JP2007117037A - 作業車両の油圧装置 - Google Patents

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伊佐夫 武智
Satoru Kinoshita
覚 木下
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Abstract

【課題】パワーステアリング機構の油圧配管を短くしながら気泡を除去を図る。
【解決手段】油圧ポンプを少なくとも2個設け、これら油圧ポンプ20A,20Bとミッションケース4とをサクション用配管97によって接続しミッションケース4内の作動油を吸い上げて機体複数個所に配設される油圧作動部を制御する制御弁に供給すべく構成し、サクション用配管97の流出側において第1の油圧ポンプ20Aのサクションメタル121A、第2の油圧ポンプ20Bのサクションメタル121Bの順に接続され、パワーステアリング機構の戻り配管124を第1の油圧ポンプ20Aのサクションメタル121Aに接続する。
【選択図】 図7

Description

この発明は、農用トラクタ等の農業機械、土木機械等作業車両の油圧装置に関し、特に油圧配管の構成に関する。
農用トラクタの場合、従来からミッションケースを作動油タンクとして油圧機器の作動用油として利用するため、エンジン近傍に設けて駆動されるギヤポンプ式の油圧ポンプによって上記作動油を吸い上げミッションケースの側面や上面に設置したコントロールバルブを介して作動各部に供給する構成とする(特許文献1)。そして、作動油を供給する油圧ポンプを複数設置し、その容量を異ならせて多岐の作動各部に対するコントロールバルブに適正に作動油供給を行なわせるよう構成している。例えば、トランスミッション内シフト部を作動する変速制御や装着作業機の昇降制御を司るメイン油圧回路への作動油供給には吐出容量の大きい油圧ポンプを使用し、機体の操向を司るパワステアリング系回路への作動油供給には比較的少量の吐出容量の油圧ポンプを使用している。
特開2004−201623号公報
ところで、作動油は作動各部を経てコントロールバルブのタンクポートからミッションケース内に還元されるが、この還元の際ミッションケース内に噴出状に戻されるため気泡が発生し易く、再度油圧回路に供給される際に上記気泡の発生によってキャビテーションが発生する恐れがある。
また、パワーステアリング機構のように油圧ポンプの近傍にバルブ及び作動部としてのパワーステアリングシリンダが配設される場合にはタンクポートからの作動油還元は遠方のミッションケースに戻す構成でなく直接油圧ポンプの上手側へ戻して再利用を図る構成とすると、配管長さを短くできて有利である反面、油圧ポンプからバルブ及び作動部、バルブのタンクポートを経て油圧ポンプに戻る循環経路が形成され、この場合には気泡が発生するとそのまま循環されてしまう結果キャビテーションの発生の恐れがある。
この発明は上記に鑑み、戻り油還元経路の構成に工夫を施し、発生気泡はタンク開放によって解消しながら配管構成を短く維持して構成の簡単化を図るもので、次の技術的手段を講じた。即ち、機体前部に設けるエンジンの動力で駆動される油圧ポンプを少なくとも2個設け、これら油圧ポンプ20A,20Bとミッションケース4とをサクション用配管97によって接続しミッションケース4内の作動油を吸い上げて機体複数個所に配設される油圧作動部を制御する制御弁に供給すべく構成する移動農機において、
上記油圧ポンプのうち第1の油圧ポンプ20Aは前輪操舵用のパワーステアリング機構の油圧制御弁72に作動油を供給し、第2の油圧ポンプは少なくとも機体に装着された作業機を昇降する作業機昇降用油圧制御弁80に作動油を供給する構成とし、作業機昇降用油圧制御弁80からの排出油路はミッションケース4に接続される一方、パワーステアリング機構の油圧制御弁72からの排出油路は前記第1の油圧ポンプ20Aの吸入部近傍に接続したことを特徴とする移動農機の構成とする。
このように構成すると、第1の油圧ポンプ20Aの作動によって供給される作動油は作業機昇降用油圧制御弁80に流入して該制御弁80の作動に伴いシリンダへの作動油供給及び排出によって作業機昇降を行う。一方第2の油圧ポンプ20Bの作動によって供給される作動油はパワーステアリング機構の油圧制御弁72に流入してステアリングハンドル操作に応じてパワーステアリングシリンダに作動油を供給及び排出して前輪の操舵を行なう。作業機昇降用油圧制御弁80から排出される作動油は排出油路を経てミッションケース4に還元され、パワーステアリング機構の油圧制御弁72から排出される作動油は第1の油圧ポンプ20Aの吸入部近傍に戻され、その一部は再び油圧ポンプ20Aに吸い上げられ作動油として所定の油圧制御弁に供給される。
請求項2に記載の発明は、サクション用配管97の流出側において第1の油圧ポンプ20Aのサクションメタル121A、第2の油圧ポンプ20Bのサクションメタル121Bの順に接続され、パワーステアリング機構の戻り配管124を第1の油圧ポンプ20Aのサクションメタル121Aに接続した請求項1に記載の移動農機とする。
このように構成すると、戻り配管124内の戻り油はサクション用配管97の延長部97aのうちで第1の油圧ポンプ20A寄り、即ち油圧ポンプ20B側に対し油圧ポンプ20A側との距離が近い位置に戻り配管124が接続される。ポンプ能力としての吐出量は第1の油圧ポンプ20Aの方が他のポンプ20Bよりも大である上、上記の通り戻り配管124は油圧ポンプ20A寄りに配設したものであるから戻り油一部はサクション用配管97の延長部97aを通じて第1の油圧ポンプ20Aに流入でき、気泡の循環をなくし得て気泡の除去が図れる。
請求項3に記載の発明は、第1の油圧ポンプ20Aの吐出容量は第2の油圧ポンプ20Bの吐出容量に対して大となし、サクション用配管97の流出側において第1の油圧ポンプ20Aのサクションメタル121A、第2の油圧ポンプ20Bのサクションメタル121Bの順に接続され、パワーステアリング機構の戻り配管124を第1の油圧ポンプ20Aのサクションメタル121Aから第2の油圧ポンプ20Bに至るサクション用配管の延長部97aのうちサクションメタル121A寄りに接続した請求項1に記載の移動農機とする。このように構成すると、戻り配管124を第1の油圧ポンプ20Aのサクションメタル121Aから第2の油圧ポンプ20Bに至るサクション用配管の延長部97aのうちサクションメタル121A寄り、即ち戻り配管124の接続位置が第2の油圧ポンプ20Bのサクションメタル121Bとの距離よりもサクションメタル121Aとの距離の方が短く設定すると、戻り油の一部は上記延長部97aを通じて吐出容量の大きい第1の油圧ポンプ20Aに導かれる。
請求項1に記載の発明は、第2の油圧ポンプ20Bから作動油の供給を受けるパワーステアリング機構は、油圧制御弁72からの排出油路が第1油圧ポンプ20Aの吸入部近傍に接続するから遠方のミッションケース4まで導く必要がなく配管が短くて済む上、パワーステアリング機構の作動油経路途中に存在する気泡は戻り油と共に第1の油圧ポンプ20Aの吸入部近傍に接続されるため該戻り油の一部が第1の油圧ポンプ20Aを経由してミッションケース4内に戻され気泡除去の状態を得ることができ、パワーステアリング機構の作動油配管内を循環流動することなく徐々に除去できキャビテーションの発生を防止する。
請求項2に記載の発明は、パワーステアリング機構の戻り配管124を第1の油圧ポンプ20Aのサクションメタル121Aに接続する構成であるから、第1の油圧ポンプ20Aの吸い込みが最も強く戻り配管124の戻り油の循環を阻止し、気泡による弊害を防止する。
請求項3に記載の発明は、第1の油圧ポンプ20Aの吐出容量は第2の油圧ポンプ20Bの吐出容量に対して大となし、パワーステアリング機構の戻り配管124を第1の油圧ポンプ20Aのサクションメタル121Aから第2の油圧ポンプ20Bに至るサクション用配管の延長部97aのうちサクションメタル121A寄りに接続した構成であるから、戻り油の一部は、サクション用配管97の延長部97aのサクションメタル121Aに近い側に戻されて該延長部97aを経てサクションメタル121Aに至ることができ、戻り配管124の戻り油の循環を阻止し、気泡による弊害を防止する。
以下、図面に基づいて、この発明の実施の形態を説明する。まず、構成から説明すると、符号1はトラクタで機体前部にエンジン2を搭載して設け、このエンジン2の後部にはクラッチハウジング3とミッションケース4を接合してシャーシ本体5を形成している。
ミッションケース4の後上部には油圧シリンダケース7が設けられ、この油圧シリンダケース7の左右両側部にはリフトアーム8,8が回動自在に枢着されている。油圧シリンダケース7内の単動式の油圧シリンダ10に作動油を供給することによりリフトアーム8,8が上昇方向に回動し、油圧シリンダ10から作動油を抜くことによってリフトアーム8,8が下降側に回動する。リフトアーム8,8の昇降回動は周知の方法によってなされ、油圧操作レバー11を操作するか、ステアリングハンドル12の近傍に設けた昇降スイッチ(図示省略)をON,OFF操作することによってリフトアーム8,8を上げ下げできる。
ミッションケース4の後部にはロワーリンク14,14が取り付けられ、このロワーリンク14,14と前記リフトアーム8,8との間にはリフトロッド15,15が介装連結されている。そして、トップリンク16、ロワーリンク14,14からなる3点リンク機構17の後部にはロータリ耕耘装置の如き作業機18が連結されている。
この実施例では、作業機として、ロータリ耕耘装置を連結したが、畔塗機やマルチフィルム敷設機、あるいは播種機であっても良い。
トラクタ1に装備される油圧機器を作動する油圧ポンプ20は、エンジン2の進行方向右側に前後2個取付けられており、エンジン2によって駆動されるギヤポンプ形態に構成される。油圧ポンプ20のうち、後側に取り付けられた油圧ポンプ20Aから取り出された作動油はミッションケース4右横に固着された減圧弁22に流入する。21はこの減圧弁22内に組み込まれたメインリリーフ弁である。また、前面に取り付けられた油圧ポンプ20Bからの作動油は後記のパワーステアリング機構の油圧バルブとしての油圧制御弁72に流入するよう構成している。
次に図2に示す油圧回路に基づいて上記減圧弁22と関連する油圧機器の構成について説明する。
減圧弁22は、その下手に設けられた複数個の油圧機器に所定の圧力の作動油を供給することを目的として介装されたものであり、このトラクタ1では走行モードを切り替える4WD用制御弁26、トラクタ1に連結される作業機18に駆動力を伝達したり遮断したりするPTO用制御弁28、走行系の4段変速装置を適宜切替える主変速用制御弁47,48、同じく高低2段の変速装置を切り替える高低速切替用制御弁32、機体の進行方向を切り替えるリバース用制御弁34、左右の後輪ブレーキ装置35を択一的に切り替える片ブレーキ用制御弁36,36が設けられ、これらのバルブに対して例えば20kg/cm2程度に減圧された圧力の作動油が送り込まれるように構成している。
前記4WD用制御弁26は機体の走行モードを2WD状態にしたり、4WD状態にしたり、旋回操作に連動して前輪を増速させたりすることができるものである。この4WD用制御弁26が中立状態にあれば走行モードは2WDの状態となり、作業中はソレノイド37が励磁されて等速クラッチ38が繋がって前輪9と後輪13が略同速で回転する4WD状態になり、ステアリングハンドル12を所定角度以上回して機体を旋回させるとソレノイド39が励磁されて前輪倍速クラッチ40が繋がり、前輪9が後輪13よりも速い速度で回転駆動するように構成している。
PTO用制御弁28はPTOクラッチ42に作動油を送ったりPTOクラッチ42から作動油を排出したりするもので、ソレノイド43が励磁されるとPTOクラッチ42に作動油が供給されてPTOクラッチ42が繋がって機体後部に軸支されているPTO軸44を回転させる。この場合、ソレノイド43のON,OFFは油圧操作レバー11の操作によって入切させる形態としてもよいが、操縦席近傍に設けた図示外のPTO入切スイッチでON,OFFさせるように構成してもよい。なお、この実施例では4WD用制御弁26とPTO用制御弁28のバルブ本体が一体重合化されていて1つのユニットA(図2で1点鎖線で囲っている)になっている。一般的にトラクタ1に最も必要な4WD用制御弁26とPTO用制御弁28とを一体化することにより配管を省略することができ構成を簡潔にすることができる。また、この実施例では4WD用制御弁26とPTO用制御弁28とは素材となるバルブボディを共用化しており、追加工のみ施して両者を区分けして生産コストを抑えている。図2において、PTO用制御弁28の仕様形態を変更したものを枠Sで囲って示す。この枠Sで囲ったものは、4WD用制御弁26とPTO用制御弁28が一体的に構成されている点は先に説明したものと同じであるが、このPTO用制御弁28は比例減圧弁29が介装されている点で異なる。この形態はPTOクラッチ42を徐々に接続する昇圧制御に利用される。
次に変速部について説明する。
主変速用制御弁は4段の変速が可能な主変速装置45を1速から4速まで切り替えるために設けられたものであり、この例では2個の制御弁47,48からなり、具体的には1・2速用主変速制御弁47と3・4速用主変速操作弁48を備える。1・2速用主変速制御弁47はソレノイド49又は50が励磁されると中立位置から1速又は2速位置に切り替わり、プッシュプルシリンダ51の前後いずれかの室に作動油が流入し、図示外のシフターを前後に切り替えて主変速装置45を1速又は2速に切り替える。
また、3・4速用主変速操作弁48はソレノイド52又は53が励磁されると中立位置から選択した側の変速位置に切り替わり、プッシュプルシリンダ54の前後いずれかの室に作動油が流入し、図示外のシフターを前後に移動させて主変速装置45を3速又は4速に切り替える。
高低速切替用制御弁32は高低速切替装置31を構成する高低2段の油圧クラッチ56,57を択一的に切り替えるものであり、操縦席近傍に設けた切替スイッチを操作するとソレノイド58が励磁され、「低速」から「高速」に切り替わる。常態においては低速側の油圧クラッチ57が繋がっており、ソレノイド58が励磁されたときだけ高速側クラッチ56が繋がるように構成している。
なお、この実施例では主変速操作弁47,48と高低速切替用制御弁32のバルブ本体が重合一体化されて1つのユニットB(図2では1点鎖線で囲っている)になっている。
また、リバース用制御弁34は機体の進行方向を切り替えるために設けられたものであり、ステアリングハンドルポスト59に設けられたリバースレバー60を前後方向に移動操作することによって機体が前後進する。即ち、リバースレバー60を前進側に操作すると前進感知のスイッチが入ってソレノイド61が励磁されてリバース用制御弁34が前進側に切り替わり、前進クラッチ63が繋がって機体は前進する。
反対にリバースレバー60を手前(後方)に引くと後進感知のスイッチが入ってソレノイド62が励磁されて後進クラッチ64が繋がり、機体は後進する。
後輪ブレーキ装置35は後輪デフ装置66を挟んで左右に夫々設けられ、左右独立したブレーキペダルを操作して後輪13に制動を掛けることもできるが、油圧アクチュエータ(油圧シリンダ)68により旋回内側の後輪ブレーキ装置66を制動することもできるようになっている。この場合は、ステアリングハンドル12操作と連動されており、ステアリングハンドル12を操作して前輪9の操舵角が所定の角度を越えると旋回内側の油圧アクチュエータ68が作動してブレーキ制動による小回り旋回が行なえるようにしている。
このため、ステアリングハンドル12と片ブレーキ用制御弁36のソレノイド70,71とは連動しており、ステアリングハンドル12の回動部に設けた操舵角センサ(図示省略)と上記ソレノイド70,71とは電気的に連係されている。なお、前記リバース用制御弁34と片ブレーキ用制御弁36はバルブ本体が重合一体化されて1つのユニットC(図2では一点鎖線で囲っている)を構成している。
また、この実施例では、主変速装置45を切り替える時、言い換えると、1・2速用主変速制御弁47と3・4速主変速制御弁48が作動して変速操作が行なわれるときには、まず、リバース用制御弁34が一度中立位置に戻り、主変速操作が完了して前記リバース用制御弁34が元の状態に復帰するようにしている。即ち、前後進クラッチ63,64がメインクラッチの代わりをなすように構成している。
次にメイン油圧回路構成について説明すると、減圧弁22を通過した高圧の作動油は油路76を通り、分流弁78に導かれてここで2つに分流され、1つは作業機18をローリング制御する水平制御弁79に流入し、残りは作業機18を昇降させる作業機昇降用油圧制御弁80に流入する。
水平制御弁79は機体に搭載した傾斜センサ(図示省略)のローリング角度検出に連動して切り替わる従来周知の構造であって、前記傾斜センサがトラクタ1の左右ローリングを検出するとソレノイド82又は83のいずれか一方を励磁し、水平制御弁79を適宜切り替えて作業機18を水平に制御する。符号84はローリングシリンダである。このローリングシリンダ84はリフトアーム8とロワーリンク14を繋ぐリフトロッド15の一方に介装される。
また、この水平制御弁79に至る油路76の途中には絞り86を設け、更に作業機昇降用油圧制御弁80の排出側油路87にも絞り88を設けている。前記2つの絞り86,88を設けることにより油路76内に圧損を生じさせ、エンジン2が低回転でアイドリングの状態であっても減圧弁22の下流で約20kg/cm2程度の圧力が得られるようにしている。なお、作業機昇降油圧制御弁80の排出側油路87はミッションケース4内に導かれる構成としている。
なお、前記の作業機昇降用油圧制御弁80は出願人が以前にも出願している公知の構成であるので詳細な構造の説明は省略するが、上昇側比例弁80aと下降側比例弁80bとで構成されている。上昇側油路89には油圧シリンダ10とサブシリンダ90が接続される。メインの油圧シリンダ10とサブシリンダ90との関係については後述する。
ステアリング機構はパワーステアリング機構に構成されており、ボンネット内の左右一側には、パワーステアリング機構の油圧制御弁(オービットロール)72が配設されている。該油圧制御弁72は、例えばブラケット等を介してエンジン2へ直接取り付けられており、油圧制御弁72の後端部はユニバーサルジョイントを介してステアリングロッド73の先端部と連結されている。該ステアリングロッド73の後端部はユニバーサルジョイント、ステアリングコラム軸を介してステアリングハンドル12と連結されている。従って、ステアリングハンドル12を回転操作すると、この回転に伴って油圧制御弁72が作動するように構成している。
また、油圧制御弁72からは油圧配管74a,74bが延出しており、該油圧配管74a,74bとパワーステアリングシリンダ75が油圧ホース77a・77bにより連結されている。そして、該油圧制御弁72の作動により、ステアリングハンドル12の回転方向・回転操作量に応じて、油圧配管74a又は油圧配管74bから、パワーステアリングシリンダ75へ作動油が圧送され、前輪9,9が操向されるように構成している。
図3は前記油圧回路を組み込んだトラクタ1を平面から見て模式的に表したものである。
同図から明らかなように進行方向に対してミッションケース4左側の側壁にはリバーサ用制御弁34が固着され、これに重なるように片ブレーキ用制御弁36が設けられてユニットCが取り付けられている。同じ側の後方寄り箇所には主変速制御弁47,48と高低速切替制御弁32が一体になったユニットBがミッションケース4の外壁に直に取り付けられている。
ミッションケース4の反対側(右側)には減圧弁22と4WD用制御弁26が一体になったユニットAが直に取り付けられ、減圧弁22と油圧ポンプ20とは鋼製の配管92で接続されている。ユニットAとユニットBとはミッションケース4内においてミッションケース4自体に横向きに穿設された油路94により接続される。ユニットAとユニットBは配管を全く使わずにケース4に設けた油路94を介して接続されている。
そして、ユニットBとユニットCも同様に一切の配管を用いずにミッションケース4に前後方向に穿設した油路95を介して接続されている。
同図において、符号97はサクション用の配管である。油圧タンクを兼ねるミッションケース4からこの配管97を介して吸い込まれた作動油は油圧ポンプ20Aにより減圧弁22を経て他の油圧機器に向けて送り出され、あるいは油圧ポンプ20Bを経て油圧制御弁72に送り出される。
図2でも説明したように減圧弁22で所定圧まで減圧された後の作動油は全てミッションケース4内に穿設した油路を介して各油圧機器に送り込まれる。
図4乃至図6はミッションケース4の断面を取ったもので、ミッションケース4内に組み込まれている前後進クラッチ63,64やPTOクラッチ42といった油圧機器と、そこに至るまでの油路との関係をより具体的に表したものである。
図4において、ミッションケース4はフロントミッションケース4aとスペーサミッションケース4bとからなりこれら2つのケース4a,4bが前後方向において合体されている。ミッションケース4の右側には油路100が形成され、PTOクラッチ42のシリンダ室42a中に作動油が流入するとピストン101が前側に移動して摩擦板を圧着してPTOクラッチ42を繋ぐ。
4WD用制御弁26を通過した作動油はスペーサミッションケース4b内において左右方向に穿設した油路102を通って等速クラッチ38と前輪増速クラッチ40を支持している前輪駆動軸105内部の軸芯方向に沿わせて設けた油路に入り、4WD用制御弁26を切り替えることにより、等速クラッチ38のシリンダ室に作動油が入ったり、前輪増速クラッチ40のシリンダ室に作動油が入ったりして2WDの状態、又は4WDの状態、あるいは前輪増速クラッチ40が繋がって前輪9が後輪13より速く回転する状態になるようにしている。更に詳述すると、等速クラッチ38が繋がると前後輪9,13が略同速で回転駆動される4WDの状態になり、増速クラッチ40が繋がると前輪9が後輪13よりも速く回される前輪増速状態になり、両方のクラッチが切られると2WDの状態になるように構成している。
ミッションケース4の左側部分について説明すると、減圧弁22から同ケース4を横切る形で設けられた油路94はミッションケース4の中壁に設けられており、作動油はこの油路94を通って主変速用制御弁47,48内に流入する。
そして、これらの主変速用制御弁47,48を出た作動油は更にミッションケース4の壁に設けられた油路を通ってプッシュプルシリンダ51,54内に流入する。主変速用制御弁47,48と一体的に構成された高低速切替用制御弁32は常態では低速クラッチ57側に切り換わっている。
ミッションケース4の左側において前後方向に沿わせて設けた2本の油路110,111は低速クラッチ57と高速クラッチ56に至る油路であり、この油路110,111から高低変速軸113内の油路を通って低速クラッチ57と高速クラッチ56に連通する。
また、油路94を左から右に横切った作動油は油路95を通ってミッションケース4の前側に送られてリバース用制御弁34に入り、壁に形成した油路115を通って前進クラッチ63と後進クラッチ64を支持しているリバース軸120の油路(図示省略)に流入し、前進クラッチ63又は後進クラッチ64のシリンダ室に流入する。クラッチの切替え・選択はリバースレバー60により行なわれる。
ここで前記油圧ポンプ20A,20B作動に伴う該ポンプ周辺の作動油の流動について説明する。前記サクション用配管97は2つの油圧ポンプ20A,20Bに供給可能に各ポンプ20A,20Bの下部に設けるサクションメタル121A,121Bに分岐供給可能に接続される。一方油圧ポンプ20Aの吐出側メタル122Aには前記減圧弁22への配管92を接続してなり、油圧ポンプ20Bの吐出側メタル122Bには前記油圧制御弁72への配管123を接続している。
油圧ポンプ20Aと油圧ポンプ20Bとは、変速制御や装着作業機の昇降制御を司るメイン油圧回路への作動油供給を行なう油圧ポンプ20A側への送油量がパワーステアリング機構への作動油供給を行なう油圧ポンプ20B側の送油量より大となるよう選択されている。
前記パワーステアリング機構からの戻り油は、後方のミッションケースに戻されることなく、前記サクション系に戻される。即ち油圧制御弁72のタンクポートからオイルクーラ119を経た戻り油は、戻り配管124によって還元されるが、該戻り配管124は前記油圧ポンプ20A側のサクションメタル121A側に接続されている(図7)。このように構成することにより、戻り油の大半は油圧ポンプ20A側に流入し前記メイン油圧回路へ供給されることとなる。なお、メイン油圧回路内を作動油として供給された後、該メイン油圧回路内における各種バルブの戻り油ポート等からの戻り油は直接ミッションケース4内に戻される構成としている。
パワーステアリング機構からの戻り油を油圧ポンプ20Bのサクションメタル121B側に流入させる構成とすると、戻り油は全部油圧ポンプ20B側に吸い込まれて再び油圧制御弁72に供給されるものとなり、つまり循環経路が形成されることとなるから、一旦作動油中に気泡が発生するとその除去は困難となる。
ところが、前記メイン油圧回路内においては、作動油として供給された後各種バルブのタンクポート等からの戻り油は直接ミッションケース内に戻される構成であるから気泡の除去をはかることができ、上記のようにサクションメタル121A側に戻すことにより、気泡の循環が解消されるため、キャビテーションの発生を防止する。
また、図8におけるように、戻り配管124は、前記サクション用配管97のうち油圧ポンプ20Aと油圧ポンプ20Bとの間における分岐部97aの所定油圧ポンプ20A寄りの位置、例えばサクション用配管97接続位置から戻り配管124の接続位置までの距離L1は、上記分岐部97a長さL2に対し、L1<(L2/2)に設定している。このように設定することで、戻り配管124からの戻り油一部がサクションメタル121A側に戻されるため、気泡の循環が徐々に解消できる。ここで、L1長さは油圧ポンプ20A,20Bの吐出能力や戻り油量等から勘案して設定するものである。
図9における例は、戻り配管124がサクション用配管97のサクションメタル121Aよりも上手側に接続されたものである。このように構成すると、前記図7のサクションメタル121Aに戻す構成と同様に戻り油の大半が油圧ポンプ20Aに流入できる。
図10はサクション用配管97において、サクションメタル121Aに至る手前側から細径の配管97bを採用する。細径によって流速を速め、作動油中に発生する大きな気泡を小さな気泡化とさせることができ、エア溜りの状態を少なくしキャビテーションの発生を少なくさせる。
図11は、前記減圧弁22で減圧された作動油を利用して油圧作動部を制御する複数個の制御弁26,28,32,34,36,47,48のうち、ミッションケースの側部に取り付けられた制御弁のタンクポートから作動油をミッションケース内に戻す構成の改良に関する。油面より上位にある制御弁のタンクポートから油面下に戻すパイプ125を接続している。従来制御弁がミッションケースの側面に取付られている場合に戻り油は横向きに噴出すため、内部の回転ギヤに直接噴出されて気泡発生の原因となっていた。上記のようにパイプ125で接続すると直接油面下に排出させることができ、上記の欠点を解消し得る。なお、126はパイプ125の入り口部に形成する鍔部で、この鍔部126は制御弁のタンクポートに形成する嵌合孔に嵌合しパイプ125外形と略同径としたミッションケース受入口との間で固定するもので簡単容易に固定でき、固定機能とシール機能を兼用する構成である。また、図12はパイプをU字状に形成したパイプ127としている。このように構成すると、戻り油を油面下のミッションケース内壁に向け噴出させることとなり気泡の発生を防止できる。
図13〜図14は前記制御弁のタンクポートから作動油をミッションケース内に戻す構成においてギヤ群への直接の噴出を防いで気泡発生を防止しようとするものである。図 13は設置状態を示すもので、タンクポートの噴出位置Tに対向する位置に垂下状に衝突板128を設けるものである。衝突板128の具体例として図14(イ)のほか同(ロ)では衝突板128の垂下部128aに連続して水平部128bを形成している。このように構成すると垂下部128aに衝突した戻り油は水平部128bを伝いミッションケースに戻されるものであるから、油面への流下時間を費やして気泡の発生を防止できる。同図(ハ)は油面下まで延長する垂下部128cと、(ロ)と同様の水平部128dを左右に形成したもので、タンクポートが接近して配置される場合に対応する構成であって、右半部の垂下部128cは油面下までとしてタンクポートが油面下にある制御弁に対応させる構成である。油面下への直接噴出といえども気泡の発生が見られるが、上記の構成とすると気泡の発生を防止できる。
トラクタの全体側面図である。 油圧回路図である。 トラクタの制御弁のレイアウトを模式的に示す平面図である。 制御弁、油路の配置を示す平断面図である。 制御弁の配置を示す側面図である。 一部を断面にした正面図である。 油圧ポンプ付近の側面図である。 他例を示す油圧ポンプ付近の側面図である。 更に他例を示す油圧ポンプ付近の側面図である。 更に他の例を示す油圧ポンプ付近の側面図である。 ミッションケース断面図である。 ミッションケース断面図である。 一部断面したミッションケース平面図である。 衝突板を示す斜視図である(イ)(ロ)(ハ)。
符号の説明
1 移動農機(トラクタ)
2 エンジン
3 クラッチハウジング
4 ミッションケース
5 シャーシ本体
7 油圧シリンダケース
8 リフトアーム
9 前輪
10 油圧シリンダ
13 後輪
18 作業機
20 油圧ポンプ
22 減圧弁
26 4WD用制御弁
28 PTO用制御弁
31 高低速切替装置
32 高低速切替用制御弁
34 リバース用制御弁
35 後輪ブレーキ装置
47 主変速制御弁
48 主変速制御弁
72 パワーステアリング機構用油圧制御弁
74a 油圧配管
74b 油圧配管
75 ステアリングシリンダ
80 作業機昇降油圧制御弁
92 (減圧弁への)油路
97 サクション用配管
121A サクションメタル
121B サクションメタル
122A 吐出側メタル
122B 吐出側メタル
123 (パワーステアリング用油圧制御弁への)配管
124 戻り配管

Claims (3)

  1. 機体前部に設けるエンジンの動力で駆動される油圧ポンプを少なくとも2個設け、これら油圧ポンプ(20A,20B)とミッションケース(4)とをサクション用配管(97)によって接続しミッションケース(4)内の作動油を吸い上げて機体複数個所に配設される油圧作動部を制御する制御弁に供給すべく構成する移動農機において、上記油圧ポンプのうち第1の油圧ポンプ(20A)は前輪操舵用のパワーステアリング機構の油圧制御弁(72)に作動油を供給し、第2の油圧ポンプ(20B)は少なくとも機体に装着された作業機を昇降する作業機昇降用油圧制御弁(80)に作動油を供給する構成とし、作業機昇降用油圧制御弁(80)からの排出油路はミッションケース(4)に接続される一方、パワーステアリング機構の油圧制御弁(72)からの排出油路は前記第1の油圧ポンプ(20A)の吸入部近傍に接続したことを特徴とする移動農機。
  2. サクション用配管(97)の流出側において第1の油圧ポンプ(20A)のサクションメタル(121A)、第2の油圧ポンプ(20B)のサクションメタル(121B)の順に接続され、パワーステアリング機構の戻り配管(124)を第1の油圧ポンプ(20A)のサクションメタル(121A)に接続した請求項1に記載の移動農機。
  3. 第1の油圧ポンプ(20A)の吐出容量は第2の油圧ポンプ(20B)の吐出容量に対して大となし、サクション用配管(97)の流出側において第1の油圧ポンプ(20A)のサクションメタル(121A)、第2の油圧ポンプ(20B)のサクションメタル(121B)の順に接続され、パワーステアリング機構の戻り配管(124)を第1の油圧ポンプ(20A)のサクションメタル(121A)から第2の油圧ポンプ(20B)に至るサクション用配管の延長部(97a)のうちサクションメタル(121A)寄りに接続した請求項1に記載の移動農機。
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