明例1の結晶粒子界面領域はAl含有量の多いことがわかる。
本願発明の硬質皮膜の耐摩耗性を評価するために皮膜組成、B/A値、結晶粒径、結晶構造、膜厚比、積層膜の組成及び構造、成膜方法を変化させた試料を作成し、耐摩耗性の評価を実施した。詳細を表2、表3に示す。表中のSPはスパッタリング法、AIPはアーク放電式イオンプレーティング法であることを示す。比較例及び従来例に関しても、表2、表3に併記する。
耐 摩耗性を評価するための評価条件を以下に示す。評価結果は、逃げ面摩耗幅が0.1mmに達した切削長もしくは著しく不安定な加工状態、例えば火花発生、異音、加工面のむしれ、焼け等などの状態に達した時点における切削長を切削寿命として表3に示した。10m未満の切削寿命は切り捨てて表記した。
(切削条件)
工具:2枚刃ボールエンドミル(5mmR)
切削方法:高速仕上げ加工
被削材:マルテンサイト系ステンレス鋼、硬さHRC52
切り込み:軸方向、1.2mm、径方向、0.2mm
主軸回転数:20kmin−1
テーブル送り:4m/min
切削油:なし、ドライ切削(エアーブロー)
表3より、本発明例1から16は、比較例17から21、従来例22から25と比較して安定した切削寿命が得られ、耐摩耗性に優れていることが確認された。本発明例1は、Al含有量が金属元素のみの原子%で68%の場合の(AlTi)Nの場合を示す。比較例17との相違は、B/A値であり、被覆条件としては主にバイアス電圧が異なり、本発明例1が高バイアス電圧に対し、比較例17は低バイアス電圧とした。本発明例1は結晶粒内のAl含有量に比べ結晶粒子界面領域のAl含有量が多い場合であり、比較例17は結晶粒内部と結晶粒子界面領域のAl含有量に相違が認められない場合である。両者間には明らかに耐摩耗性に相違が認められた。本発明例1と比較例17の押込み硬さ値を比較すると同一測定条件化において、本発明例1が37GPa、比較例17が26GPaであったことからも、本発明例1が耐摩耗性に優れる要因を説明できる。本発明例1が比較例17に比べ優れた耐摩耗性を示す要因は、皮膜硬度改善効果のみならず、耐熱性改善、摩耗環境下における被加工材からの拡散抑制等が複雑に寄与していると考えられる。本発明例2は、Al含有量が72%の場合を示す。本発明例3、4は、密着強化層として最下層に約0.2μmのAl含有量が53%の(AlTi)Nを被覆し、その後、本願発明のAl含有量が60%の(AlTiSi)Nを被覆した場合を示す。本発明例4のAl必須皮膜には結晶粒子粒界領域に非晶質相の存在が確認され、特に優れた耐摩耗性を示した。本発明例5は、Al必須皮膜が(AlTiCr)Nの場合を示す。本発明例6、7は、Al必須皮膜が(AlCr)Nの場合を示す。本発明例7は、最下層に密着強化層として(AlTi)Nを被覆した。本発明例8は、Al必須皮膜が(AlCrNb)Nの場合を示す。結晶構造はFCC単一相であった。本発明例9は、Al必須皮膜が(AlCrSi)Nの場合を示す。本発明例10は、Al必須皮膜が(AlCrNbSi)Nの場合を示す。結晶構造はFCC単一相であった。本発明例11は、Al必須皮膜が(AlNb)Nの場合を示す。本発明例12は、本発明例2と同一組成とし、AIP法により被覆した場合を示す。AIP法においても本願発明の効果が確認された。上記の本発明例1から12の何れもが、耐摩耗性に優れる結果となった。
本発明例13から16は、本願発明のAl必須皮膜の上層にSi必須硬質皮膜を被覆した。これによって、更に耐摩耗性が改善され、本発明の上で好ましい形態となった。本発明例13は、本発明例1の上層に膜厚比で約20%の(TiSi)Nを被覆した場合を示す。本発明例14は、本発明例1の上層に膜厚比で約20%の(AlCrSi)Nを被覆した場合を示す。本発明例15は、本発明例1の上層に膜厚比で約20%の(AlCrSi)Nを被覆した場合を示す。本発明例16は、本発明例1の上層に膜厚比で約65%の(TiSi)Nを被覆した場合を示す。
比較例18は、Al含有量が55%の場合であり、耐摩耗性の効果的な改善は認められなかった。比較例19は、Al含有量が96%の場合であり、皮膜硬度の軟化が著しく耐摩耗性に乏しくなった。比較例20は、(AlZr)Nの場合、比較例21は、(AlV)Nの場合を夫々示す。Me成分元素に相当する元素がNb、Cr、Ti、Si以外であるため、耐摩耗性の改善は確認されなかった。
図1は、本発明例1の1250nmφの制限視野回折像を示す。 図2は、本発明例1の140nmφの制限視野回折像を示す。 図3は、本発明例1の透過電子顕微鏡による格子像観察結果を示す。 図4は、図3中の(1)に対応した微小部電子線回折像を示す。 図5は、図3中の(2)に対応した微小部電子線回折像を示す。 図6は、図3中の(1)に対応した微小部EDX分析結果を示す。 図7は、図3中の(2)に対応した微小部EDX分析結果を示す。

Claims (7)

  1. 基材表面に硬質皮膜を少なくとも1層以上被覆した被覆部材であって、該硬質皮膜は、(AlMe1−x)の窒化物、炭化物、硼化物、酸化物、硫化物から選択される1種以上もしくはこれらの固溶体からなり、但し、MeはNb、Cr、Ti、Siから選択される1種以上、xは原子比で0.60以上、0.95未満からなり、該硬質皮膜の結晶粒子内部のAl含有量をA、結晶粒子界面領域のAl含有量をBとしたとき、B/A値が、B/A>1を満足することを特徴とする被覆部材。
  2. 請求項1記載の該硬質皮膜の結晶粒子径が15nm未満であることを特徴とする被覆部材。
  3. 請求項1乃至2何れかに記載の該硬質皮膜が、少なくとも六方晶のB4構造に対応した制限視野回折パターンを示すことを特徴とする被覆部材。
  4. 請求項1乃至3何れかに記載の該硬質皮膜のB/A値が、1<B/A<20であることを特徴とする被覆部材。
  5. 請求項1乃至4何れかに記載の該硬質皮膜が、硬質皮膜の総厚に対して、30%以上、99%未満からなり、残部が、(SiMe1−y)の窒化物、炭化物、硼化物、酸化物、硫化物から選択される1種以上もしくはこれらの固溶体からなり、但し、MeはNb、Cr、Ti、Alから選択される1種以上、yは原子比で0.05以上、1未満であることを特徴とする被覆部材。
  6. 請求項1乃至5何れかに記載の被覆部材が切削工具であることを特徴とする被覆部材。
  7. 請求項6記載の該切削工具がボールエンドミルであることを特徴とする被覆部材。
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